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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073931
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 67/00 20060101AFI20240523BHJP
   A01F 12/60 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A01D67/00 C
A01F12/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184922
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】軒野 嵩章
(72)【発明者】
【氏名】室谷 友哉
【テーマコード(参考)】
2B076
2B396
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076BA01
2B076BC09
2B396JA04
2B396JC07
2B396KE04
2B396LC07
2B396LR02
2B396LR13
2B396MA02
2B396MC02
2B396MC04
2B396MC07
2B396MC13
2B396MG04
(57)【要約】
【課題】コンバインの走行時において、後部カバーのバタつきを抑制することができるコンバインを提供する。
【解決手段】穀粒タンク7の後下部に接続されて穀粒タンク7に貯留された穀粒を排出する縦搬送装置と、穀粒タンク7の横外側壁22の後縁部に沿って上下に長く形成され、縦搬送装置の横外側方を覆う後部カバー40と、が備えられ、横外側壁22と後部カバー40とが面状に連なっており、後部カバー40は、縦向き軸芯Y2周りで揺動して、縦搬送装置を横外側方から覆う第一状態と縦搬送装置の横外側方を開放する第二状態とに切替可能なように、ヒンジ41を介して穀粒タンク7の後部に支持され、後部カバー40を第一状態にロックするロック機構Kと、後部カバー40が第一状態のときのみに後部カバー40のうちのヒンジ41よりも上下方向における遊端部側部分を保持する保持機構と、が備えられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粒を貯留する穀粒タンクと、
前記穀粒タンクの後方において上下方向に沿って延ばされるとともに前記穀粒タンクの後下部に接続されて前記穀粒タンクに貯留された穀粒を排出する縦搬送装置と、
前記穀粒タンクの横外側壁の後縁部に沿って上下に長く形成され、前記縦搬送装置の横外側方を覆う後部カバーと、が備えられ、
前記横外側壁と前記後部カバーとが面状に連なっており、
前記後部カバーは、縦向き軸芯周りで揺動して、前記縦搬送装置を横外側方から覆う第一状態と前記縦搬送装置の横外側方を開放する第二状態とに切替可能なように、ヒンジを介して前記穀粒タンクの後部に支持され、
前記後部カバーを前記第一状態にロックするロック機構と、前記後部カバーが前記第一状態のときのみに前記後部カバーのうちの前記ヒンジよりも上下方向における遊端部側部分を保持する保持機構と、が備えられているコンバイン。
【請求項2】
前記保持機構に、前記穀粒タンクに設けられた第一部と、前記後部カバーに設けられた第二部と、が備えられ、
前記第二部は、前記後部カバーの開き動作によって前記第一部から離れるとともに前記後部カバーの閉じ動作によって前記第一部に近づき、かつ、前記後部カバーが前記第一状態のときに前記第一部に接触している請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記後部カバーは弾性変形可能であり、
前記第一部と前記第二部とは、前記後部カバーが前記第一状態になる前に当接し、
前記第一部と前記第二部とが当接した後の前記後部カバーの前記第一状態への閉じ動作によって前記後部カバーが弾性変形し、前記後部カバーが前記第一状態となったとき、前記後部カバーの弾性復元力によって前記第二部が前記第一部に押し付けられている請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記第二部は弾性変形可能であり、
前記第一部と前記第二部とは、前記後部カバーが前記第一状態になる前に当接し、
