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特開2024-73880樹脂発泡体の製造方法、樹脂発泡体、及び、樹脂発泡体を備えるシューズ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073880
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】樹脂発泡体の製造方法、樹脂発泡体、及び、樹脂発泡体を備えるシューズ
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/00 20060101AFI20240523BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20240523BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20240523BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20240523BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240523BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240523BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20240523BHJP
   B29C 64/35 20170101ALI20240523BHJP
   B29C 64/379 20170101ALI20240523BHJP
   A43B 13/04 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B29C44/00 Z
B29C44/36
B29C44/12
B29C64/124
B33Y80/00
B33Y10/00
B33Y40/20
B29C64/35
B29C64/379
A43B13/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184844
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】若杉 晋作
【テーマコード(参考)】
4F050
4F213
4F214
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA02
4F050BA43
4F050HA74
4F050JA01
4F213AA44
4F213AH67
4F213WA25
4F213WA54
4F213WA67
4F213WA83
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL55
4F213WW06
4F213WW38
4F214AA44
4F214AB02
4F214AD05
4F214AD18
4F214UA37
4F214UB01
4F214UB11
4F214UD18
4F214UF01
(57)【要約】
【課題】 設計に沿った内部空隙が形成された樹脂発泡体を得ることができる樹脂発泡体の製造方法などを提供することを課題としている。
【解決手段】 内部に空隙が形成された樹脂発泡体の製造方法であって、
硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を調製する工程と、
前記組成物を硬化させることによって、外部空間と連通する空隙が内部に形成された樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体に対して流体を吹き付ける工程と、
前記流体を吹き付けた前記樹脂構造体を発泡させて前記樹脂発泡体を作製する工程と、を備える、樹脂発泡体の製造方法などを提供する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空隙が形成された樹脂発泡体の製造方法であって、
硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を調製する工程と、
前記組成物を硬化させることによって、外部空間と連通する空隙が内部に形成された樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体に対して流体を吹き付ける工程と、
前記流体を吹き付けた前記樹脂構造体を発泡させて前記樹脂発泡体を作製する工程と、を備える、樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記硬化性材料が、液状の光硬化性材料であり、
前記樹脂構造体を形成する工程では、前記組成物に対して活性エネルギー線を照射することによって前記組成物を硬化させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記流体を吹き付ける工程の後であって、前記樹脂発泡体を作製する工程の前に、前記樹脂構造体の硬化をさらに進める工程を備える、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記発泡剤が熱膨脹型発泡剤である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂発泡体の中心を挟んで両側に配置された一方側及び他方側の外表面部分において、
前記一方側の外表面部分における前記空隙の少なくとも一部は、前記他方側の外表面部分における前記空隙と連通している、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂発泡体内の前記空隙のすべてが外部空間と連通している、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂発泡体は、少なくとも一方向に沿って連続して配列された複数の構成単位を含み、
前記構成単位のそれぞれは、複数の棒状部材もしくは板状部材が組み合わされた構造、又は、連続した曲面構造からなる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記樹脂発泡体を作製する工程の後に、
前記樹脂発泡体へ流体を噴射する工程をさらに備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂構造体に対して前記流体を吹き付ける工程では、前記流体が気体であり、
前記樹脂発泡体へ前記流体を噴射する工程では、前記流体が気体であり、
