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特開2024-73906積込機械の制御装置、遠隔制御装置および制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073906
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】積込機械の制御装置、遠隔制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240523BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20240523BHJP
   E02F 9/24 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F3/43 A
E02F9/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184885
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】衞藤 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】山村 正男
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB02
2D003AB03
2D003AC09
2D003BA03
2D003BA04
2D003BA06
2D003BB08
2D003BB09
2D003BB10
2D003BB11
2D003DA04
2D003DB04
2D003DB05
2D003DC01
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB07
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】積込機械の自動制御において、バケットが積込対象の内壁に接触することを防ぐ。
【解決手段】基準特定部は、積込対象の高さを特定する。作業機位置特定部は、作業具の高さを特定する。操作信号出力部は、作業具を積込対象の上から積込対象の外側へ移動させる自動制御時に、作業具が積込対象の上方に位置し、かつ作業具の高さが積込対象の高さより低い場合に、作業機を上昇させる信号を出力する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、作業具を有する前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械の制御装置であって、
積込対象の高さを特定する基準特定部と、
前記作業具の高さを特定する作業機位置特定部と、
前記作業具を前記積込対象の上から前記積込対象の外側へ移動させる自動制御時に、前記作業具が前記積込対象の上方に位置し、かつ前記作業具の高さが前記積込対象の高さより低い場合に、前記作業機を上昇させる信号を出力する操作信号出力部と
を備える積込機械の制御装置。
【請求項2】
前記操作信号出力部は、
前記作業機を上昇させる操作信号によって前記作業具の高さが前記積込機械の高さより高くなった後に、前記旋回体を前記積込対象の外側へ向けて旋回させる操作信号を出力する
請求項1に記載の積込機械の制御装置。
【請求項3】
前記操作信号出力部は、
前記作業具の高さが前記積込機械の高さより低い場合に、前記作業機を上昇させる信号として、前記作業機のうち前記作業具を支持する部材を上昇させる操作信号を出力する
請求項1または請求項2に記載の積込機械の制御装置。
【請求項4】
前記操作信号出力部は、
前記作業具の高さが前記積込機械の高さより高い場合に、前記旋回体を前記積込対象の外側へ向けて旋回させる操作信号を出力する
請求項1または請求項2に記載の積込機械の制御装置。
【請求項5】
前記操作信号出力部は、
前記作業具の高さが前記積込機械の高さより低い場合に、旋回させる信号を出力しない
請求項4に記載の積込機械の制御装置。
【請求項6】
前記作業機位置特定部は、前記作業具の高さとして、作業具の最下点または、作業具の稼働範囲の最下点の高さを特定する
請求項1または請求項2に記載の積込機械の制御装置。
【請求項7】
オペレータから、前記自動制御の開始指示の入力を受け付ける入力部を備える
請求項1または請求項2に記載の積込機械の制御装置。
【請求項8】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、作業具を有する前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械の制御方法であって、
積込対象の高さを特定するステップと、
前記作業具の高さを特定するステップと、
前記作業具を前記積込対象の上から前記積込対象の外側へ移動させる自動制御時に、前記作業具が前記積込対象の上方に位置し、かつ前記作業具の高さが前記積込対象の高さより低い場合に、前記作業機を上昇させる信号を出力するステップと
を備える積込機械の制御方法。
【請求項9】
旋回中心回りに旋回する旋回体と、作業具を有する前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械を遠隔制御する遠隔制御装置であって、
積込対象の高さを特定する基準特定部と、
前記作業具の高さを特定する作業機位置特定部と、
前記作業具を前記積込対象の上から前記積込対象の外側へ移動させる自動制御時に、前記作業具が前記積込対象の上方に位置し、かつ前記作業具の高さが前記積込対象の高さより低い場合に、前記作業機を上昇させる信号を、前記積込機械に出力する操作信号出力部と
を備える遠隔制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積込機械の制御装置、遠隔制御装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、積込機械の半自動制御に関する技術が開示されている。特許文献1に係る半自動制御は、ダンプトラックなどの積込対象に対する積込完了後に、オペレータから掘削指示を受け付け、制御装置が積込機械の旋回及び作業機の駆動を制御することで、掘削位置までバケットを自動的に移動させる制御である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-041352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オペレータは、荷を積込対象に積み込む際に、積込対象に加わる衝撃を抑えるために荷を低い位置で積み込むことがある。またオペレータはバケットで荷を均すことがある。このとき、バケットは積込対象である箱体の内側に位置する。したがって、半自動制御または全自動制御によって積込機械を旋回させるときに、バケットが積込対象の内壁に接触する可能性がある。以下、半自動制御および全自動制御を総称して自動制御とよぶ。
【0005】
