(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073810
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】産業車両の操舵装置
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20240523BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20240523BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20240523BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D6/00
B62D101:00
B62D113:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184717
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100192511
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】和田 研一
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC03
3D232CC20
3D232DA04
3D232DA24
3D232DA63
3D232DA78
3D232DA84
3D232DA88
3D232DA90
3D232EA01
3D232EB04
3D232EC22
3D232EC34
3D232GG04
3D333CB04
3D333CB12
3D333CB38
3D333CC13
3D333CC18
3D333CD05
3D333CE49
3D333CE55
(57)【要約】
【課題】より単純な構成で且つより確実に、産業車両が手動操舵状態であるときに手動操舵の操舵力がモータの連れ回りで重くなることを抑制することができる産業車両の操舵装置を提供する。
【解決手段】産業車両の操舵装置100は、自動操舵状態と手動操舵状態とを切り替え可能に構成されている。産業車両の操舵装置100は、産業車両の操舵輪の操向に応じて回動する操舵軸21と、ステアリング操作部の手動操作に応じて操舵軸21を回動させる手動操舵部20と、モータの動作に応じて回転する第1ギア31が操舵軸21側に設けられた第2ギア32を駆動することで操舵軸21を回動させる自動操舵部30と、第1ギア31と第2ギア32とが互いに噛み合う噛合位置P1と、第1ギア31と第2ギア32とが離間した空転位置P2と、の間で第1ギア31及び第2ギア32の少なくとも一方の回転軸の位置を移動可能に構成された回転軸移動部40と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動操舵状態と手動操舵状態とを切り替え可能に構成された産業車両の操舵装置であって、
前記産業車両の操舵輪の操向に応じて回動する操舵軸と、
ステアリング操作部の手動操作に応じて前記操舵軸を回動させる手動操舵部と、
モータの動作に応じて回転する第1ギアが前記操舵軸側に設けられた第2ギアを駆動することで前記操舵軸を回動させる自動操舵部と、
前記第1ギアと前記第2ギアとが互いに噛み合う噛合位置と、前記第1ギアと前記第2ギアとが離間した空転位置と、の間で前記第1ギア及び前記第2ギアの少なくとも一方の回転軸の位置を移動可能に構成された回転軸移動部と、を備える、産業車両の操舵装置。
【請求項2】
前記回転軸移動部は、前記第2ギアに対して前記第1ギアが進退可能に前記回転軸をスライドさせるスライド機構と、前記第1ギアを前記第2ギアに近付ける油圧シリンダと、前記第1ギアを前記第2ギアから遠ざける弾性部材と、を有する、請求項1に記載の産業車両の操舵装置。
【請求項3】
前記手動操舵部は、前記操舵軸と共に回動する突当部材と、前記突当部材が突き当たることで前記操舵軸の回動範囲を規定する受け部材と、を有し、
前記回転軸移動部は、前記産業車両が前記手動操舵の状態となっている場合に前記空転位置に前記回転軸の位置を移動させる、請求項1又は2に記載の産業車両の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両の操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールに直結された手動操舵系と、電動モータに直結された自動操舵系と、の2系統の切り替えを行うステアリング用切り替え機構が知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載の機構では、自動操舵系にクラッチ機構を介在させることで、手動操舵する際に自動操舵系を構成するギヤ群及び電動モータが空転するようにし、手動操舵の操舵操作が重くなることの抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のように自動操舵系にクラッチ機構を介在させる構成では、クラッチ機構が確実に動作することが要され、操舵装置が複雑化する傾向がある。そこで、より単純な構成で且つより確実に、産業車両が手動操舵状態であるときに手動操舵の操舵力がモータの連れ回りで重くなることを抑制することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る産業車両の操舵装置は、自動操舵状態と手動操舵状態とを切り替え可能に構成されており、産業車両の操舵輪の操向に応じて回動する操舵軸と、ステアリング操作部の手動操作に応じて操舵軸を回動させる手動操舵部と、モータの動作に応じて回転する第1ギアが操舵軸側に設けられた第2ギアを駆動することで操舵軸を回動させる自動操舵部と、第1ギアと第2ギアとが互いに噛み合う噛合位置と、第1ギアと第2ギアとが離間した空転位置と、の間で第1ギア及び第2ギアの少なくとも一方の回転軸の位置を移動可能に構成された回転軸移動部と、を備える。