前記第一部と前記第二部とが当接した後の前記後部カバーの前記第一状態への閉じ動作によって前記第二部が弾性変形し、前記後部カバーが前記第一状態となったとき、前記第二部の弾性復元力によって前記第二部が前記第一部に押し付けられている請求項2に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記穀粒タンクに、前記穀粒タンクの下部に形成され、徐々に左右幅が狭まる下窄まり部と、前記下窄まり部の横外側方を覆う下部カバーと、が備えられ、
前記下部カバーは、前記下窄まり部を横外側方から覆う閉状態と、前記下窄まり部の横外側方を開放する開状態とに、切替可能であり、
前記後部カバーは、前記穀粒タンクの横外側壁の後縁部と前記下部カバーの後縁部とに沿って上下に長く形成され、
前記横外側壁と前記下部カバーと前記後部カバーとが面状に連なっており、
前記保持機構は、前記後部カバーが前記第一状態のときに前記後部カバーのうちの前記下部カバーの後方に位置する部分を保持する請求項1から4の何れか一項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記保持機構に、前記下部カバーに設けられた第一部と、前記後部カバーに設けられた第二部と、が備えられ、
前記第二部は、前記後部カバーの開き動作によって前記第一部から離れるとともに前記後部カバーの閉じ動作によって前記第一部に近づき、かつ、前記後部カバーが前記第一状態のときに前記第一部に接触している請求項5に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記第二部は、前記後部カバーが前記第一状態のときに前記第一部に対して機体横内側から接触しており、前記後部カバーの前記第一状態からの開き動作によって前記第一部に対して機体横内側に離れ、
前記後部カバーが前記第一状態のときに、前記下部カバーを前記閉状態と前記開状態とに状態変更可能である請求項6に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記後部カバーは、前記穀粒タンクの横外側壁の後方に位置する上側部分と前記下部カバーの後方に位置する下側部分とが一体の一体成型物である請求項5に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫物を貯留する穀粒タンクを備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコンバインとして、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。この従来のコンバインは、穀粒タンクの後方に設けられ、穀粒タンクに貯留された穀粒を排出する縦搬送装置(特許文献1では「縦向き搬送装置」)と、縦搬送装置を横外側方から覆う後部カバーとが備えられている。後部カバーは、穀粒タンクの横外側壁(特許文献1では「側壁」)と穀粒タンクの下側部部分を覆う下部カバーとの後縁部に沿うように、上下に長く形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-000075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のコンバインでは、例えば後部カバーのうちのヒンジよりも下側部分等、ヒンジから離れた箇所は保持されていない構成となっていた。そのため、コンバインの走行に伴う振動によって、後部カバーの下側部分がバタつき、騒音が生じていた。
【0005】
本発明の目的は、コンバインの走行時において、後部カバーのバタつきを抑制することができるコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコンバインは、穀粒を貯留する穀粒タンクと、前記穀粒タンクの後方において上下方向に沿って延ばされるとともに前記穀粒タンクの後下部に接続されて前記穀粒タンクに貯留された穀粒を排出する縦搬送装置と、前記穀粒タンクの横外側壁の後縁部に沿って上下に長く形成され、前記縦搬送装置の横外側方を覆う後部カバーと、が備えられ、前記横外側壁と前記後部カバーとが面状に連なっており、前記後部カバーは、縦向き軸芯周りで揺動して、前記縦搬送装置を横外側方から覆う第一状態と前記縦搬送装置の横外側方を開放する第二状態とに切替可能なように、ヒンジを介して前記穀粒タンクの後部に支持され、前記後部カバーを前記第一状態にロックするロック機構と、前記後部カバーが前記第一状態のときのみに前記後部カバーのうちの前記ヒンジよりも上下方向における遊端部側部分を保持する保持機構と、が備えられている。
