(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007392
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】温室装置
(51)【国際特許分類】
A01G 9/24 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A01G9/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023101501
(22)【出願日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】22182941.9
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503314705
【氏名又は名称】ユングハインリヒ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロールヴァ, フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】リープハーバー, マルクス
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029EC20
2B029GA10
2B029NA30
2B029RA06
(57)【要約】
【課題】内室に好適な気候条件を生じさせる。
【解決手段】ハウジング(2)と、ハウジング(2)内に配置されている内室(6)と、内室(6)において重力方向に相互に上下に配置されている複数の植物段(3)と、植物段(3)に作用する照明配置(7)と、空気供給部(8、9)と、を有する温室装置(1)が提供される。好適な気候条件を生じさせるべく、空気供給部(8、9)は、少なくとも1つの分配空間(10;10a~10d)を有し、分配空間(10;10a~10d)は、空気透過性の膜(15)により内部空間(6)に接している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)内に配置されている内室(6)と、前記内室(6)において重力方向に相互に上下に配置されている複数の植物段(3)と、前記植物段(3)に作用する照明配置(7)と、空気供給部(8、9)と、を有する温室装置(1)において、
前記空気供給部(8、9)は、少なくとも1つの分配空間(10;10a~10d)を有し、前記分配空間(10;10a~10d)は、空気透過性の膜(15)により前記内室(6)に接していることを特徴とする、温室装置(1)。
【請求項2】
空気輸送管(12)が、流れ方向において前記分配空間(10)に開口しており、前記空気輸送管(12)は、前記流れ方向に対して垂直に配向されているバッフルプレート(13)を有することを特徴とする、請求項1に記載の温室装置。
【請求項3】
前記空気輸送管(12)は前記分配空間(10)においてディフューザを有し、前記ディフューザは、特に、前記空気輸送管(12)の周囲壁に配置されている複数の開口部(14)を有し、前記開口部(14)はスリット状に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の温室装置。
【請求項4】
前記膜(15)は、主成分として繊維素材を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の温室装置。
【請求項5】
前記膜(15)は、平行な2つの縁部に肉厚部(18)を有し、前記肉厚部(18)は、前記ハウジング(2)内の平行なチャネル(19)と係合していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の温室装置。
【請求項6】
前記肉厚部(18)は、前記膜(15)に接続されている保持部材に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の温室装置。
【請求項7】
前記ハウジング(2)は、支柱(4)を有し、前記チャネル(19)は、前記支柱(4)に配置されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載の温室装置。
【請求項8】
前記分配空間(10)は、複数の分配空間セクション(10a~10d)を有し、前記複数の分配空間セクション(10a~10d)は、前記内室(6)の一面に並んで配置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の温室装置。
【請求項9】
各分配空間セクション(10a~10d)は、前記空気透過性の膜(15)の外側に空気不透過性の外壁(16)を有し、前記外壁(16)は、特に湾曲しており、好適には筒体外面の一部を形成することを特徴とする請求項8に記載の温室装置。
【請求項10】
前記分配空間(10)は、第1の分配空間であり、前記空気輸送管(12)は、第1の空気輸送管であり、第2の空気輸送管(17)を備えた第2の分配空間が、前記内室(6)の反対側の面に配置されていることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の温室装置。
