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特開2024-73919溝付き柱材用取り付け部材及びその締結具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073919
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】溝付き柱材用取り付け部材及びその締結具
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/10 20060101AFI20240523BHJP
   F16B 21/04 20060101ALI20240523BHJP
   E05D 3/02 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
F16B5/10 L
F16B5/10 D
F16B21/04 H
E05D3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184905
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】峯村 知孝
【テーマコード(参考)】
2E030
3J001
3J037
【Fターム(参考)】
2E030AB01
3J001FA18
3J001GB01
3J001GC02
3J001GC14
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA10
3J001JB02
3J001JB13
3J001JD16
3J001JD21
3J001KA19
3J037AA01
3J037BB02
3J037CA01
(57)【要約】
【課題】溝付き柱材へ迅速に固着することができる取り付け部材を提供する。
【解決手段】取り付け部材1は、段付き貫通孔21を有する本体2と、貫通孔21を介してナット4に螺挿され抜け止めされるボルト3と、ボルト頭部31と貫通孔21の段部211との間に介挿されるばね5とを具備する。ナット4は、溝102に沿う挿入角度位置で起立面223,233によりボルト3の逆転方向に回り止めされ、ばね5を蓄勢しつつ着座面24上にあり、溝に直交する締め付け角度位置で起立面224,234によりボルト3の正転方向に回り止めされ、着座面25上にある。ナット4は、締め付け角度位置で溝102の両縁部102bの内側面に弾性的に圧接され、取り付け部材1が柱材101に位置調整可能に仮止めされる。位置調整後、ボルトを増し締めすれば、取り付け部材1が柱材101に固着される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の開口と当該開口の延長方向に対して左右両縁部の下の内側空間が当該開口の幅より大きく左右に広がっている断面形状である溝を有する柱材に固定される取り付け部材であって、
段付きの貫通孔を有する本体と、前記溝内に設置され当該溝の開口を通過可能な挿入角度位置と当該開口を通過不能な締め付け角度位置との間を前記溝内においてねじ孔の軸周りに回転可能なナットと、前記貫通孔を介して前記ナットに螺挿され先端部が前記ナットから抜け止めされるボルトと、当該ボルトの頭部と前記貫通孔の段部との間に介挿され当該ボルトを前記本体に対して当該頭部側へ引き上げるように付勢するばねとを具備し、
前記本体は、前記ナットを前記挿入角度位置において前記ボルトの逆転方向に回り止めする第1の回り止め起立面と、前記ナットを前記締め付け角度位置において前記ボルトの正転方向に回り止めする第2の回り止め起立面と、前記挿入角度位置において前記ばねを蓄勢するように前記ナットを配置する第1の着座面と、前記締め付け角度位置において前記ばねをわずかに放勢するように前記ナットを配置する第2の着座面と、前記第1の着座面と前記第2の着座面との間に形成され前記ボルトの正転時に前記ナットが前記挿入角度位置から前記締め付け角度位置まで共回りするようにナットを摺動させる斜面部とを具備し、
前記斜面部は、前記ナットが前記挿入角度位置から前記締め付け角度位置まで共回りする間、漸次前記ばねを放勢し、当該締め付け角度位置において前記ナットが前記溝の両縁部の内側面に弾性的に圧接されるように設けられ、
