(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073830
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】判定システム、判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20240523BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
G01N21/17 A
C12M1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184752
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 優
(72)【発明者】
【氏名】吉村 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】宮田 健一
【テーマコード(参考)】
2G059
4B029
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059CC16
2G059EE02
2G059FF01
2G059KK04
4B029AA27
4B029FA15
(57)【要約】
【課題】検査器具を用いた検査における検査精度の向上となりすまし防止を両立することが可能な判定システム、判定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】検査器具を用いた検査のための作業を行っている作業者の顔が少なくとも撮像された第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像と同時に撮像される、前記作業者が前記作業を行っている手元の様子が撮像された第2の撮像画像とを取得する取得部と、取得された前記第1の撮像画像に基づき、前記作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する本人判定部と、取得された前記第2の撮像画像に基づき、前記作業が適切に行われたか否かを判定する作業判定部と、を備える判定システム。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査器具を用いた検査のための作業を行っている作業者の顔が少なくとも撮像された第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像と同時に撮像される、前記作業者が前記作業を行っている手元の様子が撮像された第2の撮像画像とを取得する取得部と、
取得された前記第1の撮像画像に基づき、前記作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する本人判定部と、
取得された前記第2の撮像画像に基づき、前記作業が適切に行われたか否かを判定する作業判定部と、
を備える判定システム。
【請求項2】
前記本人判定部は、取得された前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像に基づき、前記第2の撮像画像の示す前記作業が前記第1の撮像画像の示す前記作業者によって行われているか否かを判定する、
請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記第1の撮像画像は、前記作業者の上半身が撮像された画像であり、
前記本人判定部は、前記第1の撮像画像の示す前記作業者の上半身の動きと前記第2の撮像画像の示す前記手元の動きとに基づき、前記作業が前記作業者によって行われているか否かを判定する、
請求項2に記載の判定システム。
【請求項4】
前記作業判定部は、前記第1の撮像画像に基づき、前記作業者から検体が採取されたか否かを判定する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項5】
前記作業判定部は、前記第1の撮像画像及び前記第2の撮像画像に基づき、前記作業者から採取された検体が前記検査器具に供給されたか否かを判定する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項6】
前記作業判定部は、検査結果が陰性であった場合に、前記作業が適切に行われたか否かを判定する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項7】
前記第1の撮像画像を撮像する第1の撮像部と、前記第2の撮像画像を撮像する第2の撮像部とを起動し、同時に撮像するよう制御する撮像制御部、
をさらに備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項8】
前記第1の撮像画像を撮像する第1の撮像部と前記第2の撮像画像を撮像する第2の撮像部は、同一の端末が備え、
前記端末は、前記第1の撮像部による前記第1の撮像画像の撮像と、前記第2の撮像部による前記第2の撮像画像の撮像とが同時に行える位置に配置される、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の判定システム。
【請求項9】
前記端末は、前記作業者の顔と前記作業者の手元の間に配置される、
請求項8に記載の判定システム。
【請求項10】
前記本人判定部は、前記第1の撮像画像又は前記第2の撮像画像、及び前記作業者が前記作業を行っている作業空間で生じる音に基づき、前記作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する、
請求項1に記載の判定システム。
【請求項11】
前記作業判定部は、前記第1の撮像画像又は前記第2の撮像画像、及び前記作業者が前記作業を行っている作業空間で生じる音に基づき、前記作業が適切に行われたか否かを判定する
請求項1又は請求項10に記載の判定システム。
【請求項12】
取得部が、検査器具を用いた検査のための作業を行っている作業者の顔が少なくとも撮像された第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像と同時に撮像される、前記作業者が前記作業を行っている手元の様子が撮像された第2の撮像画像とを取得する取得過程と、
本人判定部が、取得された前記第1の撮像画像に基づき、前記作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する本人判定過程と、
作業判定部は、取得された前記第2の撮像画像に基づき、前記作業が適切に行われたか否かを判定する作業判定過程と、
を含む判定方法。
【請求項13】
コンピュータを、
検査器具を用いた検査のための作業を行っている作業者の顔が少なくとも撮像された第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像と同時に撮像される、前記作業者が前記作業を行っている手元の様子が撮像された第2の撮像画像とを取得する取得手段と、
取得された前記第1の撮像画像に基づき、前記作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する本人判定手段と、
