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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073813
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20240523BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
H02J3/38 130
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184722
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】北村 高嗣
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC09
5G064CB12
5G064CB21
5G064DA07
5G064DA11
5G066AE09
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】上位システムに処理負荷が集中することを抑制しつつ、VPPを構築できる電力システムを提供する。
【解決手段】電力システムS1は、集計部12および通信部11を含む上位システムA1と、各々が少なくとも1つの電力制御装置22および電力管理装置21を備える複数の需要家設備B1とを備える。集計部12は、各需要家設備B1の設備電力および設備制御幅をそれぞれ集計する。通信部11は、集計結果およびシステム全体の電力目標を各需要家設備B1に送信する。電力管理装置21は、集計結果およびシステム全体の電力目標を用いて、設備目標を設定する設定部213と、設定された設備目標を基に誘導指令値を算出する指令値算出部214とを含む。各需要家設備B1において、各電力制御装置22は、誘導指令値に基づいて出力目標値を算出する機器目標算出部221と、制御対象の電力機器C1を制御する電力制御部222とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力機器が各々に接続された少なくとも1つの電力制御装置、および、前記少なくとも1つの電力制御装置を管理する電力管理装置を、各々が備える複数の需要家設備と、
前記複数の需要家設備の各々の前記電力管理装置とそれぞれ通信可能な上位システムと、
を備え、
前記複数の需要家設備の各々において、前記少なくとも1つの電力制御装置の各々は、電力系統に接続されており、
前記上位システムは、前記複数の需要家設備の各々における前記電力系統との接続点での出力電力である設備電力および前記複数の需要家設備の各々が制御可能な最大電力である設備制御幅をそれぞれ集計する集計部と、前記集計部による集計結果およびシステム全体の電力目標を前記複数の需要家設備の各々の前記電力管理装置に送信する通信部とを含み、
前記複数の需要家設備の各々において、前記電力管理装置は、対応する前記需要家設備の前記設備電力の情報および前記設備制御幅の情報を前記上位システムに送信する送信部と、前記上位システムから受信する前記集計結果および前記システム全体の電力目標を用いて、前記設備電力の目標値である設備目標を設定する設定部と、設定された前記設備目標を基に前記設備電力を制御するための誘導指令値を算出する指令値算出部と、を含み、
前記複数の需要家設備の各々において、前記少なくとも1つの電力制御装置の各々は、前記電力管理装置が算出した前記誘導指令値に基づいて出力目標値を算出する機器目標算出部と、当該出力目標値となるように制御対象の前記電力機器を制御する電力制御部とを含む、電力システム。
【請求項2】
前記システム全体の電力目標は、前記システム全体での入出力電力の目標である絶対目標値であり、
前記複数の需要家設備の各々において、前記電力管理装置の前記設定部は、前記集計結果および前記システム全体の電力目標を用いて、対応する前記需要家設備の前記設備目標を設定するための指標を算出する指標算出部と、当該指標を用いて前記設備目標を算出する設備目標算出部とを含む、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記システム全体の電力目標は、前記システム全体での全体需要基準値に対する相対的な目標である相対目標値であり、
前記複数の需要家設備の各々において、前記電力管理装置の前記送信部は、対応する前記需要家設備の個別需要基準値の情報をさらに送信し、
前記上位システムにおいて、前記集計部は、前記全体需要基準値として、さらに前記複数の需要家設備の各々の前記個別需要基準値を集計し、且つ、前記通信部は、前記集計結果としてさらに前記個別需要基準値の集計値を送信し、
前記複数の需要家設備の各々において、前記電力管理装置の前記設定部は、前記個別需要基準値の集計値と前記相対目標値とを用いて、前記システム全体での入出力電力の目標である絶対目標値を算出するシステム目標算出部と、前記集計結果および前記絶対目標値を用いて、対応する前記需要家設備の前記設備目標を設定するための指標を算出する指標算出部と、当該指標を用いて前記設備目標を算出する設備目標算出部とを含む、請求項1に記載の電力システム。
【請求項4】