【請求項11】
前記第1の空気輸送管(12)及び前記第2の空気輸送管(17)は、切替装置(20、21)を介して共通の空気搬送装置に接続されていることを特徴とする請求項10に記載の温室装置。
【請求項12】
ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)内に配置されている内室(6)と、前記内室(6)において重力方向に相互に上下に配置されている複数の植物段(3)と、前記植物段(3)に作用する照明配置(7)と、を有する温室装置(1)を換気する方法において、
空気を、前記内室(6)に接している分配空間(10;10a~10d)に供給し、空気透過性の膜を介して前記内室(6)に案内することを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記分配空間(10;10a~10d)内の前記空気をバッフルプレート(13)に向けることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記空気を前記分配空間(10;10a~10d)においてディフューザを介して分散させることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記内室(6)における空気流を時々反転させることを特徴とする、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングと、ハウジング内に配置されている内室と、内室において重力方向に相互に上下に配置されている複数の植物段と、植物段に作用する照明配置と、空気供給部と、を有する温室装置に関する。
【0002】
更に本発明は、ハウジングと、ハウジング内に配置されている内室と、内室において重力方向に相互に上下に配置されている複数の植物段と、植物段に作用する照明配置と、を有する温室装置を換気するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の温室装置では、相互に上下に位置する複数の平面において植物を栽培することができるので、比較的小さいフロア面積において、比較的高い収穫高を達成することができる。ここで、植物は支持体に配置することができる。この場合、複数の支持体がハウジング内で相互に上下に配置される。植物の成長には光が必要なので、支持体間に、又は別のやり方で照明装置が配置されている。ハウジングは、例えば、フレームを有することができ、フレームの各面はパネル又は他の平坦な部材によって覆われており、それによって、閉鎖された内室が得られ、その内室においては、植物の成長にとって好適な気候を生じさせることができ、またその気候を維持することができる。
【0004】
植物の成長には、通常の場合、空気、特に空気に含有される二酸化炭素が必要とされる。それと同時に、空気が植物の要件に応じた温度及び相対湿度も有することが望ましい。従って、温室装置は、連続的に又は間隔をおいて空気を内室にもたらすことできる空気供給部を有する。
【0005】
この種の温室装置においては、照明装置が光だけでなく熱も発生させることが問題となる。ここで、僅かな熱しか発生させない照明装置が使用される場合であっても、ある程度の熱が発せられることは不可避である。従って、空気供給部は、内室に存在する空気をある程度循環させなければならない。
【0006】
もっとも、この空気の循環では、隙間風が回避されることが望ましい。何故ならば、植物がその種の隙間風に何度も反応してしまうことは好適でないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が基礎とする課題は、内室に好適な気候条件を生じさせることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、冒頭で述べたような温室装置において、空気供給部が、少なくとも1つの分配空間を有し、分配空間が、空気透過性の膜により内室に接していることによって解決される。
【0009】
膜は確かに空気透過性であるが、しかしながら他方では、ある程度の空気抵抗を有する。即ち、分配空間に取り入れられた空気は、空気ジェットの形態では内室に容易に入り込めない。むしろ、分配空間には、内室における空気圧よりも僅かに高い、比較的均一な空気圧が発生する。分配空間における空気圧と内室における空気圧との圧力差によって、分配空間内に存在する空気が、膜を介して内室に圧入される。これによって、膜の表面にわたり分配された空気流、即ち非常に大きな断面積の空気流が生じる。即ち、隙間風が生じることなく、非常に多くの空気を内室に搬送することができる。膜を通過して流れる空気は、0.5m/sを下回る比較的低い速度を有する。空気のこの種の流速は、多くの植物の成長において未だなお許容されるものである。
【0010】
好ましくは、空気輸送管が、流れ方向において分配空間に開口しており、空気輸送管は、流れ方向に対して垂直に配向されているバッフルプレートを有する。即ち、空気は空気輸送管から、直接的な噴射の形態で流れ出ることはできず、その代わりに、空気輸送管を介して分配区間に導入される空気流がバッフルプレートによって制動されて、多くの方向に分配されるので、指向性の空気流による膜の負荷を実質的に回避することができる。むしろ、分配空間には、より高い圧力を有する体積の空気が生じる。
