(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073822
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】排ガス処理用の制御装置及び方法並びにCO2回収システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/10 20060101AFI20240523BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20240523BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20240523BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20240523BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20240523BHJP
【FI】
F01N3/10 Z ZAB
B01D53/22
B01D65/02
B01D53/92 240
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184739
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥原 誠
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】上出 英行
(72)【発明者】
【氏名】本城 匠
【テーマコード(参考)】
3G091
4D002
4D006
4G146
【Fターム(参考)】
3G091AB01
3G091BA13
3G091DB10
3G091EA33
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA20
4D002CA20
4D002EA09
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4D002GA02
4D002GA03
4D002GB02
4D002GB20
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4D006JA39Z
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4D006KB30
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4D006KE13P
4D006KE24Q
4D006KE28P
4D006MA03
4D006MB04
4D006PA05
4D006PB19
4D006PB64
4D006PC80
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC11
4G146JC37
(57)【要約】
【課題】CO
2分離膜を適正タイミングにて洗浄する。
【解決手段】入力空間(32)、出力空間(33)、及び、入力空間と出力空間との間に設けられ且つ入力空間へ熱機関(11)から供給される排ガス中のCO
2を出力空間に通過させるCO
2分離膜(31)を有するCO
2分離装置(40)と、CO
2分離膜を洗浄する洗浄装置(20)と、が対象機器(1)設けられる。制御装置(100)は、熱機関が作動することで熱機関から排ガスが送出される排ガス送出期間において、出力空間におけるCO
2濃度に応じて洗浄装置にCO
2分離膜の洗浄動作を実行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力空間、出力空間、及び、前記入力空間と前記出力空間との間に設けられ且つ前記入力空間へ熱機関から供給される排ガス中のCO2を前記出力空間に通過させるCO2分離膜を有するCO2分離装置と、前記CO2分離膜を洗浄する洗浄装置と、が設けられた対象機器にて使用される排ガス処理用の制御装置であって、
処理部を備え、
前記処理部は、前記熱機関が作動することで前記熱機関から前記排ガスが送出される排ガス送出期間において、前記出力空間におけるCO2濃度に応じて前記洗浄装置に前記CO2分離膜の洗浄動作を実行させる
、排ガス処理用の制御装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記排ガス送出期間において、前記CO2濃度を閾濃度と比較することにより、前記洗浄動作の実行是非を決定する
、請求項1に記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記排ガス送出期間において、前記CO2濃度が前記閾濃度より低い状態が所定時間以上継続するとき、前記洗浄装置に前記洗浄動作を実行させる
、請求項2に記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記排ガス送出期間において、前記排ガスを前記入力空間に導くCO2回収モード、及び、前記排ガスを前記対象機器の外部に放出させる直接排出モードの何れかを動作モードとして動作し、前記洗浄動作の実行期間では前記直接排出モードにて動作する
、請求項1に記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記排ガス送出期間において前記CO2回収モードにて動作しているときに前記CO2濃度を閾濃度と比較し、前記CO2濃度が前記閾濃度より低い状態が所定時間以上継続するとき、前記動作モードを前記CO2回収モードから前記直接排出モードに切り替え且つ前記洗浄装置に前記洗浄動作を開始させ、前記洗浄動作の終了後に前記動作モードを前記CO2回収モードに戻す
、請求項4に記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記排ガス送出期間において、前記洗浄動作の実行後の前記CO2濃度に応じ、所定の通知を通知受理者に対して行う
、請求項1~5の何れかに記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記CO2回収モードでの動作累積時間が所定時間に達したとき、前記CO2濃度に依らず前記洗浄装置に前記洗浄動作を実行させる
、請求項4又は5に記載の排ガス処理用の制御装置。
【請求項8】
請求項1~5の何れかに記載の排ガス処理用の制御装置と、
前記CO2分離装置と、
前記出力空間におけるCO2を捕捉して貯留するCO2貯留装置と、
前記CO2濃度を検出するCO2濃度センサと、
前記洗浄装置と、を備えた
、CO2回収システム。
【請求項9】
入力空間、出力空間、及び、前記入力空間と前記出力空間との間に設けられ且つ前記入力空間へ熱機関から供給される排ガス中のCO2を前記出力空間に通過させるCO2分離膜を有するCO2分離装置と、前記CO2分離膜を洗浄する洗浄装置と、が設けられた対象機器にて使用される排ガス処理用の制御方法であって、
前記熱機関が作動することで前記熱機関から前記排ガスが送出される排ガス送出期間において、前記出力空間におけるCO2濃度に応じて前記洗浄装置に前記CO2分離膜の洗浄動作を実行させる
、排ガス処理用の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理用の制御装置及び方法並びにCO2回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃機関にて生じた排ガスからCO2を分離して回収する技術がある。CO2分離膜を用いて排ガスからCO2を分離することができる。尚、下記特許文献1には、分離膜モジュールを含む濾過装置において、濾過処理を濾過停止時間を挟んで繰り返し、濾過停止時間に洗浄液を分離膜モジュールに通液させる技術が開示されている(特に例えば特許文献1の段落[0010]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CO2分離膜への排ガスの供給を続けるとCO2分離膜の汚染が進む。CO2分離膜が汚染されるとCO2分離膜の性能が低下し、結果、CO2の回収能力が低下する。特に、排ガスに含まれる被毒物質がCO2分離膜に付着すると、化学反応によりCO2分離膜が劣化するおそれがある。NOX及びSOXは被毒物質に該当する。