本開示の目的は、積込機械の自動制御において、バケットが積込対象の内壁に接触することを防ぐ積込機械の制御装置、遠隔制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、積込機械の制御装置は、旋回中心回りに旋回する旋回体と、作業具を有する前記旋回体に取り付けられた作業機とを備える積込機械の制御装置であって、積込対象の高さを特定する基準特定部と、前記作業具の高さを特定する作業機位置特定部と、前記作業具を前記積込対象の上から前記積込対象の側方へ移動させる自動制御時に、前記作業具が前記積込対象の上方に位置し、かつ前記作業具の高さが前記積込対象の高さより低い場合に、前記作業機を上昇させる信号を出力する操作信号出力部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、積込機械の制御装置は積込機械の自動制御において、バケットが積込対象である箱体の内壁に接触することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施形態に係る積込機械の構成を示す概略図である。
図2】第一実施形態に係る運転室の内部の構成を示す図である。
図3】第一実施形態に係る制御装置の構成を示す概略ブロック図である。
図4】第一実施形態に係る第一旋回における積込機械の動きの例を示す図である。
図5】第一実施形態に係る第二旋回における積込機械の動きの例を示す図である。
図6】第一実施形態に係るダンプ操作における積込機械の動きの例を示す図である。
図7】第一実施形態に係る制御装置による第一旋回制御を示すフローチャートである。
図8】第一実施形態に係る制御装置による第二旋回制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第一実施形態〉
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
【0010】
《積込機械100の構成》
図1は、第一実施形態に係る積込機械100の構成を示す概略図である。
積込機械100は、施工現場にて稼働し、土砂などの施工対象を掘削し、荷としてダンプトラックなどの積込対象Tのベッセルなど荷台に積み込む。積込機械100の例としては、フェイスショベル、バックホウショベル、ロープショベルなどが挙げられる。また積込機械100は電動駆動するものであってもよいし、油圧駆動するものであってもよい。第一実施形態に係る積込機械100は、バックホウショベルである。積込機械100は、走行体110、旋回体120、作業機130及び運転室140を備える。積込対象Tの例としては、ダンプトラック、ホッパなどが挙げられる。
【0011】
走行体110は、積込機械100を走行可能に支持する。走行体110は、左右に設けられた2つの無限軌道111と、各無限軌道111を駆動するための2つの走行モータ112を備える。走行体110は、支持部の一例である。
旋回体120は、走行体110に旋回中心回りに旋回可能に支持される。
作業機130は、油圧により駆動する。作業機130は、旋回体120の前部に上下方向に駆動可能に支持される。
運転室140は、オペレータが搭乗し、積込機械100の操作を行うためのスペースである。運転室140は、旋回体120の左前部に設けられる。
ここで、旋回体120のうち作業機130が取り付けられる部分を前部という。また、旋回体120について、前部を基準に、反対側の部分を後部、左側の部分を左部、右側の部分を右部という。
【0012】
《旋回体120の構成》
旋回体120は、エンジン121、油圧ポンプ122、コントロールバルブ123、旋回モータ124を備える。
エンジン121は、油圧ポンプ122を駆動する原動機である。エンジン121は、動力源の一例である。
油圧ポンプ122は、エンジン121により駆動される可変容量ポンプである。油圧ポンプ122は、コントロールバルブ123を介して各アクチュエータ(ブームシリンダ131C、アームシリンダ132C、バケットシリンダ133C、走行モータ112、及び旋回モータ124)に作動油を供給する。
コントロールバルブ123は、油圧ポンプ122から供給される作動油の流量を制御する。
旋回モータ124は、コントロールバルブ123を介して油圧ポンプ122から供給される作動油によって駆動し、旋回体120を旋回させる。
【0013】
《作業機130の構成》
作業機130は、ブーム131、アーム132、作業具としてのバケット133、ブームシリンダ131C、アームシリンダ132C、及びバケットシリンダ133Cを備える。作業具の他の例として、クラムバケット、チルトバケット、チルトローテートバケット、グラップル、リフティングマグネットなどの先端アタッチメントが挙げられる。
【0014】
ブーム131の基端部は、旋回体120にブームピンを介して回転可能に取り付けられる。なお、図1に示す積込機械100においては、ブーム131が旋回体120の正面中央部分に設けられるが、これに限られず、ブーム131は左右方向にオフセットして取り付けられたものであってもよい。この場合、旋回体120の旋回中心は作業機130の動作平面上に位置しない。
アーム132は、ブーム131とバケット133とを連結する。アーム132の基端部は、ブーム131の先端部にアームピンを介して回転可能に取り付けられる。
バケット133は、アーム132の先端部にピンを介して回転可能に取り付けられる。バケット133を支持する部材として、ブーム131、アーム132がある。バケット133は、掘削した土砂を収容するための容器として機能する。バケット133は、開口が旋回体120側(後方)を向くように取り付けられる。つまり、バックホウショベルである積込機械100は、バケット133を旋回体120の手前側に引き寄せることで掘削を行う。
【0015】
ブームシリンダ131Cは、ブーム131を作動させるための油圧シリンダである。ブームシリンダ131Cの基端部は、旋回体120に取り付けられる。ブームシリンダ131Cの先端部は、ブーム131に取り付けられる。
アームシリンダ132Cは、アーム132を駆動するための油圧シリンダである。アームシリンダ132Cの基端部は、ブーム131に取り付けられる。アームシリンダ132Cの先端部は、アーム132に取り付けられる。
バケットシリンダ133Cは、バケット133を駆動するための油圧シリンダである。バケットシリンダ133Cの基端部は、アーム132に取り付けられる。バケットシリンダ133Cの先端部は、バケット133を回動させるリンク機構に取り付けられる。
【0016】
《運転室140の構成》
図2は、第一実施形態に係る運転室140の内部の構成を示す図である。
運転室140内には、運転席141、操作端末142及び操作装置143が設けられる。操作端末142は、運転席141の近傍に設けられ、後述する制御装置160とのユーザインタフェースである。操作端末142は、例えばタッチパネルで構成された表示装置であり、オペレータが操作する操作部と、操作を受け付ける入力受付部があってもよい。また、表示装置には、エンジン水温計、燃料計の計測データなどが表示されている。また、操作端末142は、LCDなどの表示部を備えるものであってよい。前記タッチパネルは表示部の一例である。
【0017】
操作装置143は、オペレータの手動操作によって走行体110、旋回体120及び作業機130を駆動させるための装置である。操作装置143は、左操作レバー143LO、右操作レバー143RO、左フットペダル143LF、右フットペダル143RF、左走行レバー143LT、右走行レバー143RT、旋回ブレーキペダル143TB、開始スイッチ143SWを備える。
【0018】
左操作レバー143LOは、運転席141の左側に設けられる。右操作レバー143ROは、運転席141の右側に設けられる。
【0019】
