(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073805
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】開閉部材駆動装置および開閉ユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20240523BHJP
H02K 11/21 20160101ALI20240523BHJP
F16H 57/023 20120101ALI20240523BHJP
【FI】
H02K7/116
H02K11/21
F16H57/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184709
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】大島 雄希
【テーマコード(参考)】
3J063
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
3J063AA40
3J063AB02
3J063AC01
3J063BA03
3J063BA04
3J063BB41
3J063CA01
3J063CB57
3J063CB58
3J063CD06
3J063CD09
3J063CD42
3J063CD43
5H607BB01
5H607CC07
5H607DD03
5H607DD08
5H607DD19
5H607EE31
5H607FF01
5H607HH01
5H607HH06
5H607JJ02
5H607JJ05
5H607JJ06
5H611AA01
5H611BB01
5H611PP05
5H611QQ03
5H611RR00
5H611UA04
5H611UB01
(57)【要約】
【課題】開閉部材駆動装置のケース内のスペース不足を緩和し、輪列機構へのグリス塗布の作業性向上を図る。
【解決手段】開閉部材駆動装置3のケース10は、モータ12を収容する第1ケース61と、隔壁部55が設けられた第2ケース62と、出力軸11が配置される第3ケース63を積層して結合する。第3ケース63は、輪列機構13の第1シャフト28の一端が圧入される第1軸圧入部88と、輪列機構13の第2シャフト29の一端が圧入される第2軸圧入部89を備える。第1ケース61は、第1シャフト28の他端が保持される第1軸保持部67と、第2シャフト29の他端が保持される第2軸保持部68を備える。第1軸圧入部88は、第1軸保持部67よりも軸線方向Xの長さが長く、第2軸圧入部89は、第2軸保持部68よりも軸線方向Xの長さが長い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉部材が接続される接続部、および歯車部を備える出力軸と、
モータと、
前記モータの回転を前記歯車部に伝達する輪列機構と、
前記モータ、前記輪列機構、並びに前記出力軸の前記歯車部を収容するとともに、前記出力軸を貫通させて前記接続部を外部に露出させる開口部を有するケースと、を有し、
前記出力軸の軸線方向の一方側を第1方向、他方側を第2方向とした場合に、
前記ケースは、前記モータを収容する第1ケースと、前記第1ケースに前記第2方向から重なるとともに前記ケース内を前記出力軸の軸線方向と交差する方向に延びる隔壁部が設けられた第2ケースと、前記開口部が設けられ前記第2ケースに前記第2方向から重なる第3ケースと、を備え、
前記輪列機構は、前記モータの側方を前記軸線方向に平行に延びる第1シャフトおよび第2シャフトと、前記第1シャフトに回転可能に支持された第1歯車と、前記第1歯車の前記第2方向において前記第1シャフトに回転可能に支持された第2歯車と、前記第2シャフトに回転可能に支持された第3歯車と、を備え、
前記第1歯車、前記第2歯車、および前記第3歯車は、大径歯車部分および前記大径歯車部分よりも小径の小径歯車部分を備える複合歯車であり、
前記モータの回転は、前記第1歯車、前記第3歯車、前記第2歯車の順に伝達され、
前記第1シャフトおよび前記第2シャフトは、前記隔壁部を貫通して前記第3ケース内に延びており、
前記第3ケースは、前記第1シャフトの一端が圧入される第1軸圧入部と、前記第2シャフトの一端が圧入される第2軸圧入部を備え、
前記第1ケースは、前記第1シャフトの他端が保持される第1軸保持部と、前記第2シャフトの他端が保持される第2軸保持部を備え、
前記第1軸圧入部は、前記第1軸保持部よりも前記軸線方向の長さが長く、
前記第2軸圧入部は、前記第2軸保持部よりも前記軸線方向の長さが長いことを特徴とする開閉部材駆動装置。
【請求項2】
前記輪列機構は、前記第3歯車の前記第2方向において前記第2シャフトに回転可能に支持された第4歯車を備え、
前記第1歯車、前記第2歯車の前記大径歯車部分および前記第3歯車は、前記隔壁部の前記第1方向に位置し、
前記第4歯車、前記第2歯車の前記小径歯車部分および前記出力軸は、前記隔壁部の前記第2方向に位置することを特徴とする請求項1に記載の開閉部材駆動装置。
【請求項3】
前記第1ケースは、前記軸線方向と交差する方向に延びる第1板部と、前記第1板部の外周縁から前記第2方向に延びる第1周壁部と、を備え、
前記第2ケースは、前記第1周壁部と前記軸線方向に当接する第2周壁部を備え、
前記第3ケースは、前記軸線方向と交差する方向に延びる第3板部と、前記第3板部の外周縁から前記第1方向に延びる第3周壁部と、を備え、
前記第1周壁部に設けられた第1ねじ固定部、および前記第2周壁部に設けられた第2ねじ固定部を前記軸線方向に貫通するねじ部材の先端が前記第3周壁部に設けられた第3ねじ固定部にねじ止めされていることを特徴とする請求項1に記載の開閉部材駆動装置。
【請求項4】
前記第1周壁部と前記第3周壁部の一方は、外周面に突起が設けられ、
前記第1周壁部と前記第3周壁部の他方は、前記第2周壁部の外周側を経由して前記突起まで延びて前記突起に係止されるフックを備えることを特徴とする請求項3に記載の開閉部材駆動装置。
【請求項5】
前記出力軸の回転角度位置を検出するためのポテンショメータと、
厚み方向を前記軸線方向に向けてモータと前記隔壁部との間に配置され当該隔壁部と隙間を開けて対向する基板と、を有し、
前記ポテンショメータは、前記基板の前記隔壁部に対向する基板表面に取り付けられた検出部と、前記検出部のギア接続部に接続されるポテンショギアと、を備え、
前記ポテンショギアは、前記隔壁部を貫通するポテンショギア用貫通孔から前記隔壁部の前記第2方向に突出して前記出力軸に設けられた回転角度位置検出用歯車部に噛合することを特徴とする請求項1に記載の開閉部材駆動装置。
【請求項6】
前記隔壁部から前記第1方向に突出する係止突起を備え、
前記係止突起の先端に設けられた爪部に前記基板の縁を係止することにより、前記隔壁部に基板が固定されることを特徴とする請求項5に記載の開閉部材駆動装置。
【請求項7】
前記モータは、前記第2方向に突出する一対のモータ端子を備え、
前記基板は、一対のモータ端子用貫通孔と、前記モータに電力を供給するための第1配線パターンと、前記検出部に電力を供給するとともに当該ポテンショメータからの信号を外部に取り出すための第2配線パターンと、を備え、
一対の前記モータ端子は、一対の前記モータ端子用貫通孔を貫通した状態で前記第1配線パターンに接続され、
前記基板は、前記第1シャフトおよび前記第2歯車の小径歯車部分を貫通させる基板側第1貫通部と、前記第2シャフトを貫通させる基板側第2貫通部と、を備えることを特徴とする請求項5に記載の開閉部材駆動装置。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の開閉部材駆動装置を有し、
前記開閉部材は、便蓋または便座であることを特徴とする開閉ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉部材を駆動する開閉部材駆動装置、および開閉部材としてトイレユニットの便蓋や便座などを開閉する開閉ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
便蓋などの開閉部材を開閉する開閉部材駆動装置は特許文献1に記載されている。同文献の開閉部材駆動装置は、モータと、開閉部材が接続される出力軸と、モータの駆動力を出力軸に伝達する輪列機構と、を有する。また、開閉部材駆動装置は、出力軸の回転角度位置を検出するためのポテンショメータを備える。
【0003】
特許文献1の開閉部材駆動装置では、出力軸およびモータを出力軸の軸線方向から見た場合に、モータ出力軸は、出力軸と重ならない位置で、出力軸と交差する方向に延びている。従って、モータ出力軸の回転を出力軸に伝達する輪列機構は、出力軸と交差する方向に広がりやすい。そのため、出力軸の軸線方向から見た場合の開閉部材駆動装置の平面形状を小さくすることが困難である。
【0004】
出力軸の軸線方向から見た場合の開閉部材駆動装置の平面形状を小型化したいという要望に対して、本発明者らは、出力軸とモータ出力軸とが平行となるようにモータの向きを変更するとともに、出力軸およびモータ出力軸と平行な2本のシャフトをモータ底部から出力軸の側まで長く延ばして、輪列機構を構成する歯車を2本のシャフトに交互に取り付ける構造を提案している(例えば、特願2022-029458号)。