前記複数の需要家設備のうちの少なくとも1つは、前記電力系統に接続された電力負荷を備える、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の地域(拠点)に分散するエネルギーリソース(発電設備、蓄電設備および負荷など)を管理および制御することにより、一つの発電所のように機能させるバーチャルパワープラント(Virtual Power Plant:VPP)がある。特許文献1には、従来のVPPの一例が開示されている。当該VPPは、複数の電力システム(下位システム)と、これらを管理する中央管理装置(上位システム)を備える。中央管理装置は、調整対象電力の合計電力が全体目標電力となるように、各電力システムに対して調整対象電力を制御させるための上位指標を算出する指標算出部を備える。各電力システムはそれぞれ、複数台のパワーコンディショナと、これらを管理する集中管理装置を備える。各電力システムにおいて、集中管理装置は、中央管理装置から上位指標を受信した場合には、上位指標に基づく下位指標を、複数台のパワーコンディショナの各々に出力する。各パワーコンディショナはそれぞれ、集中管理装置から入力された下位指標を用いた最適化問題に基づいて、個別目標電力を算出し、個別出力電力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-143046号公報
【特許文献2】特開2020-150690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のVPPでは、上位システム(中央管理装置)および下位システム(各電力システム)の両方に、指標(上位指標または下位指標)を算出する機能がそれぞれ必要となる。そのため、VPPが行う電力制御では、上位システムおよび下位システムの両方が、専用のパラメータ(指標)を用いる必要がある。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、上位システムにおいて、専用のパラメータ(指標)を用いない場合でも、上位システムに処理負荷が集中することを抑制しつつ、VPPを構築できる電力システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によって提供される電力システムは、電力機器が各々に接続された少なくとも1つの電力制御装置、および、前記少なくとも1つの電力制御装置を管理する電力管理装置を、各々が備える複数の需要家設備と、前記複数の需要家設備の各々の前記電力管理装置とそれぞれ通信可能な上位システムと、を備え、前記複数の需要家設備の各々において、前記少なくとも1つの電力制御装置の各々は、電力系統に接続されており、前記上位システムは、前記複数の需要家設備の各々における前記電力系統との接続点での出力電力である設備電力および前記複数の需要家設備の各々が制御可能な最大電力である設備制御幅をそれぞれ集計する集計部と、前記集計部による集計結果およびシステム全体の電力目標を前記複数の需要家設備の各々の前記電力管理装置に送信する通信部とを含み、前記複数の需要家設備の各々において、前記電力管理装置は、対応する前記需要家設備の前記設備電力の情報および前記設備制御幅の情報を前記上位システムに送信する送信部と、前記上位システムから受信する前記集計結果および前記システム全体の電力目標を用いて、前記設備電力の目標値である設備目標を設定する設定部と、設定された前記設備目標を基に前記設備電力を制御するための誘導指令値を算出する指令値算出部と、を含み、前記複数の需要家設備の各々において、前記少なくとも1つの電力制御装置の各々は、前記電力管理装置が算出した前記誘導指令値に基づいて出力目標値を算出する機器目標算出部と、当該出力目標値となるように制御対象の前記電力機器を制御する電力制御部とを含む。
【0007】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記システム全体の電力目標は、前記システム全体での入出力電力の目標である絶対目標値であり、前記複数の需要家設備の各々において、前記電力管理装置の前記設定部は、前記集計結果および前記システム全体の電力目標を用いて、対応する前記需要家設備の前記設備目標を設定するための指標を算出する指標算出部と、当該指標を用いて前記設備目標を算出する設備目標算出部とを含む。
【0008】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記システム全体の電力目標は、前記システム全体での全体需要基準値に対する相対的な目標である相対目標値であり、前記複数の需要家設備の各々において、前記電力管理装置の前記送信部は、対応する前記需要家設備の個別需要基準値の情報をさらに送信し、前記上位システムにおいて、前記集計部は、前記全体需要基準値として、さらに前記複数の需要家設備の各々の前記個別需要基準値を集計し、且つ、前記通信部は、前記集計結果としてさらに前記個別需要基準値の集計値を送信し、前記複数の需要家設備の各々において、前記電力管理装置の前記設定部は、前記個別需要基準値の集計値と前記相対目標値とを用いて、前記システム全体での入出力電力の目標である絶対目標値を算出するシステム目標算出部と、前記集計結果および前記絶対目標値を用いて、対応する前記需要家設備の前記設備目標を設定するための指標を算出する指標算出部と、当該指標を用いて前記設備目標を算出する設備目標算出部とを含む。
