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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073825
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】鋳物製品の生産システム及び生産方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20240523BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20240523BHJP
   B22D 29/00 20060101ALI20240523BHJP
   G06F 113/22 20200101ALN20240523BHJP
   G06F 111/02 20200101ALN20240523BHJP
【FI】
G06F30/10 100
B22D46/00
B22D29/00 G
G06F113:22
G06F111:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184742
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】小原 結也
(72)【発明者】
【氏名】角田 誉幸
(72)【発明者】
【氏名】一木 洋介
(72)【発明者】
【氏名】森本 孝治
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146BA01
5B146DC06
5B146DE12
5B146DL08
(57)【要約】
【課題】鋳物素材の形状の最適化及び加工方法の最適化が図られ、品質の安定した鋳物製品が得られる鋳物製品の生産システム及び生産方法を提供する。
【解決手段】鋳物部品の生産システムSは、加工側コンピュータ11と、鋳物側コンピュータ21と、各コンピュータ11,21間でのデータの送受信を可能とする第2通信部17、第4通信部26、ネットワークNとを含み、鋳物側コンピュータ21が、ネットワークN及び第4通信部26を介して加工側コンピュータ11からの鋳物素材の発注を受け付ける。加工側コンピュータ11は、鋳物素材の発注と共に素材図データD2を鋳物側コンピュータ21へ送信可能であり、鋳物側コンピュータ21は、加工側コンピュータ11から受信した素材図データD2を修正可能なCAD25を有し、修正後の素材図データを加工側コンピュータ11へ送信して、修正後の素材図データに基づく鋳物素材の発注を受け付け可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物素材を加工して鋳物製品を作製する加工業者が有するコンピュータである加工側コンピュータと、
前記鋳物素材の製造を行う製造業者が有するコンピュータである製造側コンピュータと、
各コンピュータ間でのデータの送受信を可能とする通信手段と、を含み、
前記製造側コンピュータが、前記通信手段を介して前記加工側コンピュータからの前記鋳物素材の発注を受け付ける鋳物製品の生産システムであって、
前記加工側コンピュータは、前記鋳物素材の図面データである素材図データを作成可能な作図手段を有して、前記鋳物素材の発注と共に前記素材図データを前記製造側コンピュータへ送信可能であり、
前記製造側コンピュータは、前記加工側コンピュータから受信した前記素材図データを修正可能な修正手段を有し、前記修正後の前記素材図データを前記加工側コンピュータへ送信して、前記修正後の前記素材図データに基づく前記鋳物素材の発注を受け付け可能であることを特徴とする鋳物製品の生産システム。
【請求項2】
前記加工側コンピュータは、前記作図手段により、前記修正後の前記素材図データを修正可能で、前記鋳物素材の発注と共に再修正後の前記素材図データを前記製造側コンピュータへ送信可能であることを特徴とする請求項1に記載の鋳物製品の生産システム。
【請求項3】
前記作図手段は、前記鋳物製品の図面データである製品図データを作成可能で、
前記加工側コンピュータは、前記鋳物素材の発注と共に前記素材図データと前記製品図データとを前記製造側コンピュータへ送信可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳物製品の生産システム。
