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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073935
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】粒子計測装置及び粒子計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/0205 20240101AFI20240523BHJP
【FI】
G01N15/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184929
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000115636
【氏名又は名称】リオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120592
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 崇裕
(74)【代理人】
【識別番号】100192223
【弁理士】
【氏名又は名称】加久田 典子
(72)【発明者】
【氏名】松田 朋信
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 大将
(57)【要約】
【課題】試料流体に含まれる粒子を精度よく計測する技術の提供。
【解決手段】粒子計測装置100においては、光源120、ミラー130、受光光学系140(レンズ141及び受光素子142)がステージ160に固定されており、ステージ160をX方向又はY方向に移動させると、これら全体がX方向又はY方向に移動するが、ベース170に固定されているフローセル110は移動しない。したがって、照射光学系及び受光光学系を相対的な位置関係を保持したままX方向又はY方向に移動させて、照射光Laがフローセル110に入射する位置を変更することができるため、入口112から出口113にわたり延びる流路111に対する観測領域Mの位置(照射光Laの照射位置)を変更することができ、広い領域でのスキャニングが可能となる。よって、試料流体に含まれる粒子の分布に偏りがある場合や粒子の個数が非常に少ない場合でも、粒子を精度よく計測できる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料流体が流し込まれる流路を有するフローセルと、
前記流路における前記試料流体の流れを調整可能な流量可変機構と、
照射光を発する光源を含み、前記照射光を前記流路に照射する照射光学系と、
前記照射光が前記流路を照射することで前記流路内の一部に形成される観測領域において前記試料流体に含まれる粒子から生じる散乱光を受光する受光光学系と、
前記照射光学系及び前記受光光学系が配置された1以上のステージと、
前記ステージを移動させることにより、前記観測領域を移動させて前記流路のスキャニングを可能とする移動制御手段と、
前記散乱光の強度に基づいて前記粒子を粒径毎に計数する計数手段と
を備えた粒子計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子計測装置において、
前記移動制御手段は、
前記照射光学系と前記受光光学系との相対的な位置関係を保持したまま前記ステージを移動させることを特徴とする粒子計測装置。
【請求項3】
請求項1に記載の粒子計測装置において、
前記流量可変機構は、
前記粒子の計測を開始する前に、前記試料流体の流れを止める又は絞ることを特徴とする粒子計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の粒子計測装置において、
前記計測の実行を制御し、前記計測の実行中における前記試料流体の単位体積当りの粒子数の状況に応じて、前記計測を途中で終了する又は前記流量可変機構を制御して前記試料流体の流速を変化させる計測制御部
をさらに備えた粒子計測装置。
【請求項5】
請求項1に記載の粒子計測装置において、
前記移動制御手段は、
前記流路内に設定される始点位置と終点位置との間を連続的に移動させるパターンに沿って前記流路に対する前記照射光の照射位置を移動させ、
前記受光光学系は、
前記照射位置の移動に伴って前記始点位置と前記終点位置との間の連続した領域に形成される前記観測領域において前記散乱光を受光することを特徴とする粒子計測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の粒子計測装置において、
前記移動制御手段は、
前記流路内に設定された複数の不連続な位置に断続的に移動させるパターンに沿って前記流路に対する前記照射光の照射位置を移動させ、
前記受光光学系は、
前記照射位置の移動に伴って前記複数の不連続な位置に形成される前記観測領域において前記散乱光を受光することを特徴とする粒子計測装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の粒子計測装置において、
前記移動制御手段は、
前記照射位置を前記パターンに沿って複数回移動させ、
前記受光光学系は、
