(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007388
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】耕耘爪
(51)【国際特許分類】
A01B 33/10 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A01B33/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100546
(22)【出願日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2022105561
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000204239
【氏名又は名称】株式会社 太陽
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】武智 洋実
(72)【発明者】
【氏名】吉良川 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】土居 照明
(72)【発明者】
【氏名】三宮 豊章
(72)【発明者】
【氏名】山崎 優二
【テーマコード(参考)】
2B033
【Fターム(参考)】
2B033AA05
2B033AB01
2B033BA01
2B033BB02
2B033BB11
2B033BB17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】農作業機に取り付けるための回転爪軸の様式や形状が異なるなどして、横刃部に隣接する縦刃部が土壌と当接して摩耗しても、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状を維持して摩耗し、折れにくく耐久性に優れる耕耘爪を提供することを目的とする。
【解決手段】回転爪軸に固定される固定手段11を有して平板状のまま延伸する縦刃部1と、縦刃部1から弯曲開始部6を境として弯曲しながら延伸する横刃部2とが一体的に連なって構成され、縦刃部1及び横刃部2の一の面に、横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部まで連続して形成された窪み部3と、窪み部3から縦刃部1及び横刃部2の短手方向における一の縁Lまでを覆うようにして横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部の途中まで連続して層設された、硬質合金からなる硬化層4を具備した耕耘爪とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転爪軸に固定される固定手段(11)を有して平板状のまま延伸する縦刃部(1)と、前記縦刃部(1)から弯曲開始部(6)を境として弯曲しながら延伸する横刃部(2)とが一体的に連なって構成される耕耘爪であって、
前記縦刃部(1)及び前記横刃部(2)の一の面に、前記横刃部(2)の延伸方向に沿って前記縦刃部(1)の領域の一部まで連続して形成された窪み部(3)と、
前記窪み部(3)から前記縦刃部(1)及び前記横刃部(2)の短手方向における一の縁(L)までを覆うようにして前記横刃部(2)の延伸方向に沿って前記縦刃部(1)の領域の一部の途中まで連続して層設された、硬質合金からなる硬化層(4)と、を具備し、
前記窪み部(3)は、最大窪み深部(3M)から前記一の縁(L)へ向って浅くなるように傾斜した、下傾斜面(31)を有することを特徴とする耕耘爪。
【請求項2】
前記硬化層(4)が層設された前記弯曲開始部(6)から前記縦刃部(1)までの前記一の縁における亘り長さ(D)は10~100mmであり、前記横刃部(2)の曲率半径(r)は30~200mmであることを特徴とする請求項1に記載の耕耘爪。
【請求項3】
前記横刃部(2)の延伸方向における端である側方先端(22)において、前記硬化層(4)は、前記窪み部(3)での前記弯曲開始部(6)における厚みより薄く設けられている薄厚部(4α)を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耕耘爪。
【請求項4】
前記硬化層(4)の表面が、前記窪み部(3)に沿って、凹んでいる凹部(41)を具備することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耕耘爪。
【請求項5】
前記硬化層(4)の表面が、前記横刃部(2)の一の面と略平行に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耕耘爪。
【請求項6】
前記横刃部(2)の一面とは反対側の他の面において、前記窪み部(3)に沿って、膨らんでいる膨大部(23)を具備することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耕耘爪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌を耕起する耕耘爪に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耕耘爪として、土や石などの土壌と当接する面が摩耗しやすいため、耐摩耗性能を向上させるべく、刃先部における土壌と当接する一面に刃先部より硬度が高い硬質合金を溶着して、硬化層を層設したものが存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、回転爪軸に固定される固定手段を有して平板状のまま主として縦方向に延伸する縦刃部と、当該縦刃部から弯曲開始部を境として弯曲しながら主として横方向に延伸する横刃部とが一体的に連なって構成される耕耘爪であって、当該横刃部の一面に、当該横刃部の延伸方向に沿って形成された窪み部と、当該窪み部から当該横刃部の下縁までを覆うようにして当該横刃部の延伸方向に沿って、硬質合金からなる硬化層が層設された耕耘爪が開示されている。