それによって、前記ボルトの正回転初期において、前記本体が前記ナットにより前記柱材に対して位置調整可能に仮止めされることを特徴とする溝付き柱材用取り付け部材。
【請求項2】
前記本体は、前記ナットが前記溝に挿入されるとき、当該溝に嵌合して当該柱材に対する当該本体の取り付け位置を規定する突条を具備することを特徴とする請求項1に記載の溝付き柱材用取り付け部材。
【請求項3】
前記取り付け部材が、蝶番であることを特徴とする請求項1又は2に記載の溝付き柱材用取り付け部材。
【請求項4】
前記取り付け部材が、直交方向に当接配置された第1および第2の2つの前記柱材の当接する内角部に固着され、当該第1および第2の2つの柱材を直交方向に締結するブラケットであることを特徴とする請求項1又は2に記載の溝付き柱材用取り付け部材。
【請求項5】
請求項1に記載の柱材に固定される取り付け部材を当該柱材に固着するための締結具であって、
前記取り付け部材の表面から裏面に貫通する貫通孔に軸周り回転不能に嵌合する嵌合部と、当該嵌合部が前記貫通孔に嵌合されたとき当該貫通孔の表面側周縁に当接する鍔部と、当該鍔部と前記嵌合部とを貫通し当該鍔部側に大径の段付き貫通孔とを具備する締結具本体と、
前記嵌合部が前記貫通孔に嵌合されたとき前記柱材の溝内には配置され、当該溝の開口を通過可能な挿入角度位置と当該開口を通過不能な締め付け角度位置との間を前記溝内においてねじ孔の軸周りに回転可能なナットと、
前記段付き貫通孔を介して前記ナットに螺挿され、先端部が前記ナットから抜け止めされるボルトと、
前記ボルトの頭部と前記段付き貫通孔の段部との間に介挿され、当該ボルトを前記締結具本体に対して当該頭部側へ引き上げるように付勢するばねとを具備し、
前記締結具本体は、前記ナットを前記挿入角度位置において前記ボルトの逆転方向に回り止めする第1の回り止め起立面と、前記ボルトの締め付け方向回転時に前記ナットを前記締め付け角度位置において回り止めする第2の回り止め起立面と、当該第2の回り止め起立面と前記第1の回り止め起立面との間に形成され前記ボルトの締め付け方向回転時に前記ナットが前記挿入角度位置から前記締め付け角度位置まで共回りするように当該ナットを摺動させる斜面部とを具備し、
前記斜面部は、前記ナットが前記挿入角度位置から前記締め付け角度位置まで共回りする間、漸次前記ばねを圧縮し、当該締め付け角度位置において前記ナットが前記溝の両縁部の内側面に弾性的に圧接されるように設けられ、
それによって、前記ボルトの締め付け方向の回転初期において、前記取り付け部材が前記ナットにより前記柱材に対して位置調整可能に仮止めされることを特徴とする締結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面概略T字状の溝を備えた柱材に取り付けられる部材と、そのような取り付け部材を溝付き柱材に取り付けるための締結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四角柱状の柱材であって、4つの側面のそれぞれに、長さ方向に延びる断面概略T字状の溝を備えた溝付き柱材が、筐体やブース等を構築する際のフレーム材として多用されている。このような柱材を互いに結合するための部材や、柱材に取り付けられる蝶番、取手、機器等は、溝内に嵌め込まれるナットにボルトを螺合することによって固定される。
例えば、二つの柱材を直交させた状態で結合する締結具として、二つの柱材の角部に設置されるブラケットが知られている(例えば特許文献1)。このブラケットは、二つの柱材に対してボルト、ナット、ワッシャを使用して固定される。固定時には、柱材の溝内にナットを挿入し、ブラケットにワッシャを装着し、ワッシャとブラケットの貫通孔を介して、ボルトを溝内のナットに螺合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-84993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような溝付き柱材への部材の固着方法によるときは、柱材の溝内へのナットの挿入、ブラケットへのワッシャ、ボルトの装着を個別に行う必要があるし、ボルトを溝内のナットに螺合する際の位置合わせに手間取るという課題がある。