前記照射位置の移動に伴って形成される前記観測領域における前記散乱光の受光を複数回行うことを特徴とする粒子計測装置。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の粒子計測装置において、
前記移動制御手段は、
前記照射位置を前記パターンに沿って複数回移動させるに際し、奇数回目には前記照射位置を前記パターンに沿って所定の方向に移動させ、偶数回目には前記照射位置を前記パターンに沿って所定の方向と逆の方向に移動させることを特徴とする粒子計測装置。
【請求項9】
試料流体が流し込まれる流路を有するフローセルと、照射光を発する光源を含み、前記照射光を前記流路に照射する照射光学系と、前記照射光が前記流路を照射することで前記流路内の一部に形成される観測領域において前記試料流体に含まれる粒子から生じる散乱光を受光する受光光学系とを用いて前記粒子の計測を行う粒子計測方法であって、
前記照射光学系及び前記受光光学系を所定のパターンに応じた態様で移動させることにより、前記流路に対する前記照射光の照射位置を前記所定のパターンに沿って移動させる移動工程と、
前記照射位置の移動に伴って移動する前記観測領域において前記散乱光を受光する受光工程と、
前記散乱光の強度に基づいて前記粒子を粒径毎に計数する計数工程と
を含む粒子計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料流体に含まれる粒子を計測する装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料流体に含まれる粒子の計測は、内部に流路が形成されたフローセルに光を照射し、流路を流れる試料流体中の粒子によって散乱される光を受光して行われるのが一般的である。また、その手法の一つとして、照射光が入射することで流路内の一部に形成される粒子の観測領域を観測し、その観測領域での計測値から試料全体に含まれる粒子の個数を推定するものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5859154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した手法において、照射光の照射領域(粒子の観測領域)は流路全体ではなく、流路全体のうち中心付近の一部の領域に過ぎないが、粒子は試料流体中に均一に分布しているとは限らない。そのため、特に個数が非常に少ない粒子を計測する場合には、観測領域での計測値から統計的に全体の粒子の個数を推定することで、実態と懸け離れた結果となる可能性がある。
【0005】
一方で、半導体等の技術の進歩に伴い、より信頼性が高く、より小さな粒子の計測が求められている。より小さな粒子を計測するためには、受光光学系の感度を上げることや、観測領域における照射光の強度(エネルギー密度)を上げるために光源の出力を上げることが考えられるが、これらの対応には使用する部品による性能上の限界がある。
【0006】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、試料流体に含まれる粒子を精度よく計測する技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の粒子計測装置及び粒子計測方法を採用する。なお、以下の括弧書中の文言はあくまで例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
すなわち、本発明の粒子計測装置及び粒子計測方法は、試料流体が流し込まれる流路を有するフローセルと、照射光を発する光源を含み、照射光を流路に照射する照射光学系と、照射光が流路を照射することで流路内の一部に形成される観測領域において試料流体に含まれる粒子から生じる散乱光を受光する受光光学系とを用いて粒子の計測を行うものである。照射光学系及び受光光学系は、1以上のステージに配置されている。また、流路における試料流体の流れは、流量可変機構により調整が可能である。
【0009】
そして、本発明の粒子計測装置及び粒子計測方法においては、ステージを移動させることにより、照射光学系と受光光学系との相対的な位置関係を保持したまま、観測領域を移動させて流路のスキャニングを可能とし、観測領域において散乱光を受光して、散乱光の強度に基づいて粒子を粒径毎に計数する。
【0010】
この態様の粒子計測装置及び粒子計測方法によれば、照射光学系と受光光学系の相対的な位置関係を保持したまま、流路に対する照射光の照射位置を変更することができ、これに伴って移動する観測領域において粒子からの散乱光を受光することができるため、流路における広い領域を対象として粒子の計測を実施することができ、試料流体に含まれる粒子の分布に偏りがある場合や粒子の個数が非常に少ない場合においても精度の高い計測が可能となる。
【0011】
好ましくは、上述した態様の粒子計測装置及び粒子計測方法において、計測を開始する前に、試料流体の流れを止める又は絞る。
【0012】