左操作レバー143LOは、旋回体120の旋回動作、及び、アーム132の掘削/ダンプ動作を行うための操作機構である。具体的には、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを前方に倒すと、アーム132がダンプ動作する。また、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを後方に倒すと、アーム132が掘削動作する。また、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを右方向に倒すと、旋回体120が右旋回する。また、積込機械100のオペレータが左操作レバー143LOを左方向に倒すと、旋回体120が左旋回する。なお、他の実施形態においては、左操作レバー143LOを前後方向に倒した場合に旋回体120が右旋回又は左旋回し、左操作レバー143LOが左右方向に倒した場合にアーム132が掘削動作又はダンプ動作してもよい。
【0020】
右操作レバー143ROは、バケット133の掘削/ダンプ動作、及び、ブーム131の上げ/下げ動作を行うための操作機構である。具体的には、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを前方に倒すと、ブーム131の下げ動作が実行される。また、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを後方に倒すと、ブーム131の上げ動作が実行される。また、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを右方向に倒すと、バケット133のダンプ動作が行われる。また、積込機械100のオペレータが右操作レバー143ROを左方向に倒すと、バケット133の掘削動作が行われる。なお、他の実施形態においては、右操作レバー143ROを前後方向に倒した場合に、バケット133がダンプ動作又は掘削動作し、右操作レバー143ROを左右方向に倒した場合にブーム131が上げ動作又は下げ動作してもよい。
【0021】
左フットペダル143LFは、運転席141の前方の床面の左側に配置される。右フットペダル143RFは、運転席141の前方の床面の右側に配置される。左走行レバー143LTは、左フットペダル143LFに軸支され、左走行レバー143LTの傾斜と左フットペダル143LFの押し下げが連動するように構成される。右走行レバー143RTは、右フットペダル143RFに軸支され、右走行レバー143RTの傾斜と右フットペダル143RFの押し下げが連動するように構成される。
【0022】
左フットペダル143LF及び左走行レバー143LTは、走行体110の左側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、積込機械100のオペレータが左フットペダル143LF又は左走行レバー143LTを前方に倒すと、左側履帯は前進方向に回転する。また、積込機械100のオペレータが左フットペダル143LF又は左走行レバー143LTを後方に倒すと、左側履帯は後進方向に回転する。
【0023】
右フットペダル143RF及び右走行レバー143RTは、走行体110の右側履帯の回転駆動に対応する。具体的には、積込機械100のオペレータが右フットペダル143RF又は右走行レバー143RTを前方に倒すと、右側履帯は前進方向に回転する。また、積込機械100のオペレータが右フットペダル143RF又は右走行レバー143RTを後方に倒すと、右側履帯は後進方向に回転する。
【0024】
開始スイッチ143SWは、例えば左操作レバー143LOのハンドル部分に設けられる。なお、開始スイッチ143SWは、運転席141に着座したオペレータの近傍に位置するように配置されればよい。開始スイッチ143SWが押下されると、制御装置160に自動制御指示信号が出力される。制御装置160は、自動制御指示信号の入力を受け付けると、自動制御を開始する。
【0025】
自動制御は、所定の動作を実現するために積込機械100が自律的に作業機130および旋回体120の駆動を制御することである。第1の実施形態における自動制御は、掘削対象の掘削によって積込対象Tの側方にバケット133が位置する状態から、ブーム131を上げながら積込対象Tを向く方位まで旋回する一連の動作である第一旋回と、積込によって積込対象Tの上にバケット133が位置する状態から、ブーム131を下げながら所定の方位まで旋回する一連の動作である第二旋回とを、積込機械100が自律的に行う制御である。積込対象Tの側方とは、ベッセルなど荷を積み込む荷台の外側をいう。なお、他の実施形態に係る自動制御は、第二旋回のみを行うものであってもよい。第一実施形態においては、第一旋回および第二旋回における旋回体120の目標方位およびバケット133の目標姿勢は、それぞれ予め指定された方位および姿勢とする。なお、通常、掘削対象は積込対象Tの高さより低い位置となる。そのため、積込機械100は、第一旋回および第二旋回において、積込対象Tと作業機130とが接触しないように作業機130の駆動を制御する。自動制御の詳細は後述する。
開始スイッチ143SWの押下の度に実行される自動制御が第一旋回と第二旋回とで切り替わる。また、他の実施形態においては、操作装置143が2つの開始スイッチ143SWを備え、それぞれに第一旋回と第二旋回とが割り当てられてもよい。
【0026】
《計測系の構成》
図1に示すように、積込機械100は、位置方位演算器151、傾斜計測器152、ブームストロークセンサ153、アームストロークセンサ154、バケットストロークセンサ155を備える。
【0027】
位置方位演算器151は、旋回体120の位置及び旋回体120が向く方位を演算する。位置方位演算器151は、GNSSを構成する人工衛星から測位信号を受信する2つの受信器を備える。2つの受信器は、それぞれ旋回体120の異なる位置に設置される。位置方位演算器151は、受信器が受信した測位信号に基づいて、現場座標系における旋回体120の代表点(ショベル座標系の原点)の位置を検出する。
位置方位演算器151は、2つの受信器が受信した各測位信号を用いて、一方の受信器の設置位置に対する他方の受信器の設置位置の関係として、旋回体120の向く方位を演算する。旋回体120が向く方位とは、旋回体120の正面に直交する方向である。旋回体120が向く方位は、作業機130のブーム131からバケット133へ伸びる直線の延在方向の水平成分に等しい。
【0028】
傾斜計測器152は、旋回体120の加速度及び角速度を計測し、計測結果に基づいて旋回体120の姿勢(例えば、ロール角、ピッチ角、ヨー角)および旋回速度を検出する。傾斜計測器152は、例えば旋回体120の下面に設置される。傾斜計測器152は、例えば、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)を用いることができる。
【0029】
ブームストロークセンサ153は、ブームシリンダ131Cに取り付けられ、ブームシリンダ131Cのシリンダ長を検出する。ブームシリンダ131Cのシリンダ長は、旋回体120に対するブーム131の相対角度に換算可能である。
アームストロークセンサ154は、アームシリンダ132Cに取り付けられ、アームシリンダ132Cのシリンダ長を検出する。アームシリンダ132Cのシリンダ長は、ブーム131に対するアーム132の相対角度に換算可能である。
バケットストロークセンサ155は、バケットシリンダ133Cに取り付けられ、バケットシリンダ133Cのシリンダ長を検出する。バケットシリンダ133Cのシリンダ長は、アーム132に対するバケット133の相対角度に換算可能である。