【0006】
本発明の一態様に係る産業車両の操舵装置によれば、回転軸移動部により、第1ギア及び第2ギアの少なくとも一方の回転軸の位置が噛合位置と空転位置との間で移動可能に構成されている。回転軸の位置が噛合位置となるように回転軸を移動させることで、例えば産業車両が自動操舵状態であるときに第1ギア及び第2ギアを介してモータの動作が操舵軸に伝達され、自動操舵が実現される。一方、回転軸の位置が空転位置となるように回転軸を移動させることで、例えば産業車両が手動操舵状態であるときに手動操舵の操舵力が第2ギアから第1ギアへと入力されることがなくなる。これにより、例えばクラッチ機構を自動操舵部に介在させる構成と比べて、より単純な構成で且つより確実に、産業車両が手動操舵状態であるときに手動操舵の操舵力がモータの連れ回りで重くなることを抑制可能となる。
【0007】
上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、回転軸移動部は、第2ギアに対して第1ギアが進退可能に回転軸をスライドさせるスライド機構と、第1ギアを第2ギアに近付ける油圧シリンダと、第1ギアを第2ギアから遠ざける弾性部材と、を有してもよい。
【0008】
一実施形態において、手動操舵部は、操舵軸と共に回動する突当部材と、突当部材が突き当たることで操舵軸の回動範囲を規定する受け部材と、を有し、回転軸移動部は、産業車両が手動操舵の状態となっている場合に空転位置に回転軸の位置を移動させてもよい。この場合、仮に突当部材が受け部材に突き当たると手動操舵部に衝撃荷重が発生するような構造であっても、回転軸の位置が空転位置となるように回転軸を移動させることで、手動操舵で生じた衝撃荷重が第2ギアから第1ギアへと入力されることがなくなる。これにより、衝撃荷重に備えて第1ギア及び第2ギアを補強することが不要となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、より単純な構成で且つより確実に、産業車両が手動操舵状態であるときに手動操舵の操舵力がモータの連れ回りで重くなることを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る産業車両の操舵装置が適用された例示的な産業車両の側面図である。
【
図2】
図1の産業車両の操舵装置を車両左方側面視で示す一部断面図である。
【
図3】
図1の産業車両の操舵装置を車両後方視で示す一部断面図である。
【
図4】手動操舵部の突当部材及び受け部材を斜視で示す一部断面図である。
【
図5】回転軸移動部の構成を平面視で示す一部断面図である。
【
図6】回転軸移動部の動作例を平面視で示す一部断面図である。
【
図7】
図1の産業車両の操舵装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図8】
図7のコントローラの処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。以下の説明において、「前後」は産業車両の前後方向に対応し、「前」が図中の「FR」に対応する。「左右」は産業車両の車幅方向に対応し、「右」が図中の「RH」に対応する。「上下」は、産業車両の高さ方向に対応し、「上」が図中の「UP」に対応する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る産業車両の操舵装置が適用された例示的な産業車両の側面図である。産業車両10は、自動操舵状態と手動操舵状態とを切り替え可能に構成されている。自動操舵状態とは、産業車両10に乗車した作業者の操舵操作を要することなく産業車両10が自動で操舵して走行可能な状態である。自動操舵状態では、作業車が産業車両10に乗車していてもよいし、乗車していなくてもよい。手動操舵状態とは、産業車両10に乗車した作業者の操舵操作に応じて産業車両10が操舵して走行する状態である。
【0013】
図1に示されるように、産業車両10は、運転席2、フロントフレーム3、及びリアフレーム4を含む車体1を備えている。運転席2は、例えば、産業車両10の前後方向の中央部に設けられている。フロントフレーム3は、運転席2よりも前方に設けられた骨格及び外装パネル3aを含む。リアフレーム4は、運転席2の後方に設けられた骨格及び外装パネル4aを含む。運転席2は、リアフレーム4の前端部に載置されている。リアフレーム4の後端中央部には、被牽引車である台車を牽引するための牽引機構(図示省略)が設けられている。牽引機構は、運転席2に着座する作業者が操作するレバーを操作することで、台車との接続又は切離しをすることが可能である。