【0007】
コンバインの走行時には、後部カバーは縦搬送装置を横外側方から覆う第一状態となっている。本発明によれば、後部カバーが第一状態のとき、保持機構により、後部カバーのうちバタつきが発生し易い部分、つまり、後部カバーのうちヒンジが設けられていないヒンジよりも上下方向における遊端部側部分が保持される。その結果、コンバインの走行時において、後部カバーのバタつきを抑制することが可能となる。
【0008】
本発明においては、前記保持機構に、前記穀粒タンクに設けられた第一部と、前記後部カバーに設けられた第二部と、が備えられ、前記第二部は、前記後部カバーの開き動作によって前記第一部から離れるとともに前記後部カバーの閉じ動作によって前記第一部に近づき、かつ、前記後部カバーが前記第一状態のときに前記第一部に接触していると好適である。
【0009】
この構成によれば、第一部と第二部とが後部カバーが第一状態となったときに接触するという簡易な構成で、保持機構を実現することが可能となる。
【0010】
本発明においては、前記後部カバーは弾性変形可能であり、前記第一部と前記第二部とは、前記後部カバーが前記第一状態になる前に当接し、前記第一部と前記第二部とが当接した後の前記後部カバーの前記第一状態への閉じ動作によって前記後部カバーが弾性変形し、前記後部カバーが前記第一状態となったとき、前記後部カバーの弾性復元力によって前記第二部が前記第一部に押し付けられていると好適である。
【0011】
この構成によれば、後部カバーが第一状態のとき、後部カバーの弾性復元力によって第二部が第一部に押し付けられていることから、保持機構は、よりしっかりと後部カバーを保持することが可能となる。
【0012】
本発明においては、前記第二部は弾性変形可能であり、前記第一部と前記第二部とは、前記後部カバーが前記第一状態になる前に当接し、前記第一部と前記第二部とが当接した後の前記後部カバーの前記第一状態への閉じ動作によって前記第二部が弾性変形し、前記後部カバーが前記第一状態となったとき、前記第二部の弾性復元力によって前記第二部が前記第一部に押し付けられていると好適である。
【0013】
この構成によれば、後部カバーが第一状態のとき、第二部の弾性復元力によって第二部が第一部に押し付けられていることから、保持機構は、よりしっかりと後部カバーを保持することが可能となる。
【0014】
本発明においては、前記穀粒タンクに、前記穀粒タンクの下部に形成され、徐々に左右幅が狭まる下窄まり部と、前記下窄まり部の横外側方を覆う下部カバーと、が備えられ、前記下部カバーは、前記下窄まり部を横外側方から覆う閉状態と、前記下窄まり部の横外側方を開放する開状態とに、切替可能であり、前記後部カバーは、前記穀粒タンクの横外側壁の後縁部と前記下部カバーの後縁部とに沿って上下に長く形成され、前記横外側壁と前記下部カバーと前記後部カバーとが面状に連なっており、前記保持機構は、前記後部カバーが前記第一状態のときに前記後部カバーのうちの前記下部カバーの後方に位置する部分を保持すると好適である。
【0015】
一般に、下窄まり部を横外側方から覆う下部カバー及び後部カバーのうち下部カバーの後方に位置する部分は、下窄まり部に合わせて機体左右方向内側に傾斜するように構成されている。後部カバーのうち下部カバーの後方に位置する部分は、他のヒンジの揺動軸芯よりも機体左右方向内側に位置していることから、他のヒンジの揺動軸芯に対応するヒンジを設けることは困難である。本発明によれば、後部カバーのうちヒンジを設けることが困難であることからバタつきが生じ易い部分が、保持機構により保持される構成となるため、後部カバーはより効率的にバタつきを抑制することが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記保持機構に、前記下部カバーに設けられた第一部と、前記後部カバーに設けられた第二部と、が備えられ、前記第二部は、前記後部カバーの開き動作によって前記第一部から離れるとともに前記後部カバーの閉じ動作によって前記第一部に近づき、かつ、前記後部カバーが前記第一状態のときに前記第一部に接触していると好適である。
【0017】
この構成によれば、第一部と第二部とが後部カバーが第一状態となったときに接触するという簡易な構成で、保持機構を実現することが可能となる。
【0018】