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された耕耘爪では、硬質合金からなる硬化層が設けられている窪み部が、横刃部にのみ設けられたものであるため、農作業機に取り付けるための回転爪軸の様式や形状が異なったり、耕耘時の深度やトラクタの速度が違ったりするなどの場合には、横刃部の摩耗を抑制することができたとしても横刃部に隣接する縦刃部側がより摩耗することで横刃部と縦刃部との間に摩耗の差が生じることにより、
図5に示すように、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が歪な曲線形状に変貌し、土壌と当接したときの刃縁に掛かる応力が局所に集中して折れやすくなるなどという課題があった。また、草や藁が刃縁に絡まり、振動やトラクタの所要動力の増大及び耕耘状態の悪化につながっていた。
【0006】
そこで、本発明では、農作業機に取り付けるための回転爪軸の様式や形状が異なったり、耕耘時の深度やトラクタの速度が違ったりするなどして、横刃部に隣接する縦刃部側にも土壌との当接により摩耗する場合であっても、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状になるように摩耗し、折れにくく耐久性に優れる耕耘爪を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては、以下〔1〕ないし〔5〕の手段を採用する。
【0008】
〔1〕すなわち、本発明は、回転爪軸に固定される固定手段(11)を有して平板状のまま延伸する縦刃部(1)と、前記縦刃部(1)から弯曲開始部(6)を境として弯曲しながら延伸する横刃部(2)とが一体的に連なって構成される耕耘爪であって、前記縦刃部(1)及び前記横刃部(2)の一の面に、前記横刃部(2)の延伸方向に沿って前記縦刃部(1)の領域の一部まで連続して形成された窪み部(3)と、前記窪み部(3)から前記縦刃部(1)及び前記横刃部(2)の短手方向における一の縁(L)までを覆うようにして前記横刃部(2)の延伸方向に沿って前記縦刃部(1)の領域の一部の途中まで連続して層設された、硬質合金からなる硬化層(4)と、を具備し、前記窪み部(3)は、最大窪み深部(3M)から前記一の縁(L)へ向って浅くなるように傾斜した、下傾斜面(31)を有することを特徴とする耕耘爪である。
【0009】
〔2〕そして、前記硬化層(4)が層設された前記弯曲開始部(6)から前記縦刃部(1)までの前記一の縁における亘り長さ(D)は10~100mmであり、前記横刃部(2)の曲率半径(r)は30~200mmである。
【0010】
〔3〕そして、前記横刃部(2)の延伸方向における端である側方先端(22)において、前記硬化層(4)は、前記窪み部(3)での前記弯曲開始部(6)における厚みより薄く設けられている薄厚部(4α)を有することを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の耕耘爪。
【0011】
〔4〕そして、前記硬化層(4)の表面が、前記窪み部(3)に沿って、凹んでいる凹部(41)を具備することを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の耕耘爪である。
【0012】
〔5〕そして、前記硬化層(4)の表面が、前記横刃部(2)の一の面と略平行に形成されていることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の耕耘爪である。
【0013】
〔6〕そして、前記横刃部(2)の一面とは反対側の他の面において、前記窪み部(3)に沿って、膨らんでいる膨大部(23)を具備することを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の耕耘爪である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の耕耘爪は、上述のような構成としたことで、農作業機に取り付けるための回転爪軸の様式や形状が異なったり、耕耘時の深度やトラクタの速度が違ったりするなどして、横刃部に隣接する縦刃部側にも土壌との当接により摩耗する場合であっても、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状になるように摩耗し、折れにくく耐久性に優れている。また、本発明の耕耘爪は、そのように、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状になるように摩耗することで、草や藁が絡まりにくくなり、耕耘性能の悪化を抑制するとともに振動も抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本件発明の耕耘爪の第一実施形態における平面図及び正面図である。
【
図2】(a)
図1の耕耘爪のA-A線端面図である。(b)他の実施形態において、
図1の耕耘爪のA-A線端面図に対応する端面図である。
【
図3】(a)他の実施形態において、
図1の耕耘爪のA-A線端面図に対応する端面図である。(b)他の実施形態において、
図1の耕耘爪のA-A線端面図に対応する端面図である。
【
図4】(a)本件発明の耕耘爪の第一実施形態における使用前の正面図である。(b)本件発明の耕耘爪の第一実施形態における使用後の正面図である。
【
図5】(a)特許文献1に開示された耕耘爪における使用前の正面図である。(b)特許文献1に開示された耕耘爪における使用後の正面図である。
【
図6】本件発明の耕耘爪の第一実施形態の変形形態1における平面図及び正面図である。
【
図7】本件発明の耕耘爪の第二実施形態における平面図及び正面図である。
【
図9】本件発明の耕耘爪の第三実施形態における平面図及び正面図である。
【
図11】本件発明の耕耘爪の第四実施形態における平面図及び正面図である。
【
図13】本件発明の耕耘爪の第五実施形態における平面図及び正面図である。
【
図14】(a)
図13の耕耘爪のE-E線端面図である。(b)
図13の耕耘爪のF-F線端面図である。
【