【請求項4】
前記加工側コンピュータは、前記作図手段で作成された前記素材図データ及び前記製品図データに基づいて前記鋳物素材の加工プログラムを作成可能なプログラム生成手段を有することを特徴とする請求項3に記載の鋳物製品の生産システム。
【請求項5】
前記加工側コンピュータと前記製造側コンピュータとがそれぞれ前記通信手段を介してデータの保存及び取り出しが可能な共有データベースをさらに含み、
前記加工側コンピュータは、前記作図手段で作成した図面データを前記共有データベースに保存可能であり、
前記製造側コンピュータは、前記鋳物素材の発注を受けて前記図面データを前記共有データベースから取り出し可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳物製品の生産システム。
【請求項6】
鋳物素材を加工して鋳物製品を作製する加工業者が、自己が有する加工側コンピュータにより、通信手段を介して、前記鋳物素材の製造を行う製造業者が有するコンピュータである製造側コンピュータに鋳物素材の発注を行う発注ステップと、
前記加工側コンピュータにより前記鋳物素材の発注を受けた前記製造業者が、前記鋳物素材を製造して前記加工業者に納品する受注ステップと、を実行する鋳物製品の生産方法であって、
前記発注ステップでは、前記鋳物素材の図面データである素材図データを加工業者が作成して、前記加工側コンピュータにより前記素材図データを前記製造業者に送信すると共に前記鋳物素材の発注を行い、
前記受注ステップにおいて、前記鋳物素材の発注を受けた前記製造業者は、前記鋳物素材について修正が必要と判断した場合、前記製造側コンピュータにより、前記加工側コンピュータから受信した前記素材図データを修正し、修正後の前記素材図データを前記加工側コンピュータへ送信して、前記修正後の前記素材図データに基づく前記鋳物素材の発注を受け付けて前記鋳物素材を製造することを特徴とする鋳物製品の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋳物製品を生産するための生産システム及び生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば加工業者がワークとなる鋳物素材を入手して鋳物製品を加工する場合、加工業者は、CADで作成した鋳物素材の図面データを鋳物業者に送付して発注を行う。鋳物業者は、発注情報に基づいて型業者に鋳型の製造を依頼する。型業者は、発注情報から素材図を作成して鋳型を製造し、鋳物業者に納品する。鋳物業者が型業者を兼ねて鋳型の製造まで行う場合もある。
鋳物業者は、納品された鋳型を用いて鋳物素材を鋳造し、加工業者に納品する。鋳物業者による生産管理方法として、例えば特許文献1には、コンピュータのデータベースに、加工品番情報、素材品番情報、客先名称情報等の鋳造制約条件情報を予め登録して、コンピュータの制御部により鋳造ラインを制御する発明が開示されている。
加工業者は、図面データを作成後、CAM等を用いて加工プログラムを作成して加工方法を決定し、納品された鋳物素材を加工して鋳物製品を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-334631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工業者が鋳物素材を加工する際に、問題が生じた場合や、より良い加工方法が判明した場合、加工方法の修正を行うことになる。しかし、加工業者が複数の鋳物業者から同一部品の鋳物素材を調達した場合、それぞれ個別に作成される素材図に基づいて鋳物素材が製造されるため、業者毎に素材形状が異なり、加工業者は、納品されるまで鋳物素材の実形状が分からない状態となる。よって、加工業者は、鋳物素材のサイズに応じた一定以上のアプローチマージンを取ることで加工方法の統一(修正)を図っている。このため、余分な加工時間や、素材形状に応じた加工方法の修正が発生してしまう。
また、鋳物素材の製造において、鋳物業者に対し外観品質に過剰な要求、例えば、鋳物業者の技術力をフルに活用しなければ実現し得ない要求や、持ち合わせる技術力を超えるような要求がされた場合、鋳物業者の負担が増大し、ひいては加工業者が負担するコストの増大に繋がる。
【0005】