本発明においては、前記第二部は、前記後部カバーが前記第一状態のときに前記第一部に対して機体横内側から接触しており、前記後部カバーの前記第一状態からの開き動作によって前記第一部に対して機体横内側に離れ、前記後部カバーが前記第一状態のときに、前記下部カバーを前記閉状態と前記開状態とに状態変更可能であると好適である。
【0019】
この構成によれば、後部カバーの第一状態及び第二状態への切り替えと、下部カバーの閉状態と開状態とへの状態変更との順序に関わらず、保持機構によって後部カバーの遊端部側部分が保持される構成とすることが可能となる。
【0020】
本発明においては、前記後部カバーは、前記穀粒タンクの横外側壁の後方に位置する上側部分と前記下部カバーの後方に位置する下側部分とが一体の一体成型物であると好適である。
【0021】
この構成によれば、後部カバーを構成する部品数が減ることから、後部カバーの製造時の作業工数を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】コンバインの左側面図である。
図2】コンバインの平面図である。
図3】下部カバーの開閉を示すコンバインの背面図である。
図4】第二状態の後部カバーの内側面図である。
図5】後部カバーの揺動に伴う保持機構の動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0024】
〔コンバインの全体構成〕
図1及び図2に示すように、本発明に係るコンバインは、左右一対のクローラ走行装置1によって自走する走行機体2の前部に、植立穀稈を刈り取る刈取部3が備えられている。走行機体2の前部右側に、キャビン4にて周囲が覆われた運転部5が備えられている。
【0025】
運転部5の後方には、刈取部3にて刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置6と、脱穀処理にて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク7とが、横方向に並ぶ状態で配備されている。穀粒タンク7は機体右側に位置し、脱穀装置6は機体左側に位置している。つまり、運転部5は穀粒タンク7の前方に位置している。運転部5における運転座席8の下方にエンジンEが備えられている。穀粒タンク7の後方に、穀粒タンク7に貯留された穀粒を機外に排出する穀粒排出装置9が備えられている。
【0026】
刈取部3は、刈取対象となる植立穀稈の株元を分草案内する分草具10と、分草された植立穀稈を縦姿勢に引き起こす複数の引き起こし装置11、引き起された植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置12、刈取穀稈を縦姿勢から徐々に横倒れ姿勢になるように姿勢変更しながら後方に搬送して脱穀装置6に供給する穀稈搬送装置13等が備えられている。
【0027】
図示はしていないが、脱穀装置6は、供給された刈取穀稈の株元側を脱穀フィードチェーンによって挟持搬送しながら、穂先側を扱室にて扱き処理して脱穀処理を行う。脱穀処理された後の処理物が下方の選別部にて穀粒とワラ屑等に選別される。穀粒は、図示しない一番物搬送スクリューにより脱穀装置6の右横側外方に搬出されたのち、揚穀コンベア15により揚送されて穀粒タンク7の内部に搬送される。穀粒タンク7は、脱穀装置6から送り込まれる穀粒を貯留する。その後、穀粒タンク7に貯留された穀粒は、穀粒排出装置9により外部に搬出される。
【0028】
〔穀粒タンクについて〕
穀粒タンク7は、前後左右夫々の側面を有する状態で周囲が囲まれて穀粒の貯留空間(図示せず)が形成されている。図3に示すように、穀粒タンク7の下部には、徐々に左右幅が狭まる下窄まり部7Aが形成されている。
【0029】
図1及び図2に示すように、穀粒タンク7の底部には、前後向き軸芯周りで回転することにより、貯留される穀粒を機体後部側に向けて搬送する底スクリュー16が備えられている。穀粒排出装置9は、穀粒タンク7の後方において上下方向に沿って延ばされるとともに穀粒タンク7の後下部に接続され、底スクリュー16から搬出される穀粒を受け入れることにより、穀粒タンク7に貯留された穀粒を排出する縦送りスクリューコンベア17(本発明の「縦搬送装置」に相当)と、その縦送りスクリューコンベア17の上端部に連なる基端部から先端部の排出口18まで穀粒を横方向に向けて搬送する横送りスクリューコンベア19とが備えられている。脱穀装置6の後方には、排ワラ処理装置20が備えられている。