この態様の粒子計測装置及び粒子計測方法によれば、流路内に試料流体を貯めた状態又は計測時間に対して十分に遅い速度で試料流体を流した状態で粒子の計測を実施することができるため、散乱光の受光感度を上げることができ、より小さな粒子の計測が可能となる。また、同じ試料流体を対象とした網羅的な計測が可能となるため、粒子の見逃しを減らすことができる。したがって、この態様の粒子計測装置及び粒子計測方法によれば、粒子計測の精度をさらに高めることが可能となる。
【0013】
また、好ましくは、上述した態様の粒子計測装置及び粒子計測方法において、計測の実行中における試料流体の単位体積当りの粒子数(以下、「粒子濃度」と称する。)の状況に応じて、計測を途中で終了するか、或いは、試料流体の流速を変化させる制御を実行する。
【0014】
この態様の粒子計測装置及び粒子計測方法によれば、例えば、粒子濃度が所定の閾値を超える場合には、粒子濃度は計測に対して十分にあるとみなして、計測を途中で終了することができるため、計測時間を短縮することができる。また、例えば、粒子濃度が所定の閾値を超える場合には試料流体の流速を上げる一方、粒子濃度が所定の閾値以下である場合には試料流体の流速を下げることができるため、粒子濃度の高低によらず計測の精度を確保することができる。
【0015】
より好ましくは、上述した態様の粒子計測装置及び粒子計測方法において、流路内に設定される始点位置と終点位置との間を連続的に移動させるパターンに沿って照射位置を移動させ、照射位置の移動に伴って始点位置と終点位置との間の連続した領域に形成される観測領域において散乱光を受光する。或いは、上述した態様の粒子計測装置及び粒子計測方法において、流路内に設定された複数の不連続な位置に断続的に移動させるパターンに沿って照射位置を移動させ、照射位置の移動に伴って複数の不連続な位置に形成される観測領域において散乱光を受光する。
【0016】
この態様の粒子計測装置及び粒子計測方法によれば、流路における広い領域を対象として粒子の計測を行うに際し、試料流体の性質や傾向等を踏まえて最適なパターンを選択することで、粒子の計測を効率よく行うことができる。例えば、試料流体に含まれる粒子の個数が非常に少ない場合には、始点位置から終点位置にわたる連続した領域にて計測を行うことにより、粒子の見落としを減らして計測の精度を上げることができるのに対し、粒子の個数がさほど少なくない場合には、不連続な位置に形成される複数の領域にて計測を行うことにより、計測時間を短縮することができる。
【0017】
さらに好ましくは、上述した態様の粒子計測装置及び粒子計測方法において、照射位置を上記のパターンに沿って複数回移動させ、照射位置の移動に伴って形成される観測領域における散乱光の受光を複数回行う。また、照射位置を上記のパターンに沿って複数回移動させるに際し、奇数回目には照射位置を上記のパターンに沿って所定の方向に移動させ、偶数回目には照射位置を上記のパターンに沿って所定の方向と逆の方向に移動させる。
【0018】
この態様の粒子計測装置及び粒子計測方法によれば、同一の領域を対象として複数回にわたり計測を行うことができるため、計測結果の信頼性を高めることができる。また、奇数回目の計測と偶数回目の測定とで移動方向が逆にすることにより、移動と計測とを同時に行うことができ、移動のみに費やす時間を最小限に抑制することができるため、計測全体の所要時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の粒子計測装置及び粒子計測方法によれば、試料流体に含まれる粒子を精度よく計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の粒子計測装置100を簡略的に示す斜視図である。
図2】粒子計測装置100を簡略的に示す平面図である。
図3】フローセル110と受光光学系140との位置関係を示す垂直断面図(図2中のIII-III線に沿う断面図)である。
図4】スキャニングの方法を説明する図である。
図5】スキャニングの方法の変形例を説明する図である。
図6】粒子計測装置100の変形例を簡略的に示す斜視図である。
図7】粒子計測装置100の構成を示す機能ブロック図である。
図8】第2実施形態の粒子計測装置200を簡略的に示す斜視図である。
図9】粒子計測装置200を簡略的に示す平面図である。
図10】第3実施形態の粒子計測装置300を簡略的に示す斜視図である。
図11】粒子計測装置300を簡略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、発明の理解を容易とするために、図面においては粒子計測装置を構成する部品の形状を簡略化しつつ寸法を誇張して表しており、また、一部の構成要素の図示を省略している。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1は、第1実施形態の粒子計測装置100を簡略的に表す斜視図である。
粒子計測装置100は、試料流体に含まれる粒子を検出するための構成として、フローセル110、照射光学系(図示の例においては、光源120及びミラー130)、受光光学系140を備えている。
【0023】
フローセル110は、合成コランダム等の結晶性材料からなり、その内部に試料流体が流し込まれる流路が形成されている。フローセル110及びこれに接続された配管は、不図示のフローセルラックに支持されており、フローセルラックを介して間接的にベース170に固定されている。なお、以下の説明においては、フローセル110の流路が伸びる方向を「X方向」と称する。