【0009】
前記電力システムの好ましい実施の形態において、前記複数の需要家設備のうちの少なくとも1つは、前記電力系統に接続された電力負荷を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の電力システムでは、各需要家設備から上位システムに現在の電力情報(設備電力)と制御可能な電力情報(設備制御幅)とが送信される。上位システムでは、これらの情報を集計して、全体目標とともに各需要家設備に送信する。各需要家設備では、集計結果と全体目標とに基づいて、設備目標を設定する。そして、電力管理装置は、設備目標と現在の電力情報(設備電力)とを用いた誘導指令値を算出し、電力制御装置は、誘導指令値を用いて接続される電力機器の電力制御を分散的に行う。この構成では、上位システムと、各需要家設備との間で、設備電力および設備制御幅の各情報のやり取りを行うだけである。つまり、本開示の電力システムは、上位システムが専用のパラメータ(誘導指令値と類似の上位誘導指令値であり、特許文献1における上位指標)を用いることなく、VPPを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかる電力システムの構成例を示す図である。
図2】第1実施形態にかかる電力システムが行う電力制御を示すフローチャートである。
図3】第1実施形態にかかる電力システムが行う電力制御のうち各需要家設備が行う電力制御を示すフローチャートである。
図4】第2実施形態にかかる電力システムの構成例のうちの一部(需要家設備)を示す図である。
図5】第2実施形態にかかる電力システムが行う電力制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の電力システムの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下では、同一あるいは類似の構成要素に、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、第1実施形態にかかる電力システムS1の全体構成例を示している。同図に示すように、電力システムS1は、上位システムA1および複数の需要家設備B1を備える。また、電力システムS1は、電力系統K1に繋がる電力線99を備える。図1において、太線は電力ネットワークを示し、破線は通信ネットワークを示す。
【0014】
電力システムS1において、上位システムA1と、複数の需要家設備B1の各々とは、互いに通信可能である。電力システムS1は、上位システムA1と複数の需要家設備B1とが連携して電力制御を行う。複数の需要家設備B1は、例えば互いに異なる複数の地域(拠点)にそれぞれ設置される。なお、1つの地域(拠点)に2つ以上の需要家設備B1が設置されていてもよい。電力システムS1は、複数の地域(拠点)に分散された需要家設備B1を管理して、システム全体の入出力電力(以下では「全体電力」という)を制御する。つまり、電力システムS1は、VPPを構築する。
【0015】
複数の需要家設備B1の各々は、少なくとも1つの電力機器C1を備え、当該少なくとも1つの電力機器C1の電力制御を行う。各需要家設備B1は、設備電力の情報と設備制御幅の情報とを上位システムA1に送信する。設備電力は、各需要家設備B1において電力系統K1(電力線99)への接続点における入出力電力である。設備制御幅は、各需要家設備B1において、対応する電力機器C1の機器制御幅の合計である。機器制御幅は、電力機器C1が制御可能な最大電力であり、電力機器C1の最大出力電力に相当する。上位システムA1は、各需要家設備B1の設備電力および設備制御幅の集計を行い、その集計結果を各需要家設備B1に送信する。また、上位システムA1は、全体電力の目標値(以下「全体目標」という)を、各需要家設備B1に送信する。全体目標は、上位システムA1に設定される。本実施形態では、全体目標は、全体電力の絶対目標値であり、後述する電力システムS2の「相対目標値」に対して、「絶対目標値」という。各需要家設備B1は、受信する集計結果および全体目標(全体電力の絶対目標値)を用いて、自設備の電力目標(以下「設備目標」という)を算出し、算出した設備目標を基に、制御対象の各電力機器C1を制御する。
【0016】
複数の電力機器C1には、たとえば、蓄電池31、電気自動車32および太陽電池33がある。この他、他の再生可能エネルギー(風力、水力、バイオマス、地熱など)を利用した発電機、燃料電池による発電機、化石燃料を利用した発電機、アグリゲータによる需要家の負荷を管理する仮想的な発電を行うシステムがあってもよい。アグリゲータは、実際に発電を行っているのではないが、ネガワット取引により、節約できた電力を発電した電力とみなしている。
【0017】
上位システムA1は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびメモリを備えるコンピュータ装置で構成される。上位システムA1は、通信部11および集計部12を含む。
【0018】