そこで、本開示は、決まった鋳物素材の形状に対して加工方法を模索することと、加工前の形状から全体的な加工工程設計を行うのとでは、改善の幅に差が生じることに着目して、鋳物素材の形状の最適化及び加工方法の最適化が図られ、品質の安定した鋳物製品が得られる鋳物製品の生産システム及び生産方法を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、鋳物素材を加工して鋳物製品を作製する加工業者が有するコンピュータである加工側コンピュータと、
前記鋳物素材の製造を行う製造業者が有するコンピュータである製造側コンピュータと、
各コンピュータ間でのデータの送受信を可能とする通信手段と、を含み、
前記製造側コンピュータが、前記通信手段を介して前記加工側コンピュータからの前記鋳物素材の発注を受け付ける鋳物製品の生産システムであって、
前記加工側コンピュータは、前記鋳物素材の図面データである素材図データを作成可能な作図手段を有して、前記鋳物素材の発注と共に前記素材図データを前記製造側コンピュータへ送信可能であり、
前記製造側コンピュータは、前記加工側コンピュータから受信した前記素材図データを修正可能な修正手段を有し、前記修正後の前記素材図データを前記加工側コンピュータへ送信して、前記修正後の前記素材図データに基づく前記鋳物素材の発注を受け付け可能であることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記加工側コンピュータは、前記作図手段により、前記修正後の前記素材図データを修正可能で、前記鋳物素材の発注と共に再修正後の前記素材図データを前記製造側コンピュータへ送信可能であることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記作図手段は、前記鋳物製品の図面データである製品図データを作成可能で、
前記加工側コンピュータは、前記鋳物素材の発注と共に前記素材図データと前記製品図データとを前記製造側コンピュータへ送信可能であることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記加工側コンピュータは、前記作図手段で作成された前記素材図データ及び前記製品図データに基づいて前記鋳物素材の加工プログラムを作成可能なプログラム生成手段を有することを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記加工側コンピュータと前記製造側コンピュータとがそれぞれ前記通信手段を介してデータの保存及び取り出しが可能な共有データベースをさらに含み、
前記加工側コンピュータは、前記作図手段で作成した図面データを前記共有データベースに保存可能であり、
前記製造側コンピュータは、前記鋳物素材の発注を受けて前記図面データを前記共有データベースから取り出し可能であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、鋳物素材を加工して鋳物製品を作製する加工業者が、自己が有する加工側コンピュータにより、通信手段を介して、前記鋳物素材の製造を行う製造業者が有するコンピュータである製造側コンピュータに鋳物素材の発注を行う発注ステップと、
前記加工側コンピュータにより前記鋳物素材の発注を受けた前記製造業者が、前記鋳物素材を製造して前記加工業者に納品する受注ステップと、を実行する鋳物製品の生産方法であって、
前記発注ステップでは、前記鋳物素材の図面データである素材図データを加工業者が作成して、前記加工側コンピュータにより前記素材図データを前記製造業者に送信すると共に前記鋳物素材の発注を行い、
前記受注ステップにおいて、前記鋳物素材の発注を受けた前記製造業者は、前記鋳物素材について修正が必要と判断した場合、前記製造側コンピュータにより、前記加工側コンピュータから受信した前記素材図データを修正し、修正後の前記素材図データを前記加工側コンピュータへ送信して、前記修正後の前記素材図データに基づく前記鋳物素材の発注を受け付けて前記鋳物素材を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、加工業者は、自己が要求する素材図データを製造業者に提示するので、加工方法の都合を考慮した素材図データを作成することができる。
また、鋳物業者は、自ら修正した素材図データに基づく鋳物素材の発注を受け付け可能であるため、技術的コストを削減できる。