【0005】
特願2022-029458号の開閉部材駆動装置は、モータおよび輪列機構の大部分を第1ケースに組み付けてから、モータが接続される基板、隔壁部を備えた第2ケースの順で第1ケースに取り付け、輪列機構の最終段の歯車、および出力軸と一体に回転する出力歯車を第3ケースと隔壁部との間に収容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特願2022-029458の構造では、第1ケースに収容される部品数が多いため、第1ケース内にスペースを確保することが困難であり、輪列機構の組み込み時にシャフトの下端を圧入して保持する軸受部の長さを長くすると、スペース不足により輪列の組込作業が困難になる。また、第1ケース内のスペース不足により、輪列機構に潤滑用のグリスを塗布する作業が困難になる。そこで、特願2022-029458において、第1ケースの側面を大きく切り欠いて輪列機構へのアクセスを容易化する構造を提案しているが、輪列機構へのアクセスが容易となる反面、切り欠きを塞ぐ第2ケースとの合わせ目からグリス漏れが発生するおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、かかる点に鑑みて、開閉部材駆動装置のケース内のスペース不足を緩和して輪列機構の組込作業を容易化し、さらに、輪列機構へのグリス塗布の作業性向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の開閉部材駆動装置は、開閉部材が接続される接続部、および歯車部を備える出力軸と、モータと、前記モータの回転を前記歯車部に伝達する輪列機構と、前記モータ、前記輪列機構、並びに前記出力軸の前記歯車部を収容するとともに、前記出力軸を貫通させて前記接続部を外部に露出させる開口部を有するケースと、を有し、前記出力軸の軸線方向の一方側を第1方向、他方側を第2方向とした場合に、前記ケースは、前記モータを収容する第1ケースと、前記第1ケースに前記第2方向から重なるとともに前記ケース内を前記出力軸の軸線方向と交差する方向に延びる隔壁部が設けられた第2ケースと、前記開口部が設けられ前記第2ケースに前記第2方向から重なる第3ケースと、を備え、前記輪列機構は、前記モータの側方を前記軸線方向に平行に延びる第1シャフトおよび第2シャフトと、前記第1シャフトに回転可能に支持された第1歯車と、前記第1歯車の前記第2方向において前記第1シャフトに回転可能に支持された第2歯車と、前記第2シャフトに回転可能に支持された第3歯車と、を備え、前記第1歯車、前記第2歯車、および前記第3歯車は、大径歯車部分および前記大径歯車部分よりも小径の小径歯車部分を備える複合歯車であり、前記モータの回転は、前記第1歯車、前記第3歯車、前記第2歯車の順に伝達され、前記第1シャフトおよび前記第2シャフトは、前記隔壁部を貫通して前記第3ケース内に延びており、前記第3ケースは、前記第1シャフトの一端が圧入される第1軸圧入部と、前記第2シャフトの一端が圧入される第2軸圧入部を備え、前記第1ケースは、前記第1シャフトの他端が保持される第1軸保持部と、前記第2シャフトの他端が保持される第2軸保持部を備え、前記第1軸圧入部は、前記第1軸保持部よりも前記軸線方向の長さが長く、前記第2軸圧入部は、前記第2軸保持部よりも前記軸線方向の長さが長いことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、輪列機構の歯車を出力軸の軸線方向に延びる2本のシャフトに交互に取り付けるので、軸線方向から見た輪列機構の配置スペースを小さくできる。また、収容する部品点数が多いモータ側のケース(第1ケース)でなく、収容する部品点数が少ない出力軸側のケース(第3ケース)に軸線方向の長さが長い軸圧入部(第1軸圧入部、第2軸圧入部)を設けるので、第1ケース側に設ける軸保持部(第1軸保持部、第2軸保持部)の長さを短くでき、第1ケース内のスペース不足を緩和できる。さらに、モータの回転を出力軸に伝達する輪列機構を組み立てる際、第3ケースに対して2本のシャフトを圧入して、その後に出力軸の側から順に輪列機構の歯車をシャフトに取り付け、最後に第1ケースを輪列機構に被せる順序で組み立てることができる。従って、組立後の輪列機構にグリスを塗布する際、輪列機構に容易にアクセスすることができるので、グリス塗布作業が容易になる。
【0011】
本発明において、前記輪列機構は、前記第3歯車の前記第2方向において前記第2シャフトに回転可能に支持された第4歯車を備え、前記第1歯車、前記第2歯車の前記大径歯車部分および前記第3歯車は、前記隔壁部の前記第1方向に位置し、前記第4歯車、前記第2歯車の前記小径歯車部分および前記出力軸は、前記隔壁部の前記第2方向に位置することが好ましい。このようにすると、ケース内が隔壁部によって区画される場合でも、モータの回転を出力軸に伝達できる。
【0012】
本発明において、前記第1ケースは、前記軸線方向と交差する方向に延びる第1板部と、前記第1板部の外周縁から前記第2方向に延びる第1周壁部と、を備え、前記第2ケースは、前記第1周壁部と前記軸線方向に当接する第2周壁部を備え、前記第3ケースは、前記軸線方向と交差する方向に延びる第3板部と、前記第3板部の外周縁から前記第1方向に延びる第3周壁部と、を備え、前記第1周壁部に設けられた第1ねじ固定部、および前記第2周壁部に設けられた第2ねじ固定部を前記軸線方向に貫通するねじ部材の先端が前記第3周壁部に設けられた第3ねじ固定部にねじ止めされていることが好ましい。このようにすると、3つのケースを軸線方向に積層してから、最後に積層する第1ケースの側から共通のねじ部材によって3つのケースを共締めして結合することができる。従って、
少ない本数のねじでケースを組み立てることができ、ねじ固定の作業工数を削減できる。また、ねじ穴を設ける部分ほ配置スペースを削減できるので、ケース内のスペース不足を緩和できる。
【0013】
本発明において、前記第1周壁部と前記第3周壁部の一方は、外周面に突起が設けられ、前記第1周壁部と前記第3周壁部の他方は、前記第2周壁部の外周側を経由して前記突起まで延びて前記突起に係止されるフックを備えることが好ましい。このように、フックによる固定とねじ固定を兼用することにより、ケースの組立作業を容易化できる。また、固定箇所の一部をフックによる固定にすることで、ねじの本数およびねじ穴を設けるスペースをさらに削減できる。従って、ケース内のスペース不足をより緩和できるとともに、ねじ固定の作業工数を削減できる。
【0014】
本発明において、前記出力軸の回転角度位置を検出するためのポテンショメータと、厚み方向を前記軸線方向に向けてモータと前記隔壁部との間に配置され当該隔壁部と隙間を開けて対向する基板と、を有し、前記ポテンショメータは、前記基板の前記隔壁部に対向する基板表面に取り付けられた検出部と、前記検出部のギア接続部に接続されるポテンショギアと、を備え、前記ポテンショギアは、前記隔壁部を貫通するポテンショキア用貫通孔から前記隔壁部の前記第2方向に突出して前記出力軸に設けられた回転角度位置検出用歯車部に噛合することが好ましい。このようにすると、出力軸とポテンショメータの検出部との間に隔壁部を介在させることができるので、出力軸の歯車部に塗布されたグリスがポテンショメータの検出部に付着することを防止或いは抑制できる。また、隔壁部を備える第2ケースと基板との間にポテンショメータを組み込んだユニットを組み立ててから、このユニットを出力軸を組み付けた第3ケースに対して被せる際、回転角度位置検出用歯車部とポテンショギアとを噛合させることができるので、ポテンショメータの組込が容易である。
【0015】
本発明において、前記隔壁部から前記第1方向に突出する係止突起を備え、前記係止突起の先端に設けられた爪部に前記基板の縁を係止することにより、前記隔壁部に基板が固定されることが好ましい。このようにすると、隔壁部を備える第2ケースと基板との間にポテンショメータを組み込んだユニットを組み立てる際、隔壁部に対して基板を容易に固定することができる。
【0016】
本発明において、前記モータは、前記第2方向に突出する一対のモータ端子を備え、前記基板は、一対のモータ端子用貫通孔と、前記モータに電力を供給するための第1配線パターンと、前記検出部に電力を供給するとともに当該ポテンショメータからの信号を外部に取り出すための第2配線パターンと、を備え、一対の前記モータ端子は、一対の前記モータ端子用貫通孔を貫通した状態で前記第1配線パターンに接続され、前記基板は、前記第1シャフトおよび前記第2歯車の小径歯車部分を貫通させる基板側第1貫通部と、前記第2シャフトを貫通させる基板側第2貫通部と、を備えることが好ましい。このようにすると、ポテンショメータの検出部が取り付けられた基板を、モータに給電を行うための基板と共用できる。また、基板が存在していても、モータの回転を、出力軸に伝達することができる。
【0017】