前記樹脂構造体に対して前記流体を吹き付ける工程における前記気体の風圧が、前記樹脂発泡体へ前記流体を噴射する工程における前記気体の風圧よりも高い、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂構造体を形成する工程と、前記流体を吹き付ける工程との間に、
溶媒に浸漬された状態の前記樹脂構造体に対して超音波処理を施す工程をさらに備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
内部に空隙が形成された樹脂発泡体であって、
硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を調製する工程と、
前記組成物を硬化させることによって、外部空間と連通する空隙が内部に形成された樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体に対して流体を吹き付ける工程と、
前記流体を吹き付けた前記樹脂構造体を発泡させて前記樹脂発泡体を作製する工程と、を備える、樹脂発泡体の製造方法によって製造された、樹脂発泡体。
【請求項12】
内部に空隙が形成された樹脂発泡体であって、
前記樹脂発泡体の切断面であって、互いに直交する3方向のうち少なくともいずれかの方向に対して垂直な切断面では、樹脂部分と気泡部分とを含む帯状領域と、樹脂部分のみを含む複数の線状領域とが、交互に積層している、樹脂発泡体。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の樹脂発泡体を備える、シューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シューズの底部などに配置されて使用される樹脂発泡体、及び、該樹脂発泡体の製造方法に関する。また、本発明は、上記の樹脂発泡体を備えるシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な樹脂発泡体が知られている。例えば、硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を硬化させて樹脂構造体を形成した後、斯かる樹脂構造体を発泡させることによって得られる樹脂発泡体が知られている。
【0003】
この種の樹脂発泡体としては、具体的には、光重合性化合物と、光重合開始剤と、熱膨張性マイクロカプセルとを含有する光学的立体造形用樹脂組成物から製造された樹脂発泡体が知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載された樹脂発泡体は、上記の光学的立体造形用樹脂組成物に対して紫外線レーザー光などの活性エネルギー線を照射して立体造形物を形成し、さらに立体形成物を発泡させることによって得られる。
特許文献1に記載の樹脂発泡体は、発泡後に容易に崩壊できるため、例えば中子などの用途で使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6033850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、樹脂発泡体としては、発泡後においても所望の形状を保つ樹脂発泡体が要望されている。このような樹脂発泡体として、例えば、内部に空隙を形成した樹脂構造体を発泡させて得られる樹脂発泡体であって、発泡後においても所望の内部空隙が形成されている樹脂発泡体が要望されている。また、このような樹脂発泡体を製造できる製造方法が要望されている。
【0006】
しかしながら、内部に空隙を形成した樹脂構造体を単に発泡させると、発泡剤などの影響によって、発泡後の樹脂発泡体の内部空隙が意図した通りに形成されず、樹脂発泡体が所望の内部空隙を有しない結果となり得る。換言すると、設計に沿った空隙を樹脂発泡体の内部に形成できないという問題を有する。
【0007】
そこで、設計に沿った内部空隙が形成された樹脂発泡体を得ることができる樹脂発泡体の製造方法が要望されている。また、斯かる製造方法で製造された樹脂発泡体が要望されている。
【0008】
上記の問題点、要望点等に鑑み、本発明は、設計に沿った内部空隙が形成された樹脂発泡体を得ることができる樹脂発泡体の製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、設計に沿った内部空隙が形成された樹脂発泡体を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記の樹脂発泡体を備えるシューズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明に係る樹脂発泡体の製造方法は、
内部に空隙が形成された樹脂発泡体の製造方法であって、
硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を調製する工程と、
前記組成物を硬化させることによって、外部空間と連通する空隙が内部に形成された樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体に対して流体を吹き付ける工程と、
前記流体を吹き付けた前記樹脂構造体を発泡させて前記樹脂発泡体を作製する工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る樹脂発泡体は、内部に空隙が形成された樹脂発泡体であって、
硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を調製する工程と、
前記組成物を硬化させることによって、外部空間と連通する空隙が内部に形成された樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体に対して流体を吹き付ける工程と、
前記流体を吹き付けた前記樹脂構造体を発泡させて前記樹脂発泡体を作製する工程と、を備える、樹脂発泡体の製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る樹脂発泡体は、内部に空隙が形成された樹脂発泡体であって、
前記樹脂発泡体の切断面であって、互いに直交する3方向のうち少なくともいずれかの方向に対して垂直な切断面では、樹脂部分と気泡部分とを含む帯状領域と、樹脂部分のみを含む複数の線状領域とが、交互に積層していることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るシューズは、上記の樹脂発泡体を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る樹脂発泡体の製造方法によって、設計に沿った内部空隙が形成された樹脂発泡体を製造できる。本発明に係る樹脂発泡体は、設計に沿った内部空隙が形成されている。本発明に係るシューズは、設計に沿った内部空隙が形成された樹脂発泡体を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本実施形態に係る樹脂発泡体の製造方法を表すフローチャート図である。