よって、加工前の形状から全体的な加工工程設計を行うことができ、鋳物素材の形状の最適化及び加工方法の最適化が図られ、品質の安定した鋳物製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】鋳物製品の生産システムの機能ブロック図である。
図2】加工業者による鋳物素材の発注までのプロセスを示すフローチャートである。
図3】鋳物業者による鋳物素材の受注から納品までのプロセスを示すフローチャートである。
図4】加工業者による鋳物製品の加工プロセスを示すフローチャートである。
図5】各業者間でのデータの受け渡しを示すフロー図である(素材形状に改善がない場合)。
図6】各業者間でのデータの受け渡しを示すフロー図である(素材形状に改善がある場合)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、鋳物製品の生産システムSの一例を示す機能ブロック図である。生産システムSは、鋳物素材から鋳物製品を加工する加工業者10と、加工業者10からの発注により鋳物素材を鋳造する鋳物業者20と、鋳物業者20からの発注により鋳物を鋳造するための型を製造する型業者30との間に構築される。
加工業者10は、加工業者側コンピュータ(以下「加工側コンピュータ」という。)11と、加工業者側ネットワークサーバ(以下「加工側サーバ」という。)12とを備えている。
加工側コンピュータ11は、加工側記憶部13と第1通信部14とを備えている。加工側記憶部13には、ソフトウェアであるCAD15及びCAM16が記憶されている。加工側コンピュータ11では、図示しない入力手段から入力される形状データ等に基づいて、CAD15を用いて部品図及び素材図が作成可能となっている。部品図は、機械を構成する部品(鋳物製品)の完成図面であり、素材図は、部品形状に加工する鋳物素材(ワーク)の図面である。CAM16は、CAD15で作成された図面データに基づいて、加工プログラムを作成可能となっている。
【0010】
加工側サーバ12は、第2通信部17と、加工業者側データベース(以下「加工側データベース」という。)18とを備えている。第2通信部17は、加工側コンピュータ11の第1通信部14と社内ネットワークを介して通信可能である。加工側サーバ12は、加工側コンピュータ11で作成された部品図及び素材図のデータ、加工プログラムを第2通信部17で受信して、加工側データベース18に保存可能となっている。第2通信部17は、インターネット等のネットワークNを介して外部装置と通信し、データの送受信が可能となっている。このデータは、例えばCAD15で作成された部品図のデータ(以下「部品図データ」という。)D1及び素材図のデータ(以下「素材図データ」という。)D2、CAM16で作成された加工プログラムD3等である。
【0011】
鋳物業者20は、鋳物業者側コンピュータ(以下「鋳物側コンピュータ」という。)21と、鋳物業者側ネットワークサーバ(以下「鋳物側サーバ」という。)22とを備えている。
鋳物側コンピュータ21は、鋳物側記憶部23と第3通信部24とを備えている。鋳物側記憶部23には、ソフトウェアであるCAD25が記憶されている。鋳物側コンピュータ21では、図示しない入力手段から入力される形状データ等に基づいて、CAD25を用いて、加工業者10から提示された部品図及び素材図が修正可能となっている。
鋳物側サーバ22は、第4通信部26と、鋳物業者側データベース(以下「鋳物側データベース」という。)27とを備えている。第4通信部26は、鋳物側コンピュータ21の第3通信部24と社内ネットワークを介して通信可能である。鋳物側サーバ22は、鋳物側コンピュータ21で修正された部品図データ及び素材図データを第4通信部26で受信して、鋳物側データベース27に保存可能となっている。第4通信部26は、ネットワークNを介して外部装置と通信し、データの送受信が可能となっている。
【0012】
