(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073817
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
B06B1/04 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184727
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】土橋 将生
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA02
5D107AA12
5D107BB08
5D107CC08
5D107CC11
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】磁気駆動回路により可動体を振動させるアクチュエータにおいて、可動体の振幅および重量を増大させるとともに、コイル線の引き出し線の長さの増大およびコイル線を引き回す経路の複雑化を抑制する。
【解決手段】アクチュエータ1の支持体2は、コイル6が第2方向Xに複数並んで保持されるコイル保持部31を備える。ヨーク80は、コイル保持部31に対してZ1方向で対向する第1板部81と、コイル保持部31に対してZ2方向で対向する第2板部82と、コイル保持部31に対して第3方向Yの両側に配置されて第1板部81と第2板部82とを接続する一対の連結板部83、84を備える。連結板部83には、コイル6からY1方向に引き出される引き出し線60を通す開口部87が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体および可動体と、
前記可動体と前記支持体とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、
前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有し、
前記磁気駆動回路は、前記支持体に設けられたコイルと、前記可動体に設けられて前記コイルに第1方向で対向する磁石と、を備え、前記可動体を前記第1方向に対して交差する第2方向に駆動し、
前記支持体は、前記コイルが前記第2方向に複数並んで保持されるコイル保持部を備え、
前記可動体は、前記磁石が固定されるヨークを備え、前記ヨークは、前記コイル保持部に対して前記第1方向の一方側で対向する第1板部と、前記コイル保持部に対して前記第1方向の他方側で対向する第2板部と、前記コイル保持部に対して前記第1方向と交差し且つ前記第2方向と交差する第3方向の両側に配置されて前記第1板部と前記第2板部とを接続する一対の連結板部と、を備え、
前記一対の連結板部の一方には、前記コイルから前記第3方向に引き出される引き出し線を通す開口部が設けられていることを特徴とするアクチュエータ。
【請求項2】
前記支持体は、前記コイル保持部から前記第3方向に突出して前記開口部に配置されるガイド部を備え、
前記引き出し線は、前記ガイド部に設けられたガイド溝に配置されることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項3】
前記コイルは、前記第2方向に並ぶ第1コイルおよび第2コイルを含み、
前記ガイド部は、前記第1コイルの前記第3方向の一方側、および、前記第2コイルの前記第3方向の一方側の2箇所に設けられ、
前記開口部には、前記第2方向に並ぶ2箇所の前記ガイド部が配置されることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項4】
前記コイルは、前記第2方向に並ぶ第1コイルおよび第2コイルを含み、
前記ガイド部は、1箇所に設けられ、
前記1箇所の前記ガイド部に設けられた前記ガイド溝に、前記第1コイルから引き出される前記引き出し線、および、前記第2コイルから引き出される前記引き出し線が配置されることを特徴とする請求項2に記載のアクチュエータ。
【請求項5】
前記支持体は、
前記コイル保持部を備えるコイルホルダと、
前記第1板部に対して前記第1方向の一方側で対向する第1端板部、および前記第1端板部の外周縁から前記第1方向の他方側へ延びる第1側板部を備える第1ケース部材と、
前記第2板部に対して前記第1方向の他方側で対向する第2端板部、および前記第2端板部の外周縁から前記第1方向の一方側へ延びる第2側板部を備える第2ケース部材と、を有し、
前記ガイド部は、前記コイル保持部の前記第3方向の一方側において前記第1側板部と前記第2側板部との隙間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【請求項6】