【0005】
CO2分離膜を洗浄すれば、CO2の回収能力の復帰及びCO2分離膜の劣化防止が図られる。但し、この際、CO2分離膜を適正なタイミングで洗浄することが肝要となる。CO2分離膜を適正なタイミングで洗浄できれば、CO2の回収能力を高く維持できると共にCO2分離膜の劣化を極力抑えることができるからである。尚、特許文献1の方法と類似して、熱機関の作動停止中にCO2分離膜を洗浄するといった参考方法が検討される。しかしながら、当該参考方法では、CO2分離膜の洗浄タイミングが熱機関の作動及び停止タイミングに依存するため、CO2分離膜を適正なタイミングで洗浄することが難しい。CO2分離膜の適正タイミングでの洗浄を優先し、熱機関の作動を停止させることも実用的ではない。
【0006】
本発明は、CO2分離膜の適正タイミングでの洗浄に寄与する排ガス処理用の制御装置及び方法並びにCO2回収システムを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る排ガス処理用の制御装置は、入力空間、出力空間、及び、前記入力空間と前記出力空間との間に設けられ且つ前記入力空間へ熱機関から供給される排ガス中のCO2を前記出力空間に通過させるCO2分離膜を有するCO2分離装置と、前記CO2分離膜を洗浄する洗浄装置と、が設けられた対象機器にて使用される排ガス処理用の制御装置であって、処理部を備え、前記処理部は、前記熱機関が作動することで前記熱機関から前記排ガスが送出される排ガス送出期間において、前記出力空間におけるCO2濃度に応じて前記洗浄装置に前記CO2分離膜の洗浄動作を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、CO2分離膜の適正タイミングでの洗浄に寄与する排ガス処理用の制御装置及び方法並びにCO2回収システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両及び車両内部の概略的な平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係り、CO
2回収制御が行われる場合の排ガスの流れを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係り、直接排出制御が行われる場合の排ガスの流れを示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係り、制御装置の内部構成図である。
【
図5】本発明の実施形態に係り、制御装置の機能ブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態に属する第1実施例に係り、CO
2回収システムの動作フローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態に属する第1実施例に係り、CO
2の検出濃度及び動作モードの時系列変化を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に属する第2実施例に係り、洗浄動作の効果を評価する技術の説明図である。
【
図9】
図8に関連する洗浄評価部の動作フローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態に属する第2実施例に係り、洗浄動作の効果を評価する技術の説明図である。
【
図11】本発明の実施形態に属する第5実施例に係り、液体噴射を行う洗浄装置の構成を示す図である。
【
図12】本発明の実施形態に属する第5実施例に係り、空気の吹き付けを行う洗浄装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、機能部、回路、素子又は部品等の名称を省略又は略記することがある。
【0011】
図1は本実施形態に係る車両1の概略的な平面図である。車両1にはCO
2回収システムが搭載される。CO
2は二酸化炭素を指す。尚、本明細書においてCO
2とCO2は同じものを指す。車両1は例えば路面上を走行可能な自動車であるが、車両1の種類は任意である。
【0012】
車両1には、内燃機関11、排気マニホールド12、排気管13、浄化装置14、切り替え弁15、回収用接続路16、排気用接続路17及びマフラ18が設けられる。
【0013】
車両1には更に、洗浄装置20、CO2分離装置30、分離ガス路36、残ガス排出路37、CO2貯留装置40、CO2濃度センサSS及び制御装置100が設けられる。CO2回収システムは、内燃機関11からの排ガス中のCO2をCO2貯留装置40にて貯留(換言すれば回収)する。以下、各部の構成及び機能を説明する。
【0014】
内燃機関11は、熱機関の例であり、燃料を内部で燃焼させることによって車両1を駆動するための駆動力を発生させる。内燃機関11に加えて電動機(不図示)が車両1に設けられていて良い。この場合、内燃機関11と電動機を併用して車両1を駆動するための駆動力を発生させる。
【0015】
内燃機関11内での燃料の燃焼によって生じた排ガス(排気ガス)は排気マニホールド12を通じて排気管13に流入する。排気管13に対して浄化装置14が設けられる。換言すれば、排気管13にて形成される排ガスの流路に浄化装置14が挿入される。排気管13は、排気マニホールド12と浄化装置14との間に設けられる連結路13aと、浄化装置14と切り替え弁15との間に設けられる連結路13bと、を有する。連結路13aは排気マニホールド12と浄化装置14とを連結する。内燃機関11から送出された排ガスは連結路13aを通って浄化装置14に流れ込む。
【0016】
浄化装置14は自身に流入した排ガスを浄化する。当該浄化において、浄化装置14は自身に流入した排ガス中の浄化対象物質を除去する。浄化対象物質はNOX、SOX、HC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)を含む。NOXは窒化酸化物を指し、例えばNO、NO2、N2O4、N2O3又はN2Oである。SOXは硫黄酸化物を指し、例えばSO2又はSO3である。浄化装置14は浄化対象物質の除去に適した触媒を含む。浄化装置14は、酸化触媒による浄化装置、排ガス中の粒子状物質(主にスス)を除去するフィルタ装置、及び、尿素を還元剤として使用した選択還元型触媒装置(いわゆる尿素SCR)を含んでいて良い。尚、除去対象物質が完全に浄化装置14にて除去されるとは限らず、除去対象物質の濃度等に依存して、除去対象物質の幾らかは浄化装置14を通過し得る。
【0017】
連結路13bは浄化装置14と切り替え弁15とを連結する。浄化装置14による浄化後の排ガスは連結路13bの内部を通って切り替え弁15に流れ込む。切り替え弁15に対して回収用接続路16及び排気用接続路17が連結される。切り替え弁15は三方性の電磁弁である。切り替え弁15は、連結路13bを通じて自身に流れ込む排ガスを、制御装置100の制御の下で、回収用接続路16及び排気用接続路17の何れか一方に送り出す。尚、浄化装置14より下流側の部位(符号13b、15~18、20、30~33、36、37及び40にて参照される部位)に関して記述される排ガスは、内燃機関11からの排ガスであって且つ浄化装置14による浄化後の排ガスを指す。
【0018】
制御装置100は以下のCO2回収制御と直接排出制御を切り替え実行できる。CO2回収制御が行われる動作モードはCO2回収モードと称される。直接排出制御が行われる動作モードは直接排出モードと称される。
【0019】
図2にCO
2回収制御が行われる場合の排ガスの流れを概略的に示す。CO
2回収制御での動作はCO
2回収モードでの動作に相当する。CO
2回収制御では(従ってCO
2回収モードでは)、連結路13bを通じて切り替え弁15に流れ込む排ガスが切り替え弁15から回収用接続路16に送り出される。CO
2回収制御において、切り替え弁15から回収用接続路16に送り出された排ガスはCO
