(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073929
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】撮像装置、当該撮像装置を用いた検査装置、及び撮像方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240523BHJP
G01N 21/49 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/49 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184920
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 格
(72)【発明者】
【氏名】山口 量彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良文
(72)【発明者】
【氏名】江本 顕雄
【テーマコード(参考)】
2G051
2G059
【Fターム(参考)】
2G051AA41
2G051AB02
2G051BA11
2G051BB01
2G051CA04
2G051CB01
2G051CB02
2G051CD04
2G051DA06
2G059AA05
2G059BB10
2G059EE01
2G059EE02
2G059FF01
2G059GG01
2G059GG02
2G059JJ19
2G059KK04
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】被測定物の深さ方向に分解能を持った断層画像を得ることができる撮像装置、当該撮像装置を用いた検査装置、及び撮像方法を提供する。
【解決手段】被測定物Wを透過可能な波長域の出射光を被測定物Wに対して一定の入射角で照射する光源20と、光源20からの出射光が照射された被測定物Wからの反射光を取得する結像光学系31と、結像光学系31により取得された反射光を複数の画素で光電変換して、被測定物Wの画像データを連続的に生成する受光器32と、受光器32により生成された複数の画像データから特定の画素のデータを抽出して、特定の画素のデータからなる部分画像を生成する部分画像生成部62と、複数の部分画像を合成し、特定の画素に対応する深さの断層画像を生成する断層画像生成部63と、を備え、被測定物Wと、光源20、結合光学系31、及び受光器32とは相対移動する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物(W)と相対移動する撮像系と、前記被測定物の断層画像を生成する画像処理部(61)と、を備える撮像装置(1,2)であって、
前記撮像系は、
前記被測定物を透過可能な波長域の出射光を当該被測定物に対して一定の入射角で照射する光源(20)と、
前記光源からの出射光が照射された前記被測定物からの反射光又は透過光を取得する結像光学系(31,31')と、
前記結像光学系により取得された前記反射光又は前記透過光を複数の画素で光電変換して、前記被測定物の画像データを連続的に生成する受光器(32,32')と、を含み、
前記画像処理部は、
前記受光器により生成された各前記画像データから特定の画素のデータを抽出して、前記特定の画素のデータからなる部分画像を生成する部分画像生成部(62)と、
複数の前記部分画像を合成し、前記特定の画素に対応する深さの前記断層画像を生成する断層画像生成部(63)と、を含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記結像光学系の被写界深度が、前記被測定物の所望の観察位置を含む範囲に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記入射角は、前記光源からの出射光が照射される前記被測定物の表面の照射領域と、前記被測定物内部に入射した前記光源からの出射光が出射する前記被測定物の表面の少なくとも一部の出射位置とが平面視において離れる角度に設定されており、
前記部分画像は、前記被測定物の前記出射位置からの前記反射光又は前記透過光が撮像された画像であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記光源からの出射光の光路上において、前記光源と前記被測定物との間に散乱体(24)を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光源からの出射光の光路上において、前記光源と前記被測定物との間に凸レンズ(21,21')を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光源からの出射光の光路上において、前記光源と前記結像光学系との間に偏光子(22,23,22',23')を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光源からの出射光の光路上において、前記受光器と前記被測定物との間に、前記被測定物の特定の深さ位置からの前記反射光、又は、前記被測定物の特定の深さ位置で反射されずに透過した前記透過光を選択して前記受光器に入射させる光学スリット(25,25')を更に備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記光学スリットを周期的に平行移動させる駆動機構(26,26')を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載の撮像装置と、
前記撮像装置により生成された前記断層画像に基づいて前記被測定物を検査する検査部(64)と、を備える検査装置。
【請求項10】
被測定物(W)と相対移動する撮像系を備え、
前記撮像系は、
前記被測定物を透過可能な波長域の出射光を当該被測定物に対して一定の入射角で照射する光源(20)と、
前記光源からの出射光が照射された前記被測定物からの反射光又は透過光を取得する結像光学系(31,31')と、
前記結像光学系により取得された前記反射光又は前記透過光を複数の画素で光電変換して、前記被測定物の画像データを連続的に生成する受光器(32,32')と、を含む撮像装置を用いる撮像方法であって、
前記受光器により生成された各前記画像データから特定の画素のデータを抽出して、前記特定の画素のデータからなる部分画像を生成する部分画像生成ステップ(S5)と、