【0024】
光源120は、所定の波長の照射光La(例えば、レーザ光)を平行とみなすことができる範囲の広がり角でX方向に発する。ミラー130は、光源120から発せられた照射光Laをフローセル110に向けて反射する。これにより、照射光Laがフローセル110に入射し、流路内の一部に設定された観測領域を照射する。
【0025】
試料流体に含まれる粒子が観測領域内に存在する場合には、照射光Laが粒子に照射されることで散乱光が生じる。このようにして生じる粒子からの散乱光を、レンズ及び受光素子で構成された受光光学系140が受光する。受光光学系140は、その中心軸がX方向に直交するように配置されている。なお、散乱光の受光については、別の図面を用いてさらに後述する。また、以下の説明においては、受光光学系の中心軸の方向を「Y方向」と称し、X方向にもY方向にも直交する方向を「Z方向」と称する。
【0026】
フローセル110に接続された下流側の配管115には、流量可変機構150が設けられている。流量可変機構150は、試料流体の流量を変更してその流れ(流速)を調整することが可能であり、試料流体の流れを止めたり、或いは、計測時間に対して十分に遅い速度で流れるように試料流体の流れを絞ったりすることができる。また、流量可変機構150は、検出部を備えており、ここで流量を監視しながらフィードバック制御を行うことが可能である。なお、図示の例においては、流量可変機構150が下流側の配管115に設けられているが、これに代えて、フローセル110における試料流体の出口付近に設けられてもよい。
【0027】
粒子計測装置100においては、光源120及びミラー130がステージ160に固定されており、受光光学系140もまた、スタンド161を介してステージ160に固定されている。また、粒子計測装置100は、ステージ160をX方向に移動させるX軸スライダ163、及び、ステージ160をY方向に移動させるY軸スライダ164を有しており、ステージ160はX方向及びY方向に移動可能に構成されている。X軸スライダ163及びY軸スライダ164は、例えばアクチュエータ等で実装される。
【0028】
図示の例においては、ステージ160がX軸スライダ163上に設けられ、X軸スライダ163がY軸スライダ164上に設けられて、Y軸スライダ164がベース170に固定されている。そして、X軸スライダ163は、ステージ160をX方向にスライドして移動させることができ、Y軸スライダ164は、ステージ160をX軸スライダ163ごとY方向にスライドして移動させることができる。なお、Y軸スライダ164は、ステージ160のみをY方向に移動させるように構成してもよい。
【0029】
図2は、粒子計測装置100を簡略的に示す平面図である。
粒子計測装置100においては、フローセル110がベース170に固定されているのに対し、照射光学系(光源120、ミラー130)及び受光光学系140(レンズ141、受光素子142)はステージ160に固定されている。したがって、ステージ160をX方向又はY方向に移動させることにより、グレーで染色した部分全体がX方向又はY方向に移動するため、照射光学系及び受光光学系をこれらの相対的な位置関係を保持したままX方向又はY方向に移動させることができる。
【0030】
このような構成により、照射光学系及び受光光学系の相対的な位置関係を保持したまま、照射光Laがフローセル110に入射する位置を変更することができるため、フローセルの入口112から出口113にわたり延びる流路111に対する照射光Laの照射位置(言い換えると観測領域Mの形成位置)を移動させながら、流路111における広い領域での粒子の測定が可能となる。以下の説明においては、粒子をこのように測定することを「スキャニング」と称する。
【0031】
図3は、フローセル110と受光光学系140との位置関係を示す垂直断面図(図2中のIII-III線に沿う断面図)である。
例えば、観測領域Mが流路111のY方向における略中心部に設定された場合には、ミラー130が反射する照射光Laがこの位置を照射するようにステージ160の移動が制御される。照射光Laは、フローセル110に入射して観測領域Mを通過したのち、フローセル110の外部に抜ける。見方を変えると、流路111に対する照射光Laの照射位置が先ず設定され、これに応じた流路111内の位置に観測領域Mが形成される、と捉えることもできる。
【0032】
観測領域Mに粒子が存在する場合には、粒子と照射光Laとの作用により散乱光が生じ、側方散乱光Lsが受光光学系140により受光される。具体的には、粒子からの側方散乱光Lsがレンズ141により集光され、受光素子142(例えば、フォトダイオード)により受光されて、その強度に応じた電気信号に変換されたのち、制御ユニットに送られ(図3には図示されていない)、信号の大きさ、すなわち受光された散乱光の強度に基づいて粒子の大きさや個数が計測される。
【0033】
なお、側方散乱光Lsが透過するフローセル110の壁面上に、側方散乱光Lsの集光を補助する構造(例えば、凹面部や凸状のレンズ等)を設けてもよい。また、制御ユニットの内部構成については、別の図面を参照しながら詳しく後述する。
【0034】