2分離装置30に供給される。
【0020】
CO2分離装置30は、CO2分離膜31、入力空間32及び出力空間33を備える。入力空間32と出力空間33との間にCO2分離膜31が設けられる。即ち、CO2分離装置30内の空間はCO2分離膜31を境界に入力空間32と出力空間33に分離される。CO2回収制御において、切り替え弁15から回収用接続路16に送り出された排ガスはCO2分離装置30の入力空間32に供給される(入力空間32に導かれる)。
【0021】
CO2分離膜31は、入力空間32中の排ガスの内、気体の二酸化炭素のみを選択的に通過させる膜である。CO2分離膜31を通過したガス(即ち気体の二酸化炭素)は出力空間33に入る。CO2回収制御において、CO2分離膜31を通過したガスは分離ガスとして分離ガス路36を通じCO2貯留装置40に送られる。CO2回収制御において、CO2分離膜31を通過しなかったガスは残ガスとして残ガス排出路37に送られる。残ガスは排ガスの一部である。理想的にはCO2以外のガスのみにて残ガスが構成されるが、残ガスにCO2が含まれることがある。残ガス排出路37はマフラ18に連結されており、残ガスはマフラ18を介して車外に排出される。車外とは車両1の外部を指す。
【0022】
図3に直接排出制御が行われる場合の排ガスの流れを示す。直接排出制御での動作は直接排出モードでの動作に相当する。直接排出制御では(従って直接排出モードでは)、連結路13bを通じて切り替え弁15に流れ込む排ガスが切り替え弁15から排気用接続路17に送り出される。直接排出制御において、切り替え弁15から排気用接続路17に送り出された排ガスは、CO
2分離装置30を経由することなくマフラ18を介して車外に排出される。
【0023】
マフラ18は排ガスの排気口である。マフラ18は排気用接続路17及び残ガス排出路37に連結される。マフラ18は排気用接続路17内の排ガス又は残ガス排出路37内の残ガスにおける温度及び圧力を低下させて排気騒音を低減させる機能を持つ。
【0024】
CO2貯留装置40は、分離ガス路36に連結され、CO2分離膜31を通過した分離ガス中のCO2を捕捉して貯留する(即ち出力空間33におけるCO2を捕捉して貯留する)。CO2貯留装置40におけるCO2の捕捉及び貯留の方法として、公知の方法を含む任意の方法を利用することができる。例えば、CO2の捕捉及び貯留の方法として、物理吸着法、物理吸収法、化学吸収法又は深冷分離法を利用できる。一例として、物理吸着法を採用される場合のCO2貯留装置40の構造及び機能を説明する。この場合、CO2貯留装置40は、活性炭又はゼオライト等から成り且つCO2の吸着に適したCO2吸着剤と、CO2吸着剤を収容する容器と、を備える。CO2吸着剤に対しCO2を含んだガス(上述の分離ガス)を接触させることによりCO2をCO2吸着剤に吸着させることができる。
【0025】
洗浄装置20は制御装置100の制御の下でCO2分離膜31を洗浄する。浄化装置14による浄化を経た後であっても排ガスには幾分かの被毒物質が含まれる。NOX及びSOXは被毒物質に該当する。被毒物質がCO2分離膜31に付着することでCO2分離膜31が汚染される。CO2分離膜31が汚染されると、CO2分離膜31の性能(CO2分離膜31でのCO2の分離能力)が低下し、結果、CO2の回収効率が低下する。CO2分離膜31を洗浄することでCO2分離膜31の性能回復が見込める。CO2分離膜31の洗浄方法については後述される。
【0026】
CO2濃度センサSS(以下、センサSSと略記され得る)は、CO2分離装置30における出力空間33に対して設置され、出力空間33内のCO2濃度を検出する。出力空間33内のCO2濃度とは、詳細には、出力空間33内におけるガス中のCO2の濃度である。センサSSにより検出された濃度を検出濃度CDETと称する。センサSSは検出濃度CDETを示す信号を制御装置100に出力する。本実施形態において濃度とは、任意の定義による濃度であって良いが、例えば質量パーセント濃度又は体積パーセント濃度である。
【0027】
図4に制御装置100の内部構成図を示す。制御装置100は、ハードウェア資源として演算処理部110、メモリ120及びインターフェース130を備える。演算処理部110は、MPU(Micro Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等を含む。制御装置100にて実行される任意の制御、動作及び処理は、演算処理部110にて実行される制御、動作及び処理であると解されて良い。演算処理部110においてMPUとGPUが一体に形成されていても良い(例えばMPUにGPUが内蔵されていても良い)。
【0028】
メモリ120は、ROM(Read only memory)又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及び、RAM(Random access memory)等の揮発性メモリを含む。メモリ120に格納されたプログラムを演算処理部110にて実行することで、制御装置100の各機能が実現されて良い。ここにおけるプログラムは複数のプログラムを含んでいて良い。演算処理部110に複数のMPUを設けておき、当該複数のMPUにて複数のプログラムが実行されることで、制御装置100の各機能が実現されても良い。制御装置100は1以上のECU(Electronic Control Unit)にて構成されていて良い。2以上のECUにおける2以上のMPUにより演算処理部110が構成されていても良い。
【0029】
インターフェース130は相手側装置と通信を行う。通信は双方向通信又は一方向通信である。車両1においてCAN(Controller Area Network)を含む通信網が形成される。相手側装置は車両1に設置され且つ上記通信網に接続された任意の装置を含む。制御装置100及び相手側装置は上記通信網を介して任意の情報及び信号の送受信が可能である。本実施形態において、相手側装置は、切り替え弁15、洗浄装置20及びセンサSSを含む。インターフェース130にとっての相手側装置は、車両1の外部に設けられた外部装置(サーバ装置等)を含み得る。制御装置100及び相手側装置間の通信は、インターフェース130を用いて実現されるが、以下では、インターフェース130の記述が省略されることがある。
【0030】
図5に制御装置100の機能ブロック図を示す。制御装置100には機能ブロックF1~F6が設けられる。演算処理部110において、単一のプログラム又は複数のプログラムが実行されることで機能ブロックF1~F5が実現されて良い。演算処理部110に複数のMPUを設けておき、当該複数のMPUにて複数のプログラムが個別に実行されることで任意の複数の機能ブロックが実現されて良い。機能ブロックF6はインターフェース130により実現される。機能ブロックF1、F2、F3、F4、F5、F6は、夫々、動作モード設定部、流路切り替え部、洗浄制御部、洗浄評価部、通知管理部、検出情報取得部である。
【0031】
動作モード設定部F1は動作モードをCO2回収モード又は直接排出モードに設定する。ここで、動作モードとは、制御装置100又は演算処理部110の動作モードであると解することもできるし、CO2回収システムの動作モードであると解することもできる。以下では例として、動作モード設定部F1により、演算処理部110の動作モードがCO2回収モード又は直接排出モードに設定されると考える。
【0032】
流路切り替え部F2は、切り替え弁15に制御信号を送ることで切り替え弁15の状態を制御及び設定し、これによって排ガスの流路を切り替える。流路切り替え部F2による切り替え弁15の状態制御により、上述のCO
2回収制御又は直接排出制御が切り替え実行される(
図2、
図3参照)。排ガスの流路として、CO
2回収流路と直接排出流路とがある。CO
2回収流路は、浄化装置14を通過した排ガスを切り替え弁15及び回収用接続路16を介してCO
2分離装置30の入力空間32に導く流路である。流路切り替え部F2は、CO
2回収制御において(従ってCO
2回収モードにおいて)排ガスの流路をCO
2回収流路に設定する。直接排出流路は、浄化装置14を通過した排ガスを、CO