次に、本発明の開閉ユニットは、上記の開閉部材駆動装置を有し、前記開閉部材は、便蓋であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、輪列機構の歯車を出力軸の軸線方向に延びる2本のシャフトに交互に取り付けるので、軸線方向から見た輪列機構の配置スペースを小さくできる。また、収容する部品点数が多いモータ側のケース(第1ケース)でなく、収容する部品点数が少ない
出力軸側のケース(第3ケース)に軸線方向の長さが長い軸圧入部(第1軸圧入部、第2軸圧入部)を設けるので、第1ケース側に設ける軸保持部(第1軸保持部、第2軸保持部)の長さを短くでき、第1ケース内のスペース不足を緩和できる。さらに、モータの回転を出力軸に伝達する輪列機構を組み立てる際、第3ケースに対して2本のシャフトを圧入して、その後に出力軸の側から順に輪列機構の歯車をシャフトに取り付け、最後に第1ケースを輪列機構に被せる順序で組み立てることができる。従って、組立後の輪列機構にグリスを塗布する際、輪列機構に容易にアクセスすることができるので、グリス塗布作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】便蓋を開閉する開閉ユニットの説明図である。
【
図3】ケースを外した開閉部材駆動装置を出力軸の側から見た斜視図である。
【
図4】ケースを外した開閉部材駆動装置を出力軸とは反対側から見た斜視図である。
【
図5】開閉部材駆動装置の断面図(
図2(a)のA-A線断面図)である。
【
図6】開閉部材駆動装置の断面図(
図2(a)のB-B線断面図)である。
【
図7】第3ケースを外した開閉部材駆動装置の分解斜視図である。
【
図8】組立途中の開閉部材駆動装置の説明図であり、第3ケースに出力軸および輪列機構の一部を組み込み、且つ、第2ケースに基板およびポテンショメータを組み付けた状態を示す分解斜視図である。
【
図9】組立途中の開閉部材駆動装置の説明図であり、第1ケースを輪列機構およびモータに被せる直前の状態を示す分解斜視図である。
【
図10】第2ケース、ポテンショギア、検出部、および基板を第1方向から見た分解斜視図である。
【
図11】第2ケース、ポテンショギア、検出部、および基板を第2方向から見た分解斜視図である。
【
図13】第1方向から見た出力軸の平面図および斜視図である。
【
図14】第2方向から見たポテンショギアの平面図および斜視図である。
【
図15】ポテンショギアおよび出力軸の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る開閉部材駆動装置を備えた開閉ユニットの実施形態を説明する。
【0021】
(全体構成)
図1は便蓋2を開閉する開閉ユニット1の説明図である。
図2(a)、
図2(b)は開閉部材駆動装置3の外観斜視図である。
図3は、ケース10を外した開閉部材駆動装置3を出力軸11の側から見た斜視図である。
図4は、ケース10を外した開閉部材駆動装置3を出力軸11とは反対側から見た斜視図である。
図5、
図6は開閉部材駆動装置3の断面図であり、
図5は
図2のA-A線断面図であり、
図6は
図2のB-B線断面図である。
【0022】
図1に示すように、開閉ユニット1は、便蓋2と、便蓋2を駆動する開閉部材駆動装置3と、を有する。開閉ユニット1は、便器本体4および便座5を備えるトイレユニット6に取り付けられて、便蓋2を回転させる。開閉ユニット1がトイレユニット6に取り付けられた状態で、便蓋2の回転軸Hは、水平方向に延びる。便蓋2は、開閉部材駆動装置3の駆動により、便器本体4および便座5に上方から被さる全閉位置2Aと、便器本体4から立ち上がる全開位置2Bとの間を移動する。
【0023】
図2(a)、
図2(b)に示すように、開閉部材駆動装置3は、ケース10と、ケース10に設けられた開口部10aからケース10の外側に突出する出力軸11を備える。ケース10は、柱形状であり、出力軸11の軸線L1に沿って延びる。
図3、
図4に示すように、ケース10内には、モータ12と、モータ12の駆動力を出力軸11に伝達する輪列機構13が収容される。また、ケース10内には、基板14と、出力軸11の回転角度位置を検出するためのポテンショメータ15が収容される。
【0024】
開閉部材駆動装置3は、出力軸11の軸線L1を便蓋2の回転軸Hと一致させた姿勢でトイレユニット6に取り付けられる。すなわち、出力軸11を水平方向に向けてトイレユニット6に取り付けられる。開閉部材駆動装置3が出力軸11を所定角度で回転駆動することにより、便蓋2は、全閉位置2Aと全開位置2Bとの間を移動する。本形態において、所定角度は、130°以下である。例えば、所定角度は、120°である。ここで、開閉部材駆動装置3は、
図1に実線で示すように、回転軸Hに沿った方向で便蓋2の一方側に設置される場合がある。また、開閉部材駆動装置3は、
図1に鎖線で示すように、回転軸Hに沿った方向で便蓋2の他方側に設置される場合がある。
【0025】
(モータ)
モータ12は、DCモータである。
図3、
図4、
図5に示すように、モータ12は、モータ本体17と、モータ本体17から突出するモータ出力軸18と、モータ本体17からモータ出力軸18とは反対方向に突出する一対のモータ端子19を備える。一対のモータ端子19は、モータ出力軸18の軸線L2を挟んで径方向で反対側の2箇所に設けられている。
図3には一対のモータ端子19の一方のみが図示され、他方は出力軸11の背後に隠れている。モータ出力軸18は、出力軸11の位置する側とは反対方向に突出し、一対のモータ端子19は、出力軸11が位置する側に突出する。モータ出力軸18には、モータピニオン20が取り付けられている。
【0026】
モータ出力軸18の軸線L2と開閉部材駆動装置3の出力軸11の軸線L1とは、平行である。
図3、
図4、
図5から分かるように、出力軸11の軸線L1に沿った方向から見た場合に、モータ本体17は出力軸11と部分的に重なる。また、出力軸11の軸線L1に沿った方向から見た場合に、モータ出力軸18は出力軸11と重なる。
【0027】
以下の説明では、モータ出力軸18の軸線L2および出力軸11の軸線L1に沿った方向を軸線方向Xとし、軸線方向Xの一方側を第1方向X1とし、軸線方向Xの他方側を第2方向とする。第1方向X1は、モータ出力軸18がモータ本体17から突出する方向である。第2方向X2は、モータ端子19がモータ本体17から突出する方向であり、且つ、ケース10から出力軸11が突出する方向である。モータ12は、出力軸11の第1方向X1に位置する。
【0028】
また、以下の説明では、軸線方向Xと直交する方向をY方向とし、軸線方向Xと直交し且つY方向と直交する方向をZ方向とする。
図2に示すように、軸線方向Xから見たときのケース10の平面形状の長手方向は、Z方向と一致する。Z方向の一方側をZ1方向とし、Z方向の他方側をZ2方向とする場合に、ケース10のZ1方向の側面は円弧状の湾曲面である。
【0029】
(出力軸)
図3、
図4に示すように、出力軸11は、開閉部材である便蓋2が接続される接続部22と、モータ12の駆動力が伝達される歯車部23と、回転角度位置検出用歯車部24とを備える。歯車部23と回転角度位置検出用歯車部24は、噛合相手の歯車と噛み合う部分に、グリスが塗布される。接続部22、歯車部23、および回転角度位置検出用歯車部24は、同軸である。歯車部23は、接続部22の第1方向X1に設けられている。回転
角度位置検出用歯車部24は、歯車部23の第1方向X1に設けられている。出力軸11の歯車部23および回転角度位置検出用歯車部24は、ケース10内に収容される。接続部22は、開口部10aからケース10の外側へ突出する。
【0030】
(輪列機構)
輪列機構13は、大径歯車部分と大径歯車部分よりも小径の小径歯車部分を備える複合歯車を複数備える。各複合歯車は、小径歯車部分が大径歯車部分の第2方向X2に位置する。各複合歯車が噛み合う部分には、グリスが塗布される。輪列機構13は、減速輪列である。また、輪列機構13は、これら複数の複合歯車を回転可能に支持する3本のシャフトを備える。
【0031】
具体的には、
図3、
図4に示すように、輪列機構13は、モータピニオン20に噛合する第1複合歯車26と、第1複合歯車26を回転可能に支持する第1複合歯車用シャフト27と、を備える。第1複合歯車用シャフト27は、モータ本体17の第1方向X1で軸線方向Xに延びる。
【0032】
また、輪列機構13は、モータ本体17の側方を軸線方向Xに平行に延びる第1シャフト28および第2シャフト29を備える。さらに、輪列機構13は、第1シャフト28に回転可能に支持された第2複合歯車31(第1歯車)、第2複合歯車31の第2方向X2において第1シャフト28に回転可能に支持された第3複合歯車32(第2歯車)を備える。また、輪列機構13は、第2シャフト29に回転可能に支持された第4複合歯車33、第4複合歯車33の第2方向X2において第2シャフト29に回転可能に支持された第5複合歯車34(第3歯車)、および第5複合歯車34の第2方向X2において第2シャフト29に回転可能に支持された第6複合歯車35(第4歯車)を備える。
【0033】
図6に示すように、第1シャフト28と第2シャフト29は、ケース10内においてY方向に配列されており、Z方向に見た場合に、第1シャフト28と第2シャフト29はモータ本体17と重なる。従って、第1シャフト28と第2シャフト29との間隔は、Z方向から見た場合のモータ12の幅よりも、狭い。