前記接続体は、
前記第1板部と前記第1端板部とを接続する第1接続体と、
前記第2板部と前記第2端板部とを接続する第2接続体と、を備え、
前記第1接続体および前記第2接続体は、粘弾性体であることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ。
【請求項7】
前記磁石は、前記コイルに対して前記第1方向の一方側で対向する第1磁石と、前記コイルに対して前記第1方向の他方側で対向する第2磁石と、を備え、
前記第1磁石は、前記第1板部に保持され、
前記第2磁石は、前記第2板部に保持されることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動体を振動させるアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、支持体および可動体と、可動体を支持体に接続する接続体と、可動体を支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路を有するアクチュエータが記載される。特許文献1のアクチュエータは、X方向を長手方向とする直方体形状をしており、支持体に対して可動体をX方向に振動させる。支持体は、磁気駆動回路のコイルを保持するホルダを備える。コイルは、X方向を長手方向とする板状のコイルホルダにX方向に2個並んで保持される。
【0003】
可動体は、磁気駆動回路の磁石を保持するヨークを備える。ヨークは、コイルにZ方向の一方側から対向する第1板部と、コイルにZ方向の他方側から対向する第2板部と、コイルのX方向の両側でZ方向に延在して第1板部と第2板部とを接続する第1連結板部および第2連結板部を備える。ホルダには、コイルのX方向の両側に、第1連結板部を配置する第1開口部と、第2連結板部を配置する第2開口部が設けられている。
【0004】
コイルホルダのY方向の側面には、コイル線を接続する配線基板が固定される。ヨークの第1連結板部および第2連結板部は、コイルからY方向に引き出されるコイル線の引き出し線と干渉しない。また、各コイルは、Y方向を長手方向とする長円状であり、Y方向にコイル線を引き出すため、コイル線の引き出し線の長さは短い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のアクチュエータでは、可動体の振幅を大きくすると、ヨークの振動方向(X方向)の両端に配置される第1連結板部および第2連結板部がホルダと衝突するおそれがある。従って、振幅を大きくすることが難しい。また、ヨークの板厚を大きくして可動体の重量を大きくすると、第1連結板部と第2連結板部の板厚も大きくなるため、第1連結板部および第2連結板部とホルダとのX方向の隙間が狭くなり、第1連結板部および第2連結板部とホルダとが衝突するおそれがある。従って、可動体の重量を大きくすることが難しい。
【0007】
ここで、ヨークの第1連結板部と第2連結板部を、コイルに対して振動方向と交差する方向(Y方向)の両側に配置する場合には、可動体の振幅を大きくしても、第1連結板部と第2連結板部がホルダと衝突するおそれは増大しない。しかしながら、このような配置にすると、コイルからY方向に引き出したコイル線と、第1連結板部もしくは第2連結板部とが干渉してしまう。Y方向と異なる方向にコイル線を引き出すと、コイル線の引き出し線の長さが長くなってしまうとともに、コイル線を引き回す経路が複雑化する。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、磁気駆動回路により可動体を振動させるアクチュエータにおいて、可動体の振幅の増大、および、可動体の重量増大を可能にするとともに、コイル線の引き出し線の長さの増大を抑制し、コイル線を引き回す経路の複雑化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るアクチュエータは、支持体および可動体と、前記可動体と前記支持体とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体と、前記可動体を前記支持体に対して相対移動させる磁気駆動回路と、を有し、前記磁気駆動回路は、前記支持体に設けられたコイルと、前記可動体に設けられて前記コイルに第1方向で対向する磁石と、を備え、前記可動体を前記第1方向に対して交差する第2方向に駆動し、前記支持体は、前記コイルが前記第2方向に複数並んで保持されるコイル保持部を備え、前記可動体は、前記磁石が固定されるヨークを備え、前記ヨークは、前記コイル保持部に対して前記第1方向の一方側で対向する第1板部と、前記コイル保持部に対して前記第1方向の他方側で対向する第2板部と、前記コイル保持部に対して前記第1方向と交差し且つ前記第2方向と交差する第3方向の両側に配置されて前記第1板部と前記第2板部とを接続する一対の連結板部と、を備え、前記一対の連結板部の一方には、前記コイルから前記第3方向に引き出される引き出し線を通す開口部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ヨークの連結板部は、コイル保持部に対して可動体の振動方向には対向しておらず、振動方向と交差する方向でコイル保持部と対向する。