2分離装置30に通過させることなく、切り替え弁15及び回収用接続路17を介してマフラ18に導く流路である。流路切り替え部F2は、直接排出制御において(従って直接排出モードにおいて)排ガスの流路を直接排出流路に設定する。
【0033】
洗浄制御部F3は、必要なタイミングにおいて、洗浄装置20を制御することでCO2分離膜31の洗浄動作を洗浄装置20に行わせる。洗浄評価部F4及び通知管理部F5の機能は後述される。検出情報取得部F6は、センサSSの出力信号に基づき検出濃度CDETの情報を取得する。検出情報取得部F6にて取得された情報は、演算処理部110内の各機能ブロック(F1~F5)に共有される。
【0034】
以下、複数の実施例の中で、CO2回収システムに関する幾つかの具体的な動作例、応用技術、変形技術等を説明する。本実施形態にて上述した事項は、特に記述無き限り且つ矛盾無き限り、以下の各実施例に適用される。各実施例において、上述の事項と矛盾する事項がある場合には、各実施例での記載が優先されて良い。また矛盾無き限り、以下に示す複数の実施例の内、任意の実施例に記載した事項を、他の任意の実施例に適用することもできる(即ち複数の実施例の内の任意の2以上の実施例を組み合わせることも可能である)。
【0035】
<<第1実施例>>
CO
2回収システムの第1実施例を説明する。
図6は第1実施例に係るCO
2回収システムの動作フローチャートである。
図6を参照して、CO
2回収システムの動作の流れを説明する。
【0036】
まずステップS11にて内燃機関11が作動開始する。内燃機関11の作動開始に伴って、内燃機関11からの排ガスの送出も開始される。ステップS11の後、内燃機関11が停止すると
図6の動作は終了するが、内燃機関11の停止に関わるステップは
図6では示されていない。以下、特に記述なき限り、内燃機関11は作動し続けるものとする。内燃機関11から排ガスが送出される期間を排ガス送出期間と称する。
図6の動作において、ステップS11以降の期間は、排ガス送出期間に属する。
【0037】
ステップS11に続くステップS12において、動作モード設定部F1は動作モードをCO
2回収モードに設定する。CO
2回収モードでは制御装置100によりCO
2回収制御(
図2参照)が実行される。このため、ステップS12では制御装置100によりCO
2回収制御が開始されることになる。具体的には、ステップS12において流路切り替え部F2は排ガスの流路を上述のCO
2回収流路に設定する。即ち、ステップS12において流路切り替え部F2は、連結路13bからの排ガスが切り替え弁15を介して回収用接続路16及びCO
2分離装置30に向かうよう切り替え弁15を制御する。ステップS12の後、ステップS13に進む。
【0038】
ステップS13において、検出情報取得部F6は、センサSSより検出濃度CDETの情報の取得を開始する。センサSSは所定の検出周期で出力空間33内のCO2濃度を順次検出する。検出情報取得部F6は上記検出周期に比例する周期で検出濃度CDETの情報を順次取得する。ステップS13の後、ステップS14に進む。ステップS13以降、洗浄制御部F3により、最新の検出濃度CDETが、閾濃度CTHと継続的に比較される。
【0039】
ステップS14において、演算処理部110(例えば動作モード設定部F1又は洗浄制御部F3)は、検出濃度CDETが所定の判定時間TS以上継続して閾濃度CTH未満であるかを判断する。判定時間TSを任意に定めておくことができる。判定時間TSは例えば1秒である。検出濃度CDETが所定の判定時間TS以上継続して閾濃度CTH未満である場合(ステップS14のY)、ステップS14からステップS15に進む。検出濃度CDETが所定の判定時間TS以上継続して閾濃度CTH未満となる状況が発生しない場合(ステップS14のN)、ステップS14の判断処理が繰り返される。このため、ステップS14への移行後、検出濃度CDETが所定の判定時間TS以上継続して閾濃度CTH未満となる状況が発生しない限りは、CO2回収モード及びCO2回収制御が維持される。
【0040】
閾濃度CTHは、予め設定された濃度値を有する。第1実施例において、演算処理部110は固定濃度(固定された濃度)を閾濃度CTHに設定する。閾濃度CTHは、CO2分離膜31の洗浄要否を峻別するための閾値(CO2濃度に関する閾値)であり、例えば2000ppm(即ち0.2%)である。
【0041】
ステップS15において、動作モード設定部F1は動作モードをCO
2回収モードから直接排出モードに切り替える。直接排出モードでは制御装置100により直接排出制御(
図3参照)が実行される。このため、ステップS15では制御装置100によりCO
2回収制御が開始されることになる。具体的には、ステップS15において流路切り替え部F2は排ガスの流路を上述の直接排出流路に設定する。即ち、ステップS15において流路切り替え部F2は、連結路13bからの排ガスが、CO
2分離装置30に向かうことなく、切り替え弁15を介し排気用接続路17に向かうよう切り替え弁15を制御する。ステップS15の後、ステップS16に進む。
【0042】
ステップS16において、洗浄制御部F3は、洗浄装置20に対して洗浄実行指令を出力することで洗浄装置20にCO2分離膜31の洗浄動作(以下、単に洗浄動作と称され得る)を実行させる。洗浄実行指令を受けた洗浄装置20は洗浄動作を実行する。洗浄動作において洗浄装置20はCO2分離膜31の洗浄を行う。
【0043】
ステップS16にて洗浄装置20による洗浄動作が開始される。ステップS16の後、ステップS17に進む。洗浄制御部F3は、CO2分離膜31の洗浄動作の開始時刻からの経過時間を計測する。ステップS17において、洗浄制御部F3は、計測した経過時間が所定の洗浄単位時間に達したかを判断する。計測した経過時間が洗浄単位時間に達するまでステップS17に留まり、計測した経過時間が洗浄単位時間に達すると(ステップS17のY)、ステップS18への移行が発生する。
【0044】
ステップS18において、洗浄制御部F3は、洗浄装置20に対して洗浄終了指令を出力することで洗浄装置20による洗浄動作を終了させる。洗浄終了指令を受けた洗浄装置20は洗浄動作を終了する。ステップS18の後、ステップS19に進む。
【0045】
ステップS19において、動作モード設定部F1は動作モードを直接排出モードからCO2回収モードに切り替える(換言すればCO2回収モードに戻す)。このため、ステップS19では制御装置100によりCO2回収制御が再開される。具体的には、ステップS19において流路切り替え部F2は排ガスの流路を上述のCO2回収流路に切り替える。即ち、ステップS19において流路切り替え部F2は、連結路13bからの排ガスが切り替え弁15を介して回収用接続路16及びCO2分離装置30に向かうよう切り替え弁15を制御する。ステップS19の後、ステップS14に戻り、上述の各処理が繰り返される。
【0046】
図7に検出濃度C
DET及び動作モードの時系列変化の例を示す。内燃機関11の作動前において出力空間33は大気と同程度の組成のガス(以下、初期ガスと称する)にて満たされる。出力空間33に繋がる分離ガス路36内の空間及びCO
2貯留装置40内の空間も同様である。内燃機関11の作動前において、出力空間33内のCO
2濃度(従って検出濃度C
DET)は閾濃度C
THよりも十分に低い。今、時刻t
A1にて内燃機関11が作動開始したとする。時刻t
A1直後から動作モードはCO
2回収モードに設定される。
図7の例において、時刻t
A1以降は内燃機関11が作動し続けるものとする。
【0047】
内燃機関11が作動開始して排ガスが入力空間32に供給され始めると、出力空間33内のガスは、初期ガスに対し、CO2分離膜31を通過したガスを追加したのものとなる。故に、内燃機関11の作動開始後、出力空間33内のCO2濃度(従って検出濃度CDET)が上昇してゆく。排ガス送出期間中、排ガス中のCO2濃度は様々に変化し、これに連動して、入力空間32内のガス中のCO2濃度及び出力空間33内のガス中のCO2濃度も様々変化する。但し、CO2分離膜31の汚染の程度が十分に低ければ、排ガス送出期間において検出濃度CDETは基本的に閾濃度CDETを下回らない。入力空間32内のCO2をCO2分離膜31が継続的に出力空間33へと通過させるからである。尚、内燃機関11の作動開始直後、出力空間33内のCO2濃度の上昇過程において“CDET<CTH”となることもある。このため、内燃機関11の作動開始から所定のマスク時間(例えば5秒)が経過するまで、洗浄制御部F3はマスク処理を行うと良い。マスク処理の実行期間では、検出濃度CDETと閾濃度CTHとの比較が行われず、ステップS14の処理がマスクされる(非実行とされる)。
