(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073900
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】検知装置、検知方法及び検知プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20240523BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240523BHJP
【FI】
G01N21/89 Z
G06T7/00 610Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184877
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000191076
【氏名又は名称】日鉄ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中岡 佑生
(72)【発明者】
【氏名】品川 和之
(72)【発明者】
【氏名】淵上 知幸
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝一
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051CA04
2G051EB05
2G051ED11
2G051ED21
5L096BA03
5L096CA04
5L096GA19
5L096GA51
5L096HA07
5L096JA03
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトに生じた異常部の位置を誤検知する可能性を低減させることが可能である検知装置、検知方法及び検知プログラムを提供する。
【解決手段】検知装置は、製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトを固定視野で撮像する1以上のカメラによって生成された時系列の画像を、ベルトの幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割することによって、複数の分割画像を生成する画像分割部と、正常画像の第1特徴量の代表値を決定する代表値決定部と、第2の時系列の画像から生成された複数の分割画像から、第2特徴量を抽出する特徴量抽出部と、第2特徴量と代表値との間の距離を、分割画像ごとに推定する距離推定部と、特定された分割画像の位置に基づいて、ベルトに生じた異常部の位置を検知する異常検知部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトを固定視野で撮像する1以上のカメラによって生成された時系列の画像を、前記ベルトの幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割することによって、複数の分割画像を生成する画像分割部と、
第1の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像のうちで、異常部が生じていない前記ベルトが撮像された1以上の正常画像に基づいて、前記正常画像の第1特徴量の代表値を決定する代表値決定部と、
第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像から、第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像の第2特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記第2特徴量と前記代表値との間の距離を、第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに推定する距離推定部と、
第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに、前記距離が閾値以上である前記分割画像の位置を前記固定視野において特定し、特定された前記分割画像の位置に基づいて、前記ベルトに生じた前記異常部の位置を検知する異常検知部と、
前記異常部の位置が検知された場合、前記距離が前記閾値以上である前記分割画像と、前記ベルトに生じた前記異常部の位置とを通知する通知部と
を備える検知装置。
【請求項2】
前記距離は、マハラノビス距離、ユークリッド距離又はマンハッタン距離である、請求項1に記載の検知装置。
【請求項3】
検知された前記位置の前記異常部の種類を推定する種類推定部
を更に備える、請求項1又は請求項2に記載の検知装置。
【請求項4】
製鉄原料の搬送設備において駆動する前記ベルトに生じた前記異常部が撮像された画像を説明変数として、前記異常部の種類の名称を目的変数として用いる機械学習によって、学習済モデルを生成する学習処理部
を更に備える、請求項3に記載の検知装置。
【請求項5】
検知装置が実行する検知方法であって、
製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトを固定視野で撮像する1以上のカメラによって生成された時系列の画像を、前記ベルトの幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割することによって、複数の分割画像を生成するステップと、
第1の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像のうちで、異常部が生じていない前記ベルトが撮像された1以上の正常画像に基づいて、前記正常画像の第1特徴量の代表値を決定するステップと、
第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像から、第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像の第2特徴量を抽出するステップと、