【0014】
車体1の前部の下部中央には、操舵輪5が設けられている。車体1の後部の左右両側には、一対の駆動輪6が設けられている。運転席2の後方のリアフレーム4の内部には、走行用バッテリを含む電源ユニット7と走行用モータ(図示省略)とが搭載されている。走行用モータは、走行用バッテリの電力が供給されて駆動輪6を駆動する。つまり、産業車両10は、バッテリ式の電動牽引車として構成されている。
【0015】
ここでの産業車両10は、自動操舵の制御のための各種センサ等の構成を備えている。駆動輪6には、産業車両10の速度を検出する車速センサ51が設けられている。車速センサ51は、駆動輪6と一体に回転するシャフト等に対して設けられていてもよい。車速センサ51は、車速センサ51の検出結果の信号を後述のコントローラ50に送信する。
【0016】
フロントフレーム3の前端の中央部には、産業車両10の前方の物体検知のための前方レーダセンサ11が設けられている。前方レーダセンサ11は、電波(例えばミリ波)又は光を利用して産業車両10の前方の物体を検出する検出機器である。前方レーダセンサ11は、例えば、ミリ波レーダであってもよい。
【0017】
フロントフレーム3の前端の左右端部には、ガイドテープ検知のための前方ガイドセンサ12が設けられている。前方ガイドセンサ12は、走行経路に設けられたガイドテープの位置を検知する。前方レーダセンサ11及び前方ガイドセンサ12は、フロントフレーム3の前端に取り付けられるバンパー8に設けられていてもよい。
【0018】
リアフレーム4の後端の左右端部には、ガイドテープ検知のための後方ガイドセンサ13が設けられている。後方ガイドセンサ13は、走行経路に設けられたガイドテープの位置を検知する。
【0019】
リアフレーム4の後端には、例えば矩形枠状の門柱部材9が設けられている。門柱部材9の上部には、産業車両10の周囲の物体検知のためのライダー14[LiDAR:Light Detection And Ranging]が設けられている。ライダー14は、光を利用して産業車両10の周辺の物体を検出する検出機器である。ライダー14は、光を産業車両10の周辺に送信し、物体で反射された光を受信することで物体を検出する。ライダー14は、2Dライダーであってもよいし、3Dライダーであってもよい。
【0020】
リアフレーム4の運転席2の背後には、コントローラ50が固定されている。コントローラ50は、自動操舵を含む自動運転制御を統括する電子制御ユニットである。コントローラ50は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する。コントローラ50では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。コントローラ50は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。
【0021】
コントローラ50は、産業車両10が使用される場所の地図情報を記憶するデータベースを有していてもよい。地図情報は、棚等の固定構造物に予め設定された所定位置をランドマーク情報として含んでもよい。コントローラ50は、地図情報に含まれたランドマーク情報の位置及びライダー14の検出結果を利用して、SLAM[Simultaneous Localization and Mapping]技術等により産業車両10の位置認識を精度良く行ってもよい。コントローラ50は、産業車両10の自動運転に利用される進路を生成する。コントローラ50は、予め設定された、地図情報、認識した産業車両10の位置、産業車両10の走行状態(車速等)、及び、ライダー14で認識した周辺の環境に基づいて、種々の手法により、自動運転の進路を生成する。コントローラ50は、認識した産業車両10の位置、産業車両10の走行状態、ライダー14で認識した周辺の環境、及び、生成した進路に基づいて、産業車両10の自動運転を実行することができる。コントローラ50は、生成した進路に沿って産業車両10が走行するように、走行用モータを制御すると共に、自動で操舵輪5を操向させる自動操舵を行う。
【0022】
コントローラ50は、前方ガイドセンサ12及び後方ガイドセンサ13を用いて、走行経路に設けられたガイドテープの位置情報に基づいて、生成した進路を用いずに自動運転を行ってもよい。コントローラ50は、前方ガイドセンサ12及び後方ガイドセンサ13で検出したガイドテープと産業車両10との位置ずれ量に基づいて、後述の操舵用モータ(モータ)33を制御して操舵輪5を操舵する。ガイドテープは、例えば磁気テープである。
【0023】
図2は、
図1の産業車両の操舵装置を車両左方側面視で示す一部断面図である。
図3は、
図1の産業車両の操舵装置を車両後方視で示す一部断面図である。
図1~
図3に示されるように、産業車両の操舵装置100は、ステアリングホイール15の手動操作に応じて操舵軸21を回動させる手動操舵部20を備えている。
【0024】
運転席2には、乗車した作業者が操舵操作を行うためのステアリングホイール(ステアリング操作部)15が設けられている。乗車した作業者がステアリングホイール15を回転させる操舵操作を行うと、ステアリングホイール15の回転に応じて操舵輪5が操向される。
【0025】