第一実施形態に係る積込機械100は、ブームストロークセンサ153、アームストロークセンサ154、及びバケットストロークセンサ155を用いて作業機130の各リンク部品の角度を特定するが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態においては、ストロークセンサに代えて、リンク部品の相対回転角を検出するポテンショメータを備えてもよいし、各リンク部品の対地角を検出する傾斜センサを備えてもよい。
【0030】
《制御装置160の構成》
図3は、第一実施形態に係る制御装置160の構成を示す概略ブロック図である。
積込機械100は、制御装置160を備える。制御装置160は、操作端末142に実装されるものであってもよいし、操作端末142と別個に設けられ、操作端末142からの入出力を受け付けるものであってもよい。制御装置160は、操作装置143から操作信号を受信する。制御装置160は、受信した操作信号又は自動制御のために生成された操作信号をコントロールバルブ123に出力することで、作業機130、旋回体120及び走行体110を駆動させる。以下、操作装置143から受信した操作信号を手動操作信号ともよび、自動制御のために生成された操作信号を自動操作信号ともよぶ。なお、自動操作信号は、旋回体120および作業機130を駆動させる操作信号からなり、走行体110を駆動させる操作信号を含まない。自動制御中に、オペレータによる手動操作信号を受信した場合、制御装置160は自動制御を停止してもよい。
【0031】
制御装置160は、プロセッサ610、メインメモリ630、ストレージ650、インタフェース670を備えるコンピュータである。ストレージ650は、プログラムを記憶する。プロセッサ610は、プログラムをストレージ650から読み出してメインメモリ630に展開し、プログラムに従った処理を実行する。
【0032】
ストレージ650の例としては、半導体メモリ、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク等が挙げられる。ストレージ650は、制御装置160の共通通信線に直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース670を介して制御装置160に接続される外部メディアであってもよい。メインメモリ630及びストレージ650は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0033】
プロセッサ610は、プログラムの実行により、計測データ取得部611、操作信号入力部612、作業機位置特定部613、基準特定部614、角度特定部615、移動制御部616、操作信号出力部617を備える。
【0034】
計測データ取得部611は、積込機械100の計測系による計測データを取得する。具体的には、計測データ取得部611は、位置方位演算器151、傾斜計測器152、ブームストロークセンサ153、アームストロークセンサ154およびバケットストロークセンサ155から計測データを取得する。計測データ取得部611は、傾斜計測器152が計測した旋回体120の角速度を積分することで、旋回体120の角度を算出する。
【0035】
操作信号入力部612は、操作装置143からオペレータが手動で操作された操作信号の入力を受け付ける。操作信号には、ブーム131の上げ操作や下げ操作をする駆動信号、アーム132の上げ操作や下げ操作をする駆動信号、バケット133のダンプ操作や掘削操作をする駆動信号、旋回体120の右旋回操作や左旋回操作をする駆動信号、走行体110の走行操作をする駆動信号、ならびに積込機械100の自動制御指示信号が含まれる。
【0036】
作業機位置特定部613は、計測データ取得部611が取得した計測データに基づいて、旋回体120を基準とする車体座標系におけるアーム132の先端Pの位置(図4)およびバケット133の最下点Qの位置(図4)を特定する。バケット133の最下点Qとは、バケット133の外形のうち地表面からの距離が最も短い点をいう。
【0037】
作業機位置特定部613は、ブーム131の傾斜角と既知のブーム131の長さ(基端部のピンから先端部のピンまでの距離)とに基づいて、ブーム131の長さの垂直方向成分及び水平方向成分を求める。同様に、作業機位置特定部613は、アーム132の長さの垂直方向成分及び水平方向成分を求める。作業機位置特定部613は、積込機械100の位置から、積込機械100の方位及び姿勢から特定される方向に、ブーム131及びアーム132の長さの垂直方向成分の和及び水平方向成分の和だけ離れた位置を、アーム132の先端Pの位置として特定する。また、作業機位置特定部613は、バケット133の傾斜角と既知のバケット133の形状とに基づいて、バケット133の最下点Qの位置を特定する。例えば、作業機位置特定部613は、バケット133の傾斜角に基づいてバケット133の外殻の複数の点それぞれの位置を算出し、当該複数の点のうち最も高さが低い点を、最下点Qとして特定する。また、例えば、作業機位置特定部613は、バケット133のうちバケットピンから最も離れた点とバケットピンとの距離を、バケットピンから高さ方向下方にオフセットさせた点を最下点Qとしてもよい。また、例えば、作業機位置特定部613は、最大のバケット可動範囲の量を、バケットピンから高さ方向下方にオフセットさせた点を最下点Qとしてもよい。また作業機位置特定部613は、制御誤差や計測誤差を加味して、上記で特定した高さより余裕を持たせた高さをオフセットさせた点を、最下点Qとしてもよい。
【0038】
基準特定部614は、自動制御を実行する前に、自動制御の基準点として、オペレータからバケット133の掘削準備位置、干渉回避位置、および積込位置のティーチングを受け付ける。ティーチングは、例えば以下の手順で行われる。
基準特定部614は、操作端末142にバケット133を掘削準備位置へ移動させる指示を表示させる。オペレータは、操作装置143を操作してバケット133を掘削準備位置へ移動させ、操作端末142に掘削準備位置への移動完了を入力する。基準特定部614は、作業機位置特定部613によって特定された作業機130の姿勢を第二旋回の目標姿勢とし、アーム132の先端Pの位置を第二旋回の目標位置とし、旋回体120が向く方位を第二旋回の目標方位としてストレージ650に記録する。
次に、基準特定部614は、操作端末142にバケット133の刃先を、積込対象Tのベッセルの壁の上端の高さを有し、かつ作業機130と積込対象Tとが上方からの平面視において重ならない位置である干渉回避位置に移動させる指示を表示させる。なお、ティーチングに用いるベッセルの壁は、ベッセルの側面の壁、前方の壁、後方の壁の何れでもよい。オペレータは、操作装置143を操作してバケット133の刃先を干渉回避位置へ移動させ、操作端末142に干渉回避位置への移動完了を入力する。干渉回避位置は、積込対象Tの右端および左端の両方について入力される。これにより、基準特定部614は、積込対象Tの荷台の範囲を特定することができる。なお、干渉回避位置の高さは、制御誤差や計測誤差を加味して、余裕を持たせた高さを上方向にオフセットさせたものであってもよい。
基準特定部614は、作業機位置特定部613によって特定されたバケット133の最下点Qの高さを積込対象Tの壁高さHtとし、旋回体120が向く方位を干渉回避方位として、ストレージ650に記録する。壁高さHtは、積込対象Tの高さの一例である。