【0030】
支持構成については詳述しないが、穀粒タンク7は、タンク全体が縦送りスクリューコンベア17の回転軸芯である縦向き軸芯X周りで揺動可能に支持されている。穀粒タンク7は、縦向き軸芯X周りで揺動して、機体内方側に収納された通常の貯留状態(図1図2参照)と、図2の仮想線で示すように、機体横側外方に張り出すように揺動するメンテナンス状態とに切り換え可能に構成されている。穀粒タンク7は貯留状態において図示しない位置保持機構により姿勢が保持される。
【0031】
図1及び図2に示すように、穀粒タンク7は、穀粒タンク7の機体外周側である右側面を構成する側板22(本発明の「横外側壁」に相当)と、側板22の下方に位置し、下窄まり部7Aの横外側方を覆う下部カバー23と、側板22及び下部カバー23以外のタンク本体部24と、を有する。
【0032】
図1に示すように、側板22は、揺動によって、開口(図示せず)を閉塞して貯留空間への穀粒の貯留を可能にする閉塞状態と、開口を開放して貯留空間へのアクセスを可能にする開放状態とに縦向き軸芯Y1周りで揺動可能に構成されている。
【0033】
〔下部カバーについて〕
図1及び図3に示すように、下部カバー23は、側板22の下方において、下窄まり部7Aの横外側方を覆うように配置されている。
【0034】
下部カバー23に、下部カバー23を走行機体2に係止するための複数の係止部31が設けられている。複数の係止部31は、第一係止部32及び第二係止部33を含んでいる。
【0035】
図1に示すように、下部カバー23に、前後二つの第一係止部32が設けられている。以下では、後側の第一係止部32について説明する。尚、前側の第一係止部32は、後側の第一係止部32と同様の構成を備えている。
【0036】
図1及び図3に示すように、第一係止部32は、下部カバー23のうちの上側部分に設けられている。また、タンク本体部24において、第一係止部32のそれぞれに対応する位置に、第一被係止部34が設けられている。つまり、第一被係止部34は、二つ設けられている。第一被係止部34は、平面視でU字状に形成された棒状の部材である。第一係止部32は、第一被係止部34に係止可能に構成されている。
【0037】
図3に示すように、第一係止部32は、操作具32a及び爪部32bを有している。爪部32bは、操作具32aから機体左右方向内側へ延びている。詳しくは説明しないが、爪部32bは、下部カバー23に対して人為操作によって姿勢変化可能に構成されている。操作具32aを人為操作することによって、爪部32bが揺動し、第一被係止部34は、係止状態と係止解除状態との間で切り替え可能に構成されている。
【0038】
図1に示すように、下部カバー23の下部に、二つの第二係止部33が設けられている。本実施形態では、下部カバー23の前部及び後部に、それぞれ一つの第二係止部33が設けられている。以下では、後側の第二係止部33について説明する。尚、前側の第二係止部33は、図示されていないが、後側の第二係止部33と同様の構成を備えている。
【0039】
図3に示すように、第二係止部33は、下部カバー23の内壁面から機体左右方向内側へ向けて延びている。即ち、第二係止部33は、下部カバー23の内壁面から左側へ延びている。
【0040】
第二係止部33の左端部に、下側へ開いた係止凹部33aが形成されている。これにより、第二係止部33はフック状に構成されている。
【0041】
即ち、下部カバー23に、人為操作によって係止状態と係止解除状態との間で切り替え可能な第一係止部32と、フック状であると共に第一係止部32よりも上側または下側に位置する第二係止部33と、が設けられている。
【0042】
また、穀粒タンク7の右下部に、垂直姿勢の板状部25が設けられている。板状部25は、タンク本体部24の後壁に連結されている。板状部25に、前後方向に延びる棒状部材で構成された第二被係止部35が固定されている。第二被係止部35は、板状部25の前側面から前方へ延びている。係止凹部33aは、第二被係止部35に係止可能に構成されている。
【0043】
これらの構成により、下部カバー23は、下窄まり部7Aを横外側方から覆う閉状態と、下窄まり部7Aの横外側方を開放する開状態とに、切替可能に構成されている。
【0044】
下部カバー23を走行機体2から取り外す際、作業者は、まず、操作具32aを人為操作することによって第一被係止部34を係止解除状態にする。そして、第二被係止部35から係止凹部33aを離脱させることにより、下部カバー23を機体から取り外すことができる。
