(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073870
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】体位変換装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/10 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
A61G7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184831
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】599121746
【氏名又は名称】株式会社 富士ワールド
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 友一
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA03
4C040AA14
4C040GG03
(57)【要約】
【課題】簡素な構造で、かつ比較的簡単な操作で楽に体位変換させ易く、操作性を向上させて介護者の労力を軽減し、しかも所定の位置に位置保持でき、介護者の両手を自由にさせて全介助を可能にする体位変換装置を提供すること。
【解決手段】被介護者の両膝の下方に配置して使用する体位変換装置1において、底面部1a、上面部1c、および底面部1aの左右の端部の一方もしくは両方から上面部1cに向かって拡開傾斜する傾斜面部4を有する基台1dと、上面部1cの左右の両端部にそれぞれ立設した側壁部1f、1eと、上面部1cにおいて左右の側壁部1f、1eの間に立設される中央壁部3と、を備え、底面部1aが特定の配置面5と接する状態で配置される仰臥状態と、傾斜面部4が特定の配置面5と接する状態で配置される傾斜状態と、にすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被介護者の両膝の下方に配置して前記両膝を乗せて使用する体位変換装置において、
底面部、上面部、および前記底面部の左右の端部の一方もしくは両方から前記上面部に向かって拡開傾斜する傾斜面部を有する基台と、
前記基台の前記上面部の左右の両端部にそれぞれ立設した側壁部と、
前記基台の前記上面部において前記左右の側壁部の間に立設される中央壁部と、を備え、
一方の前記側壁部と、前記中央壁部と、前記上面部とにより、前記両膝の一方が配される第1領域が画定され、
他方の前記側壁部と、前記中央壁部と、前記上面部とにより、前記両膝の他方が配される第2領域が画定され、
前記底面部が特定の配置面と接する状態で配置される仰臥状態と、前記傾斜面部が前記特定の配置面と接する状態で配置される傾斜状態と、にすることができ、
前記傾斜状態のとき、前記第1領域に配した前記両膝の一方の重心を通過し前記特定の配置面と直交する第1仮想線と、前記第2領域に配した前記両膝の他方の重心を通過し前記特定の配置面と直交する第2仮想線と、の間を2等分する第3仮想線が前記傾斜面部と交差することを特徴とする体位変換装置。
【請求項2】
前記仰臥状態のとき、前記第1領域に配した前記両膝の一方の重心を通過し前記特定の配置面と直交する第4仮想線、および前記第2領域に配した前記両膝の他方の重心を通過し前記特定の配置面と直交する第5仮想線の少なくとも一方が、前記傾斜面部と交差する請求項1に記載の体位変換装置。
【請求項3】
前記基台が、前記底面部に対して特定の角度をなし、前記傾斜面部と前記上面部とを接続する側部を有し、
前記傾斜状態のとき、前記傾斜面部上における前記第3仮想線と前記底面部との距離が、前記傾斜面部上における前記第3仮想線と前記側部との距離よりも長い請求項1または請求項2に記載の体位変換装置。
【請求項4】
前記特定の配置面および前記傾斜面部のうち一方に磁性体を設け、他方に磁石部を設けた請求項1または請求項2に記載の体位変換装置。
【請求項5】
前記基台の内部に中空部を形成し、前記中空部に錘体部材を流動可能に収容した請求項1または請求項2に記載の体位変換装置。
【請求項6】