複数の前記部分画像を合成し、前記特定の画素に対応する深さの前記断層画像を生成する断層画像生成ステップ(S7)と、を含むことを特徴とする撮像方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、当該撮像装置を用いた検査装置、及び撮像方法に関し、特に、被測定物のシール部の接着不良や異物混入の検査を行うための撮像装置、当該撮像装置を用いた検査装置、及び撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
袋状あるいはチューブ状の包装材に食品などの内容物が収容された製品には、包装材への内容物の収容後に開口部分にシールが施されている。その際、包装材のシール部に空隙が含まれたり、内容物やそのくず等が噛み込まれたりすることがある。このようなシール不良の製品は不良品として排除する必要がある。
【0003】
このため、この種の包装材に内容物が包まれてシールが施された製品を被測定物とし、この被測定物のシール不良を画像化できる検査装置が望まれている。
【0004】
従来、生体内部の情報を画像化する技術として、拡散光スペクトロスコピー(Diffuse Optical Spectroscopy:DOS)、拡散光トモグラフィ(Diffuse Optical Tomography:DOT)、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:OCT)などが知られている。
【0005】
しかしながら、これらの技術は、高価な装置を必要とする上に、紙、金属、プラスチック、又は樹脂などからなる包装材の内部の画像化には適していないという問題がある。
【0006】
一方、比較的安価なプロジェクタ・カメラシステムを用いて、プロジェクタから物体に投影されるパターン画像における複数の空間周波数、及び、撮像装置から出力される複数の空間周波数に各別に対応した時間的に順次変化する複数の合成画像のディジタル画像信号に基づき、物体の表面及び内部の特定の3次元位置から反射した光の信号振幅を抽出して、物体内部の光学特性を算出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、レーザ走査型プロジェクタによる照明とローリングシャッター方式のカメラによる撮影とを行うプロジェクタ-カメラシステムにおいて、照明と撮影とのタイミングに1ミリ秒以下の僅かな遅延時間を意図的に挿入することにより、被写体表面での反射光の影響を低減して、被写体内部を経由した散乱光を計測する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【0009】
【非特許文献1】H. Kubo, S. Jayasuriya T.Iwaguchi, T. Funatomi, Y. Mukaigawa, S. Narasimhan, "Programmable Non-Epipolar Indirect Light Transport: Capture and Analysis", IEEE TRANSACTIONS ON VISUALIZATION AND COMPUTER GRAPHICS, VOL. 27, NO. 4, APRIL 2021, Pages 2421-2436
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、物体内部を直接的に撮影するものではなく、物体内部の情報を情報処理で推定するものであった。このため、特許文献1に開示された技術は、処理量が多く、被測定物が次々に搬送される検査装置に適用できないという問題があるとともに、表面反射成分と深部散乱成分とが空間的に十分に分離できていないという問題があった。
【0011】
また、非特許文献1に開示された技術により取得された画像には、被写体の内部だけでなく、被写体の表面(顔や腕などの表面)が映り込んでいることから分かるように、非特許文献1に開示された技術においても、表面反射成分と深部散乱成分とが空間的に十分に分離できていないという問題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、被測定物の深さ方向に分解能を持った断層画像を得ることができる撮像装置、当該撮像装置を用いた検査装置、及び撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る撮像装置は、被測定物と相対移動する撮像系と、前記被測定物の断層画像を生成する画像処理部と、を備える撮像装置であって、前記撮像系は、前記被測定物を透過可能な波長域の出射光を当該被測定物に対して一定の入射角で照射する光源と、前記光源からの出射光が照射された前記被測定物からの反射光又は透過光を取得する結像光学系と、前記結像光学系により取得された前記反射光又は前記透過光を複数の画素で光電変換して、前記被測定物の画像データを連続的に生成する受光器と、を含み、前記画像処理部は、前記受光器により生成された各前記画像データから特定の画素のデータを抽出して、前記特定の画素のデータからなる部分画像を生成する部分画像生成部と、複数の前記部分画像を合成し、前記特定の画素に対応する深さの前記断層画像を生成する断層画像生成部と、を含む構成である。
【0014】
この構成により、本発明に係る撮像装置は、撮像系に対して相対移動している被測定物に一定の入射角の光を照射しながら被測定物の画像データを受光器により連続的に生成し、さらに受光器の特定の画素に対応する深さの部分画像を合成して断層画像を生成するようになっている。すなわち、本発明に係る撮像装置は、被測定物の深さ方向に分解能を持った断層画像を直接的に撮影することができる。さらに、本発明に係る撮像装置は、被測定物のシール部の接着不良や異物混入などの情報を含む断層画像をユーザに提供することができる。
【0015】
また、本発明に係る撮像装置においては、前記結像光学系の被写界深度が、前記被測定物の所望の観察位置を含む範囲に設定されていてもよい。
【0016】
この構成により、本発明に係る撮像装置は、結像光学系の被写界深度を被測定物の所望の観察位置を含む範囲に適切に設定することで、被測定物の所望の観察位置の断層画像を生成することができる。
【0017】
また、本発明に係る撮像装置においては、前記入射角は、前記光源からの出射光が照射される前記被測定物の表面の照射領域と、前記被測定物内部に入射した前記光源からの出射光が出射する前記被測定物の表面の少なくとも一部の出射位置とが平面視において離れる角度に設定されており、前記部分画像は、前記被測定物の前記出射位置からの前記反射光又は前記透過光が撮像された画像であってもよい。
【0018】