〔スキャニングの方法〕
図4は、流路111内の試料流体に対するスキャニングの3つの方法をフローセル110の水平断面図(図1中のIV-IV線に沿う断面図)を用いて説明する図である。いずれの方法においても、スキャニングは試料流体の流れを止めて流路111に試料流体を貯めた状態で行われる。また、各方法に対応して、観測領域Mの設定位置(照射光Laの照射位置)に関するパターンが予め定められている。粒子計測装置100においては、設定された観測領域Mを照射光Laが照射し、観測領域Mで生じる散乱光を受光するように、ステージ160(言い換えると、照射光学系及び受光光学系)をパターンに応じて移動させ、これにより照射光Laの照射位置を移動させて測定を行う。
【0035】
図4中(A):スキャニングの第1方法においては、流路111に対する照射光Laの照射位置(観測領域Mの位置)をフローセルの流路111における離れた2つの位置(例えば、流路111の一端側及び他端側の各位置)の間をX方向に連続的に移動させながら測定を行う。例えば、予め定められたパターンに沿って、フローセルの入口112寄りの位置を始点位置として観測領域Mを設定し、出口113寄りの位置を終点位置として観測領域Mを設定して、観測領域Mが始点位置から終点位置まで移動するようにステージ160をX方向に移動させながら、観測領域Mから観測領域Mまでの領域を連続的に測定する。
【0036】
観測領域Mから観測領域Mまでの領域を測定し終えたら、そこで測定を終了してもよいし、ステージ160を直前とは逆方向に移動させて、直前と同じ領域を再び測定してもよいし、さらに始点位置と終点位置との間を往復する測定を複数回繰り返し行ってもよい。同じ領域を複数回測定した場合には、各回における平均値や最頻値、最多値、最少値等を測定結果として出力することが可能である。
【0037】
図4中(B):スキャニングの第2方法においては、流路111に対する照射光Laの照射位置(観測領域Mの位置)をX方向に離散的に設定して測定を行う。例えば、予め定められたパターンに沿って、フローセルの入口112寄りの位置を始点位置とし、出口113寄りの位置を終点位置として、始点位置と終点位置との間に所定の間隔で観測領域M,M,M,・・・,Mを設定する。そして、先ず観測領域Mを測定し、この測定を終えたら、次の観測領域Mに合わせてステージ160をX方向に移動させて、観測領域Mを測定し、この測定を終えたら、次の観測領域Mに合わせてステージ160をX方向に移動させて、観測領域Mを測定する、という具合に、離散的に設定された複数の観測領域M~Mを対象として順番に測定を行う。
【0038】
複数の観測領域M~Mを測定し終えたら、そこで測定を終了してもよいし、ステージ160を直前とは逆方向に移動させて、観測領域M,・・・,M,Mの順で直前と同じ領域を再び測定してもよいし、複数の観測領域M~Mに対する測定の往復を複数回繰り返し行ってもよい。同じ領域を複数回測定した場合には、各回における平均値や最頻値、最多値、最少値等を測定結果として出力することが可能である。また、複数回測定する場合に、観測領域毎の測定回数を同じにしても異ならせてもよい。例えば、特に重要な観測領域については、他の観測領域よりも測定回数を多くしてもよい。また、スキャニングの第2方法を上述した第1方法と組み合わせ、連続的な測定と離散的な測定を組み合わせた測定を行ってもよい。
【0039】
図4中(C):スキャニングの第3方法においては、流路111に対する照射光Laの照射位置(観測領域Mの位置)をX方向に加えY方向にも移動させることで、いわば面での測定を行う。例えば、予め定められたパターンに沿って、先ず、フローセルの入口112寄りの観測領域M1Bから出口113寄りの観測領域M1Eにわたる領域を対象として、ステージ160をX方向に移動させながら連続的に測定し(以下、「測定1」と称する。)、測定1の終了後にステージ160をY方向に少し移動させ、次に、出口113寄りの観測領域M2Bから入口112寄りの観測領域M2Eにわたる領域を対象として、ステージ160を直前とは逆方向に移動させながら連続的に測定し(以下、「測定2」と称する。)、測定2の終了後にステージ160をY方向に少し移動させて、さらに測定を行う、という具合に、X方向における連続的な測定をY方向における位置を少しずつ変えて繰り返すことにより、上述した第1及び第2方法よりも広い領域を測定する。
【0040】
このように、スキャニングの第3方法は、上述した第1方法(X方向における連続的な測定)にY方向の移動を組み合わせてスキャニングの対象領域を拡張したものであるが、これに代えて、上述した第2方法(X方向における離散的な測定)にY方向の移動を組み合わせてスキャニングの対象領域を拡張することも可能である。また、見方を変えると、第3方法は、照射光LaがXY平面に対してジグザグを描くようにステージ160を移動させる方法、と捉えることもできる。
【0041】
なお、図4中(C)に示されるように、上記の例においては測定1と測定2とで、すなわち前後する2つの連続的な測定において、観測領域Mを完全に異ならせているが、観測領域Mの一部をオーバーラップさせてもよい。また、X方向での連続的な測定の終了後にステージ160をY方向に移動させているが、X方向における測定の最中、すなわちステージ160をX方向に移動させるのと同時に、Y方向への移動を行ってもよい。