図15】本件発明の耕耘爪の第六実施形態における平面図及び正面図である。
【
図17】本件発明の耕耘爪の第七実施形態における平面図及び正面図である。
【
図18】(a)
図17の耕耘爪のH-H線端面図である。(b)他の実施形態において、
図17の耕耘爪のH-H線端面図に対応する端面図である。
【
図19】本件発明の耕耘爪の第八実施形態における平面図及び正面図である。
【
図21】本件発明の耕耘爪の第一実施形態のさらなる変形形態2における、
図1の耕耘爪のA-A線端面図に対応する端面図である。
【
図22】本件発明の耕耘爪の第一実施形態のさらなる変形形態3における、
図1の耕耘爪のA-A線端面図に対応する端面図である。
【
図23】本件発明の耕耘爪の第一実施形態のさらなる変形形態4における、
図1の耕耘爪のA-A線端面図に対応する端面図である。
【
図24】本件発明の耕耘爪の第一実施形態のさらなる変形形態5における、
図1の耕耘爪のA-A線端面図に対応する端面図である。
【
図25】本件発明の耕耘爪の第九実施形態におけるにおける、
図1の耕耘爪のA-A線端面図に対応する端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る耕耘爪に関する実施の形態について、添付の図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この形態に限定されるものではない。また、「~」の記号を用いて表す数値範囲において、上限及び下限の数値はその範囲に含まれるものである。
【0017】
各実施例の図面及び以下の説明において、回転爪軸の回転軌道と正対する面、すなわち回転爪軸の回転爪軸線を法線とする面であって、かつ横刃部2が向かって左側に延伸する側の面を、土や石などの土壌と当接する面である正面とする。
図1、
図6、
図7、
図9、
図11、
図13、
図15、
図17、
図19に、それぞれ第一実施形態、第一実施形態の変形形態、第二実施形態から第八実施形態の正面図が示される。これら正面図にて、耕耘爪の先端は、向かって手前方向に弯曲してなる。第一実施形態における回転爪軸の回転方向は、回転中心Oを中心として反時計回りであり、第一実施形態の変形形態、第二実施形態から第八実施形態も同様に反時計回りである。
【0018】
(耕耘爪の全体構成)
本発明の耕耘爪は、基本的に、回転爪軸への固定手段11を有してこの固定手段11から主として正面視横方向に延伸する縦刃部1と、縦刃部1から弯曲開始部6を境として弯曲しながら主として正面視斜め上方向に延伸する横刃部2と、が一体的に連なって構成される。縦刃部1は平面板からなり、横刃部2は主に弯曲板からなる。
【0019】
耕耘爪全体、縦刃部1、横刃部2のいずれも、延伸方向の両端のうち回転爪軸への固定手段側の端を基端側とし、その反対側の端を先端側とする。耕耘爪全体では、最基端側が、正面視にて一の側方を向く基端12であり、最先端側が、正面視にて他の側方を向く側方先端22である。
【0020】
そして、縦刃部1及び横刃部2の少なくとも一の面には、横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部まで連続して形成された窪み部3を具備する。さらに、窪み部3から縦刃部1及び横刃部2の短手方向における一の縁である下縁Lまでを覆うようにして横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部の途中まで連続して層設された、硬質合金からなる硬化層4を具備する。また、横刃部2の一の面に、横刃部2の下縁Lに沿って傾斜する刃面5が形成される。以下、各実施例の各構成を説明する。
【0021】
なお、本発明は、回転爪軸に固定されて高速回転する耕耘爪であればどのようなサイズ、用途であっても良いが、中でも特に、大型トラクタ用であり、耐摩耗性や強度の観点より、回転爪軸からの最大回転半径245mm以上の耕耘爪に適用することが好ましく、250~290mm程度の耕耘爪に適用することがさらに好ましい。
【実施例0022】
〔第一実施形態〕
(正面視刃縁形状)
第一実施形態の耕耘爪の正面視刃縁形状は、縦刃部1の基端12から一の側方へ伸び、横刃部2の側方先端22まで、他の側方(
図1の向かって左側)に曲がりながら形成される。その短手方向における一の縁である下縁Lと同じく他の縁である上縁Uの両側縁は、連続的に曲率変化させた、全体として非円弧の連続した滑らかな曲線からなる。なお、この曲線は、全体として非円弧の連続した滑らかなであれば、複数の円弧曲線が連なってなるものでも良い。なお、
図1の正面図において、横刃部2が紙面手前側に弯曲する前の状態を仮想線にて示している。
【0023】
(縦刃部1)
縦刃部1は、一基準面内の平面板からなり、基端12から連なって主として左方向へ伸びており、弯曲開始部6までの領域を言う。
図1の正面図において、紙面裏側である背面側における縦刃部1及び横刃部2の側縁のうち下方寄りに、刃面5が形成される。
図1に示すように、縦刃部1の正面視形状は、基端12側から主として左方向へ伸び、これと共に弯曲開始部6に近い領域では、同様の幅で滑らかに曲がってなる。
【0024】
縦刃部1は、次述の固定手段11により回転爪軸へ固定され、回転中心Oに対して反時計回りに高速回転する。第一実施形態、第一実施形態の変形形態、及び第二実施形態では、それぞれ後述するように窪み部3及び硬化層4が、内弯曲面に形成されるため、この回転方向により横刃部2の土壌への打ち込み上面側に硬化層4が位置することとなる。
【0025】
(固定手段11)
縦刃部1の延伸方向のうち基端12寄りには、回転爪軸への固定手段11を有する。固定手段11は、第一実施形態では回転爪軸の固定孔部に合わせてボルトにて締結する取付け孔である。固定手段11たる取付け孔は、第一実施形態では2つ設けられるが、他の実施形態において1つ又は3つ以上とすることができる。
【0026】
(基端12)
基端12は、右方向を向く耕耘爪の基端側の一端である。第一実施形態では基端12は平面からなる。
【0027】
(横刃部2)
横刃部2は、弯曲開始部6から先端までの全領域を言い、平面視にて一方向(