この構成により、本発明に係る撮像装置は、光源からの出射光の被測定物の表面への入射角を適切に設定することで、被測定物における表面反射成分と深部散乱成分を空間的に分離できるため、被測定物の表面からの反射光を排除して、あるいは空間的に分離して、断層画像を生成することができる。
【0019】
また、本発明に係る撮像装置は、前記光源からの出射光の光路上において、前記光源と前記被測定物との間に散乱体を更に備える構成であってもよい。
【0020】
この構成により、本発明に係る撮像装置は、散乱体によって光源からの出射光を球面上に拡げて被測定物に入射させることにより、光源からの出射光を被測定物の内部に効果的に照射することができる。
【0021】
また、本発明に係る撮像装置は、前記光源からの出射光の光路上において、前記光源と前記被測定物との間に凸レンズを更に備える構成であってもよい。
【0022】
この構成により、本発明に係る撮像装置は、凸レンズによって光源からの出射光の波面の拡がりと入射角を調整して、光源からの出射光を被測定物の内部に効果的に照射することができる。
【0023】
また、本発明に係る撮像装置は、前記光源からの出射光の光路上において、前記光源と前記結像光学系との間に偏光子を更に備える構成であってもよい。
【0024】
この構成により、本発明に係る撮像装置は、偏光子によって光源からの出射光の偏光状態を、直線偏光、楕円偏光、又は円偏光のいずれかに調整して、光源からの出射光を被測定物の内部に効果的に照射することができる。特に、散乱性が高い被測定物においては、光源からの出射光の偏光状態として円偏光あるいはランダム偏光を用いるのが効果的である。
【0025】
また、本発明に係る撮像装置は、前記光源からの出射光の光路上において、前記受光器と前記被測定物との間に、前記被測定物の特定の深さ位置からの前記反射光、又は、前記被測定物の特定の深さ位置で反射されずに透過した前記透過光を選択して前記受光器に入射させる光学スリットを更に備える構成であってもよい。
【0026】
この構成により、本発明に係る撮像装置は、光学スリットによってあらかじめ画像化する断層の深さを決めることで、深さ分解能を高めて断層画像を生成することができる。
【0027】
また、本発明に係る撮像装置は、前記光学スリットを周期的に平行移動させる駆動機構を更に備える構成であってもよい。
【0028】
この構成により、本発明に係る撮像装置は、光学スリットを駆動機構によって周期的に平行移動させることにより、画像化する断層の深さを連続的に変化させることで、深さ分解能を高めつつ、深さ方向に死角のない断層画像を生成することができる。
【0029】
また、本発明に係る検査装置は、上記のいずれかに記載の撮像装置と、前記撮像装置により生成された前記断層画像に基づいて前記被測定物を検査する検査部と、を備える構成である。
【0030】
この構成により、本発明に係る検査装置は、被測定物における接着不良や異物混入などの検査結果をユーザに提供することができ、高感度な不良検査を実現できる。
【0031】
また、本発明に係る撮像方法は、被測定物と相対移動する撮像系を備え、前記撮像系は、前記被測定物を透過可能な波長域の出射光を当該被測定物に対して一定の入射角で照射する光源と、前記光源からの出射光が照射された前記被測定物からの反射光又は透過光を取得する結像光学系と、前記結像光学系により取得された前記反射光又は前記透過光を複数の画素で光電変換して、前記被測定物の画像データを連続的に生成する受光器と、を含む撮像装置を用いる撮像方法であって、前記受光器により生成された各前記画像データから特定の画素のデータを抽出して、前記特定の画素のデータからなる部分画像を生成する部分画像生成ステップと、複数の前記部分画像を合成し、前記特定の画素に対応する深さの前記断層画像を生成する断層画像生成ステップと、を含む構成である。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、被測定物の深さ方向に分解能を持った断層画像を得ることができる撮像装置、当該撮像装置を用いた検査装置、及び撮像方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る撮像装置及び検査装置の構成図である。
【
図2】
図1に示す撮像装置の光源と被測定物との間に散乱体が配置された構成例を示す図である。
【
図3】
図1に示す撮像装置の結像光学系の被写界深度を示す図である。
【
図4】(a)は被測定物のモデルの搬送方向に平行な断面図を示しており、(b)は、被測定物のモデルの平面図を示している。
【
図5】(a)~(c)は、被測定物の搬送に伴って照射領域と撮像ラインの位置が被測定物に対して相対的にずれていく様子を示す図である。
【
図6】
図1に示す撮像装置の受光器と被測定物との間に光学スリットが配置された構成例を示す図である。
【
図7】光源からの出射光の被測定物への入射角、光源からの出射光が照射される被測定物の表面の照射領域、被測定物内部に入射した光源からの出射光が出射する被測定物の上側の表面の出射位置を示す図である。
【
図8】画像処理部により生成された断層画像の例を示す図である。
【
図9】(a)~(c)は光源からの出射光の被測定物への入射角を様々に設定した場合の被測定物からの出射光の方向を模式的に示す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る撮像装置及び検査装置の構成図である。
【
図11】光源からの出射光の被測定物への入射角、光源からの出射光が照射される被測定物の表面の照射領域、被測定物内部に入射した光源からの出射光が出射する被測定物の下側の表面の出射位置を示す図である。
【
図12】(a)は被測定物からの反射光に基づいて画像処理部により生成された断層画像の例を示す図であり、(b)~(d)は、被測定物からの透過光に基づいて画像処理部により生成された断層画像の例を示す図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る撮像装置を用いる撮像方法の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る撮像装置、当該撮像装置を用いた検査装置、及び撮像方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0035】
(第1の実施形態)