従って、本発明は、ボルト、ナットが一体に付属していて溝付き柱材へ迅速に固着することができる取り付け部材と、ボルト、ナットが付属していない取り付け部材を溝付き柱材へ迅速に固着することができる締結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の説明において添付図面の符号を参照するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の溝102付き柱材101用の取り付け部材1は、段部211付きの貫通孔21を有する本体2と、溝内102に配置され当該溝102の開口102aを通過可能な挿入角度位置と当該開口102aを通過不能な締め付け角度位置との間を溝102内においてねじ孔41の軸周りに回転可能なナット4と、貫通孔21を介してナット4に螺挿され、先端部がナット4から抜け止めされるボルト3と、ボルト3の頭部31と貫通孔21の段部211との間に介挿され当該ボルト3を本体2に対して頭部31側へ引き上げるように付勢するばね5とを具備する。
本体2は、ナット4を挿入角度位置においてボルト3の逆転方向に回り止めする第1の回り止め起立面223,233と、ナット4を締め付け角度位置においてボルト3の正転方向に回り止めする第2の回り止め起立面224,234と、挿入角度位置においてばね5を蓄勢するようにナット4を配置する第1の着座面24と、締め付け角度位置においてばね5をわずかに放勢するようにナット4を配置する第2の着座面25と、第1の着座面24と第2の着座面25との間に形成され、ボルト3の正転時にナット4が挿入角度位置から締め付け角度位置まで共回りするようにナット4を摺動させる斜面部222,232とを具備する。斜面部222,232は、ナット4が挿入角度位置から締め付け角度位置まで共回りする間、漸次ばね5を放勢し、締め付け角度位置においてナット4が溝102の両縁部102bの内側面に弾性的に圧接されるように設けられる。それによって、ボルト3の正転初期において、本体2がナット4により柱材101に対して位置調整可能に弾性的に仮止めされる。
また、本発明の締結具11は、溝付き柱材101に固定される取り付け部材201を柱材101に固着するための締結具であり、締結具本体12、ナット14、ボルト13、ばね18を具備する。
締結具本体12は、取り付け部材201の表面から裏面に貫通する貫通孔202に軸周り回転不能に嵌合する嵌合部15と、嵌合部15が貫通孔202に嵌合されたとき貫通孔202の表面側周縁に当接する鍔部16と、鍔部16と嵌合部15とを貫通し鍔部16側に大径の段付き貫通孔17とを具備する。
ナット14は、嵌合部15が貫通孔202に嵌合されたとき柱材101の溝102内に配置され、溝102の開口102aを通過可能な挿入角度位置と開口102aを通過不能な締め付け角度位置との間を溝102内においてねじ孔141の軸周りに回転可能である。
ボルト13は、段付き貫通孔17を介してナット14に螺挿され先端部がナット14から抜け止めされる。
ばね18は、ボルト13の頭部131と段付き貫通孔17の段部17aとの間に介挿され、ボルト13を締結具本体12に対して頭部131側へ引き上げるように付勢する。
締結具本体12は、第1及び第2の回り止め起立面151a,152a・151b,152bと、両起立面間の斜面部157とを具備する。
第1の回り止め起立面151a,152aは、ナット14を挿入角度位置においてボルト13の逆転方向に回り止めする。第2の回り止め起立面151b,152bは、ボルト13の正転時にナット14を締め付け角度位置において回り止めする。
斜面部157は、第2の回り止め起立面151b,152bと第1の回り止め起立面151a,152aとの間に形成されボルト13の正転時にナット14が挿入角度位置から締め付け角度位置まで共回りするようにナット14を摺動させる。また、斜面部157は、ナット14が挿入角度位置から締め付け角度位置まで共回りする間、漸次ばね18を圧縮し、締め付け角度位置においてナット14が溝102の両縁部102bの内側面に弾性的に圧接されるように設けられ、それによって、ボルト15の正転初期において、取り付け部材201がナット14により柱材101に対して位置調整可能に弾性的に仮止めされる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の溝付き柱材101用取り付け部材1によれば、一体に付属するナット4を挿入角度位置で溝付き柱材101の溝内102へ挿入し、同じく一体に付属するボルト3をわずかに締め付けると、取り付け部材1を柱材101へ仮止めすることができ、仮止め状態で、取り付け部材1を柱材101の適正な取り付け位置へ移動させた後、ボルト3の増し締めにより、取り付け部材1を柱材101へ迅速に固着することができる。