取得された前記第2の撮像画像に基づき、前記作業が適切に行われたか否かを判定する作業判定手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定システム、判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場において、検査器具(例えば抗原検査キットなどの体外診断用医薬品)を用いた検査が行われている。検査器具が示す検査結果は、習熟した医療従事者によって目視で確認されている。このため、医療現場で行われる検査においては、その検査結果が大きく問題になることはなかった。
【0003】
近年では、新型コロナウイルスの流行によって医療現場が逼迫し、医療現場にて検査を受けられない人が増加している。これに伴い、検査を希望する人が自分自身で検査を行うことができる環境の整備が進められている。現在では、検査を希望する人は、自治体から配布される検査器具やドラッグストアで購入した検査器具などを用いて、自分自身で検査して検査結果を登録することができるようになっている。
【0004】
しかしながら、医療従事者ではない一般人が行った検査の検査結果に対する信頼性が課題となっている。例えば、抗原検査キットを用いた検査では、検体の採取、検体の調製、検体の滴下などの作業を行う必要がある。一般人によるこれらの作業の確からしさが保証されなければ、その検査結果が医療従事者による検査の検査結果と同等とはいえない。
また、抗原検査キットを用いた検査により新型コロナウイルスへの感染が陽性と判明した場合には保険適用の対象となる。これにより、陽性者になりすますことで保険適用を不正に受けようとする人がいることも問題となっている。このため、抗原検査キットの検査結果が検査のための作業を行った本人のものであることを保証することで、陽性者へのなりすましを防止する必要もある。
【0005】
そこで、作業の確からしさと作業者本人であることを保証するための技術が各種提案されている。例えば、下記特許文献1には、ユーザが撮像した動画から、動画にユーザ自身の顔と本人確認書類とが同時に映っているかを判定し、映っている場合にはユーザに動作指示を通知し、ユーザが動作指示に応じて動作したかを判定し、動作した場合には本人確認書類と動作したユーザが対応するかを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、検査のための作業を行っている作業者の顔と手元を同時に撮像することができない。このため、例えば作業者の顔のみを撮像しながら検査のための作業を行った場合には、作業が適切に行われているかを判定することができず、作業の確からしさを保証することができない。一方、例えば作業者の手元のみを撮像しながら検査のための作業を行った場合には、本人認証や検体が作業者本人から採取されたものであるかの判定ができず、なりすましが行われる可能性がある。
【0008】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、検査器具を用いた検査における検査精度の向上となりすまし防止を両立することが可能な判定システム、判定方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る判定システムは、検査器具を用いた検査のための作業を行っている作業者の顔が少なくとも撮像された第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像と同時に撮像される、前記作業者が前記作業を行っている手元の様子が撮像された第2の撮像画像とを取得する取得部と、取得された前記第1の撮像画像に基づき、前記作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する本人判定部と、取得された前記第2の撮像画像に基づき、前記作業が適切に行われたか否かを判定する作業判定部と、を備える。
【0010】
本発明の一態様に係る判定方法は、取得部が、検査器具を用いた検査のための作業を行っている作業者の顔が少なくとも撮像された第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像と同時に撮像される、前記作業者が前記作業を行っている手元の様子が撮像された第2の撮像画像とを取得する取得過程と、本人判定部が、取得された前記第1の撮像画像に基づき、前記作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する本人判定過程と、作業判定部は、取得された前記第2の撮像画像に基づき、前記作業が適切に行われたか否かを判定する作業判定過程と、を含む。
【0011】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、検査器具を用いた検査のための作業を行っている作業者の顔が少なくとも撮像された第1の撮像画像と、前記第1の撮像画像と同時に撮像される、前記作業者が前記作業を行っている手元の様子が撮像された第2の撮像画像とを取得する取得手段と、取得された前記第1の撮像画像に基づき、前記作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する本人判定手段と、取得された前記第2の撮像画像に基づき、前記作業が適切に行われたか否かを判定する作業判定手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検査器具を用いた検査における検査精度の向上となりすまし防止を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る判定システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係るユーザ端末の撮像位置の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るユーザ端末の撮像位置の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る検査器具の一例を示す図である。
【
図5】本実施形態に係るユーザ端末の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態に係る判定サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】本実施形態に係る処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図8】本実施形態に係る判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態に係る変形例における処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。なお、図面には、必要に応じて相互に直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。各軸において、矢印が延びる方向を「正方向」、正方向と逆の方向を「負方向」と称する。
【0015】
<1.判定システムの概略構成>
図1を参照して、本実施形態に係る判定システムの概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る判定システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す判定システム1は、検査器具を用いた検査のための作業を行っている作業者(ユーザ)に関する判定を行うためのシステムである。
図1に示すように、判定システム1は、ユーザ端末10と、判定サーバ20と、検査器具30とを備える。