図1の平面図にて向って下側)へ連続的に全弯曲した全弯曲板からなる。また、正面視においても先端に向かって一側方(
図1の向って左側)に滑らかに曲がる平面弯曲形状である。すなわち、弯曲開始部6を境として縦刃部1と連なり、正面視にて主として横方向へ曲がりながら延伸している。そして、延伸する両側辺のうち下方の側辺が下縁Lを構成し、この横刃部2から縦刃部1の下縁Lに沿って、刃面5が形成される。なお刃面5は、縦刃部1の下方一側辺から横刃部2の側方先端22にまで至る。なお、側方先端22は、側方を向く耕耘爪の先端である。
【0028】
(弯曲)
横刃部2の弯曲形状は、弯曲開始部6を境にして、一つまたは複数の弯曲半径が組み合わされてなる。第一実施形態では、所定の曲率半径rにて弯曲して形成される。他に、横刃部2において、基端側の曲率半径と先端(側方先端22)側の曲率半径とが異なる大きさで隣接して、平面視にて両曲線が滑らかに連なるように形成することもできる。また、横刃部2の弯曲形状は、他の実施形態において、一つの弯曲半径と直線が組み合わされた形状とすることもできる。
【0029】
(下縁周面21)
さらに、横刃部2はその下縁Lに、横刃部2の下縁全長に沿う下縁周面21を有することが好ましい。この下縁周面21によって、断面視にて尖鋭とならず、三方辺が形成される。これにより、刃先の母材厚さ(横刃部2の下縁厚さt)を確保することができ、靭性の優れたものとなり、使用による欠損を防ぐことができる。
【0030】
(幅方向断面視形状)
横刃部2は、
図2(a)に示すように、幅方向断面視にて、上縁Uから下縁Lに向かう厚さが、途中に形成された窪み部3によって徐々に薄くなり、その後、窪み部3の中央最大窪み深部3Mを経て窪み部3の下傾斜面31によって徐々に厚くなり、そして、刃面5による傾斜にて徐々に薄くなり、下縁厚さtである下縁周面21に至る。
【0031】
また、他の実施形態である
図2(b)では、第一実施形態と同様に、横刃部2は、横刃部2が曲がる方向の外側において、上縁Uから下縁Lに至るまで刃面5を除いて平坦であるが、さらに他の実施形態である
図3(a)及び
図3(b)では、窪み部3に沿って、その底面34に対応する領域において傾斜を介して膨らんでいる膨大部23を具備している。膨大部23により、基端12側において、縦刃部1のしなりを抑制し、硬化層4において下縁Lと上縁Uの間の上下方向に発生するクラックを抑制することができるとともに、耕耘爪の強度を向上させることができ、また、側方先端22側において、耐摩耗性を維持した状態で耕耘爪の強度を向上させることができる。
【0032】
(窪み部3)
窪み部3は、縦刃部1及び横刃部2の一の面に、横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部まで連続して、所定の窪み幅3Wで窪ませるように形成されている。また、窪み部3の延伸方向の先端が横刃部2の側方先端22まで至り、窪み部3の延伸方向の基端が、弯曲開始部6を超えて縦刃部1の中間近傍にまで至る。第一実施形態において、窪み幅3Wは、縦刃部1及び横刃部2の延伸方向に亘って一定であるが、他の実施形態において、弯曲開始部6を境に縦刃部1側では横刃部2側より窪み幅3Wが狭くなるように又は広くなるように形成することもできる。
【0033】
ここで窪み部3の上下端のうち窪み下端3Lは、第一実施形態において、下縁Lから所定の高さを開けて設けられるが、他の実施形態において、下縁Lに接して設けられていてもよい。
【0034】
窪み部3及び後述の硬化層4は、内弯曲面、外弯曲面のうち少なくとも一方に形成することができるところ、第一実施形態では内弯曲面に形成している。これにより硬化層4の定着性や強度(亀裂発生防止)の面で優れたものとなる。
【0035】
(下傾斜面31、上傾斜面32、底面34)
図2(a)に示すように、窪み部3は具体的には、少なくとも、最大窪み深部3Mとなる底面34から下方および上方にそれぞれ、下傾斜面31、上傾斜面32を有して構成される。下傾斜面31は、幅方向断面視にて、最大窪み深部3Mとなる底面34から下方へ向って浅くなるように、所定の傾斜角度をもって傾斜した面である。上傾斜面32は、幅方向断面視にて、最大窪み深部3Mである底面34から上方へ向って浅くなるように、所定の傾斜角度をもって傾斜した面である。なお、横刃部2の正面側の表面から底面34までの深さが一定であるので、底面34のいずれの箇所においても最大窪み深部3Mとなっている。
【0036】
下傾斜面31、上傾斜面32は、
図2(a)に示すように、上下端たる幅方向断面視での窪み部3の上下縁が、徐々に浅くなるものであること(すなわち、最大窪み深部3Mである底面34からのそれぞれの傾斜角度、すなわち、底面34と上傾斜面32とのなす傾斜角度θ及び底面34と下傾斜面31とのなす傾斜角度φが90°よりも小さいこと)が好ましい。このような窪み部3全体を硬化層4が覆うことで、硬化層4の横刃部2への定着が良好なものとなる。また、下傾斜面31及び上傾斜面32のそれぞれの傾斜角度θ・φを小さくすることによって、摩耗進行による強度変化ないし耐摩耗性への影響を抑えることができる。本実施形態において、下傾斜面31、上傾斜面32は
図2(a)に示すように直線状であるが、他の実施形態において、曲線状又は直線及び曲線の組み合わせ形状であってもよい。
【0037】
また、第一実施形態において、
図2(a)に示すように、下傾斜面31が底面34とのなす傾斜角度が90°より小さい角度φにて形成され窪み下端3Lを介して耕耘爪の下縁Lに向かって平坦な面と連続しているが、
図21に示すように、第一実施形態の変形形態2において、下傾斜面31が底面34とのなす傾斜角度φよりもさらに小さい角度で傾斜しており、下傾斜面31が下縁Lまで到達している。このとき、窪み部3が形成されている縦刃部1および横刃部2にわたって、下傾斜面31が下縁Lまで到達するように形成されており、窪み部3の窪み幅3Wが下縁Lまでの幅となる。窪み部3の下傾斜面31をこのように形成することにより、
図2(a)の第一実施形態よりも下縁L側の硬化層4を厚くすることができるため、使用開始時からより摩耗性に優れた耕耘爪とすることができる。
【0038】
