IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社長谷工コーポレーションの特許一覧 ▶ クボタシーアイ株式会社の特許一覧

特開2024-73934木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造
<>
  • 特開-木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造 図1
  • 特開-木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造 図2
  • 特開-木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造 図3
  • 特開-木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造 図4
  • 特開-木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造 図5
  • 特開-木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造 図6
  • 特開-木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造 図7
  • 特開-木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造 図8
  • 特開-木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073934
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】木造中空床に好適な樹脂製の排水集合管および防火区画構造
(51)【国際特許分類】
   A62C 3/16 20060101AFI20240523BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240523BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20240523BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20240523BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A62C3/16 B
E04B1/94 F
E04B1/94 R
F16L5/04
F16L5/00 N
E03C1/12 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184926
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅原 正道
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 有二
(72)【発明者】
【氏名】井上 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】足立 宏平
(72)【発明者】
【氏名】安部 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
【テーマコード(参考)】
2D061
2E001
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AB10
2D061AD03
2E001DE04
2E001EA08
2E001FA13
2E001FA14
2E001HA32
2E001HA33
2E001HA34
2E001HB02
2E001HE01
2E001HE03
2E001MA02
(57)【要約】
【課題】木造中空床において法規制に適合する防火区画構造を実現する樹脂製の排水集合管を提供する。
【解決手段】排水集合管1003は、火災時に排水集合管1003の内部を閉塞させる内上側熱膨張性耐火材1712、および、火災時に床材500との間隙を閉塞させる外上側熱膨張性耐火材1812を備え、内上側熱膨張性耐火材1712よりも外周側であって外上側熱膨張性耐火材1812よりも内周側に鋼製スリーブ1810が設けられ、火災時に排水集合管1003に含まれる下方配管1510の内部を閉塞させる内下側熱膨張性耐火材1912、および、火災時に天井材600との間隙を閉塞させる外下側熱膨張性耐火材1913を備え、内下側熱膨張性耐火材1912よりも外周側であって外下側熱膨張性耐火材1913よりも内周側に鋼製スリーブ1910が設けられている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体を貫通して防耐火構造を実現できる樹脂製の排水集合管であって、
前記区画体は、上層階の床を構成する、少なくとも一部に木製素材を含んで構成された床材と、前記床材と中空空間をあけて設けられる下層階の天井を構成する、不燃材料を含んで構成された天井材と、を備えており、
前記排水集合管は、前記床材の上方に突出する上部管と、前記上部管の下方に接続される下部管とを含み、
前記上部管は、上階から排水を流入させる上立管を接続する上立管接続部と、前記床材の上方において横枝管を接続する少なくとも1つの横枝管接続部とを含み、
前記下部管は、下階へ排水を流出させる下方配管を接続する下方配管接続部を含み、
前記排水集合管は、前記下方配管、少なくとも1の熱膨張性耐火材、または、不燃材を含む耐火部材を含む場合があり、
前記排水集合管は、前記床材の防耐火構造を実現するための少なくとも1の上側熱膨張性耐火材を含み、
前記上側熱膨張性耐火材は前記床材の端面と対向する位置に設けられている、または、前記床材の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた前記耐火部材が前記床材の端面と対向する位置に上側耐火部材として設けられるとともに前記上側耐火部材の内周側に前記上側熱膨張性耐火材が設けられている、
ことを特徴とする、排水集合管。
【請求項2】
前記上側熱膨張性耐火材の上端は、前記床材の上面よりも下方にあることを特徴とする、請求項1に記載の排水集合管。
【請求項3】
前記耐火部材は、ロックウールまたは鋼板を含む不燃材料を含んで構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の排水集合管。
【請求項4】
前記排水集合管は、前記上側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材を含み、
前記内上側熱膨張性耐火材の高さ位置には、前記内上側熱膨張性耐火材よりも外周側に、前記上側耐火部材が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の排水集合管。
【請求項5】
前記排水集合管は、前記上側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材を含み、
前記内上側熱膨張性耐火材は、三層一体構造管における中間層に含まれることにより、前記排水集合管を形成する樹脂の成形前に混合されることにより、前記排水集合管の外周に当接されることにより、または、前記排水集合管の外層部材の一部を構成することにより、設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の排水集合管。
【請求項6】
前記排水集合管は、前記上側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材、および、火災時に前記床材と前記排水集合管との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための外上側熱膨張性耐火材を含み、
前記内上側熱膨張性耐火材よりも外周側であって前記外上側熱膨張性耐火材よりも内周側に、前記上側耐火部材が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の排水集合管。
【請求項7】
複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体を貫通して防耐火構造を実現できる樹脂製の排水集合管であって、
前記区画体は、上層階の床を構成する、少なくとも一部に木製素材を含んで構成された床材と、前記床材と中空空間をあけて設けられる下層階の天井を構成する、不燃材料を含んで構成された天井材と、を備えており、
前記排水集合管は、前記床材の上方に突出する上部管と、前記上部管の下方に接続される下部管とを含み、
前記上部管は、上階から排水を流入させる上立管を接続する上立管接続部と、前記床材の上方において横枝管を接続する少なくとも1つの横枝管接続部とを含み、
前記下部管は、下階へ排水を流出させる下方配管を接続する下方配管接続部を含み、
前記排水集合管は、前記下方配管、少なくとも1の熱膨張性耐火材、または、不燃材を含む耐火部材を含む場合があり、