本発明の締結具11によれば、取り付け部材201の貫通孔202に締結具本体12を軸周り回転不能に嵌合させて、締結具本体12に一体に付属するナット14を挿入角度位置で溝付き柱材101の溝102内へ挿入し、同じく締結具本体12に一体に付属するボルト13をわずかに締め付けると、取り付け部材201を柱材101へ仮止めすることができ、仮止め状態で、取り付け部材201を柱材101の適正な取り付け位置へ移動させた後、ボルト13の増し締めにより、取り付け部材201を柱材101へ迅速に固着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明を適用した取り付け部材である蝶番と、これを取り付ける溝付き柱材を示す斜視図である。
図2図1の蝶番を示す背面側の斜視図であり、ナットは挿入位置に配置されている。
図3図1の蝶番の背面側の一部の拡大斜視図であり、(A)はナットを締め付け位置に配置した状態、(B)はボルト、ナットを除去した状態を示す。
図4図1の蝶番の背面図であり、左側の翼板のナットは挿入位置にあり、右側の翼板のナットは締め付け位置にある。
図5図1の蝶番の一部の拡大背面図である。
図6図1の蝶番のボルト、ナットを除去した状態の一部の拡大背面図である。
図7図1の蝶番の一部の拡大断面図であり、(A)はナットが挿入位置にある状態、(B)はナットが締め付け位置にある状態を示す。
図8A図1の蝶番の溝付き柱材への取り付け過程を示す一部の断面図であり、柱材の溝へナットを挿入した状態である。
図8B図1の蝶番の溝付き柱材への取り付け過程を示す一部の断面図であり、ボルトを締めて溝付き柱材へ仮止めした状態である。
図8C図1の蝶番の溝付き柱材への取り付け過程を示す一部の断面図であり、ボルトを増し締めして蝶番を溝付き柱材へ固着した状態である。
図9】本発明を適用したブラケットを示すもので、溝付き柱材への取り付け状態を示す斜視図である。
図10図9のブラケットの裏面側から見た斜視図である。
図11図9のブラケットにおけるボルト、ナットを除去した状態の裏面側から見た斜視図である。
図12図9のブラケットの正面図である。
図13図9のブラケットの側面図であり、(A)はナットを挿入位置に配置した状態、(B)はナットを締め付け位置に配置した状態を示す。
図14図9のブラケットの断面図である。
図15】本発明を適用した締結具を用いて取り付け部材である板材を溝付き柱材へ取り付ける状態を示すもので、(A)分解斜視図、(B)は取り付け後の斜視図である。
図16図15の締結具の裏側から見た斜視図であり、(A)はナットが挿入位置にある状態、(B)はナットが締め付け位置にある状態を示す。
図17】(A)は図15の締結具の正面図、(B)はボルトナットを除去した状態の締結具の正面図である。
図18図15の締結具の背面図であり、(A)はナットを挿入位置に配置した状態、(B)はナットを締め付け位置に配置した状態、(C)はボルト、ナットを除去した状態をそれぞれ示す。
図19図15の締結具で取り付け部材を柱材へ固着した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
本発明が適用される取り付け部材は、溝付き柱材の溝内に配置されたナットにボルトを螺合させて固着される部材であって、蝶番、取手、ブラケット、その他、用途を問わず、各種の部材が含まれる。溝付き柱材とは、表面の開口と、この開口の延長方向に対して左右両縁部の裏の内側空間が開口の幅より大きく左右に広がっている断面形状の溝を有する柱材であり、典型的には、図1に示す四角柱状の柱材101が含まれる。柱材101は、4つの側面のそれぞれに、長さ方向に延びる断面概略T字状の溝102を備えた柱材である。
【0009】