【0045】
下部カバー23を機体に取り付ける際、作業者は、まず、第二被係止部35に係止凹部33aを係止させる。そして、係止凹部33aを揺動支点として下部カバー23の上部を左側に押し付けるように揺動させると、爪部32bが第一被係止部34に係止される。これにより、下部カバー23を走行機体2に取り付けることができる。
【0046】
〔後部カバーについて〕
図1及び図2に示すように、穀粒タンク7の側板22の後部に、縦送りスクリューコンベア17の横外側方を覆う後部カバー40が備えられている。
【0047】
後部カバー40は、穀粒タンク7の側板22の後縁部と下部カバー23の後縁部23aとに沿って上下に長く形成されている。後部カバー40は、穀粒タンク7の側板22の後方に位置する上側部分と下部カバー23の後方に位置する下側部分とが一体の一体成型物である。後部カバー40は、板形状に形成されており、弾性変形可能に構成されている。また、本実施形態では、穀粒タンク7の側板22と下部カバー23と後部カバー40とは、面状に連なっている。
【0048】
後部カバー40は、図1及び図2に示すように、縦送りスクリューコンベア17の横外側方を覆う閉状態(本発明の「第一状態」に相当)と、図2の仮想線で示すように、縦送りスクリューコンベア17の横外側方を開放する開状態(本発明の「第二状態」に相当)と切替可能なように、縦向き軸芯Y2周りで揺動可能に支持されている。
【0049】
具体的には、図4に示すように、後部カバー40の前側縁部分には、二つのヒンジ41が設けられており、後部カバー40は、ヒンジ41を介して穀粒タンク7の側板22の後部に支持される。二つのヒンジ41のうちの一方は、後部カバー40の上側部分に配置され、二つのヒンジ41のうちの他方は、後部カバー40の下側部分、かつ、下部カバー23に対応する高さよりも高い位置に配置されている。この構成により、後部カバー40は、閉状態と開状態とに切替可能に構成されている。
【0050】
図2に示すように、縦送りスクリューコンベア17の後方には、縦送りスクリューコンベア17の後方を覆う背面カバー21が設けられており、後部カバー40は、閉状態においては、穀粒タンク7の側板22と背面カバー21との間を横外側方から覆うように構成されている。
【0051】
図3及び図4に示すように、後部カバー40に、閉状態において後部カバー40の後側縁部分から機体左右方向内側へ向けて延出する対向部42が形成されている。対向部42は、後部カバー40が閉状態のときに、背面カバー21と対向する。
【0052】
背面カバー21には、穀粒タンク7側に向けて揺動可能に構成されているロック部21Aと、ロック部21A以外の背面カバー本体部21Bとが備えられている。ロック部21Aは、背面カバー21のうちの右上部分、つまり、後部カバー40の対向部42と対向する位置に設けられている。ロック部21Aは、ロック部21Aの左縁に位置する縦向き軸芯(図示せず)周りで、背面カバー本体部21Bに揺動可能に支持されている。
【0053】
本実施形態では、対向部42には、対向部42の上側部分と下側部分とに、背面カバー21に向けて突出する二つの突出部43が備えられている。ロック部21Aのうち二つの突出部43に対応する位置に、二つの係止孔21aが形成されている。後部カバー40は、突出部43と係止孔21aとによって構成されているロック機構Kによって、閉状態にロックされる。ロック機構Kは、後部カバー40が閉状態になると、突出部43が係止孔21aに係止されて、後部カバー40を閉状態にロックする。
【0054】
背面カバー21には、ロック部21Aを対向部42に向けて付勢する付勢機構21Cが備えられている。付勢機構21Cの付勢力により、ロック部21Aは対向部42に向けて付勢され、突出部43と係止孔21aとの係止状態が維持される。詳しくは説明しないが、付勢機構21Cは、ロック部21Aを挿通するボルトにコイルバネを嵌装させ、コイルバネの付勢力によりロック部21Aを対向部42に向けて付勢するように構成されている。
【0055】
作業者が後部カバー40を開状態から閉状態に閉じ動すると、突出部43は、ロック部21Aに当接するとともにロック部21Aを穀粒タンク7側に向けて押圧する。このとき、押圧されたロック部21Aは、ロック部21Aを穀粒タンク7側に揺動されると同時に、突出部43は係止孔21aに向けて移動する。突出部43が係止孔21aに到達すると、付勢機構21Cの付勢力により、突出部43が係止孔21aに差し込まれ、ロック部21Aは元の状態に戻される。