前記排水集合管は、前記天井材の防耐火構造を実現するための少なくとも1の下側熱膨張性耐火材を含み、
前記下側熱膨張性耐火材は前記天井材の端面と対向する位置に設けられている、または、前記天井材の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた前記耐火部材が前記天井材の端面と対向する位置に下側耐火部材として設けられるとともに前記下側耐火部材の内周側に前記下側熱膨張性耐火材が設けられている、
ことを特徴とする、排水集合管。
【請求項8】
前記耐火部材は、ロックウールまたは鋼板を含む不燃材料を含んで構成されていることを特徴とする、請求項7に記載の排水集合管。
【請求項9】
前記排水集合管は、前記下側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材を含み、
前記内下側熱膨張性耐火材の高さ位置には、前記内下側熱膨張性耐火材よりも外周側に、前記下側耐火部材が設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の排水集合管。
【請求項10】
前記排水集合管は、前記下側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材を含み、
前記内下側熱膨張性耐火材は、三層一体構造管における中間層に含まれることにより、前記排水集合管を形成する樹脂の成形前に混合されることにより、前記排水集合管の外周に当接されることにより、または、前記排水集合管の外層部材の一部を構成することにより、設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の排水集合管。
【請求項11】
前記排水集合管は、前記下側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材、および、火災時に前記天井材と前記排水集合管との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための外下側熱膨張性耐火材を含み、
前記内下側熱膨張性耐火材よりも外周側であって前記外下側熱膨張性耐火材よりも内周側に、前記下側耐火部材が設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の排水集合管。
【請求項12】
前記排水集合管が前記耐火部材を含む場合に、前記排水集合管は、前記耐火部材が前記天井材から落下することを防止する機構を備えることを特徴とする、請求項7に記載の排水集合管。
【請求項13】
請求項1~請求項6のいずれかに記載の排水集合管を用いて前記床材側の防火区画が実現、
および/または、
請求項7~請求項12のいずれかに記載の排水集合管を用いて前記天井材側の防火区画が実現されたことを特徴とする、木造中空床の防火区画構造。
【請求項14】
前記排水集合管と前記床材または前記天井材との間隙に、耐熱性を備えたシーリング材が充填されたことを特徴とする、請求項13に記載の防火区画構造。
【請求項15】
前記床材側において前記耐熱性を備えたシーリング材の下方、または、前記天井材側において前記耐熱性を備えたシーリング材の上方、に耐火性を備えた無機繊維の集合体が充填されたことを特徴とする、請求項14に記載の防火区画構造。
【請求項16】
前記無機繊維の集合体は、グラスウールまたはロックウールを含むことを特徴とする、請求項15に記載の防火区画構造。
【請求項17】
前記排水集合管は、前記床材の上方に設置された支持部材により支持されることを特徴とする、請求項13に記載の防火区画構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材としての上側床と天井材としての下側床との間に中空空間を備える木造中空床を貫通して設けられる樹脂製の排水集合管であって、床材(上側床)の上方に突出するとともに上階から排水を流入させる上立管を接続する上立管接続部および床材(上側床)の上方において横枝管を接続する少なくとも1つの横枝管接続部を備えた上部管とその上部管の下方に接続される下部管とを含み熱膨張性耐火材(単に熱膨張材または耐火材と記載する場合がある)により所望の耐火性能を実現し得る樹脂製の排水集合管、および、そのような排水集合管を用いた耐火性能に関する法規制に適合する防火区画構造に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどには、給水設備および排水設備が設けられる。このうちの排水設備は、建物の各階層を上下に貫く縦管(立て管、上立て管、下立て管)と、各階層内に設置される横管(横枝管、枝管)と、これらを接続する排水配管継手(排水集合管、排水管継手、排水集合継手、集合継手とも称される)とを備えた排水配管構造が代表的なものとして広く知られている。
【0003】
そして、このような排水配管継手は、建築物に施工された際に、床スラブの貫通孔に配置される管本体(本体部、上部管)を備え、本体部は、上流側の上立て管に接続可能な上方立て管接続部を上端に、横枝管に接続可能な横枝管接続部を側面に、下流側の配管部材に接続可能な下方配管接続部を下端に、それぞれ有する。このような排水配管継手においては、排水配管継手内の排水の流れを変化させる部分(たとえば旋回羽根、整流羽根、羽根部材、偏流板等であって管壁内周面への突起物)を備えるものが多い。また、このような排水配管継手として、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成されたものが広く知られている。
【0004】
このような排水配管継手を用いた排水配管構造が備え付けられた建築物において、階下にて火災等が発生した場合に火炎や煤煙、有毒ガスが排水配管構造の焼損部位または溶損部位を通じて上層階へ流出することを防止するために、排水配管継手に熱膨張性耐火材を、配管材の外周に別途設けたり、配管材の壁部内に埋設したりして、火災時には床スラブの貫通孔をこの熱膨張性耐火材によって閉塞された状態を維持する(法規制に適合する防火区画構造を構成する)ことが行われている。
【0005】
ところで、脱炭素社会実現のために、最上階木造や積層木造の集合住宅の増加が予想され、これらの集合住宅が備える木造中空床の区画貫通部について、耐火性能に関する法規制に適合して、火災時でも木造構造部材への延焼がなく、施工性の良好な設備仕様の確立が求められている。この木造中空床は、上側床と天井材としての下側床との間に中空空間を備え、通常の床スラブ(鉄筋コンクリート(RC)、軽量気泡コンクリート(ALC)等)に比べて上下の床の厚みが薄く強度や耐火性能も劣る。
【0006】
このような中空空間を備える区画体において、ケーブルや給水管などの管体(冷媒管、熱媒管、水道管、下水管、注排水管、ガス管、暖冷房用媒体移送管、通気管、電線ケーブル、光ファイバーケーブル等)を階上から階下またはその逆に通すためには、区画体に形成された貫通部に管体を挿通するとともに、この区画体の貫通部が所定の法規制に適合する防火性能を備える必要がある。たとえば、特開2017-066851号公報(特許文献1)は、簡易な施工作業で確実に貫通部に施工でき、良好な防火性能を発現でき、施工コストを低減できる建築物の区画体における貫通部の防火構造を開示する。
【0007】
この特許文献1に開示された防火構造は、複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体を貫通しかつ管体が挿通される貫通部の防火構造であって、前記区画体は、上層階の床を構成する床材と、前記床材と間隔をあけて設けられる下層階の天井を構成する天井材と、を備えており、前記床材上の前記管体の周囲、前記天井材下の前記管体の周囲、前記床材上に突き出る前記管体の外周面および前記天井材下に突き出る前記管体の外周面のいずれかに、熱膨張性耐火材が設けられており、好ましくは、前記床材の貫通孔および/
または前記天井材の貫通孔には、前記管体との間の隙間を隠すように、シーリング材が設けられている。
【0008】
この特許文献1に開示された防火構造によると、床材上管体の周囲、天井材下の管体の周囲、床材上に突き出る管体の外周面および天井材下に突き出る管体の外周面のいずれかに、熱膨張性耐火材が設けられているので、室内空間で火災が発生して管体が溶融・焼失したとしても、熱膨張性耐火材が火災時の熱によってその厚さ方向である管体の径方向に熱膨張して、管体の溶融・焼失によりできる空間が閉塞される。また、熱膨張した熱膨張性耐火材によって、貫通孔が遮蔽されるうえ、貫通孔と管体との間の隙間はシーリング材により埋められているために、区画体の貫通孔および管体を完全に閉塞できるため、火炎や熱が貫通孔や管体から他の室内空間に侵入して延焼することを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-066851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された防火構造における、床材としては、ALC板、プレキャストコンクリート板などの耐火性の高い素材を用いており、また、天井材としては、強化石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、石膏ボードまたはケイ酸カルシウム板にセラミックブランケットやロックウールフェルトを積層させた積層板などを用いており、木製素材を含んでいない。さらに、特許文献1に開示された防火構造における管体は、上述した排水集合管ではなく直管に過ぎない。特に、薄い床で鋳鉄製の重量がある集合管を支えることになると、火災時に薄い床がダメージを受けて排水集合管を支えることができなくなり、排水集合管が落下してしまう可能性もあり、軽量な樹脂製の排水集合管を木造中空床に施工して、法規制に適合する防火性能を備えた防火区画構造を実現することが求められている。