より詳しくは、フロントフレーム3には、運転席2に着座する作業者に向かってステアリングコラム16が立設されている。ステアリングホイール15は、ステアリングコラム16に内装されたステアリングシャフト17の上端部と連結されている。ステアリングシャフト17の下端部17aは、フロントフレーム3の床面3bに設けられた軸受17bによって、床面3bに直交するように回転可能に軸支されている。ステアリングシャフト17の下端部17aには、第1スプロケット22aが固定されている。第1スプロケット22aは、ステアリングシャフト17と一体的に回転する。
【0026】
図2及び
図3に示されるように、第1スプロケット22aの左後方には中間シャフト23、第2スプロケット22b及び第3スプロケット24aが配置されている。中間シャフト23は、ステアリングシャフト17からの回転を中継して操舵軸21に伝えるシャフトである。中間シャフト23の下端部23aは、床面3bに設けられた軸受23bによって、床面3bに直交するように回転可能に軸支されている。中間シャフト23には、車両上側から順に第2スプロケット22b及び第3スプロケット24aが固定されている。第2スプロケット22b及び第3スプロケット24aは、中間シャフト23と共に一体的に回転する。
【0027】
図3に示されるように、ステアリングシャフト17の後方には、操舵軸21及びケース25が配置されている。操舵軸21は、産業車両10の操舵輪5の操向に応じて回動するシャフトである。操舵軸21は、ステアリングシャフト17からの操舵力、及び、後述の操舵用モータ33からの操舵力の少なくともいずれかの操舵力を受ける。操舵軸21は、例えば、ステアリングシャフト17の後方に床面3bと直交するように車両上下方向に延在している。操舵軸21の下端部21aは、床面3bに設けられた軸受21bによって、床面3bに直交するように回転可能に軸支されている。操舵軸21には、車両上側から順に第2ギア32(後述)及び第4スプロケット24bが固定されている。第2ギア32及び第4スプロケット24bは、操舵軸21と共に一体的に回転する。
【0028】
操舵軸21の下方には、操舵輪5が配置されている。操舵輪5は、一対のタイヤ5aと操舵アクスル5bとを有している。操舵アクスル5bは、その両端部において一対のタイヤ5aをタイヤ5aの中心軸周りに回転可能に軸支する。操舵アクスル5bの中央部には、操舵軸21の下端部21aが連結部材26を介して固定されている。操舵アクスル5bは、操舵軸21と直交する水平面内を操舵軸21の回転に応じて回転する。つまり、操舵軸21は、産業車両10の操舵輪5の操向に応じて回動する。
【0029】
図4は、手動操舵部の突当部材及び受け部材を斜視で示す一部断面図である。
図4に示されるように、手動操舵部20は、突当部材28と受け部材29とを有している。突当部材28は、連結部材26の突出部27に設けられている。突出部27は、連結部材26から操舵軸21の径方向に突出するように設けられた部材である。突出部27の形状は、特に限定されないが、例えば矩形である。突出部27では、操舵軸21の径方向に操舵軸21と離間する位置に突当部材28が操舵軸21に沿って立設されている。よって、操舵軸21が回転すると、突当部材28が操舵軸21の外周に沿って回動する。
【0030】
突当部材28の一対の側端面28aに対応して、一対の受け部材29が床面3bの裏側に設けられている。なお、
図4において床面3bの図示は省略している。一対の受け部材29は、操舵輪5が直進状態であるときの突当部材28の位置を基準として、操舵軸21の回転角が操舵輪5の操舵角の上限値に対応する位置にそれぞれ設けられている。したがって、操舵軸21が操舵角の上限値まで回転すると、連結部材26及び突出部27が操舵軸21の軸周りに回転し、突当部材28のいずれかの側端面28aが受け部材29に突き当たって操舵軸21の回動が規制される。このように、突当部材28及び受け部材29は、操舵輪5の操舵角の上限値を規定するメカエンド機構として機能する。
【0031】
突出部27及び受け部材29の形状は、特に限定されない。突出部27の形状は、例えば板状であり、受け部材29の形状は、例えば直方体状である。突出部27及び受け部材29の形状及び取付け手法は、突出部27及び受け部材29が互いに突き当たる際の衝撃荷重に耐え得る構成であればよい。この衝撃荷重は、突出部27を介して操舵軸21に伝搬する。
【0032】
図5は、回転軸移動部の構成を平面視で示す一部断面図である。
図2、
図3、及び
図5に示されるように、ケース25は、操舵軸21及び後述の自動操舵部30を支持するための部材である。ケース25は、例えば、前後方向から見てコの字(Uの字)を呈するアーチ状に左右方向に延びている。ケース25は、中間シャフト23、第2スプロケット22b、第3スプロケット24a、第4スプロケット24b、第2ギア32、及び操舵軸21を覆っている。ケース25は、操舵軸21の上端部に対応して設けられた軸受部25aを有し、操舵軸21の上端部を回転可能に軸支している。ケース25の右端部には、操舵軸21に加わる負荷に応じて、操舵軸21を部分的に取り囲むように補強壁部25bが形成されていてもよい。ケース25は、例えば、アルミ等の金属製であり、鋳造等により成型することができる。
【0033】