【0034】
図3、
図4に示すように、第1複合歯車26は、その大径歯車部分26aがモータピニオン20に噛合し、その小径歯車部分26bが第2シャフト29の最も第1方向X1に位置する第4複合歯車33の大径歯車部分33aに噛合する。第4複合歯車33は、その小径歯車部分33bが第1シャフト28の最も第1方向X1に支持された第2複合歯車31(第1歯車)の大径歯車部分31aに噛合する。第2複合歯車31は、小径歯車部分31bが第2シャフト29に支持された第5複合歯車34(第3歯車)の大径歯車部分34aに噛合する。第5複合歯車34は、その小径歯車部分34bが、第1シャフト28に支持された第3複合歯車32(第2歯車)の大径歯車部分32aに噛合する。第3複合歯車32は、その小径歯車部分32bが、第2シャフト29に支持された第6複合歯車35(第4歯車)の大径歯車部分35aに噛合する。第6複合歯車35は、その小径歯車部分35bが、出力軸11の歯車部23に噛合する。第6複合歯車35(第4歯車)は、輪列機構13の最終歯車である。
【0035】
モータ出力軸18(モータピニオン20)の回転は、駆動力伝達方向の上流側から下流側に向かって、第1複合歯車26、第4複合歯車33、第2複合歯車31(第1歯車)、第5複合歯車34(第3歯車)、第3複合歯車32(第2歯車)、第6複合歯車35(第4歯車)の順に伝達されて出力軸11に達する。ここで、
図4に示すように、第3複合歯車32の小径歯車部分32bは、第1方向X1の端部分であって大径歯車部分32aに隣り合う部分に、歯を有さない円柱部32cを備える。円柱部32cは、所定の高さ寸法を備える。なお、円柱部32cには、グリスは塗布されていない。また、
図6に示すように
、第2複合歯車31は、その大径歯車部分31aと小径歯車部分31bとの間に、駆動力の伝達を継断するトルクリミッタ37が設けられている。
【0036】
ここで、
図3、
図4、
図5、
図6から分かるように、第1シャフト28に支持された第2複合歯車31および第3複合歯車32、および第2シャフト29に支持された第5複合歯車34は、モータ本体17の側方(Z2方向)に位置する。また、
図6から分かるように、Z方向から見た場合に、第2複合歯車31および第3複合歯車32、および第5複合歯車34は、モータ本体17と重なる。
【0037】
(基板、およびポテンショメータ)
図3、
図4に示すように、基板14は、厚み方向を前記軸線方向Xに向けてモータ本体17と出力軸11との間に配置されている。
図3に示すように、ポテンショメータ15は、基板14の第2方向X2を向く基板表面14aに取り付けられた検出部38と、検出部38に接続されるポテンショギア39と、を備える。ポテンショメータ15の詳細については後述する。
【0038】
基板14は、
図3に示すように、モータ端子用貫通孔41と、モータ12に電力を供給するための第1配線パターン42と、検出部38に電力を供給するとともにポテンショメータ15からの回転角度位置信号(信号)を外部に取り出すための第2配線パターン43と、を備える。基板14には、一対のモータ端子19に対応して一対のモータ端子用貫通孔41が設けられている。一対のモータ端子19のそれぞれは、モータ端子用貫通孔41を貫通した状態で第1配線パターン42に接続される。
【0039】
図4に示すように、基板14において、第1方向X1を向く基板裏面14bには、コネクタ45が取り付けられている。コネクタ45は、第1配線パターン42および第2配線パターン43に電気的に接続される。コネクタ45には、外部の機器から延びるケーブルに設けられた外部コネクタが、第1方向X1の側から着脱可能に接続される。モータ12および検出部38には、コネクタ45から基板14を介して、電力が供給される。
【0040】
図4、
図6に示すように、基板14には、第1シャフト28および第3複合歯車32の円柱部32cが配置される基板側第1貫通部47が設けられている。基板側第1貫通部47は、基板14の縁に設けられた切り欠きである。
図3、
図6に示すように、基板14には、第2シャフト29が配置される基板側第2貫通部48が設けられている。基板側第2貫通部48は、貫通孔である。なお、第5複合歯車34の小径歯車部分34bには、第2方向に突出する小径の円柱部34cが設けられており、
図6に示すように、基板側第2貫通部48には、円柱部34cが挿入されている。
【0041】
図4に示すように、第3複合歯車32の小径歯車部分32bは、基板14の第2方向X2で第6複合歯車35の大径歯車部分35aと噛合する。一方で、第3複合歯車32の大径歯車部分32aは、基板14の第1方向X1で第5複合歯車34の小径歯車部分34bと噛合する。輪列機構13は、基板14の第1方向X1に、第1複合歯車26、第2複合歯車31、第3複合歯車32の大径歯車部分32a、第4複合歯車33、および第5複合歯車34が位置する。第3複合歯車32の大径歯車部分32a、第6複合歯車35、および出力軸11は、基板14の第2方向X2に位置する。従って、輪列機構13は、基板14の第1方向X1の側から基板14の第2方向X2にモータ12の駆動量を伝達する。
【0042】
(ケース)
図2(a)、
図2(b)、
図5に示すように、ケース10は、第2方向X2の端面に、出力軸11を貫通させて接続部22を外部に露出させる開口部10aを備える。また、
図5、
図6に示すように、ケース10は、内部に、軸線方向Xと交差する方向に延びてケー
ス10内を2つの領域に仕切る隔壁部55を備える。さらに、
図2(a)、
図5に示すように、ケース10は、隔壁部55の第1方向X1に、基板14の端部に配置されたコネクタ45を外部に露出させるコネクタ用開口部10bを備える。
【0043】
より具体的には、ケース10は、軸線方向Xの第1方向X1の側から第2方向X2に向かって積層された第1ケース61、第2ケース62および第3ケース63を備える。隔壁部55は、第2ケース62に設けられている。コネクタ用開口部10bは、第1ケース61と第2ケース62との間に形成される。第3ケース63は、開口部10aを備え、出力軸11の歯車部23および回転角度位置検出用歯車部24を内部に収容する。
【0044】
第1ケース61は、第1方向X1の端面を規定する第1板部65と、第1板部65の外周縁から第2方向X2に延びる筒状の第1周壁部66を備える。
図5、
図6に示すように、第1板部65は、第2方向X2を向く面に、第1シャフト28の第1方向X1の端部を保持する第1軸保持部67と、第2シャフト29の第1方向X1の端部を保持する第2軸保持部68と、第1複合歯車用シャフト27の第1方向X1の端部分を保持する第3軸保持部69と、を備える。
【0045】
第1シャフト28および第2シャフト29は、基板14および隔壁部55を貫通して第3ケース内へ延びる。一方、
図3に示すように、第1複合歯車用シャフト27の第2方向X2の端部分は、第1ケース61内において、モータ本体17の第1方向X1の端面に取り付けられた支持部材71により支持される。
【0046】
図2(a)に示すように、第1周壁部66の第2方向X2の端部には、Z2方向へ突出する第1ねじ固定部72がY方向に離れた2箇所に設けられている。第1ケース61と第2ケース62とを軸線方向Xに重ねると、2箇所の第1ねじ固定部72の間には、第1方向X1に開口するコネクタ用開口部10bが形成される。第1ケース61において、コネクタ用開口部10bの第1方向X1にはZ1方向へ窪む凹部70が設けられている。
図5に示すように、基板14の端部に取り付けたコネクタ45は、外部コネクタが接続される差込口を凹部70に向けてコネクタ用開口部10bに配置される。
【0047】
図5、
図6に示すように、第1ケース61には、モータ12のモータ出力軸18およびモータ本体17が収容される。また、
図6に示すように、第1ケース61には、モータピニオン20と、輪列機構13において基板14の第1方向X1に位置する第1複合歯車26、第2複合歯車31、第3複合歯車32の大径歯車部分32a、第4複合歯車33、および第5複合歯車34が収容される。
【0048】
図7は、第3ケース63を外した開閉部材駆動装置3の分解斜視図である。
図5、
図6、
図7に示すように、第2ケース62は、第1ケース61の第1周壁部66に接続される筒状の第2周壁部74と、第2周壁部74の軸線方向Xの途中から軸線L1と直交する方向に延びる隔壁部55と、を備える。第2周壁部74は、隔壁部55の第1方向X1に配置される基板14を内側に収容する。また、第2周壁部74において、第1ケース61に設けられた2箇所の第1ねじ固定部72に第2方向X2から重なる部位には、第2ねじ固定部73が設けられている。
【0049】
図6、
図7に示すように、第2ケース62は、隔壁部55から第2方向X2に突出する出力軸支持部77を備える。出力軸支持部77は、出力軸11を回転可能に支持する。隔壁部55を貫通するポテンショギア用貫通孔80からは、ポテンショギア39が第2方向X2に突出する。ポテンショギア39は、隔壁部55の第2方向X2において、出力軸11に設けられた回転角度位置検出用歯車部24と噛合する。
【0050】