【0042】
ところで、粒子計測装置100における照射光学系の配置を少し変形し、図6に図示された粒子計測装置102のように構成してもよい。上述した粒子計測装置100(図1)と比べて見ると、変形例の粒子計測装置102は、Y軸スライダ164を有しておらず、ステージ160がX方向にのみ移動可能であり、また、光源120がステージ160とは別のステージ121に配置されており、ステージ121がY軸スライダ123上に設けられてY方向にのみ移動可能である。粒子計測装置102においては、ステージ121をY方向に移動させることで流路111に対する照射光Laの照射位置をY方向に移動させることができ、ステージ160をX方向に移動させることで流路111に対する照射光Laの照射位置をX方向に移動させることができる。したがって、粒子計測装置102によっても、粒子計測装置100と同様に、上述した第1~第3方法によるスキャニングを実施することが可能である。
【0043】
また、このような配置とすることにより、ステージ160上の部品の総重量が減るため、X軸スライダ163への負荷を軽減することができ、X軸スライダ163に要求される性能を下げることができるため、比較的性能の低い部品によっても実装が可能となる。
【0044】
もっとも、第1方法又は第2方法によるスキャニングのみで足り、第3方法によるスキャニングを実施しないのであれば、Y軸スライダ123は不要である。この場合には、変形例の粒子計測装置102において、ステージ121をベース170に固定させ、光源120をその発光口をミラー130の反射面に対向させた状態でステージ121に固定させればよい。
【0045】
なお、上記の例においては、流路111に試料流体を貯めた状態でスキャニングを行っているが、これに代えて、測定時間に対して十分に遅い速度(例えば、1mL/分)で試料流体が流路111を流れるように流量可変機構150により流速を調整した上でスキャニングを行ってもよい。また、上述した各方法により一連の測定を終えたら、必要に応じて流量可変機構150を操作し、次の測定対象とする試料流体を流し込んで、引き続き測定を行うことが可能である。
【0046】
図5は、スキャニングの方法の変形例を説明する図である。
上述したスキャニングの第3方法においては、観測領域M(照射光Laの照射位置)をX方向に移動させながら行う測定を、Y方向における位置を少しずつ変えて繰り返し、観測領域Mの軌跡がX方向に沿って描かれるようにステージ160を移動させていたが、これに代えて、図6中(A)に示されるように、観測領域MをY方向に移動させながら行う測定を、X方向における位置を少しずつ変えて繰り返し、観測領域Mの軌跡が流路111にY方向に沿って描かれるようにステージ160を移動させてもよい。
【0047】
また、上述したスキャニングの3つの方法において、シート状(断面が円形や扁平等の形状)の照射光Laを発する光源を用いれば、個々の観測領域Mをより大きく設定することができ、第1及び第2方法においてはY方向への移動を行うことなく、また、第3方法においてはY方向への移動回数を減らして、より広い領域を測定することができる。例えば、断面形状が扁平状の照射光Laをフローセル110に向けて照射すると、図5中(B)に示されるように、観測領域Mを上からみた形状も扁平状となる。
【0048】
このような照射光Laを発する光源を用いて、例えば、フローセルの入口112寄りの位置を始点位置として観測領域MFBを設定し、出口113寄りの位置を終点位置として観測領域MFEを設定して、観測領域Mが初期位置から最終位置まで移動するようにステージ160をX方向に移動させながら、観測領域MFBから観測領域MFEまでの領域を連続的に測定すると、移動の態様としては上述した第1方法と同一であるが、第1方法よりも広い領域を測定することができる。また、この測定にY方向の移動を組み合わせれば、スキャニングの対象領域をさらに拡張することができ、上述した第3方法と同等の領域を少ない移動回数で測定することが可能となる。
【0049】
図7は、粒子計測装置100の構成を示す機能ブロック図である。
粒子計測装置100は、粒子の検出に用いられる上述した構成部品の他に、制御ユニット190を備えている。制御ユニット190は、例えば、操作受付部191、測定制御部192、移動制御部193、記憶部194、計数部195、データ出力部196を有している。
【0050】
操作受付部191は、ユーザに対して操作画面を提供するとともに、操作画面を介してユーザによりなされる操作を受け付ける。ユーザは、操作画面において、測定の実行、試料流体の流速やスキャニングパターンの選択、計測結果の保存等に関する操作を行うことができる。操作受付部191は、測定の実行に関する操作を受け付けると、測定制御部192に測定の実行を指示する。
【0051】
測定制御部192は、測定実行の指示がなされると、先ず測定の準備として、電源を要する光源120、受光素子142、増幅器143、A/D変換器144を作動状態に切り替えるとともに、流量可変機構150を作動させて、フローセル110に対する試料流体の流速が選択された流速となるよう流量可変機構150に調整を行わせる。なお、測定制御部192が流量可変機構150を作動させて流速を調整させるのに代えて、ユーザが流量可変機構150を直接操作して流速の調整を行ってもよい。