第1スプロケット22a及び第2スプロケット22bには、第1チェーン22cが架け渡されている。第2スプロケット22bは、第1スプロケット22aよりも歯数が多い。よって、ステアリングシャフト17の回転は、減速されて中間シャフト23に伝達される。第3スプロケット24a及び第4スプロケット24bには、第2チェーン24cが架け渡されている。第4スプロケット24bは、第3スプロケット24aよりも歯数が多い。よって、中間シャフト23の回転は、減速されて操舵軸21に伝達される。
【0034】
以上のような手動操舵部20により、産業車両の操舵装置100では、運転席2に着座する作業者がステアリングホイール15の操舵操作(ステアリングホイール15の回転操作)をすることにより、ステアリングホイール15の回転が中間シャフト23を介して操舵軸21に伝達され、手動操舵による操舵輪5の操向が可能となっている。
【0035】
続いて、産業車両の操舵装置100の自動操舵に係る構成について説明する。産業車両の操舵装置100は、自動操舵状態(無人運転モード)と手動操舵状態(有人運転モード)とを切り替えるための構成として、運転切替スイッチ52を備えている。
図1に示されるように、運転切替スイッチ52は、例えば、ステアリングコラム16に設けられている(
図1参照)。運転切替スイッチ52は、自動操舵状態(無人運転モード)と手動操舵状態(有人運転モード)とのスイッチ状態を切り替える。運転切替スイッチ52は、作業車が操作するためのレバー部を含んでもよい。運転切替スイッチ52は、スイッチ状態の信号をコントローラ50に送信する。
【0036】
図2及び
図3に示されるように、産業車両の操舵装置100は、操舵用モータ33を用いた自動操舵を行う自動操舵部30を備えている。自動操舵部30は、操舵用モータ33と減速部34とを有している。操舵用モータ33は、コントローラ50に接続されている。操舵用モータ33は、自動操舵状態において自動操舵に関する制御信号を受信し、自動で操舵輪5を操向させるように回転を制御される。操舵用モータ33は、公知の操舵用のモータを用いることができる。減速部34は、一例として、一段目減速機34a及び二段目減速機34bを有している。一段目減速機34a及び二段目減速機34bについては、操舵用モータ33の回転数を所望の回転に減速できれば、種々の公知の構成を採用することができる。操舵用モータ33からの動力は、一段目減速機34a、二段目減速機34b、第1ギア31、及び第2ギア32の順で操舵軸21に伝達される。
【0037】
一段目減速機34aは、例えば、操舵用モータ33の出力軸側の小径ギアと、当該小径ギアに噛み合う大径ギア、小径ギア及び大径ギアを収容するケースと、含んでもよい。ここでの「小径」及び「大径」は、一段目減速機34aで用いられるギア同士の相対的な寸法を表している。
【0038】
二段目減速機34bは、例えば、遊星歯車機構であってもよい。二段目減速機34bは、例えば、入力軸であるサンギアと、固定軸である内歯車と、出力軸であるキャリアとを含む。サンギアには、一段目減速機34aの大径ギアの軸と同軸の入力軸が接続される。内歯車は、ケース25側に固定される。キャリアは、出力先である第1ギア31に固定される。
【0039】
第1ギア31と第2ギア32とは、互いに噛み合い可能な減速ギアである。ここでの第1ギア31及び第2ギア32は、例えば、平歯車又は斜歯歯車とされている。第1ギア31は、二段目減速機34bの遊星歯車機構のキャリアに例えばボルトで締結されている。第1ギア31の第1回転軸(回転軸)31aは、二段目減速機34bの遊星歯車機構と同軸となっている。第2ギア32は、操舵軸21に設けられている。ここでの第2ギア32は、操舵軸21に固定されている。第2ギア32は、例えば、操舵軸21に例えばキー又はスプラインによって嵌合されている。第2ギア32の第2回転軸32aは、操舵軸21と同軸となっている。したがって、ここでの第1回転軸31a及び第2回転軸32aは、例えば互いに平行となっている。
【0040】
以上のような自動操舵部30により、産業車両の操舵装置100では、コントローラ50の制御信号に応じて操舵用モータ33が回転することにより、操舵用モータ33の動作に応じて回転する第1ギア31が操舵軸21に設けられた第2ギア32を駆動することで操舵軸21を回動させ、自動操舵による操舵輪5の操向が可能となっている。
【0041】
なお、自動操舵部30は、自動操舵の制御のための操舵角センサ55,56が設けられている。操舵角センサ55は、操舵軸21側に設けられている(
図2参照)。操舵角センサ55は、例えば第2ギア32に噛み合うセンサギア55aによって操舵軸21の回転数を検出する。操舵角センサ56は、操舵用モータ33側に設けられている(
図6参照)。操舵角センサ56は、例えば第1ギア31に噛み合うセンサギア56aによって操舵軸21の回転数を検出する。コントローラ50は、操舵角センサ55,56の2つの検出結果を取得し、これらの比較により自動操舵部30の異常の有無を認識する。操舵角センサ55,56は、操舵軸21側に設けられていてもよい。
【0042】