(浅窪み部33)
そして、窪み部3は、その基端の弯曲開始部6を超えて、縦刃部1の領域の一部にて、縦刃部1の基端12方向へ向かって徐々に浅くなる浅窪み部33を具備する。浅窪み部33は、底面34の一部である。第一実施形態の浅窪み部33の基端側は、縦刃部1の一の面と面一となり同化している。
【0039】
図1に示す第一実施形態の浅窪み部33は略等幅であり、正面視にて、弯曲開始部6を縦刃部1側に超えてから所定の微小傾斜角度で傾斜する方形の傾斜面を有する。これにより、弯曲開始部6を縦刃部1側に超えた領域でも横刃部2と同様に摩耗することから、耕耘爪が、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状を維持して摩耗し、折れにくく耐久性に優れるようになる。
【0040】
(厚さの比)
耕耘爪の下縁L付近ないし窪み部3中央付近のいずれの幅方向位置においても、硬化層4の厚さは、常に横刃部2よりも薄いか或いは同程度の厚さである。具体的には、耕耘爪の下縁L付近および窪み部3中央付近の各幅方向位置において、硬化層4の横刃部2に対する厚さの比は、硬化層4:横刃部2=1:1~3であることが好ましい。これにより、硬化層4の所定の厚さ(さらにいえば、横刃部2に対する所定の厚さの割合、換言すれば総厚に占める厚さの割合)を常に確保することが出来るため、摩耗の進行程度に拘らず均一な耐摩耗性を得ることが出来る。
【0041】
(硬化層4)
硬化層4は、合金を硬化させて層化した、横刃部2よりも硬度に優れた層である。窪み部3が形成された、横刃部2の延伸方向に沿って横刃部2の側方先端22側から弯曲開始部6を超えて縦刃部1の領域の一部の途中まで連続して覆うように設けられている。第一実施形態では、硬化層4は、窪み部3から縦刃部1及び横刃部2の下縁Lまでを覆う。すなわち、硬化層下縁は少なくとも下縁Lと共通する。硬化層4がこのように形成されていることにより、弯曲開始部6を縦刃部1側に超えた領域でも横刃部2と同様に摩耗することから、耕耘爪が、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状を維持して摩耗し、折れにくく耐久性に優れるようになる。
【0042】
硬化層上縁4Uは、正面視にて直線、円弧或いはそれらの複合形状に形成され、この形状は、縦刃部1側の下縁Lから横刃部2の側方先端22への延伸方向に対して上方である上縁U側へ傾斜する(
図1では向って左上がりの傾斜)。すなわち、硬化層4の幅は、横刃部2の側方先端22付近で窪み部3の幅全部を覆い、縦刃部1の基端12側に向って短手方向における幅が小さくなる。これにより、回転爪軸と刃縁までの距離、及び土壌に打ち込まれる横刃部2及び縦刃部1の領域の一部の途中まで範囲にて、同様に摩耗することから、耕耘爪が、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状を維持して摩耗し、折れにくく耐久性に優れるようになる。
【0043】
第一実施形態では、硬化層4は横刃部2及び縦刃部1の領域の一部の途中までを覆い、窪み部3の浅窪み部33の上隅部33Uが露出するものとしているが、他の実施形態において、さらに耐性強度を持たせる為に全て覆うものとしても良い。
【0044】
硬化層4が層設された弯曲開始部6から縦刃部1までの一の縁である下縁Lにおける亘り長さDは、10~100mmであることが好ましく、30~90mmであることがより好ましい。横刃部2の曲率半径rは、30~200mmであることが好ましく、35~160mmであることがより好ましい。さらに、曲率半径rと亘り長さDは、相対的に一方が大きいときには他方が小さく、又は、一方が小さいときには他方が大きい関係となることが好ましい。曲率半径rと亘り長さDが上記範囲などであると、横刃部2及び縦刃部1が土壌に打ち込まれ、その土壌に打ち込まれる横刃部2及び縦刃部1の領域の一部の途中までの範囲にて、同様に摩耗することから、耕耘爪が、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状を維持して摩耗し、折れにくく耐久性に優れるようになる。具体的には、第一実施形態において、曲率半径rが128mmであり、亘り長さDが64.6mmである。
【0045】
任意の延伸位置における硬化層4の厚さ(幅方向断面にて確認しうる硬化層4の厚さ)は、窪み部3中央付近から下縁L付近にかけて徐々に或いは急激に、厚いものから薄いものとなる。さらにいえば、窪み部3中央付近における硬化層4の厚さは、窪み部3 の下傾斜面31付近における硬化層4の厚さよりも厚く、かつ、下縁L付近における硬化層4の厚さよりも、厚いことが好ましい。
【0046】
硬化層4を構成する硬質合金は、縦刃部1や横刃部2よりも高硬度の金属粉末を、種々の方法で加熱して溶着させて層設される。硬化層4を層設した後に、硬化層4を内弯曲面として弯曲加工を施すことで、良好な定着性と高密度の硬化層4を得ることが出来る。また、溶着以外の方法として、硬化層4を、溶接、溶射、プラズマ、レーザークラッディングなどの方法により層設してもよい。
【0047】
第一実施形態において、硬化層4の表面、すなわち、硬化層4における縦刃部1及び横刃部2とは反対側である表面は、
図2(a)に示すように、横刃部2の一の面と略平行に形成されている。また、他の実施形態である
図3(a)では、第一実施形態と同様に、硬化層4の表面は、横刃部2の一の面と略平行に形成されているが、さらに他の実施形態である
図2(b)及び
図3(b)では、窪み部3の中央最大窪み深部3Mに対応する領域に沿って弯曲して窪んでいる凹部41を具備している。凹部41により、耕耘された土との接触抵抗を軽減することにより、トラクタのエンジンへの負荷を低減することができる。
【0048】
また、第一実施形態において、硬化層4が横刃部2の側方先端22から弯曲開始部6を超えて縦刃部1の領域の一部の途中まで連続して覆うように設けられているが、