この生産システムSでは、共有ネットワークサーバ(以下「共有サーバ」という。)40が設けられている。共有サーバ40は、第5通信部41と、共有データベース42とを備えている。第5通信部41は、ネットワークNを介して外部装置と通信し、データの送受信が可能となっている。共有データベース42は、第5通信部41が受信したデータを記憶及び取り出し可能となっている。共有データベース42には、部品図データ、素材図データ、加工プログラムの他、加工効率、加工負荷、品質安定性といったデータも記録可能となっている。ここでの「加工プログラム」は、加工プログラム自体は勿論、加工手順書や加工シミュレーションデータも含む。鋳物業者20側で加工プログラム自体を読めない、或いは理解できない場合、加工手順書や加工シミュレーションデータによって擦り合わせを行うためである。
【0013】
以上の如く構成された生産システムSにおいて、加工業者10が新規部品(鋳物製品)を加工するにあたり、鋳物業者20に発注して鋳物素材を受け取り、加工を完了するまでの生産方法を説明する。
まず、加工業者10による鋳物素材の発注までのプロセスを、図2に基づいて説明する。
加工業者10は、STEP(以下「S」と表記する。)1で、新規部品の設計を行い、S2でCAD15を用いて部品図データD1を作成する。部品図データD1を作成したら、S3で、第1通信部14及び第2通信部17を介して加工側サーバ12に部品図データD1を送付して加工側データベース18に保存すると共に、第2通信部17を介して共有サーバ40に部品図データD1を送付して共有データベース42にも保存する。
次に、加工業者10は、S4で、部品図データD1を用いてCAM16によって加工方法(加工プログラム)を作成する。加工プログラムD3を作成したら、加工業者10は、S5で、第1通信部14及び第2通信部17を介して加工側サーバ12及び共有サーバ40に加工プログラムD3を送付して、加工側データベース18及び共有データベース42に加工プログラムD3を保存する。
【0014】
次に、加工業者10は、S6で、加工プログラムD3に基づいて素材図データD2を作成する。素材図データD2を作成したら、S7で、第1通信部14及び第2通信部17を介して加工側サーバ12及び共有サーバ40に素材図データD2を送付して、加工側データベース18及び共有データベース42に素材図データD2を保存し、S8でその旨を鋳物業者20に通知(仮発注)する。
次に、加工業者10は、S9で、素材図データD2に対して鋳物業者20から改善通知があるか否かを判別する。この改善通知は、技術的に作成不可能な場合であったり、技術的に作成可能であっても加工効率やコスト面でより最適な鋳物素材の形状を選択するのが望ましいと鋳物業者20が判断したような場合に行われる。よって、加工業者10は、改善通知がなければ、S14で、第2通信部17を介して鋳物業者20の鋳物側コンピュータ21に鋳物素材の作成を発注(本発注)する。
【0015】
一方、加工業者10は、S9で鋳物業者20から素材図データD2の改善通知があった場合、S10で、共有データベース42から鋳物業者20に改善された素材図データD2’を入手する。そして、S11で、素材図データD2’にさらに改善余地があるか否かを判別する。ここで改善余地がなければ、加工業者10はS14で鋳物素材を発注する。さらに改善余地があれば、加工業者10は、S12で、素材図データD2’を修正して素材図データD2”を作成する。素材図データD2”を作成したら、加工業者10は、S13で、第1通信部14及び第2通信部17を介して加工側サーバ12及び共有サーバ40に素材図データD2”を送付して、加工側データベース18及び共有データベース42を更新し、S8でその旨を鋳物業者20に通知する。よって、続くS9で素材図データD2”について鋳物業者20から改善通知がなければ、S14で鋳物素材が発注され、再び改善通知があればS10以降の処理が繰り返される。
鋳物素材の発注後、加工業者10は、S15で、加工プログラムD3について修正が必要か否かを判別する。ここで修正が必要であれば、加工業者10は、S16で、素材図データD2’或いはD2”を参照して加工プログラムD3’を再設計する。加工プログラムD3’を作成したら、加工業者10は、S17で、第1通信部14及び第2通信部17を介して加工側サーバ12及び共有サーバ40に加工プログラムD3’を送付して、加工側データベース18及び共有データベース42を更新する。
【0016】
次に、鋳物業者20による鋳物素材の納品までのプロセスを、図3に基づいて説明する。
まず、S21で、鋳物業者20は、加工業者10から共有データベース42への素材図データD2の保存が通知(仮発注)されると、S22で共有データベース42から素材図データD2を入手する。そして、鋳物業者20は、S23で、素材形状に改善の余地があるか否かを判別する。この改善余地の有無の判断は、型業者30との協議により行われる。