【0011】
好ましくは、空気輸送管は、分配空間においてディフューザを有する。ディフューザは、バッフルプレートに衝突する空気を分散させるように配置されている。またこの場合、ディフューザも、分配空間に供給される空気の均一な分配に寄与する。
【0012】
好ましくは、ディフューザは、空気輸送管の周方向に配置されている複数の開口部を有する。これらの開口部によって、空気輸送管を介して分配空間に供給された空気を、分配空間における空気輸送管の周面にわたり均一に放出させることができる。
【0013】
ここで好ましくは、開口部はスリット状に形成されている。従って、ここで、膜に衝突する可能性がある指向性の噴射が生じることなく、比較的大きい通過面積が提供される。
【0014】
好ましくは、膜は、主成分として繊維素材を有する。繊維素材は、例えば、織られた素材又は編まれた素材であってもよいし、フリースであってもよい。繊維素材では、空気の通過抵抗を比較的正確に調整することができる。空気透過性は、素材自体によって生じさせることができる。しかしながらまた、空気透過性を、穿孔によって達成するか、穿孔によって修正することも可能である。
【0015】
好ましくは、膜は、ハウジング内の平行なチャネルと係合する2つの平行な縁部に肉厚部を有する。これによって、膜を容易に交換することができる。チャンネルから肉厚部を抜き出し、同様の肉厚部を有する新たな膜をチャネルに挿入するだけで足りる。チャネルは、例えば、いわゆる「ケダー(Keder)縁部」に形成することができる。肉厚部は、ケダー成形材として形成することができます。
【0016】
ここで好適には、肉厚部は、膜に接続されている保持部材に配置されている。保持部材は、例えば、膜に縫い付けられているか、又は接着されているケダー帯として形成することができる。
【0017】
好ましくは、ハウジングは支柱を有し、チャネルは、支柱内又は支柱上に配置されている。支柱を、例えばアルミ押出成形材として形成することができ、このアルミ押出成形材においてチャンネルを同時に形成することができる。
【0018】
好ましくは、分配空間は、内室の一面に並んで配置されている複数の分配空間セクションを有する。従って、内室の一面では、分配空間が、複数のより小さい容積に分割され、それらの容積においては、均一な圧力分布を保証することがより容易になる。この場合、空気輸送管は、各分配空間セクションに対して固有の供給部を有する。例えば、空気ダクトは全ての分配空間セクションの前を通るように延在することができるので、空気ダクトは、各分配空間セクションに対して固有の分岐を有し、その分岐が、各分配セクションに対する空気輸送管を形成する。
【0019】
好ましくは、各分配空間セクションは、空気透過性の膜の外側に空気不透過性の外壁を有する。この場合、分配空間セクションに供給される全ての空気は膜のみを介することでしか流出することができず、従って、内室にのみ到達することができる。このことは、供給される空気が実質的に浪費されないので、エネルギ的に好適な解決手段である。
【0020】
好ましくは、外壁は湾曲している。湾曲した外壁は、比較的簡単に、生じた圧力に対して安定性を維持することができる。従って、分配空間に関するコストを低く抑えることができる。
【0021】
ここで、特に好ましくは、外壁が筒体外面の一部を形成する。筒体外面は、特に、円筒体の外面であってよい。
【0022】
好ましくは、前述の分配空間は、第1の分配空間であり、前述の空気輸送管は、第1の空気輸送管であり、第2の空気輸送管を備えた第2の分配空間が、内室の反対側の面に配置されている。内室に供給される空気を、第1の分配空間とは反対側の面において、第2の分配空間を介して流出させることができ、また第2の空気輸送管を介して取り出すことができる。従って、流出する空気を例えば再利用することも可能であるか、又は流出する空気を制御目的に使用することができる。前者は、再利用が行われなければ、空気が汚れている環境において温室装置が運転される場合には特に好適である。
【0023】
好適な構成においては、第1の空気輸送管及び第2の空気輸送管が、切換装置を介して共通の空気搬送装置に接続されている。この場合、2つの分配空間を交互に使用して、空気を内室に供給することができる。
【0024】
空気供給が第1の分配空間から第2の分配空間に移行すると、空気は、第1の分配空間から第2の分配空間へと流れる。第2の分配空間における空気供給が行われると、内室における空気流が逆転する。これによって、内室における植物に対して平均してより均一な温度比率が達成される。空気が流れる場合であっても、供給された空気が若干加熱されることは不可避である。これによって、第1の分配空間から最も離れている場所にある植物は、第1の分配空間に隣接している植物よりも長い時間にわたりより高い温度に晒されることになる。ここで、第1の分配空間による空気供給と第2の分配空間による空気供給とが交互に行われれば、全ての植物が平均して少なくともほぼ同じ温度に晒されることになる。
【0025】
上記の課題は、冒頭で述べたような方法において、空気が、内室に接している分配空間に供給され、空気透過性の膜を介して内室に案内されることによって解決される。