図2図2は、本実施形態に係る樹脂発泡体又は樹脂構造体における構成単位の様々な例を模式的に示す模式図である。
図3図3は、本実施形態に係る樹脂発泡体又は樹脂構造体の一例を模式的に示す模式図である。
図4図4は、本実施形態に係る樹脂発泡体又は樹脂構造体の他の例を模式的に示す模式図である。
図5図5は、本実施形態に係る樹脂発泡体又は樹脂構造体の別の例を模式的に示す模式図である。
図6図6は、本実施形態に係る樹脂発泡体又は樹脂構造体のさらに別の例を模式的に示す模式図である。
図7図7は、本実施形態に係るシューズの外観を表す模式図である。
図8図8は、本実施形態に係る樹脂発泡体の一例をシューズの靴底に配置したときの断面を表す模式断面図である。
図9図9は、3Dプリンタを用いて製造された樹脂発泡体の造形方向(層状物の積層方向)に沿って切断した内部断面、及び、造形方向(層状物の積層方向)に垂直な面で切断した内部断面をそれぞれマイクロスコープにて観察した画像である。
図10図10は、製造された実施例の樹脂発泡体、及び、比較例の樹脂発泡体の外観をそれぞれ撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態の樹脂発泡体の製造方法について、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
本実施形態の樹脂発泡体の製造方法は、内部に空隙が形成された樹脂発泡体の製造方法であって、例えば図1に示すように、
硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を調製する工程S101(以下、組成物調製工程ともいう)と、
前記組成物を硬化させることによって、外部空間と連通する空隙が内部に形成された樹脂構造体3を形成する工程S102(以下、樹脂構造体形成工程ともいう)と、
前記樹脂構造体3に対して流体を吹き付ける工程S103(以下、吹き付け工程ともいう)と、
前記流体を吹き付けた前記樹脂構造体3を発泡させて前記樹脂発泡体5を作製する工程S104(以下、樹脂発泡体作製工程ともいう)と、を備える。
【0017】
本実施形態の樹脂発泡体の製造方法は、好ましくは、前記樹脂構造体3を形成する工程と、前記流体を吹き付ける工程との間に、溶媒に浸漬された状態の前記樹脂構造体3に対して超音波処理を施す工程S110(以下、超音波処理工程ともいう)をさらに備える。
本実施形態の樹脂発泡体の製造方法は、好ましくは、前記樹脂構造体3に対して流体を吹き付ける工程の後であって、前記樹脂発泡体5を作製する工程の前に、前記樹脂構造体3の硬化をさらに進める工程S120(以下、二次硬化処理工程ともいう)をさらに備える。
本実施形態の樹脂発泡体の製造方法は、好ましくは、前記樹脂発泡体5を作製する工程の後に、前記樹脂発泡体5へ流体を噴射する工程S130(以下、噴射工程ともいう)をさらに備える。
【0018】
組成物調製工程では、少なくとも硬化性材料と発泡剤とを混合することにより、組成物を調製する。混合方法としては、一般的な方法が採用される。
なお、上記の組成物は、硬化反応の開始を促す重合開始剤などをさらに含んでもよい。
【0019】
硬化性材料は、重合又は架橋などの化学反応により硬質化する有機物である。硬化性材料は、例えば活性エネルギー線(後に詳述)によって硬化する光硬化性材料であってもよく、加熱処理によって硬化する熱硬化性材料であってもよい。
【0020】
硬化性材料は、常温下(例えば20℃)において液状であることが好ましい。液状の硬化性材料は、例えば、粘性の低い液体であってもよく、又は、粘稠な液体であってもよい。硬化性材料が液状であることにより、硬化性材料と発泡剤とを含む上記の組成物は、常温下において流動性を有することとなる。
【0021】
硬化性材料としては、例えば、反応性を有する化学構造を分子中に有する低分子量有機物が挙げられる。低分子量有機物としては、例えば、モノマー、オリゴマー、プレポリマーなどが挙げられる。反応性を有する化学構造としては、例えば、二重結合もしくは三重結合などの多重結合、又は、アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基などの反応性官能基などが挙げられる。硬化性材料は、これらのうち1種を含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
【0022】
重合性モノマーとしては、例えばビニル重合反応によって高分子化するラジカル重合性モノマーなどが挙げられる。なお、重合性モノマーは、カチオン重合反応、又は、アニオン重合反応によって高分子化するモノマーであってもよい。
【0023】
ラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、又は、(メタ)アクリル酸のエステル化合物((メタ)アクリレート)などが挙げられる。
【0024】
ラジカル重合性モノマーのうち、(メタ)アクリレートとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ウレタン結合又はアロファネート結合を介して、複数の(メタ)アクリレートモノマーが結合した構造を有する。従って、ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ラジカル重合性基を2つ有する2官能モノマー、又は、ラジカル重合性基を3つ有する3官能モノマーなどを含む。
【0025】
発泡剤は、化学発泡剤又は物理発泡剤などを少なくとも含む。
化学発泡剤としては、例えば、アゾジカーボンアミド(ADCA)、N,N’-ジニトロペンタメチレンテトラミン(DPT)、4,4’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)などが挙げられる。
物理発泡剤としては、例えば、比較的沸点の低い炭化水素化合物などが挙げられる。
【0026】
発泡剤は、熱膨張型発泡剤であることが好ましい。熱膨張型発泡剤は、化学発泡剤又は物理発泡剤と、これらを包み込む熱可塑性樹脂カプセルとを含む。熱可塑性樹脂カプセルには、物理発泡剤(炭化水素化合物など)が内包されることが好ましい。
【0027】
上記の熱膨張型発泡剤としては、市販されている製品を採用できる。これら製品としては、例えば、「マツモトマイクロスフェアー」(松本油脂製薬社製)、「EXPANCEL」(日本フィライト社製)、「アドバンセル EMシリーズ」(積水化学工業社製)、「マイクロスフェアー」(クレハ社製)等が挙げられる。