前記第2特徴量と前記代表値との間の距離を、第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに推定するステップと、
第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに、前記距離が閾値以上である前記分割画像の位置を前記固定視野において特定し、特定された前記分割画像の位置に基づいて、前記ベルトに生じた前記異常部の位置を検知するステップと、
前記異常部の位置が検知された場合、前記距離が前記閾値以上である前記分割画像と、前記ベルトに生じた前記異常部の位置とを通知するステップと
を含む検知方法。
【請求項6】
製鉄原料の搬送設備において駆動する前記ベルトに生じた前記異常部が撮像された画像を説明変数として、前記異常部の種類の名称を目的変数として用いる機械学習によって、学習済モデルを生成するステップ
を更に含む、請求項5に記載の検知方法。
【請求項7】
コンピュータに、
製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトを固定視野で撮像する1以上のカメラによって生成された時系列の画像を、前記ベルトの幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割することによって、複数の分割画像を生成する手順と、
第1の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像のうちで、異常部が生じていない前記ベルトが撮像された1以上の正常画像に基づいて、前記正常画像の第1特徴量の代表値を決定する手順と、
第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像から、第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像の第2特徴量を抽出する手順と、
前記第2特徴量と前記代表値との間の距離を、第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに推定する手順と、
第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに、前記距離が閾値以上である前記分割画像の位置を前記固定視野において特定し、特定された前記分割画像の位置に基づいて、前記ベルトに生じた前記異常部の位置を検知する手順と、
前記異常部の位置が検知された場合、前記距離が前記閾値以上である前記分割画像と、前記ベルトに生じた前記異常部の位置とを通知する手順と
を実行させるための検知プログラム。
【請求項8】
製鉄原料の搬送設備において駆動する前記ベルトに生じた前記異常部が撮像された画像を説明変数として、前記異常部の種類の名称を目的変数として用いる機械学習によって、学習済モデルを生成する手順
を更に実行させるための、請求項7に記載の検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知装置、検知方法及び検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄原料の搬送設備(ベルトコンベア)には、安定的な稼働と点検負荷の軽減とが求められている。また、製鉄原料の搬送設備のベルト表面に傷等の異常部が生じたことに起因して、ベルトが破断する場合がある。ベルトが破断した場合、又は、破断する直前のような著しい傷がベルトに発見された場合、後工程の焼結機が停止することがある。このような焼結機の停止を回避するため、搬送設備に生じた異常部は早期に発見されることが必要である。
【0003】
そこで、搬送設備に生じた異常部を早期に発見することを目的として、搬送設備が撮像された画像に基づいて異常部の有無を判定するシステムが、特許文献1に開示されている。また、搬送設備のベルトの端部の劣化レベルを画像に基づいて判定する異常監視装置が、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-128286号公報
【特許文献2】特開2021-017296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、搬送設備のベルトに生じた異常部の位置を誤検知する可能性を低減させることができないという問題がある。
【0006】
上記事情に鑑み、本発明は、製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトに生じた異常部の位置を誤検知する可能性を低減させることが可能である検知装置、検知方法及び検知プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトを固定視野で撮像する1以上のカメラによって生成された時系列の画像を、前記ベルトの幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割することによって、複数の分割画像を生成する画像分割部と、第1の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像のうちで、異常部が生じていない前記ベルトが撮像された1以上の正常画像に基づいて、前記正常画像の第1特徴量の代表値を決定する代表値決定部と、第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像から、第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像の第2特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記第2特徴量と前記代表値との間の距離を、第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに推定する距離推定部と、第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに、前記距離が閾値以上である前記分割画像の位置を前記固定視野において特定し、特定された前記分割画像の位置に基づいて、前記ベルトに生じた前記異常部の位置を検知する異常検知部と、前記異常部の位置が検知された場合、前記距離が前記閾値以上である前記分割画像と、前記ベルトに生じた前記異常部の位置とを通知する通知部とを備える検知装置である。