通信部11は、各需要家設備B1と通信する。通信部11は、各需要家設備B1から、上記設備電力の情報および上記設備制御幅の情報を受信する。通信部11は、各需要家設備B1に、上記集計結果および上記全体目標を送信する。
【0019】
集計部12は、通信部11が受信した設備電力および設備制御幅をそれぞれ集計する。当該集計において、集計部12は、設備電力の総和および設備制御幅の総和をそれぞれ算出する。よって、本実施形態における集計結果は、設備電力の集計値(総和)と設備制御幅の集計値(総和)とを含む。
【0020】
複数の需要家設備B1の各々は、電力管理装置21、複数の電力制御装置22および複数の電力機器C1を備える。なお、各需要家設備B1が備える電力制御装置22の数および電力機器C1の数は、1つであってもよい。また、複数の需要家設備B1の各々は、電力負荷L1を備える。なお、複数の需要家設備B1のいずれかは、電力負荷L1を備えていなくてもよいし、複数の電力負荷L1を備えていてもよい。以下で説明する電力管理装置21、複数の電力制御装置22および電力負荷L1は、特段の断りがない限り、各需要家設備B1で共通する。
【0021】
電力負荷L1は、電力系統K1および各電力制御装置22の両方またはいずれかから電力が供給される。電力負荷L1には、一般負荷および重要負荷などがある。一般負荷は、例えば、災害時に電力が遮断されても、比較的影響が少ない電気機器を含む。重要負荷は、災害時でも電力を継続して供給する必要性がある重要な負荷であり、例えば、非常用のエレベータ、連続運転が必要な電気機器、建屋の照明や空調機器などが含まれる。
【0022】
電力管理装置21は、複数の電力制御装置22を管理する。電力管理装置21は、上位システムA1および各電力制御装置22の各々と通信を行う。電力管理装置21は、信号処理部211、計測部212、設定部213および指令値算出部214を含む。
【0023】
信号処理部211は、上位システムA1と通信を行い、且つ、複数の電力制御装置22の各々と通信を行う。信号処理部211は、受信部211aおよび送信部211bを含む。信号処理部211は、受信部211aによって、上位システムA1から上記集計結果および上記全体目標を受信する。また、信号処理部211は、受信部211aによって、各電力制御装置22から機器制御幅の情報を受信する。信号処理部211は、各電力制御装置22の機器制御幅を合計して、上記設備制御幅を算出する。信号処理部211は、送信部211bによって、上位システムA1に設備制御幅の情報を送信する。また、信号処理部211は、送信部211bによって、各電力制御装置22に誘導指令値を送信する。誘導指令値は、設備電力を設備目標にするための指標であり、各電力制御装置22で共通の値である。
【0024】
計測部212は、接続線91上に設置され、設置箇所における電力を計測する。計測部212は、対応する需要家設備B1と電力系統K1との接続点における電力(設備電力)を計測する。設備電力の計測値は、送信部211bにより、上位システムA1に送信される。
【0025】
設定部213は、受信部211aが受信した集計結果および全体目標を用いて、上記設備目標(設備電力の電力目標)を設定する。例えば、設定部213は、前回設定した設備目標を、以下で説明する指標を用いた演算により補正することで、新たな設備目標を設定する。設定部213は、指標算出部213aおよび設備目標算出部213bを含む。
【0026】
指標算出部213aは、集計結果および全体目標を用いて、設備目標を補正するための指標(以下では「補正指標」という)を算出する。指標算出部213aは、下記(1)式ないし下記(3)式を演算することで、補正指標を算出する。下記(1)式ないし下記(3)式において、PVPPiは補正指標、λALLは状態変数、εALLは勾配係数、TsALLは補正指標の更新間隔、PcALLは全体目標、PALLは設備電力の集計値(総和)、εGainVPPは勾配係数調整ゲイン、prlmtは誘導指令値限界、TotalVPPは設備制御幅の集計値(総和)である。
【数1】
【0027】
設備目標算出部213bは、補正指標を用いて設備目標を補正する。設備目標算出部213bは、下記(4)式を演算することで、新たな設備目標を算出する。下記(4)式において、PCi VPPは補正後の設備目標(新たな設備目標)、PCiは補正前の設備目標(前回の設備目標)、ωVPPiは対応する需要家設備B1の重み係数、PVPPiは上記指標、ωiは対応する需要家設備B1の設備制御幅である。なお、重み係数ωVPPiの値により、電力システムS1が行う電力制御に対して、対応する需要家設備B1がどれだけ関与させるかの設定が可能であるが、本実施形態では、全ての需要家設備B1において、重み係数ωVPPiには「1」が設定される。また、電力管理装置21の電源投入後など、前回の設備目標がない場合には、予め設定された初期値を用いる。設備目標算出部213bが算出した設備目標は、対応する需要家設備B1の設備目標として設定される。なお、設定部213による設備目標の算出方法は、上記した方法に限定されない。
【数2】
【0028】