【0052】
測定の準備が整うと、測定制御部192は測定を開始する。具体的には、測定制御部192は、移動制御部193に対し、X軸スライダ163及びY軸スライダ164の動作を制御するよう指示する。これを受けて、移動制御部193は、選択されたスキャニングパターンに関する情報を記憶部194から取得して、X軸スライダ163及びY軸スライダ164の動作を制御し、ステージ160をスキャニングパターンに応じた態様で移動させる。このような移動制御部193による制御の結果、フローセルの流路に対する照射光Laの照射位置(流路における観測領域Mの位置)が、選択されたスキャニングパターンに沿って移動することとなる。
【0053】
記憶部194は、記憶領域であり、スキャニングパターン毎に定義された情報を予め記憶している。例えば、ステージ160のX軸スライダ163に対する位置を示すX座標、及び、Y軸スライダ164に対する位置を示すY座標に関する移動タイミング、移動方向や移動量等がスキャニングパターン毎に定義されている。移動制御部193は、これらの情報に基づいてX軸スライダ163及びY軸スライダ164の動作を制御することで、ステージ160、ひいては照射光Laの照射位置をスキャニングパターンに沿って移動させることができる。
【0054】
また、測定制御部192は、スキャニングパターンに沿って散乱光の受光を制御する。測定が開始されると、光源120から発せられた照射光Laは、ミラー130を経てフローセル110に入射し、設定された観測領域Mを照射する。試料流体に含まれる粒子が観測領域Mに存在すると、照射光Laが粒子に照射されて散乱光が生じ、この側方散乱光Lsがレンズ141により集光されて受光素子142に入射し受光される。受光素子142により受光された側方散乱光Lsはその強度に応じた電気信号に変換され、増幅器143により所定のゲインで増幅された後に、A/D変換器144によりデジタル信号に変換されて、計数部195に出力される。
【0055】
計数部195は、入力したデジタル信号の大きさ、すなわち受光された側方散乱光Lsの強度に基づいて粒子の粒径を判定し、粒径毎に粒子を計数して、計測結果を取りまとめた上でデータ出力部196に出力する。
【0056】
計数部195による計数値は、測定制御部192がリアルタイムで参照することができ、測定制御部192は、計数の状況に応じた制御を実行可能である。例えば、測定の実行中において粒子濃度(試料流体の単位体積当りの粒子数)が所定の閾値を超える場合には、粒子濃度は測定に対して十分にあると判断でき、最後まで測定しなくても測定の精度を十分保持できることから、測定制御部192は、測定を最後まで実行することなく途中で終了することができる。このような制御により、測定全体の所要時間を短縮することができる。また、測定制御部192は、粒子濃度が所定の閾値を超える場合には、測定途中で流量可変機構150を制御して試料流体の流速を速くする(上げる)一方、粒子濃度が所定の閾値以下である場合には、測定途中で流量可変機構150を制御して試料流体の流速を遅くする(下げる)ことができる。このような制御により、粒子濃度の高低によらず測定の精度を確保することができる。
【0057】
データ出力部196は、計数部195により出力された計測結果に基づいてデータを出力する。データの出力は、画面への表示により行ってもよいし、プリンタへの出力やネットワークを介した他のデバイスへの送信により行ってもよい。粒子の測定が終了して計測結果の最終データが整うと、最終データの保存が可能な状態となる。データ出力部196は、最終データの保存が可能になったことを操作受付部191に伝える。
【0058】
なお、制御ユニット190は、粒子計測装置100の内部に一体的に設けてもよいし、粒子計測装置100の外部に設けてケーブルやネットワーク等で接続してもよい。
【0059】
〔第2実施形態〕
図8は、第2実施形態の粒子計測装置200を簡略的に示す斜視図である。
粒子計測装置200は、光源がミラー及び受光光学系とは別のステージ上に配置されている点において、上述した第1実施形態の粒子計測装置100と特に異なっており、これらの点に関連して、照射光Laの進み方やスライダの構成も粒子計測装置100と異なっている。なお、第1実施形態と共通する点については、説明を省略する。
【0060】
粒子計測装置200においては、照射光Laは、光源220からY方向に発せられ、ミラー230にてフローセル210に向けて反射されることにより、フローセル210に入射して観測領域を照射する。
【0061】
粒子計測装置200においては、光源220はX方向にのみ移動可能な第1ステージ260に固定されているのに対し、ミラー230及び受光光学系240はX方向及びY方向に移動可能な第2ステージ270に固定されている。これに対応して、粒子計測装置200は、第1ステージ260をX方向に移動させるX軸スライダ261を有しているとともに、第2ステージ270をY方向に移動させるY軸スライダ273、及び、第2ステージ270をX方向に移動させるX軸スライダ274を有している。
【0062】
図9は、粒子計測装置200を簡略的に示す平面図である。