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る撮像装置1は、搬送部10と、光源20と、撮像部30と、操作部40と、表示部50と、画像処理部61と、を備える。ここで、光源20及び撮像部30は、被測定物(物品)Wと相対移動する撮像系を構成する。撮像装置1は、被測定物Wに対して、光源20から被測定物Wを適切に透過する波長域の光を照射し、そのときに被測定物Wを透過又は反射した光に基づいて、被測定物Wの断層画像を生成するものである。ここで、被測定物Wは、例えば、樹脂材料を含み、シール部を有する包装材や容器である。また、光源20から照射される光の被測定物Wの透過率は、10%以上であることが望ましい。
【0036】
また、本発明の第1の実施形態に係る検査装置100は、撮像装置1と、検査部64と、を備える。検査装置100は、撮像装置1により生成された断層画像に基づいて、被測定物Wに対して、異物混入の有無、シール部不良の有無などの各種検査を行うものである。
【0037】
搬送部10は、例えば撮像装置1本体に対して水平に配置されたベルトコンベアで構成されており、光源20からの出射光を透過しやすい材料からなる搬送ベルト11を備える。搬送部10は、搬送ベルト11により形成される搬送路内で、複数の被測定物Wを所定の搬送方向(矢印Xで示す方向)に沿って検査領域Rに順次搬送するようになっている。搬送ベルト11は、被測定物Wを載置し搬送方向に搬送する搬送面11aを有する。搬送部10は、被測定物Wの検査を行うときに、不図示の搬送制御部の制御に基づく駆動モータの回転によりあらかじめ設定される搬送速度で、搬送ベルト11を駆動するようになっている。
【0038】
光源20は、レーザ又はLED(Light Emitting Diode)などからなり、例えば被測定物Wを透過可能な波長域が380nm~2500nmの出射光を、搬送部10により搬送されている被測定物Wに照射するようになっている。例えば、光源20は、搬送部10による被測定物Wの搬送方向に対して直交するライン光源として構成されていてもよい。
【0039】
本実施形態の撮像装置1は、光源20からの出射光の光路上において、光源20と被測定物Wとの間に凸レンズ21を備えていてもよい。このように凸レンズ21が設けられることにより、光源20からの出射光の波面の広がりと入射角θを調整して、光源20からの出射光を被測定物Wの内部に効果的に照射することができる。なお、光源20からの出射光の光路上において、被測定物Wと撮像部30との間に更に凸レンズが配置されていてもよい。
【0040】
また、本実施形態の撮像装置1は、光源20からの出射光の光路上において、光源20と後述する結像光学系31との間に偏光子を備えていてもよい。例えば、光源20と被測定物Wとの間に偏光子22が設けられることにより、光源20からの出射光の偏光状態を、直線偏光、楕円偏光、又は円偏光のいずれかに調整して、光源20からの出射光を被測定物Wの内部に効果的に照射することができる。また、さらに、被測定物Wと撮像部30との間に偏光子23が設けられることにより、偏光子22と偏光子23の組合せで出射光の特定の偏光成分のみを選択し、被測定物Wの表面からの反射光が撮像部30に入射することを防ぐように構成することもできる。
【0041】
また、
図2に示すように、本実施形態の撮像装置1は、光源20からの出射光の光路上において、光源20と被測定物Wとの間に、すりガラスや樹脂板などの散乱体24を備えていてもよい。このように散乱体24が設けられることにより、光源20からの出射光が球面状に広がって被測定物Wに入射することになり、光源20からの出射光を被測定物Wの内部に効果的に照射することができる。
【0042】
図1に示すように、撮像部30は、光源20からの出射光が照射された被測定物Wからの反射光を取得する結像光学系31と、結像光学系31により取得された反射光を受光して、搬送部10により搬送されている被測定物Wの画像データを連続的に生成する受光器32と、を有する。
【0043】
結像光学系31は、少なくとも1つの結像レンズ33からなり、光源20からの出射光の光路上において被測定物Wと受光器32との間に配置されて、被測定物Wからの反射光を受光器32に結像させるようになっている。また、結像光学系31は、受光器32と結像レンズ33との間に、被測定物Wの表面で反射した光や大きく光路がずれた散乱成分を遮断するための絞り34を有していることが望ましい。
【0044】
結像光学系31の被写界深度Dは、被測定物Wの所望の観察位置を含む範囲に設定される。例えば、
図3に示すように、結像光学系31の被写界深度Dは、被測定物Wの厚さ全体にわたるように設定される。あるいは、結像光学系31の被写界深度Dは、被測定物Wの所望の深さ位置のみを含むように、被測定物Wの厚さよりも狭く設定されてもよい。
【0045】
凸レンズ21が、光源20からの出射光の光路上において、被測定物Wと撮像部30との間に配置される場合には、この凸レンズ21を含めて被測定物Wの観測したい領域に被写界深度を設定できるように、結像光学系31の位置を適宜調整することになる。
【0046】
図1に示すように、受光器32は、結像光学系31を介した被測定物Wからの反射光を光電変換する複数の光電変換素子がアレイ状に配置されたエリアセンサ又はラインセンサなどのイメージセンサ32aと、イメージセンサ32aから出力される光電変換された電気信号を所定の出力形式の画像データに変換して出力する画像データ出力部32bと、を含む。ここで、受光器32が有する各光電変換素子は、1つの画素を構成する。画像データ出力部32bから出力される画像データは、イメージセンサ32aがラインセンサの場合には1次元画像であり、イメージセンサ32aがエリアセンサの場合には2次元画像である。
【0047】
本実施形態では、撮像系を構成する光源20や撮像部30が固定位置に設置され、被測定物Wが搬送部10により搬送されるとしているが、本発明はこれに限定されず、撮像装置1は、被測定物Wと撮像系とが相対移動する構成であればよい。例えば、撮像装置1は、1次元的又は2次元的に配列された複数の被測定物Wを1次元的又は2次元的にスキャンするように撮像系が動く構成であってもよい。あるいは、撮像装置1は、複数の被測定物Wと撮像系が共に動く構成であってもよい。
【0048】
操作部40は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのものであり、例えば表示部50の表示画面に対応する入力面への接触操作による接触位置を検出するためのタッチセンサを備えるタッチパネルで構成される。操作部40は、ユーザが表示画面に表示されている特定の項目の位置を指やスタイラス等で触れた際に、タッチセンサが表示画面上で検出した位置と項目の位置との一致を認識することにより、各項目に割り当てられた機能を実行するための信号を画像処理部61や検査部64に出力する。あるいは、操作部40は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。