指令値算出部214は、設定部213により設定された設備目標を基に、設備電力を制御するための誘導指令値を算出する。誘導指令値は、設備電力を設備目標にするための値であり、各電力制御装置22で共通の値である。指令値算出部214は、例えば下記(5)式および下記(6)式の演算を行うことで、誘導指令値を算出する。下記(5)式および下記(6)式において、prは誘導指令値、λpは状態変数、PCi VPPは設備目標(有効電力)、Pは現在の設備電力(有効電力)、εは勾配係数、Tsは誘導指令値の更新間隔である。なお、下記(5)式および下記(6)式は、特許文献2に記載の演算式と同等である。誘導指令値は、送信部211bによって、各電力制御装置22に送信される。
【数3】
【0029】
複数の電力制御装置22の各々は、接続線91により電力線99に接続されている。よって、各電力制御装置22は、電力系統K1に接続されている。複数の電力制御装置22の各々には、複数の電力機器C1がそれぞれ個別に接続されている。よって、各電力機器C1は、対応する電力制御装置22を介して、電力系統K1に接続されている。複数の電力制御装置22の各々は、電力管理装置21が算出した誘導指令値に基づいて、接続される電力機器C1の電力制御を行う。図示された例では、複数の電力制御装置22には、電力機器C1としての蓄電池31が接続された蓄電池制御装置22Aと、電力機器C1としての電気自動車32が接続されたEV制御装置22Bと、電力機器C1としての太陽電池33が接続されたPV制御装置22Cとがある。EVは、Electric Vehicle(電気自動車)の略である。PVは、Photovoltaics(太陽光発電)の略である。複数の電力制御装置22の各々は、機器目標算出部221と、電力制御部222と、機器通信部223とを含む。以下で説明する機器目標算出部221、電力制御部222および機器通信部223は、特段の断りがない限り、各電力制御装置22で共通する。
【0030】
機器通信部223は、電力管理装置21から誘導指令値を受信する。また、機器通信部223は、接続される電力機器C1から当該電力機器C1の機器制御幅の情報を取得する。機器制御幅は、先述の通り、電力機器C1の最大出力電力に相当する。機器制御幅は、電力機器C1が劣化していない状態では、例えば当該電力機器C1に規定された定格出力となる。一方で、電力機器C1が劣化した状態では、定格出力よりも小さい値となる。また、EV制御装置22Bでは、接続される電気自動車32によって、機器制御幅が増減する。機器通信部223は、取得した機器制御幅の情報を、電力管理装置21に送信する。
【0031】
機器目標算出部221は、機器通信部223が受信した誘導指令値を用いて、対応する電力機器C1の出力目標値(以下「機器目標」という)を算出する。機器目標算出部221は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、機器目標を算出する。この最適化問題は、評価関数と制約条件とを含む。当該評価関数は、例えば特許文献2に記載されたものと同じである。本実施形態では、機器目標算出部221は、特許文献2の記載と同様に、評価関数から導出される下記(7)式および下記(8)式の演算を行う。下記(7)式および下記(8)式において、Prefは電力制御装置22の機器目標(出力目標値)、prは誘導指令値、prlmtは誘導指令値限界、a1~a4はそれぞれ、設計パラメータである。誘導指令値限界prlmtおよび設計パラメータa1~a4は、特許文献2に記載されたものと同じである。そして、特許文献2の記載と同様に、その演算結果を制約条件によって補正することで、機器目標を算出する。制約条件は、特許文献2に記載された制約条件と同様である。なお、特許文献2に記載の蓄電池PCSに設定された制約条件が、蓄電池制御装置22Aの機器目標算出部221に設定され、特許文献2に記載のEVスタンドに設定された制約条件が、EV制御装置22Bの機器目標算出部221に設定され、特許文献2に記載の太陽光PCSに設定された制約条件が、PV制御装置22Cの機器目標算出部221に設定される。これとは異なり、機器目標算出部221は、制約条件の下で評価関数を解くことで機器目標を算出してもよい。
【数4】
【0032】
電力制御部222は、接続される電力機器C1の出力電力(以下「機器電力」という)が機器目標となるように当該電力機器C1の機器電力を制御する。蓄電池制御装置22Aの電力制御部222は、蓄電池31の充電電力または放電電力を制御する。本開示では、蓄電池制御装置22Aの電力制御部222は、受信した機器目標が正の値のとき、蓄電池31を放電させ、受信した機器目標が負の値のとき、蓄電池31を充電する。EV制御装置22Bの電力制御部222は、電気自動車32の充電電力または放電電力を制御する。本開示では、EV制御装置22Bの電力制御部222は、受信した機器目標が正の値のとき、電気自動車32を放電させ、受信した機器目標が負の値のとき、電気自動車32を充電する。PV制御装置22Cの電力制御部222は、太陽電池33の発電電力を制御する。
【0033】