【0011】
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体(上層階の床を構成する少なくとも一部に木製素材を含んで構成された床材と、床材と中空空間をあけて設けられる下層階の天井を構成する不燃材料を含んで構成された天井材とを備えた木造中空床)を貫通して施工される所望の耐火性能を実現し得る樹脂製の排水集合管、および、そのような排水集合管を用いて耐火性能に関する法規制に適合する防火区画構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のある局面に係る排水集合管は以下の技術的手段を講じている。
【0013】
本発明に係る排水集合管は、複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体を貫通して防耐火構造を実現できる樹脂製の排水集合管であって、前記区画体は、上層階の床を構成する、少なくとも一部に木製素材を含んで構成された床材と、前記床材と中空空間をあけて設けられる下層階の天井を構成する、不燃材料を含んで構成された天井材と、を備えており、前記排水集合管は、前記床材の上方に突出する上部管と、前記上部管の下方に接続される下部管とを含み、前記上部管は、上階から排水を流入させる上立管を接続する上立管接続部と、前記床材の上方において横枝管を接続する少なくとも1つの横枝管接続部とを含み、前記下部管は、下階へ排水を流出させる下方配管を接続する下方配管接続部を含み、前記排水集合管は、前記下方配管、少なくとも1の熱膨張性耐火材、または、不燃材を含む耐火部材を含む場合があり、前記排水集合管は、前記床材の防耐火構造を実現するための少なくとも1の上側熱膨張性耐火材を含み、前記上側熱膨張性耐火材は前記床材の端面と対向する位置に設けられている、または、前記床材の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた前記耐火部材が前記床材の端面と対向する位置に上側耐火部材として設けられるとともに前記上側耐火部材の内周側に前記上側熱膨張性耐火材が設けられていることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記上側熱膨張性耐火材の上端は、前記床材の上面よりも下方にあるよう
に構成することができる。
【0015】
さらに好ましくは、前記耐火部材は、ロックウールまたは鋼板を含む不燃材料を含んで構成されているように構成することができる。
【0016】
さらに好ましくは、前記排水集合管は、前記上側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材を含み、前記内上側熱膨張性耐火材の高さ位置には、前記内上側熱膨張性耐火材よりも外周側に、前記上側耐火部材が設けられているように構成することができる。
【0017】
さらに好ましくは、前記排水集合管は、前記上側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材を含み、前記内上側熱膨張性耐火材は、三層一体構造管における中間層に含まれることにより、前記排水集合管を形成する樹脂の成形前に混合されることにより、前記排水集合管の外周に当接されることにより、または、前記排水集合管の外層部材の一部を構成することにより、設けられているように構成することができる。
【0018】
さらに好ましくは、前記排水集合管は、前記上側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材、および、火災時に前記床材と前記排水集合管との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための外上側熱膨張性耐火材を含み、前記内上側熱膨張性耐火材よりも外周側であって前記外上側熱膨張性耐火材よりも内周側に、前記上側耐火部材が設けられているように構成することができる。
【0019】
また、上記目的を達成するため、本発明の別の局面に係る排水集合管は以下の技術的手段を講じている。
【0020】
本発明に係る排水集合管は、複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体を貫通して防耐火構造を実現できる樹脂製の排水集合管であって、前記区画体は、上層階の床を構成する、少なくとも一部に木製素材を含んで構成された床材と、前記床材と中空空間をあけて設けられる下層階の天井を構成する、不燃材料を含んで構成された天井材と、を備えており、前記排水集合管は、前記床材の上方に突出する上部管と、前記上部管の下方に接続される下部管とを含み、前記上部管は、上階から排水を流入させる上立管を接続する上立管接続部と、前記床材の上方において横枝管を接続する少なくとも1つの横枝管接続部とを含み、前記下部管は、下階へ排水を流出させる下方配管を接続する下方配管接続部を含み、前記排水集合管は、前記下方配管、少なくとも1の熱膨張性耐火材、または、不燃材を含む耐火部材を含む場合があり、前記排水集合管は、前記天井材の防耐火構造を実現するための少なくとも1の下側熱膨張性耐火材を含み、前記下側熱膨張性耐火材は前記天井材の端面と対向する位置に設けられている、または、前記天井材の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた前記耐火部材が前記天井材の端面と対向する位置に下側耐火部材として設けられるとともに前記下側耐火部材の内周側に前記下側熱膨張性耐火材が設けられていることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、前記耐火部材は、ロックウールまたは鋼板を含む不燃材料を含んで構成することができる。
【0022】
さらに好ましくは、前記排水集合管は、前記下側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材を含み、前記内下側熱膨張性耐火材の高さ位置には、前記内下側熱膨張性耐火材よりも外周側に、前記下側耐火部材が設けられているように構成することができる。
【0023】
さらに好ましくは、前記排水集合管は、前記下側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材を含み、前記内下側熱膨張性耐火材は、三層一体構造管における中間層に含まれることにより、前記排水集合管を形成する樹脂の成形前に混合されることにより、前記排水集合管の外周に当接されることにより、または、前記排水集合管の外層部材の一部を構成することにより、設けられているように構成することができる。
【0024】
さらに好ましくは、前記排水集合管は、前記下側熱膨張性耐火材として、火災時に前記排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材、およ
び、火災時に前記天井材と前記排水集合管との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための外下側熱膨張性耐火材を含み、前記内下側熱膨張性耐火材よりも外周側であって前記外下側熱膨張性耐火材よりも内周側に、前記下側耐火部材が設けられているように構成することができる。
【0025】
さらに好ましくは、前記排水集合管が前記耐火部材を含む場合に、前記排水集合管は、前記耐火部材が前記天井材から落下することを防止する機構を備えるように構成することができる。
【0026】
また、上記目的を達成するため、本発明のさらに別の局面に係る防火区画構造は以下の技術的手段を講じている。
【0027】
本発明に係る防火区画構造は、上述したいずれかの排水集合管を用いて前記床材側の防火区画が実現、および/または、上述したいずれかの排水集合管を用いて前記天井材側の防火区画が実現されたことを特徴とする。
【0028】
好ましくは、前記排水集合管と前記床材または前記天井材との間隙に、耐熱性を備えたシーリング材が充填されたように構成することができる。
【0029】
さらに好ましくは、前記床材側において前記耐熱性を備えたシーリング材の下方、または、前記天井材側において前記耐熱性を備えたシーリング材の上方、に耐火性を備えた無機繊維の集合体が充填されたように構成することができる。
【0030】
さらに好ましくは、前記無機繊維の集合体は、グラスウールまたはロックウールを含むように構成することができる。
【0031】