【0049】
表示部50は、液晶ディスプレイやCRT等の表示機器で構成され、画像処理部61や検査部64による表示制御に基づき、断層画像生成部63により生成された被測定物Wの断層画像などの各種表示内容を表示するようになっている。さらに、表示部50は、各種条件を設定するためのボタン、ソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0050】
画像処理部61及び検査部64は、例えばCPU、GPU、FPGA、ROM、RAM、HDDなどを含む制御装置で構成される。例えば、画像処理部61及び検査部64は、CPU又はGPUによる所定のプログラムの実行により、ソフトウェア的に構成することが可能である。なお、上記のプログラムは、ROM又はHDDにあらかじめ格納されている。あるいは、上記のプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式でコンパクトディスク、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録された状態で提供又は配布されるようにしてもよい。あるいは、上記のプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータに格納され、ネットワーク経由でのダウンロードにより提供又は配布されるようにしてもよい。
【0051】
画像処理部61は、画像データ出力部32bから出力された複数の画像データに基づいて被測定物Wの断層画像を生成するようになっており、部分画像生成部62と、断層画像生成部63と、を含む。
【0052】
部分画像生成部62は、受光器32により異なる時刻に生成された各画像データから特定の画素のデータを抽出して、特定の画素のデータからなる部分画像を生成するようになっている。例えば、特定の画素とは、被測定物Wに対する所望の撮像ラインに対応する画素列を指す。ここで、撮像系を構成する光源20や撮像部30が固定位置に設置される構成では、撮像ラインの位置は検査領域Rにおいて決定される。
【0053】
断層画像生成部63は、異なる時刻に生成された複数の部分画像を時刻順に並べて合成して、受光器32のイメージセンサ32aの特定の画素に対応する深さの断層画像を生成するようになっている。つまり、断層画像生成部63は、被測定物Wの特定の深さ位置において異なる箇所が撮像された複数の部分画像を繋ぎ合わせることによって、被測定物Wの深部の断層撮影に相当する情報を出力するものである。
【0054】
図4(a)及び(b)は、画像処理部61の動作を説明するための被測定物Wのモデルを示している。
図4(a)は、被測定物Wの搬送方向に平行な断面図を示している。
図4(b)は、被測定物Wの平面図を示している。この被測定物Wは、上から順に第1層から第5層までの5つの層から構成されており、第2層と第4層に異物を模した内部構造パターンP1,P2が形成されている。
図4(a)及び(b)において、ある時点での光源20からの出射光の被測定物Wへの照射領域は符号Rwで示されている。
【0055】
例えば、
図4(a)及び(b)に示すように、部分画像生成部62は、被測定物Wにおいて撮像ラインA,B,Cの位置からそれぞれ出射され、受光器32のイメージセンサ32aの3つの画素列で受光された反射光に基づく3つの1次元画像を部分画像として生成する。ここで、各撮像ラインの検査領域Rにおける位置と、各撮像ラインと受光器32の画素列との対応関係は、被測定物Wの種類に応じてあらかじめ設定しておくことができる。
図5(a)~(c)は、被測定物Wの搬送に伴って、照射領域Rwと撮像ラインA,B,Cの位置が被測定物Wに対して相対的にずれていく様子を示している。すなわち、部分画像生成部62は、被測定物Wに対して相対的に移動する撮像ラインA,B,Cの位置からそれぞれ出射された反射光に基づいて、3つの1次元画像を部分画像として順次生成する。
【0056】
図6に示すように、本実施形態の撮像装置1は、光源20からの出射光の光路上において、受光器32と被測定物Wとの間に、被測定物Wの特定の深さ位置からの反射光を選択して受光器32のイメージセンサ32aに入射させる光学スリット25を備えていてもよい。
【0057】
図6は、被測定物Wの深さd1の第1層、深さd2の第2層、及び深さd3の第3層における反射光のうち、第1層及び第2層における反射光やその他の散乱光が光学スリット25により遮断されて、第3層における反射光のみが光学スリット25により選択されて受光器32に入射する例を示している。撮像装置1は、このような光学スリット25を備えることにより、被測定物Wにおいて画像処理部61により画像化される断層の深さをあらかじめ決めることができるとともに、深さ分解能を高めて被測定物Wの断層画像を生成することができる。なお、深さd1の第1層、深さd2の第2層、及び深さd3の第3層との記載は便宜上のものであって、被測定物Wは必ずしも層状の構造を成していない。
【0058】
さらに、本実施形態の撮像装置1は、上記の光学スリット25を搬送面11aに平行な平面内で周期的に平行移動させる駆動機構26を備えていてもよい。例えば、駆動機構26は、被測定物Wが所定距離搬送される間に、光学スリット25の開口を被測定物Wからの反射光をスキャンするように1回平行移動させるようになっている。これにより、画像処理部61により画像化される断層の深さが連続的に変化する。以降も同様に、駆動機構26が光学スリット25の平行移動を繰り返すことにより、画像処理部61は、深さ分解能を高めつつ、深さ方向に死角のない断層画像を生成することができる。
【0059】
光源20からの出射光の被測定物Wへの入射角θは一定に設定される。
図7に示すように、入射角θの角度は、光源20からの出射光が照射される被測定物Wの表面の照射領域Rwと、被測定物W内部に入射した光源20からの出射光が出射する被測定物Wの上側の表面の少なくとも一部の出射位置x(例えば、
図7における任意に設定された撮像ラインA,B,Cの位置)とが、平面視において離れるように設定されていることが望ましい。
【0060】