【0028】
重合開始剤としては、光重合開始剤、又は、熱重合開始剤などが挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系重合開始剤、アシルフォスシンオキサイド系重合開始剤、又は、オキシフェニル酢酸エステル系重合開始剤などの光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
また、光重合開始剤としては、例えば、ヨードニウム塩系重合開始剤、又は、スルフォニウム塩系重合開始剤などの光カチオン重合開始剤が挙げられる。
熱重合開始剤としては、例えば、アゾビスブチロニトリルなどのアゾ化合物、又は、過酸化ベンゾイルなどが挙げられる。
【0029】
上述した重合性モノマーを活性エネルギー線の照射(特に、レーザー照射)によって硬化させて、比較的簡便に所望形状の樹脂構造体3を得ることができるという点で、重合開始剤は、光重合開始剤であることが好ましい。
【0030】
上記の組成物は、液状の光硬化性材料を含み常温下において液状の組成物であることが好ましい。
【0031】
上記の組成物は、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内で、上述した成分以外の成分をさらに含んでもよい。上記の組成物は、例えば、パラフィン系若しくはナフテン系のプロセスオイルなどの硬さ調整剤、テルペン樹脂などの粘着性付与剤、老化防止剤、加工助剤、無機充填剤、抗菌剤、香料などを適宜含んでもよい。
【0032】
樹脂構造体形成工程では、好ましくは、上記の組成物に対して活性エネルギー線を照射することによって、上記の組成物を硬化させる。そして、硬化されてなる樹脂構造体3を得る。樹脂構造体3には、外部空間と連通する空隙が内部に形成されている。
【0033】
活性エネルギー線としては、例えば、γ線、X線、紫外線、可視光線、又は赤外線などの電磁波が挙げられる。また、活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、電子線、中性子線、陽子線、又は重粒子線などの粒子線が挙げられる。
【0034】
活性エネルギー線としては、安全性が高いという点で、紫外線、可視光線、又は赤外線が好ましい。また、活性エネルギー線を所望の位置に照射できるという点で、活性エネルギー線のレーザー光を上記の組成物に対して照射することが好ましい。
【0035】
樹脂構造体形成工程において、樹脂構造体3には、外部空間と連通する空隙が内部に形成される。このような空隙が形成された樹脂構造体3を比較的容易に作製できるという点で、いわゆる3Dプリンタを用いて樹脂構造体3を作製することが好ましい。3Dプリンタは、三次元CAD又は三次元CGなどで作成した三次元データで構成された立体モデルに基づいて立体物を造形させる機械である。
特に、紫外線、可視光線、又は赤外線のレーザー照射が可能な3Dプリンタを用いることが好ましい。斯かる3Dプリンタによれば、常温下において液状の上記組成物から、所望の形状の樹脂構造体3を、比較的簡単に且つ安全に作製できる。以下、3Dプリンタを用いて活性エネルギー線の照射によって樹脂構造体3を形成することを“造形”又は“光造形”とも称する。
【0036】
樹脂構造体形成工程においては、樹脂構造体3の内部に、設計に沿った所望の空隙を形成する。樹脂構造体3に形成された所望の空隙は、斯かる樹脂構造体3が発泡されてなる樹脂発泡体5の内部の空隙に反映されることとなる。
【0037】
樹脂構造体形成工程において、好ましくは、樹脂構造体3の中心を挟んで両側に配置された一方側及び他方側の外表面部分に空隙を形成し、一方側の外表面部分における空隙の少なくとも一部が、他方側の外表面部分における空隙と連通するように、樹脂構造体3を作製する。これにより、後の吹き付け工程において、樹脂構造体3の一方側の表面部分に流体を吹き付けたときに、一方側及び他方側の両方の表面部分における内表面を洗浄できる。
【0038】
樹脂構造体3の形状は、特に限定されず、例えば、直方体状、板状、球状、円柱状、角柱状、円錐状、又は、角錐状などであってもよい。
樹脂構造体3の形状は、非対称形状であってもよい。非対称形状の樹脂構造体3であっても、中心を挟んで両側に配置された、一方側及び他方側の外表面部分の空隙は、互いに連通していることが好ましい。なお、非対称形状(例えば表面に凹凸がある形状)の樹脂構造体3では、樹脂構造体3の重心を中心と見なすことができる。
より好ましくは、樹脂構造体形成工程において、樹脂発泡体内の空隙のすべてが外部空間と連通するように、樹脂構造体3を作製する。斯かる樹脂構造体3は、例えば、上述した3Dプリンタを使用して作製できる。
【0039】
樹脂構造体形成工程においては、上述した3Dプリンタを使用することによって、三次元データで構成された所望形状の立体モデルに従った樹脂構造体3を作製できる。
例えば、立体モデルに従って作製される樹脂構造体3は、少なくとも一方向に沿って連続して配列された複数の構成単位Uを含む。構成単位Uのそれぞれは、複数の棒状部材もしくは板状部材が組み合わされた構造、又は、連続した曲面構造を有する。各構成単位Uには、複数の棒状部材もしくは板状部材の間、又は、連続した曲面の内側もしくは外側に空間が存在する。そして、樹脂発泡体5の空隙の少なくとも一部は、配列された複数の構成単位Uの空間が連通して形成されている。
【0040】
各構成単位Uは、例えば図2のU01、U02などに示すように、複数の棒状部材が組み合わされた構造を有しつつ、空間を形成していてもよい。
構成単位Uは、例えば図2のU01に示すように、12本の棒状部材によって直方体の各辺が形成された形状を有してもよい。この種の形状の構成単位Uには、内部空間が形成されている。この種の形状の構成単位Uを三次元的に積み重ねると、複数の構成単位内の空間が互いに連通することとなり、連通した空間によって樹脂構造体3の空隙の少なくとも一部が形成される(図3に示す立体格子構造を参照)。
【0041】
又は、構成単位Uは、例えば図2のU02に示すように、構成単位Uの中心部から6本の棒状部材がそれぞれ6方向に延びた形状を有してもよい。この種の構成単位Uにおいて、互いに隣り合う棒状部材は、直行している。換言すると、中心部から一方向へ向けて延びた棒状部材に隣接する4本の棒状部材は、一方向へ延びた棒状部材と直交しつつ、互いに90度の間隔を空けている。残りの1本の棒状部材は、上記一方向へ延びた棒状部材と反対方向に延びている。この種の構成単位Uにおいて、6本の棒状部材の間には空間が形成されている。この種の形状の構成単位Uを三次元的に積み重ねると、複数の構成単位内の空間が互いに連通することとなり、連通した空間によって樹脂構造体3の空隙の少なくとも一部が形成される(図4を参照)。