柱材101の溝102は、表面の開口102aと、この開口102aの延長方向に対して左右両縁部102bの裏の内側空間102cが開口102aの幅より大きく左右に広がっている断面形状である。
【0010】
図1ないし図8は、本発明が適用される取り付け部材1が蝶番である実施形態を示す。
【0011】
蝶番1は、その本体である翼板2に一体に組み付けられたボルト3と、このボルト3が螺合されるナット4とを具備する。
【0012】
翼板2は、表面(正面)側に大径で、裏面(背面)側に小径となる段部211(図7)付きの貫通孔21と、裏面側に形成された平行2条の突条22,23を具備する。突条22,23は、それの外側面間の幅寸法が、柱材101の溝102の開口102aの幅寸法とほぼ同一で、開口102aに嵌合して蝶番1を位置決めするようになっている。
【0013】
突条22,23は、貫通孔21に対応する部位に、切欠部221,231を有する。切欠部221,231は、図6によく示すように、突条22,23の延長方向に互い違いに変位し、一部が対面するように設けられる。対面部間に連続する背面視矩形状の平面部である第2の着座面25は、突条22,23間の底面部である第1の着座面24より低く形成される。切欠部221,231の、突条22,23に連続する、背面視長方形状の斜面部222,232は、第1の着座面24の高さから第2の着座面25の高さに下がる斜面に形成される。貫通孔21は、第2の着座面25の中央に開口している。
【0014】
図7によく示すように、ボルト3は、それの頭部31と貫通孔21の段部211との間にばね5を介在させて、貫通孔21に挿通され、翼板2の裏面側においてナット4に螺合され、先端部において抜け止めねじ32でナット4に対して抜け止めされる。
【0015】
ナット4は、ねじ孔41が貫通する円筒部42と、円筒部42の概略対向位置から半径方向外方へ延びる一対の係合部43とを具備し、突条22,23の切欠部221,231内に配置される。ナット4は、溝102の内側空間102c内においてねじ孔41の軸周りに90°の範囲で回転自在であり、係合部43が溝102の延長方向に沿う方向となる回転角度位置(挿入角度位置)に配置されたとき(図2,8A)、開口102aを通過可能であり、係合部43が溝102の延長方向に対して直交する方向となる回転角度位置(締め付け角度位置)に配置されたとき(図3,8B)、開口102aを通過不能となる。
【0016】
ナット4の回転範囲は、第1及び第2の回り止め起立面223,224・233,234によって規定される。第1及び第2の回り止め起立面223,224・233,234は、突条22,23の切欠部221,231の端部にそれぞれ形成される。すなわち、第1の回り止め起立面223,233は、突条22,23の切欠端部における突条22,23の延長方向に沿う内側面であり、第2の回り止め起立面224,234は、突条22,23の切欠端部おける突条22,23の延長方向と直交する端面である。
【0017】
第1の回り止め起立面223,233は、ナット4をボルト3の逆転方向に回り止めして挿入角度位置(図2,8A)に止め、第2の回り止め起立面224,234は、ナット4をボルト3の正転方向に回り止めして締め付け角度位置(図3,8B)に止める。
【0018】
ナット4が挿入角度位置(図2,8A)にあるとき、係合部43は、突条22,23間の底面部である第1の着座面24上に乗り、ばね5を圧縮し、ボルト3、ナット4間には、ばね力が作用している。この状態からボルト3が正方向に回転すると、ナット4は正方向に共回りし、係合部43が、ばね5をわずかに放勢させながら、斜面部222,232を降りて、第2の回り止め起立面224,234で止まり、第2の着座面25上に配置される。この状態においても、ばね5は蓄勢されているので、ボルト3が逆方向に回転すると、ナット4も共回りし、漸次ばねを圧縮しつつ、斜面部222,232を上って、第1の回り止め起立面223,233で止まり、挿入角度位置(図2,8A)に戻ることができる。
【0019】
蝶番1を柱材101に取り付ける場合には、ナット4が挿入角度位置(図2,8A)にある状態で、翼板2の背面側の突条22,23を溝102に嵌合させる。
【0020】