すなわち、被測定物Wの搬送方向に沿った照射領域Rwの幅を2r、照射領域Rwの中心を基準とした場合の第1層、第2層、及び第3層からの反射光の被測定物Wの光源20側の最表面からの出射位置xをそれぞれx1,x2,x3と表すとすると、r<xnが成り立つことが望ましい。ここでは、nの最大値を3としているが、所望の深さ分解能に応じてnの最大値は任意の正の整数値を取り得る。仮に、rがxnよりも大きい場合、被測定物Wの内部からの反射光と被測定物Wの光源20側の最表面からの反射光とが重畳して、深さ方向の情報と表面の情報が混ざってしまう。そのため、r<xnが成り立つように入射角θを設定することで、光源20からの被測定物Wへの入射光の広がりが、撮像ラインA,B,Cに対応する受光器32の各画素での検出に影響を及ぼさないようにすることができる。部分画像生成部62により生成される部分画像は、r<xnを満たす被測定物Wの出射位置xnから出射された被測定物W内部の反射光が撮像された画像であることが望ましい。
【0061】
ここでは、
図7において、任意に設定可能な撮像ラインA,B,Cを被測定物Wの上位3層の構造モデルに対して設定した例を示したが、
図4のような5層のモデルにおける任意の層に撮像ラインA,B,Cを設定してもよい。また、
図4及び
図7に示した被測定物Wの例はいずれも多層モデルによって表されているが、層状に分かれていない連続した任意のモデルであっても同様に、任意の位置に撮像ラインを設定することができる。
【0062】
図8は、光源20からの出射光の被測定物Wへの入射角θを様々に設定した場合に、画像処理部61により生成される断層画像の例を示している。撮像ラインA,B,Cは、
図4のような5層モデルに対して設定されている。
図9(a)~(c)は、光源20からの出射光の被測定物Wへの入射角θを様々に設定した場合の被測定物Wからの出射光の方向を模式的に示す図である。この被測定物Wは、上から順に第1層から第5層までの5つの層から構成されており、第2層と第4層に異物を模した内部構造パターンP1,P2が形成されている。
【0063】
入射角θが0°の場合は、
図9(a)の撮像ラインBの位置での反射光に基づく第2層の断層画像において、第2層の内部構造パターンP1が薄暗く撮像された。これは、
図9(a)に示すように、被測定物Wにおける光源20からの出射光の照射位置から離れるほど、被測定物Wからの出射光の出射角は大きくなるが、光源20からの出射光のパワー密度が被測定物W内部で大きく低下したためと考えられる。
【0064】
入射角θが4.1°の場合は、
図9(b)の撮像ラインBの位置での反射光に基づく第2層の断層画像において、第2層の内部構造パターンP1が明瞭に撮像された。また、
図9(b)の撮像ラインAの位置での反射光に基づく第1層の断層画像には、第2層の内部構造パターンP1がかすかに映り込んだ。また、
図9(b)の撮像ラインCの位置での反射光に基づく第3層の断層画像には、第3層の内部構造パターンP2が薄暗く撮像された。これらの断層画像から、入射角θが0°の場合と比較して、光源20からの出射光のパワー密度を保ったまま、被測定物W内部の形状や構造に由来した情報を取り出すことができたと考えられる。
【0065】
入射角θが8.8°の場合は、
図9(c)の撮像ラインBの位置での反射光に基づく第2層の断層画像において、第2層の内部構造パターンP1が比較的明瞭に撮像された。また、
図9(c)の撮像ラインCの位置での反射光に基づく第3層の断層画像においても、第3層の内部構造パターンP2が比較的明瞭に撮像された。一方、
図9(c)の撮像ラインAの位置での反射光に基づく第1層の断層画像には、第2層の内部構造パターンP1が薄暗く撮像された。これらの断層画像から、入射角θが0°の場合と比較して、光源20からの出射光のパワー密度を保ったまま、被測定物W内部の形状や構造に由来した情報を取り出すことができたと考えられる。さらに、これらの断層画像から、入射角θが4.1°の場合と比較して、被測定物W内部のより深い位置での形状や構造に由来した情報を取り出すことができたことが分かる。
【0066】
つまり、
図8に示した断層画像の例から分かるように、本実施形態の撮像装置1は、光源20からの出射光の被測定物Wへの入射角θに応じて、被測定物Wの異なる深さ位置の情報を取り出すことができる。例えば、入射角θが0°、4.1°、8.8°の上記の各例に示すように、入射角θを大きくすると、情報を抽出できる被測定物Wの深さ位置が深くなることが分かる。
【0067】
本実施形態の検査装置100が備える検査部64は、画像処理部61により生成された断層画像に基づき、被測定物Wに対してシール部接着不良等の検査を行い、検査結果を表示部50に出力するようになっている。画像処理部61により生成された断層画像は、被測定物Wの深さ方向に分布する屈折率の違いによる反射光を捉えたものである。例えば、検査部64は、熱圧着などで圧着される食品、化粧品、医薬品容器のシール部の接着不良や異物混入などに起因する、屈折率の変化が比較的大きな箇所を検出し、その検出結果を表示部50に出力する。これにより、検査部64は、被測定物Wにおける接着不良や異物混入などの検査結果をユーザに提供することができ、高感度な不良検査を実現できる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る撮像装置1は、搬送されている被測定物Wに一定の入射角の光を照射しながら被測定物Wの画像データを受光器32により連続的に生成し、さらに受光器32の特定の画素に対応する深さの部分画像を合成して断層画像を生成するようになっている。すなわち、本実施形態に係る撮像装置1は、被測定物Wの深さ方向に分解能を持った断層画像を直接的に撮影することができる。さらに、本実施形態に係る撮像装置1は、被測定物Wのシール部の接着不良や異物混入などの情報を含む断層画像をユーザに提供することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る撮像装置1は、結像光学系の被写界深度を被測定物Wの所望の観察位置を含む範囲に適切に設定することで、被測定物Wの所望の観察位置の断層画像を生成することができる。
【0070】
また、本実施形態に係る撮像装置1は、光源20からの出射光の被測定物Wの表面への入射角を適切に設定することで、被測定物Wにおける表面反射成分と深部散乱成分を空間的に分離できるため、被測定物Wの表面からの反射光を排除して、あるいは空間的に分離して、断層画像を生成することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る撮像装置1は、散乱体24によって光源20からの出射光を球面上に拡げて被測定物Wに入射させることにより、光源20からの出射光を被測定物Wの内部に効果的に照射することができる。
【0072】