次に、基準特定部614は、操作端末142にバケット133を積込対象Tの上方の積込位置に移動させる指示を表示させる。オペレータは、操作装置143を操作してバケット133を積込位置へ移動させ、操作端末142に積込位置への移動完了を入力する。基準特定部614は、作業機130の姿勢を第一旋回の目標姿勢とし、アーム132の先端Pの位置を第一旋回の目標位置とし、作業機位置特定部613によって特定された旋回体120が向く方位を第一旋回の目標方位として、ストレージ650に記録する。また、積込位置で特定されたバケット133の最下点Qの高さを壁高さHtとしてもよい。また、他の実施形態においては積込対象Tの高さは必ずしも荷台の側壁の高さである壁高さHtでなくてよく、積込対象T全体のうち最も高い点の高さであってもよい。
【0039】
角度特定部615は、操作信号入力部612に自動制御指示信号が入力されたときに旋回体120が向く初期方位と、ストレージ650に記録された目標方位との間の角度を目標旋回角度として特定する。角度特定部615は、操作信号入力部612に自動制御指示信号が入力されたときに旋回体120が向く初期方位と、ストレージ650に記録された干渉回避方位の間の角度を干渉回避角度として特定する。干渉回避角度とは、作業機130と積込対象Tとが上方からの平面視において重ならないときの旋回角度である。
【0040】
移動制御部616は、操作信号入力部612が自動制御指示信号の入力を受け付けた場合に、自動制御を実現する自動操作信号を生成する。自動制御指示信号が入力されたときに、バケット133を積込位置まで移動させる第一旋回を実現する自動制御、またはバケット133を掘削準備位置まで移動させる第二旋回を実現する自動制御を実行する。移動制御部616は、自動制御において第一旋回を実行するか第二旋回を実行するかを、自動制御指示信号の入力時にバケット133が上方からの平面視において積込対象Tの範囲内にあるか否かによって決定する。バケット133が積込対象Tの荷台の範囲内にない場合、移動制御部616は第一旋回を実行し、バケット133が積込対象Tの荷台の範囲内にある場合、移動制御部616は第二旋回を実行する。このとき、移動制御部616は、ストレージ650が記憶する壁高さHtと干渉回避角度とに基づいて、積込対象Tと作業機130とが接触しないよう旋回体120および作業機130を制御する。
【0041】
具体的には、移動制御部616は、第一旋回において、第一干渉回避角度θ1(図4)に到達するまでに旋回体120と作業機130との複合動作を実現させる。第一旋回において、旋回体120の旋回角度が第一干渉回避角度θ1(図4)に到達するまでにバケット133の高さが積込位置の高さに至らない場合、旋回体120の旋回操作信号を生成せず、作業機130の操作信号のみを生成する。他方、移動制御部616は、旋回による旋回角度が第一干渉回避角度θ1に到達するまでにバケット133の高さが積込位置の高さに到達する場合、旋回体120の旋回操作信号及び作業機130の操作信号を生成し、旋回体120と作業機130との複合動作を実現する。バケット133の高さが、第一干渉回避角度θ1(図4)で積込位置の高さに到達した後は、移動制御部616は、作業機130を動かさずに旋回体120を旋回させる。
また、移動制御部616は、第一旋回と反対に旋回する第二旋回において、旋回体120の旋回角度が第二干渉回避角度θ2(図5)に到達するまで、バケット133の最下点が下がらないよう制御する。最下点が下がらない制御は、作業機130を動かさずに旋回体120を旋回させ、最下点の高さを維持する制御であってもよいし、最下点を制御前の最下点より高くすることで積込対象Tとバケット133との間に隙間を設ける制御であってもよい。旋回角度が第二干渉回避角度θ2に到達した後、移動制御部616は、旋回体120の旋回操作信号及び作業機130の操作信号を生成し、旋回体120と作業機130との複合動作を実現する。ただし、移動制御部616は、第二旋回において自動制御指示信号の入力を受け付けたときに、バケット133の最下点の高さが積込対象Tの壁高さHtより低い場合に、旋回体120を旋回させる前に、バケット133を上方に移動させる。
【0042】
操作信号出力部617は、操作信号入力部612に入力された手動操作信号、又は移動制御部616が生成した自動操作信号をコントロールバルブ123に出力する。
【0043】
《自動制御時の動作》
ここで、図面を参照しながら、第一実施形態に係る自動制御時の積込機械100の動きについて説明する。
図4は、第一実施形態に係る第一旋回における積込機械100の動きの例を示す図である。図5は、第一実施形態に係る第二旋回における積込機械100の動きの例を示す図である。
【0044】
第一旋回に係る自動制御が開始されると、図4に示すように制御装置160は、まず作業機130(ブーム131、アーム132、およびバケット133)の駆動を開始し、ブーム131の上げ動作でバケット133を上方へ移動させる。第一旋回に係るバケット133の目標位置は、積込対象Tの上方の積込位置である。遅れて、制御装置160は、旋回体120の旋回を開始させる。制御装置160は、旋回体120の旋回角度が第一干渉回避角度θ1と一致するまでに、作業機130の姿勢が第一旋回に係る目標姿勢となるように、旋回開始タイミングを調整する。なお、旋回体120の旋回角度が第一干渉回避角度θ1と一致するまでに作業機130の姿勢が第一旋回における目標姿勢となっている場合、つまりバケット133の最下点Qの高さが積込対象Tの壁高さHtより高い場合、旋回体120の旋回によって作業機130が積込対象Tに接触することがない。なお、旋回と同時に作業機130を駆動させて、旋回角度が第一干渉回避角度θ1と一致するまでに作業機130の姿勢が第一旋回における目標姿勢となる場合には、制御装置160は、作業機130の駆動と旋回とを同時に開始してもよい。その後、バケット133が積込位置に到達すると、自動制御を終了する。
【0045】
その後、オペレータは、手動操作によってバケット133をダンプ方向に回動させるダンプ操作を行う。図6は、第一実施形態に係るダンプ操作における積込機械100の動きの例を示す図である。オペレータは、手動のダンプ操作において、積込対象Tに加わる衝撃を抑えるために荷を低い位置で積み込むことがある。また、オペレータは、積込機械100を操作して、ベッセルなどの荷台に積み込まれた荷を均す作業をすることがある。このとき、バケット133の最下点Qは図6に示すように積込対象Tの壁より低くなることがある。したがって、制御装置160がこのまま積込機械100を旋回させると、バケット133が積込対象Tの内壁に接触してしまう。
【0046】
第二旋回に係る自動制御が開始されると、制御装置160はバケット133の最下点が積込対象Tの壁より高いか否かを判定する。図5に示すようにバケット133の最下点Qが壁高さHtより低い場合、ブーム131を上昇させる。バケット133の最下点Qが壁高さHtより高くなると、制御装置160は、旋回体120の旋回を開始する。制御装置160は、旋回体120の旋回角度が第二干渉回避角度θ2を超えるまで、作業機130を動かさずに旋回体120を旋回させ、バケット133の最下点の高さを維持する。なお、第一実施形態においては、バケット133の最下点Qが壁高さHtより低い場合に、制御装置160は作業機130のみを上昇させ、旋回体120を旋回させないが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態においては、バケット133の最下点Qが壁高さHtより低い場合に、制御装置160は作業機130を上昇させながら、バケット133が積込対象Tの壁に接しない程度の速度で旋回体120を旋回させてもよい。
【0047】