【0008】
本発明の一態様は、検知装置が実行する検知方法であって、製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトを固定視野で撮像する1以上のカメラによって生成された時系列の画像を、前記ベルトの幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割することによって、複数の分割画像を生成するステップと、第1の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像のうちで、異常部が生じていない前記ベルトが撮像された1以上の正常画像に基づいて、前記正常画像の第1特徴量の代表値を決定するステップと、第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像から、第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像の第2特徴量を抽出するステップと、前記第2特徴量と前記代表値との間の距離を、第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに推定するステップと、第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに、前記距離が閾値以上である前記分割画像の位置を前記固定視野において特定し、特定された前記分割画像の位置に基づいて、前記ベルトに生じた前記異常部の位置を検知するステップと、前記異常部の位置が検知された場合、前記距離が前記閾値以上である前記分割画像と、前記ベルトに生じた前記異常部の位置とを通知するステップとを含む検知方法である。
【0009】
本発明の一態様は、コンピュータに、製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトを固定視野で撮像する1以上のカメラによって生成された時系列の画像を、前記ベルトの幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割することによって、複数の分割画像を生成する手順と、第1の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像のうちで、異常部が生じていない前記ベルトが撮像された1以上の正常画像に基づいて、前記正常画像の第1特徴量の代表値を決定する手順と、第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像から、第2の前記時系列の画像から生成された複数の前記分割画像の第2特徴量を抽出する手順と、前記第2特徴量と前記代表値との間の距離を、第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに推定する手順と、第2の前記時系列の画像から生成された前記分割画像ごとに、前記距離が閾値以上である前記分割画像の位置を前記固定視野において特定し、特定された前記分割画像の位置に基づいて、前記ベルトに生じた前記異常部の位置を検知する手順と、前記異常部の位置が検知された場合、前記距離が前記閾値以上である前記分割画像と、前記ベルトに生じた前記異常部の位置とを通知する手順とを実行させるための検知プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトに生じた異常部の位置を誤検知する可能性を低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における、検知システムの構成例を示す図である。
【
図2】実施形態における、搬送設備の構成例を示す図である。
【
図3】実施形態における、固定視野で撮像されたベルトの画像を含む画像(フレーム)の例を示す図である。
【
図4】実施形態における、学習装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態における、代表値を決定する処理の動作例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態における、異常部の位置を検知する処理の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態における、誤検知の発生率の第1例を示す図である。
【
図8】実施形態における、誤検知の発生率の第2例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態における、検知システム1の構成例を示す図である。検知システム1は、製鉄原料の搬送設備(ベルトコンベア)において駆動するベルトに生じた異常部の位置(有無)を検知するシステムである。製鉄原料は、例えば、鉄鉱石、焼結鉱、石炭、コークス、石灰石、これらの2以上の混合物、これらの2以上の混練物、又は、当該混合物若しくは混練物の造粒物である。異常部は、例えば、傷(破損部)である。検知システム1は、撮像されたベルトの画像に基づいて、異常部の位置(有無)を検知する。検知システム1は、検知された異常部の種類の名称を推定してもよい。
【0013】