さらに好ましくは、前記排水集合管は、前記床材の上方に設置された支持部材により支持されるように構成することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によると、複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体(上層階の床を構成する少なくとも一部に木製素材を含んで構成された床材と、床材と中空空間をあけて設けられる下層階の天井を構成する不燃材料を含んで構成された天井材とを備えた木造中空床)を貫通して施工される所望の耐火性能を実現し得る樹脂製の排水集合管、および、そのような排水集合管を用いて耐火性能に関する法規制に適合する防火区画構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る排水集合管1001および第2の実施の形態に係る排水集合管1002が施工される床構造(その1)を示す図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る排水集合管1001の(A)側面半断面図、(B)図2(A)に示す領域2Bの施工後の拡大図である。
図3図2に示す排水集合管1001が図1に示す床構造に施工された、本発明の実施の形態に係る木造中空床の防火区画構造を示す図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る排水集合管1002の(A)側面半断面図、(B)図4(A)に示す領域4Bの施工後の拡大図である。
図5図4に示す排水集合管1002が図1に示す床構造に施工された、本発明の実施の形態に係る木造中空床の防火区画構造を示す図である。
図6】本発明の第3の実施の形態に係る排水集合管1003が施工される床構造(その2)を示す図である。
図7】本発明の第3の実施の形態に係る排水集合管1003の(A)側面半断面図、(B)図7(A)に示す領域7Bの施工後の拡大図、(C)図7(A)に示す領域7Cの施工後の拡大図である。
図8図7に示す排水集合管1003が図6に示す床構造に施工された、本発明の実施の形態に係る木造中空床の防火区画構造を示す図である。
図9図8における鋼製スリーブ1910を鍔付き鋼製スリーブ1920へ変更した排水集合管1004を用いた(A)木造中空床の防火区画構造を示す図、(B)図9(A)に示す領域9Bの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下において、本発明の実施の形態に係る樹脂製の排水集合管およびその排水集合管を木造中空床に施工した防火区画構造について、図1図9を参照して詳しく説明する。なお、以下の説明において、外周面と外表面と外側、外層側と外周側と外側、内層側と内周側と内側、熱膨張性耐火材と耐火材と熱膨張材、防火区画構造と防耐火構造とは、明確に区別して記載していない場合がある。なお、耐火材(熱膨張性耐火材)と耐火部材とは区別している。また、断面図においてハッチングの種類により異なる部材を明確に区別していない場合がある。また、図において矢示とともに一点鎖線に付した(数字+(必要に応じて)アルファベットからなる)符号は、数字が図番を、アルファベットがその図における枝番(A、B、C等)を、それぞれ示し、その符号により特定される図には拡大図が示されている。
【0035】
以下においては、
・第1の実施の形態として、図1図3を参照して、上側床である床材側のみに熱膨張性耐火材および耐火部材(内上側熱膨張性耐火材1712ならびに上側耐火部材としてロックウールで形成された振動絶縁体1720および鋼板で形成された鋼製スリーブ1810)を備えた排水集合管1001およびその排水集合管1001を用いた防火区画構造を説明し、
・第2の実施の形態として、図4図5を参照して、上側床である床材側のみに熱膨張性耐火材および耐火部材(内上側熱膨張性耐火材1712および外上側熱膨張性耐火材1812ならびに上側耐火部材としてロックウールで形成された振動絶縁体1720)を備えた排水集合管1002およびその排水集合管1002を用いた防火区画構造を説明し、
・第3の実施の形態として、図6図9を参照して、上側床である床材側に熱膨張性耐火材および耐火部材(内上側熱膨張性耐火材1712および外上側熱膨張性耐火材1812ならびに上側耐火部材としてロックウールで形成された振動絶縁体1720および鋼板で形成された鋼製スリーブ1810)を備えるとともに、下側床である天井材側に熱膨張性耐火材および耐火部材(内下側熱膨張性耐火材1912および外下側熱膨張性耐火材1913ならびに下側耐火部材として鋼板で形成された鋼製スリーブ1910)を備えた排水集合管1003および第3の実施の形態の変形例に係る排水集合管1004ならびにその排水集合管1003を用いた防火区画構造を説明する。
【0036】
なお、本発明に係る防火区画構造は、後述するように、木造中空床における上側床である床材側に熱膨張性耐火材および耐火部材を設けることにより、または、木造中空床における上側床である床材側および下側床である天井材側に熱膨張性耐火材および耐火部材を設けることにより、実現されるものであるが、本発明の適用は、このように実現されるものであれば、木造中空床に限定されるものではない。たとえば、木造でなくても鉄骨造であっても構わないし、中空部分がCLT(Cross Laminated Timber:ひき板(ラミナ)を繊維方向が層ごとに直角に交わるように貼り合わせた大判の木質パネル建材)等により埋められているものであっても構わない。
【0037】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る排水集合管1001が好適に施工される木造中空床である床構造(その1)について説明する。図1に示すように、この木造中空床は、床材としての上側床(以下において床材100と記載する)と天井材としての下側床(以下において天井材200と記載する)との間に中空空間を備える。一例ではあるが、床材100は、普通石膏ボード110(厚みt=12.5mm)と構造用合板120(厚みt=12mm)とが重ね張りされて構成されており、天井材200は、強化石膏ボード210(厚みt=12.5mm)と強化石膏ボード220(厚みt=12.5mm)とが重ね張りされて構成されている。また、この木造中空床の構造として、受け材310(断面38mm×89mm)、木軸・根太320(断面38mm×184mm)および根太330(断面38mm×38mm)が設けられる。なお、このような木造中空床には、その床材100に貫通孔300(直径Φ210mm)およびその天井材200に貫通孔302(直径Φ180mm)が設けられている。また、これも一例に過ぎないが、床上面(床材100の上面)と床下面(天井材200の下面)との長さは233.5mmである。
【0038】
すなわち、この木造中空床は、複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体であって、本発明に係る樹脂製の排水集合管は、この木造中空床の貫通孔に施工されて防火区画構造を実現できる。そして、この区画体である木造中空床は、上層階の床を構成する、少なくとも一部に木製素材(ここでは構造用合板120)を含んで構成された床材100と、床材100と中空空間をあけて設けられる下層階の天井を構成する、不燃材料を含んで構成された天井材200とを備えるものである。
【0039】
図2を参照して、図1に示す木造中空床に好適に施工される樹脂製の排水集合管1001について説明する。この排水集合管1001は、床材100の上方に突出する上部管1100と、上部管1100の下方に接続される下部管1500とを含み、上部管1100は、上階から排水を流入させる上立管を接続する上立管接続部1110と、床材100の上方において横枝管を接続する少なくとも1つの(ここでは3つの)横枝管接続部1120とを含む。下部管1500は、下階へ排水を流出させる下方配管1510を接続する下方配管接続部1502を含む。ここで、この排水集合管1001は、下方配管1510、少なくとも1の熱膨張性耐火材、または、不燃材を含む耐火部材を含む場合がある。なお、下方配管1510が下部管1500と一体成型されているか、下方配管1510が下部管1500とが別体で成型されて接続されているのかについては、本発明はいずれにも限定されない。ここで、このように排水集合管が下方配管1510を含む場合とは、後述する天井材の防火区画構造を実現するために内下側熱膨張性耐火材1912が下方配管1510の内部を閉塞させて防耐火構造を実現することに対応する場合である。
【0040】
より詳しくは、上部管1100の上立管接続部1110には、ゴム輪付き受口部材1114が接続されておりこのゴム輪付き受口部材1114を介して上立管が接続される。上部管1100の横枝管接続部1120には、段違いソケット1122を介してゴム輪付き受口部材1124が接続されておりこれらの段違いソケット1122およびゴム輪付き受口部材1124を介して横枝管が接続される。なお、ゴム輪付き受口部材1114、段違いソケット1122およびゴム輪付き受口部材1124は、本発明に係る排水集合管に必須の構成ではない。
【0041】