図6に示すように、第一実施形態の変形形態1において、横刃部2の側方先端22において、硬化層4は、窪み部3での弯曲開始部6などにおける厚みより非常に薄く設けられている薄厚部4αを有する。このとき、硬化層4は、側方先端22側の薄厚部4αの端部から連続的に又は不連続的に厚みを増して弯曲開始部6を超えて縦刃部1の領域の一部の途中まで連続して覆うように設けられるように形成される。このように側方先端22にて薄厚部4αを有して硬化層4を形成することにより、耕耘爪を農作業機に取り付けて使用すると摩耗により、横刃部2の側方先端22における硬化層4の厚みが薄い薄厚部4αも摩耗されるため、この硬化層4の薄い薄厚部4αが摩耗により消失すると、耕耘爪を取り換える時期の目安となるインジケーターとして機能する。
【0049】
そして、第一実施形態において、1種類の合金からなる硬化層4が、縦刃部1の一部および横刃部2の内弯曲面にわたって設けれた窪み部3とその窪み部3の上縁U側および下縁L側を覆うように設けられているが、
図22に示すように、第一実施形態の変形形態3において、硬化層4が、窪み部3に埋設される第一硬化層4aと、その第一硬化層4aの表面とその窪み部3の上縁U側および下縁L側を覆うように設けられ第一硬化層4aと硬度の異なる第二硬化層4bの異なる2種類の合金が積層されることにより形成されている。なお、第一硬化層4aおよび第二硬化層4bが横刃部2よりも硬度が高いことはもちろんである。硬化層4を第一硬化層4aおよび第二硬化層4bが積層されていることにより、硬化層4としての強度を保ちつつ、耐摩耗性を向上することができる。具体的には、例えば、硬化層4aの硬度が硬化層4bの硬度よりも高いことが好ましく、このとき、窪み部3に硬度の高い硬化層4aが形成されていることになり、一般的に耐摩耗性を向上させるために硬度が高い合金を使用すると脆くなる傾向があるところ、第二硬化層4bにより耕耘時における石などの衝撃により割れたり欠けたりすることを抑制して強度を保持するとともに、第二硬化層4bに覆われた第一硬化層4aにより摩耗しにくくなることから耕耘爪全体としての耐摩耗性を向上することができる。
【0050】
さらに、第一実施形態において、硬化層4が縦刃部1の一部および横刃部2の内弯曲面に設けられているが、
図23に示すように、第一実施形態の変形形態4において、硬化層4が第一硬化層4aおよび第二硬化層4bの二つ存在する。具体的には、第一硬化層4aが第一実施形態と同様に縦刃部1の一部および横刃部2の内弯曲面にわたって設けれた窪み部3とその窪み部3の上縁U側および下縁L側を覆うように設けられており、第二硬化層4bが第一実施形態と異なり縦刃部1の一部および横刃部2の外弯曲面にわたって外弯曲面の下縁L側および外弯曲面側に設けられた刃面5に形成されている。なお、第一硬化層4aおよび第二硬化層4bが横刃部2よりも硬度が高いことはもちろんである。また、第一硬化層4aおよび第二硬化層4bは同じ硬質合金としてもよいし、硬度が相違する異なる硬質合金としてもよい。耕耘爪が圃場や作業の条件と耕耘爪の形状の組み合わせにより内弯曲面から摩耗が進行する場合や外弯曲面から摩耗が進行する場合があるところ、硬化層4として縦刃部1の一部および横刃部2の内弯曲面に第一硬化層4aを設け、縦刃部1の一部および横刃部2の外弯曲面に第二硬化層4bを設けることにより、様々なケースにおいて耐摩耗性を発揮することができる。
【0051】
また、第一実施形態において、硬化層4が縦刃部1の一部および横刃部2の内弯曲面に設けられているが、
図24に示すように、第一実施形態の変形形態5において、硬化層4が第一硬化層4aおよび第二硬化層4bの二つ存在する。具体的には、第一硬化層4aが第一実施形態と同様に縦刃部1の一部および横刃部2の内弯曲面にわたって設けれた窪み部3とその窪み部3の上縁U側および下縁L側を覆うように設けられており、第二硬化層4bが第一実施形態と異なり縦刃部1の一部および横刃部2の外弯曲面にわたって外弯曲面側に設けられた刃面5に形成されている。なお、第一硬化層4aおよび第二硬化層4bが横刃部2よりも硬度が高いことはもちろんである。また、第一硬化層4aおよび第二硬化層4bは同じ硬質合金としてもよいし、硬度が相違する異なる硬質合金としてもよい。耕耘爪が圃場や作業の条件と耕耘爪の形状の組み合わせにより内弯曲面から摩耗が進行する場合や外弯曲面から摩耗が進行する場合があるところ、硬化層4として縦刃部1の一部および横刃部2の内弯曲面に第一硬化層4aを設け、縦刃部1の一部および横刃部2の外弯曲面に第二硬化層4bを設けることにより、様々なケースにおいて耐摩耗性を発揮することができる。なお、上述した第一実施形態の変形形態4に比べて、摩耗の初期段階から耐摩耗性を発揮しながらも、外弯曲面側に設けられた刃面5にしか第二硬化層4bが設けられていないためにコストダウンを図ることができる。
【0052】
(刃面5)
刃面5は、縦刃部1及び横刃部2の下縁Lに沿って、下縁Lを薄くするように設けられる傾斜面である。少なくとも縦刃部1の領域の一部及び横刃部2の全体で略一定幅のまま形成される。内弯曲面、外弯曲面、或いはこれら両面のいずれに形成するものでも良いが、窪み部3及び硬化層4の形成面と反対面の片面に形成することが望ましい。第一実施形態では、窪み部3及び硬化層4 の形成面と反対面である外弯曲面に形成している。また強度、加工性のために、幅方向断面視にて直線を形成してなることが望ましい。
【0053】
(摩耗の進行について)
耕耘爪は、耕耘作業に伴って土壌との接触を繰り返すことによって摩耗するが、この摩耗は縦刃部1及び、横刃部2全体が均一に摩耗するのではなく、縦刃部1と横刃部2の弯曲部が偏摩耗し、この側方弯曲部から摩耗が進展する。具体的には、
図5に示すように、特許文献1に開示された耕耘爪についての使用前後の状態を示す。
図5(a)においては、使用前の状態であるので、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状である。しかし、
図5(b)は、使用後の状態であり、横刃部と縦刃部に亘る刃縁が歪な曲線形状であるため、摩耗の程度が急激に変わる点において使用時に応力集中が生じて耕耘爪が折損に至る場合があるなど当初想定の寿命よりも短く耐久性に劣るものであった。
【0054】