検知システム1は、1以上のカメラ2と、通信回線3と、学習装置4と、検知装置5と、通知用装置6とを備える。学習装置4は、学習通信部40と、学習記憶装置41と、学習記憶部42と、学習処理部43とを備える。検知装置5(推定装置)は、検知通信部50と、検知記憶装置51と、検知記憶部52と、検知処理部53とを備える。検知処理部53は、画像分割部530と、代表値決定部531と、特徴量抽出部532と、距離推定部533と、異常検知部534と、種類推定部535と、通知部536とを備える。なお、学習装置4と検知装置5とは、一体でもよい。すなわち、検知装置5は、学習装置4を備えてもよい。
【0014】
通信回線3は、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)等の回線である。
【0015】
学習装置4、検知装置5及び通知用装置6の各装置のうちの一部又は全部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、不揮発性の記録媒体(非一時的な記録媒体)である記憶装置から記憶部に展開されたプログラムを実行することにより、ソフトウェアとして実現される。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置などの非一時的な記録媒体である。
【0016】
学習装置4、検知装置5及び通知用装置6の各装置のうちの一部又は全部は、例えば、LSI(Large Scale Integration circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いた電子回路(electronic circuit又はcircuitry)を含むハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0017】
図2は、実施形態における、搬送設備10の構成例を示す図(側面図)である。搬送設備10は、ベルトコンベアを備える。搬送設備10は、ベルト11と、テールプーリ12と、テンションプーリ13とを備える。ベルト11の幅の寸法(長さ)は、特定の寸法に限定されないが、例えば、600ミリメートルから2500ミリメートル程度である。搬送設備10は、製鉄原料を載せたベルト11を駆動することによって、ベルト11の長手方向に製鉄原料を搬送する。
【0018】
例えば、製鉄原料の一つである鉄鉱石は、リクレーマ(不図示)によって、貯蔵ヤード(不図示)から払い出される。鉄鉱石は、複数の搬送設備10を乗り継ぎ、焼結機(不図示)まで搬送される。搬送設備10のベルト11には、傷等の異常部が発生することがある。このため、異常部に起因してベルト11が破断する前に、ベルト11は補修される必要がある。
【0019】
カメラ2は、例えばテールプーリ12又はテンションプーリ13の近傍においてベルト11の表面を撮像可能な位置に設置される。以下では、カメラ2は、テールプーリ12の近傍においてベルト11の表面を俯瞰する位置に設置される。カメラ2は、搬送設備10において駆動するベルト11を、固定視野20で連続撮像する。固定視野20は、ベルト11の幅方向についてベルト11の幅全体が収まるように、予め定められる。カメラ2は、固定視野20内のベルト11が撮像された動画データ(時系列の画像)を生成する。
【0020】
なお、固定視野20内では、ベルト11に製鉄原料14が載っていなくてよい。また、ベルト11の表面に残留した製鉄原料14が、ベルト11の長手方向に筋状の模様を描くように、ベルト11の表面に付着してもよい。
【0021】
図3は、実施形態における、固定視野20で撮像されたベルト11の部分画像を含む画像100(フレーム)の例を示す図である。画像100は、カメラ2によって生成された時系列の画像のうちの任意の時刻の静止画である。画像100は、固定視野20におけるベルト11の上面の画像を含む。また、画像100は、固定視野20におけるベルト11の上面の画像の背景画像として、固定視野20における搬送設備10の一部の画像を含む。
【0022】
機械学習の学習段階において、カメラ2によって撮像された異常部の画像が、学習用画像として用いられる。この場合、カメラ2は、時系列の画像を学習装置4に送信する。学習装置4では、学習処理部43が学習用画像を網目状に分割することによって、学習用画像の複数の分割画像が生成される。なお、カメラ2によって生成された画像の代わりに、異常部の画像として予め用意された画像が、学習用画像として用いられてもよい。
【0023】
学習段階後の推定段階(検知段階)において、ベルト11が撮像された画像は、検知装置5によって検知用画像として用いられる。この場合、カメラ2は、時系列の画像を検知装置5に送信する。検知装置5では、画像分割部530が検知用画像を網目状に分割することによって、検知用画像の複数の分割画像が生成される。
【0024】
なお、1台のカメラ2によって所定の時刻に撮像された1枚の画像から複数の分割画像が生成されることに限らず、例えば、複数のカメラ2によって同時に撮像された複数の画像のそれぞれが、分割画像として用いられてもよい。この場合、複数のカメラ2によって同時に撮像された複数の画像のそれぞれを、画像分割部530は分割しなくてもよい。また、複数のカメラ2によって同時に撮像された複数の画像のうちの少なくとも一部の画像を、画像分割部530は分割してもよい。
【0025】
図1に戻り、学習装置4について説明する。
機械学習の学習段階において、学習通信部40は、固定視野20におけるベルト11の画像を学習用画像として、カメラ2から取得する。学習通信部40は、学習処理部43によって生成された学習済モデルを、検知通信部50に送信する。
【0026】
学習記憶装置41は、学習処理部43によって実行される学習プログラムを記憶する。学習記憶装置41に記憶された学習プログラムは、学習装置4の起動時に、学習記憶部42に展開される。
【0027】