次いで、ボルト3を正回転させると、ナット4は、これと共回りし、第1の着座面24から斜面部222,232を経て締め付け角度位置に至り、第2の回り止め起立面224,234に当接して停止する(図8B)。ここで、ナット4は、ばね5で溝102の両縁部102aの裏面に弾性的に圧接される。この状態で、蝶番1は柱材101に仮止めされるので、蝶番1を溝102に沿って適宜移動させて位置調整することができる。
【0021】
取り付け位置が定まったら、ボルト3をさらに正転させると、ナット4は締め付け位置においてばね5を圧縮してボルト3の頭部31側へ引き上げられ、頭部31と係合部43との間で縁部102aを挟持する(図8C)。これで、蝶番1が柱材101に固定される。
【0022】
従来は、予め溝102内に挿入されたナットのねじ孔にボルトの先端を位置合わせしてボルトを締め付けるが、この際、ナットが取り付け部材に隠れて位置合わせが手間取る。本発明の取り付け部材1では、ナットの溝102内への挿入、ボルト、ナットの位置合わせの操作が不要で、取り付け作業の効率が著しく向上する。
【0023】
図9ないし図14には、柱材101への取り付け部材1が、柱材101の結合用のブラケットである実施形態を示す。なお、先の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して説明する。
【0024】
図9によく示すように、ブラケット1は、直交方向に当接配置された第1および第2の2つの柱材101の当接する内角部に固着され、当該第1および第2の2つの柱材101を直交方向に締結するものである。
図14によく示すように、ブラケット1は、断面概略L字ブロック状の本体2に一体に組み付けられたボルト3と、このボルト3が螺合されるナット4とを具備する。
【0025】
図10,11,13,14によく示すように、本体2は、表面(正面)側に大径で、裏面(背面)側に小径となる段部211(図14)付きの貫通孔21と、裏面側に形成された平行2条の突条22,23(図10,11,13)を具備する。突条22,23は、それの外側面間の幅寸法が、柱材101の溝102の開口102aの幅寸法とほぼ同一で、開口102aに嵌合してブラケット1を位置決めするようになっている(図9)。
【0026】
突条22,23は、貫通孔21に対応する部位に、切欠部221,231を有する。切欠部221,231は、図11,13によく示すように、突条22,23の延長方向に互い違いに変位し、一部が対面するように設けられる。対面部間に連続する背面視矩形状の平面部である第2の着座面25は、突条22,23間の底面部である第1の着座面24より低く形成される。
【0027】
切欠部221,231の、突条22,23に連続する背面視長方形状の斜面部222,232は、第1の着座面24の高さから第2の着座面25の高さに下がる斜面に形成される。図11によく示すように、貫通孔21は、第2の着座面25の中央に開口している。
【0028】
図14によく示すように、ボルト3は、それの頭部31と貫通孔21の段部211との間にばね5を介在させて、貫通孔21に挿通され、本体2の裏面側においてナット4に螺合され、先端部において抜け止めねじ32でナット4に対して抜け止めされる。
【0029】
ナット4は、ねじ孔41が貫通する円筒部42(図10)と、円筒部42の概略対向位置から半径方向外方へ延びる一対の係合部43とを具備し、突条22,23の切欠部221,231内に配置される。ナット4は、溝102の内側空間102c内においてねじ孔41(図14)の軸周りに概略90°の範囲で回転自在であり、係合部43が溝102の延長方向に沿う方向となる回転角度位置(挿入角度位置)に配置されたとき(図13(A))、柱材101の開口102aを通過可能であり、係合部43が溝102の延長方向に対して直交する方向となる回転角度位置(締め付け角度位置)に配置されたとき(図13(B))、開口102aを通過不能となる。
【0030】
ナット4の回転範囲は、第1及び第2の回り止め起立面223,224・233,234によって規定される。第1及び第2の回り止め起立面223,224・233,234は、突条22,23の切欠部221,231の端部にそれぞれ形成される。すなわち、第1の回り止め起立面223,233は、突条22,23の切欠端部における突条22,23の延長方向に沿う内側面であり、第2の回り止め起立面224,234は、突条22,23の切欠端部おける突条22,23の延長方向と直交する端面である。