これに対して本実施形態は、縦刃部1及び横刃部2の一の面に、横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部まで連続して形成された窪み部3と、窪み部3から縦刃部1及び横刃部2の短手方向における一の縁である下縁Lまでを覆うようにして横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部の途中まで連続して層設された、硬質合金からなる硬化層4を備えている。このような硬化層4を備えることによって、
図4に示すように、
図4(a)の使用前の状態と、農作業機に取り付けて
図5(b)と同様に所定回数土壌に打ち込んだ
図4(b)の使用後の摩耗した状態と対比すると、縦刃部1と横刃部2は下縁Lにおいて、滑らかな曲線形状を維持して摩耗しており、使用時に応力集中が生じずに、折れにくく耐久性に優れている。また、そのように横刃部と縦刃部に亘る刃縁が滑らかな曲線形状になるように摩耗することで、草や藁が絡まりにくくなり、耕耘性能の悪化を抑制するとともに振動も抑制することができる。
【0055】
〔第二実施形態〕
第二実施形態において、おおよそ第一実施形態と同様であるが、縦刃部1の基端12及び横刃部2の側方先端22の形状において相違する。すなわち、
図7に示すように、基端12が、上方を向いており、回転軸爪の固定突部へ嵌入し、固定手段11である一つの取付け孔をボルト固定するものである。そして、側方先端22において、本実施形態では、上縁U側において略直角の突起を有しているが、他の実施形態では、鋭角に尖った突起でもよいし、先端が弯曲した突起でもよい。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同様に、窪み部3は、横刃部2の延伸方向に沿って弯曲開始部6を超えて縦刃部1の領域の一部まで連続して形成されており、そして、硬化層4は、硬質合金からなり、窪み部3から縦刃部1及び横刃部2の短手方向における一の縁である下縁Lまでを覆うようにして横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部の途中まで連続して層設されている。また、第二実施形態の浅窪み部33はその大部分が硬化層4に覆われることなく露出してなる。
【0056】
〔第三実施形態〕
第三実施形態において、おおよそ第一実施形態と同様であるが、窪み部3が略平行に複数本形成されている構成において相違する。すなわち、
図9及び
図10に示すように、窪み部3は、2本の略平行な第一窪み部3Aと第二窪み部3Bからなり、第一窪み部3A及び第二窪み部3Bが、縦刃部1及び横刃部2の一の面に、横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部まで連続して、所定の窪み幅3Wで窪ませるように形成されている。これにより、横刃部2及び縦刃部1の材質よりも硬くて脆い硬化層4の厚みに変化をより持たせ、さらに硬化層4が横刃部2及び縦刃部1に接触する面積を増やすことで、硬化層4が横刃部2及び縦刃部1から剥がれにくくなる。このため、耕耘時に、耕耘爪が石などと衝突したときに硬化層4が欠けにくく、また仮に欠けたとしても大きな欠片ではなく小さな欠片となって欠けるので耕耘爪の寿命を延ばすことができ、耕耘爪の下縁Lがギザギザの形状となることを抑制することができる。なお、本実施形態において、窪み部3は、2本の窪みから形成されているが、他の実施形態において、3本、4本などの複数本の窪みから形成されていてもよく、また、複数本の窪みがそれぞれの幅や深さは同じであっても異なっていてもよく、さらに、並列する複数本の窪みの間にできる山の高さは、横刃部2の正面側の表面から底面34までの深さと同じであっても異なっていてもよい。
【0057】
〔第四実施形態〕
第四実施形態において、おおよそ第一実施形態と同様であるが、横刃部2の先端側において窪み部3における横刃部2の厚みt1が、硬化層4の厚みt2以下である構成において相違する。すなわち、
図11及び
図12に示すように、耕耘爪の先端側において、窪み部3、より具体的には最大窪み深部3Mにおける横刃部2の厚みt1が、硬化層4の厚みt2と同じかそれ以下である。さらには、耕耘爪の窪み部3において、最大窪み深部3Mにおける横刃部2の厚みt1と硬化層4の厚みt2の比は、横刃部2の厚みt1:硬化層4の厚みt2:=1:1~2であることが好ましい。耕耘時における回転爪軸の回転やトラクタの速度などの条件により、耕耘爪の先端側のみが早く摩耗することがあり、回転爪軸に取り付けられた向かい合う耕耘爪と耕耘爪との間に隙間が生じて耕耘できない土壌が生じることで耕耘性能が下がることがあるところ、窪み部3における横刃部2の厚みt1が、硬化層4の厚みt2以下とすることにより、特に耕耘爪の先端側において摩耗のバランスをとり耐摩耗性が向上することで耕耘性能の低下を抑制することができる。
【0058】
〔第五実施形態〕
第五実施形態において、おおよそ第一実施形態と同様であるが、横刃部2において、先端側における土壌と当接する面と底面34である最大窪み深部3Mの間の厚みtAが、弯曲開始部6における土壌と当接する面と最大窪み深部3Mの間の厚みtBより小さく、先端側における横刃部2の厚みTAが、弯曲開始部6における横刃部2の厚みTBより小さく、先端側における横刃部2の厚みTAに対する先端側における土壌と当接する面と最大窪み深部3Mの間の厚みtAの比と、弯曲開始部6における横刃部2の厚みTBに対する弯曲開始部6における土壌と当接する面と最大窪み深部3Mの間の厚みtBの比が略同じである構成において相違する。すなわち、
図13及び
図14に示すように、まず、横刃部2において、先端側における土壌と当接する面である正面と最大窪み深部3Mの間の厚みtAが、弯曲開始部6における土壌と当接する面である正面と最大窪み深部3Mの間の厚みtBより小さい。そして、先端側における横刃部2の厚みTAが、弯曲開始部6における横刃部2の厚みTBより小さい。さらに、先端側における横刃部2の厚みTAに対する先端側における土壌と当接する面である正面と最大窪み深部3Mの間の厚みtAの比と、弯曲開始部6における横刃部2の厚みTBに対する弯曲開始部6における土壌と当接する面である正面と最大窪み深部3Mの間の厚みtBの比が略同じである。なお、前記比は同じであることが好ましいが、一方を1としたときに他方が0.9~1.1の範囲内であればよい。本実施形態における特徴は、換言すると、横刃部2において、窪み部3が、弯曲開始部6から先端側に向かって、横刃部2との厚みの比率をほぼ保ちながら徐々に浅くなっている。これにより、弯曲開始部6近傍における耐摩耗性を向上させ、