【0048】
図7の例では、時刻t
A1の後、出力空間33内のCO
2濃度(従って検出濃度C
DET)が速やかに閾濃度C
THを上回り、以後、時刻t
A2に至るまでは“C
DET>C
TH”が常時成立する。時刻t
A1及びt
A2間においてCO
2分離膜31の汚染が進行し、時刻t
A2を境に“C
DET>C
TH”の成立状態から“C
DET<C
TH”の成立状態に切り替わる。時刻t
A3は時刻t
A2から判定時間T
Sだけ後の時刻である。時刻t
A2及びt
A3間において“C
DET<C
TH”が維持される。そうすると、時刻t
A3にてステップS14の判断結果が“肯定”となり(ステップS14のY)、ステップS15に進む。
【0049】
このため、時刻tA3にて動作モードがCO2回収モードから直接排出モードに切り替わり、且つ、直接排出モードへの切り替わり後、遅滞なく洗浄動作が開始される。洗浄動作の開始後、洗浄単位時間が経過すると洗浄動作が終了する(ステップS17及びS18)。洗浄動作の終了後、時刻tA4にて動作モードが直接排出モードからCO2回収モードへと切り替わる。尚、時刻tA3及びtA4間における出力空間33内のCO2濃度は、制御装置100にて参照されない。時刻tA3及びtA4間においてセンサSSは検出動作を停止していても良い。
【0050】
時刻tA3及びtA4間にて行われた洗浄動作により、汚染によるCO2分離膜31の性能低下が解消される。結果、時刻tA4の後、出力空間33内のCO2濃度(従って検出濃度CDET)が上昇してゆき、速やかに“CDET>CTH”となる。尚、動作モードがCO2回収モードに切り替えられた直後において検出濃度CDETは閾濃度CTHより低い。このため、時刻tA4にて動作モードを直接排出モードからCO2回収モードへと切り替えた後、所定のマスク時間(例えば5秒)が経過するまで、洗浄制御部F3は上述のマスク処理を行うと良い。
【0051】
時刻tA4の後も、CO2分離膜31が再度汚染されることでステップS14の判断結果が“肯定”となったならば、上述と同様に動作モードの直接排出モードへの切り替えを伴って洗浄動作を実行する。
【0052】
上述の如く、洗浄制御部F3は、排ガス送出期間において検出濃度CDETに応じ、洗浄装置20にCO2分離膜31の洗浄動作を実行させる。
【0053】
検出濃度CDETを参照することでCO2分離膜31の汚染度合いを推測することができる。そして、検出濃度CDETに基づく適正タイミングにてCO2分離膜31の洗浄を行うことで、高いCO2回収効率を維持することができる。
またCO2分離膜31に被毒物質が付着したまま放置すると、CO2分離膜31と被毒物質との間で化学反応が進行してCO2分離膜31の劣化が進むおそれがある。検出濃度CDETを参照することでCO2分離膜31の汚染度合い(CO2分離膜31への被毒物質の付着度合い)を推測することができる。そして、検出濃度CDETに基づく適正タイミングにてCO2分離膜31の洗浄を行うことで、CO2分離膜31の劣化を抑制することができる(CO2分離膜31の長寿命化が図られる)。
加えて内燃機関11の作動中に洗浄動作が行われるため、洗浄にあたり、内燃機関11を停止させる必要は無い。
【0054】
具体的には、洗浄制御部F3は、排ガス送出期間において、検出濃度CDETを、設定された閾濃度CTHと比較することにより、洗浄動作の実行是非を決定する(ステップS14)。CO2分離膜31の汚染進行に伴い検出濃度CDETが低下することが見込まれる。このため、検出濃度CDETを閾濃度CTHと比較すれば洗浄動作の適正な実行タイミングを推測できる。適正なタイミングでの洗浄動作の実行は、高いCO2回収効率の維持及びCO2分離膜31の劣化抑制(CO2分離膜31の長寿命化)に繋がる。
【0055】
より具体的には、洗浄制御部F3は、排ガス送出期間において、“CDET<CTH”の成立状態が所定の判定時間TS以上継続するとき、洗浄装置20に洗浄動作を行わせる(ステップS14)。これにより、適正なタイミングで洗浄動作を実行できる。適正なタイミングでの洗浄動作の実行は、高いCO2回収効率の維持及びCO2分離膜31の劣化抑制(CO2分離膜31の長寿命化)に繋がる。
【0056】
また、排ガス送出期間において、動作モード設定部F1により動作モードがCO2回収モード又は直接排出モードに設定される。洗浄動作の実行期間において連結路13b及びCO2分離装置30間の流路が繋がっていると、洗浄動作で用いる液体等が内燃機関11側に逆流するおそれがある、或いは、CO2分離膜31の洗浄が適正に行えないおそれがある。このため、演算処理部110は洗浄動作の実行期間において直接排出モードで動作する。これにより、逆流のおそれが解消されると共に適正な洗浄が担保される。内燃機関11が停止しているときに洗浄動作を実行するという方法も検討されるが、当該方法では洗浄動作を適正タイミングに実行できない。或いは、洗浄動作の実行期間にて内燃機関11を停止させるという方法も検討されるが、当該方法では内燃機関11の連続作動が妨げられる。本実施例では、内燃機関11の連続作動と適正タイミングでの洗浄動作実行とを両立できる。
【0057】
より具体的には、排ガス送出期間にて演算処理部110(又はCO2回収システム)がCO2回収モードで動作しているとき、演算処理部110(例えば動作モード設定部F1又は洗浄制御部F3は“CDET<CTH”の成否を監視する。そして、“CDET<CTH”の成立状態が所定の判定時間TS以上継続するとき、動作モード設定部F1は動作モードを直接排出モードに切り替える(ステップS15)。加えて、洗浄制御部F3は洗浄装置20に洗浄動作を開始させ(ステップS16)、洗浄動作の終了後に動作モード設定部F1は動作モードをCO2回収モードに戻す(ステップS19)。これにより、洗浄に必要な期間だけ車外への排ガスの直接排出が行われ、排ガス送出期間の大部分においてCO2の回収動作を行うことができる。即ち、内燃機関11の連続作動を阻害することなく、環境負荷を極力低減することができる。
【0058】
<<第2実施例>>
CO2回収システムの第2実施例を説明する。第2実施例では洗浄評価部F4及び通知管理部F5の機能を説明する。説明の具体化のため、上述の時刻tA4後の動作に関連して洗浄評価部F4及び通知管理部F5の機能を説明する。
【0059】
図8を参照する。時刻t
A5は、時刻t
A4より所定の待機時間ΔT(例えば10秒)だけ後の時刻である。時刻t
A1以降、時刻t
A5より後の時刻まで内燃機関11の作動が継続し、従って排ガス送出期間は途切れないものとする。時刻t
A5は洗浄動作の効果を評価するためのタイミングに相当する。
【0060】
CO
2回収モードへの切り替え直後において検出濃度C
DETは閾濃度C
THより低く(
図7参照)、CO
2回収モードへの切り替え直後のタイミングは洗浄動作の効果を評価するタイミングに適さない。このため、時刻t
A4より待機時間ΔTが経過した時刻t
A5を基準に洗浄動作の効果を評価する。時刻t
A3及びt
A4間の洗浄動作によりCO
2分離膜31の汚染が十分に解消されたならば、時刻t
A5での検出濃度C
DETが十分に閾濃度C
THより高くなることが見込まれるよう、待機時間ΔTが設定される。
【0061】
時刻tA4の後、洗浄評価部F4は評価濃度CEV[1]を参照する。評価濃度CEV[1]は、時刻tA5での検出濃度CDETそのものであって良い。或いは、時刻tA5から始まる一定時間分の検出濃度CDETの平均値が、評価濃度CEV[1]であっても良い。
【0062】