ここで、産業車両10が手動操舵状態であるときに運転席2に着座する作業者がステアリングホイール15の操舵操作を行うと、手動操舵の操舵力が操舵軸21に伝達される。仮に比較例として、第2ギア32と操舵用モータ33とが常に動力伝達可能であると想定する場合、手動操舵の操舵力によって操舵軸21に固定された第2ギア32を介して操舵用モータ33が連れ回りし、作業者がステアリングホイール15を操作する力が重くなることとなる。また、突当部材28が受け部材29に突き当たることで手動操舵部20に発生する衝撃荷重について、仮に比較例として、第1ギア31と第2ギア32とが常に噛み合っていると想定する場合、この衝撃荷重に対する耐久性を第1ギア31及び第2ギア32が有するような設計強度が必要となることとなる。
【0043】
そこで、産業車両の操舵装置100は、産業車両10が手動操舵状態であるときに第1ギア31が第2ギア32に噛み合わないようにすることで、産業車両10が手動操舵状態であるときの操舵用モータ33の連れ回り及び衝撃荷重を抑制する。
【0044】
図6は、回転軸移動部の動作例を平面視で示す一部断面図である。
図5及び
図6に示されるように、産業車両の操舵装置100は、第1回転軸31a及び第2回転軸32aの少なくとも一方(ここでは第1回転軸31a)の位置を移動可能とする回転軸移動部40を備えている。回転軸移動部40は、噛合位置P1と空転位置P2との間で第1回転軸31aの位置を移動可能とする。
【0045】
噛合位置P1は、第1ギア31と第2ギア32とが互いに噛み合うような第1回転軸31a及び第2回転軸32aの位置関係を意味する。噛合位置P1では、第1ギア31と第2ギア32とが所定のバックラッシュを有して互いに噛み合っており、第1ギア31と第2ギア32とで動力伝達が可能となっている。空転位置P2は、第1ギア31と第2ギア32とが互いに離間して噛み合っていないような第1回転軸31a及び第2回転軸32aの位置関係を意味する。空転位置P2では、第1ギア31と第2ギア32とで動力伝達が不可能となっている。空転位置P2は、第1回転軸31aと第2回転軸32aとを結ぶ仮想直線41に沿って所定の直線距離で噛合位置P1から離れている。所定の直線距離は、第1ギア31の歯と第2ギア32の歯との噛み合い深さよりも大きい。
【0046】
一例として、回転軸移動部40は、第2ギア32に対して第1ギア31が進退可能に第1回転軸31aをスライドさせるスライド機構42を有する。スライド機構42は、仮想直線41上で第1回転軸31aの位置を移動させるための機構である。スライド機構42は、例えば、ケース25の上面25cに形成されたガイド凹部43と、ガイド凹部43に沿って移動するスライド部44と、を含む。ガイド凹部43は、仮想直線41に沿ってスライド部44がスライドするようにスライド部44を案内する。
【0047】
具体的には、ガイド凹部43は、例えば、仮想直線41と平行な一対のガイド壁部43aと、一対のガイド壁部43aの両端部を互いに接続する端壁部43bと、を含む。ガイド凹部43は、ガイド壁部43a及び端壁部43bで囲まれる領域で、例えば所定の深さで窪んでいる。
【0048】
一対のガイド壁部43aの延在長は、噛合位置P1から空転位置P2までの所定の直線距離に対応する。端壁部43bの平面形状は、噛合位置P1又は空転位置P2に位置するスライド部44の外周形状に応じた形状となっている。よって、ここでのガイド凹部43の凹みの平面形状は、長円状となっている。スライド部44の仮想直線41及び第1回転軸31aに直交する幅寸法(円柱の直径)は、ガイド壁部43a同士の離間距離未満であり、例えば離間距離よりもわずかに小さい。端壁部43bは、平面視でガイド壁部43a同士の離間距離を直径とする円弧状をなしている。
【0049】
スライド部44は、自動操舵部30における第1回転軸31a側の構成をスライド可能に支持するための部分である。スライド部44は、例えば、二段目減速機34bの遊星歯車機構の底部と兼用されていてもよい。スライド部44の形状は、二段目減速機34bの遊星歯車機構の底部と同じく、第1回転軸31aを中心とする円柱状である。スライド部44としては、二段目減速機34bの遊星歯車機構の底部とは別体の部材であってもよい。
【0050】
スライド部44は、ガイド凹部43に嵌まり込んだ状態でケース25の上面25cに対してスライド可能に取り付けられている。一例として、スライド機構42は、仮想直線41に沿ってケース25に設けられた一対の長円貫通孔45と、長円貫通孔45に挿通される締結部材46と、を含んでもよい。長円貫通孔45は、一対のガイド壁部43aの延在長と同等である。締結部材46は、スライド部44に対して、スライド部44がケース25の上面25cをスライド可能に螺合する。締結部材46は、例えば、スライド部44を完全には締め付けないような長さで雄ネジを切ったボルトとすることができる。
【0051】
このようなスライド機構42により、スライド部44である二段目減速機34bの遊星歯車機構は、ガイド凹部43に嵌まり込んだ状態でケース25の上面25cに対して仮想直線41に沿って移動可能となる。遊星歯車機構と同軸の第1回転軸31aの位置は、噛合位置P1と空転位置P2との間で移動可能となる。なお、
図6において、第1ギア31、第2ギア32、センサギア55a、及びセンサギア56aを表す円は、例えば歯の先端を結ぶ外周円であり、互いに噛み合うギアの円が交差するように図示されている。
【0052】
ここでの回転軸移動部40は、例えば、第1ギア31を第2ギア32に近付ける油圧シリンダ47と、第1ギア31を第2ギア32から遠ざける弾性部材48と、を有している。