ここで改善の余地がなく、S27で加工業者10から鋳物素材の作成を受注したら、鋳物業者20は、S28で、第4通信部26を介して型業者30に鋳型の作成を発注する。
一方、S23で素材形状に改善の余地があると判断したら、鋳物業者20は、S24で、CAD25を用いて素材図データD2を修正して素材図データD2’を作成する。素材図データD2’を作成したら、鋳物業者20は、S25で、第3通信部24及び第4通信部26を介して鋳物側サーバ22及び共有サーバ40に素材図データD2’を送付して、鋳物側データベース27及び共有データベース42を更新し、S26でその旨を加工業者10に通知する。よって、加工業者10は、図2のS9で改善通知を受けてS10以降の処理を行うことになる。
【0017】
次に、鋳物業者20は、S27で、加工業者10から鋳物素材の作成を受注すると、S28で、型業者30に、素材図データD2(或いはD2’,D2”)を送信して鋳物素材に基づく鋳型の製造を発注する。
型業者30は、通信部を備えた図示しないコンピュータを備えており、鋳物側コンピュータ21から発注と共に素材図データD2を受け取ることができる。よって、型業者30は、素材図データD2から型図面を作成して鋳型を製作し、鋳物業者20に納品する。
鋳物業者20は、S29で型業者30から鋳型を受け取ると、S30で、鋳型を用いて鋳物素材を作成する。作成した鋳物素材は、S31で仕上げ処理を施された後、S32で加工業者10へ納品される。
【0018】
次に、加工業者10による鋳物部品の加工プロセスを、図4に基づいて説明する。
加工業者10は、鋳物業者20から鋳物素材を受け取ると、S41で品質検査を行い、S42で、鋳物素材の品質に欠陥があるか否かを判別する。ここで品質に欠陥があると判断すると、S43で、各データベース18,42に品質不良の旨を記録する。この記録は鋳物業者20及び型業者30へも送信される。
一方、鋳物素材の品質に欠陥がなければ、加工業者10は、S44で各データベース18,42に鋳物素材の品質を記録する。そして、S45で加工プログラムを選択して、S46で鋳物部品を加工し、S47で加工データを記録する。
加工した鋳物部品について、加工業者10は、S48で品質検査を行い、S49で、品質に欠陥があるか否かを判別する。ここで品質に欠陥がなければ、S50で各データベース18,42に鋳物部品の品質を記録し、製造を終了する。鋳物部品の品質に欠陥があれば、S51で各データベース18,42に品質不良を記録する。これらの記録に基づいても各業者は改善案を検討することができる。
【0019】
図5及び図6は、各業者間でのデータの受け渡しを示すフロー図で、図5が素材形状に改善がない場合、図6が素材形状に改善がある場合をそれぞれ示している。
まず、図5において、加工業者10側で作成された部品図データD1、素材図データD2、加工プログラムD3は、共有データベース42に保存され(S3,5,6)、その通知(S8)を受けて鋳物業者20が部品図データD1及び素材図データD2を入手する(S22)。そのまま鋳物業者20及び加工業者10の何れからも素材図データの修正がされなければ、加工業者10から鋳物業者20へ鋳物素材の作成が発注される(S14)。よって、鋳物業者20から型業者30へ鋳型が発注され(S28)、型業者30で作成された鋳型が鋳物業者20に納品される。鋳物業者20は、鋳型から鋳物素材を作成して加工業者10に納品することになる(S32)。
【0020】
一方、図6において、加工業者10からの通知(S8)を受けて部品図データD1及び素材図データD2を入手した鋳物業者20が、素材形状の改善が必要と判断すると、修正した素材図データD2’が鋳物業者20で作成され(S24)、共有データベース42に保存される(S25)。
この素材図データD2’への改善の通知(S26)を受けて素材図データD2’を入手(S10)した加工業者10が、さらに素材形状の改善が必要と判断すると、再修正された素材図データD2”が加工業者10で作成され(S12)、共有データベース42に保存される(S13)。なお、素材図データD2’に改善の必要がなければ、そのまま鋳物業者20に鋳物素材の作成が発注され、素材図データD2’に基づいて型業者30で鋳型が、鋳物業者20で鋳物素材がそれぞれ作成される。