【0042】
各構成単位Uは、例えば図2のU03に示すように、複数の板状部材が組み合わされた構造を有しつつ、空間を形成していてもよい。
例えば図2のU03に示す構成単位Uは、6つの板状体によって構成され、六角柱の内側に空間が形成された形状を有する。この種の構成単位Uにおいて、例えば6つの板状体は、正六角柱の内側に空間が形成された構造を形成していてもよい。この種の形状の構成単位Uの複数を組み合わせて、隣り合う構成単位Uの側面を互いに面接触させるように配置することで、いわゆるハニカム構造を形成できる。この場合、六角柱構造の内側の空間によって、樹脂構造体3の空隙の少なくとも一部が形成される(図5を参照)。
なお、この種の形状の構成単位Uを複数組み合わせたハニカム構造体を、六角柱の軸方向に積み重ねる場合、一方のハニカム構造体の六角柱の内側空間と、他方のハニカム構造体の六角柱の内側空間とを連通させるように積み重ねてもよい。これにより、樹脂構造体3の六角柱の軸方向における一方から他方まで、内部空隙が連通することとなる。
【0043】
また、各構成単位Uは、例えば図2のU04に示すように、連続した曲面構造を有しつつ、曲面の内側及び外側に空間を形成していてもよい。具体的には、構成単位Uは、例えば図2のU04に示すように、シュワルツP曲面構造、又は、斯かる構造に類似する構造を有してもよい。この種の形状の構成単位Uは、空間を内包する曲面で形成されている。この種の形状の構成単位Uでは、曲面の内側空間と曲面の外側空間とが連通している。この種の形状の構成単位Uを三次元的に積み重ねると、複数の構成単位Uにおける上記の内部空間が互いに連通することとなり、連通した空間によって樹脂構造体3の空隙の少なくとも一部が形成される(図6を参照)。
【0044】
その他、構成単位Uは、例えば図2のU05乃至U11にそれぞれ示すような構造を有してもよい。なお、U11は、ジャイロイド曲面構造の構成単位である。
また、構成単位Uは、例えば、シュワルツG曲面、又はシュワルツD曲面などの構造を有してもよい。
【0045】
なお、樹脂構造体3において、すべての構成単位の形状が同じであってもよく、一方、異なる形状の構成単位が混在していてもよい。
【0046】
超音波処理工程では、少なくとも、上記のごとく作製した樹脂構造体3の内表面に付着した上記の組成物を超音波処理によって減らす。
具体的には、上記のごとく作製した樹脂構造体3を溶媒に浸漬した状態で、超音波処理を実施する。これにより、発泡剤及び硬化しなかった余分な硬化性材料が溶媒に溶解又は分散される。従って、樹脂構造体3の内表面を洗浄できる。
【0047】
超音波処理では、溶媒として少なくとも有機溶媒を使用する。有機溶媒としては、1価アルコールが好ましい。1価アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。溶媒は、さらに水を含んでもよい。
超音波処理では、例えば、40kHz、100wの超音波を樹脂構造体3及び溶媒に与える。
超音波処理の継続時間は、例えば、30秒間以上5分間以下である。
【0048】
吹き付け工程では、上記のごとく作製した樹脂構造体3に対して、液体又は気体などの流体を吹き付ける。これにより、樹脂構造体3の内表面に付着した上記の組成物をほぼ除くことができる。換言すると、樹脂構造体3の内部に残存した余分な発泡剤及び硬化性材料をほぼ除いて、樹脂構造体3の内表面を洗浄できる。
仮に、樹脂構造体3の内表面付近に比較的多くの発泡剤が残存していると、内表面付近における発泡剤の膨張を硬化性材料が抑制できない。そのため、内部空隙において発泡剤の大きな体積膨脹が生じてしまい、樹脂構造体3が破損する場合がある。
これに対して、本実施形態では、流体の吹き付けによる内表面の洗浄を実施するため、後の樹脂発泡体作製工程において樹脂構造体3を発泡させたときに、樹脂構造体3の破損を防ぐことができる。
【0049】
なお、樹脂構造体3の内部における空隙が、外部空間と連通している場合、樹脂構造体3の一方側から流体を吹き付けることによって、樹脂構造体3の他方側に形成された空隙にも、流体の圧力が届く。そのため、樹脂構造体3の内表面をより十分に洗浄できる。
【0050】
吹き付け工程では、樹脂構造体3の表面に対して流体を吹き付けるときに、空隙がより多く形成されている表面部分に対して、又は、より大きい空隙が形成されている表面部分に対して、流体(例えば空気)を吹き付けることが好ましい。これにより、流体の圧力がより内部に伝わりやすくなり、吹き付けられた表面部分とは反対側の表面部分における内表面の洗浄も効率的に実施できる。
【0051】
吹き付け工程では、流体として気体を採用することが好ましい。換言すると、気体を吹き付けることが好ましい。これにより、吹き付けた流体を取り除く操作が不要となる。
【0052】
気体としては、空気、特に乾燥気体を採用することが好ましい。吹き付ける気体の風圧は、例えば、0.1MPa以上1.0MPa以下である。
【0053】
二次硬化処理工程では、例えば、樹脂構造体3に対して加熱処理を施すことによって、樹脂構造体3の硬化をさらに進める。加熱処理における温度は、例えば60℃以上120℃以下である、加熱時間は、例えば30分間以上2時間以下である。
また、二次硬化処理工程では、例えば、紫外線などの活性エネルギー線の照射処理を樹脂構造体3に対して施すことによって、樹脂構造体3の硬化をさらに進める。
二次硬化処理工程では、加熱処理及び照射処理のうち一方を実施してもよく、両方を実施してもよい。両方を実施する場合、加熱処理及び照射処理の順序は特に限定されない。
【0054】
なお、二次硬化処理工程の前に、上述した超音波処理工程と同様の工程を実施してもよい。
【0055】
樹脂発泡体作製工程では、流体の吹き付けによって内表面が洗浄された樹脂構造体3に対して発泡処理を施して、樹脂発泡体5を作製する。発泡処理によって、樹脂構造体3に含まれていた発泡剤が膨張する。発泡剤の膨張に伴って、樹脂構造体3が樹脂発泡体5になる。
【0056】
発泡処理では、例えば、樹脂構造体3に対して加熱処理を施す。発泡処理における加熱温度は、例えば、150℃以上220℃以下である。発泡処理における加熱時間は、例えば、5分間以上45分間以下である。加熱処理では、オーブン内もしくは加温恒温槽内で加熱する方法、又は、赤外線もしくはμ波などの活性エネルギー線を照射して加熱する方法などを採用できる。
【0057】
噴射工程では、樹脂発泡体5へ流体を噴射することによって、樹脂発泡体5の内表面を洗浄する。これにより、樹脂発泡体5の内表面に付着した汚れなどを除去できる。