ここで、この排水集合管1001に巻き付けられる外層部材1700(外層カバー)について図2を参照して説明する。この排水集合管1001は、燃焼した場合に、その熱によって熱膨張性耐火材(ここでは内上側熱膨張性耐火材1712)が径方向の内側に膨張し、樹脂製の排水集合管がその中空部を押しつぶして排水集合管を閉塞するようになっている。これによって、これらの排水集合管を用いた排水配管構造は、火災時に火炎、煙等が流通しないように管路を遮断できるようになっている。
【0042】
図2に示すように、この外層部材1700は、3層構造を備え、排水集合管1001の外表面から、制振材1714(または内上側熱膨張性耐火材1712)、耐火性無機繊維によって形成された振動絶縁体1720、遮音カバー1730の順に、排水集合管1001の上部管1100および/または下部管1500の外周面に設けられている。この3層構造における最内層1710は、内上側熱膨張性耐火材1712および制振材1714のいずれかである。
【0043】
最内層に位置する内上側熱膨張性耐火材1712は、たとえば、ブチルゴムを主成分とする樹脂分、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛、含水無機物および金属炭酸塩を含有する樹脂組成物、または、エポキシ樹脂、リン化合物、中和処理された熱膨張性黒鉛および無機充填剤を含有する樹脂組成物等から形成される。最内層に位置する制振材1714は、ブチル系(ブチルゴム等)またはアスファルト系(ゴムアスファルト、改質アスファルト等)の材料を含んで形成される。最外層に位置する遮音カバー1730は、ゴム系(EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等)、エラストマー系または樹脂系の材料を含んで形成され(ゴム等の軟質材料のみならず硬質の塩ビ製でも構わない)、中間層に位置する振動絶縁体1720は、耐火性を備えた無機繊維の集合体(多孔質材料)からなる。
【0044】
ここで、無機繊維としては、人造鉱物繊維が挙げられ、たとえば、グラスウール、ロックウールまたはセラミックファイバー等であって、これらは振動絶縁性能が高い点に加え
て吸音性能が高い点でも好ましい。排水集合管の上部管または下部管を流下する排水による振動(たとえば偏流板、旋回羽根等の内周への突起物に当たって発生する騒音、振動)を、制振材1714で抑制した上で、さらに、このロックウール等で形成された振動絶縁体1720により振動を遮断して(および/または振動に伴う騒音を吸収して)、さらに、EPDM製等のゴムカバーで形成された遮音カバー1730により振動に伴う騒音の伝搬を遮断する。ここで、ロックウールとは天然岩石または高炉スラグなど鉄鋼スラグなどを主原料として製造されたものの総称であって、グラスウールとはガラス繊維で構成された綿状のものの総称であって、ともに耐火性および遮炎性を有する。
【0045】
なお、以下においては、制振材1714としてブチルゴムを採用し、振動絶縁体1720としてロックウールを採用し、遮音カバー1730としてEPDM製のゴムカバーを採用した場合について説明する場合があるが、これらの材料は一例に過ぎない。また、外層部材1700は(最内層:内上側熱膨張性耐火材1712または制振材1714、中間層:振動絶縁体1720、最外層:遮音カバー1730)は、排水集合管の外径(より詳しくは上部管の横枝管接続部1120の下方の直管部分である胴部の外径)に対応したリング状で弾性を備えた(EPDM製等の)リング弾性材(ゴムリング1900)を介して、排水集合管の外表面に当接することが、止水性を担保できる点で好ましい。止水性を担保するという点からは、リング弾性材(ゴムリング1900)に代えて、パッキン構造を採用することもできる。さらに、ゴムリング1900を介して、排水集合管の外表面に外層部材が接着接合される場合において、接着接合性能が確保できる時間が経過するまでは、たとえば、熱収縮チューブ1902を用いて、排水集合管からゴムリング1900および外層部材の位置がずれないようにすることも好ましい。なお、組み立て作業効率向上のために、外層部材の遮音カバー1730とゴムリング1900とを(同素材ではあっても)別部材としている。なお、耐火性を備えた無機繊維の集合体(多孔質材料)の一例であるロックウールが採用された中間層である振動絶縁体1720は、本発明における耐火部材を構成(耐火部材として機能)することになる。
【0046】
上述したような3層構造を備える外層部材の最内層1710には、内上側熱膨張性耐火材1712が設けられている。内上側熱膨張性耐火材1712の態様は、耐火パテ、耐火シート、耐火テープ等のいずれにも限定されるものではない。さらに、この内上側熱膨張性耐火材1712は、火災時に排水集合管1001の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するものであれば限定されず、三層一体構造管における中間層に含まれることにより、排水集合管1001を形成する樹脂の成形前に混合されることにより、排水集合管1001の外周に当接されることにより、または、排水集合管1001の外層部材1700の一部を構成することにより、設けられるものが挙げられる。
【0047】
本実施の形態に係る排水集合管1001は、火災時に排水集合管1001の内部を閉塞させて床材100の防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材1712を含む。そして、排水集合管1001には、床材100の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた耐火部材(ここでは鋼製スリーブ1810)が床材100の端面と対向する位置に上側耐火部材として設けられるとともに、この上側耐火部材の内周側に内上側熱膨張性耐火材1712が設けられている。
【0048】
この鋼製スリーブ1810は、金属製の筒状物であって、たとえば、厚みが0.25mm以上が好ましく(ここでは0.25mm)、高さ方向の長さが30mm~400mmが好ましい(ここでは130mm)。また、ここでは、この鋼製スリーブ1810の上端は床材100の上面と面一である。なお、本発明においては、耐火部材の形状は、このような筒状物に限定されるものではない。
【0049】
図2(B)および図3を参照して、上側床である床材100側のみに熱膨張性耐火材および耐火部材(内上側熱膨張性耐火材1712ならびに上側耐火部材としてロックウールで形成された振動絶縁体1720および鋼板で形成された鋼製スリーブ1810)を備えた排水集合管1001が図1に示す床構造(その1)に施工された防火区画構造について説明する。
【0050】
図2(B)および図3に示すように、排水集合管1001は、その上部管1100が床
材100に設けられた貫通孔300にその貫通孔300との間隙に耐熱性を備えたシーリング材150が充填されて、その下部管1500が天井材200に設けられた貫通孔302にその貫通孔302との間隙に耐熱性を備えたシーリング材250が充填されて、それぞれ施工される。これらの耐熱性を備えたシーリング材により、下階からの火炎が上階側へ侵入することを防止することができる。
【0051】
図3に示すように、この排水集合管1001は、床材100の上方に設置された支持部材1070により支持される。より詳しくは、支持部材1070は、上部管1100の上立管接続部1110に接続されたゴム輪付き受口部材1114の外周を全周に亘って保持する(たとえば半円環状の2個のバンドの組み合わせからなる)バンド部1072およびそのバンド部1072を締結する締結部材1074(たとえば半円環状のバンドの組み合わせをボルトとナットとで螺合させて一体化させる部材)により排水集合管1001に支持部材1070が取り付けられる。このような支持部材1070は、床材100の上面に設けられたボルトベースBBから立設させた寸切りボルト(全ねじボルト)BにナットNにより固定される。
【0052】
<第2の実施の形態>
以下において、図4図5を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る排水集合管1002およびその排水集合管1002を用いた防火区画構造について説明する。なお、この排水集合管1002は、上述した第1の実施の形態に係る排水集合管1001における鋼製スリーブ1810を備えず、外上側熱膨張性耐火材1812を備える点が異なる。それ以外の構造であって第1の実施の形態と同じ構造については第1の実施の形態と同じ符号を付している。それらについての説明は、上述した説明と重複するために、ここでは繰り返して説明しない。また、本実施の形態に係る排水集合管1002が施工される木造中空床は、第1の実施の形態において説明した図1に示す床構造(その1)と同じである。
【0053】
図4および図5を参照して、本実施の形態に係る排水集合管1002は、火災時に床材100と排水集合管1002との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための外上側熱膨張性耐火材1812を含む。この外上側熱膨張性耐火材1812は、たとえば、厚みが0.5mm以上が好ましく(ここでは3mm)、高さ方向の長さが10mm~250mmが好ましい(ここでは110mm)。また、ここでは、この外上側熱膨張性耐火材1812の上端は床材100の上面と面一である。