【0016】
ユーザ端末10と判定サーバ20は、ネットワークNWを介して、通信可能に接続されている。ネットワークNWには、情報の授受を行うための構成として、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話網(携帯電話網、固定電話網等)、地域IP(Internet Protocol)網、インターネット等が適用される。
【0017】
(1)ユーザ端末10
ユーザ端末10は、検査器具30を用いた検査を実施するユーザUSが有する端末である。ユーザUSは、例えば、検査対象者(患者)自身であってもよい。ユーザ端末10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末、又はPC(Personal Computer)などである。
以下では、ユーザ端末10がインカメラ(第1の撮像部の一例)とアウトカメラ(第2の撮像部の一例)を備えるスマートフォンである例を一例に説明する。
【0018】
ユーザ端末10には、ユーザUSによる検体の検査を支援するためのアプリケーション(以下、「検査支援アプリ」とも称される)によって、検査支援のための画面が表示される。一例として、検査支援アプリは、ユーザUSによる検体の準備(採取や調製)、検査の実施、検査結果の判定、検査結果の登録などの実施を支援する。ユーザUSは、検査支援アプリによってユーザ端末10に表示される画面に従って作業することで、検体の準備から検査結果の登録までを行うことができる。
本実施形態では、検査支援アプリの機能は、Webシステムによって提供される。このため、検査支援アプリはサーバ(例えば判定サーバ20)で管理されており、その機能はWebブラウザを介して提供される。
なお、検査支援アプリの機能は、ユーザ端末10に検査支援アプリをインストールすることで提供されてもよい。
【0019】
また、ユーザ端末10は、ユーザUSが検査器具30を用いた検査を実施している様子を撮像する端末でもある。例えば、ユーザ端末10は、検査器具30を用いた検査のための作業を行っているユーザUSの顔が少なくとも撮像された画像(以下、「作業者画像」とも称される)と、ユーザUSが作業を行っている手元の様子が撮像された画像(以下、「手元画像」とも称される)とを撮像する。作業者画像は第1の撮像画像の一例であり、手元画像は第2の撮像画像の一例である。
なお、作業者画像及び手元画像は、静止画像又は動画像のどちらであってもよい。また、作業者画像には、ユーザUSの顔以外に、ユーザUSの上半身が含まれてもよい。
【0020】
ユーザ端末10は、例えばインカメラで作業者画像を撮像し、アウトカメラで手元画像を撮像する。ユーザ端末10は、インカメラとアウトカメラの両方を起動することで、作業者画像と手元画像を同時に撮像可能な状態とする。ユーザUSは、インカメラによる作業者画像の撮像とアウトカメラによる手元画像の撮像が同時に行える位置にユーザ端末10を配置する。
【0021】
ここで、
図2及び
図3を参照して、ユーザ端末10の撮像位置について説明する。
図2及び
図3は、本実施形態に係るユーザ端末10の撮像位置の一例を示す図である。
図2は、ユーザUSが作業を行っている様子をX軸の正方向から負方向へ見た図である。
図3は、ユーザUSが作業を行っている様子をZ軸の正方向から負方向へ見た図である。
【0022】
図2及び
図3に示す例では、ユーザUSは、作業台40の上に検査器具30を置いた状態で作業を行っている。この状態で、インカメラによる作業者画像の撮像とアウトカメラによる手元画像の撮像を同時に行えるようにするため、ユーザ端末10は、
図2及び
図3に示すようにユーザUSの顔とユーザUSの手元の間に配置される。この時、ユーザ端末10は、インカメラをユーザUSの顔側(矢印AR1の方向)へ向け、アウトカメラをユーザUSの手元側(矢印AR2の方向)へ向けた状態で配置される。これにより、ユーザ端末10は、ユーザUSの手元を撮像する際に、手の内側(手のひら側)で行われている作業を手で遮蔽されることなく撮像することができる。
なお、
図2及び
図3に示すユーザ端末10の姿勢は、スタンドなどの台(不図示)によって保持される。
【0023】
(2)判定サーバ20
判定サーバ20は、ユーザ端末10によって取得される情報に基づく判定を行うサーバである。判定サーバ20は、1つ又は複数のサーバ(例えば、クラウドサーバ)で構成される。
【0024】
(3)検査器具30
検査器具30は、臨床検査薬の構成要素となる器具である。臨床検査薬は、疾患の有無を検査するために用いられる。臨床検査薬は、例えば、抗原検査キットなどの体外診断用医薬品である。検査方法には、例えば、ラテラルフローアッセイ(ラテラルフロー法)、ELISPOT法など、疾患の有無を診断するために検査対象物の存在の有無を検査する方法がある。免疫アッセイが適用されるラテラルフローアッセイのことを、特に、イムノクロマトグラフィーと呼ぶことがある。なお、臨床検査薬には、検体を採取するための検体採取治具、抽出液、検出用試薬等が含まれていてもよい。
【0025】
ここで、
図4を参照して、本実施形態に係る検査器具30について説明する。
図4は、本実施形態に係る検査器具30の一例を示す図である。
図4に示すように、検査器具30は、二次元コード310と、供給部320と、呈色部330とを備える。
【0026】
(3-1)二次元コード310
二次元コード310は、検査器具30の個体識別情報が埋め込まれた二次元のコード画像である。二次元コード310は、読取用情報の一例である。読取用情報は、検査器具30の筐体に付される。読取用情報は、検査器具30の筐体に対して直接印刷されてもよいし、検査器具30に貼付するシールなどに印刷されてもよい。
個体識別情報は、検査器具30を一意に識別する情報であって、例えば、検査器具30の製造メーカ名、ロット番号、及び製造番号、検査対象物、検査対象物に対応する疾患、その疾患の項目などを示す情報である。
なお、検査器具30においてその個体識別情報が何らかの方法で特定可能であればよく、例えば、個体識別情報が検査器具30にそのまま印刷されている場合には二次元コード310は省略されてもよい。
【0027】
(3-2)供給部320
供給部320は、検体が供給される領域である。供給部320は、例えば、検体供給窓321を備える。例えば、検体供給窓321に、検査対象者の検体が供給されることによって、供給部320に検体が供給される。
【0028】
(3-3)呈色部330
呈色部330は、呈色反応の結果が表示される領域である。呈色反応は、検体に検査対象物が含まれていた場合に変色又は発色する化学反応である。呈色部330は、例えば、コントロールライン331と、テストライン332とを備える。コントロールライン331は、供給部320に供給された検体が、呈色部330まで正常に移動した場合に、線(ライン)が現れる領域である。テストライン332は、検体中に、標的とするウイルスや抗体等(検査対象物)が存在する場合に線が現れる領域である。なお、検査対象物が複数種類ある場合、それぞれの検査対象物に対応する複数のテストライン332が呈色部330に設けられてもよい。
【0029】
(検体について)