特に、発泡剤として上記の熱膨張型発泡剤を採用した場合、発泡処理後においてもカプセルが残存し、樹脂発泡体5の内表面に多量のカプセルが付着し得る。そのため、発泡剤として上記の熱膨張型発泡剤を採用した場合に、噴射工程を実施することは特に好ましい。
【0058】
噴射工程では、流体として気体を採用することが好ましい。換言すると、樹脂発泡体5に対して気体を噴射することが好ましい。噴射する流体として気体を採用することにより、噴射後に樹脂発泡体5に付着した流体を取り除く操作が不要となる。
【0059】
噴射工程における樹脂発泡体5の内表面の洗浄は、上述した吹き付け工程における樹脂構造体3の内表面の洗浄よりも、容易に実施できることから、樹脂構造体3に対して吹き付ける気体の風圧が、樹脂発泡体5へ噴射する気体の風圧よりも高くてもよい。
【0060】
なお、噴射工程の後に、樹脂発泡体5の外表面に付着した微小物を布などで拭き取る操作を実施してもよい。水又は有機溶媒などの液体を布などに含浸させてから、拭き取りを行ってもよい。
【0061】
本実施形態の製造方法において、上述した工程を実施することによって、内部に空隙が形成された樹脂発泡体5を製造できる。しかも、発泡させる前の樹脂構造体3に形成した内部空隙の形状がほぼそのまま反映された樹脂発泡体5を製造できる。よって、設計に沿った内部空隙が形成された樹脂発泡体5を得ることができる。
【0062】
次に、本発明に係る樹脂発泡体の一実施形態について詳しく説明する。本実施形態の樹脂発泡体5は、例えば、後述するシューズ100の靴底用部材として使用される。
【0063】
一側面において、本実施形態の樹脂発泡体5は、例えば、上述した樹脂発泡体の製造方法によって製造されたものである。
詳しくは、樹脂発泡体5は、内部に空隙が形成された樹脂発泡体であって、
硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を調製する工程と、
前記組成物を硬化させることによって、外部空間と連通する空隙が内部に形成された樹脂構造体3を形成する工程と、
前記樹脂構造体3に対して流体を吹き付ける工程と、
前記流体を吹き付けた前記樹脂構造体3を発泡させて前記樹脂発泡体を作製する工程と、を備える、樹脂発泡体の製造方法によって製造された、樹脂発泡体である。
【0064】
本実施形態の樹脂発泡体は、上記のごとく、内部に空隙が形成された樹脂構造体3を発泡させることによって製造される。
一般的に、三次元形状を有する発泡体を製造する際には、所望の形状となるように金型内で発泡させる。内部に空隙が形成された樹脂構造体を発泡させることで樹脂発泡体を製造する場合、金型の枠内で所望の外表面形状を有する樹脂発泡体を形成することは可能であるが、すべての内表面に沿って金型の表面を配置させつつ樹脂構造体を発泡させることは不可能である。よって、所望の内部空隙を形成した樹脂構造体を発泡させても、斯かる樹脂構造体から、内部空隙を所望の通りに形成した樹脂発泡体を製造することは、困難となる場合が多い。
詳しくは、樹脂構造体を発泡させるときに、樹脂構造体内の発泡剤が膨張して樹脂構造体の体積が増加する。これに伴って、樹脂構造体の内表面に付着した未硬化の組成物(発泡剤を含む)の少なくとも一部が、内部の空隙へ向けて膨出等する。樹脂構造体の内表面のすべてに沿って金型の表面を配置することは不可能であるため、樹脂構造体の内表面に付着した未硬化の組成物が上記のごとく膨出等して空隙内を埋めるような現象を抑えることは不可能である。
これに対して、本実施形態の樹脂発泡体は、上記のごとく、内部に空隙が形成された樹脂構造体3に対して流体を吹き付ける工程を経て製造される。即ち、本実施形態の樹脂発泡体は、内部に空隙が形成された樹脂構造体3の内表面を、流体の吹き付けによって洗浄した後に、樹脂構造体3を発泡させることによって製造される。
一方、樹脂構造体に対して流体を吹き付ける工程を実施しないと、内部に所望の空隙が形成された樹脂発泡体を得ることができない(後の図10の(b)を参照)。
上記のごとき流体を吹き付ける工程を実施しないと、内部に所望の空隙が形成された樹脂発泡体を製造することがかなり困難であることから、流体を吹き付ける工程という事項なしで、内部に所望の空隙が形成されている樹脂発泡体の特徴を規定することは、困難であると考えられる。換言すると、内部に所望の空隙が形成されているという樹脂発泡体の特徴は、上記のごとき流体を吹き付ける工程と密接不可分の関係にあるため、本実施形態の樹脂発泡体の構成として、上記のごとき流体を吹き付ける工程は、必要な事項であると考えられる。
【0065】
上記のごとく製造された樹脂発泡体5は、上述した樹脂構造体3の形状と同様の形状を有する。ただし、樹脂発泡体5は、発泡によって樹脂構造体3よりもひと回り大きいサイズとなっている。また、樹脂発泡体5には、樹脂構造体3と同様に、例えば図3乃至図6に示すように、外部空間と連通する空隙が内部に形成されている。樹脂発泡体5を構成する構成単位は、樹脂構造体3の構成単位よりもひと回り大きくなっているが、発泡処理前の樹脂構造体3の構成単位と同様の形状を有する。
【0066】
他の側面において、本実施形態の樹脂発泡体5は、例えば、内部に空隙が形成された樹脂発泡体であって、
樹脂発泡体5の切断面であって、互いに直交する3方向のうち少なくともいずれかの方向に対して垂直な切断面では、樹脂部分と気泡部分とを含む帯状領域と、樹脂部分のみを含む複数の線状領域とが、交互に積層している。
【0067】
例えば、樹脂発泡体5は、互いに直交する3方向のうち少なくともいずれかの方向に対して垂直な切断面では、顕微鏡等で観察されたときに、長手方向を揃えて幅方向に並ぶ複数の帯状領域と、複数の帯状領域よりも細い複数の線状領域とが、交互に積み重なっている。帯状領域のそれぞれが、複数の樹脂部分と複数の気泡部分とを備えている。複数の樹脂部分は、長手方向に沿って断続的に並び、複数の気泡部分は、長手方向に沿って互いに隣り合う複数の樹脂部分の間に配置されている。
【0068】
上記の切断面の状態からも明らかなように、樹脂発泡体5の内部には、切断面において上記の帯状領域となって見える層と、上記の線状領域となって見える層とが、交互に積層している。
詳しくは、樹脂構造体形成工程において、3Dプリンタによって樹脂構造体3を形成した場合、形成された樹脂構造体3は、上記組成物の硬化物の層が積み重なった構造を内部に有する。換言すると、作製された樹脂構造体3は、上記組成物が硬化された硬化物の層が積層されて構成されている。