従って、可動体の振幅を大きくしたり、ヨークの板厚を大きくした場合でも、コイル保持部と連結板部とが衝突しない。従って、可動体の振幅の増大を図ることができる。また、ヨークの板厚を増大させて可動体の重量を大きくすることができるので、強い振動を発生させることができる。さらに、コイル線の引き出し線を通す開口部を連結板部に設けたので、コイル線を振動方向と交差する方向に引き出すことができる。これにより、コイル線の引き出し線の長さの増大、および、引き出し線を引き回す経路の複雑化を抑制できる。
【0011】
本発明において、前記支持体は、前記コイル保持部から前記第3方向に突出して前記開口部に配置されるガイド部を備え、前記引き出し線は、前記ガイド部に設けられたガイド溝に配置されることが好ましい。このようにすると、引き出し線を保護できる。また、引き出し線を引き回す作業が容易である。
【0012】
本発明において、前記コイルは、前記第2方向に並ぶ第1コイルおよび第2コイルを含み、前記ガイド部は、前記第1コイルの前記第3方向の一方側、および、前記第2コイルの前記第3方向の一方側の2箇所に設けられ、前記開口部には、前記第2方向に並ぶ2箇所の前記ガイド部が配置されることが好ましい。このようにすると、各コイルからそれぞれ引き出し線を直線状の経路で引き出すことができる。従って、引き出し線の長さを短くすることができる。また、引き出し線を引き回す経路を単純化することができる。
【0013】
本発明において、前記コイルは、前記第2方向に並ぶ第1コイルおよび第2コイルを含み、前記ガイド部は、1箇所に設けられ、前記1箇所の前記ガイド部に設けられた前記ガイド溝に、前記第1コイルから引き出される前記引き出し線、および、前記第2コイルから引き出される前記引き出し線が配置されることが好ましい。このように、ガイド部を1箇所に集約することにより、ヨークに設ける開口部の開口面積を小さくすることができる。従って、開口部を設けたことによるヨークの重量減少を抑制できるので、可動体の重量を確保できる。
【0014】
本発明において、前記支持体は、前記コイル保持部を備えるコイルホルダと、前記第1板部に対して前記第1方向の一方側で対向する第1端板部、および前記第1端板部の外周縁から前記第1方向の他方側へ延びる第1側板部を備える第1ケース部材と、前記第2板部に対して前記第1方向の他方側で対向する第2端板部、および前記第2端板部の外周縁から前記第1方向の一方側へ延びる第2側板部を備える第2ケース部材と、を有し、前記
ガイド部は、前記コイル保持部の前記第3方向の一方側において前記第1側板部と前記第2側板部との隙間に配置されることが好ましい。このようにすると、支持体の外部に引き出し線を引き出すことができる。また、第1側板部または第2側板部に配線基板を固定した場合に、配線基板まで引き出し線を引き回す作業が容易である。
【0015】
本発明において、前記接続体は、前記第1板部と前記第1端板部とを接続する第1接続体と、前記第2板部と前記第2端板部とを接続する第2接続体と、を備え、前記第1接続体および前記第2接続体は、粘弾性体であることが好ましい。このようにすると、可動体が第2方向に振動する際、粘弾性体がせん断方向に振動する。粘弾性体は、せん断方向に変形する場合は、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性を持つので、入力信号に対する振動加速度の再現性が高い。従って、微妙なニュアンスをもった振動を実現することができる。
【0016】