前記傾斜面部を前記底面部の一方の端部に設けた場合、前記底面部の他方の端部が、接続面部を介して前記上面部と接続する請求項1または請求項2に記載の体位変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけ床や寝台などに伏しており、介護を要する被介護者の体位を変換する際、補助具として有用な体位変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運動機能が十分でなく自力で自己の体位を変換できない被介護者にあっては、被介護者と介護者とができるだけ軽労力で無理なく快適に用いられる体位変換のための補助具の登場が臨まれている。介護施設などの介護現場では、寝たきりの老齢者や身動きの取れない身体障害者の床ずれ(褥瘡)防止やおむつ交換のため、日毎に何回も被介護者の体位交換を強いられる業務が続いている現状がある。
【0003】
また、自力では身動きが取れない被介護者は同じ姿勢で臥床しているため、下肢関節の屈曲変形や骨盤の捩じれなどが副次的に発生しやすく、被介護者を介護する上で、被介護者の下肢関節を良肢位に保持することも重要な事項である。また、被介護者が自らの残存筋力を使って運動することも、被介護者の身体機能の維持・向上にとって重要な解決課題となっている。
【0004】
寝返りやおむつ交換のため、仰臥位置からの体位変換が不自由な被介護者に、介護者が軽負担で容易に体位変換させる補助具として、特許文献1や特許文献2に記載されたものがある。特許文献1の体位交換台は、支台付きの脚受け台に膝支え板を設け、バーやクッション材を覆設したものであり、特許文献2の介護補助具は、要介護者を立て膝にして使用するもので、底面の両側部分が各側部分に関連する側縁に向けて徐々に高位となるように形作られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2124176号公報
【特許文献2】特許第4930826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、部品点数が多く構造的に複雑化し、体位交換台の操作も手間取る問題がある。また、特許文献2では、介護補助具のころがり性能がよく、回動操作させ易い便宜があるが、介護し易い所定の位置に位置保持させることが難しい問題がある。すなわち、寝たきり患者がおむつや下着を交換する際に使用する体位交換具では、一方の手で体位交換具を保持しながら被介護者の体位を交換させる必要のある構造となっており、体位交換具に対する操作性を改善する余地があった。このため、体位交換具を所定の回転位置に回転させた際、体位交換具をその位置に自立保持させて、介護者が両手でおむつや下着などを交換することが可能な構成の体位交換具の登場が望まれていた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、簡素な構造で、かつ比較的簡単な操作で楽に体位変換させ易く、操作性を向上させて介護者の労力を軽減し、しかも所定の位置に位置保持でき、介護者の両手を自由にさせて全介助を可能にする体位変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、被介護者の両膝の下方に配置して前記両膝を乗せて使用する体位変換装置であって、底面部、上面部、および前記底面部の左右の端部の一方もしくは両方から前記上面部に向かって拡開傾斜する傾斜面部を有する基台と、前記基台の前記上面部の左右の両端部にそれぞれ立設した側壁部と、前記基台の前記上面部において前記左右の側壁部の間に立設される中央壁部と、を備え、一方の前記側壁部と、前記中央壁部と、前記上面部とにより、前記両膝の一方が配される第1領域が画定され、他方の前記側壁部と、前記中央壁部と、前記上面部とにより、前記両膝の他方が配される第2領域が画定され、前記底面部が特定の配置面と接する状態で配置される仰臥状態と、前記傾斜面部が前記特定の配置面と接する状態で配置される傾斜状態と、にすることができ、前記傾斜状態のとき、前記第1領域に配した前記両膝の一方の重心を通過し前記特定の配置面と直交する第1仮想線と、前記第2領域に配した前記両膝の一方の重心を通過し前記特定の配置面と直交する第2仮想線と、の間を2等分する第3仮想線が前記傾斜面部と交差することを特徴とする体位変換装置である。
【0009】