本実施形態における検体は、検査対象者から採取された検体である。検体は、例えば、綿棒などで喉をこすることによって採取された粘液等である。検体は、液体であることが望ましく、例えば、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液、痰、唾液、骨髄、滑液、眼房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、カウパー液若しくは射精前液、汗、糞便、毛髪、涙、嚢胞液、胸水若しくは腹水、囲心腔液、リンパ液、糜粥、乳糜、胆汁、間質液、月経分泌物、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜からの分泌物、水便、膵液、鼻腔からの分泌液、咽頭からの分泌液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔からの洗浄液、気管支肺吸引物、胚盤胞腔液、臍帯血等であり、疾患を診断する際の指標となる物質を含んだものである。
【0030】
(検査対象物について)
本実施形態における検査対象物は、臨床検査薬で検査する対象となる物質である。例えば、検査対象物は、細胞、菌、ウイルス、エクソソーム、核酸、ポリペプチド(抗原ならびに抗体を含む)、ポリヌクレオチド、脂質、リン脂質、糖質、多糖、糖タンパク、低分子化合物、細胞もしくは菌からの代謝物、ならびに菌もしくはウイルス、エクソソームの断片等の単独の物質(物体)もしくはこれらの複合体の物質(物体)である。
【0031】
(疾患について)
本実施形態における疾患は、病気のことであり、代表的な分類として、がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症などがある。
【0032】
(疾患の項目について)
疾患の項目は、上記の疾患をより細分化したものであって、疾患の原因および代謝物、現象などがある。例えば、疾患の項目は、コロナウイルス、インフルエンザ、アデノウイルス、RSウイルス、ロタウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、ノロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、A群ベータ溶連菌、ヘリコバクターピロリ、梅毒トレポネーマ、マイコプラズマ、クロストリジウムディフィシル、マイコバクテリウム、大腸菌O157、大腸菌ベロ毒素、肺炎球菌、レジオネラ、プロカルシトニン、クラミジア、淋菌、アレルギー性結膜炎、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG)、BNP、NT-proBNP、CK-MB、ミオグロビン、トロポニン、Dダイマー、H-FABP、顆粒球エラスターゼ、癌胎児性抗原(CEA)、便潜血、インスリン様成長因子結合タンパク、fFN、アレルギー検査、CRP、抗CCP抗体などがある。
【0033】
<2.ユーザ端末の機能構成>
以上、本実施形態に係る判定システム1の概略構成について説明した。続いて、
図5を参照して、本実施形態に係るユーザ端末10の機能構成について説明する。
図5は、本実施形態に係るユーザ端末10の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、ユーザ端末10は、通信部110と、入力部120と、撮像部130と、記憶部140と、制御部150と、出力部160とを備える。
【0034】
(1)通信部110
通信部110は、各種情報を送受信する機能を有する。通信部110は、判定サーバ20と通信を行い、各種情報を送受信する。判定サーバ20との通信において、通信部110は、例えば、作業者画像及び手元画像を送信し、エラー情報を受信する。
【0035】
(2)入力部120
入力部120は、ユーザUSからの入力を受け付ける機能を有する。入力部120は、ユーザ端末10がハードウェアとして備える入力装置、例えばボタン、タッチパネル、マイクロフォン等によって構成される。
【0036】
(3)撮像部130
撮像部130は、撮像画像を撮像する機能を有する。撮像部130は、例えば、ユーザ端末10がハードウェアとして備えるカメラによって構成される。
図5に示すように、撮像部130は、インカメラ131と、アウトカメラ132とを備える。
【0037】
(3-1)インカメラ131
インカメラ131は、ユーザ端末10の画面側に設けられた撮像装置である。本実施形態では、インカメラ131は、作業者画像(第1の撮像画像)を撮像するカメラ(即ち、第1の撮像部)として使用される。
【0038】
(3-2)アウトカメラ132
アウトカメラ132は、ユーザ端末10の背面(非画面)側に設けられた撮像装置である。本実施形態では、アウトカメラ132は、手元画像(第2の撮像画像)を撮像するカメラ(即ち、第2の撮像部)として使用される。
【0039】
(4)記憶部140
記憶部140は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部140は、ユーザ端末10がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0040】
(5)制御部150
制御部150は、ユーザ端末10の動作全般を制御する機能を有する。制御部150は、例えば、ユーザ端末10がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図5に示すように、制御部150は、操作受付部151と、撮像制御部152と、撮像画像取得部153と、検査結果取得部154と、出力制御部155とを備える。
【0041】
(5-1)操作受付部151
操作受付部151は、入力部120に入力されたユーザUSの操作を受け付ける機能を有する。ユーザUSは、例えば、事前準備操作、作業開始操作、作業終了操作、検査結果入力操作などを行う。
事前準備操作では、ユーザUSは、まず検査支援アプリを起動する。初回起動時の場合、ユーザUSは、個人情報や顔写真などの事前登録を行う。事前登録済みの場合、ユーザUSは、サインインを行う。サインイン後、ユーザUSは、検査の事前準備として、画面に表示される検査の流れを確認する。その後、ユーザUSは、作業開始操作を入力してから作業を開始し、作業が終了したら作業終了操作を入力する。なお、作業開始操作は、事前準備操作に含まれていてもよい。また、操作受付部151がユーザUSから作業開始操作を受け付けた際に、ユーザ端末10には作業手順を示す作業ガイドが表示されてもよい。
【0042】
検査結果入力操作では、ユーザUSは、検査器具30の呈色部330の変化から読み取った検査結果を入力する。検査結果の入力時、ユーザ端末10には、例えば、「陰性」又は「陽性」を選択するだけで検査結果を入力可能な画面(以下、「検査結果入力画面」とも称される)が表示される。さらに、ユーザ端末10には、ユーザUSが検査結果を判定するための判定ガイドが表示されてもよい。ユーザUSは、判定ガイドを確認することで検査結果を容易かつより正確に判定することができる。
【0043】
(5-2)撮像制御部152
撮像制御部152は、ユーザ端末10の撮像部130の動作を制御する機能を有する。例えば、撮像制御部152は、操作受付部151がユーザUSから作業を開始する操作を受け付けた際に、撮像部130を起動して撮像を開始する。この時、撮像制御部152は、作業者画像を撮像するインカメラ131と手元画像を撮像するアウトカメラ132の両方を起動し、各カメラが同時に画像を撮像するよう制御する。
また、撮像制御部152は、操作受付部151がユーザUSから作業終了操作を受け付けた際に、撮像部130による撮像を終了する。
【0044】
(5-3)撮像画像取得部153