次に、電力システムS1が行う電力制御について、図2および図3を参照して説明する。図2は、電力システムS1全体における電力制御を示すフローチャートである。図2(a)は上位システムA1が行う処理であり、図2(b)は複数の需要家設備B1のうちの1つが行う処理であり、図2(c)は複数の需要家設備B1のうちの他の1つが行う処理である。なお、各需要家設備B1が行う処理は、同じであるので、図2(b),(c)では、同じ符号を付している。図3は、各需要家設備B1における電力制御を示すフローチャートである。図3(a)は電力管理装置21が行う処理であり、図3(b)は複数の電力制御装置22のうちの1つが行う処理であり、図3(c)は複数の電力制御装置22のうちの他の1つの行う処理である。なお、各電力制御装置22が行う処理は、同じであるので、図3(b),(c)では、同じ符号を付している。また、図3において、図2に示す処理と同一あるいは類似の処理には、同じ符号を付している。図3に示す処理は、全ての需要家設備B1で共通する。図2および図3に示す各フローチャートは、一例であり、以下で示す処理に限定されない。
【0034】
まず、図2を参照して、電力システムS1の電力制御の概要を説明する。図2に示すように、各需要家設備B1は、設備電力の情報および設備制御幅の情報を上位システムA1に送信する(S201)。上位システムA1は、各需要家設備B1から送信された設備電力の情報および設備制御幅の情報を受信する(S101)。
【0035】
次いで、上位システムA1は、各需要家設備B1から設備電力の情報および設備制御幅の情報を受信すると、各需要家設備B1の設備電力および設備制御幅をそれぞれ集計する(S102)。上位システムA1は、設備電力および設備制御幅をそれぞれ集計すると、その集計結果と全体目標(全体電力の絶対目標値)とを各需要家設備B1に送信する(S103)。各需要家設備B1は、上位システムA1から送信された集計結果および全体目標を受信する(S202)。
【0036】
次いで、各需要家設備B1は、集計結果および全体目標を受信すると、これらを用いて設備目標を設定する(S203)。各需要家設備B1は、設備目標を設定すると、当該設備目標と現在の設備電力とを用いて、誘導指令値を算出する(S204)。各需要家設備B1が誘導指令値を算出すると、各需要家設備B1において電力制御装置22は、当該誘導指令値に基づいて、各電力機器C1を制御する(S205)。
【0037】
続いて、図3を参照して、各需要家設備B1での電力制御の詳細を説明する。図3に示すように、電力管理装置21の計測部212は、設備電力を計測する(S301)。また、各電力制御装置22の機器通信部223は、対応する電力機器C1から機器制御幅を取得し(S401)、取得した機器制御幅を電力管理装置21に送信する(S402)。
【0038】
電力管理装置21の信号処理部211は、受信部211aにより、各電力制御装置22から機器制御幅を受信する(S302)。信号処理部211は、各電力制御装置22から機器制御幅を受信すると、受信した各機器制御幅を合計して、設備制御幅を算出する(S303)。
【0039】
次いで、信号処理部211は、送信部211bにより、ステップS301で計測した設備電力の情報(計測値)と、ステップS303で算出した設備制御幅の情報とを、上位システムA1に送信する(S201)。その後、上記ステップS103により、上位システムA1から集計結果と全体目標とが送信されるので、信号処理部211は、受信部211aにより、集計結果と全体目標とを受信する(S202)。
【0040】
次いで、設定部213は、ステップS202で受信した集計結果と全体目標とを用いて、設備目標を設定する(S203)。設備目標を設定する処理では、まず、設定部213の指標算出部213aは、上記(1)式ないし上記(3)式の演算により、設備目標を補正するための指標(補正指標)を算出する(S203a)。指標算出部213aが補正指標を算出すると、設備目標算出部213bは、上記(4)式の演算により、新たな設備目標を算出する(S203b)。そして、設定部213は、設備目標算出部213bの演算結果を、設備目標として設定する。
【0041】
ステップS203で設備目標が設定されると、電力管理装置21の指令値算出部214は、上記(5)式および上記(6)式の演算により、誘導指令値を算出する(S204)。ステップS204で誘導指令値を算出すると、信号処理部211は、送信部211bにより、誘導指令値を各電力制御装置22に送信する(S303)。
【0042】
次いで、各電力制御装置22において機器通信部223は、送信部211b(電力管理装置21)から送信された誘導指令値を受信する(S403)。機器通信部223が誘導指令値を受信すると、機器目標算出部221は、上記(7)式および上記(8)式の演算により、対応する(接続された)電力機器C1の機器目標(出力目標値)を算出する(S404)。そして、電力制御部222は、機器目標算出部221が算出した機器目標となるように制御対象である電力機器C1の機器電力(出力電力)を制御する(S405)。ステップS303およびステップS403~S405の処理が、図2のステップS205の処理に対応する。
【0043】
電力システムS1において、図2の処理周期は、何ら限定されないが、例えば10秒である。ただし、図3に示すステップS203b(設備目標の算出)、ステップS204(誘導指令値の算出)およびステップS303(誘導指令値の送信)と、ステップS403(誘導指令値の受信)、ステップS404(機器目標の算出)およびステップS405(電力機器の制御)とにおいては、上記処理周期よりも短い周期(例えば1秒周期)で繰り返し行うことが好ましい。
【0044】