【0054】
図4(B)および図5を参照して、上側床である床材100側のみに熱膨張性耐火材および耐火部材(内上側熱膨張性耐火材1712および外上側熱膨張性耐火材1812ならびに上側耐火部材としてロックウールで形成された振動絶縁体1720)を備えた排水集合管1002が図1に示す床構造(その1)に施工された防火区画構造について説明する。
【0055】
図4(B)および図5に示すように、排水集合管1002は、その上部管1100が床材100に設けられた貫通孔300にその貫通孔300との間隙に耐熱性を備えたシーリング材150が充填されて、その下部管1500が天井材200に設けられた貫通孔302にその貫通孔302との間隙に耐熱性を備えたシーリング材250が充填されて、それぞれ施工される。これらの耐熱性を備えたシーリング材により、下階からの火炎が上階側へ侵入することを防止することができる。また、この排水集合管1002における外上側熱膨張性耐火材1812は、床材100の端面と対向する位置に、外上側熱膨張性耐火材1812と排水集合管1002との間隙に耐熱性を備えたシーリング材150が充填されて設けられているために、外上側熱膨張性耐火材1812の外周方向への自由な膨張を防止することができて、床材と排水集合管との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現することができる。
【0056】
<第3の実施の形態>
以下において、図6図9を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る排水集合管1003(および第3の実施の形態の変形例に係る排水集合管1004)ならびにその排水集合管1003を用いた防火区画構造について説明する。なお、これらの排水集合管1003および排水集合管1004は、上述した第1の実施の形態に係る排水集合管1001
における鋼製スリーブ1810のさらに外周側に外上側熱膨張性耐火材1812を備えるとともに、天井材600側の防火区画構造を実現できる点が異なる。それ以外の構造であって第1の実施の形態と同じ構造については第1の実施の形態と同じ符号を付している。それらについての説明は、上述した説明と重複するために、ここでは繰り返して説明しない。
【0057】
図6を参照して、本実施の形態に係る排水集合管1003(および本実施の形態の変形例に係る排水集合管1004)が好適に施工される木造中空床である床構造(その2)について説明する。図6に示すように、この木造中空床は、床材としての上側床(以下において床材500と記載する)と天井材としての下側床(以下において天井材600と記載する)との間に中空空間を備える。一例ではあるが、床材500は、耐水合板510(厚みt=12mm)と強化石膏ボード520(厚みt=21mm)と強化石膏ボード530(厚みt=21mm)と構造用合板540(厚みt=24mm)とが重ね張りされて構成されており、天井材600は、強化石膏ボード610(厚みt=25mm)と強化石膏ボード620(厚みt=21mm)とが重ね張りされて構成され、天井材600の上側の強化石膏ボード610の上にはグラスウール630(密度24kg/m3、厚みt=100mm)が設けられている。また、この木造中空床の構造として、梁710が設けられる。なお、このような木造中空床には、その床材500に貫通孔700(直径Φ208mm)およびその天井材600に貫通孔702(直径Φ148mm)が設けられている。また、これも一例に過ぎないが、床上面(床材500の上面)と床下面(天井材600の下面)との長さは360mmである。
【0058】
すなわち、この木造中空床は、複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体であって、本発明に係る樹脂製の排水集合管は、この木造中空床の貫通孔に施工されて防火区画構造を実現できる。そして、この区画体である木造中空床は、上層階の床を構成する、少なくとも一部に木製素材(ここでは耐水合板510、構造用合板540)を含んで構成された床材500と、床材500と中空空間をあけて設けられる下層階の天井を構成する、不燃材料を含んで構成された天井材600とを備えるものである。
【0059】
図7を参照して、図6に示す木造中空床に好適に施工される樹脂製の排水集合管1003について説明する。この排水集合管1003は、床材500の上方に突出する上部管1100と、上部管1100の下方に接続される下部管1500とを含み、上部管1100は、上階から排水を流入させる上立管を接続する上立管接続部1110と、床材500の上方において横枝管を接続する少なくとも1つの(ここでは3つの)横枝管接続部1120とを含む。下部管1500は、下階へ排水を流出させる下方配管1510を接続する下方配管接続部1502を含む。ここで、この排水集合管1003は、下方配管1510、少なくとも1の熱膨張性耐火材、または、不燃材を含む耐火部材を含む場合がある。
【0060】
本実施の形態に係る排水集合管1003は、第1の実施の形態に係る排水集合管1001が備える、床材500の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた耐火部材(ここでは鋼製スリーブ1810)が床材の端面と対向する位置に上側耐火部材として設けられるとともに、この上側耐火部材の内周側に内上側熱膨張性耐火材1712が設けられ、さらに、この上側耐火部材の外周側に外上側熱膨張性耐火材1812が設けられている。この鋼製スリーブ1810の上端は床材500の上面と面一であって、さらにこの外上側熱膨張性耐火材1812の上端は床材500の上面と面一であるために、鋼製スリーブ1810の上端および外上側熱膨張性耐火材1812の上端は床材500の上面と面一である。さらに、鋼製スリーブ1810の下端は、外上側熱膨張性耐火材1812の下端よりも下方に位置する(ここでは内周側の鋼製スリーブ1810の方が長い場合を図示しているが本発明はこれに限定されるものではなく鋼製スリーブ1810の方が短くても同じ長さであっても構わない)。なお、内上側熱膨張性耐火材1712が火災時に排水集合管1003の内部を閉塞させて床材500の防耐火構造を実現するための耐火材であって、外上側熱膨張性耐火材1812が火災時に床材500と排水集合管1003との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための耐火材である。
【0061】
本実施の形態に係る排水集合管1003は、火災時に排水集合管1003(より具体的
には排水集合管1003に含まれる下方配管1510)の内部を閉塞させて天井材600の防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材1912、および、火災時に天井材600と排水集合管1003(より具体的には排水集合管1003に含まれる下方配管1510)との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための耐火材である外下側熱膨張性耐火材1913をさらに備えるとともに、これらの内下側熱膨張性耐火材1912と外下側熱膨張性耐火材1913との間に、天井材600の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた耐火部材(ここでは鋼製スリーブ1910)が天井材600の端面と対向する位置に下側耐火部材として設けられる。
【0062】
この鋼製スリーブ1910は、金属製の筒状物であって、たとえば、厚みが0.25mm以上が好ましく(ここでは0.25mm)、高さ方向の長さが30mm~400mmが好ましい(ここでは110mm)。また、これらの内下側熱膨張性耐火材1912および外下側熱膨張性耐火材1913は、たとえば、厚みが0.5mm以上が好ましく(ここでは3mm)、高さ方向の長さが10mm~250mmが好ましい(ここでは110mm)。また、限定されるものではないが、ここでは、これらの内下側熱膨張性耐火材1912、鋼製スリーブ1910および外下側熱膨張性耐火材1913の高さ方向の位置および長さは同一に揃えている。
【0063】
このように設けられている内下側熱膨張性耐火材1912の態様は、耐火パテ、耐火シート、耐火テープ等のいずれにも限定されるものではない。さらに、この内下側熱膨張性耐火材1912は、火災時に排水集合管1003(より具体的には排水集合管1003に含まれる下方配管1510)の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するものであれば限定されず、三層一体構造管(ここでは下方配管1510)における中間層に含まれることにより、排水集合管1003(ここでは排水集合管1003に含まれる下方配管1510)を形成する樹脂の成形前に混合されることにより、排水集合管1003(ここでは排水集合管1003に含まれる下方配管1510)の外周に当接されることにより、または、排水集合管1003(ここでは排水集合管1003に含まれる下方配管1510)の外層部材の一部を構成することにより、設けられるものが挙げられる。