図5(b)に示すような使用後における横刃部と縦刃部に亘る刃縁が歪な曲線形状となることを抑制することでき、使用時に応力集中が生じずに、折れにくく耐久性を向上することができる。
【0059】
〔第六実施形態〕
第六実施形態において、おおよそ第一実施形態と同様であるが、窪み部3が多段に形成されている構成において相違する。すなわち、
図15及び
図16に示すように、窪み部3において、上縁U側にて、一の上傾斜面32を経て一段窪んで一の底面34に至り、さらに他の上傾斜面32´を経てさらに一段窪んで最大窪み深部3Mである他の底面34´に至ることで2段階窪んで形成されている。これにより、横刃部2及び縦刃部1の材質よりも硬くて脆い硬化層4の厚みに変化をより持たせ、さらに硬化層4が横刃部2及び縦刃部1に接触する面積を増やすことで、硬化層4が横刃部2及び縦刃部1から剥がれにくくなる。また、窪み部3を上縁U側において2段に形成することにより、横刃部2および縦刃部1の背面側にそれらを構成する母材(本実施例においては、バネ性の高い材質であるSUP6)を厚く残すことができ、結果として耕耘爪の強度向上に繋がり折損を防止することができる。なお、本実施形態において、窪み部3は、上縁U側においてのみ2段に形成されているが、他の実施形態において、下縁L側においても2段に形成することができ、さらには、上縁U側または下縁L側の少なくとも一方において3段、4段などの複数段形成されていてもよい。
【0060】
〔第七実施形態〕
第七実施形態において、おおよそ第一実施形態と同様であるが、窪み部3が、その底面34において下縁L側へ向って深くなる又は浅くなるように傾斜している構成において相違する。すなわち、
図17及び
図18(a)に示すように、窪み部3は、第一実施形態と同様に、底面34から下方および上方にそれぞれ、下傾斜面31、上傾斜面32を有して構成されているが、底面34が、幅方向断面視にて、下縁L側へ向って深くなるように所定の角度で傾斜して、最大窪み深部3Mに到達している。そして、最大窪み深部3Mから下縁Lへ向って浅くなるように下傾斜面31が位置している。また、さらに他の実施形態として、
図18(b)に示すように、窪み部3は、第一実施形態と同様に、底面34から下方および上方にそれぞれ、下傾斜面31、上傾斜面32を有して構成されているが、幅方向断面視にて、上傾斜面32が傾斜して最大窪み深部3Mに到達し、最大窪み深部3Mから底面34が、下縁L側へ向って浅くなるように所定の角度で傾斜して、さらに下縁Lへ向って浅くなるように下傾斜面31が位置している。耕耘時における回転爪軸の回転やトラクタの速度などの条件により、耕耘爪の幅が狭くなるとともに、横刃部2の厚みが薄くなるよう摩耗が進行することがあり、そのとき、下縁L側にて横刃部2が摩耗により消失し硬化層4が部分的に露出して、土壌に含まれる石などと衝突することによりその露出した硬化層4が欠けやすくなるところ、窪み部3の底面34において下縁L側へ向って深くなるように傾斜していることで硬化層4の厚みが増え、又は窪み部3の底面34において下縁L側へ向って浅くなるように傾斜していることで横刃部2の厚みが増えて横刃部2と硬化層4の厚みのバランスが取れることから、硬化層4が欠けることによる早期摩耗や異型摩耗を防止することができる。
【0061】
〔第八実施形態〕
第八実施形態において、おおよそ第一実施形態と同様であるが、横刃部2の外形形状が第一実施形態と相違する構成において相違する。すなわち、
図19及び
図20に示すように、横刃部2の側方先端22において直線状となっており、さらに、弯曲開始部6を境として縦刃部1と連なり、正面視にて主として横方向へ曲がりながら延伸しているところ、上縁U側に向かって曲がる度合いが第一実施形態よりも小さい。また、本実施形態において、横刃部2の側方先端22の形状は直線であるが、他の実施形態において、鋭角又は鈍角に尖った突起状や弯曲状の形状としてもよい。本実施形態においても、第一実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0062】
〔第九実施形態〕
第九実施形態において、縦刃部1および横刃部2の基本的な構成において第一実施形態と同様であるが、窪み部3および硬化層4において相違する。すなわち、
図25に示すように、まず、窪み部3は、縦刃部1及び横刃部2の外弯曲面に、横刃部2の延伸方向に沿って縦刃部1の領域の一部まで連続して、所定の窪み幅3Wで窪ませるように形成されている。そして、硬化層4が第一硬化層4aおよび第二硬化層4bの二つ存在する。具体的には、第一硬化層4aが縦刃部1の一部および横刃部2の外弯曲面にわたって設けれた窪み部3を埋設するように縦刃部1の一部および横刃部2の外弯曲面とおおよそ面一に設けられており、第二硬化層4bが縦刃部1の一部および横刃部2の内弯曲面に上縁U側から下縁Lまで設けられている。なお、第一硬化層4aおよび第二硬化層4bが横刃部2よりも硬度が高いことはもちろんである。また、第一硬化層4aおよび第二硬化層4bは同じ硬質合金としてもよいし、硬度が相違する異なる硬質合金としてもよい。耕耘爪が圃場や作業の条件と耕耘爪の形状の組み合わせにより内弯曲面から摩耗が進行する場合や外弯曲面から摩耗が進行する場合があるところ、硬化層4として縦刃部1の一部および横刃部2の外弯曲面に第一硬化層4aを設け、縦刃部1の一部および横刃部2の内弯曲面に第二硬化層4bを設けることにより、様々なケースにおいて耐摩耗性を発揮することができる。なお、上述した第一実施形態の変形形態4に比べて、第一硬化層4aが縦刃部1の一部および横刃部2の外弯曲面より膨出しないために耕耘爪の厚みを薄くできるため、耕耘時の抵抗は第一実施形態と同様でありながらも耐摩耗性を発揮することができる。