洗浄評価部F4は評価濃度CEV[1]を所定の通知判定濃度CNと比較し、比較結果に基づく洗浄評価信号SEV[1]を生成及び出力する。洗浄評価部F4は洗浄評価信号SEV[1]に“0”又は“1”の値を持たせる。通知判定濃度CNは閾濃度CTHと同じであっても良いし、閾濃度CTHより若干高くても良い。
【0063】
図9に、
図8の例に関わる洗浄評価部F4の動作フローチャートを示す。ステップS31にて洗浄評価部F4は評価濃度C
EV[1]を通知判定濃度C
Nと比較し、続くステップS32にて評価濃度C
EV[1]が通知判定濃度C
N以上であるかを判断する。評価濃度C
EV[1]が通知判定濃度C
N以上であるとき(ステップS32のY)、洗浄評価部F4は洗浄評価信号S
EV[1]に“1”を設定する(ステップS33)。評価濃度C
EV[1]が通知判定濃度C
N未満であるとき(ステップS32のN)、洗浄評価部F4は洗浄評価信号S
EV[1]に“0”を設定する(ステップS34)。“1”の洗浄評価信号S
EV[1]は、時刻t
A3及びt
A4間にてCO
2分離膜31の洗浄が良好に行われたことを示す。“0”の洗浄評価信号S
EV[1]は、時刻t
A3及びt
A4間でのCO
2分離膜31の洗浄が不十分であることを示す。
【0064】
“0”の洗浄評価信号S
EV[1]が洗浄評価部F4から出力されたとき、演算処理部110は以下の方法MTD2aを実行しても良いし、或いは、以下の方法MTD2bを実行しても良い。“1”の洗浄評価信号S
EV[1]が洗浄評価部F4から出力されたとき、方法MTD2a又はMTD2bによる処理は実行されず、第1実施例に示した通りの動作が行われる(
図6のステップS14及びそれ以降の処理が繰り返される)。
【0065】
方法MTD2aを説明する。方法MTD2aにおいて、通知管理部F5は“0”の洗浄評価信号SEV[1]を受けて所定の交換通知処理を実行する。交換通知処理において、通知管理部F5はCO2分離膜31の交換を促す所定の交換通知を通知受理者に対して行う。CO2分離膜31の交換とは、車両1に現在設置されているCO2分離膜31を車両1から取り外して、新たに用意したCO2分離膜をCO2分離膜31として車両1に設置する作業を指す。通知受理者は基本的には車両1の運転手であるが、車両1の運転手以外の乗員又は管理者等であっても良い。
【0066】
交換通知処理における交換通知は、表示装置での表示により実現されて良い。具体的には例えば、交換通知処理において、通知管理部F5は車両1の運転席付近に設置された表示装置(不図示)に所定のメッセージを含む通知用画像を表示させる表示制御を行う。通知用画像におけるメッセージは、例えば「CO2分離膜の経年劣化が進んでいます。CO2分離膜を交換して下さい」といった文言を含む。通知用画像が表示される表示装置は、通知受理者が所持する携帯端末(例えば車両1の運転手が所持するスマートホン)の表示装置であっても良い。交換通知処理における交換通知は、表示装置での表示に加えて又は表示装置での表示に代えて、音声出力による通知を含んでいても良い。
【0067】
方法MTD2bを説明する。方法MTD2bでは、“0”の洗浄評価信号S
EV[1]の生成後、洗浄制御部F3は更に1回以上の洗浄動作を実行する。そして、更なる洗浄動作を経ても評価濃度が通知判定濃度C
N以上とならない場合に交換通知処理を行う。
図10を参照して、方法MTD2bの例を詳説する。時刻t
A5の後、時間の経過につれて、時刻t
A6、t
A7、t
A8が、この順番で訪れる。時刻t
A1以降、時刻t
A8より後の時刻まで内燃機関11の作動が継続し、従って排ガス送出期間は途切れないものとする。
【0068】
方法MTD2bにおいて、動作モード設定部F1は“0”の洗浄評価信号SEV[1]を受け、時刻tA6にて動作モードをCO2回収モードから直接排出モードに切り替える。時刻tA6での直接排出モードへの切り替わり後、遅滞なく洗浄制御部F3は洗浄装置20に再度の洗浄動作を開始させる。再度の洗浄動作の開始後、洗浄単位時間が経過すると洗浄制御部F3は洗浄装置20による再度の洗浄動作を終了させる。再度の洗浄動作の終了後、動作モード設定部F1は、時刻tA7にて動作モードを直接排出モードからCO2回収モードへと切り替える。時刻tA8は、時刻tA7より所定の待機時間ΔTだけ後の時刻である。
【0069】
時刻tA7の後、洗浄評価部F4は評価濃度CEV[2]を参照する。評価濃度CEV[2]は、時刻tA8での検出濃度CDETそのものであって良い。或いは、時刻tA8から始まる一定時間分の検出濃度CDETの平均値が、評価濃度CEV[2]であっても良い。
【0070】
洗浄評価部F4は評価濃度CEV[2]を所定の通知判定濃度CNと比較し、比較結果に基づく洗浄評価信号SEV[2]を生成及び出力する。洗浄評価部F4は洗浄評価信号SEV[2]に“0”又は“1”の値を持たせる。洗浄評価部F4は、評価濃度CEV[2]が通知判定濃度CN以上であるとき、洗浄評価信号SEV[2]に“1”を設定し、評価濃度CEV[2]が通知判定濃度CN未満であるとき、洗浄評価信号SEV[2]に“0”を設定する。“1”の洗浄評価信号SEV[2]は、時刻tA6及びtA7間にてCO2分離膜31の洗浄が良好に行われたことを示す。“0”の洗浄評価信号SEV[2]は、時刻tA6及びtA7間でのCO2分離膜31の洗浄が不十分であることを示す。
【0071】
方法MTD2bにおいて、通知管理部F5は“0”の洗浄評価信号S
EV[2]を受けて上記の交換通知処理を実行する。“1”の洗浄評価信号S
EV[2]が洗浄評価部F4から出力されたときには、以後、
図6のステップS14及びそれ以降の処理が繰り返される
【0072】
図10の例では、2回の洗浄動作を経ても評価濃度が通知判定濃度C
N未満であることが想定されており、“0”の洗浄評価信号S
EV[2]に応答して交換通知処理が行われる。但し、n回の洗浄動作を経ても評価濃度が通知判定濃度C
N未満であるときに交換通知処理を行うようにしても良い(nは2以上の任意の整数)。
【0073】
方法MTD2a又はMTD2bにより交換通知処理が実行された後においては、CO
2分離膜31の交換が実施されない限り、動作モード設定部F1は動作モードをCO
2回収モード又は直接排出モードに維持して良い。尚、
図10では、時刻t
A7以降、動作モードがCO
2回収モードに維持されると仮定されている。
【0074】
このように、通知管理部F5は、排ガス送出期間において、洗浄動作の実行後の検出濃度CDETに応じ所定の通知(例えば交換通知)を通知受理者に行う。これにより例えば、CO2分離膜31の適正な交換時期を通知受理者に知らせることが可能となる。
【0075】
尚、通知管理部F5は、“1”の洗浄評価信号SEV[1]又はSEV[2]が洗浄評価部F4から出力されたとき、洗浄動作が正常終了したことを示す通知を通知受理者に行っても良い。
【0076】
<<第3実施例>>
CO2回収システムの第3実施例を説明する。演算処理部110は、CO2回収モードでの動作累積時間TACMを計測する。動作累積時間TACMは、演算処理部110及びCO2回収システムがCO2回収モードで動作する期間の長さの総和である。
【0077】
第3実施例に係る演算処理部110は、
図6のステップS14~S19から成るループ処理の繰り返しの中で、動作累積時間T
ACMを所定の洗浄トリガ時間と比較する。そして、動作累積時間T
ACMが所定の洗浄トリガ時間に達したとき、第3実施例に係る演算処理部110は検出濃度C
DETに依らずステップS15への移行を発生させる。つまり、検出濃度C
DETに依らず、動作累積時間T
ACMが所定の洗浄トリガ時間に達したことに応答して、洗浄制御部F3は洗浄装置20に洗浄動作を実行させる。洗浄動作の実行期間において、動作モードが直接排出モードに設定される点は第1実施例で示した通りである。動作累積時間T
ACMが洗浄トリガ時間に達したことに応答してステップS15への移行を発生させたとき、演算処理部110は動作累積時間T
ACMをリセットする(即ち、動作累積時間T
ACMにゼロを代入する)。
【0078】
ステップS14の判断処理が“肯定”にならなくとも、動作累積時間TACMの増大によりCO2分離膜31の汚染は徐々に進行し、CO2分離膜31の劣化に繋がる化学反応が進む可能性がある。本実施例は、CO2分離膜31の劣化の抑制に繋がる。