【0064】
図7(B)、図7(C)および図8を参照して、上側床である床材500側に設けられた熱膨張性耐火材および耐火部材(内上側熱膨張性耐火材1712および外上側熱膨張性耐火材1812ならびに上側耐火部材としてロックウールで形成された振動絶縁体1720および鋼板で形成された鋼製スリーブ1810)、ならびに、下側床である天井材600側に設けられた熱膨張性耐火材および耐火部材(内下側熱膨張性耐火材1912および外下側熱膨張性耐火材1913ならびに下側耐火部材として鋼板で形成された鋼製スリーブ1910)を備えた排水集合管1003が図6に示す床構造(その2)に施工された防火区画構造について説明する。
【0065】
なお、上側床である床材500側は、上述した第1の実施の形態のように鋼製スリーブ1810を備え外上側熱膨張性耐火材1812を備えないものであっても、逆に上述した第2の実施の形態のように外上側熱膨張性耐火材1812を備え鋼製スリーブ1810を備えないものであっても構わない。ただし、上側床である床材500側において、熱膨張性耐火材が内周側と外周側との2ヶ所に配置させる場合には、耐火部材を備える場合に限定することが好ましい。
【0066】
さらに、下側床である天井材600側は、内下側熱膨張性耐火材1912のみを備えるものであっても、内下側熱膨張性耐火材1912および鋼製スリーブ1910を備えるものあっても構わない。ただし、下側床である天井材600側において、熱膨張性耐火材が内周側と外周側との2ヶ所に配置させる場合には、耐火部材を備える場合に限定することが好ましい。
【0067】
図7(B)、図7(C)および図8に示すように、排水集合管1003は、その上部管1100が床材500に設けられた貫通孔700にその貫通孔700との間隙に耐熱性を備えたシーリング材150が充填されて、その下部管1500が天井材600に設けられた貫通孔702にその貫通孔702との間隙に耐熱性を備えたシーリング材250が充填されて、それぞれ施工される。
【0068】
さらに、これらの図に示すように、床材500側においては耐熱性を備えたシーリング材150の下方、または、天井材600側においては耐熱性を備えたシーリング材250の上方、に耐火性を備えた無機繊維の集合体が充填されていることが好ましく、この無機繊維の集合体は、グラスウールまたはロックウールを含む物であることが好ましい。ここでは、床材500側においては耐熱性を備えたシーリング材150の下方に耐火性を備えたロックウール160が、天井材600側においては耐熱性を備えたシーリング材250の上方に耐火性を備えたロックウール260が、それぞれ充填されている。
【0069】
限定されるものではないが、ここでは、床材500側において、シーリング材150の厚みとロックウール160の厚みとの合計の厚みが床材500の厚みと略同じ厚みとして、天井材600側において、シーリング材250の厚みとロックウール260の厚みとの合計の厚みが天井材600の厚みと略同じ厚みとしている。このように貫通孔700および貫通孔702の厚みの全長に亘って、耐熱性を備えたシーリング材および耐火性を備えたロックウールを充填することにより、下階からの火炎が上階側へ侵入することをより確実に防止することができる。また、床材500の貫通孔700と排水集合管1003との間隙には、耐熱性を備えたシーリング材150および耐火性を備えたロックウール160が充填されて設けられているために、外上側熱膨張性耐火材1812の外周方向への自由な膨張を防止することができて、床材と排水集合管との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現することができる。また、天井材600の貫通孔702と排水集合管1003との間隙には、耐熱性を備えたシーリング材250および耐火性を備えたロックウール260が充填されて設けられているために、外下側熱膨張性耐火材1913の外周方向への自由な膨張を防止することができて、天井材と排水集合管との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現することができるとともに、外下側熱膨張性耐火材1913が火災時において熱膨張することにより、耐火部材である鋼製スリーブ1910が天井材600から落下することを防止している。
【0070】
<第3の実施の形態の変形例>
図9を参照して、第3の実施の形態の変形例に係る排水集合管1004およびその排水集合管1004を用いた防火区画構造について説明する。本変形例に係る排水集合管1004は、上述した第3の実施の形態に係る排水集合管1003において、下側床である天井材600側に設けられている鋼製スリーブ1910が鍔付き鋼製スリーブ1920に置き換えられている。
【0071】
この鍔付き鋼製スリーブ1920が鍔部分がロックウール260および/または天井材600(より詳しくは上側の強化石膏ボード610)の上面に係止されることにより、耐火部材である鍔付き鋼製スリーブ1920が天井材600から落下することを防止している。すなわち、排水集合管1004が耐火部材(ここでは鍔付き鋼製スリーブ1920)を含む場合に、この耐火部材である鍔付き鋼製スリーブ1920が天井材600から落下することを防止している。なお、耐火部材が天井材600から落下することを防止する機構は、このような鍔付き鋼製スリーブ1920に限定されるものではなく、上述したように、排水集合管1003の鋼製スリーブ1910の外周側に外下側熱膨張性耐火材1913が設けられているという機構であっても構わない。この場合、外下側熱膨張性耐火材1913が火災時において熱膨張することにより、耐火部材である鋼製スリーブ1910が天井材600から落下することを防止している。
【0072】
<3つの実施の形態に共通する特徴>
上述した排水集合管は、床材の防耐火構造を実現するための少なくとも1の上側熱膨張性耐火材を含むものであって、この上側熱膨張性耐火材は床材の端面と対向する位置に設けられている、または、床材の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた耐火部材が床材の端面と対向する位置に上側耐火部材として設けられるとともに上側耐火部材の内周側に上側熱膨張性耐火材が設けられている。
【0073】
より具体的には、図2(B)および図3に示す排水集合管1001のように、排水集合管1001は床材100の防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材1712を含むものであって、床材100の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた耐火部材として
の振動絶縁体1720または鋼製スリーブ1810が床材100の端面と対向する位置に上側耐火部材として設けられるとともに、この上側耐火部材の内周側にこの内上側熱膨張性耐火材1712が設けられている。ここで、対向する位置とは、耐火部材と床材の端面との高さ方向にずれがあっても、耐火部材と床材の端面との間に他の物体を挟んでも、耐火部材と床材の端面とが少なくとも互いに向き合う状態が存在することを意味する。
【0074】
さらに具体的には、図4(B)および図5に示す排水集合管1002のように、排水集合管1002は床材100の防耐火構造を実現するための外上側熱膨張性耐火材1812を含むものであって、この外上側熱膨張性耐火材1812は床材100の端面と(耐熱性を備えたシーリング材150を介して)対向する位置に設けられている。
【0075】
さらに具体的には、図7(B)、図7(C)および図8に示す排水集合管1003のように、排水集合管1003は床材500の防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材1712および外上側熱膨張性耐火材1812を含むものであっても構わない。ここでは、内上側熱膨張性耐火材1712に関しては、床材500の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた耐火部材としての振動絶縁体1720または鋼製スリーブ1810が床材500の端面と対向する位置に上側耐火部材として設けられるとともに、この上側耐火部材の内周側にこの内上側熱膨張性耐火材1712が設けられている。また、外上側熱膨張性耐火材1812に関しては、外上側熱膨張性耐火材1812は床材500の端面と(耐熱性を備えたシーリング材150を介して)対向する位置に設けられている。
【0076】
いずれの場合においても、上側熱膨張性耐火材(内上側熱膨張性耐火材1712、外上側熱膨張性耐火材1812)の上端は、床材の上面よりも下方にある。このため、下階での火災の延焼を確実に防止することができる。
【0077】
上述したように、耐火部材としての上側耐火部材は、振動絶縁体1720または鋼製スリーブ1810であって、ロックウールまたは鋼板を含む不燃材料を含んで構成されている。このため、熱膨張性耐火材の外周方向への自由な膨張を防止することができて、排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現することができる。