撮像画像取得部153は、撮像画像を取得する機能を有する。例えば、撮像画像取得部153は、インカメラ131によって撮像される作業者画像と、アウトカメラ132によって撮像される手元画像とを取得する。撮像画像取得部153は、取得した画像を通信部110から判定サーバ20へ送信する。
【0045】
(5-4)検査結果取得部154
検査結果取得部154は、検査結果を取得する機能を有する。例えば、検査結果取得部154は、ユーザUSによる検査結果入力操作にて入力される検査結果を取得する。検査結果取得部154は、取得した検査結果を通信部110から判定サーバ20へ送信する。
【0046】
(5-5)出力制御部155
出力制御部155は、各種画面や情報の出力を制御する機能を有する。例えば、出力制御部155は、検査支援アプリの画面を出力部160に表示させる。また、出力制御部155は、通信部110が判定サーバ20から受信する情報を出力部160に表示させる。通信部110が判定サーバ20から受信する情報は、例えば、エラー情報などである。
また、出力制御部155は、操作受付部151がユーザUSから受け付けた操作に応じて、作業ガイドや判定ガイドなどを出力部160に表示させる。
【0047】
(6)出力部160
出力部160は、各種情報を出力する機能を有する。出力部160は、ユーザ端末10がハードウェアとして備える出力装置、例えばディスプレイ装置やタッチスクリーン(タッチパネル)などの表示装置やスピーカなどの音声出力装置によって構成される。
【0048】
<3.判定サーバの機能構成>
以上、本実施形態に係るユーザ端末10の機能構成について説明した。続いて、
図6を参照して、本実施形態に係る判定サーバ20の機能構成について説明する。
図6は、本実施形態に係る判定サーバ20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6に示すように、判定サーバ20は、通信部210と、記憶部220と、制御部230とを備える。
【0049】
(1)通信部210
通信部210は、各種情報を送受信する機能を有する。例えば、通信部210は、ユーザ端末10と通信を行い、各種情報を送受信する。ユーザ端末10との通信において、通信部210は、例えば、作業者画像及び手元画像を受信し、エラー情報を送信する。
【0050】
(2)記憶部220
記憶部220は、判定サーバ20がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリ、EEPROM、RAM、ROM、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0051】
(3)制御部230
制御部230は、判定サーバ20の動作全般を制御する機能を有する。制御部230は、例えば、判定サーバ20がハードウェアとして備えるCPUにプログラムを実行させることによって実現される。
図6に示すように、制御部230は、取得部231と、本人判定部232と、作業判定部233とを備える。
【0052】
(3-1)取得部231
取得部231は、各種画像を取得する機能を有する。例えば、取得部231は、作業者画像と、当該作業者画像と同時に撮像された手元画像とを取得する。取得部231は、取得した各画像を、本人判定部232及び作業判定部233へ出力する。
【0053】
(3-2)本人判定部232
本人判定部232は、本人判定処理を行う機能を有する。例えば、本人判定部232は、取得部231によって取得された作業者画像に基づき、作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する。一例として、本人判定部232は、事前準備操作によって予め登録される顔画像の示すユーザUS(検査対象者)の顔の特徴量と、作業者画像の示すユーザUS(作業者)の顔の特徴量とに基づき、検査対象者と作業者が同一のユーザUSであるか否かを判定する。具体的に、本人判定部232は、各特徴量を比較し、特徴量の一致度合いに応じて、検査対象者と作業者が同一のユーザUSであるか否かを判定する。
【0054】
検査対象者と作業者が同一である(即ち異常なし)と判定した場合、本人判定部232は、ユーザUSに作業を継続させる。一方、検査対象者と作業者が同一でないと判定した場合、本人判定部232は、検査対象者と作業者が同一でない旨を示すエラー情報をユーザ端末10へ送信し、エラーを通知する。
かかる構成により、判定システム1では、予め登録された検査対象者とは異なる人物が検査のための作業を行っていることを検出することができる。これにより、検査対象者とは異なる人物によるなりすましを防止することができる。
【0055】
また、本人判定部232は、取得部231によって取得された作業者画像及び手元画像に基づき、手元画像の示す作業が作業者画像の示すユーザUS(検査対象者)によって行われているか否かを判定する。一例として、本人判定部232は、ユーザUSの上半身が撮像された作業者画像の示すユーザUSの動き(例えば上半身(顔、肩、腕など)の動き)と手元画像の示す手元の動きに基づき、作業がユーザUSによって行われているか否かを判定する。具体的に、本人判定部232は、各動きを比較し、各動きの対応度合いに応じて、作業がユーザUSによって行われているか否かを判定する。
【0056】
作業がユーザUSによって行われている(即ち異常なし)と判定した場合、本人判定部232は、ユーザUSに作業を継続させる。一方、作業がユーザUSによって行われていないと判定した場合、本人判定部232は、作業がユーザUSによって行われていない旨を示すエラー情報をユーザ端末10へ送信し、エラーを通知する。
かかる構成により、判定システム1では、作業者画像のみから検査対象者と作業者が同一であると判定された場合であっても、検査対象者とは異なる人物が検査のための作業を行っていることを検出することができる。これにより、検査対象者とは異なる人物によるなりすましを防止することができる。
【0057】
(3-3)作業判定部233
作業判定部233は、作業判定処理を行う機能を有する。例えば、作業判定部233は、取得部231によって取得された作業者画像又は手元画像に基づき、ユーザUSによる作業が適切に行われたか否かを判定する。作業の適切性の判定において、作業判定部233は、例えば、ユーザUSが検体を適切に採取したか否か(検体採取の適切性)、ユーザUSが試料を適切に調製したか否か(試料調製の適切性)、ユーザUSが試料(検体)を検査器具30へ適切に供給したか否か(検体供給の適切性)などを判定する。
【0058】
作業が適切に行われている(即ち異常なし)と判定した場合、作業判定部233は、ユーザUSに作業を継続させる。一方、作業が適切に行われていない(即ち異常あり)と判定した場合、作業判定部233は、作業が適切に行われていない旨を示すエラー情報をユーザ端末10へ送信し、エラーを通知する。
かかる構成により、判定システム1では、ユーザUSによって作業が適切に行われていないことを検出することができる。作業が適切に行われていない場合、判定システム1は、ユーザUSに作業を改善させることで作業の確からしさを向上することができる。これにより、検査精度を向上することができる。
【0059】