また、本実施形態に係る撮像装置1は、凸レンズ21によって光源20からの出射光の波面の拡がりと入射角を調整して、光源20からの出射光を被測定物Wの内部に効果的に照射することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る撮像装置1は、偏光子22によって光源20からの出射光の偏光状態を、直線偏光、楕円偏光、又は円偏光のいずれかに調整して、光源20からの出射光を被測定物Wの内部に効果的に照射することができる。特に、散乱性が高い被測定物Wにおいては、光源20からの出射光の偏光状態として円偏光あるいはランダム偏光を用いるのが効果的である。また、さらに、被測定物Wと撮像部30との間に偏光子23を設けることにより、偏光子22と偏光子23の組合せで出射光の特定の偏光成分のみを選択し、被測定物Wの表面からの反射光が撮像部30に入射することを防ぐように構成することもできる。
【0074】
また、本実施形態に係る撮像装置1は、光学スリット25によってあらかじめ画像化する断層の深さを決めることで、深さ分解能を高めて断層画像を生成することができる。
【0075】
また、本実施形態に係る撮像装置1は、光学スリット25を駆動機構26によって周期的に平行移動させることにより、画像化する断層の深さを連続的に変化させることで、深さ分解能を高めつつ、深さ方向に死角のない断層画像を生成することができる。
【0076】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態に係る撮像装置2について、図面を参照しながら説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成及び動作については適宜説明を省略する。
【0077】
第1の実施形態では、光源20からの出射光が照射された被測定物Wからの反射光に基づいて断層画像を生成する処理を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、光源20からの出射光が照射された被測定物Wからの透過光に基づいて断層画像を生成する構成であっても、第1の実施形態の撮像装置1と同様の効果を得ることができる。
【0078】
図10に示すように、本実施形態の撮像装置2は、被測定物Wからの反射光を測定する構成に加えて、被測定物Wからの透過光を測定する構成を備えている。
【0079】
すなわち、本実施形態の撮像装置2は、第1の実施形態の撮像装置1の構成に加えて、更に1台の撮像部30'と、光源20からの出射光を被測定物Wに照射させるプリズム27aと、被測定物Wからの反射光を撮像部30の結像光学系31に入射させるプリズム27bと、被測定物Wからの透過光を撮像部30'の結像光学系31'に入射させるプリズム27cと、を備える。
【0080】
撮像部30'の構成は、第1の実施形態における撮像部30と同様である。また、2台の撮像部30,30'を同時に用いて測定を行う必要がない場合には、1台の撮像装置を適宜撮像部30又は撮像部30'として用いればよい。
【0081】
撮像部30'は、光源20からの出射光が照射された被測定物Wからの透過光を取得する結像光学系31'と、結像光学系31'により取得された透過光を複数の画素で光電変換して、搬送部10により搬送されている被測定物Wの画像データを連続的に生成する受光器32'と、を有する。
【0082】
撮像部30'の結像光学系31'は、少なくとも1つの結像レンズ33'からなり、光源20からの出射光の光路上において被測定物Wと受光器32'との間に配置されて、被測定物Wからの透過光を受光器32'に結像させるようになっている。結像光学系31'の被写界深度は、被測定物Wの所望の観察位置を含む範囲に設定される。また、結像光学系31'は、受光器32'と結像レンズ33'との間に、被測定物Wの表面で反射した光を遮断するための絞り(不図示)を有していることが望ましい。
【0083】
受光器32'は、被測定物Wからの反射光の画像データではなく、被測定物Wからの透過光の画像データを生成する点以外は、第1の実施形態における受光器32と同様の構成である。
【0084】
また、撮像装置2は、光源20からの出射光の光路上において、光源20と被測定物Wとの間、あるいは、被測定物Wと撮像部30,30'との間に凸レンズ21'を備えていてもよい。
【0085】
また、撮像装置2は、光源20からの出射光の光路上において、光源20と結像光学系31,31'との間に偏光子22',23'を備えていてもよい。
【0086】
また、撮像装置2は、光源20からの出射光の光路上において、光源20と被測定物Wとの間に散乱体(不図示)を備えていてもよい。
【0087】
また、撮像装置2は、光源20からの出射光の光路上において、受光器32'と被測定物Wとの間に、被測定物Wの特定の深さ位置で反射されずに透過した透過光を選択して受光器32'のイメージセンサに入射させる光学スリット25'を備えていてもよい。
【0088】
また、撮像装置2は、光学スリット25,25'を周期的に平行移動させる駆動機構26'を備えていてもよい。例えば、駆動機構26'は、被測定物Wが所定距離搬送される間に、光学スリット25,25'の開口を被測定物Wからの透過光をスキャンするように1回平行移動させるようになっている。以降も同様に、駆動機構26'は光学スリット25,25'の平行移動を繰り返す。
【0089】
第1の実施形態と同様に、光源20からの出射光の被測定物Wへの入射角θは一定に設定される。
図11に示すように、入射角θの角度は、光源20からの出射光が照射される被測定物Wの表面の照射領域Rwと、被測定物W内部に入射した光源20からの出射光が出射する被測定物Wの下側の表面の出射位置x(例えば、
図11における撮像ラインA',B',C'の位置)とが、平面視において離れるように設定されていることが望ましい。
【0090】
図11に示す被測定物Wは、3層構造になっており、その第2層に空気層からなる内部構造パターンP1が形成されている。すなわち、第1層及び第3層、並びに、第2層のうち内部構造パターンP1が形成されていない領域の屈折率は、内部構造パターンP1の屈折率よりも大きい。このため、内部構造パターンP1を透過する光源20からの出射光の振る舞いは、例えば以下に説明するようになる。
【0091】
被測定物Wの光源20の反対側の最表面からの出射位置xが照射領域Rwの中心を基準としてx1'である透過光は、第2層における内部構造パターンP1と第3層との界面において、出射角(屈折角)が入射角よりも小さくなる。
【0092】
また、被測定物Wの光源20の反対側の最表面からの出射位置xが照射領域Rwの中心を基準としてx2'である透過光は、第2層における内部構造パターンP1において屈折率変化の影響をあまり受けず、第1層と第2層における内部構造パターンP1との界面と、第2層における内部構造パターンP1と第3層との界面において、出射角(屈折角)が入射角とほぼ等しくなる。