以上のように構成された電力システムS1では、各需要家設備B1から上位システムA1に現在の電力情報(設備電力)と制御可能な電力情報(設備制御幅)とが送信される。上位システムA1では、これらの情報を集計して、全体目標とともに各需要家設備B1に送信する。各需要家設備B1では、集計結果と全体目標とに基づいて、設備目標を設定する。そして、電力管理装置21は、設備目標と現在の電力情報(設備電力)とを用いた誘導指令値を算出し、電力制御装置22は、誘導指令値を用いて分散的に機器目標を立てて、電力機器C1の電力制御を行う。これにより、電力システムS1は、電力システムS1全体の入出力電力(全体電力)を、上記全体目標に制御する。したがって、上位システムA1が専用のパラメータ(誘導指令値と類似の上位誘導指令値であり、特許文献1における上位指標)を用いることなく、電力システムS1は、当該上位システムA1に処理負荷が集中することを抑制しつつ、VPPを構築することができる。このため、電力システムS1では、VPPを構築する上で、特許文献1のような中央管理装置(上位システム)ではなく、情報の集計とその集計結果および全体目標の送信とを行う機能を有する上位システムA1を用いればよい。つまり、電力システムS1では、上位システムを専用設計することなく、少なくとも情報の集計および配信を行うだけの簡易なものを代用することが可能である。
【0045】
電力システムS1では、設定部213の指標算出部213aは、設備目標を補正するための補正指標を算出する。そして、指標算出部213aが補正指標を算出すると、設備目標算出部213bは、当該補正指標を用いて、新たな設備目標を算出する(S203b)。これにより、設定部213は、設備目標算出部213bの演算結果を、設備目標として設定することができる。したがって、電力システムS1は、各需要家設備B1が分散的に、自設備の出力電力(設備電力)を制御することができるので、特定の装置に処理負荷が集中することを抑制できる。
【0046】
次に、第2実施形態にかかる電力システムS2について説明する。図4は、電力システムS2の構成例であって、複数の需要家設備B1の1つを示している。電力システムS2の上位システムA1の構成は、電力システムS1と同様である。また、複数の需要家設備B1はそれぞれ、図4に示す構成と同様に構成される。電力システムS2は、電力システムS1と比較して、設定される全体目標が異なる。具体的には、電力システムS1に設定される全体目標は、電力システムS1全体の入出力電力の絶対目標値であったが、電力システムS2に設定される全体目標は、電力システムS2全体での需要基準値(全体需要基準値)に対する相対的な目標である相対目標値である。
【0047】
電力システムS2では、需要基準値として、例えばベースラインを用いる。ベースラインは、電力システムS2で、デマンドレスポンス(DR)を実施しなかった場合に想定される全体電力の値である。デマンドレスポンスは、本開示における電力システムの電力制御に相当する。ベースラインの算出方法は、何ら限定されず、周知の技術が用いられる。つまり、電力システムS2では、上位システムA1に設定される全体目標は、電力システムS2全体でのベースラインに対する相対目標値である。例えば、全体目標には、電力システムS2全体でのベースラインに対して+XkW(上げDR)または-XkW(下げDR)が設定される。Xは、所定の値である。
【0048】
電力システムS2では、各需要家設備B1の電力管理装置21は、対応する需要家設備B1の需要基準値(個別需要基準値)を算出して、これを上位システムA1に送信する。よって、電力システムS2では、各需要家設備B1は、設備電力および設備制御幅とともに、個別需要基準値の情報を上位システムA1に送信する。上位システムA1では、各需要家設備B1からの個別需要基準値を集計する。この個別需要基準値の集計値は、上記全体需要基準値に相当する。電力システムS2の上位システムA1は、集計結果を各需要家設備B1に送信する際、送信する集計結果に当該個別需要基準値の集計値をさらに含める。
【0049】
各需要家設備B1では、個別需要基準値の集計値と全体目標とを用いて、電力システムS2全体の入出力電力の絶対目標値(電力システムS1における全体目標に相当)を算出する。このために、電力システムS2の各需要家設備B1の設定部213は、図4に示すように、システム目標算出部213cをさらに含む。
【0050】
システム目標算出部213cは、個別需要基準値の集計値と全体目標(相対目標値)とを用いて、電力システムS2全体の入出力電力の絶対目標値を算出する。具体的には、システム目標算出部213cは、個別需要基準値の集計値に、相対目標値である全体目標値を加算することで、電力システムS2全体の入出力電力の絶対目標値を算出する。システム目標算出部213cが算出した当該絶対目標値は、指標算出部213aが行う補正指標の算出に用いられる。
【0051】
図5は、電力システムS2全体における電力制御を示すフローチャートである。図5(a)は上位システムA1が行う処理であり、図5(b)は複数の需要家設備B1のうちの1つが行う処理であり、図5(c)は複数の需要家設備B1のうちの他の1つが行う処理である。なお、各需要家設備B1が行う処理は、同じであるので、図5(b),(c)では、同じ符号を付している。図5に示すフローチャートは、一例であり、以下で示す処理に限定されない。