加工業者10から素材図データD2”の改善の通知(S8)を受けて素材図データD2”を入手(S22)した鋳物業者20は、素材形状の改善を行うことなく加工業者10から鋳物素材の作成の発注を受けると(S14)、鋳物業者20から型業者30へ鋳型が発注され(S28)、型業者30で作成された鋳型が鋳物業者20に納品される。鋳物業者20は、鋳型から鋳物素材を作成して加工業者10に納品することになる(S32)。
【0021】
このように、本開示の第1の構成に係る上記形態の鋳物部品の生産システムSは、鋳物素材を加工して鋳物部品(製品の一例)を作製する加工業者10が有するコンピュータである加工側コンピュータ11と、鋳物素材の製造を行う鋳物業者20(製造業者の一例)が有するコンピュータである鋳物側コンピュータ21(製造側コンピュータの一例)と、各コンピュータ11,21間でのデータの送受信を可能とする第2通信部17、第4通信部26、ネットワークN(通信手段の一例)と、を含み、鋳物側コンピュータ21が、ネットワークN及び第4通信部26を介して加工側コンピュータ11からの鋳物素材の発注を受け付ける。
そして、加工側コンピュータ11は、鋳物素材の図面データである素材図データD2を作成可能なCAD15(作図手段の一例)を有して、鋳物素材の発注と共に素材図データD2を鋳物側コンピュータ21へ送信可能であり、鋳物側コンピュータ21は、加工側コンピュータ11から受信した素材図データD2を修正可能なCAD25(修正手段の一例)を有し、修正後の素材図データD2’を加工側コンピュータ11へ送信して、素材図データD2’に基づく鋳物素材の発注を受け付け可能である。
【0022】
また、本開示の第2の構成に係る上記形態の鋳物部品の生産方法は、鋳物素材を加工して鋳物部品を作製する加工業者10が、加工側コンピュータ11により、第2通信部17、第4通信部26、ネットワークNを介して、鋳物側コンピュータ21に鋳物素材の発注を行う発注ステップ(S1~S14)と、加工側コンピュータ11により鋳物素材の発注を受けた鋳物業者20が、鋳物素材を作成して加工業者10に納品する受注ステップ(S27~S32)と、を実行する。
そして、発注ステップでは、鋳物素材の図面データである素材図データD2を加工業者10が作成して(S6)、加工側コンピュータ11により素材図データD2を鋳物業者20に送信すると共に鋳物素材の発注を行い、受注ステップにおいて、鋳物素材の発注を受けた鋳物業者20は、鋳物素材が技術的に作成可能でない場合、鋳物側コンピュータ21により、加工側コンピュータ11から受信した素材図データD2を修正し、修正後の素材図データD2’を加工側コンピュータ11へ送信して、素材図データD2’に基づく鋳物素材の発注を受け付けて鋳物素材を製造する。
【0023】
この構成によれば、加工業者10は、自己が要求する素材図データD2を鋳物業者20に提示するので、加工方法の都合を考慮した素材図データD2を作成することができる。
また、鋳物業者20は、自ら修正した素材図データD2’に基づく鋳物素材の発注を受け付け可能であるため、技術的コストを削減できる。
よって、加工前の形状から全体的な加工工程設計を行うことができ、鋳物素材の形状の最適化及び加工方法の最適化が図られ、品質の安定した鋳物製品を得ることができる。
【0024】
加工側コンピュータ11は、CAD15により、修正後の素材図データD2’を修正可能で、鋳物素材の発注と共に再修正後の素材図データD2”を鋳物側コンピュータ21へ送信可能である。
よって、加工業者10は、素材図データD2’を再修正することで、鋳物素材の納品前に最適な加工プログラムを作成することができる。また、加工で重要な面(基準面等)を素材図データD2”に盛り込むことで、鋳物の製作方法が最適化され、鋳物業者20のコスト削減にも繋がる。
CAD15は、鋳物製品の図面データである部品図データD1(製品図データの一例)を作成可能で、加工側コンピュータ11は、鋳物素材の発注と共に部品図データD1と素材図データD2とを鋳物側コンピュータ21へ送信可能である。
よって、鋳物業者20は、受信した部品図データD1及び素材図データD2に基づいて技術的に作成可能であるか否かを容易に判断することができる。
加工側コンピュータ11は、CAD15で作成された部品図データD1及び素材図データD2に基づいて鋳物素材の加工プログラムD3を作成可能なCAM16(プログラム生成手段の一例)を有する。