【0093】
また、被測定物Wの光源20の反対側の最表面からの出射位置xが照射領域Rwの中心を基準としてx3'である透過光は、第1層と第2層における内部構造パターンP1との界面において、出射角(屈折角)が入射角よりも大きくなる。
【0094】
いずれの透過光についても、反射光の場合と同様に、r<xn'が成り立つことが望ましい。
【0095】
本実施形態においては、画像処理部61の部分画像生成部62は、被測定物Wにおいて撮像ラインの位置から出射され、受光器32又は32'のイメージセンサの画素列で受光された反射光又は透過光に基づく1次元画像を部分画像として順次生成する。部分画像生成部62により生成される部分画像は、r<xn'を満たす被測定物Wの出射位置xn'から出射された被測定物W内部の透過光が撮像された画像であることが望ましい。
【0096】
図12(a)は、被測定物Wからの反射光を撮像する撮像部30で得られた画像データに基づいて、画像処理部61により生成された被測定物Wの断層画像の例を示している。
図12(b)~(d)は、
図11に模式的に示した被測定物Wからの透過光を撮像する撮像部30'で得られた画像データに基づいて、画像処理部61により生成された被測定物Wの断層画像の例を示している。
【0097】
図12(a)に示すように、
図11に示した撮像ラインA'の位置から出射された反射光に基づく第2層の断層画像において、内部構造パターンP1が比較的明瞭に撮像された。
【0098】
図12(b)に示すように、
図11に示した撮像ラインA'の位置から出射された透過光に基づく第2層の断層画像において、内部構造パターンP1が比較的明瞭に撮像された。この撮像ラインA'における断層画像は、内部構造パターンP1の空気層を通過後に屈折した成分を多く含む透過光によるものであるため、
図12(a)に示した撮像ラインA'の位置から出射された反射光に基づく第2層の断層画像の明暗を反転させたものとなっている。なお、
図12(a)及び(b)では、被測定物Wの厚さが比較的薄いため、撮像ラインA'の位置から出射された反射光と透過光は、出射位置xが等しく、そして明暗が反転した状態を示しているが、被測定物の構成によっては、反射光による断層画像と、透過光による明暗の反転した断層画像とが、異なる撮像ラインで得られることもある。
【0099】
一方、
図12(b)及び(c)に示すように、
図11に示した撮像ラインB',C'の位置から出射された透過光に基づく断層画像においては、内部構造パターンP1は明確には撮像されなかった。
【0100】
このように、被測定物Wからの透過光を撮像する本実施形態の撮像装置2も、適切な撮像ラインを選択することによって、被測定物Wの所望の深さ位置の情報を含む断層画像を生成することができる。
【0101】
また、本実施形態の撮像装置2は、被測定物Wからの反射光を撮像する撮像部30を利用するか、被測定物Wからの透過光を撮像する撮像部30'を利用するかを、被測定物Wの種類や検査の目的に応じてユーザが選択できるようになっていてもよい。
【0102】
本実施形態の検査装置110が備える検査部64は、画像処理部61により生成された、被測定物Wの深さ方向に分布する屈折率の違いによる反射光又は透過光を捉えた断層画像に基づき、被測定物Wに対してシール部接着不良等の検査を行い、検査結果を表示部50に出力するようになっている。第1の実施形態と同様に、検査部64は、被測定物Wにおける屈折率の変化が比較的大きな箇所を検出し、その検出結果を表示部50に出力する。
【0103】
(撮像方法)
以下、第1の実施形態に係る撮像装置1又は第2の実施形態に係る撮像装置2を用いる撮像方法について、
図13のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
【0104】
まず、画像処理部61は、ユーザによる操作部40への操作に応じて、所望の撮像ラインに対応する受光器32又は32'のイメージセンサの特定の画素の位置を設定する(ステップS1)。
【0105】
次に、搬送部10は、被測定物Wの搬送を開始する(ステップS2)。
【0106】
次に、光源20は、被測定物Wを透過可能な波長域の出射光を、搬送部10により検査領域Rに搬送された被測定物Wに照射する(ステップS3)。
【0107】
次に、受光器32又は32'は、結像光学系31又は31'により取得された被測定物Wからの反射光又は透過光を複数の画素で光電変換して、搬送部10により搬送されている被測定物Wの画像データを生成する(ステップS4)。
【0108】
次に、画像処理部61は、ステップS4において受光器32又は32'により生成された画像データからステップS1で設定された特定の画素のデータを抽出して、当該特定の画素のデータからなる部分画像を生成する処理を実行する(部分画像生成ステップS5)。
【0109】
次に、画像処理部61は、注目している被測定物Wが検査領域Rを抜けたか否かを判断する(ステップS6)。注目している被測定物Wが検査領域Rを抜けた場合には、画像処理部61はステップS7の処理を実行する。一方、注目している被測定物Wが検査領域Rを抜けていない場合には、画像処理部61は再びステップS4以降の処理を実行する。
【0110】
ステップS7において画像処理部61は、部分画像生成ステップS5において異なる時刻に得られた部分画像を合成し、受光器32又は32'のイメージセンサの特定の画素に対応する深さの断層画像を生成する処理を実行する(断層画像生成ステップS7)。
【0111】
次に、表示部50は、断層画像生成ステップS7により生成された断層画像を表示する(ステップS8)。
【0112】
次に、画像処理部61は、断層画像生成ステップS7において、全ての被測定物Wの断層画像が生成されたか否かを判断する(ステップS9)。全ての被測定物Wの断層画像が生成された場合には、画像処理部61は処理を終了する。一方、全ての被測定物Wの断層画像が生成されていない場合には、画像処理部61は再びステップS3以降の処理を実行する。
【符号の説明】
【0113】
1,2 撮像装置
10 搬送部
11 搬送ベルト
11a 搬送面
20 光源
21 凸レンズ
22,23 偏光子
24 散乱体
25,25' 光学スリット
26,26' 駆動機構
27a,27b,27c プリズム
30,30' 撮像部
31,31' 結像光学系
32,32' 受光器
32a イメージセンサ
32b 画像データ出力部
33 結像レンズ
40 操作部
50 表示部
60 制御装置
61 画像処理部
62 部分画像生成部
63 断層画像生成部
100,110 検査装置
W 被測定物