隔壁部55は、基板14の第2方向X2に位置し、基板14と対向する。後述するように、隔壁部55の第1方向X1で基板14との間に設けられた隙間Cには、基板14に取り付けられたポテンショメータ15の検出部38が位置する。ポテンショギア39は、隔壁部55の第1方向X1において、ポテンショメータ15の検出部38に接続される。
【0051】
図6,
図7に示すように、第2ケース62には、隔壁部55を貫通する隔壁部側第1貫通孔78、および、隔壁部側第2貫通孔79が設けられている。
図6に示すように、第2シャフト29は、基板側第2貫通部48および隔壁部側第2貫通孔79に通されて、隔壁部55の第2方向X2に延びる。隔壁部55の第2方向X2では、出力軸11の歯車部23に噛合する小径歯車部分35bを備えた第6複合歯車35が第2シャフト29に回転可能に支持される。一方、第1シャフト28および第3複合歯車32の小径歯車部分32bは、隔壁部側第1貫通孔78に通される。第2ケース62は、隔壁部55における隔壁部側第1貫通孔78の開口縁から第2方向X2に突出して、小径歯車部分32bの第2方向X2の先端部分を覆うカバー部81を備える。第1シャフト28は、カバー部81を軸線方向Xに貫通する。カバー部81は、第6複合歯車35の大径歯車部分35aと対向する位置に開口82が設けられており、開口82において大径歯車部分35aと小径歯車部分32bとが噛合する。従って、輪列機構13は、隔壁部55の第1方向X1の側から第2方向X2にモータ12の駆動量を伝達する。
【0052】
図2(b)、
図5、
図6に示すように、第3ケース63は、第2方向X2の端面を規定する第3板部86と、第3板部86の外周縁から第1方向X1に延びる筒状の第3周壁部87を備える。第3周壁部87は、第2ケース62の第2周壁部74に接続される。第3ケース63は、第3周壁部87のZ1方向の側面における第1方向X1の端部から第1方向X1に突出する1本のフック83を備える。フック83は第2ケース62をまたいで第1ケース61の外周側まで延びている。フック83の先端は、第1周壁部66のZ1方向の側面から突出する突起84に係止される。なお、フック83および突起84の配置を逆にすることもできる。
【0053】
ここで、第1ケース61、第2ケース62、および第3ケース63を結合する際、Z1方向の側面では第2ケース62をまたぐフック83および突起84により結合する一方、Z2方向の側面では、第1ケース61、第2ケース62、および第3ケース63を共通のねじ部材76により共締めして結合する。
図2(a)に示すように、第3ケース63は、第1ケース61の第1ねじ固定部72と第2ケース62の第2ねじ固定部73とが積層された箇所に第2方向X2から重なる第3ねじ固定部75を備えており、第1ねじ固定部72、第2ねじ固定部73、第3ねじ固定部75をねじ部材76により共締めして結合する。
【0054】
第3ケース63において、第3板部86の開口部10aの開口縁には、出力軸11を回転可能に支持する支持部が設けられている。
図6に示すように、第3板部86は、第1方向X1を向く面に、第1シャフト28の第2方向X2の端部が圧入される第1軸圧入部88と、第2シャフト29の第2方向X2の端部が圧入される第2軸圧入部89と、を備える。本形態では、第1軸圧入部88の軸線方向の長さH2は、第1ケース61に設けられた第1軸保持部67の軸線方向の長さH1よりも長い。また、第2軸圧入部89の軸線方向の長さH4は、第1ケース61に設けられた第2軸保持部68の軸線方向の長さH3よりも長い(
図6参照)。
【0055】
(開閉部材駆動装置の組立方法)
図8、
図9は、組立途中の開閉部材駆動装置3の説明図である。
図8は、第3ケース63に出力軸11および輪列機構13の一部を組み込み、且つ、第2ケース62に基板14およびポテンショメータ15を組み付けた状態を示す分解斜視図である。
図9は、第1ケ
ース61を輪列機構13およびモータ12に被せる直前の状態を示す分解斜視図である。
【0056】
本形態では、
図8、
図9に示すように、最初に第3ケース63に収容される部品を組み込み、次に基板14およびポテンショメータ15を組み込んだ第2ケース62を積層してポテンショメータ15を出力軸11に接続し、続いて輪列機構13およびモータ12を組み付けて、最後に第1ケース61を輪列機構13およびモータ12に被せて第2ケース62および第3ケース63と結合することにより開閉部材駆動装置3を完成させる。そこで、
図8、
図9においては、
図2~
図7とは上下を逆にして表示しており、第3ケース63が位置する方向(第2方向X2)を図面の下方とし、最後に被せられる第1ケース61が位置する方向(第1方向X1)を図面の上方としている。
【0057】
図8に示すように、第3ケース63に出力軸11を組み込む際、第3板部86に設けられた開口部10aに出力軸11を挿入して、開口部10aに回転可能に支持させる。また、第3板部86に設けられた第1軸圧入部88に第1シャフト28の端部を圧入し、第2軸圧入部89に第2シャフト29の端部を圧入する。しかる後に、第2シャフト29に第6複合歯車35を組み付けて、出力軸11の歯車部23と噛み合わせる。
図7に示すように、歯車部23は、出力軸11の周方向の一部に設けられているため、出力軸11の回転位置は、治具を用いて、歯車部23と第6複合歯車35の小径歯車部分35bとが噛み合う位置に合わせてから第6複合歯車35を組み込む。
【0058】
次に、出力軸11の回転角度位置検出用歯車部24とポテンショギア39とが正常に角度を検出可能な基準噛合状態(すなわち、歯がずれていない状態)で噛合するようにポテンショメータ15を組み込む。このとき、
図8に示すように、第2ケース62に基板14およびポテンショメータ15を組み付けてから、第2ケース62を第3ケース63の第1方向X1の端部に載置して、1本のねじ部材64により第2ケース62を第3ケース63に結合する。ねじ部材64による結合箇所は、第2周壁部74および第3周壁部87におけるY方向の一方側の側面の内側に設けられている。
【0059】
出力軸11の回転位置は、治具を用いて、第3ケース63に対して予め決められた目標回転位置に合わせておく。また、後述するように、ポテンショメータ15は、ポテンショギア39の回転位置を第2ケース62に対して予め決められた目標回転位置に合わせることが可能な位置決め構造を有する。従って、第3ケース63と第2ケース62を組み立てる際、回転角度位置検出用歯車部24とポテンショギア39とが噛合する箇所を目視で確認することが困難でも、両歯車が適正な回転位置で噛合するように、ポテンショメータ15が組み込まれる。
【0060】
第2ケース62に第3ケース63を積層する際、第1シャフト28を隔壁部側第1貫通孔78、および基板側第1貫通孔に通し、第2シャフト29を隔壁部側第2貫通孔、および基板側第2貫通孔に通して基板14の第1方向X1に突出させる。しかる後に、
図9に示すように、基板14の第1方向X1において、モータ12に対して基板14から給電されるようにモータ12を組み付け、モータ12の回転が輪列機構13により出力軸11に伝達されるように輪列機構13、モータピニオン20、第1複合歯車用シャフト27、および支持部材71を組み立てる。
【0061】
図9に示す状態では、輪列機構13の歯車、モータピニオン20、第1複合歯車26が噛合する箇所が第1ケース61により覆われていない。従って、歯車が噛合する箇所へのアクセスが容易であり、グリスを塗布する作業が容易である。グリスの塗布後、第1ケース61を被せて第2ケース62に第1方向X1から積層し、第3ケース63のフック83を第1ケース61の突起84に係止するとともに、第1ねじ固定部72、第2ねじ固定部73、および第3ねじ固定部75が積層された箇所をねじ部材76により共締めして結合
する。
【0062】
(基板およびポテンショメータの組込方法)
図10は、第2ケース62、ポテンショギア39、検出部38、および基板14を軸線方向の一方側から見た分解斜視図である。
図11は、第2ケース62、ポテンショギア39、検出部38、および基板14を第2方向から見た分解斜視図である。
図10に示すように、隔壁部55の第1方向X1の面からは、第2周壁部74よりも軸線方向Xの高さが低いリブ56と、基板14の位置決め孔49に嵌まる位置決め突起57と、基板14を係止する係止突起58が突出する。位置決め孔49、位置決め突起57、および係止突起58は、それぞれ、2箇所に設けられている。
【0063】
2箇所の位置決め孔49に位置決め突起57の先端を嵌めてから、隔壁部55に向けて基板14を押し込むと、係止突起58の先端に設けられた斜面が基板14の縁で押圧されて、係止突起58が基板14の外側に撓む。リブ56の先端面に基板14が当接するまで基板14を押し込むと、係止突起58の先端の斜面から基板14の縁が外れて、係止突起58の先端の爪部58aが基板14の縁に係止される。従って、基板14を第2周壁部74の内側に押し込むだけで、第2ケース62に基板14が固定される。本形態では、2本の係止突起58のうちの1本は、基板14に設けられた矩形の係止孔46の縁に係止される。
【0064】