【0053】
油圧シリンダ47は、スライド機構42に対して操舵軸21とは反対側に配置されている。油圧シリンダ47は、例えばスライド部44の操舵軸21とは反対側を押し出すようにスライド部44に取り付けられている。油圧シリンダ47には、産業車両10の油圧回路から油圧が供給される。例えば、コントローラ50は、産業車両10の停車中において運転切替スイッチ52が自動操舵状態に切り替えられた場合、産業車両10の油圧回路から油圧シリンダ47に油圧を供給するように、油圧回路の油圧弁を制御する。ここでの油圧回路の油圧弁は、回転軸移動部を構成する。油圧シリンダ47は、スライド部44を押すことでスライド部44を操舵軸21に向かってスライドさせる。これにより、第2ギア32に対して第1ギア31が進行する。つまり、回転軸移動部40は、第1回転軸31aの位置を噛合位置P1に移動させ、第1ギア31と第2ギア32とで動力伝達を可能とする。
【0054】
弾性部材48は、スライド機構42に対して操舵軸21側に配置されている。弾性部材48は、例えば、スライド部44の操舵軸21側を押圧するように一端部がスライド部44に取り付けられ、他端部がケース25側の突起25dに支持された圧縮コイルバネである。上記油圧シリンダ47に油圧が供給されなくなると、弾性部材48の押圧力によって油圧シリンダ47の作動油が産業車両10の油圧回路に解放される。例えば、コントローラ50は、産業車両10の停車中において運転切替スイッチ52が手動操舵状態に切り替えられた場合、油圧シリンダ47に油圧を供給しないように、油圧回路の油圧弁を制御する。弾性部材48は、スライド部44を押すことでスライド部44を操舵軸21から遠ざかるようにスライドさせる。油圧シリンダ47は、スライド部44から押し返される。これにより、第2ギア32に対して第1ギア31が退出する。つまり、回転軸移動部40は、第1回転軸31aの位置を空転位置P2に移動させ、第1ギア31と第2ギア32とで動力伝達を不可能とする。
【0055】
図7は、
図1の産業車両の操舵装置の機能的構成を示すブロック図である。
図7に示されるように、コントローラ50は、車速センサ51、運転切替スイッチ52、及び回転軸移動部40と接続されている。コントローラ50は、機能的構成として、運転状態認識部53及び操舵制御部54を有している。
【0056】
運転状態認識部53は、車速センサ51の検出結果に基づいて、産業車両10の車速を取得する。運転状態認識部53は、例えば、産業車両10の車速が所定の停止判定車速以下である場合に産業車両10が停車中であると認識する。運転状態認識部53は、運転切替スイッチ52のスイッチ状態に基づいて、産業車両の操舵装置100の状態が自動操舵状態(無人運転モード)と手動操舵状態(有人運転モード)とのいずれであるかを認識する。
【0057】
操舵制御部54は、運転状態認識部53の認識結果に基づいて、噛合位置P1と空転位置P2との間で第1回転軸31aの位置を移動させるように回転軸移動部40を制御する。操舵制御部54は、例えば、産業車両10が停車中であると認識された場合において産業車両の操舵装置100の状態が自動操舵状態であると認識された場合、産業車両10の油圧回路から油圧シリンダ47に油圧を供給するように回転軸移動部40を制御する。操舵制御部54は、例えば、産業車両10が停車中であると認識された場合において産業車両の操舵装置100の状態が手動操舵状態であると認識された場合、産業車両10の油圧回路から油圧シリンダ47に油圧を供給しないように回転軸移動部40を制御する。
【0058】
図8は、
図7のコントローラの処理例を示すフローチャートである。
図7に示されるフローチャートの処理は、例えば、産業車両10が停車中であると認識された場合に、所定の演算周期ごとに繰り返し実行される。
【0059】
S01において、産業車両の操舵装置100のコントローラ50は、運転状態認識部53により、車速の取得を行う。S02において、コントローラ50は、運転状態認識部53により、スイッチ状態の取得を行う。
【0060】
S03において、コントローラ50は、操舵制御部54により、自動操舵状態であるか否かの判定を行う。自動操舵状態であると判定された場合(S03:YES)、コントローラ50は、S04において、操舵制御部54により、第1回転軸31aの位置を噛合位置P1に移動させるように、回転軸移動部40を制御する。一方、産業車両10が手動操舵状態であると判定された場合(S03:NO)、コントローラ50は、S05において、操舵制御部54により、第1回転軸31aの位置を空転位置P2に移動させるように、回転軸移動部40を制御する。その後、コントローラ50は、
図8の演算処理を終了する。
【0061】
[作用効果]
以上説明したように、産業車両の操舵装置100によれば、回転軸移動部40により、第1回転軸31aの位置が噛合位置P1と空転位置P2との間で移動可能に構成されている。第1回転軸31aの位置が噛合位置P1となるように第1回転軸31aを移動させることで、例えば産業車両10が自動操舵状態であるときに第1ギア31及び第2ギア32を介して操舵用モータ33の動作が操舵軸21に伝達され、自動操舵が実現される。一方、第1回転軸31aの位置が空転位置P2となるように第1回転軸31aを移動させることで、例えば産業車両10が手動操舵状態であるときに手動操舵の操舵力が第2ギア32から第1ギア31へと入力されることがなくなる。これにより、例えばクラッチ機構を自動操舵部に介在させる構成と比べて、より単純な構成で且つより確実に、産業車両10が手動操舵状態であるときに手動操舵の操舵力が操舵用モータ33の連れ回りで重くなることを抑制可能となる。