旋回体120の旋回角度が第二干渉回避角度θ2を超えると、制御装置160はブーム131、アーム132およびバケット133を駆動させる。このとき、制御装置160は、旋回開始時の姿勢と目標姿勢との関係から、ブーム131、アーム132およびバケット133をすべて駆動させることもあれば、ブーム131、アーム132およびバケット133の一部を駆動させることもある。旋回体120の旋回角度が目標旋回角度θ0に至ると、制御装置160は旋回体120の駆動を終了する。また作業機130の姿勢が掘削開始時の目標姿勢となると、制御装置160は作業機130の駆動を終了する。第一実施形態に係る制御装置160は、第二旋回において、旋回体120の旋回角度が第二干渉回避角度θ2を超えるまで作業機130を動かさずに旋回体120を旋回させるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、バケット133の最下点の高さが変わらないように作業機130を動かしながら旋回体120を旋回させてもよい。また実施形態に係る制御装置160は、バケット133が壁高さHtより高い場合に、バケット133の最下点の高さが壁高さHtを下回らない程度に、作業機130を下げながら旋回体120を旋回させてもよい。
なお、図4および図5は、掘削位置と積込対象Tとの位置関係が、旋回体120を中心として約90度である例を示すが、他の実施形態においてはこれに限られない。例えば、他の実施形態においては、掘削位置と積込対象Tとの位置関係が、旋回体120を中心として約180度であるなど、他の旋回角度位置であってもよい。
【0048】
《制御装置160の動作》
図7は、第一実施形態に係る制御装置160による第一旋回制御を示すフローチャートである。図8は、第一実施形態に係る制御装置160による第二旋回制御を示すフローチャートである。
オペレータによって開始スイッチ143SWが押下されると、制御装置160の操作信号入力部612は自動制御指示信号の入力を受け付ける。制御装置160は、自動積込指示信号が入力されると、バケット133が上方からの平面視において積込対象Tの荷台上の範囲内にあるか否かに基づいて、第一旋回を実行するか第二旋回を実行するかを決定する。
【0049】
第一旋回を実行する場合、制御装置160は図7に示す第一旋回制御を実行する。まず、計測データ取得部611は積込機械100の方位の計測データを取得する(ステップS1)。移動制御部616は、ストレージ650から旋回体120の目標方位(積込対象Tを向く方位)、目標姿勢、積込対象Tの壁高さHt、および干渉回避方位を読み出す(ステップS2)。角度特定部615は、ステップS1で特定した旋回体120の向く方位ならびにステップS2で読み出した目標方位および干渉回避方位に基づいて、目標旋回角度θ0および第一干渉回避角度θ1を特定する(ステップS3)。
【0050】
次に、計測データ取得部611は積込機械100の位置および方位、傾斜角、旋回速度および各シリンダのシリンダ長の計測データを取得し、作業機位置特定部613は計測データに基づいて作業機130の姿勢を特定する(ステップS4)。作業機位置特定部613はアーム132の先端Pの位置、バケット133の最下点Qの位置およびバケット133の姿勢を特定する(ステップS5)。
【0051】
移動制御部616は、ステップS2で読み出した目標方位、目標姿勢および壁高さHt、ならびにステップS3で特定した第一干渉回避角度θ1に基づいて、バケット133を積込対象Tの上方まで移動させるための自動操作信号を生成する。すなわち、移動処理部1112は、バケット133の最下点Qが、第一旋回制御の開始時の最下点Qの位置から、壁高さHtおよび第一干渉回避角度θ1で表される干渉回避位置を経由して、目標方位および目標姿勢で表される積込位置に到達するように、自動操作信号を生成する。このとき、移動制御部616は、ブーム131およびアーム132が駆動してもバケット133の対地角度が変化しないように、バケット133の自動操作信号を生成する。
具体的には、移動制御部616は、以下の手順で自動操作信号を生成する。
まず、移動制御部616は、ステップS5で特定された作業機130の姿勢が、ステップS1で取得した目標姿勢と近似するか否かを判定する(ステップS6)。例えば、移動制御部616は、目標姿勢におけるアーム132の先端の位置と、現在のアーム132の先端の位置との差が所定値以下である場合に、作業機130の姿勢が目標姿勢と近似していると判定する。
【0052】
作業機130の姿勢が目標姿勢と近似していない場合(ステップS6:NO)、移動制御部616は、ブーム131及びアーム132を目標姿勢に近づける自動操作信号を生成する(ステップS7)。このとき、移動制御部616は、ステップS4で取得した計測データから特定されるブーム131及びアーム132の位置及び速度に基づいて、自動操作信号を生成する。
【0053】
また移動制御部616は、生成したブーム131及びアーム132の自動操作信号に基づいてブーム131及びアーム132の駆動速度の和を算出し、当該駆動速度の和と同じ速度でバケット133を駆動させる自動操作信号を生成する(ステップS8)。これにより、移動制御部616は、バケット133の対地角を保持する操作信号を生成することができる。
【0054】
移動制御部616は、作業機130が旋回中であるか否かを判定する(ステップS9)。移動制御部616は、例えば旋回体120の旋回速度が所定速度以上である場合に旋回中であると判定する。作業機130が旋回中でない場合(ステップS9:NO)、移動制御部616は、ステップS7で特定したブーム131及びアーム132の速度に基づいて作業機130が目標姿勢となるまでの完了時間を算出する(ステップS10)。また、移動制御部616は、旋回体120が旋回を開始した場合に旋回角度がステップS3で特定した第一干渉回避角度θ1に到達するまでの到達時間を算出する(ステップS11)。移動制御部616は、ステップS10で算出した完了時間がステップS11で算出した到達時間未満であるか否かを判定する(ステップS12)。つまり、移動制御部616は、旋回角度が第一干渉回避角度θ1に到達するときに作業機130が目標姿勢となるか否かを判定する。
【0055】
完了時間が到達時間以上である場合(ステップS12:NO)、すなわち旋回角度が第一干渉回避角度θ1に到達するまでに作業機130が目標姿勢とならない場合、移動制御部616は旋回体120の旋回操作信号を生成しない。他方、完了時間が到達時間未満である場合(ステップS12:YES)、すなわち旋回角度が第一干渉回避角度θ1に到達するまでに作業機130が目標姿勢となる場合、移動制御部616は旋回体120の旋回操作信号を生成する(ステップS13)。これにより、制御装置160は、作業機130の高さが低いまま旋回してしまうことにより積込対象Tと接触することを防ぐことができる。
【0056】
操作信号出力部617は、生成された自動操作信号をコントロールバルブ123に出力する(ステップS14)。これにより、積込機械100が駆動する。そして、制御装置160は、処理をステップS4に戻し、制御を継続する。
【0057】
他方、ステップS9にて作業機130が旋回中であると判定された場合(ステップS9:YES)、移動制御部616は、ステップS4で特定した作業機130の旋回速度に基づいて、旋回の操作信号を停止した場合に、惰性による旋回によって旋回角度が目標旋回角度に到達するか否かを判定する(ステップS15)。惰性による旋回では旋回角度が目標旋回角度に到達しない場合(ステップS15:NO)、移動制御部616はステップS13にて旋回操作信号を生成し、操作信号出力部617はステップS14にて旋回操作信号をコントロールバルブ123に出力する。
【0058】