【0078】
排水集合管は、上側熱膨張性耐火材として、火災時に排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材を含むものであって、この内上側熱膨張性耐火材の高さ位置には、内上側熱膨張性耐火材よりも外周側に、上側耐火部材が設けられている。より具体的には、上述したように、排水集合管1001および排水集合管1002は、上側熱膨張性耐火材として、火災時に排水集合管1001の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材1712を含むものであって、この内上側熱膨張性耐火材1712の高さ位置には、内上側熱膨張性耐火材1712よりも外周側に、上側耐火部材としての振動絶縁体1720または鋼製スリーブ1810が床材100の端面と対向する位置に設けられるとともに、この上側耐火部材の内周側にこの内上側熱膨張性耐火材1712が設けられている。
【0079】
排水集合管は、上側熱膨張性耐火材として、火災時に排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材、および、火災時に床材と排水集合管との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための外上側熱膨張性耐火材を含むものであって、内上側熱膨張性耐火材よりも外周側であって外上側熱膨張性耐火材よりも内周側に、上側耐火部材が設けられている。より具体的には、上述したように、排水集合管1003は、上側熱膨張性耐火材として、火災時に排水集合管1003の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内上側熱膨張性耐火材1712、および、火災時に床材500と排水集合管1003との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための外上側熱膨張性耐火材1812を含む。内上側熱膨張性耐火材1712よりも外周側であって外上側熱膨張性耐火材1812よりも内周側に、上側耐火部材としての鋼製スリーブ1810が設けられている。
【0080】
上述した排水集合管は、天井材の防耐火構造を実現するための少なくとも1の下側熱膨張性耐火材を含むものであって、この下側熱膨張性耐火材は天井材の端面と対向する位置に設けられている、または、天井材の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた耐火部材が天井材の端面と対向する位置に下側耐火部材として設けられるとともに下側耐火部材の内
周側に下側熱膨張性耐火材が設けられている。
【0081】
より具体的には、図7(C)および図8に示す排水集合管1003のように、排水集合管1003は天井材600の防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材1912および外下側熱膨張性耐火材1913を含むものであっても構わない。ここでは、内下側熱膨張性耐火材1912に関しては、天井材600の厚みよりも大きい管軸方向長さを備えた鋼板で形成された鋼製スリーブ1910が天井材600の端面と対向する位置に下側耐火部材として設けられるとともに、この鋼製スリーブ1910の内周側にこの内下側熱膨張性耐火材1912が設けられている。また、外下側熱膨張性耐火材1913に関しては、鋼製スリーブ1910の外周側に、天井材600の端面と(耐熱性を備えたシーリング材250を介して)対向する位置に外下側熱膨張性耐火材1913が設けられている。
【0082】
上述したように、耐火部材としての下側耐火部材は、鋼製スリーブ1910であって、鋼板を含む不燃材料を含んで構成されている。このため、熱膨張性耐火材の外周方向への自由な膨張を防止することができて、排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現することができる。なお、鋼製スリーブに代えて、振動絶縁体1720を構成するロックウールのような不燃材料を含んで構成するようにしても構わない。
【0083】
排水集合管は、下側熱膨張性耐火材として、火災時に排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材を含むものであって、この内下側熱膨張性耐火材の高さ位置には、内下側熱膨張性耐火材よりも外周側に、下側耐火部材が設けられている。より具体的には、上述したように、排水集合管1003は、下側熱膨張性耐火材として、火災時に排水集合管1003(より具体的には排水集合管1003に含まれる下方配管1510)の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材1912を含むものであって、この内下側熱膨張性耐火材1912の高さ位置には、内下側熱膨張性耐火材1912よりも外周側に、下側耐火部材としての鋼製スリーブ1910が天井材600の端面と対向する位置に設けられるとともに、この鋼製スリーブ1910の内周側にこの内下側熱膨張性耐火材1912が設けられている。
【0084】
排水集合管は、下側熱膨張性耐火材として、火災時に排水集合管の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材、および、火災時に床材と排水集合管との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための外下側熱膨張性耐火材を含むものであって、内下側熱膨張性耐火材よりも外周側であって外下側熱膨張性耐火材よりも内周側に、下側耐火部材が設けられている。より具体的には、上述したように、排水集合管1003は、下側熱膨張性耐火材として、火災時に排水集合管1003(より具体的には排水集合管1003に含まれる下方配管1510)の内部を閉塞させて防耐火構造を実現するための内下側熱膨張性耐火材1912、および、火災時に天井材600と排水集合管1003との間隙を閉塞させて防耐火構造を実現するための外下側熱膨張性耐火材1913を含む。内下側熱膨張性耐火材1912よりも外周側であって外下側熱膨張性耐火材1913よりも内周側に、下側耐火部材としての鋼製スリーブ1910が設けられている。
【0085】
本発明に係る防火区画構造は、上述したいずれかの排水集合管を用いて床材側の防火区画が実現、および/または、上述したいずれかの排水集合管を用いて天井材側の防火区画が実現されたものである。このような防火区画構造を実現することにより、木造中空床の防耐火構造を実現することができる。
【0086】
このような防火区画構造においては、上述したように、排水集合管と床材または天井材との間隙に、耐熱性を備えたシーリング材が充填されることが好ましい。このため、下階からの火炎が上階側へ侵入することを防止することができる。また、耐熱性を備えたシーリング材を介して熱膨張性耐火材と床材の端面または天井材の端面とが対向することにより、熱膨張性耐火材の外周方向への自由な膨張を防止することができて、排水集合管の内部を閉塞させたり、床材または天井材と排水集合管との間隙を閉塞させたりして、防耐火構造を実現することができる。
【0087】
以上のようにして、本実施の形態に係る排水集合管およびその排水集合管を用いた防火区画構造によると、複層建築物内に水平に設けられた中空構造の区画体(上層階の床を構成する少なくとも一部に木製素材を含んで構成された床材と、床材と中空空間をあけて設
けられる下層階の天井を構成する不燃材料を含んで構成された天井材とを備えた木造中空床)を貫通して施工される所望の耐火性能を実現し得る樹脂製の排水集合管、および、そのような排水集合管を用いて耐火性能に関する法規制に適合する防火区画構造を提供することができる。
【0088】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、木造中空床を貫通して設けられる樹脂製の排水集合管およびその排水集合管を用いた防火区画構造に好ましく、法規制に適合する防火区画構造を実現できることができる点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0090】
1001 (第1の実施の形態に係る)排水集合管
1002 (第2の実施の形態に係る)排水集合管
1003 (第3の実施の形態に係る)排水集合管
1004 (第3の実施の形態の変形例に係る)排水集合管
1070 支持部材
1100 上部管
1500 下部管
1700 外層部材
1710 制振材
1712 内上側熱膨張性耐火材
1720 (上側耐火部材としても機能するロックウールで形成された)振動絶縁体
1810 (上側耐火部材としての)鋼製スリーブ
1812 外上側熱膨張性耐火材
1900 ゴムリング
1910 (下側耐火部材としての)鋼製スリーブ
1912 内下側熱膨張性耐火材
1913 外下側熱膨張性耐火材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9