検体採取の適切性の判定について具体的に説明する。例えば、作業判定部233は、取得部231によって取得された作業者画像に基づき、ユーザUSから検体が採取されたか否かを判定する。一例として、作業判定部233は、作業者画像の示す顔や上半身の動きに基づき、ユーザUSが検体採取治具を自身の鼻や口などへ挿入しているか否かに応じて、ユーザUSから検体が採取されたか否かを判定する。また、作業判定部233は、取得部231によって取得された作業者画像に基づき、ユーザUSから適切な手技で検体が採取されたか否かを判定する。一例として、作業判定部233は、作業者画像の示すユーザUSが自身の鼻に対して、検体採取治具に付された印(例えばカラーチャートや模様など)位置まで検体採取治具を挿入したか否かに応じて、ユーザUSによって適切な手技で検体が採取されたか否かを判定する。
【0060】
検体採取が適切に行われた(即ち異常なし)と判定した場合、作業判定部233は、ユーザUSに作業を継続させる。一方、検体採取が適切に行われていない(即ち異常あり)と判定した場合、作業判定部233は、検体採取が適切に行われていない旨を示すエラー情報をユーザ端末10へ送信し、エラーを通知する。
かかる構成により、判定システム1では、ユーザUSによって検体の採取が適切に行われていないことを検出することができる。検体の採取が適切に行われていない場合、判定システム1は、ユーザUSに自身から検体を適切な手技で採取させることで、他者の検体を用いたなりすましを防止することや検査精度を向上することができる。
【0061】
また、試料調製の適切性について具体的に説明する。例えば、作業判定部233は、取得部231によって取得された作業者画像及び手元画像に基づき、ユーザUS自身によって試料調製が行われたか否かを判定する。一例として、作業判定部233は、作業者画像の示すユーザUSの動きと手元画像の示す手元の動きに基づき、ユーザUSの動きと手元の動きとが連動しているか否かに応じて、ユーザUS自身によって試料調製が行われたか否かを判定する。また、作業判定部233は、取得部231によって取得された作業者画像及び手元画像に基づき、ユーザUSによって適切な手技で試料調製が行われたか否かを判定する。一例として、作業判定部233は、作業者画像の示すユーザUSの動きと手元画像の示す手元の動きに基づき、ユーザUSの動きや手元の動きが試料調製に適切な動きであるか否かに応じて、ユーザUSによって適切な手技で試料調製が行われたか否かを判定する。
【0062】
試料調製が適切に行われた(即ち異常なし)と判定した場合、作業判定部233は、ユーザUSに作業を継続させる。一方、試料調製が適切に行われていない(即ち異常あり)と判定した場合、作業判定部233は、試料調製が適切に行われていない旨を示すエラー情報をユーザ端末10へ送信し、エラーを通知する。
かかる構成により、判定システム1では、ユーザUSによって試料調製が適切に行われていないことを検出することができる。試料調製が適切に行われていない場合、判定システム1は、ユーザUSに適切な手技で試料調製を行わせることで、他者の検体を用いたなりすましを防止することや検査精度を向上することができる。
【0063】
また、検体供給の適切性について具体的に説明する。例えば、作業判定部233は、取得部231によって取得された作業者画像及び手元画像に基づき、ユーザUS自身によって試料(検体)が検査器具30へ供給されたか否かを判定する。一例として、作業判定部233は、作業者画像の示すユーザUSの動きと手元画像の示す手元の動きに基づき、ユーザUSの動きと手元の動きとが連動しているか否かに応じて、ユーザUS自身によって試料が検査器具30へ供給されたか否かを判定する。また、作業判定部233は、取得部231によって取得された作業者画像及び手元画像に基づき、ユーザUSによって適切な手技で試料が検査器具30へ供給されたか否かを判定する。一例として、作業判定部233は、作業者画像の示すユーザUSの動きと手元画像の示す手元の動きに基づき、ユーザUSの動きや手元の動きが試料供給に適切な動きであるか否かに応じて、ユーザUSによって適切な手技で試料が検査器具30へ供給されたか否かを判定する。
【0064】
検体供給が適切に行われた(即ち異常なし)と判定した場合、作業判定部233は、ユーザUSに作業を継続させる。一方、検体供給が適切に行われていない(即ち異常あり)と判定した場合、作業判定部233は、検体供給が適切に行われていない旨を示すエラー情報をユーザ端末10へ送信し、エラーを通知する。
かかる構成により、判定システム1では、ユーザUSによって検体供給が適切に行われていないことを検出することができる。検体供給が適切に行われていない場合、判定システム1は、ユーザUSに適切な手技で検体供給を行わせることで、他者の検体を用いたなりすましを防止することや検査精度を向上することができる。
【0065】
なお、検体供給は、試料調製を行わず、ユーザUSから採取された検体がそのまま検査器具30へ供給されてもよい。この場合、検体供給の適切性の判定において、作業判定部233は、取得部231によって取得された作業者画像及び手元画像に基づき、ユーザUSから採取された検体が検査器具30に供給されたか否かを判定する。一例として、作業判定部233は、まず、作業者画像に基づきユーザUSから検体が採取されたか否かを判定する。ユーザUSから検体が採取された(即ち異常なし)と判定した場合、作業判定部233は、さらに、作業者画像の示すユーザUSの動きと手元画像の示す手元の動きに基づき、ユーザUSが採取した検体がそのまま検査器具30に供給されたか否かを判定する。
【0066】
ユーザUSから採取された検体がそのまま検査器具30へ供給された(即ち異常なし)と判定した場合、作業判定部233は、ユーザUSに作業を継続させる。一方、ユーザUSから採取された検体がそのまま検査器具30へ供給されていない(即ち異常あり)と判定した場合、作業判定部233は、ユーザUSから採取された検体がそのまま検査器具30へ供給されていない旨を示すエラー情報をユーザ端末10へ送信し、エラーを通知する。
かかる構成により、判定システム1では、ユーザUSによって検体の採取と供給が適切に行われていないことを検出することができる。検体の採取と供給が適切に行われていない場合、判定システム1は、ユーザUSに自身から採取した検体を検査器具30へ供給させることで、他者の検体を用いたなりすましを防止することができる。
【0067】
なお、上述した本人判定部232及び作業判定部233による各種の判定は、ユーザUSによる作業中にリアルタイムに撮像される動画像に基づきリアルタイムに行われてもよいし、当該動画像からランダムに切り出した静止画像に基づき行われてもよいし、ランダムなタイミングで撮像される静止画像に基づき行われてもよい。
また、上述した本人判定部232及び作業判定部233による各種の判定は、入力される画像と判定する事項との関係を予め学習した学習済みモデルを用いて行われてもよい。
【0068】
<4.処理の流れ>
以上、本実施形態に係る判定サーバ20の機能構成について説明した。続いて、
図7及び
図8を参照して、本実施形態に係る処理の流れについて説明する。
図7は、本実施形態に係る処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0069】
図7に示すように、まず、ユーザUSは、ユーザ端末10に対して、事前準備操作を行う(ステップS101)。
ユーザ端末10の撮像制御部152は、ユーザUSによる準備操作が終了すると、撮像部130のインカメラ131及びアウトカメラ132を起動する(ステップS102)。
次いで、撮像制御部152は、インカメラ131による作業者画像の撮像と、アウトカメラ132による手元画像の撮像を同時に開始する(ステップS103)。
【0070】