本発明において、前記磁石は、前記コイルに対して前記第1方向の一方側で対向する第1磁石と、前記コイルに対して前記第1方向の他方側で対向する第2磁石と、を備え、前記第1磁石は、前記第1板部に保持され、前記第2磁石は、前記第2板部に保持されることが好ましい。このように、コイルの両側に磁石を配置することにより、大きなローレンツ力を発生させることができる。従って、強い振動を発生させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ヨークの連結板部は、コイル保持部に対して可動体の振動方向には対向しておらず、振動方向と交差する方向でコイル保持部と対向する。従って、可動体の振幅を大きくしたり、ヨークの板厚を大きくした場合でも、コイル保持部と連結板部とが衝突しない。従って、可動体の振幅の増大を図ることができる。また、ヨークの板厚を増大させて可動体の重量を大きくすることができるので、強い振動を発生させることができる。さらに、コイル線の引き出し線を通す開口部を連結板部に設けたので、コイル線を振動方向と交差する方向に引き出すことができる。これにより、コイル線の引き出し線の長さの増大、および、引き出し線を引き回す経路の複雑化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態1のアクチュエータの外観斜視図である。
【
図2】実施形態1のアクチュエータのXZ断面図である。
【
図3】実施形態1のアクチュエータのYZ断面図である。
【
図4】実施形態1のアクチュエータのZ2方向から見た分解斜視図である。
【
図5】実施形態1のアクチュエータのZ1方向から見た分解斜視図である。
【
図6】実施形態2のアクチュエータの外観斜視図である。
【
図7】実施形態2のアクチュエータのZ2方向から見た分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して、本発明に係るアクチュエータの実施形態を説明する。なお、以下の説明において、互いに交差する3つの方向を各々、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yとして説明する。また、第2方向Xの一方側にX1を付し、第2方向Xの他方側にX2を付し、第3方向Yの一方側にY1を付し、第3方向Yの他方側にY2を付し、第1方向Zの一方側にZ1を付し、第1方向Zの他方側にZ2を付して説明する。本形態では、第1方向Z、第2方向Xおよび第3方向Yは、互いに直交する方向である。第2方向Xは、可動体3の振動方向である。
【0020】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のアクチュエータ1の斜視図である。
図2は、実施形態1のアクチュエータ1のXZ断面図である。
図3は、実施形態1のアクチュエータ1のYZ断面図で
ある。
図4は、実施形態1のアクチュエータ1のZ2方向から見た分解斜視図である。
図5は、実施形態1のアクチュエータ1のZ1方向から見た分解斜視図である。
【0021】
図1に示すように、アクチュエータ1は、全体として、第2方向Xの寸法が第3方向Yの寸法および第1方向Zの寸法より大きい直方体形状である。アクチュエータ1は、支持体2と、可動体3と、磁気駆動回路4と、配線基板5とを有する。磁気駆動回路4は、第1方向Zに対向するコイル6および磁石7を備えており、可動体3を第2方向Xに振動させる。コイル6は、支持体2の側面に固定される配線基板5に接続される。また、アクチュエータ1は、支持体2と可動体3とに接続される接続体9を備える。可動体3は、接続体9を介して支持体2に支持される。
【0022】
アクチュエータ1は、可動体3が第2方向Xに振動することにより、アクチュエータ1や、アクチュエータ1を取り付けた機器等を利用する者の身体を通して利用者に情報を報知する。アクチュエータ1は、例えば、ゲーム機の操作部材、操作パネル、自動車のハンドルやいす等に組み込んで利用することができ、可動体3の第2方向Xの振動によって利用者に触覚を与える触覚デバイスとして使用することができる。アクチュエータ1を触覚デバイスとして使用する際、例えば、コイル6に印加する交流波形を調整して、可動体3が第2方向Xの一方側X1に移動する加速度と、可動体3が第2方向の他方側X2に移動する加速度とを相違させれば、利用者は、第2方向Xにおいて方向性を有する振動を体感することができる。
【0023】
後述するように、アクチュエータ1は、接続体9としてゲル状部材(粘弾性体)を用いている。なお、本発明は、接続体9としてゴムや板バネ等を用いたアクチュエータに適用可能である。
【0024】
支持体2は、第1方向Zの一方側Z1から他方側Z2に順に重ねられた第1ケース部材10および第2ケース部材20を有する。第1ケース部材10と第2ケース部材20との間にコイルホルダ30、可動体3および磁気駆動回路4が配置される。本形態では、第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20は各々、樹脂製である。なお、第1ケース部材10と第2ケース部材20は、金属製であってもよい。
【0025】