【0079】
また洗浄制御部F3は、検出濃度CDETに依らず且つ内燃機関11の作動状態に依らず、一定の周期で、洗浄装置20に洗浄動作を実行させても良い。何れの場合においても、洗浄動作の実行期間では動作モードが直接排出モードに設定される。
【0080】
<<第4実施例>>
CO2回収システムの第4実施例を説明する。演算処理部110は、閾濃度CTHを可変設定する可変設定部(不図示)を、機能ブロックの1つとして備えていても良い。以下、閾濃度CTHを可変設定方法の例を挙げる。尚、第4実施例では、第2実施例で述べたようなCO2分離膜31の交換は行われないと想定する。
【0081】
例えば、可変設定部は洗浄動作の実行回数に応じて閾濃度CTHを可変設定して良い。洗浄動作の実行回数は、洗浄装置20が実行した洗浄動作の総回数であり、換言すれば洗浄制御部F3が洗浄装置20に洗浄動作を実行させた回数の累積値である。洗浄動作の実行回数がゼロであるとき、閾濃度CTHは初期値を有する。そして、可変設定部は、洗浄動作の実行回数が増大するにつれて閾濃度CTHを初期値から段階的に又は連続的に低下させることができる。適正に洗浄動作を行ったとしてもCO2分離膜31の性能は徐々に低下してゆく。このため、洗浄動作の実行回数の増大に伴って閾濃度CTHを徐々に低下させることが、洗浄動作の実行タイミングの適正化に資すると考えられる。
【0082】
また例えば、可変設定部は車両1の累積走行距離に応じて閾濃度CTHを可変設定して良い。車両1の累積走行距離は車両1が走行した距離の累積値である。可変設定部は、車両1に搭載されたオドメータから車両1の累積走行距離の情報を取得できる。車両1の累積走行距離がゼロであるとき、閾濃度CTHは初期値を有する。そして、可変設定部は、車両1の累積走行距離が増大するにつれて閾濃度CTHを初期値から段階的に又は連続的に低下させることができる。適正に洗浄動作を行ったとしてもCO2分離膜31の性能は徐々に低下してゆく。このため、車両1の累積走行距離の増大に伴って閾濃度CTHを徐々に低下させることが、洗浄動作の実行タイミングの適正化に資すると考えられる。
【0083】
可変設定部は推定用情報に基づきCO2分離膜31の経年劣化の程度を推定し、推定結果に基づいて閾濃度CTHを可変設定して良い。洗浄動作の実行回数及び車両1の累積走行距離は、推定用情報の例である。推定用情報は、第3実施例で述べた動作累積時間TACMであっても良い。
【0084】
また例えば、可変設定部は車両1の燃料の種類に応じて閾濃度CTHを可変設定して良い。燃料の種類が相違すれば、内燃機関11から送出される排ガスの成分も相違するからである。車両1の燃料とは、内燃機関11の内部で燃焼させる燃料を指す。具体的には、車両1の燃料が、レギュラーガソリンであるときと、レギュラーガソリンよりも高いオクタン価を有するハイオクガソリンであるときと、軽油であるときとで、可変設定部は閾濃度CTHを互いに相違させて良い。
【0085】
また例えば、可変設定部は車両1の走行状態に応じて閾濃度CTHを可変設定して良い。より具体的には例えば、可変設定部は内燃機関11としてのエンジンの回転数に応じて閾濃度CTHを可変設定して良く、当該回転数が略一定に保たれているときと比べて、当該回転数の急変時にて閾濃度CTHを高めても良い。エンジンの回転数の急変時には排ガス中のCO2濃度が高まりやすいからである。エンジンの回転数の急変時とはエンジンの回転数が急変する状態に相当し、例えば、単位時間当たりにおけるエンジンの回転数の変化量が所定量以上となる状態を指す。
【0086】
<<第5実施例>>
CO2回収システムの第5実施例を説明する。第5実施例では洗浄装置20の構成及びCO2分離膜31の洗浄方法を説明する。
【0087】
洗浄装置20はCO
2分離膜31に液体を噴射することによりCO
2分離膜31を洗浄して良い。
図11に液体噴射を行う洗浄装置20の構成を示す。
図11の洗浄装置20はインジェクタ21を備える。貯水装置61及びエバポレータ62は車両1に設けられる。洗浄動作において、インジェクタ21は洗浄用の液体をCO
2分離膜31に向けて噴射する。これにより、CO
2分離膜31に付着した被毒物質が洗い流される。
【0088】
洗浄用の液体は水である。この際、インジェクタ21は貯水装置61から水を取得する。車両1に設けられたエアコンディショナが空気冷却を行う際にエバポレータ62で水が生じる。貯水装置61はエバポレータ62で生じた水を貯える。また、貯水装置61は触媒作用によりマフラ20に貯まる水を取得し、貯えても良い。このように、
図11の洗浄装置20は車両1の搭載機器からの排水を洗浄用の液体として用いることができ、これにより簡単な構成で洗浄用の液体(水)を得ることができる。また、貯水装置61は、自身に貯められる水の温度を内燃機関11の排熱、及び、エアコンディショナ又はラジエータの冷却作用などを利用して調節する。これにより、被毒物質の洗浄に適した温度の水をインジェクタ21に提供できる。
【0089】
洗浄用の液体は水以外の液体であっても良い。水以外の液体として、洗剤を含む液体又は尿素水が挙げられる。洗浄用の液体が水以外の液体であるとき、貯水装置61の代わりに又は貯水装置61とは別に、洗浄用の液体を貯えるタンク(不図示)が車両1に設けられると良い。
【0090】
図11の洗浄装置20に対し弁26が設けられていて良い。弁26は、インジェクタ21とCO
2分離膜31との間に設置される。洗浄装置20は、洗浄動作を実行するときにのみ、弁26を開状態にして、インジェクタ21から洗浄用の液体をCO
2分離膜31に噴射可能とする。
【0091】
CO
2分離膜31は第1面及び第2面を有する。CO
2分離膜31の第1面とは、CO
2分離膜31の両面の内、入力空間32に接する面を指す。CO
2分離膜31の第2面とは、CO
2分離膜31の両面の内、出力空間33に接する面を指す。
図11では、インジェクタ21からの洗浄用の液体がCO
2分離膜31の第1面に噴射され、これによってCO
2分離膜31の第1面が洗浄されることが想定されている。但し、インジェクタ21からの洗浄用の液体がCO
2分離膜31の第2面に噴射されるようインジェクタ21を配置し、これによってCO
2分離膜31の第2面が洗浄されるようにしても良い。2つのインジェクタ21を洗浄装置20に設けてCO
2分離膜31の第1面及び第2面の双方を洗浄しても良い。
【0092】
洗浄装置20はCO
2分離膜31に空気を吹き付けることによりCO
2分離膜31を洗浄して良い。
図12に空気の吹き付けを行う洗浄装置20の構成を示す。
図12の洗浄装置20は送風機22を備える。洗浄動作において、送風機22はCO
2分離膜31に向けて空気を吹き付ける。これにより、CO
2分離膜31に付着した被毒物質が吹き飛ばされる。
【0093】
図12の洗浄装置20に対し弁26が設けられていて良い。弁26は、送風機22とCO
2分離膜31との間に設置される。洗浄装置20は、洗浄動作を実行するときにのみ、弁26を開状態にして、送風機22によるCO
2分離膜31への空気吹き付けを可能とする。
図12では、送風機22がCO
2分離膜31の第1面に対して空気を吹き付け、これによってCO
2分離膜31の第1面が洗浄されることが想定されている。但し、送風機22からの空気がCO
2分離膜31の第2面に対して吹き付けられるよう送風機22を配置し、これによってCO
2分離膜31の第2面が洗浄されるようにしても良い。或いは、2つの送風機22を洗浄装置20に設けてCO
2分離膜31の第1面及び第2面の双方を洗浄しても良い。
【0094】
尚、洗浄装置20は送風機22により空気を吹き付ける代わりに、ボンベに貯蔵されたガスをCO2分離膜31に吹き付けるようにしても良い。
【0095】
洗浄装置20にインジェクタ21及び送風機22の双方を設けるようにしても良い。インジェクタ21及び送風機22の双方を有する洗浄装置20を特に複合洗浄装置20と称する。インジェクタ21が洗浄用の液体をCO2分離膜31に噴射する動作を、液体噴射動作と称する。送風機22が空気をCO2分離膜31に吹き付ける動作を、空気吹き付け動作と称する。