図11に示すように、ポテンショメータ15の検出部38は、第2方向X2を向く基板表面14aに取り付けられており、第2配線パターン43に接続される。隔壁部55から突出するリブ56は、検出部38と干渉しない位置に設けられているため、基板14と隔壁部55との間には、検出部38を収容可能な隙間C(
図5参照)が形成される。検出部38は、ポテンショギア39が接続されるギア接続部38aを備える。
【0065】
図3、
図10に示すように、ポテンショギア39は、検出部38のギア接続部38aに嵌合する嵌合部51と、出力軸11に接続される歯車本体部52と、歯車本体部52の軸線方向Xに延びて歯車本体部52と嵌合部51とを接続するポテンショギア軸部53と、ポテンショギア軸部53の外周面から外周側へ突出するフランジ部54を備える。フランジ部54の外周縁には、周方向の一部に外周側へ突出する突起部59(当接部)が設けられている。ポテンショメータ15は、ポテンショギア39の歯車本体部52と、出力軸11の回転角度位置検出用歯車部24とが直接噛合するように組み込まれる。従って、ポテンショメータ15は、出力軸11の回転角度位置を、直接的に検出する。
【0066】
図10において破線Dで囲む図には、隔壁部55にポテンショギア39を組み付けた状態を図示する。
図10に示すように、隔壁部55の第1方向X1の表面には、ポテンショギア用貫通孔80を囲む環状凹部85が設けられている。ポテンショギア39は、ポテンショギア軸部53が隔壁部55のポテンショギア用貫通孔80に回転可能に支持されるとともに、フランジ部54が環状凹部85に配置され、環状凹部85の底面にフランジ部54が第1方向X1から重なる。これにより、ポテンショギア39が第2方向X2から隔壁部55により支持される。この状態で、ポテンショギア39の歯車本体部52は、ポテンショギア用貫通孔80から隔壁部55の第2方向X2に突出する(
図11参照)。
【0067】
ポテンショギア用貫通孔80の縁には、ポテンショギア39を噛合相手の歯車(回転角度位置検出用歯車部24)と適正に噛合させることが可能な位置(以下、目標回転位置39Aという)まで回転させたときにポテンショギア39の突起部59が周方向に当接する被当接部60が設けられている。本形態では、被当接部60は、環状凹部85の周方向の一部に設けられた円弧状凸部である。
【0068】
ポテンショギア39の嵌合部51を検出部38のギア接続部38aに嵌合させてから、
図8に示すように基板14を第2ケース62に対して固定すると、基板14と隔壁部55との間では、ポテンショギア39のフランジ部54および突起部59が環状凹部85の内側に収容される。また、ポテンショギア軸部53は、ポテンショギア用貫通孔80に嵌合し、歯車本体部52はポテンショギア用貫通孔80から隔壁部55の第2方向X2に突出する。この状態で、歯車本体部52を決められた回転方向に回転させると、被当接部60に突起部59が当接して、ポテンショギア39が目標回転位置39Aに位置決めされる。
【0069】
(歯車形状の詳細およびその動作)
図12は、ポテンショギア39と出力軸11の側面図である。
図13(a)は、第1方向X1から見た出力軸11の斜視図であり、
図13(b)は、第1方向X1から見た出力軸11の斜視図である。
図14(a)は、第2方向X2から見たポテンショギア39の斜視図であり、
図14(b)は、第2方向X2から見たポテンショギア39の斜視図である。以下に、ポテンショギア39の歯車本体部52と、出力軸11の回転角度位置検出用歯車部24の詳細な形状について説明する。
【0070】
図12、
図13(a)、
図13(b)に示すように、回転角度位置検出用歯車部24は、その周方向の隣り合う位置に、軸線方向Xの長さが第1寸法Q1の第1有歯部91と、軸線方向Xの長さが第1寸法Q1よりも短い第2寸法Q2の第1無歯部92と、を備える。また、回転角度位置検出用歯車部24は、第1有歯部91の周方向かつ第1無歯部92の第1方向X1に、第1寸法Q1と第2寸法Q2との差分である第3寸法Q3の高さを有する第1空間93を備える。
【0071】
回転角度位置検出用歯車部24は、第1無歯部92および第1空間93を、第1有歯部91の周方向の両側に備える。第1無歯部92は、第1有歯部91の歯先円と同一径の第1円弧状外周面92aを備えており、第1円弧状外周面92aは、第1有歯部91の周方向の端部に位置する歯の歯先に繋がる。従って、本形態では、第1有歯部91の歯数は9であり、歯溝の数は8である。2箇所の第1無歯部92の間の領域であって第1有歯部91とは径方向で反対側の領域は、第1有歯部91の歯底円と同一径の第3円弧状外周面94aを備えた小径部94になっている。
【0072】
ポテンショギア39の歯車本体部52は、出力軸11の回転角度位置検出用歯車部24よりも外径寸法が小さい。
図12、
図14(a)、
図14(b)に示すように、歯車本体部52は、その周方向の隣り合う位置に、軸線方向Xの長さが第3寸法Q3よりも長く、且つ第1寸法Q1以下の第4寸法Q4である第2有歯部95と、軸線方向Xの長さが第3寸法Q3よりも短い第5寸法Q5の第2無歯部96を備える。第2無歯部96は、第2有歯部95における第1方向X1の端部分から周方向に延びている。従って、歯車本体部52は、第2有歯部95の周方向かつ第2無歯部96の第2方向X2に、第3寸法Q3の高さを有する第2空間97を備える。
【0073】
また、歯車本体部52は、第2無歯部96および第2空間97に対して第2有歯部95とは周方向で反対側に、軸線方向の長さが第2有歯部95と同一の第4寸法Q4である第3無歯部98を備える。本形態では、歯車本体部52は、第2無歯部96および第2空間97を、第2有歯部95の周方向の両側に備える。2箇所の第2無歯部96は、第3無歯部98と繋がる。第2無歯部96と第3無歯部98は、第2有歯部95の歯先円と同一径の第2円弧状外周面98aを備える。
【0074】
第2有歯部95は、第1有歯部91と噛合可能な歯数を備える。すなわち、第2有歯部95の歯数は8であり、第1有歯部91の歯溝の数と同一である。歯車本体部52では、第2有歯部95の周方向の両端には歯ではなく歯溝が設けられており、第2無歯部96は
歯底の位置から周方向に延びている。従って、歯車本体部52の歯溝の数は9であり、第1有歯部91の歯数と同一数である。
【0075】
歯車本体部52と回転角度位置検出用歯車部24とを噛合させる際、第1有歯部91の周方向の一方端の歯(第1無歯部92が歯先に接続される歯)が、第2有歯部95の周方向の一方端の歯溝(第2無歯部96が歯底に接続される歯溝)に嵌まるように噛合させる。かかる噛合状態が、基準噛合状態Tである(
図15参照)。基準噛合状態Tは、第1有歯部91と第2有歯部95とが周方向にずれていない噛合状態である。
【0076】
図15は、ポテンショギア39および出力軸11の動作説明図である。
図3、
図13(b)、
図15に示すように、歯車部23は、出力軸11の周方向の一部に設けられている。歯車部23の周方向の両端には、ストッパ部25が設けられている。出力軸11は、歯車部23と噛み合う輪列機構13の歯車(第6複合歯車35の小径歯車部分35b)の回転に基づき回転するが、噛合相手の歯車の歯にストッパ部25が衝突する回転位置まで回転すると、それ以上の回転が阻止される。
【0077】
以下の説明では、
図15の右端に示すように、周方向の一方端のストッパ部25に噛合相手の歯車の歯が衝突したときの出力軸11の回転位置を第1ストッパ位置ST1(第1回転位置)とする。また、
図15の左端に示すように、周方向の他方端のストッパ部25に噛合相手の歯車の歯が衝突したときの出力軸11の回転位置を第2ストッパ位置ST2(第2回転位置)とする。出力軸11は、第1ストッパ位置ST1から第2ストッパ位置ST2までの角度範囲を回転可能である。第1ストッパ位置ST1から第2ストッパ位置ST2までの角度範囲は、例えば、180°とすることができるが、180°とは異なる角度であってもよい。
【0078】
また、以下の説明では、出力軸11に連結した便蓋2が全閉位置2Aに到達するときの出力軸11の回転位置を全閉回転位置11Aとし、便蓋2が全開位置2Bに到達するときの出力軸11の回転位置を全開回転位置11Bとする。第1ストッパ位置ST1から第2ストッパ位置ST2までの角度範囲(例えば、180°)は、全閉回転位置11Aから全開回転位置11Bまでの角度範囲(例えば、120°)を包含している。
図15では、全閉回転位置11Aの角度位置を0°とし、全開回転位置11Bの角度位置を120°とする。
【0079】
図15に示すように、出力軸11を第2ストッパ位置ST2から第1ストッパ位置ST1に向かう第1回転方向R1に回転させると、第1ストッパ位置ST1よりも手前で全開回転位置11Bに到達する。全開回転位置11Bからさらに第1回転方向R1に出力軸11を回転させると、第1ストッパ位置ST1で出力軸11の回転が阻止される。
【0080】
次に、出力軸11を第1回転方向R1とは逆向きの第2回転方向R2に回転させると、第2ストッパ位置ST2よりも手前で全閉回転位置11Aに到達する。全閉回転位置11Aからさらに第2回転方向R2に出力軸11を回転させると、第2ストッパ位置ST2で出力軸11の回転が阻止される。
【0081】