よって、加工業者10は、鋳物素材の加工プログラムD3を容易に作成できる。
【0025】
加工側コンピュータ11と鋳物側コンピュータ21とがそれぞれ第2通信部17、第4通信部26、ネットワークNを介してデータの保存及び取り出しが可能な共有データベース42をさらに含み、加工側コンピュータ11は、CAD15で作成した図面データを共有データベース42に保存可能であり、鋳物側コンピュータ21は、鋳物素材の発注を受けて図面データを共有データベース42から取り出し可能である。
よって、加工側コンピュータ11と鋳物側コンピュータ21との間でのデータの受け渡しが容易に行える。特に、加工業者10からの加工効率、加工負荷、品質安定性等のデータを共有データベース42に記録・共有し、データ分析を行うことで、素材形状及び加工方法の最適化、品質の一層の向上、安定化が期待できる。
【0026】
以下、本開示の変更例について説明する。
上記形態では、加工業者による共有データベースへの素材図データの保存を鋳物側コンピュータへ通知(S8)し、鋳物業者による共有データベースへの修正後の素材図データの保存を加工側コンピュータへ通知(S26)するようにしているが、これらの通知に代えて、データベースの更新を受け付けたサーバが各コンピュータへ自動的に通知を行うようにしてもよい。
また、加工業者からのS8の仮発注を本発注としてS14の本発注を省略し、加工業者と鋳物業者とが素材形状の改善がないことを互いに通知して鋳物素材の作成を進めるようにしてもよい。
【0027】
上記形態では、機械の一部である鋳物部品を製造する例で説明しているが、鋳物製品は完成品であってもよい。
上記形態では、共有データベースに部品図データ、素材図データ、加工プログラムをそれぞれ保存可能としているが、全てのデータでなく、例えば素材図データのみが保存されたり、部品図データ及び素材図データが保存されたりするものであってもよい。また、共有ネットワークサーバをなくして、加工業者と鋳物業者との間で直接データの送受信を行うようにしてもよい。
上記形態では、加工業者及び鋳物業者が共にネットワークサーバ及びデータベースを備えた例となっているが、ネットワークサーバをなくして、加工側コンピュータと鋳物側コンピュータとの各通信部が直接外部装置と通信可能としてもよい。データベースも、加工側コンピュータと鋳物側コンピュータとにそれぞれ設けてもよいし、データベースを省略してもよい。
【0028】
上記形態では、鋳物業者が1社となっているが、加工業者が複数の鋳物業者に同一の鋳物素材を発注して鋳物素材を調達するシステムであってもよい。この場合も、加工業者自身が要求する素材図データを各鋳物業者に提示するので、鋳物素材の形状の最適化及び加工方法の最適化が図られる。
上記形態では、型業者もコンピュータを有し、ネットワークを介して加工側コンピュータ及び鋳物側コンピュータ、共有サーバとの間でデータの送受信が行えるようになっているが、鋳物側コンピュータとの間のみでデータの送受信が可能であってもよいし、コンピュータを用いずに鋳物業者からの受注を受けてもよい。
上記形態では、鋳物業者が素材図データを提示して型業者が鋳型を製作して納品する流れとなっているが、この流れに限らない。例えば、鋳物業者が素材図データでなく部品図データを型業者に提示して、型業者が鋳型と素材図データとを納品するようにしてもよい。また、鋳物業者が型業者を兼ねて鋳型の製作まで行うシステムとしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
S・・鋳物部品の生産システム、10・・加工業者、11・・加工業者側コンピュータ、12・・加工業者側ネットワークサーバ、13・・加工側記憶部、14・・第1通信部、15・・CAD、16・・CAM、17・・第2通信部、18・・加工業者側データベース、20・・鋳物業者、21・・鋳物業者側コンピュータ、22・・鋳物業者側ネットワークサーバ、23・・鋳物側記憶部、24・・第3通信部、25・・CAD、26・・第4通信部、27・・鋳物業者側データベース、30・・型業者、40・・共有ネットワークサーバ、41・・第5通信部、42・・共有データベース、N・・ネットワーク。
図1
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図6