コイルホルダ30は、板状のコイル保持部31と、コイル保持部31の第2方向Xの両端に設けられた縁部32を備える。コイル保持部31は、第3方向Yの幅が縁部32よりも小さい。コイル保持部31には、2つのコイル配置穴33が第2方向Xに並んで設けられている。また、コイル保持部31には、Y1方向に突出する薄板状のガイド部34が2箇所に設けられている。各ガイド部34は、コイル配置穴33のY1方向に設けられている。
【0026】
コイル保持部31およびガイド部34のZ2方向の表面には、各コイル6から2本ずつ引き出した引き出し線60を配置するガイド溝35が設けられている。本形態では、各コイル配置穴33からガイド部34の先端に向かって2本のガイド溝35が第3方向Yに平行に延びている。
【0027】
磁気駆動回路4は、第1コイル61および第2コイル62の2個のコイル6を備える。コイル6は、第3方向Yに有効辺が延在する長円形状の空芯コイルであり、第3方向Yの一方側Y1に引き出し線60が引き出されている。第1コイル61および第2コイル62は、コイル保持部31のコイル配置穴33に配置される。第1コイル61および第2コイル62は、接着剤によりコイル保持部31に固定される。
【0028】
磁石7は、コイル6の有効辺と第1方向Zで対向する。磁石7は、第1コイル61およ
び第2コイル62の有効辺にZ1方向から対向する2個の第1磁石71、72と、第1コイル61および第2コイル62の有効辺にZ2方向から対向する2個の第2磁石73、74を備える。第1磁石71、72および第2磁石73、74は、第3方向Yで分極着磁される。
【0029】
第1コイル61と、第2コイル62は、同一のコイルである。また、第1磁石71、72、および第2磁石73、74は、全て同一の磁石である。従って、磁気駆動回路4は、1種類のコイルと1種類の磁石で構成されており、部品の種類数が少ない。
【0030】
図4、
図5に示すように、第1ケース部材10は、コイル保持部31にZ1方向から対向する第1端板部11と、第1端板部11の外周縁からZ2方向に延びる第1側板部12を備える。第2ケース部材20は、コイル保持部31にZ2方向から対向する第2端板部21と、第2端板部21の外周縁からZ1方向に延びる第2側板部22を備える。第2側板部22は、第1方向Zの高さが一定である。
【0031】
第1ケース部材10の第1側板部12は、第3方向Yに対向する第1壁13および第2壁14と、第2方向Xに対向する第3壁15および第4壁16を備える。第1壁13および第2壁14の第1方向Zの高さは、第3壁15および第4壁16の第1方向Zの高さよりも高い。第1壁13および第2壁14の第2方向Xの両端には、第3壁15および第4壁16と同じ高さまでZ1方向に切り欠いた形状の段部17が設けられている。
【0032】
支持体2を組み立てる際には、
図1、
図2、
図3に示すように、第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20を第1方向Zに重ねた状態に組み立てて結合する。このとき、コイルホルダ30の縁部32を第1側板部12の段部17に嵌合させる。コイル保持部31は、第1壁13および第2壁14の内側に配置される。第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20は、例えば、接着剤により結合される。あるいは、図示しない筒状のカバーの内側に第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20を保持させる構造を採用してもよい。
【0033】
図1、
図3に示すように、第1ケース部材10、コイルホルダ30、および第2ケース部材20を組み立てると、第1ケース部材10の第1壁13の先端と第2ケース部材20の第2側板部22の先端との間に第1方向Zの隙間Sが形成される。隙間SのZ1方向には、第1壁13の凹部18に固定される配線基板5が位置している。隙間Sには、コイル保持部31からY1方向に突出するガイド部34の先端が挿入される。コイル6から引き出した引き出し線60は、ガイド部34の先端においてZ1方向に屈曲し、配線基板5の表面に設けられたランド50まで引き回された後、半田によりランド50に接続される。
【0034】
可動体3は、磁石7を保持するヨーク80を備える。
図2、
図3、
図4、
図5に示すように、ヨーク80は、コイル保持部31に対してZ1方向から対向する第1板部81と、コイル保持部31に対してZ2方向から対向する第2板部82と、コイル保持部31の第3方向Yの両側において第1方向Zに延びて第1板部81と第2板部82とを接続する一対の連結板部83、84と、を備える。第1板部81のZ2方向の表面には、第1磁石71、72が第2方向Xに並んで固定される。第2板部82のZ1方向の表面には、第2磁石73、74が第2方向Xに並んで固定される。第1磁石71、72および第2磁石73、74は、接着等の方法でヨーク80に固定される。