【0031】
第1の回り止め起立面223,233は、ナット4をボルト3の逆転方向に回り止めして挿入角度位置(図13(A))に止め、第2の回り止め起立面224,234は、ナット4をボルト3の正転方向に回り止めして締め付け角度位置(図13(B))に止める。
【0032】
ナット4が挿入角度位置(図13(A))にあるとき、係合部43は、突条22,23間の底面部である第1の着座面24上に乗り、ばね5を圧縮し、ボルト3、ナット4間には、ばね力が作用している。この状態からボルト3が正方向に回転すると、ナット4は正方向に共回りし、係合部43が、ばね5をわずかに放勢させながら、斜面部222,232を降りて、第2の回り止め起立面224,234で止まり、第2の着座面25上に配置される(図13(B))。この状態においても、ばね5は蓄勢されているので、ボルト3が逆方向に回転すると、ナット4も共回りし、漸次ばねを圧縮しつつ、斜面部222,232を上って、第1の回り止め起立面223,233で止まり、挿入角度位置(図13(A))に戻ることができる。
【0033】
ブラケット1を柱材101に取り付ける手順は、先の実施形態の場合とほぼ同等であり、2つの柱材101同士の結合作業を迅速に行うことができる。
【0034】
図15ないし図19には、本発明を締結具11に適用した実施形態を示す。締結具11は、柱材101に固定される取り付け部材201を柱材101に固着するためのものである。取り付け部材201は、図15(A)に示すように、表面から裏面に貫通する貫通孔202を具備する。図示の実施形態において貫通孔202は、短径寸法が、柱材101の溝102の開口102aの幅に等しい長円形に形成される。
【0035】
締結具11は、締結具本体12と、これに一体に組み付けられたボルト13とナット14とを具備する。
【0036】
締結具本体12は、取り付け部材201の貫通孔202に軸周り回転不能に嵌合する嵌合部15と、嵌合部15が貫通孔202に嵌合されたとき貫通孔202の表面側周縁に当接する鍔部16と、鍔部16と嵌合部15とを貫通する貫通孔17とを具備する。貫通孔17は、鍔部16側に大径で、段部17aを介して嵌合部15側に小径となる段付き貫通孔である。
【0037】
嵌合部15は、図示の実施形態において、取り付け部材201の貫通孔202と同形の長円形の断面形状であり、貫通孔202へ嵌合されたとき、先端側が取り付け部材201の裏面側へ突出し、かつその突出部が柱材101の溝102に嵌合される寸法に形成される。嵌合部15は、先端面側に平行2条の突条151,152を具備する。突条151,152は、それの外側面間の幅寸法が、柱材101の溝102の開口102aの幅寸法とほぼ同一で、開口102aに嵌合して取り付け部材201を位置決めするようになっている。
【0038】
突条151,152は、切欠部153,154を有する。切欠部153,154は、図18によく示すように、突条151,152の延長方向に互い違いに変位し、一部が対面するように設けられる。対面部間に連続する背面視矩形状の平面部である第2の着座面156は、突条151,152の内側の底面部である第1の着座面155より低く形成される。第1の着座面155と第2の着座面156とに連続する斜面部157は、第1の着座面155の高さから第2の着座面156の高さに下がる斜面に形成される。図11によく示すように、貫通孔17は、第2の着座面156の中央に開口している。
【0039】
図19によく示すように、ボルト13は、それの頭部131と貫通孔17の段部17aとの間にばね18を介在させて、貫通孔17に挿通され、本体12の裏面側においてナット14に螺合され、先端部において抜け止めねじ132でナット4に対して抜け止めされる。
【0040】
ナット14は、ねじ孔141が貫通する円筒部142と、円筒部142の概略対向位置から半径方向外方へ延びる一対の係合部143とを具備し、突条151,152の切欠部153,154内に配置される。ナット14は、溝102の内側空間102c内においてねじ孔141の軸周りに概略90°の範囲で回転自在であり、係合部143が溝102の延長方向に沿う方向となる回転角度位置(挿入角度位置)に配置されたとき(図 18(A))、開口102aを通過可能であり、係合部143が溝102の延長方向に対して直交する方向となる回転角度位置(締め付け角度位置)に配置されたとき(図18(B))、開口102aを通過不能となる。