【0056】
後部カバー40を閉状態から開状態に開き動作する際、作業者は、付勢機構21Cの付勢力に抗して、ロック部21Aを穀粒タンク7側に向けて揺動させることにより、突出部43から係止孔21aが引き抜かれ、突出部43と係止孔21aとの係止状態を解除することができる。このとき、作業者は、ロック部21Aに設けられている操作具21bを人為操作することによって、突出部43と係止孔21aとの係止状態を解除することができる。なお、本実施形態では、ヒンジ41に設けられた付勢バネ44により、後部カバー40は、後部カバー40の開き動作方向に付勢されているため、突出部43から係止孔21aが引き抜かれると、後部カバー40は、自動的に開き動作する。
【0057】
図4に示すように、後部カバー40の縦送りスクリューコンベア17と対向する面には、二つの補強材45が設けられている。本実施形態では、補強材45は、断面L字型形状に構成されている。
【0058】
〔保持機構について〕
図4及び図5に示されるように、下部カバー23と後部カバー40とに、後部カバー40が閉状態のときに、後部カバー40のうちのヒンジ41よりも下側部分、つまり、後部カバー40のうちのヒンジ41よりも上下方向における遊端部側部分を保持する保持機構50が備えられている。
【0059】
保持機構50は、穀粒タンク7の下部カバー23に設けられている第一当接部51(本発明の「第一部」に相当)と、後部カバー40に設けられた第二当接部52(本発明の「第二部」に相当)とを備える。
【0060】
下部カバー23の後縁部23aは、下部カバー23の後縁から機体左右方向内側へ向けて延出するように形成されている。図3で示すように、本実施形態では、第一当接部51は、後縁部23aの下側部分の一部を切り欠くことで形成された切欠部分のうち、下部カバー23の閉状態において上下方向に沿って延びる縦縁部51aと、縦縁部51aに取り付けられた弾性部材51bとで構成される。
【0061】
図5で示すように、後部カバー40は、後部カバー40が図5において実線で示す閉状態において、前縁から機体左右方向内側へ向けて延出する前縁部40aを有する。本実施形態では、第二当接部52は、前縁部40aの下側部分に、前縁部40aから前方に向けて突出する棒状部材で構成されている。図4で示すように、本実施形態では、第二当接部52は、前縁部40aの下側部分、つまり、後部カバー40の前縁部40aのうちヒンジ41よりも上下方向における下側の遊端部側部分に位置する箇所に設けられている。
【0062】
図5において実線で示すように、後部カバー40が閉状態であり、かつ、下部カバー23が閉状態であるとき、第一当接部51と第二当接部52とは、当接している。この構成により、保持機構50は、後部カバー40が閉状態のときに後部カバー40のうちの下部カバー23の後方に位置する部分を保持する。
【0063】
後部カバー40が、人為操作により、閉状態から開状態へ切替られるとき、第二当接部52は、後部カバー40の開き動作によって第一当接部51から離れる。また、後部カバー40が、人為操作により、開状態から閉状態へ切替られるとき、第二当接部52は、後部カバー40の閉じ動作によって第一当接部51に近づく。後部カバー40が閉状態のとき、第二当接部52は、第一当接部51に接触している。
【0064】
具体的には、第一当接部51と第二当接部52とは、後部カバー40が閉状態になる前に当接している。第一当接部51と第二当接部52とが当接した後、後部カバー40の閉状態への閉じ動作によって後部カバー40が弾性変形する。そして、後部カバー40が閉状態となったとき、後部カバー40の弾性復元力によって第二当接部52が第一当接部51に押し付けられる。
【0065】
第二当接部52は、後部カバー40の開き動作によって第一当接部51から離れるとともに後部カバー40の閉じ動作によって第一当接部51に近づく。後部カバー40が閉状態のとき、第二当接部52は、第一当接部51に接触している。
【0066】
具体的には、第二当接部52は、後部カバー40が閉状態のときに第一当接部51に対して機体横内側から接触しており、後部カバー40の閉状態からの開き動作によって第一当接部51に対して機体横内側に離れる。また、後部カバー40が閉状態のとき、下部カバー23は、閉状態と開状態とに状態変更可能である。
【0067】