【0035】
本形態では、ヨーク80は、第1板部81および第1板部81の第3方向Yの両端からZ2方向に屈曲した一対の連結板部83、84を備える第1ヨーク85と、第2板部82からなる第2ヨーク86の2部品を接合して製造される。一対の連結板部83、84のZ2方向の端部は、溶接により第2板部82の第3方向Yの両端部に連結される。
【0036】
ヨーク80は、Y1方向の連結板部83を貫通する開口部87を備える。開口部87は、連結板部83の先端をZ1方向に切り欠いた切欠き部と、第2板部82のY1方向の端縁との間に形成される。
図2に示すように、コイル保持部31からY1方向に突出するガイド部34は、開口部87を貫通して、支持体2のY1方向の側面に開口する隙間Sまで延びている。
【0037】
なお、本形態では、コイル6に対する第1方向Zの両側に磁石7を配置しているが、磁気駆動回路4は、コイル6に対してZ1方向およびZ2方向の一方側にのみ磁石7を配置した構成を採用してもよい。
【0038】
(接続体)
図2に示すように、接続体9は、支持体2と可動体3とが第1方向Zで対向する個所に配置される。可動体3は、接続体9によって第2方向Xに移動可能に支持される。本形態では、接続体9は、第1ヨーク85と第1ケース部材10とが第1方向Zで対向する個所に配置される第1接続体91、92、および、第2ヨーク86と第2ケース部材20とが第1方向Zで対向する個所に配置される第2接続体93、94を備える。第1接続体91、92は、ヨーク80の第1板部81と第1ケース部材10の第1端板部11との間で第1方向Zに圧縮されている。第2接続体93、94は、ヨーク80の第2板部82と第2ケース部材20の第2端板部21との間で第1方向Zに圧縮されている。
【0039】
接続体9は、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備える。本形態では、接続体9は粘弾性体である。例えば、接続体9(粘弾性体)は、針入度が10度から110度であるシリコーン系ゲルである。針入度とは、JIS-K-2207やJIS-K-2220で規定されており、この値が小さい程、硬いことを意味する。また、粘弾性を備えた接続体9として、天然ゴム、ジエン系ゴム(例えば、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム)、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム等)、非ジエン系ゴム(例えば、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)、熱可塑性エラストマー等の各種ゴム材料及びそれらの変性材料を用いてもよい。
【0040】
接続体9は、その伸縮方向によって、線形あるいは非線形の伸縮特性を備える。例えば、接続体9は、その厚さ方向(軸方向)に押圧されて圧縮変形する際は、線形の成分(バネ係数)よりも非線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。これに対して、厚さ方向(軸方向)に引っ張られて伸びる場合は、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい伸縮特性を備える。また、接続体9は、厚さ方向(軸方向)と交差する方向(せん断方向)に変形する場合、いずれの方向に動いても、引っ張られて伸びる方向の変形であるため、非線形の成分(バネ係数)よりも線形の成分(バネ係数)が大きい変形特性を持つ。
【0041】
可動体3が第2方向Xに振動した際、接続体9は、せん断方向に変形する。従って、接続体9では、可動体3が第2方向Xに振動した際、せん断方向のバネ要素を用いることにより、入力信号に対する振動加速度の再現性を向上することができるので、微妙なニュアンスをもった振動を実現することができる。
【0042】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、実施形態1のアクチュエータ1は、支持体2および可動体3と、可動体3と支持体2とに接続され、弾性および粘弾性の少なくとも一方を備えた接続体9と、可動体3を支持体2に対して相対移動させる磁気駆動回路4と、を有する。磁気駆動回路4は、支持体2に設けられたコイル6と、可動体3に設けられてコイル6に第1方向