他方、惰性による旋回によって旋回角度が目標旋回角度に到達すると判定された場合(ステップS15:YES)、旋回角度が目標旋回角度に到達し、かつ作業機130の姿勢が目標姿勢になっているか否かを判定する(ステップS16)。旋回角度が目標旋回角度に到達し、かつ作業機130の姿勢が目標姿勢になっていない場合(ステップS16:NO)、制御装置160は処理をステップS4に戻す。
【0059】
他方、旋回角度が目標旋回角度に到達し、かつ作業機130の姿勢が目標姿勢になった場合(ステップS16:YES)、制御装置160は第一旋回処理を終了する。
【0060】
図8は、第一実施形態に係る制御装置160の第二旋回制御を示すフローチャートである。
オペレータによって開始スイッチ143SWが押下されると、制御装置160の操作信号入力部612は自動制御指示信号の入力を受け付ける。
【0061】
第二旋回を実行する場合、制御装置160は図8に示す第二旋回制御を実行する。まず、計測データ取得部611は積込機械100の方位の計測データを取得する(ステップS21)。移動制御部616は、ストレージ650から旋回体120の目標方位(積込対象Tの側方を向く方位)、目標姿勢、積込対象Tの壁高さHt、および干渉回避方位を読み出す(ステップS22)。角度特定部615は、ステップS21で特定した旋回体120の向く方位ならびにステップS22で読み出した目標方位および干渉回避方位に基づいて、目標旋回角度θ0および第二干渉回避角度θ2を特定する(ステップS23)。
【0062】
次に、計測データ取得部611は積込機械100の位置および方位、傾斜角、旋回速度および各シリンダのシリンダ長の計測データを取得し、作業機位置特定部613は計測データに基づいて作業機130の姿勢を特定する(ステップS24)。作業機位置特定部613はアーム132の先端Pの位置、バケット133の最下点Qの位置およびバケット133の姿勢を特定する(ステップS25)。
【0063】
移動制御部616は、移動制御部616は、作業機130が旋回中であるか否かを判定する(ステップS26)。移動制御部616は、例えば旋回体120の旋回速度が所定速度以上である場合に旋回中であると判定する。作業機130が旋回中でない場合(ステップS26:NO)、移動制御部616は、ステップS25で特定した最下点Qの高さがステップS22で読み出した壁高さHtより高いか否かを判定する(ステップS27)。最下点Qの高さが壁高さHtより低い場合(ステップS27:NO)、移動制御部616はブーム131を上昇させる自動操作信号を生成する(ステップS27)。なお、他の実施形態においては、ブーム131に代えて、アーム132またはバケット133を上昇させる自動操作信号を生成してもよいし、これらを複合操作するものであってもよい。このとき、移動制御部616は旋回体120を旋回させる自動操作信号を生成しない。その後、制御装置160は処理をステップS24に戻す。
【0064】
他方、最下点Qの高さが壁高さHtより高い場合(ステップS27:YES)、移動制御部616は旋回体120を旋回させる自動操作信号を生成する(ステップS29)。当該自動操作信号は、上方からの平面視において旋回体120を積込対象Tの内側から外側へ向けて旋回させるための操作信号である。
【0065】
他方、作業機130が旋回中である場合(ステップS26:YES)、移動制御部616は、ステップS24で特定した作業機130の旋回速度の計測データに基づいて、旋回の操作信号を停止した場合に、惰性による旋回によって作業機130の旋回角度が目標旋回角度に到達するか否かを判定する(ステップS30)。惰性による旋回では作業機130の旋回角度が目標旋回角度に到達しない場合(ステップS30:NO)、移動制御部616は旋回体120を旋回させる自動操作信号を生成する(ステップS29)。惰性による旋回で作業機130の旋回角度が目標旋回角度に到達する場合(ステップS30:YES)、移動制御部616は旋回体120を旋回させる自動操作信号を生成しない。
【0066】
次に、移動制御部616は自動制御開始時から現時点までの旋回体120の旋回角度が第二干渉回避角度θ2未満であるか否かを判定する(ステップS31)。旋回角度が第二干渉回避角度θ2未満である場合(ステップS31:YES)、移動制御部616は作業機130の姿勢を維持する操作信号(中立信号)を生成する。
【0067】
ステップS31において、旋回角度が第二干渉回避角度θ2以上である場合(ステップS31:NO)、移動制御部616は、ステップS24で特定された作業機130の姿勢が、ステップS22で特定した目標姿勢と近似するか否かを判定する(ステップS32)。作業機130の姿勢が目標姿勢と近似していない場合(ステップS32:NO)、移動制御部616は、ブーム131、アーム132及びバケット133を目標姿勢に近づける自動操作信号を生成する(ステップS33)。作業機130の姿勢が目標姿勢と近似している場合(ステップS32:YES)、移動制御部616は作業機130の姿勢を維持する中立信号を生成する。
【0068】
そして、操作信号出力部617は、生成された自動操作信号をコントロールバルブ123に出力する(ステップS34)。移動制御部616は、旋回角度が目標旋回角度に到達し、かつ作業機130の姿勢が目標姿勢になっているか否かを判定する(ステップS35)。旋回角度が目標旋回角度に到達せず、または作業機130の姿勢が目標姿勢になっていない場合(ステップS35:NO)、制御装置160は処理をステップS24に戻す。他方、旋回角度が目標旋回角度に到達し、かつ作業機130の姿勢が目標姿勢になった場合(ステップS35:YES)、自動制御処理を終了する。
【0069】
《作用・効果》
このように、第一実施形態に係る制御装置160は、バケット133を積込対象Tの上から積込対象Tの側方へ移動させる第二旋回に係る自動制御の開始時に、バケット133の最下点の高さが積込対象Tの壁の高さより高い場合に、上方からの平面視において旋回体120を積込対象Tの内側から外側へ向けて旋回させる自動操作信号を出力する。他方、自動制御の開始時に最下点の高さが前記壁の高さより低い場合には、上方からの平面視において旋回体120を積込対象Tの内側から外側へ向けて旋回させる自動操作信号を直ちには出力しない。これにより、オペレータが図6に示すように積込対象Tの内側にバケット133を位置させた場合にも、積込機械100の自動制御において、バケット133が積込対象Tの内壁に接触することを防ぐことができる。
【0070】
また、第一実施形態に係る制御装置160は、自動制御の開始時にバケット133の最下点の高さが積込対象Tの壁の高さより低い場合に、作業機130を上昇させる自動操作信号を出力し、最下点の高さが壁の高さより高くなった後に、旋回体120を積込対象Tの内側から外側へ向けて旋回させる自動操作信号を出力する。これにより、制御装置160は、積込機械100の自動制御において、バケット133が積込対象Tの内壁に接触させずにバケット133を積込対象Tの側方に移動させることができる。
なお、他の実施形態においては、これに限られず、開始スイッチ143SWが押下されたときに、自動制御の開始時に最下点の高さが前記壁の高さより低い場合には、第二旋回を実行せず、操作端末142にアラートを出力させるものであってもよい。アラートは、例えば警告音を発するものであってもよいし、操作端末142のディスプレイに警告画面を表示させるものであってもよい。この場合、当該アラートを確認したオペレータがバケット133を上昇させた後に再度開始スイッチ143SWを押下することで、第二旋回が実行される。