撮像開始後、ユーザUSは、検体を準備する作業を行う(ステップS104)。当該作業では、ユーザUSは、まず、検体採取治具を用いて自身の鼻や口などから検体を採取する。次いで、ユーザUSは、採取した検体を用いて試料調製を行う。
調製後、ユーザUSは、試料を検査器具30の供給部320へ滴下(供給)する(ステップS105)。
ユーザ端末10の撮像画像取得部153は、ユーザUSが作業している間に撮像される作業者画像及び手元画像を各カメラから取得し、通信部110から判定サーバ20へ送信する(ステップS106)。なお、本実施形態では、取得された各画像がリアルタイムに判定サーバ20へ送信されているものとする。
判定サーバ20では、ユーザ端末10から受信した作業者画像及び手元画像に基づき、判定処理が行われる(ステップS107)。
【0071】
ここで、
図8を参照して、判定処理の流れについて説明する。
図8は、本実施形態に係る判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0072】
図8に示すように、まず、判定サーバ20の取得部231は、通信部210がユーザ端末10から受信した作業者画像及び手元画像を取得する(ステップS201)。取得部231は、取得した作業者画像又は手元画像を本人判定部232及び作業判定部233へ出力する。
次いで、本人判定部232は、取得部231によって取得された作業者画像又は手元画像に基づき、本人判定処理を行う(ステップS202)。
次いで、作業判定部233は、取得部231によって取得された作業者画像又は手元画像に基づき、作業判定処理を行う(ステップS203)。
本人判定処理又は作業判定処理にて異常ありと判定された場合(ステップS204/YES)、処理はステップS205へ進む。一方、本人判定処理又は作業判定処理にて異常なしと判定された場合(ステップS204/NO)、判定処理は終了する。
処理がステップS205へ進んだ場合、異常ありと判定した本人判定部232又は作業判定部233は、異常の内容を示すエラー情報をユーザ端末10へ送信し、エラーを通知する(ステップS205)。通知後、判定処理は終了する。
なお、ユーザUSによる作業が行われている間は、ユーザ端末10の撮像部130による撮像が継続して行われているため、判定処理も繰り返し行われる。即ち、判定処理は、検体準備の開始から検体滴下の終了までの間、繰り返し行われる。
【0073】
図7に戻り、ユーザUSは、作業が終了した場合、ユーザ端末10に対して作業終了操作を行う(ステップS108)。
ユーザ端末10の撮像制御部152は、操作受付部151がユーザUSから作業終了操作を受け付けると、撮像部130による撮像を終了する(ステップS109)。
作業終了後、ユーザUSは、検査器具30の呈色部330の反応が完了するまで待機する(ステップS110)。
待機後、ユーザUSは、検査結果を確認し、検査を終了する(ステップS111)。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る判定システム1は、検査器具30を用いた検査のための作業を行っているユーザUS(作業者)の顔が少なくとも撮像された第1の撮像画像と、第1の撮像画像と同時に撮像される、ユーザUSが作業を行っている手元の様子が撮像された第2の撮像画像とを取得する取得部231と、取得された第1の撮像画像に基づき、作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する本人判定部232と、取得された第2の撮像画像に基づき、作業が適切に行われたか否かを判定する作業判定部233と、を備える。
【0075】
かかる構成により、本実施形態に係る判定システム1は、検査のための作業を行っている作業者の顔と手元を同時に撮像することができる。これにより、作業者本人による作業の確からしさを確認することができ、同時に、検査に用いられる検体が作業者本人から採取されたことを確認することができる。
よって、本実施形態に係る判定システム1は、検査器具を用いた検査における検査精度の向上となりすまし防止を両立することを可能とする。
【0076】
<5.変形例>
以上、実施形態について説明した。続いて、上述した実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0077】
上述した実施形態のユーザ端末10と判定サーバ20が有する機能は、かかる例に限定されない。例えば、ユーザ端末10が有する機能の一部を判定サーバ20が有してもよいし、判定サーバ20が有する機能の一部をユーザ端末10が有してもよい。
【0078】
また、上述した実施形態では、検査対象者自身が検査器具30を用いた検査を実施する例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、検査器具30を用いた検査は、臨床検査センターにて実施されてもよい。この場合、検査対象者は、検体の採取のみを行い、採取した検体を臨床検査センターへ送付する。臨床検査センターの検査担当者は、検査対象者から送付された検体で試料調製を行い、試料を検査器具30へ供給して検査を行う。
【0079】
また、上述した実施形態の判定処理が正常に終了した場合には、検査結果と、当該検査結果が検査対象者本人のものであることとを紐付けた情報が第三者(例えば医療機関)へ提供されてもよい。
【0080】
また、上述した実施形態では、ユーザ端末10がインカメラ131(第1の撮像部)とアウトカメラ132(第2の撮像部)を備えるスマートフォンである例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、ユーザ端末10は、スマートフォンと同様にインカメラとアウトカメラをそれぞれ第1の撮像部又は第2の撮像部として備えるタブレット端末やPCであってもよい。
また、第1の撮像部及び第2の撮像部は、ユーザ端末10に内蔵された撮像装置でなくてもよい。例えば、第1の撮像部及び第2の撮像部は、第1の撮像画像と第2の撮像画像を同時に撮像可能であれば、ユーザ端末10に外部接続される撮像装置であってもよい。
【0081】
また、上述した実施形態では、作業者画像(第1の撮像画像)がインカメラ131(第1の撮像部)によって撮像され、手元画像(第2の撮像画像)がアウトカメラ132(第2の撮像部)によって撮像される例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、手元画像がインカメラ131によって撮像され、作業者画像がアウトカメラ132によって撮像されてもよい。即ち、インカメラ131が第2の撮像部であり、アウトカメラ132が第1の撮像部であってもよい。この場合、
図2及び
図3において、ユーザ端末10は、アウトカメラ132をユーザUSの顔側(矢印AR1の方向)へ向け、インカメラ131をユーザUSの手元側(矢印AR2の方向)へ向けた状態で配置される。
ただし、ユーザ端末10の出力部160に作業ガイドを表示する場合には、ユーザUSが作業をしながら作業ガイドを確認できるようにするため、上述した実施形態のようにユーザ端末10が配置されることが好ましい。
【0082】
また、上述した実施形態では、作業判定部233による検体採取の適切性の判定、試料調製の適切性の判定、及び検体供給の適切性の判定が、ユーザUSによる各作業の実施後にそれぞれ行われる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、作業判定部233は、ユーザUSによって検体採取、試料調製、及び検体供給の一連の作業が全て実施されてから、まとめて各判定を行ってもよい。この場合、取得部231は、各作業において作業者画像及び手元画像を取得しておき、例えばユーザ端末10や判定サーバ20に対してあまり負荷が掛からないタイミング(例えば検査器具30に検体(試料)を滴下後の待機時間)に、まとめて各判定を行う。