Zで対向する磁石7と、を備えており、可動体3を第2方向Xに駆動する。支持体2は、コイル6が第2方向Xに複数並んで保持されるコイル保持部31を備える。可動体3は、磁石7が固定されるヨーク80を備える。ヨーク80は、コイル保持部31に対してZ1方向(第1方向の一方側)で対向する第1板部81と、コイル保持部31に対してZ2方向(第1方向の他方側)で対向する第2板部82と、コイル保持部31に対して第3方向Yの両側に配置されて第1板部81と第2板部82とを接続する一対の連結板部83、84と、を備える。連結板部83には、コイル6からY1方向に引き出される引き出し線60を通す開口部87が設けられている。
【0043】
実施形態1のアクチュエータ1では、ヨーク80の連結板部83、84は、コイル保持部31に対して可動体3の振動方向(第2方向X)には対向しておらず、振動方向と交差する方向(第3方向Y)でコイル保持部31と対向する。従って、可動体3の振幅を大きくしたり、ヨーク80の板厚を大きくした場合でも、コイル保持部31と連結板部83、84とが衝突しない。従って、可動体3の振幅の増大を図ることができる。また、ヨーク80の板厚を大きくした場合でも、コイル保持部31と連結板部83、84とが衝突しない。従って、可動体3の重量を大きくして強い振動を発生させることができる。
【0044】
さらに、実施形態1のアクチュエータ1では、コイル線の引き出し線60を通す開口部87が連結板部83に設けられているので、コイル線を振動方向と交差する方向(第3方向Y)に引き出すことができる。これにより、長円状のコイル6の長手方向の端部から引き出し線60を引き出すことができるので、コイル線の引き出し線60の長さの増大、および、引き出し線60を引き回す経路の複雑化を抑制できる。
【0045】
実施形態1では、支持体2は、コイル保持部31から第3方向Yに突出して開口部87に配置されるガイド部34を備える。引き出し線60は、ガイド部34に設けられたガイド溝35に配置される。このように、引き出し線60をガイド溝35に配置して引き回すことにより、引き出し線60を保護できる。また、引き出し線60をガイド溝35に沿って引き回すことにより、決められた経路に容易に引き回すことができる。
【0046】
実施形態1では、コイル6は、第2方向Xに並ぶ第1コイル61および第2コイル62を含み、ガイド部34は、第1コイル61のY1方向(第3方向の一方側)、および、第2コイルのY1方向の2箇所に設けられている。開口部87は、2箇所のガイド部34を配置可能な大きさになっている。このように、各コイル6に対応してガイド部34を設けることで、各コイル6からそれぞれ引き出し線60を直線状の経路で引き出すことができる。従って、引き出し線60の長さを短くすることができる。また、引き出し線60を引き回す経路を単純化することができる。
【0047】
実施形態1では、支持体2は、コイル保持部31を備えるコイルホルダ30と、第1板部81に対してZ1方向(第1方向の一方側)で対向する第1端板部11、および第1端板部11の外周縁からZ2方向(第1方向の他方側)へ延びる第1側板部12を備える第1ケース部材10と、第2板部82に対してZ2方向で対向する第2端板部21、および第2端板部21の外周縁からZ1方向へ延びる第2側板部22を備える第2ケース部材20と、を有する。ガイド部34は、コイル保持部31のY1方向(第3方向の一方側)において第1側板部12と第2側板部22との隙間に配置される。このように、第1ケース部材10と第2ケース部材20との間にガイド部34の先端を挿入可能な隙間Sを設けることにより、引き出し線60を支持体2の外部に引き出す経路を確保できる。また、支持体2の側面に引き出し線60を引き出すことができるので、支持体2の側面に固定した配線基板5に容易に引き出し線60を接続することができる。
【0048】
実施形態1では、接続体9は、第1板部81と第1端板部11とを接続する第1接続体
91、92と、第2板部82と第2端板部21とを接続する第2接続体93、94と、を備える。第1接続体91、92および第2接続体93、94は、粘弾性体である。このような配置により、可動体3が第2方向Xに振動する際、粘弾性体がせん断方向に振動して、非線形の成分よりも線形の成分が大きい変形特性で変形する。従って、入力信号に対する振動加速度の再現性が高いアクチュエータ1が得られるので、微妙なニュアンスをもった振動を実現することができる。
【0049】
実施形態1では、磁石7は、コイル6に対してZ1方向(第1方向の一方側)で対向する第1磁石71、72と、コイル6に対してZ2方向(第1方向の他方側)で対向する第2磁石73、74と、を備える。第1磁石71、72は、第1板部81に保持され、第2磁石73、74は、第2板部82に保持される。このように、コイル6の第1方向Zの両側に磁石7を配置することにより、大きなローレンツ力を発生させることができ、強い振動を発生させることができる。