【0071】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0072】
上述した実施形態に係る制御装置160は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置160の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで制御装置160として機能するものであってもよい。このとき、制御装置160を構成する一部のコンピュータが積込機械100の内部に搭載され、他のコンピュータが積込機械100の外部に設けられてもよい。
【0073】
上述した実施形態に係る目標姿勢、目標方位、干渉回避方位および壁高さHtは、ティーチングによってストレージ650に記録されるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、ステレオカメラやLiDarなどの三次元計測装置を備えることで、積込対象Tの位置および形状を認識し、これに基づいて目標姿勢、目標方位、干渉回避方位および壁高さHtを特定してもよい。つまり、基準特定部614は、目標姿勢、目標方位、干渉回避方位および壁高さHtを、積込対象Tの形状データに基づいて特定してもよい。また、他の実施形態においては、積込対象Tとの通信によって積込対象Tの位置、姿勢および方位を受信し、これと既知の積込対象Tの形状とに基づいて目標姿勢、目標方位、干渉回避方位および壁高さHtを特定してもよい。また、他の実施形態において、積込対象Tが管制装置との通信によって自動走行する場合、管制装置から積込対象Tの位置および方位を受信し、これと既知の積込対象Tの形状とに基づいて目標姿勢、目標方位、干渉回避方位および壁高さHtを特定してもよい。また、他の実施形態においては、基準特定部614は、目標姿勢、目標方位、干渉回避方位および壁高さHtを、オペレータによる操作端末142への入力に基づいて特定してもよい。また、他の実施形態に係る積込機械100は、目標姿勢、目標方位および干渉回避方位の特定と、壁高さHtの特定を別途に行ってもよい。つまり、他の実施形態においては、制御装置160は、目標姿勢、目標方位および干渉回避方位の特定を特定する第一基準特定部と、壁高さHtを特定する第二基準特定部とを別個に備えてもよい。例えば、積込機械100は、目標姿勢、目標方位および干渉回避方位をティーチングによって特定し、壁高さHtをオペレータの入力によって特定してもよい。また、オペレータは積込機械の車種を入力することで、積込対象の高さである壁高さを特定してもよい。つまり、制御装置160は、予め車種と壁高さとを予め関連付けたテーブルから、入力された車種に関連付けられた高さを読み出すことで、壁高さHtを特定する。
【0074】
また、上述した実施形態に係る制御装置160は、作業機130の姿勢を計測するセンサの計測データに基づいて作業機130の姿勢を特定するがこれに限られない。例えば、他の実施形態において、積込機械100がステレオカメラやLiDarなどの三次元計測装置を備える場合、当該三次元計測装置の計測データに基づいて作業機130の姿勢、特にバケット133の最下点Qの高さを認識し、これに基づいて自動制御を行ってもよい。
【0075】
上述した実施形態に係る制御装置160は、傾斜計測器152が計測した旋回体120の角速度を積分することで、旋回体120の角度を算出するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、位置方位演算器151が計測する方位の差分に基づいて旋回体120の角度を算出してもよい。また他の実施形態においては、旋回モータ124に設けた回転角センサの検出値を用いて旋回体120の角度を特定してもよい。
【0076】
上述した実施形態に係る制御装置160は、旋回角度と干渉回避角度の比較に基づいて自動制御を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、バケット133の位置と積込対象Tの外形のうち旋回体120の旋回方向の最も後方の点との比較に基づいて自動制御を行ってもよい。例えば、他の実施形態に係る制御装置160は、バケット133が旋回体120の旋回方向の最も後方の点の近傍の領域に位置するように旋回開始タイミングを調整してよい。
また他の実施形態においては、制御装置160は、バケット133が予め指定された軌跡を通るように、各リンク部品および旋回体120の自動制御信号を生成してもよい。軌跡は、例えば所定の曲線関数とのフィッティングによって決定されてもよいし、手動操作によるティーチングによって決定されてもよい。軌跡は、バケット133の姿勢、各リンク部品および旋回体120の姿勢、または操作信号を、時系列に並べたものによって表されてよい。
【0077】
上述した実施形態に係る積込機械100は、オペレータが運転室140に搭乗して直接操作するものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る積込機械100は、遠隔操作により動作するものであってもよい。すなわち、他の実施形態では、遠隔に設けられた操作装置143から通信によって操作信号が制御装置160に伝送されてよい。また、制御装置160は、遠隔地に設けられたコンピュータによって構成されてもよいし、積込機械100と遠隔地とのそれぞれに設けられたコンピュータに機能を分担させた制御システムで構成されてもよい。
【0078】
上述した実施形態に係る自動制御は、バケット133を掘削完了時の位置から、積込点へ移動させる第一旋回と、次の掘削を開始するための位置へ移動させる第二旋回とをそれぞれ実行するものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、制御装置160は、第一旋回、排土および第二旋回の一連の動作を自動実行する全自動制御を行うものであってもよい。また例えば、他の実施形態においては、制御装置160は、第一旋回を実行せず、第二旋回のみを実行するものであってもよい。
また、上述した実施形態に係る自動制御は、オペレータによる開始スイッチ143SWの押下をトリガに開始されるものであるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、制御装置160が自動制御の開始タイミングを自律的に判定し、開始スイッチ143SWの押下によらず自動制御を開始するものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
100…積込機械 110…走行体 111…無限軌道 112…走行モータ 120…旋回体 121…エンジン 122…油圧ポンプ 123…コントロールバルブ 124…旋回モータ 130…作業機 131…ブーム 131C…ブームシリンダ 132…アーム 132C…アームシリンダ 133…バケット 133C…バケットシリンダ 140…運転室 141…運転席 142…操作端末 143…操作装置 151…位置方位演算器 152…傾斜計測器 153…ブームストロークセンサ 154…アームストロークセンサ 155…バケットストロークセンサ 160…制御装置 610…プロセッサ 611…計測データ取得部 612…操作信号入力部 613…作業機位置特定部 614…基準特定部 615…角度特定部 616…移動制御部 617…操作信号出力部 630…メインメモリ 650…ストレージ 670…インタフェース T…積込対象
図1
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