【0052】
図5に示すように、電力システムS2では、各需要家設備B1は、設備電力および設備制御幅とともに、さらに個別需要基準値を、上位システムA1に送信する(S211)。上位システムA1は、各需要家設備B1から、設備電力および設備制御幅とともに、さらに個別需要基準値を受信する(S111)。
【0053】
上位システムA1は、ステップS111で、設備電力、設備制御幅および個別需要基準値を各需要家設備B1から受信すると、集計部12により、これらを集計する(S112)。つまり、電力システムS2の集計部12(上位システムA1)は、さらに個別需要基準値を集計する。そして、上位システムA1は、通信部11により、ステップS103で、集計結果および全体目標を送信する。ただし、電力システムS2のステップS103において、送信する集計結果には、設備電力の集計値および設備制御幅の集計値の他、個別需要基準値の集計値が含まれる。また、送信する全体目標は、全体需要基準値(個別需要基準値の集計値)に対する相対目標値である。
【0054】
各需要家設備B1は、ステップS202で、上位システムA1から送信された集計結果(設備電力、設備制御幅および個別需要基準値の各集計値)および全体目標(相対目標値)を受信すると、次いで、設備目標を設定する(S213)。ステップS213では、各需要家設備B1は、システム目標算出部213c(電力管理装置21の設定部213)により、個別需要基準値の集計値と全体目標(相対目標値)とに基づいて、電力システムS2全体の入出力電力の絶対目標値(つまり電力システムS1における全体目標)を算出する。そして、指標算出部213aによる当該絶対目標値を用いた指標(補正指標)の算出(上記ステップS203a)、および、設備目標算出部213bによる当該補正指標を用いた設備目標の算出(上記ステップS203b)がそれぞれ行われる。これにより、各需要家設備B1には、設備目標が設定される。以降は、電力システムS1と同様に、各需要家設備B1により、誘導指令値の算出(S204)、および、誘導指令値に基づく電力機器C1の制御(S205)がそれぞれ行われる。
【0055】
以上のように構成された電力システムS2においても、電力システムS1と同様に、上位システムA1が専用のパラメータ(誘導指令値と類似の上位誘導指令値であり、特許文献1における上位指標)を用いることなく、上位システムA1に処理負荷が集中することを抑制しつつ、VPPを構築することができる。つまり、電力システムS2では、電力システムS1と同様に、上位システムを専用設計することなく、少なくとも情報の集計および配信を行うだけの簡易なものを代用することが可能である。
【0056】
電力システムS2では、上位システムA1に設定される全体目標は、電力システムS2全体での全体需要基準値に対する相対目標値である。また、各需要家設備B1は、自設備での個別需要基準値を上位システムA1に送信し、上位システムA1では、各需要家設備B1の個別需要基準値を集計する。そして、各需要家設備B1の設定部213では、システム目標算出部213cが、個別需要基準値の集計値と全体目標(相対目標値)とを用いて、システム全体の入出力電力の絶対目標値を算出する。この構成によれば、全体需要基準値に対する相対的な目標が上位システムA1に設定された場合であっても、各需要家設備B1が分散的に自設備の出力電力(設備電力)を制御することができる。つまり、電力システムS2は、システム全体の入出力電力を、全体需要基準値に対する相対目標に基づいて制御することができるので、デマンドレスポンスの実現が可能となる。
【0057】
本開示の電力システムは、上記した構成に限定されず、例えば次のような構成とすることができる。それは、電力システムS2では、各需要家設備B1の電力管理装置21(設定部213のシステム目標算出部213c)が、全体目標(相対目標値)と個別需要基準値の集計値とから、電力システムS2全体の入出力電力の絶対目標値を算出したが、この構成と異なる構成において、上位システムA1が、全体目標(相対目標)と個別需要基準値の集計値とから、電力システムS2全体の入出力電力の絶対目標値を算出してもよい。この場合、上位システムA1から各需要家設備B1に送信される全体目標は、電力システムS1と同様に、電力システム全体の入出力電力の絶対目標値となる。したがって、本変形例において、各需要家設備B1は、全体目標(相対目標)と個別需要基準値の集計値とから、システム全体の入出力電力の絶対目標値を算出する必要がない。
【0058】
本開示にかかる電力システムは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の電力システムの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0059】
S1,S2:電力システム、A1:上位システム、B1:需要家設備、C1:電力機器、K1:電力系統、L1:電力負荷、11:通信部、12:集計部、21:電力管理装置、211:信号処理部、211a:受信部、211b:送信部、212:計測部、213:設定部、213a:指標算出部、213b:設備目標算出部、213c:システム目標算出部、214:指令値算出部、22:電力制御装置、221:機器目標算出部、222:電力制御部
図1
図2
図3
図4
図5