3Dプリンタを用いて、例えば、硬化性材料を含む液状の組成物に対して活性エネルギー線を照射しつつ樹脂構造体3を形成する場合、活性エネルギー線が照射された部分が硬化する。3Dプリンタを用いたSLA方式の場合、活性エネルギー線は、水平方向に沿って照射先を移動させながら組成物に照射される。一方、DLP方式の場合、活性エネルギー線は、組成物内の被造形面の全体に照射される。いずれの方式においても、組成物内における平面状領域が照射によって硬化されることから、樹脂構造体3の一部(バルク部分、実体部分)が層状に形成される。そして、樹脂構造体3の造形方向(層の積層方向)に被造形面を移動させながら照射を続けることにより、組成物が硬化された層状物が積層され、立体的な樹脂構造体3が形成される。
従って、被造形面が移動した痕跡が樹脂構造体3の少なくとも一部に形成されている。
【0069】
特に、発泡剤として熱膨脹型発泡剤を用いて樹脂構造体3が上記のごとく3Dプリンタを用いて形成されている場合、樹脂発泡体5の内部を光学顕微鏡又は電子顕微鏡などによって100倍率程度の倍率で観察したときに、下記のごとく複数の層が積み重なったような構造が観察される。詳しくは、造形方向に沿って切断した断面(層の面方向に垂直な断面)の少なくとも一部において、例えば図9の(a)に示すマイクロスコープ観察像のように、長手方向を揃えつつ並行する複数の帯状領域Xを含んだ縞模様が観察される。縞模様において明るく観察される(明度がより高い)帯状領域Xは、硬化性材料の硬化物と気泡とを少なくとも含む層である。一方、隣り合う帯状領域Xの間において暗く観察される(明度がより低い)線状領域Yは、少なくとも硬化性材料の硬化物を含み気泡を含まない層であり、帯状領域Xよりも細い。換言すると、明るく見える複数の帯状領域Xと、帯状領域Xの間の暗く見える線状領域Yとが、一方向に交互に積み重なったような縞模様が観察される。なお、造形方向に沿って切断した断面において、帯状領域Xの幅は、例えば1μm以上であってもよく、5μmであってもよく、10μmであってもよい。また、帯状領域Xの幅は、例えば1000μm以下であってもよく、500μm以下であってもよく、200μm以下であってもよい。
【0070】
帯状領域Xをより詳細に観察すると、帯状領域Xの長手方向の一方から他方へ向けて、硬化された部分(樹脂部分P)が断続的に並んでいる。換言すると、帯状領域Xの長手方向に沿って、樹脂部分Pと樹脂部分Pとの間に、発泡剤が膨張して気泡が生じた部分(気泡部分Q)が存在する。さらに換言すると、帯状領域Xの長手方向に沿って、樹脂部分Pは、発泡によって形成された気泡部分Qによって分断されている。
樹脂部分Pは、硬化性材料の硬化物を少なくとも含み、各種の添加剤等をさらに含み得る。
気泡部分Qは、発泡によって生じた孔を少なくとも含むが、発泡剤として上記の熱膨張型発泡剤を採用した場合、気泡部分Qには、孔だけでなく、熱可塑性樹脂カプセルも存在する。即ち、長手方向に沿って並ぶ樹脂部分Pは、孔又は熱可塑性樹脂カプセルによって、分断されている。
【0071】
一方で、樹脂発泡体5を上記の層に沿って切断した断面では、図9の(b)に示すように、上記のごとき縞模様は観察されない。なお、この種の縞模様は、積層した層に沿う断面では観察されないが、これ以外の断面であれば観察され得る。例えば、積層した層の厚さ方向に樹脂発泡体5を切断した断面であれば、層の面方向に垂直な断面でなくても、上記のごとき縞模様が観察される。
【0072】
一般的に、3Dプリンタを用いる光造形方法では、光造形物を作るために要する時間は、造形方向の寸法(層の積層方向の長さ)に依存しやすい。換言すると、造形方向の寸法が大きいほど、造形に要する時間が長くなりやすい。
樹脂構造体3の少なくとも一部が、上記のごとき積層構造を有することによって、造形方向(層の積層方向)での発泡倍率は、他の方向での発泡倍率よりも大きくなる。造形方向(層の積層方向)での発泡倍率が大きい分、造形方向における樹脂構造体3の寸法を小さくしても、造形方向において所望寸法を有する樹脂発泡体5を得ることができる。従って、樹脂構造体3の少なくとも一部が、上記のごとき積層構造を有することにより、光造形に要する時間を短縮できる。
【0073】
続いて、本発明に係るシューズの一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のシューズ100は、例えば靴底部分に上記の樹脂発泡体5の板状体を備える。換言すると、上述した樹脂発泡体5は、例えば、板状であり、本実施形態のシューズ100の靴底用部材10として使用される。
【0074】
本実施形態のシューズ100は、例えば図7に示すように、アッパー40と靴底用部材10とを備える。靴底用部材10は、シューズの底部に配置されるアウトソール11と、アウトソール11よりも着用者の足裏側に配置されるミッドソール12と、を有する。なお、図面における各図は模式図であり、実物における縦横の長さ比と必ずしも同じではない。
【0075】
上述した樹脂発泡体5の板状体は、例えば図8に示すようにミッドソール12である。樹脂発泡体5の板状体は、ミッドソール全体を構成していてもよく、一方、ミッドソールの一部を構成していてもよい。シューズ100は、シューズ100の側面や靴底において外表面が露出した状態の樹脂発泡体5を備えていてもよい。なお、樹脂発泡体5の外表面は、シューズ100の側面や靴底において露出していなくてもよい。
【0076】
板状の樹脂発泡体の厚さは、特に限定されず、例えば、1mm以上20mm以下であってもよい。
【0077】
上記のごとく製造された板状の樹脂発泡体5を靴底用部材10として備えるシューズ100は、例えば、スポーツ用シューズの用途で使用される。上記のシューズ100は、その他、例えばスニーカーの用途で使用されてもよい。
【0078】
本実施形態の樹脂発泡体、樹脂発泡体を備えるシューズ、及び、樹脂発泡体の製造方法は上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の樹脂発泡体、樹脂発泡体を備えるシューズ、及び、樹脂発泡体の製造方法に限定されるものではない。
即ち、一般的な樹脂発泡体、樹脂発泡体を備えるシューズ、及び、樹脂発泡体の製造方法において用いられる種々の形態が、本発明の効果を損ねない範囲において、採用され得る。
【0079】
本明細書の開示内容は、以下の事項を含む。
(1)
内部に空隙が形成された樹脂発泡体の製造方法であって、
硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を調製する工程と、
前記組成物を硬化させることによって、外部空間と連通する空隙が内部に形成された樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体に対して流体を吹き付ける工程と、
前記流体を吹き付けた前記樹脂構造体を発泡させて前記樹脂発泡体を作製する工程と、を備える、樹脂発泡体の製造方法。
(2)
前記硬化性材料が、液状の光硬化性材料であり、