【0096】
複合洗浄装置20は、1回の洗浄動作において液体噴射動作及び空気吹き付け動作の何れか一方を行うようにしても良い。この際、複合洗浄装置20は、複数回の洗浄動作において、液体噴射動作及び空気吹き付け動作を交互に切り替えて行うようにしても良い。或いは、複合洗浄装置20は、貯水装置61に必要量の水が溜まっているときには洗浄動作として液体噴射動作を実行し、そうでないときには洗浄動作として空気吹き付け動作を実行しても良い。
【0097】
1回の洗浄動作において、複合洗浄装置20は、液体噴射動作と空気吹き付け動作とを同時に行って良い。1回の洗浄動作において、複合洗浄装置20は、液体噴射動作と空気吹き付け動作とを別々のタイミングで行っても良い。
【0098】
CO2分離膜31にNOX又はSOXが付着している状態でCO2分離膜31に水が存在すると、CO2分離膜31にて強酸が発生してCO2分離膜31の劣化が促進されるおそれがある。これを考慮し、1回の洗浄動作において、複合洗浄装置20は、空気吹き付け動作を行った後に液体噴射動作を行っても良い。この場合、CO2分離膜31から被毒物質が大まかに除去された後に、CO2分離膜31に液体が噴射される。CO2分離膜31から被毒物質が大まかに除去されることは、CO2分離膜31において液体(特に水)と反応する被毒物質が顕著に減ることを意味する。このため、空気吹き付け動作を行ってから液体噴射動作を行う方法によれば、液体噴射動作の実行によってCO2分離膜31が劣化するといった事態が回避される。
【0099】
<<第6実施例>>
CO2回収システムの第6実施例を説明する。第6実施例では、上述した各事項に対する変形技術又は補足事項等を説明する。
【0100】
CO2貯留装置40にて貯留されたCO2は、例えば、ガソリンスタンド又は車庫等に設置された回収機器(不図示)に対してCO2貯留装置40が接続されたときに、CO2貯留装置40から回収機器に放出される。或いは、CO2貯留装置40全体又はCO2貯留装置40内のカートリッジを車両1から取り外すことで、CO2貯留装置40に貯留されたCO2が車外に取り出されても良い。
【0101】
排ガスに関わる装置として、上述の各図面に示されない装置(以下、追加装置と称する)が車両1に設けられていても良い。追加装置として排ガス冷却装置が車両1に設置されて良い。排ガス冷却装置は、排ガスの流路においてCO2分離装置30の上流側に配置され、CO2分離装置30に流入する排ガスの温度を低下させる。排ガス冷却装置の設置により、熱によるCO2分離装置30の劣化(特にCO2分離膜31の劣化)を抑制することができる。追加装置としてエネルギ変換装置が車両1に設置されて良い。エネルギ変換装置は、排ガスが有する熱エネルギを他のエネルギ(電気エネルギ等)に変換する。変換により得られた他のエネルギ(電気エネルギ等)を車両1にて利用することができる。排ガスをエネルギ変換装置に通すことで排ガスの温度が低下する。このため、エネルギ変換装置は排ガス冷却装置の一種であるともいえる。排ガスの流路においてエネルギ変換装置をCO2分離装置30の上流側に配置し、CO2分離装置30に流入する排ガスの温度をエネルギ変換装置にて低下させて良い。
【0102】
図1に示す構造ではCO
2回収制御(
図2参照)が行われるとき、排ガスの一部はCO
2分離装置30を経由してからマフラ18に送られる。しかしながら、CO
2回収制御が行われるとき、CO
2分離装置30に供給される前の排ガスを分離前マフラ(不図示)に供給し、分離前マフラの経由後の排ガスをCO
2分離装置30に供給する変形構成が採用されても良い。分離前マフラは、車両1に対しマフラ18とは別に設置されたマフラであって良い。当該変形構成では、CO
2分離装置30に流入する排ガスの温度を分離前マフラにより下げることができるため、熱によるCO
2分離膜31の劣化を抑制することができる。分離前マフラは上述の排ガス冷却装置の一種であると解しても良い。
【0103】
本実施形態に係るCO2回収システムは、少なくとも制御装置100、洗浄装置20、CO2分離装置30、CO2貯留装置40及びCO2濃度センサSSを備えて構成される。但し、車両1に搭載されるものとして上述した任意の部品(例えば切り替え弁15)は、CO2回収システムの構成要素に含まれ得る。CO2回収システムを排ガス処理装置と読み替えても良い。制御装置100は排ガス処理用の制御装置として機能する又は排ガス処理用の制御装置を内包する。
【0104】
車両1は内燃機関11を用いて発生した駆動力にて移動する移動体の例である。本発明において、移動体は車両に分類されないもの(例えばロボット、ドローン)であっても良い。
【0105】
車両1は、本発明に係る排ガス処理用の制御装置及びCO2回収システムが適用される対象機器の例である。本発明に係る排ガス処理用の制御装置及びCO2回収システムを、車載用途とは異なる任意の用途に適用することも可能である。即ち、対象機器は車両に限定されず、本発明に係る排ガス処理用の制御装置及びCO2回収システムを任意の対象機器に適用及び搭載できる。また、上述の車両1に設けられる熱機関は内燃機関(11)であるが、対象機器に設けられる熱機関は内燃機関及び外燃機関の何れであっても良いし、内燃機関及び外燃機関の組み合わせであっても良い。熱機関の作動により熱機関からCO2を含む排ガスが送出される。
【0106】
具体的には、対象機器は化石燃料(石油又はガス等)を燃焼させる装置又は設備であっても良い。化石燃料を燃焼させる装置又は設備の例として、火力発電を行う装置又は設備、溶炉を備えた装置又は設備、コジェネレーションを行う装置又は設備、及び、暖房装置が挙げられる。閉鎖環境の換気システムに対して、本発明に係る排ガス処理用の制御装置及びCO2回収システムを適用及び搭載しても良い。閉鎖環境として、宇宙空間に形成された居住施設(宇宙ステーション等)、及び、深海に形成された居住施設が挙げられる。
【0107】
本発明の実施形態にて述べた任意の方法をコンピュータに実行させるプログラム、及び、そのプログラムを記録した記録媒体であって且つコンピュータ読み取り可能な不揮発性の記録媒体は、本発明の実施形態の範囲に含まれる。本発明の実施形態における任意の処理は、半導体集積回路等のハードウェア、上記プログラムに相当するソフトウェア、又は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現されて良い。ここにおけるソフトウェア及びハードウェアは夫々に複数あっても良い。
【0108】
本発明の一側面に係るプログラムは、入力空間、出力空間、及び、前記入力空間と前記出力空間との間に設けられ且つ前記入力空間へ熱機関から供給される排ガス中のCO2を前記出力空間に通過させるCO2分離膜を有するCO2分離装置と、前記CO2分離膜を洗浄する洗浄装置と、が設けられた対象機器にて使用される排ガス処理用の制御方法を演算処理部(110)に実行させるプログラムであって、当該制御方法は洗浄工程を含み、洗浄工程では、前記熱機関が作動することで前記熱機関から前記排ガスが送出される排ガス送出期間において、前記出力空間におけるCO2濃度に応じて前記洗浄装置に前記CO2分離膜の洗浄動作を実行させる。
【0109】
本発明の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本発明の実施形態の例であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 車両
11 内燃機関
12 排気マニホールド
13、排気管
13a、13b 連結路
14 浄化装置
15 切り替え弁
16 貯留用接続路
17 排気用接続路
18 マフラ
20 洗浄装置
21 インジェクタ
22 送風機
26 弁
30 CO2分離装置
31 CO2分離膜
32 入力空間
33 出力空間
36 分離ガス路
37 残ガス排出路
40 CO2貯留装置
100 制御装置
110 演算処理部
120 メモリ
130 インターフェース
SS CO2濃度センサ
F1 動作モード設定部
F2 流路切り替え部
F3 洗浄制御部
F4 洗浄評価部
F5 通知管理部
F6 検出情報取得部