学習記憶装置41は、例えばディープラーニング等の機械学習(教師あり学習)に用いられる教師データを記憶する。教師データは、複数の学習用画像(学習データ(説明変数))と、複数の正解データ(目的変数)とを含む。教師データでは、学習用画像と、正解データとが対応付けられている。学習用画像は、ベルトに生じた異常部が撮像された画像である。正解データは、例えば、学習用画像に予め撮像された異常部の種類の名称(例えば、凹み又は亀裂)である。教師データは、例えば作成者(不図示)によって予め作成される。
【0028】
学習処理部43は、複数の学習用画像と複数の正解データとを含む教師データを、学習記憶装置41から取得する。学習処理部43は、製鉄原料の搬送設備10において駆動するベルト11に生じた異常部が撮像された画像を説明変数として、異常部の種類の名称を目的変数として用いる機械学習(教師あり学習)によって、学習済モデルを生成する。
【0029】
次に、検知装置5について説明する。
学習段階又は推定段階(検知期間)において、検知通信部50は、学習処理部43によって生成された学習済モデルを、学習通信部40から予め取得する。推定段階において、検知通信部50は、固定視野20(撮像視野)におけるベルト11の時系列の画像を、検知用画像として、カメラ2から取得する。
【0030】
検知記憶装置51は、検知処理部53によって実行される検知プログラム(推定プログラム)と、学習済モデルとを記憶する。検知記憶装置51に記憶された検知プログラム及び学習済モデルは、検知装置5の起動時に、検知記憶部52に展開される。
【0031】
以下、推定段階前(学習段階等)における時系列を「第1の時系列」という。推定段階(検知期間)における時系列を「第2の時系列」という。
【0032】
学習段階において、画像分割部530は、学習用画像(第1の時系列の画像)を、カメラ2から取得する。推定段階(検知期間)において、画像分割部530は、検知用画像(第2の時系列の画像)を、カメラ2から取得する。
【0033】
学習段階及び推定段階において、画像分割部530は、ベルト11を固定視野20で撮像するカメラ2によって生成された時系列の画像を、ベルト11の幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割する。ベルト11の幅方向に例えば5枚の分割画像が生成された場合、各分割画像に撮像されたベルト11のエッジ(幅方向の端部)の本数は、0又は1本である。つまり、分割画像に撮像されたベルト11のエッジの本数の平均は、0.4(=(1+0+0+0+1)/5)本であり、固定視野20の画像100に撮像されたベルト11のエッジの本数(2本)と比較して大幅に少ない。
【0034】
また、画像分割部530は、ベルト11の長手方向について、分割画像の長さ(寸法)が予め定められた長さとなるように、分割画像を生成する。例えば、ベルト11の長手方向の検知範囲の長さが、異常部の長さに基づいて例えば100ミリメートルと予め定められた場合、分割画像の長手方向の長さも100ミリメートルと定められてよい。
【0035】
推定段階前において、代表値決定部531は、異常部が生じていないベルト11が撮像された正常画像(傷が無い部分の画像)を取得する。代表値決定部531又は特徴量抽出部532は、推定段階前(第1の時系列)の画像から生成された複数の分割画像のうちで、異常部が生じていないベルト11が撮像された1以上(例えば、950枚)の正常画像から、正常画像の特徴量を抽出する。特徴量の抽出には、公知のツールを用いられてよい。例えば、犬が被写体として撮像された画像群と、猫が被写体として撮像された画像群と、各画像における被写体の種類(犬又は猫)との組み合わせを用いて学習(教師あり学習)された学習済モデルが、特徴量を画像から抽出する公知のツールとして公開されている。この学習済モデルは、推定対象として別途入力された画像における被写体の名称(犬又は猫)を出力する。当該学習済モデルについて、サンプル画像を用いて予め実行された推定処理の結果に基づいて、ニューラルネットワークにおける最適な階層条件が予め定められてもよい。ニューラルネットワークにおける1以上の中間層に入力された画像の特徴量が、それらの中間層から、最適な階層条件に基づく階層順で抽出及び出力されてもよい。なお、実施形態における学習済モデルは、このような学習済モデルに限定されるものではない。
【0036】
以下、異常部が生じていない正常画像から抽出された特徴量を「第1特徴量」という。第1特徴量は、例えば、ベルト11の表面において異常部(傷)が生じていない領域における、画像特徴量を表す。代表値決定部531は、1以上の正常画像に基づいて、第1特徴量の代表値(例えば、平均値、重心値又は最頻値)を決定する。代表値決定部531は、決定された代表値を、検知記憶装置51又は検知記憶部52に記録する。
【0037】
推定段階において、特徴量抽出部532は、推定段階(第2の時系列)の画像から生成された複数の分割画像から、推定段階において撮像された画像から生成された複数の分割画像の特徴量(以下「第2特徴量」という。)を抽出する。
【0038】
推定段階において、距離推定部533は、第2特徴量と代表値との間の距離を、第2の時系列の画像から生成された分割画像ごとに推定する。距離は、例えば、マハラノビス距離、ユークリッド距離又はマンハッタン距離である。
【0039】
推定段階において、異常検知部534は、第2の時系列の画像から生成された分割画像ごとに、第2特徴量と代表値との間の距離が閾値以上である分割画像の位置(座標)を固定視野20において特定する。閾値は、実験等に基づいて予め定められる。異常検知部534は、特定された分割画像の位置に基づいて、ベルト11に生じた異常部の位置を検知する。
【0040】