【0041】
ナット14の回転範囲は、第1及び第2の回り止め起立面151a,151b・152a,152bによって規定される。第1及び第2の回り止め起立面151a,151b・152a,152bは、突条151,152の端部にそれぞれ形成される。すなわち、第1の回り止め起立面151a,152aは、突条151,152の端部における突条151,152の延長方向に沿う内側面であり、第2の回り止め起立面151b,152bは、突条151,152の切欠端部おける突条151,152の延長方向と直交する端面である。
【0042】
第1の回り止め起立面151a,152aは、ナット14をボルト13の逆転方向に回り止めして挿入角度位置(図18(A))に止め、第2の回り止め起立面151b,152bは、ナット14をボルト3の正転方向に回り止めして締め付け角度位置(図18(B))に止める。
【0043】
ナット14が挿入角度位置(図18(A))にあるとき、係合部143は、第1の着座面155上に乗り、ばね18を圧縮し、ボルト13、ナット14間には、ばね力が作用している。この状態からボルト13が正方向に回転すると、ナット14は正方向に共回りし、係合部143が、ばね18をわずかに放勢させながら、斜面部15115132を降りて、第2の回り止め起立面151b,152bで止まり、第2の着座面25上に配置される(図18(B))。この状態においても、ばね18は蓄勢されているので、ボルト13が逆方向に回転すると、ナット14も共回りし、漸次ばねを圧縮しつつ、斜面部157を上って、第1の回り止め起立面151a,152aで止まり、挿入角度位置(図18(A))に戻ることができる。
【0044】
取り付け部材201を柱材101に取り付ける場合には、例えば、取り付け部材201の貫通孔202を柱材101の溝102に重ねた状態で、ナット14が挿入角度位置(図18(A))にある状態の締結具11の嵌合部15を取り付け部材201の貫通孔202に嵌合させる。
【0045】
次いで、ボルト13を正回転させると、ナット14は、これと共回りし、第1の着座面155から斜面部157を経て締め付け角度位置(図18(B))に至り、第2の回り止め起立面151b,152bに当接して停止する。ここで、ナット14は、ばね18で溝102の両縁部102aの裏面に弾性的に圧接される。この状態で、取り付け部材201は柱材101に仮止めされるので、取り付け部材201を溝102に沿って適宜移動させて位置調整することができる。取り付け位置が定まったら、ボルト13をさらに正転させると、ナット14は締め付け位置(図18(B))においてばね18を圧縮してボルト13の頭部31側へ引き上げられ、頭部131と係合部143との間で縁部102aを挟持する。これで、取り付け部材201が柱材101に固定される。
【符号の説明】
【0046】
1 取り付け部材(蝶番・ブラケット)
2 翼板(取り付け部材本体)
21 貫通孔
211 段部
22 突条
221 切欠部
222 斜面
223 第1の回り止め起立面
224 第2の回り止め起立面151b,152bに当
23 突条
231 切欠部
232 斜面
233 第1の回り止め起立面
234 第2の回り止め起立面
24 第1の着座部
25 第2の着座部
3 ボルト
31 頭部
32 抜け止めねじ
4 ナット
41 ねじ孔
42 円筒部
43 係合部
5 ばね
11 締結具
12 締結具本体
13 ボルト
131 頭部
132 抜け止めねじ
14 ナット
141 ねじ孔
142 円筒部
143 係合部
15 嵌合部
151 突条
151a 第1の回り止め起立面
151b 第2の回り止め起立面
152 突条
152a 第1の回り止め起立面
152b 第2の回り止め起立面
153 切欠部
154 切欠部
155 第1の着座面
156 第2の着座面
16 鍔部
17 段付き貫通孔
17a 段部
18 ばね
101 溝付き柱材
102 溝
102a 開口
102b 両縁部
102c 内側空間
201 取り付け部材
202 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19