図15に示すように、歯車本体部52と回転角度位置検出用歯車部24とが基準噛合状態Tで噛合している場合、全閉回転位置11Aから全開回転位置11Bまでの範囲では、回転角度位置検出用歯車部24の第1有歯部91は、ポテンショギア39の歯車本体部52に設けられた第2有歯部95と噛合している。ここで、全開回転位置11Bからさらに出力軸11が第1回転方向R1に回転すると、全開回転位置11Bと第1ストッパ位置ST1との間の第1空転開始位置11Cに到達する。第1空転開始位置11Cでは、回転角度位置検出用歯車部24の第1有歯部91と、歯車本体部52の第2有歯部95との噛み
合いが外れている。また、第1無歯部92が第1空間93から外れており、第2無歯部96も第2空間97から外れている。従って、第1空転開始位置11Cから第1ストッパ位置ST1までの角度範囲は、ポテンショギア39は回転することなく出力軸11が空転する第1空転領域SP1である。
図15では、第1空転開始位置11Cの角度位置が150°である場合を示す。
【0082】
第1空転領域SP1では歯車本体部52と回転角度位置検出用歯車部24との噛み合いが完全に外れてしまうが、ここから回転方向を反転させて出力軸11を第2回転方向R2に回転させると、第1無歯部92が第1空間93に進入するとともに、第2無歯部96が第2空間97に進入して、第1有歯部91と第2有歯部95との噛み合いが始まる。このとき、基準噛合状態Tとなるように噛み合いが始まる。
【0083】
ここで、仮に、歯車本体部52と回転角度位置検出用歯車部24とを噛み合わせる際、第1有歯部91と第2有歯部95とが周方向にずれて噛み合ってしまった場合でも、ずれが歯1つ分程度であれば、第1ストッパ位置ST1に到達するまでの間に、歯車本体部52と回転角度位置検出用歯車部24との噛み合いが必ず外れる。従って、噛み合いが外れてから、出力軸11を第2回転方向R2に回転する動作を行えば、上記と同様に、基準噛合状態Tとなるように噛み合いが始まる。
【0084】
本形態では、ポテンショメータ15を出力軸11に接続するとき、噛み合いが外れるまで歯車本体部52と回転角度位置検出用歯車部24を第1回転方向R1に回転させた状態、具体的には、
図15に示す第1空転開始位置11Cから第1ストッパ位置ST1までの範囲内の状態となるように、ポテンショギア39と出力軸11の回転位置を合わせてから組み付ける。例えば、ポテンショギア39の突起部59(当接部)を第2ケース62に設けた被当接部60に当接させて、ポテンショギア39を上述した目標回転位置39Aに位置決めするとともに、治具を用いて出力軸11を第1空転開始位置11Cから第1ストッパ位置ST1までの範囲の位置に位置決めしてから、第2ケース62と第3ケース63とを結合する。しかる後に、第1ストッパ位置ST1まで第1回転方向R1に出力軸11を回転させてから、第2回転方向R2に回転させる反転動作を行えば、基準噛合状態Tとなるように噛み合いが始まる。
【0085】
ここで、突起部59が被当接部60に当たるまでポテンショギア39を回転させて位置決めしても、第2ケース62と第3ケース63とを結合する作業の途中で第2ケース62が傾くなどして、ポテンショギア39の回転位置が少しずれてしまうおそれがある。その場合でも、ずれが歯1つ分程度であれば、組み付け後に第1ストッパ位置ST1まで第1回転方向に回転させてから第2回転方向R2に回転させる反転動作を行えば、上記と同様に、基準噛合状態Tとなるように噛み合いが始まる。
【0086】
(開閉ユニットの動作)
外部の機器からコネクタ45および基板14を介してモータ12に電力が供給されると、モータ出力軸18は、正方向、または、逆方向に回転する。モータ出力軸18の回転は、輪列機構13を介して出力軸11に伝達される。出力軸11が回転すると、ポテンショメータ15からは、出力軸11の回転角度位置に対応する回転角度位置信号が出力される。回転角度位置信号は、コネクタ45を介して外部の機器に入力される。外部の機器は、回転角度位置信号に基づいて、モータ12を駆動制御して出力軸11を所定角度で回転させる。これにより、出力軸11の接続部22に接続された便蓋2は、出力軸11の軸線L1回りを全閉位置2Aから全開位置2B、または、全開位置2Bから全閉位置2Aに移動する。
【0087】
(本発明の主な作用効果)
以上のように、本形態の開閉ユニット1は、開閉部材として便蓋2を備え、便蓋2を駆動する開閉部材駆動装置3を有する。開閉部材駆動装置3は、便蓋2が接続される接続部22、および歯車部23を備える出力軸11と、モータ12と、モータ12の回転を歯車部23に伝達する輪列機構13と、モータ12、輪列機構13、並びに出力軸11の歯車部23を収容するとともに、出力軸11を貫通させて接続部22を外部に露出させる開口部10aを有するケース10と、を有する。ケース10は、モータ12を収容する第1ケース61と、第1ケース61に第2方向X2から重なるとともにケース10内を出力軸11の軸線方向Xと交差する方向に延びる隔壁部55が設けられた第2ケース62と、開口部10aが設けられ第2ケース62に第2方向X2から重なる第3ケース63と、を備える。輪列機構13は、モータ12の側方を軸線方向Xに平行に延びる第1シャフト28および第2シャフト29と、第1シャフト28に回転可能に支持された第2複合歯車31(第1歯車)と、第2複合歯車31(第1歯車)の第2方向X2において第1シャフト28に回転可能に支持された第3複合歯車32(第2歯車)と、第2シャフト29に回転可能に支持された第5複合歯車34(第3歯車)と、を備える。第2複合歯車31(第1歯車)、第3複合歯車32(第2歯車)、および第5複合歯車34(第3歯車)は、大径歯車部分および大径歯車部分よりも小径の小径歯車部分を備える複合歯車である。モータ12の回転は、第2複合歯車31(第1歯車)、第5複合歯車34(第3歯車)、第3複合歯車32(第2歯車)の順に伝達される。第1シャフト28および第2シャフト29は、隔壁部55を貫通して第3ケース63内に延びており、第3ケース63は、第1シャフト28の一端が圧入される第1軸圧入部88と、第2シャフト29の一端が圧入される第2軸圧入部89を備える。第1ケース61は、第1シャフト28の他端が保持される第1軸保持部67と、第2シャフト29の他端が保持される第2軸保持部68を備える。第1軸圧入部88は、第1軸保持部67よりも軸線方向Xの長さが長く、第2軸圧入部89は、第2軸保持部68よりも軸線方向Xの長さが長い。
【0088】
本形態によれば、輪列機構13の歯車は、出力軸11の軸線方向Xに延びる2本のシャフトに交互に取り付けられているので、軸線方向Xから見た輪列機構13の配置スペースが小さい。また、収容する部品点数が多いモータ12側のケース10(第1ケース61)でなく、収容する部品点数が少ない出力軸11側のケース10(第3ケース63)に軸線方向Xの長さが長い軸圧入部(第1軸圧入部88、第2軸圧入部89)を設けるので、第1ケース61側に設ける軸保持部(第1軸保持部67、第2軸保持部68)の長さを短くできる。従って、収容する部品点数が多い第1ケース61内のスペース不足を緩和できる。さらに、輪列機構13を組み立てる際、第3ケース63に対して2本のシャフトを圧入して、その後に出力軸11の側から順に輪列機構13の歯車をシャフトに取り付け、最後にモータ12を輪列機構13に接続して、第1ケース61をモータ12および輪列機構13に被せる順序で組み立てることができる。従って、組立後の輪列機構13の歯車が噛合する箇所にグリスを塗布する際、輪列機構13に容易にアクセスすることができるので、グリス塗布作業が容易である。
【0089】
本形態では、輪列機構13は、第5複合歯車34(第3歯車)の第2方向X2において第2シャフト29に回転可能に支持された第6複合歯車35(第4歯車)を備え、第2複合歯車31(第1歯車)、第3複合歯車32(第2歯車)の大径歯車部分32aおよび第5複合歯車34(第3歯車)は、隔壁部55の第1方向X1に位置し、第6複合歯車35(第4歯車)、第3複合歯車32(第2歯車)の小径歯車部分32bおよび出力軸11は、隔壁部55の第2方向X2に位置する。従って、ケース10内が隔壁部55によって区画される場合でも、モータ12の回転を出力軸11に伝達できる。
【0090】
本形態では、第1ケース61は、軸線方向Xと交差する方向に延びる第1板部65と、第1板部65の外周縁から第2方向X2に延びる第1周壁部66と、を備える。第2ケース62は、第1周壁部66と軸線方向Xに当接する第2周壁部74を備える。第3ケース
63は、軸線方向Xと交差する方向に延びる第3板部86と、第3板部86の外周縁から第1方向X1に延びる第3周壁部87と、を備える。第1周壁部66に設けられた第1ねじ固定部72、および第2周壁部74に設けられた第2ねじ固定部73を軸線方向Xに貫通するねじ部材76の先端が第3周壁部87に設けられた第3ねじ固定部75にねじ止めされている。このように、3つのケース10を軸線方向Xに積層してから、最後に積層する第1ケース61の側から共通のねじ部材76によって3つのケース10を共締めして結合することにより、少ない本数のねじでケース10を組み立てることができ、ねじ固定の作業工数を削減できる。また、ねじ穴を設ける部分の配置スペースを削減できるので、ケース10内のスペース不足を緩和できる。