前記樹脂構造体を形成する工程では、前記組成物に対して活性エネルギー線を照射することによって前記組成物を硬化させる、上記(1)に記載の製造方法。
(3)
前記流体を吹き付ける工程の後であって、前記樹脂発泡体を作製する工程の前に、前記樹脂構造体の硬化をさらに進める工程を備える、上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)
前記発泡剤が熱膨脹型発泡剤である、上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)
前記樹脂発泡体の中心を挟んで両側に配置された一方側及び他方側の外表面部分において、
前記一方側の外表面部分における前記空隙の少なくとも一部は、前記他方側の外表面部分における前記空隙と連通している、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)
前記樹脂発泡体内の前記空隙のすべてが外部空間と連通している、上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)
前記樹脂発泡体は、少なくとも一方向に沿って連続して配列された複数の構成単位を含み、
前記構成単位のそれぞれは、複数の棒状部材もしくは板状部材が組み合わされた構造、又は、連続した曲面構造からなる、上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)
前記樹脂発泡体を作製する工程の後に、
前記樹脂発泡体へ流体を噴射する工程をさらに備える、上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の製造方法。
(9)
前記樹脂構造体に対して前記流体を吹き付ける工程では、前記流体が気体であり、
前記樹脂発泡体へ前記流体を噴射する工程では、前記流体が気体であり、
前記樹脂構造体に対して前記流体を吹き付ける工程における前記気体の風圧が、前記樹脂発泡体へ前記流体を噴射する工程における前記気体の風圧よりも高い、上記(8)に記載の製造方法。
(10)
前記樹脂構造体を形成する工程と、前記流体を吹き付ける工程との間に、
溶媒に浸漬された状態の前記樹脂構造体に対して超音波処理を施す工程をさらに備える、上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の製造方法。
(11)
内部に空隙が形成された樹脂発泡体であって、
硬化性材料と発泡剤とを含む組成物を調製する工程と、
前記組成物を硬化させることによって、外部空間と連通する空隙が内部に形成された樹脂構造体を形成する工程と、
前記樹脂構造体に対して流体を吹き付ける工程と、
前記流体を吹き付けた前記樹脂構造体を発泡させて前記樹脂発泡体を作製する工程と、を備える、樹脂発泡体の製造方法によって製造された、樹脂発泡体。
(12)
内部に空隙が形成された樹脂発泡体であって、
前記樹脂発泡体の切断面であって、互いに直交する3方向のうち少なくともいずれかの方向に対して垂直な切断面では、樹脂部分と気泡部分とを含む帯状領域と、樹脂部分のみを含む複数の線状領域とが、交互に積層している、樹脂発泡体。
(13)
上記(11)又は(12)に記載の樹脂発泡体を備える、シューズ。
【実施例0080】
次に実験例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0081】
以下のようにして、樹脂発泡体を製造した。樹脂発泡体を製造するための原料、及び、樹脂構造体を形成するための組成物の配合組成を以下に示す。
【0082】
<樹脂構造体(樹脂発泡体)の原料>
(1)硬化性材料:100質量部
ウレタンアクリレート系モノマー(室温での粘度:800mPa・s)
(2)光重合開始剤:20質量部
製品名「EXPANCEL 920 DU 120」(日本フィライト社製)
<樹脂構造体形成工程>
3Dプリンタを用いて、上記の硬化性材料と光重合開始剤とを含み常温下で液状の組成物に対して、紫外線レーザー(波長400nm、40w)を照射し、所定構造(立体格子構造)を有する板状の樹脂構造体を作製した。
【0083】
<超音波処理工程>
作製した樹脂構造体を液体(イソプロピルアルコール)に浸漬した状態で、1分間の超音波処理(40kHz、100w)を実施した。
その後、樹脂構造体を液体から取り出し、液体を拭き取った。
【0084】
<吹き付け工程>
樹脂構造体に対して、0.3MPaの風圧で空気を吹き付けた。即ち、エアブローによって樹脂構造体の内表面などに付着した付着物などを取り除いた。
【0085】
<二次硬化処理工程>
エアブローされた後の樹脂構造体に対して、波長400nm、60wの紫外線を片面10分ずつ、表及び裏の両面に照射した。
さらに、樹脂構造体を80℃で60分間加熱し、樹脂構造体の硬化をさらに進めた。
【0086】
<樹脂発泡体作製工程>
二次硬化処理を施された樹脂構造体を160℃で15分間加熱することによって、樹脂構造体を発泡させ、樹脂発泡体を得た。
【0087】
<噴射工程>
樹脂発泡体に対して0.2MPaの風圧で空気を吹き付けた。即ち、エアブローによって樹脂発泡体の外表面及び内表面に付着した付着物などを取り除いた。
【0088】
以上のようにして、実施例の製造方法によって樹脂発泡体を製造した。
一方、樹脂構造体に対して空気を吹き付ける工程を実施しなかった点以外は、上記の方法と同様の方法によって比較例の製造方法によって樹脂発泡体を製造した。
実施例及び比較例の製造方法で製造された樹脂発泡体をそれぞれ図10(a)及び図10(b)に示す。
【0089】
図10(a)及び図10(b)から把握されるように、実施例の製造方法で製造された樹脂発泡体では、設計に沿った所望の内部空隙が形成されていた。一方、比較例の製造方法で製造された樹脂発泡体では、内部空隙に残存していた発泡剤による過度な体積膨脹によって、樹脂発泡体が破損した。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の樹脂発泡体の製造方法は、例えば、シューズの底部に配置されて使用される靴底用部材を製造するために、好適に使用される。本発明の樹脂発泡体は、例えば、シューズの底部に配置されて使用される靴底用部材の用途で好適に使用される。本発明のシューズは、例えば、スポーツ用シューズの用途で好適に使用される。
【符号の説明】
【0091】
3:樹脂構造体、
5:樹脂発泡体、
U:構成単位、
X:帯状領域、 Y:線状領域、
P:樹脂部分、 Q:気泡部分、
10:靴底用部材、
11:アウトソール、
12:ミッドソール、
40:アッパー、
100:シューズ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10