固定視野20において特定された分割画像の位置に基づいて異常部の位置を検知する方法は、特定の方法に限定されない。例えば、ベルト11に予め定められた基準位置からの相対的な位置に基づいて、異常部の位置が検知される。基準位置は、例えば、ベルトの継ぎ目部の位置、又は、ベルト11に予めマーキングされた着色部(不図示)の位置等である。また、基準位置がカメラ2に撮像された時刻(基準時刻)から、異常部が有ると判定された時系列の画像の撮像時刻までの時間長と、ベルト11の駆動速度(搬送速度)とに基づいて、ベルト11において異常部が生じた位置(基準位置からの相対位置)が検知されてもよい。
【0041】
推定段階において、種類推定部535は、検知された位置の異常部の種類(名称)を、学習済モデルを用いて推定する。例えば、種類推定部535は、第2特徴量と代表値との間の距離が閾値以上である分割画像(異常部が撮像された分割画像)を、学習済モデルに入力する。種類推定部535は、検知された位置の異常部の種類の名称を、学習済モデルから取得する。このようにして、種類推定部535は、検知された位置における異常部の種類の名称を推定する。
【0042】
通知部536は、異常部の位置(有無)が検知された場合、距離が閾値以上である分割画像と、ベルト11に生じた異常部の位置とを、通知用装置6に通知する。種類推定部535は、異常部の種類(名称)が推定された場合、異常部の種類の名称を、通知用装置6に通知する。
【0043】
次に、検知システム1の動作例を説明する。
図4は、実施形態における、学習装置4の動作例を示すフローチャートである。学習段階において、学習処理部43は、ベルト11の異常部が撮像された画像を、説明変数(学習用画像)として取得する(ステップS101)。学習処理部43は、異常部の種類の名称を、目的変数(正解データ)として取得する(ステップS102)。学習処理部43は、説明変数及び目的変数を用いて、機械学習(例えば、教師あり学習)によって、学習済モデルを生成する(ステップS103)。学習処理部43は、学習通信部40を介して、学習済モデルを検知装置5に出力する(ステップS104)。
【0044】
図5は、実施形態における、代表値を決定する処理の動作例を示すフローチャートである。推定段階前において、代表値決定部531は、異常部が生じていないベルト11が撮像された正常画像を取得する(ステップS201)。代表値決定部531又は特徴量抽出部532は、推定段階前(第1の時系列)の画像から生成された複数の分割画像のうちで、異常部が生じていないベルト11が撮像された1以上の正常画像から、正常画像の特徴量(第1特徴量)を抽出する(ステップS202)。
【0045】
代表値決定部531は、1以上の正常画像に基づいて、正常画像の特徴量の代表値を決定する(ステップS203)。代表値決定部531は、決定された代表値を、検知記憶装置51又は検知記憶部52に記録する(ステップS204)。
【0046】
図6は、実施形態における、異常部の位置を検知する処理の動作例を示すフローチャートである。学習段階又は推定段階(検知期間)において、検知通信部50は、学習済モデルを学習装置4から取得する(ステップS301)。画像分割部530は、推定段階における時系列(第2の時系列)の画像を、カメラ2から取得する(ステップS302)。画像分割部530は、ベルト11を固定視野20で撮像するカメラ2によって生成された時系列の画像を、ベルト11の幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割する(ステップS303)。
【0047】
特徴量抽出部532は、第2の時系列の画像から生成された複数の分割画像から、第2の時系列の画像から生成された複数の分割画像の第2特徴量を抽出する(ステップS304)。距離推定部533は、第2特徴量と代表値との間の距離を、第2の時系列の画像から生成された分割画像ごとに推定する(ステップS305)。異常検知部534は、固定視野20において特定された分割画像の位置に基づいて、ベルト11に生じた異常部の位置を検知する(ステップS306)。
【0048】
通知部536は、異常部の位置が検知されたか否か(距離が閾値以上であるか否か)を、第2の時系列の画像から生成された分割画像ごとに判定する(ステップS307)。異常部の位置が検知されていないと判定された場合(ステップS307:NO)、通知部536は、ステップS311に処理を進める。
【0049】
異常部の位置が検知されたと判定された場合(ステップS307:YES)、通知部536は、距離が閾値以上である分割画像と、ベルト11に生じた異常部の位置とを、通知用装置6に通知する(ステップS308)。種類推定部535は、距離が閾値以上である分割画像を、学習済モデルに入力する。種類推定部535は、検知された位置の異常部の種類の名称を、学習済モデルから取得する(ステップS309)。種類推定部535は、異常部の種類の名称(学習済モデルの出力)を、通知用装置6に通知する(ステップS310)。
【0050】
検知処理部53は、検知処理を終了するか否かを判定する(ステップS311)。検知処理を継続すると判定された場合(例えば、ベルト11が駆動中である場合)(ステップS311:NO)、検知処理部53は、ステップS302に処理を戻す。検知処理を終了すると判定された場合(例えば、ベルト11が停止中である場合)(ステップS311:NO)、検知処理部53は、検知処理を終了する。
【0051】
以上のように、画像分割部530は、製鉄原料の搬送設備10において駆動するベルト11を固定視野20で撮像するカメラ2によって生成された時系列の画像(フレーム)を、ベルト11の幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように分割することによって、複数の分割画像を生成する。
【0052】
代表値決定部531は、第1の時系列の画像から生成された複数の分割画像のうちで、異常部が生じていないベルト11が撮像された1以上の正常画像に基づいて、正常画像の第1特徴量の代表値を決定する。特徴量抽出部532は、第2の時系列の画像から生成された複数の分割画像から、第2の時系列の画像から生成された複数の分割画像の第2特徴量を抽出する。