この構成により、保持機構50は、後部カバー40が閉状態のときのみに後部カバー40のうちのヒンジ41よりも上下方向における遊端部側部分である後部カバー40の下側部分を保持する。また、後部カバー40の閉状態及び開状態への切り替えと、下部カバー23の閉状態と開状態とへの状態変更との順序に関わらず、保持機構50によって後部カバー40の遊端部側部分が保持される構成とすることが可能となる。
【0068】
〔別実施形態〕
以下、上記実施形態に変更を加えた別実施形態を例示する。
【0069】
(1)上記実施形態では、第一当接部51は、下部カバー23に設けられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、第一当接部51は、タンク本体部24に設けられていてもよい。
【0070】
(2)上記実施形態では、第一当接部51は、縦縁部51aと弾性部材51bとで構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、下部カバー23の下窄まり部7A側の面に直接設けられた弾性部材で構成されていてもよい。
【0071】
(3)上記実施形態では、後部カバー40は弾性変形可能であり、後部カバー40が閉状態となったとき、後部カバー40の弾性復元力によって第二当接部52が第一当接部51に押し付けられている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、第二当接部52は弾性変形可能であり、第一当接部51と第二当接部52とは、後部カバー40が第一状態になる前に当接し、第一当接部51と第二当接部52とが当接した後の後部カバー40の閉状態への閉じ動作によって第二当接部52が弾性変形し、後部カバー40が閉状態となったとき、第二当接部52の弾性復元力によって第二当接部52が第一当接部51に押し付けられている構成としてもよい。
【0072】
(4)上記実施形態では、穀粒タンク7は、下窄まり部7Aの横外側方を覆う下部カバー23が備える構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、穀粒タンク7は、下部カバー23を備えない構成としてもよい。このとき、穀粒タンク7の側板22と後部カバー40とが面状に連なっている構成となる。
【0073】
(5)上記実施形態では、第一当接部51と第二当接部52とは、後部カバー40が閉状態になる前に当接している構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、後部カバー40が閉状態になると同時に、第一当接部51と第二当接部52とが当接している構成としてもよい。
【0074】
(6)上記実施形態では、第二当接部52は、前縁部40aから前方に向けて突出する棒状部材で構成されている構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、第二当接部52は、前縁部40aから機体左右方向内側に向けて延びる弾性部材等で構成され、第二当接部52は、後部カバー40が閉状態のときに第一当接部51に対して機体横外側から接触する構成としてもよい。
【0075】
(7)上記実施形態では、後部カバー40は、の一体成型物である構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、後部カバー40は、複数の部材から構成されていてもよい。
【0076】
(8)上記実施形態では、後部カバー40は、後部カバー40は、補強材45を備える構成を例に説明したが、後部カバー40は、補強材45を備えない構成としてもよい。
【0077】
(9)上記実施形態では、ヒンジ41に付勢バネ44が設けられた構成を例に説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、ヒンジ41に付勢バネ44が設けられていない構成としてもよい。
【0078】
尚、上記の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、自脱型コンバインに限らず、刈取穀稈の全稈を脱穀装置に投入する普通型コンバインにも適用できる。
【符号の説明】
【0080】
7 :穀粒タンク
7A :下窄まり部
17 :縦送りスクリューコンベア(縦搬送装置)
22 :側板(横外側壁)
23 :下部カバー
23a :後縁部
40 :後部カバー
41 :ヒンジ
50 :保持機構
K :ロック機構
51 :第一当接部(第一部)
52 :第二当接部(第二部)
Y2 :縦向き軸芯
図1
図2
図3
図4
図5