【0062】
産業車両の操舵装置100では、手動操舵部20は、操舵軸21と共に回動する突当部材28と、突当部材28が突き当たることで操舵軸21の回動範囲を規定する受け部材29と、を有している。回転軸移動部40は、産業車両10が手動操舵の状態となっている場合に空転位置P2に第1回転軸31aの位置を移動させる。この構成では、仮に突当部材28が受け部材29に突き当たると手動操舵部20に衝撃荷重が発生するような構造であっても、第1回転軸31aの位置が空転位置P2となるように第1回転軸31aを移動させることで、手動操舵で生じた衝撃荷重が第2ギア32から第1ギア31へと入力されることがなくなる。これにより、衝撃荷重に備えて第1ギア31及び第2ギア32を補強することが不要となる。
【0063】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0064】
例えば、上記実施形態では、回転軸移動部40は、第1ギア31を第2ギア32に近付ける油圧シリンダ47と、第1ギア31を第2ギア32から遠ざける弾性部材48と、を有していたが、油圧シリンダ47及び弾性部材48に変えて、電動シリンダを用いてもよい。この場合、電動シリンダによって、油圧シリンダ47による第2ギア32に対する第1ギア31の進行と、弾性部材48による第2ギア32に対する第1ギア31の退出と、の両方の機能を代替することができる。
【0065】
上記実施形態では、回転軸移動部40は、第1回転軸31aのみを移動させるように構成されていたが、第2回転軸32aのみを移動させるように構成されていてもよいし、第1回転軸31a及び第2回転軸32aの両方を移動させるように構成されていてもよい。
【0066】
上記実施形態では、第1ギア31の第1回転軸31aが減速部34の二段目減速機34bと同軸であったが、これに限定されない。第1ギア31は、減速部34の出力軸とは別の回転軸に設けられていてもよい。この場合、当該別の回転軸が、第1回転軸に対応する。上記実施形態では、第2ギア32が操舵軸21に固定されていたが、これに限定されない。第2ギア32は、第1ギア31よりも操舵軸21側であればよく、第2ギア32が操舵軸21とは別の回転軸に設けられていてもよい。この場合、当該別の回転軸が、第2回転軸に対応する。要は、自動操舵部30は、操舵用モータ33が回転することにより、操舵用モータ33の動作に応じて回転する第1ギア31が操舵軸21側に設けられた第2ギア32を駆動することで操舵軸21を回動できればよい。
【0067】
上記実施形態では、第1回転軸31a及び第2回転軸32aは互いに平行であったが、これに限定されない。第1回転軸31a及び第2回転軸32aは、回転軸移動部40によって噛合位置P1と空転位置P2との間で少なくとも一方が移動可能であれば、互いに交差していてもよい。
【0068】
上記実施形態では、スライド機構42としてガイド凹部43とスライド部44とを例示したが、ガイド凹部43が省かれてもよい。
【0069】
上記実施形態では、自動操舵部30において、一段目減速機34a及び二段目減速機34bが例示されたが、一体の減速機であってもよいし、3個以上の減速機が用いられてもよい。
【0070】
上記実施形態では、回転軸移動部40は、車速センサ51の検出結果及び運転切替スイッチ52のスイッチ状態に基づいて、コントローラ50によって制御されたが、これに限定されない。回転軸移動部40は、作業者の手動の操作によって、第1回転軸31aの位置を噛合位置P1と空転位置P2との間で移動可能となるように、スライド機構42を動作させる手動操作機構を有していてもよい。手動操作機構としては、例えば、操作レバー及びリンク機構等、手動操作力を伝達する機構として公知の構造を採用することができる。
【0071】
上記実施形態では、産業車両10としてはバッテリ式の電動牽引車を例示したが、これに限定されない。産業車両10は、エンジン式であってもよいし、牽引車以外の搬送車等の他の産業車両であってもよい。
【0072】
上記実施形態では、手動操舵部20は、チェーン及びスプロケットで操舵力が伝達されたが、歯車等で操舵力が伝達されてもよい。
【0073】
上記実施形態では、ステアリング操作部としてステアリングホイール15を例示したが、これに限定されない。ステアリング操作部は、ハンドルレバー式であってもよい。
【0074】
上記実施形態では、作業車が着座するための運転席2が産業車両10に設けられていたが、作業車が立って乗車する産業車両では、運転席2は省かれてもよい。
【符号の説明】
【0075】
5…操舵輪、10…産業車両、15…ステアリングホイール(ステアリング操作部)、20…手動操舵部、21…操舵軸、28…突当部材、29…受け部材、30…自動操舵部、31…第1ギア、31a…第1回転軸(回転軸)、32…第2ギア、32a…第2回転軸(回転軸)、33…操舵用モータ(モータ)、40…回転軸移動部、42…スライド機構、47…油圧シリンダ、48…弾性部材、100…産業車両の操舵装置、P1…噛合位置、P2…空転位置。