この構成では、前記傾斜状態において、前記第3仮想線が前記傾斜面部と交差するので、体位変換装置を傾斜状態で自立保持させることが可能となり、介護者は両手でおむつや下着などを交換することができる。すなわち、簡素な構造でありながら、比較的簡単な操作で楽に体位変換させ易くなり、操作性を向上させて介護者の労力を軽減できる。しかも傾斜状態で位置保持可能となり、介護者の両手を自由にさせて全介助を可能にできる。
【0010】
本発明は、前記仰臥状態のとき、前記第1領域に配した前記両膝の一方の重心を通過し前記特定の配置面と直交する第4仮想線、および前記第2領域に配した前記両膝の他方の重心を通過し前記特定の配置面と直交する第5仮想線の少なくとも一方が、前記傾斜面部と交差することが好ましい。
【0011】
この構成では、前記第4仮想線または前記第5仮想線と交差する前記傾斜面部側に向かって小さな力で前記体位変換装置を傾斜させることができるため、前記仰臥状態と前記傾斜状態との切り替えが容易となる。
【0012】
本発明は、前記基台が、前記底面部に対して特定の角度をなし、前記傾斜面部と前記上面部とを接続する側部を有し、前記傾斜状態のとき、前記傾斜面部上における前記第3仮想線と前記底面部との距離が、前記傾斜面部上における前記第3仮想線と前記側部との距離よりも長いことが好ましい。
【0013】
この構成では、意図せずに前記体位変換装置が前記傾斜状態から前記仰臥状態となることを抑制するため、前記傾斜状態の保持性が向上する。
【0014】
本発明は、前記特定の配置面および前記傾斜面部のうち一方に磁性体を設け、他方に磁石部を設けることが好ましい。
【0015】
この構成では、前記傾斜状態おいて、前記特定の配置面と前記傾斜面部とが磁気により吸着するので、前記傾斜状態の保持性が向上する。
【0016】
本発明は、前記基台の内部に中空部を形成し、前記中空部に錘体部材を流動可能に収容することが好ましい。
【0017】
この構成では、前記傾斜状態おいて、前記中空部の錘体部材が傾斜面部の上に流動して留まるため、前記傾斜状態の保持性が向上する。
【0018】
本発明は、前記傾斜面部を前記底面部の一方の端部に設けた場合、前記底面部の他方の端部が、接続面部を介して前記上面部と接続することが好ましい。
【0019】
この構成では、前記傾斜面部を前記底面部の一方の端部にのみ設ければよいため、簡素な構成とすることができる。また、他方の側への回転が制限されるので、他方の側への回転が望ましくない状況に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1の体位変換装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。
【
図2】実施例1の体位変換装置を示す図であり、(a)は傾斜状態のときの体位変換装置の正面図、(b)は仰臥状態のときの体位変換装置の正面図である。
【
図3】実施例2の体位変換装置を示す図であり、(a)は傾斜状態の体位変換装置の正面図、(b)は仰臥状態の体位変換装置の正面図である。
【
図4】実施例3の体位変換装置を示す図であり、(a)は傾斜状態の体位変換装置の正面図、(b)は仰臥状態の体位変換装置の正面図である。
【
図5】実施例4の体位変換装置を示す図であり、(a)は傾斜状態の体位変換装置の正面図、(b)は仰臥状態の体位変換装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態の体位変換装置1について、
図1、
図2を参照して説明する。
【実施例0022】
本発明の実施形態において、「左」、「右」などの用語は、図面に示す方位又は位置関係に基づいており、本発明の実施形態の説明を容易にするためであり、装置や要素の特定の方位を限定するものではない。また、「第1」、「第2」などの用語は、説明の目的のために用いるものであり、相対的な重要性や優位性を示したり暗示したりするものではない。
【0023】
体位変換装置1は、特には被介護者への介護現場で用いられるものであり、被介護者の両膝の下方に配置して、両膝を乗せて使用する。
【0024】
体位変換装置1は、ウレタン系やポリエチレン系の合成樹脂などにより形成されてもよく、浮き袋や気球・風船などのように膨圧中空体に形成してもよい。また、体位変換装置1には、合皮素材やポリウレタンレザー等から成るカバー(図示せず)が被覆状態に設けられてもよい。