【0053】
距離推定部533は、第2特徴量と代表値との間の距離を、第2の時系列の画像から生成された分割画像ごとに推定する。異常検知部534は、第2の時系列の画像から生成された分割画像ごとに、距離が閾値以上である分割画像の位置を固定視野において特定する。異常検知部534は、特定された分割画像の位置に基づいて、ベルト11に生じた異常部の位置を検知する。通知部536は、異常部の位置が検知された場合、距離が閾値以上である分割画像と、ベルト11に生じた異常部の位置とを通知する。種類推定部535は、検知された位置の異常部の種類(名称)を推定してもよい。
【0054】
これによって、製鉄原料の搬送設備において駆動するベルトに生じた異常部の位置を誤検知する可能性を低減させることが可能である。
【0055】
幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように画像100が分割される前では、画像100に含まれるエッジ及び模様の本数の合計は、2本以上となる。これに対して、撮像された画像100が分割されたことによって、画像100の分割画像に含まれるエッジの本数が、2本よりも少なくなる。また、幅方向の寸法が500ミリメートル以下となるように画像100が分割されたことによって、画像100の分割画像に含まれる筋状の模様の本数は、固定視野20の画像100に含まれる筋状の模様の本数よりも少なくなる。ベルト11のエッジと、ベルト11の表面の模様とは、異常部の検知にとってノイズとなる。このようなノイズが少ないほど、異常部の位置を誤検知する可能性を低減させることが可能である。
【0056】
ベルト11の幅方向における分割画像の寸法が短いほど、異常部の位置の検知精度が向上する。しかしながら、ベルト11の幅方向における分割画像の寸法が例えば10ミリメートル以下である場合には、誤検知を低減する効果が飽和することから、誤検知の発生率はあまり低減しない。このため、異常部の位置の検知精度と、誤検知を低減する効果との関係に基づいて、ベルト11の幅方向における分割画像の寸法の下限値が定められる。また、ベルト11の幅方向における分割画像の寸法(最適値)は、下限値未満とならないように定められる。
【0057】
次に、効果例について説明する。
図7は、実施形態における、誤検知の発生率の第1例を示す図である。以下では、ベルトの幅の長さ(寸法)は、一例として、450ミリメートル、900ミリメートル及び1200ミリメートルである。異常部が撮像されていない検知用画像の枚数は、一例として950枚である。また、異常部が撮像されている検知用画像の枚数は、一例として50枚である。
図7に記載の「誤検知の発生率」は、異常(傷)の有無の誤検知の発生率(割合)を表す。この誤検知の内容は、異常部あり(傷あり)と判定された検知用画像に実際には傷がなかったという内容である。なお、異常部なし(傷なし)と判定された検知用画像に実際には傷があったという事例は無かった。
【0058】
(1)第1の比較例と第1の実施例との比較
第1の比較例では、ベルトの幅の長さは、450ミリメートルである。固定視野の画像の幅の長さは、500ミリメートルである。また、固定視野の画像の分割は実行されない。すなわち、分割画像は生成されない。正常画像の枚数は、一例として950枚である。
【0059】
第1の実施例では、ベルトの幅の長さは、900ミリメートルである。固定視野の画像の幅の長さは、500ミリメートルである。また、ベルトの幅方向に2枚の分割画像が生成される。正常画像の枚数は、一例として950枚である。
【0060】
950枚の正常画像(異常部が撮像されていない検知用画像)と、50枚の異常画像(異常部が撮像されている検知用画像)とについて、異常部の有無が判定される場合、第1の実施例では、第1の比較例と比較して検知精度が向上した。第1の比較例における固定視野の幅の長さと、第1の実施例における分割画像の幅の長さとが同じでも、分割画像に含まれるエッジの本数が1本に減少することによって、異常部の位置(有無)を誤検知する可能性が減少した。
【0061】
(2)第2の比較例と第1の実施例の比較
第2の比較例では、ベルトの幅の長さは、900ミリメートルである。固定視野の画像の幅の長さは、1000ミリメートルである。また、固定視野の画像の分割は実行されない。すなわち、分割画像は生成されない。正常画像の枚数は、一例として950枚である。
【0062】
950枚の正常画像と、50枚の異常画像とについて、異常部の有無が判定される場合、第2の比較例における誤検知の発生率は、約8割と高い。第1の実施例では、第2の比較例と比較して検知精度が向上した。第2の比較例におけるベルトの幅の長さと、第1の実施例におけるベルトの幅の長さとが同じでも、分割画像に含まれるエッジの本数が1本に減少することによって、異常部の位置(有無)を誤検知する可能性が減少した。
【0063】
(3)第3の比較例と第1の実施例の比較
第3の比較例では、ベルトの幅の長さは、1200ミリメートルである。分割画像の幅の長さは、650ミリメートルである。固定視野の画像が幅方向に分割され、幅方向に2枚の分割画像が生成された。正常画像の枚数は、一例として950枚である。
【0064】
950枚の正常画像と、50枚の異常画像とについて、異常部の有無が判定される場合、第3の比較例における誤検知の発生率は、約4割と高い。第1の実施例では、第3の比較例と比較して検知精度が向上した。分割画像の幅の長さが500ミリメートルを超えた場合、そのような分割画像に含まれる筋状の模様の本数が多くなることで、異常部の位置の誤検知が生じ易くなった。
【0065】
(4)第1の実施例と第2の実施例の比較
第2の実施例では、ベルトの幅の長さは、1200ミリメートルである。分割画像の幅の長さは、250ミリメートルである。固定視野の画像が幅方向に分割され、幅方向に5枚の分割画像が生成された。正常画像の枚数は、一例として950枚である。