【0026】
この方式によって、多くの植物にとって耐え難い、急速な空気流、いわゆる「隙間風」が生じることなく、内室において必要とされる空気交換を行うことができる。空気が内室に入り込む箇所において膜がある程度の流れ抵抗を形成するので、分配空間に供給された空気は、内室に直接的には入り込まない。膜によって、内室における空気圧よりも僅かに高い均一な空気圧を分配空間に生じさせることができる。この場合、圧力差によって、分配空間に供給された空気が、膜を介して広範囲に分散されて内室に入り込むことができる。
【0027】
好ましくは、分配空間内の空気は、バッフルプレートに向けられる。これによって、膜は指向性の空気流から保護される。従って、膜の損傷を防止することができる。
【0028】
好ましくは、空気が分配空間においてディフューザを介して分散される。このことは、空気を分配空間において高速且つ均一に分散させるための簡単な措置である。
【0029】
好適には、内室における空気流が時々反転する。内室における空気交換が制御される場合であっても、内室を流れる空気が加熱されることは不可避である。内室における空気流の方向転換によって、植物がいかなる場合であっても、平均して常に実質的に均一な温度に晒されることを達成することができる。この方向転換は、内室の対向している面にそれぞれ分配空間が配置され、分配空間が交互に、例えば弁を用いて空気供給を行うことによって、簡単な方式で実現することができる。
【0030】
以下では、好適な実施例に基づき、図面と関連させて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】一部が開放されている、温室装置の概略図を示す。
【
図3】ハウジングにおける膜の固定に関する概略図を示す。
【
図4a】温室装置を通過する空気流を説明するための概略図を示す。
【
図4b】温室装置を通過する空気流を説明するための概略図を示す。
【
図4c】温室装置を通過する空気流を説明するための概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
全ての図において、同一及び相互に対応する構成要素には同一の参照符号を付している。
【0033】
温室装置1はハウジング2を有し、このハウジング2内には、複数の植物トレイ3が重力方向において相互に上下に配置されている。植物トレイでは、植物、例えばサラダ用植物が栽培される。
【0034】
ハウジング2は、複数の支柱4を有し、それらの支柱4は、一方では植物トレイ3を支持し、他方では壁部5の固定にも用いられる。その種の壁部は、植物トレイ3の手前にも存在する。しかしながら、植物トレイ3を示すことができるように、
図1ではそれらの壁部は取り除かれている。壁部は、内室6を包囲する。内室6の重力方向における上端部には、内室を覆う、植物が存在しない植物トレイ3又は相応に「扁平化」された支持体を配置することができる。内室6を気密に閉鎖する必要はない。内室6の下面は、一番下の植物トレイ3によって十分に閉鎖されており、ここでもまた、機密の閉鎖は必要とされない。植物トレイ3は、直接的に相互に積み重ねることもできる。
【0035】
植物トレイ3及び内室6の上端部に配置されている支持体は、植物トレイ3の下にそれぞれ配置されている植物を照明できる照明装置7を有している。植物トレイ3に培養液、通常の場合は肥料を含む水を供給するために、詳細には図示していない栄養素供給部が設けられている。
【0036】
植物の成長には、光、水及び栄養素の他に空気も必要となる。この理由から、内室の相互に対向する2つの面には、空気供給装置8、9が配置されており、これら2つの空気供給装置8、9は、鏡面対称的にほぼ同一に形成されている。この理由から、以下では、空気供給装置8のみを詳細に説明する。2つの空気供給装置8、9は、詳細には図示していない空気源、例えばファンと共に、空気供給部を形成する。
【0037】
空気供給装置8は、少なくとも1つの空気分配空間10を有する(
図2を参照されたい)。また、空気分配空間10は、第1の空気分配空間とも称され、これをもって、この第1の空気分配空間を、第2の空気供給装置9の対応する第2の空気分配空間と区別することができる。空気分配空間10は、複数の分配空間セクション10a~10dに分割されており、それら複数の分配空間セクション10a~10dはそれぞれ閉鎖されている。分配空間セクション10a~10d(
図1を参照されたい)は、実質的に同一に形成されているので、以下では、
図2に基づき、空気分配空間10のみを説明する。
【0038】
第1の空気供給装置8は、空気ダクト11を有し、この空気ダクト11から空気輸送管12が分岐しており、空気輸送管12は空気分配空間10に合流している。空気輸送管12は、空気ダクト11に対して実質的に直角に延在している。しかしながら、これは必須ではない。空気輸送管12は、空気分配空間10において終端している端面にバッフルプレート13を有し、このバッフルプレート13は、空気輸送管12における流れ方向に対して垂直方向に、又は横断する方向に配向されている。空気分配空間10内の周囲壁において、空気輸送管は複数の開口部14を有し、それらの開口部14は、周囲壁において好ましくは均一に分散されて配置されている。開口部14は、スリット状に形成されている。即ち、開口部14は、空気輸送管12の周方向における幅よりも流れ方向において遥かに大きい長さを有する。