【0091】
本形態では、第1周壁部66と第3周壁部87の一方は、外周面に突起84が設けられ、第1周壁部66と第3周壁部87の他方は、第2周壁部74の外周側を経由して突起84まで延びて突起84に係止されるフック83を備える。このように、フック83による固定とねじ固定を兼用することにより、ケース10の組立作業を容易化できる。また、固定箇所の一部をフック83による固定にすることで、ねじの本数およびねじ穴を設けるスペースをさらに削減できる。従って、ケース10内のスペース不足をより緩和できるとともに、ねじ固定の作業工数を削減できる。
【0092】
本形態では、出力軸11の回転角度位置を検出するためのポテンショメータ15と、厚み方向を軸線方向Xに向けてモータ12と隔壁部55との間に配置され当該隔壁部55と隙間を開けて対向する基板14と、を有する。ポテンショメータ15は、基板14の隔壁部55に対向する基板表面14aに取り付けられた検出部38と、検出部38のギア接続部38aに接続されるポテンショギア39と、を備える。ポテンショギア39は、隔壁部55を貫通するポテンショギア用貫通孔80から隔壁部55の第2方向X2に突出して出力軸11に設けられた回転角度位置検出用歯車部24に噛合する。このように、出力軸11とポテンショメータ15の検出部38との間に隔壁部55を介在させることにより、出力軸11の歯車部23に塗布されたグリスがポテンショメータ15の検出部38に付着することを防止或いは抑制できる。また、隔壁部55を備える第2ケース62と基板14との間にポテンショメータ15を組み込んだユニットを組み立ててから、このユニットを出力軸11を組み付けた第3ケース63に対して被せる際、回転角度位置検出用歯車部24とポテンショギア39とを噛合させることができるので、ポテンショメータ15の組込が容易である。
【0093】
本形態では、第2ケース62は、隔壁部55から第1方向X1に突出する係止突起58を備え、係止突起58の先端に設けられた爪部58aに基板14の縁を係止することにより、隔壁部55に基板14が固定される。このような固定構造により、隔壁部55を備える第2ケース62と基板14との間にポテンショメータ15を組み込んだユニットを組み立てる際、隔壁部55に対して基板14を容易に固定することができる。
【0094】
本形態では、ポテンショギア39は、回転角度位置検出用歯車部24に噛合する歯車本体部52と、ギア接続部38aに嵌まる嵌合部51と、歯車本体部52と嵌合部51とを接続し隔壁部55を貫通するポテンショギア用貫通孔80に通されるポテンショギア軸部53と、を備える。ポテンショギア軸部53は、隔壁部55におけるポテンショギア用貫通孔80の縁に設けられた被当接部60に対して周方向に当接可能な突起部59(当接部)を備える。このように、ポテンショギア39と隔壁部55との間に周方向の度当たり部を設けることにより、ポテンショギア39と回転角度位置検出用歯車部24とが噛合する箇所を目視で確認しながら組み立てることが難しい場合でも、ポテンショギア39と回転角度位置検出用歯車部24とが予め決められた回転位置で噛み合う基準噛合状態Tに組み立てることができる。また、突起部59と被当接部60とを物理的に当接させて位置決めするため、組立作業中に当接箇所を目視で確認できない場合でも、ポテンショギア39の
回転位置が目標回転位置39Aから大きく位置ずれしにくい。従って、ポテンショギア39と回転角度位置検出用歯車部24とが周方向で大きくずれた状態に組み込まれるおそれを少なくできる。
【0095】
本形態では、モータ12は、第2方向X2に突出する一対のモータ端子19を備え、基板14は、一対のモータ端子用貫通孔41と、モータ12に電力を供給するための第1配線パターン42と、検出部38に電力を供給するとともに当該ポテンショメータ15からの信号を外部に取り出すための第2配線パターン43と、を備える。一対のモータ端子19は、一対のモータ端子用貫通孔41を貫通した状態で第1配線パターン42に接続され、基板14は、第1シャフト28および第3複合歯車32(第2歯車)の小径歯車部分32bを貫通させる基板側第1貫通部47と、第2シャフト29を貫通させる基板側第2貫通部48と、を備える。従って、ポテンショメータ15の検出部38が取り付けられた基板14を、モータ12に給電を行うための基板14と共用できる。また、基板14が存在していても、モータ12の回転を、出力軸11に伝達することができる。
【0096】
(変形例)
(1)輪列機構13を構成する複合歯車の数は、上記形態と異なっていてもよい。例えば、上記形態の輪列機構13は、第1シャフト28の最も第1方向X1に支持される第2複合歯車31とモータピニオン20との間に第1複合歯車用シャフト27に支持される第1複合歯車26が介在するが、第1複合歯車用シャフト27と第1複合歯車26を省略し、第2複合歯車31とモータピニオン20とが直接噛合するように構成してもよい。
【0097】
(2)上記形態のケース10は、フック83および突起84により軸線方向Xの両端のケースを結合する構造と、ねじ部材76により3つのケース部材を共締めして結合する構造とを併用しているが、フック83および突起84による係止構造を廃止し、ねじ部材による結合構造を2か所から3箇所に増やしてもよい。あるいは、フックおよび突起による結合構造を2箇所以上とし、ねじによる結合構造を1箇所にしてもよい。
【0098】
(3)周方向の度当たりを設けてポテンショギア39を位置決めする構造は、本形態と異なる構造であってもよい。例えば、フランジ部54と隔壁部55の一方に周方向に延びる溝部を設け、フランジ部54と隔壁部55の他方に溝部に嵌まる突起部を設ける構造であってもよい。この場合には、突起部が当接部または被当接部となり、溝部の周方向の一端部の内面が被当接部または当接部となるので、ポテンショギア39を目標回転位置39Aに位置決めすることができる。
【0099】
(4)開閉ユニット1の変形例として、開閉部材駆動装置3により駆動される開閉部材を、便蓋2でなく便座5としてもよい。あるいは、トイレユニット6とは異なる機器において各種の開閉部材を駆動するために開閉部材駆動装置3を用いることができる。
【符号の説明】
【0100】
1…開閉ユニット、2…便蓋、2A…全閉位置、2B…全開位置、3…開閉部材駆動装置、4…便器本体、5…便座、6…トイレユニット、10…ケース、10a…開口部、10b…コネクタ用開口部、11…出力軸、11A…全閉回転位置、11B…全開回転位置、11C…第1空転開始位置、12…モータ、13…輪列機構、14…基板、14a…基板表面、14b…基板裏面、15…ポテンショメータ、17…モータ本体、18…モータ出力軸、19…モータ端子、20…モータピニオン、22…接続部、23…歯車部、24…回転角度位置検出用歯車部、25…ストッパ部、26…第1複合歯車、26a…大径歯車部分、26b…小径歯車部分、27…第1複合歯車用シャフト、28…第1シャフト、29…第2シャフト、31…第2複合歯車(第1歯車)、31a…大径歯車部分、31b…小径歯車部分、32…第3複合歯車(第2歯車)、32a…大径歯車部分、32b…小径
歯車部分、32c…円柱部、33…第4複合歯車、33a…大径歯車部分、33b…小径歯車部分、34…第5複合歯車(第3歯車)、34a…大径歯車部分、34b…小径歯車部分、34c…円柱部、35…第6複合歯車(第4歯車)、35a…大径歯車部分、35b…小径歯車部分、37…トルクリミッタ、38…検出部、38a…ギア接続部、39…ポテンショギア、39A…目標回転位置、41…モータ端子用貫通孔、42…第1配線パターン、43…第2配線パターン、45…コネクタ、46…係止孔、47…基板側第1貫通部、48…基板側第2貫通部、49…位置決め孔、51…嵌合部、52…歯車本体部、53…ポテンショギア軸部、54…フランジ部、55…隔壁部、56…リブ、57…位置決め突起、58…係止突起、58a…爪部、59…突起部(当接部)、60…被当接部、61…第1ケース、62…第2ケース、63…第3ケース、64…ねじ部材、65…第1板部、66…第1周壁部、67…第1軸保持部、68…第2軸保持部、69…第3軸保持部、70…凹部、71…支持部材、72…第1ねじ固定部、73…第2ねじ固定部、74…第2周壁部、75…第3ねじ固定部、76…ねじ部材、77…出力軸支持部、78…隔壁部側第1貫通孔、79…隔壁部側第2貫通孔、80…ポテンショギア用貫通孔、81…カバー部、82…開口、83…フック、84…突起、85…環状凹部、86…第3板部、87…第3周壁部、88…第1軸圧入部、89…第2軸圧入部、91…第1有歯部、92…第1無歯部、92a…第1円弧状外周面、93…第1空間、94…小径部、94a…第3円弧状外周面、95…第2有歯部、96…第2無歯部、97…第2空間、98…第3無歯部、98a…第2円弧状外周面、C…隙間、H…回転軸、L1…出力軸の軸線、L2…モータ出力軸の軸線、Q1…第1寸法、Q2…第2寸法、Q3…第3寸法、Q4…第4寸法、Q5…第5寸法、R1…第1回転方向、R2…第2回転方向、SP1…第1空転領域、ST1…第1ストッパ位置(第1回転位置)、ST2…第2ストッパ位置(第2回転位置)、T…基準噛合状態、X…軸線方向、X1…第1方向、X2…第2方向