【0083】
また、上述した実施形態では、本人判定部232及び作業判定部233による判定処理がリアルタイムに行われる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、判定処理は、ユーザUSが確認した検査結果が陰性であった場合に行われてもよい。
かかる構成により、ユーザ端末10から判定サーバ20へ撮像画像が送信される頻度と、判定サーバ20にて判定処理が行われる頻度を低減することができ、判定システム1における通信負荷及び処理負荷を低減することができる。
なお、検査結果が陰性又は陽性であるかの判定は、ユーザUSによる目視ではなく、学習済みモデルを用いて行われてもよい。当該学習済みモデルは、検査後の呈色部330が少なくとも撮像された画像と、陰性又は陽性との関係を予め学習したモデルである。
【0084】
ここで、
図9を参照して、検査結果が陰性であった場合に判定処理が行われる処理の流れについて説明する。
図9は、本実施形態に係る変形例における処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0085】
ステップS301からステップS303の処理は、
図7に示すステップS101からステップS103の処理と同様であるため、その説明を省略する。
また、ステップS304からステップS307の処理は、
図7に示すステップS104、ステップS105、ステップS108、ステップS109の処理とそれぞれ同様であるため、その説明を省略する。
ステップS307にて撮像が終了すると、撮像画像取得部153は、撮像開始から撮像終了までに撮像された作業者画像及び手元画像を取得し、記憶部140に記憶させる(ステップS308)。
続くステップS309とステップS310の処理は、
図7に示すステップS110とステップS111の処理とそれぞれ同様であるため、その説明を省略する。
ユーザUSは、検査結果の確認後、ユーザ端末10に対して検査結果入力操作を行い、検査結果を入力する(ステップS311)。
次いで、ユーザ端末10の検査結果取得部154は、ユーザUSによる検査結果入力操作にて入力される検査結果を取得し、取得した検査結果を通信部110から判定サーバ20へ送信する(ステップS312)。
判定サーバ20の本人判定部232又は作業判定部233は、通信部210がユーザ端末10から受信した検査結果が陰性を示すか否かを確認する(ステップS313)。検査結果が陰性である場合(ステップS313/YES)、処理はステップS314へ進む。一方、検査結果が陰性でない場合(ステップS313/NO)、処理は終了する。
処理がステップS314へ進んだ場合、判定サーバ20では、ステップS308にてユーザ端末10の記憶部140に記憶された作業者画像及び手元画像に基づき、判定処理が行われる(ステップS314)。なお、当該判定処理は、
図8を参照して説明した判定処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0086】
また、上述した実施形態や
図9を参照して説明した処理の流れでは、ユーザUSが目視で検査結果を判定する例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、判定システム1は、検査結果を示す検査器具30の撮像画像に基づき検査結果を判定する構成を備えてもよい。この場合、ユーザUSは、検査結果を示す検査器具30をユーザ端末10で撮像する。ユーザ端末10は、撮像した撮像画像を判定サーバ20へ送信する。判定サーバ20は、ユーザ端末10から受信した撮像画像に基づき、検査結果を判定する。判定サーバ20は、例えば、撮像画像が示す検査結果(呈色部330が示す呈色反応の結果)と標的とする検査対象物の有無との関係を学習した学習済みモデルを用いて、撮像画像から検査結果を判定する。
また、判定システム1は、検体採取に用いられたチューブラベルの撮像画像に基づき当チューブラベルの情報を登録する構成を備えてもよい。なお、チューブラベルには、チューブラベルの情報を示す一次元コードやシリアル番号などが付されているものとする。この場合、ユーザUSは、検体採取後に使用したチューブラベルをユーザ端末10で撮像する。ユーザ端末10は、撮像した撮像画像を判定サーバ20へ送信する。判定サーバ20は、ユーザ端末10から受信した撮像画像に基づき、チューブラベルの情報を読み取り、登録する。なお、チューブラベルの情報の読み取りはユーザ端末10で行われてもよい。
【0087】
また、上述した実施形態では、本人判定部232及び作業判定部233が作業者画像又は手元画像に基づき各判定を行う例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、本人判定部232及び作業判定部233は、作業空間で生じる音も用いて、各判定を行ってもよい。作業空間で生じる音は、例えば、ユーザUSの作業によって生じる作業音や、ユーザUSの周囲で生じている環境音などである。この場合、ユーザUSは、作業空間で生じる音が収録されるよう、作業者画像及び手元画像を動画像として撮像する。
本人判定部232は、例えば、作業者画像の音と手元画像の音との一致度合に応じて、作業が検査対象者本人によって行われているか否かを判定する。本人判定部232は、一致度合が高い(所定の基準値以上)である場合に作業が検査対象者本人によって行われていると判定し、一致度合が低い(所定の基準値未満)である場合に作業が検査対象者本人によって行われていないと判定する。
また、作業判定部233は、各画像の音と各作業が適切に行われている際に生じる音との一致度合に応じて、ユーザUSによる作業が適切に行われたか否かを判定する。作業判定部233は、一致度合が高い(所定の基準値以上)である場合にユーザUSによる作業が適切に行われたと判定し、一致度合が低い(所定の基準値未満)である場合にユーザUSによる作業が適切に行われなかったと判定する。
このように、本人判定部232及び作業判定部233は、作業空間で生じる音も用いて各判定を行うことで、作業者画像又は手元画像のみに基づき各判定を行う場合と比較して各判定の精度を向上することができる。
【0088】
以上、実施形態の変形例について説明した。なお、上述した実施形態における判定システム1、ユーザ端末10、及び判定サーバ20の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0089】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0090】
1…判定システム、10…ユーザ端末、20…判定サーバ、30…検査器具、110…通信部、120…入力部、130…撮像部、131…インカメラ、132…アウトカメラ、140…記憶部、150…制御部、151…操作受付部、152…撮像制御部、153…撮像画像取得部、154…検査結果取得部、155…出力制御部、160…出力部、210…通信部、220…記憶部、230…制御部、231…取得部、232…本人判定部、233…作業判定部、310…二次元コード、320…供給部、321…検体供給窓、330…呈色部、331…コントロールライン、332…テストライン、NW…ネットワーク