【0066】
950枚の正常画像と、50枚の異常画像とについて、異常部の有無が判定される場合、第2の実施例における誤検知の発生率は、約1割と低い。第2の実施例では、第1の比較例と比較して検知精度が更に向上した。第2の実施例の分割画像に含まれる筋状の模様の本数が、第1の実施例の分割画像に含まれる筋状の模様の本数よりも少ないので、第2の実施例では、異常部の位置(有無)を誤検知する可能性が更に減少した。
【0067】
(5)第4の比較例と、第1の実施例及び第2の実施例との比較
上記(1)から(4)では、正常画像を用いて、正常画像の特徴量(第1特徴量)の代表値が決定された。すなわち、異常部が撮像された学習用画像(説明変数)と、異常部が有ることを表す正解データ(目的変数)とを含む教師データは、用いられていない。
【0068】
これに対して、第4の比較例では、異常部が撮像された学習用画像(説明変数)と、異常部が有ることを表す正解データ(目的変数)とを含む教師データを用いて、教師あり学習が実行された。学習用画像の枚数は、一例として50枚である。第4の比較例では、第1の実施例及び第2の実施例と比較して、検知精度が低下した。
【0069】
また例えば、固定視野20における時系列の1000枚の学習用画像が準備された場合、実際には、異常部が撮像された学習用画像は5枚以下であることが多い。第1の実施例及び第2の実施例では、異常部が撮像された学習用画像が1000枚あたり5枚以下と少なかったとしても、異常部が撮像された学習用画像を異常部の検知の機械学習に用いていないので、異常部を精度よく検知することができる。
【0070】
これに対して、第4の比較例では、異常部が含まれている学習用画像が1000枚あたり5枚以下と少なかった場合には、十分な学習が実行されず、学習済モデルの精度を向上させることができないので、異常部を検知することができない。
【0071】
図8は、実施形態における、誤検知の発生率の第2例(異常部の種類の検知精度)を示す図である。第3の実施例と第5の比較例とにおいて、ベルトの幅の長さ(寸法)は、一例として1200ミリメートルである。分割画像の幅の長さは、一例として250ミリメートルである。固定視野の画像が幅方向に分割され、幅方向に5枚の分割画像が生成された。正常画像は用いられなくてよい。正常画像が用いられる代わりに、異常部が撮像された学習用画像(説明変数)と、異常部の種類の名称(例えば、凹み大、凹み小、亀裂大、亀裂小、耳切れ、等)を表す正解データ(目的変数)とを含む教師データを用いて、教師あり学習が実行された。学習用画像の枚数は、一例として50枚である。
【0072】
第3の実施例では、種類推定部535が、一例として55枚の検知用画像を取得した。ここで、55枚の検知用画像のうちの50枚の検知用画像は異常部(傷)が撮像されている画像であり、異常部の位置(有無)の検知結果は正しい。これに対して、55枚の検知用画像のうちの残りの5枚の検知用画像は異常部(傷)が撮像されていない画像であり、異常部の位置(有無)の検知結果は誤りである。種類推定部535は、このように検知された位置の異常部の種類(名称)を推定した。
【0073】
その結果、異常部の位置(有無)の検知結果が正しい50枚の検知用画像について、異常部の種類の名称の正答率は10割となった。すなわち、異常部の位置(有無)の検知結果が正しい50枚の検知用画像について、異常部の種類の名称の誤答率は0割(=0枚)となった。これに対して、異常部の位置(有無)の検知結果がそもそも正しくない5枚の検知用画像について、異常部の種類の名称の正答率は0割となった。すなわち、異常部の位置(有無)の検知結果がそもそも正しくない5枚の検知用画像について、異常部の種類の名称の誤答率は10割(=5枚)となった。したがって、第3の実施例における誤検知の発生率(異常部の種類の名称を誤る割合)は、第2の実施例と同様に、約1割となった。
【0074】
第5の比較例では、第3の実施例の教師あり学習によって生成された学習済モデルが用いられた。異常部が撮像された検知用画像の枚数は、一例として50枚である。また、異常部が撮像されていない検知用画像の枚数は、一例として950枚である。合計1000枚の検知用画像が、学習済モデルに入力された。
【0075】
その結果、異常部が撮像された50枚の検知用画像について、学習済モデルは、正答率「5割」で、異常部の種類の正しい名称を出力した。すなわち、異常部が撮像された50枚の検知用画像について、学習済モデルは、誤答率「5割」(25枚=50×0.5)で、異常部の種類の誤った名称を出力した。
【0076】
これに対して、異常部が撮像されていない950枚の検知用画像について、学習済モデルは、異常部の種類の正しい名称「名称なし」を、正答率「6割」で出力した。すなわち、異常部が撮像されていない950枚の検知用画像について、学習済モデルは、異常部の種類の誤った名称を、誤答率「4割」(380枚=950×0.4)で出力した。したがって、第5の比較例における誤検知の発生率(異常部の種類の名称の誤答率)は、約4割(=(25+380)/1000)と高い。このように、第1の実施例、第2の実施例及び第3の実施例と比較して、第5の比較例における検知精度(正答率)が低下した。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…検知システム、2…カメラ、3…通信回線、4…学習装置、5…検知装置、6…通知用装置、10…搬送設備、11…ベルト、12…テールプーリ、13…テンションプーリ、14…製鉄原料、20…固定視野、40…学習通信部、41…学習記憶装置、42…学習記憶部、43…学習処理部、50…検知通信部、51…検知記憶装置、52…検知記憶部、53…検知処理部、100…画像、530…画像分割部、531…代表値決定部、532…特徴量抽出部、533…距離推定部、534…異常検知部、535…種類推定部、536…通知部