【0050】
(実施形態2)
図6は、実施形態2のアクチュエータ1Aの斜視図である。
図2は、実施形態2のアクチュエータ1AのZ2方向から見た分解斜視図である。以下、実施形態1と同一の構成は同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1とは異なる構成を説明する。
【0051】
実施形態1のコイルホルダ30には、コイル6の数に対応して2箇所のガイド部34が設けられているのに対して、実施形態2のコイルホルダ30Aには、ガイド部34Aが1箇所のみ設けられている(
図7参照)。ガイド部34Aは、第1コイル61と第2コイル62の第2方向Xの中間の位置に配置される。コイル保持部31およびガイド部34AのZ2方向の表面には、ガイド溝35Aが設けられている。
【0052】
実施形態2のコイルホルダ30Aには、第1コイル61と第2コイル62とを直列に接続するコイル線が配置される1本のガイド溝35Aと、第1コイル61からガイド部34のY1方向の先端まで延びる1本のガイド溝35Aと、第2コイル62からガイド部34のY1方向の先端まで延びる1本のガイド溝35Aが設けられている。
【0053】
実施形態2のヨーク80Aは、連結板部83を貫通する開口部87Aに配置されるガイド部34Aの数が1つである。そのため、開口部87Aの第2方向Xの開口幅は、実施形態1の開口部87の第2方向Xの開口幅よりも短い。ガイド部34Aは、開口部87Aを通過して連結板部83のY1方向に突出し、第1ケース部材10の第1壁13の先端と第2ケース部材20の第2側板部22の先端との隙間Sに挿入される。第1コイル61から引き出した1本の引き出し線60、および、第2コイル62から引き出した1本の引き出し線60は、ガイド部34Aの先端においてZ1方向に屈曲し、配線基板5の表面に設けられたランド50Aまで引き回された後、半田によりランド50Aに接続される。
【0054】
(実施形態2の主な作用効果)
実施形態2では、実施形態1と同様に、ヨーク80の連結板部83、84は、可動体3の振動方向と交差する方向でコイル保持部31と対向する。従って、可動体3の振幅を大きくしてもヨーク80と支持体2とが衝突しない。また、ヨーク80の板厚を大きくしてもヨーク80と支持体2とが衝突しない。よって、実施形態1と同様に、可動体3の振幅を増大させることができる。また、可動体3の重量を大きくして強い振動を発生させることができる。
【0055】
実施形態2では、実施形態1と同様に、コイル線の引き出し線60を通す開口部87Aを連結板部83に設けているので、コイル線を可動体3の振動方向と交差する方向に引き出すことができる。従って、実施形態1と同様に、コイル線の引き出し線60の長さの増
大、および、引き出し線60を引き回す経路の複雑化を抑制できる。
【0056】
実施形態2では、コイル6は、第2方向Xに並ぶ第1コイル61および第2コイル62を含む。コイルホルダ30Aには、ガイド部34Aが1箇所に設けられている。第1コイル61から引き出される引き出し線60、および、第2コイル62から引き出される引き出し線60は、いずれも、共通のガイド部34Aに設けられたガイド溝35Aに配置される。このように、ガイド部34Aを1箇所に集約することにより、開口部87Aの第2方向Xの長さを短くすることができる。これにより、ヨーク80Aに設ける開口部87Aの開口面積を小さくすることができる。従って、開口部87Aを設けたことによるヨーク80Aの重量減少を抑制できるので、可動体3の重量を確保できる。
【符号の説明】
【0057】
1、1A…アクチュエータ、2…支持体、3…可動体、4…磁気駆動回路、5…配線基板、6…コイル、7…磁石、9…接続体、10…第1ケース部材、11…第1端板部、12…第1側板部、13…第1壁、14…第2壁、15…第3壁、16…第4壁、17…段部、18…凹部、20…第2ケース部材、21…第2端板部、22…第2側板部、30、30A…コイルホルダ、31…コイル保持部、32…縁部、33…コイル配置穴、34、34A…ガイド部、35、35A…ガイド溝、50、50A…ランド、60…引き出し線、61…第1コイル、62…第2コイル、71、72…第1磁石、73、74…第2磁石、80、80A…ヨーク、81…第1板部、82…第2板部、83、84…連結板部、85…第1ヨーク、86…第2ヨーク、87、87A…開口部、91、92…第1接続体、93、94…第2接続体、S…隙間、X…第2方向、Y…第3方向、Z…第1方向