【0039】
空気分配空間10は、膜15により内室6に接している。膜15は、空気透過性に形成されている。それ以外に、空気分配空間10は、空気非透過性の外壁16を有する。外壁16は湾曲しており、しかも好ましくは筒体外面の一部として湾曲しており、特に好ましくは円筒体外面の一部として湾曲している。
【0040】
膜15は確かに空気透過性であるが、しかしながら、通過する空気は、ある程度の流れ抵抗を受ける。空気輸送管12を介して空気分配空間10に導入された空気は、差し当たりバッフルプレート13に向かって進み、開口部14を介して空気輸送管12の周囲に分配される。開口部14は、ディフューザを形成する。この場合、空気輸送管12を介して供給される空気を、空気分配空間10内に均一に分配させることができ、空気の全体の体積にわたり実質的に均一な圧力を有する体積の空気を形成する。この圧力は、内室6における空気圧よりも僅かに高い。この圧力差によって、空気は、空気分配空間10から内室6に進入することができる。これによって、反対側の面における空気供給装置9への空気流が生じ、この空気供給装置9において、内室を通過して流れた空気を再び取り出すことができる。この際、流速は比較的低い。流速は、0.5m/sを下回る。
【0041】
空気輸送管12は、重力方向において、空気分配空間10の上半分の部分に、好ましくはそれどころか上から1/4の部分に配置されている。内室6に存在する空気は照明装置7によって加熱されるので、供給された空気は、通常の場合、内室6に存在する空気よりも冷たい。従って、供給された空気は、空気分配空間10において、下方に沈降することができる。これに対して、供給された空気が内室を通過して、第2の空気供給装置9に達すると、そこでは空気が、高まった温度に基づいて上昇することができ、また第2の空気供給装置9に配置されている第2の空気輸送管17を介して空気を再び導出させることができる。
【0042】
図1及び
図2においては、空気ダクト11は、その端面に向かって開放されていることが示されている。空気ダクト11及び空気輸送管12の「内部」を示すためにこのような描写を選択した。実際には、空気ダクト11はそこで閉鎖されているので、空気がそこから漏れることは回避される。
【0043】
膜15は、繊維素材を主成分として形成されている。繊維素材は、織られた素材又は編まれた素材であってもよい。また、素材はフリースであってもよい。膜15の主成分として繊維素材が用いられる場合、膜15の流れ抵抗を比較的正確に調整することができる。流れ抵抗を正確に調整するために、必要に応じて、穿孔の形態の小さい開口部を更に設けることもできる。
【0044】
膜15を固定するために、膜15は、その2つの長辺に、例えばケダー成形材としての肉厚部18を有する。この肉厚部18は、支柱4における相応のチャンネル19に挿入される。肉厚部18は、例えば、上方からチャンネル19に通すことができる。これによって、膜15と支柱4との間の形状結合が生じる。肉厚部は、膜15の構成要素である必要はない。肉厚部18は、膜に縫い付けられているか、又は接着されている保持部材22に配置されていてもよい。
【0045】
2つの空気供給装置8、9は、実質的に同一に形成されているので、それら2つの空気供給装置8、9を、内室6への空気供給に交互に使用することができる。これを
図4に基づき説明する。
【0046】
図4aは、
図1における2つの空気供給装置8、9が輸送管25、26によって相互に接続されている図になる。この実施例において、輸送管25は空気取り入れ口27を有し、この空気取り入れ口27は、切換弁20を介して輸送管25に開口している。輸送管26は、弁21を介して輸送管26に開口している空気取り出し口28を有する。弁20は、フラップ20aを有し、このフラップ20aで、供給空気を空気供給装置8又は空気供給装置9へと誘導することができる。弁21は、フラップ21aを有し、このフラップ21aで、排出空気を空気供給装置9から又は空気供給装置8から空気取り出し口28へと誘導することができる。2つの弁20、21はそれぞれサーボモータ23、24を有し、サーボモータ23、24を相互に同期させることができる。
【0047】
フラップ20aが、
図4bに図示した位置にあり、フラップ21aが
図4cに図示した位置にある場合、第1の空気供給装置8を介した空気の供給が行われ、また第2の空気供給装置9を介して空気の取り出しが行われる。2つのフラップ20a、21aがそれぞれ他方の位置にある場合、第2の空気供給装置9を介した空気の供給が行われ、第1の空気供給装置8を介した空気の取り出しが行われる。
【0048】
2つの流れの方向の切り替えは、例えば60分毎に行うことができる。
【0049】
空気搬送装置には、付加的又は代替的に、吸引装置も設けることができ、これによって、流れを内室によっても、又は付加的に吸引によっても生じさせることができる。
【0050】
内室6外の空気流中に熱交換器を更に設けることができ、この熱交換器によって、空気を循環させる場合には、その空気が再び冷却される。即ち、照明装置7によって発せられた熱が再び取り除かれる。