【0025】
体位変換装置1は、
図1(a)~(c)に示すように、主として底面部1a、上面部1c、底面部1aの左右の端部の一方もしくは両方(本実施例では両方)から上面部1cに向かって特定の角度θ(例えば、48°)で拡開傾斜する傾斜面部4、底面部1aの左右の両側で底面部1aに対して特定の角度αをなし(本実施例においては直角)、傾斜面部4と上面部1cとを接続する側部1b、1gを有し、所定の厚みTを備えた基台1dを備えている。便宜上、左右の傾斜面部4を双方とも同一符号として示している。
【0026】
基台1dの上面部1cの左右の両端部には、それぞれ立設した側壁部1e、1fが設けられている。基台1dの上面部1cにおいて左右の側壁部1e、1fの間に立設される中央壁部3が設けられている。基台1d、側壁部1e、1f、中央壁部3は、一体に形成されていても別体として形成されていてもよいが、本実施形態においては、一体に形成されている。一方の側壁部1eと、中央壁部3と、上面部1cとにより、両膝のうちの一方の膝F1が配される第1領域Aが画定され、他方の側壁部1fと、中央壁部3と、上面部1cとにより、両膝のうちの他方の膝F2が配される第2領域Bが画定される。
【0027】
体位変換装置1は、底面部1aが特定の配置面5(例えば床面等)と接する状態で配置される仰臥状態と、傾斜面部4が特定の配置面5と接する状態で配置される傾斜状態と、にすることができる(
図2(a)、(b)参照)。仰臥状態と傾斜状態との切り替えは、体位変換装置1を回転させることにより達成することができる。なお、基台1d、左右の側壁部1e、1fなどに取手部(図示せず)を設けて、体位変換装置1の回転操作を容易にして、介護者の体位を変換し易くしてもよい。
【0028】
体位変換装置1が傾斜状態のときには、第1領域Aに配した一方の膝F1の重心G1を通過し特定の配置面5と直交する第1仮想線L1と、第2領域Bに配した他方の膝F2の重心G2を通過し特定の配置面5と直交する第2仮想線L2と、の間を2等分する第3仮想線L3が傾斜面部4と交差する。さらに、傾斜面部4上における第3仮想線L3と底面部1aとの距離d1が、傾斜面部4上における第3仮想線L3と側部1gとの距離d2よりも長い(
図2(a)参照)。
【0029】
体位変換装置1が仰臥状態のときには、第1領域Aに配した一方の膝F1の重心G1を通過し特定の配置面5と直交する第4仮想線L4、および第2領域Bに配した他方の膝F2の重心G2を通過し特定の配置面5と直交する第5仮想線L5の少なくとも一方(本実施例では両方)が、傾斜面部4と交差する(
図2(b)参照)。本実施例では、底面部1aが第4仮想線L4と第5仮想線L5との間に位置しており、すなわち、底面部1aの幅寸法Jが、特定の配置面5に沿った第4仮想線L4と第5仮想線L5との距離Kよりも短くなるように設定されている。
【0030】
[実施例1の作用・効果]
実施例1の構成では、被介護者の両膝がそれぞれ第1領域Aおよび第2領域Bに配置され体位変換装置1が傾斜状態のとき、体位変換装置1が一般的な人間の体重と比較して軽量であることから、体位変換装置1と被介護者の両膝とを合わせた重心Gは第3仮想線L3上に位置すると考えることができる。傾斜状態における体位変換装置1は、第3仮想線L3が傾斜面部4と交差するように構成されているため、体位変換装置1を仰臥状態から傾斜状態に切り替えた際、体位変換装置1を傾斜状態で自立保持させることが可能となり、介護者は両手でおむつや下着などを交換することができる。傾斜面部4上における第3仮想線L3と底面部1aとの距離d1が、傾斜面部4上における第3仮想線L3と側部1gとの距離d2よりも長いことにより、体位変換装置1が意図せずに傾斜状態から仰臥状態となることを抑制できるため、体位変換装置1の傾斜状態での保持性が向上する。
【0031】
第4仮想線L4および第5仮想線L5が傾斜面部4と交差する、すなわち底面部1aの幅寸法Jが、特定の配置面5に沿った第4仮想線L4と第5仮想線L5との距離Kよりも短いため、両側の傾斜面部4に向かって小さな力で体位変換装置1を傾斜させることができる。これにより、両側において体位変換装置1の仰臥状態と傾斜状態との切り替えが容易となる。