【0051】
図示されている空気流で、比較的良好な温度制御を達成することができる。流れ長が例えば6,000mmであり、且つ2つの空気供給装置8、9が配置されている延在部が約940mmであり、また高さが例えば14,000mmである場合、2つの空気供給装置8、9間の流速は約0.3m/sに達することができる。この場合、分配空間セクション10a~10dでは、約300Paの空気圧が支配的に生じる。
【0052】
これによって、空気が流入する側では、空気が流出する側よりも僅かに低い温度が生じる。もっとも、温度差はそれ程大きくない。温度差は実質的に0~5℃の範囲にある。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)内に配置されている内室(6)と、前記内室(6)において重力方向に相互に上下に配置されている複数の植物段(3)と、前記植物段(3)に作用する照明配置(7)と、空気供給部(8、9)と、を有する温室装置(1)において、
前記空気供給部(8、9)は、少なくとも1つの分配空間(10;10a~10d)を有し、前記分配空間(10;10a~10d)は、空気透過性の膜(15)により前記内室(6)に接していることを特徴とする、温室装置(1)。
【請求項2】
空気輸送管(12)が、流れ方向において前記分配空間(10)に開口しており、前記空気輸送管(12)は、前記流れ方向に対して垂直に配向されているバッフルプレート(13)を有することを特徴とする、請求項1に記載の温室装置。
【請求項3】
前記空気輸送管(12)は前記分配空間(10)においてディフューザを有し、前記ディフューザは、特に、前記空気輸送管(12)の周囲壁に配置されている複数の開口部(14)を有し、前記開口部(14)はスリット状に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の温室装置。
【請求項4】
前記膜(15)は、主成分として繊維素材を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の温室装置。
【請求項5】
前記膜(15)は、平行な2つの縁部に肉厚部(18)を有し、前記肉厚部(18)は、前記ハウジング(2)内の平行なチャネル(19)と係合していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の温室装置。
【請求項6】
前記肉厚部(18)は、前記膜(15)に接続されている保持部材に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の温室装置。
【請求項7】
前記ハウジング(2)は、支柱(4)を有し、前記チャネル(19)は、前記支柱(4)に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の温室装置。
【請求項8】
前記分配空間(10)は、複数の分配空間セクション(10a~10d)を有し、前記複数の分配空間セクション(10a~10d)は、前記内室(6)の一面に並んで配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の温室装置。
【請求項9】
各分配空間セクション(10a~10d)は、前記空気透過性の膜(15)の外側に空気不透過性の外壁(16)を有し、前記外壁(16)は、特に湾曲しており、好適には筒体外面の一部を形成することを特徴とする請求項8に記載の温室装置。
【請求項10】
前記分配空間(10)は、第1の分配空間であり、前記空気輸送管(12)は、第1の空気輸送管であり、第2の空気輸送管(17)を備えた第2の分配空間が、前記内室(6)の反対側の面に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の温室装置。
【請求項11】
前記第1の空気輸送管(12)及び前記第2の空気輸送管(17)は、切替装置(20、21)を介して共通の空気搬送装置に接続されていることを特徴とする請求項10に記載の温室装置。
【請求項12】
ハウジング(2)と、前記ハウジング(2)内に配置されている内室(6)と、前記内室(6)において重力方向に相互に上下に配置されている複数の植物段(3)と、前記植物段(3)に作用する照明配置(7)と、を有する温室装置(1)を換気する方法において、
空気を、前記内室(6)に接している分配空間(10;10a~10d)に供給し、空気透過性の膜を介して前記内室(6)に案内することを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記分配空間(10;10a~10d)内の前記空気をバッフルプレート(13)に向けることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記空気を前記分配空間(10;10a~10d)においてディフューザを介して分散させることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記内室(6)における空気流を時々反転させることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【外国語明細書】