粒子計測装置200においては、光源220が固定されている第1ステージ260の移動は、ミラー230及び受光光学系240(レンズ241、受光素子242)が固定されている第2ステージ270のX方向への移動に連動してなされる。すなわち、図中の黒矢印方向への移動は同期して行われ、グレーで染色した部分全体が同時にX方向に移動するため、第1及び第2ステージ260,270がX方向に移動しても、照射光学系(光源220、ミラー230)及び受光光学系240の相対的な位置関係は保持される。
【0063】
また、第2ステージ270をY方向に移動させると、照射光学系を構成する要素間の(光源220とミラー230との)相対的な位置関係は変化するものの、照射光学系全体をまとまりとして捉えれば、照射光学系と受光光学系との相対的な位置関係は保持されるため、フローセル210に入射する照射光Laと受光光学系240との相対的な位置関係を保持したまま、流路211に対する照射光Laの照射位置を変更することができる。したがって、粒子計測装置200によっても、上述した第1実施形態の粒子計測装置100と同様に、流路211に対し設定する観測領域Mの位置を変更することができ、流路211における広い領域でのスキャニングが可能となる。
【0064】
〔第3実施形態〕
図10は、第3実施形態の粒子計測装置300を簡略的に示す斜視図である。
粒子計測装置300は、ミラーを2個有しており、光源及び一方のミラーがそれぞれ別のステージ上に配置されており、他方のミラー及び受光光学系がさらに別のステージ上に配置されている点において、上述した第1及び第2実施形態の粒子計測装置100,200と特に異なっており、これらの点に関連して、照射光Laの進み方やスライダの構成も粒子計測装置100,200と異なっている。なお、第1及び第2実施形態と共通する点については、説明を省略する。
【0065】
粒子計測装置300においては、照射光Laは、光源320からY方向に発せられ、第1ミラー330にてX方向に反射され、さらに第2ミラー331にてフローセル310に向けて反射されることにより、フローセル310に入射して観測領域を照射する。
【0066】
粒子計測装置300においては、光源320は移動しない第1ステージ360に固定されており、第1ミラー330はY方向にのみ移動可能な第2ステージ370に固定されており、第2ミラー331及び受光光学系340はX方向及びY方向に移動可能な第3ステージ380に固定されている。これに対応して、粒子計測装置300は、第2ステージ370をY方向に移動させるY軸スライダ371を有しているとともに、第3ステージ380をY方向に移動させるY軸スライダ383、及び、第3ステージ380をX方向に移動させるX軸スライダ384を有している。なお、第2ステージ370及び第3ステージ380を1つのY軸スライダで移動させるよう構成してもよい。
【0067】
図11は、粒子計測装置300を簡略的に示す平面図である。
粒子計測装置300においては、光源320が固定されている第1ステージ360は移動せず、また、第1ミラー330が固定されている第2ステージ370のY方向への移動は、第2ミラー331及び受光光学系340(レンズ341、受光素子342)が固定されている第3ステージ380のY方向への移動に連動してなされる。すなわち、図中の黒矢印方向への移動は同期して行われ、グレーで染色した部分全体が同時にY方向に移動する。
【0068】
第2ステージ370のY方向への移動、並びに、第3ステージ380のY方向及びX方向への移動に伴い、照射光学系を構成する要素間の(光源320、第1ミラー330及び第2ミラー331の)相対的な位置関係は変化するものの、照射光学系全体をまとまりとして捉えれば、照射光学系と受光光学系との相対的な位置関係は保持されるため、フローセル310に入射する照射光Laと受光光学系340との相対的な位置関係を保持したまま、流路311に対する照射光Laの照射位置を変更することができる。したがって、粒子計測装置300によっても、上述した第1及び第2実施形態の粒子計測装置100,200と同様に、流路311に対し設定する観測領域Mの位置を変更することができ、流路311における広い領域でのスキャニングが可能となる。
【0069】
〔本発明の優位性〕
以上のように、上述した各実施形態の粒子計測装置によれば、以下のような効果が得られる。
【0070】
(1)照射光学系及び受光光学系を1次元方向(X方向)又は2次元方向(X方向及びY方向)に移動させることができ、照射光学系と受光光学系との相対的な位置関係を保持したまま、流路に対する照射光Laの照射位置(観測領域の形成位置)を変更することができるため、従来の粒子計測装置と比較して、流路における広い領域でスキャニングが実施できるため、試料流体に含まれる粒子の分布に偏りがある場合や粒子の個数が非常に少ない場合でも精度の高い計測が可能となる。
【0071】
(2)流量可変機構が設けられており、流路における試料流体の流れを止めた状態(流路内に試料流体を貯めた状態)、又は、流れを絞った状態(試料流体が遅い速度で流れる状態)で測定を実施することができ、流速を遅くするほど受光の感度を上げることができるため、より小さな粒子を測定することができるとともに、粒子の見逃し等を減らすことができ、計測の精度を上げることが可能となる。
【0072】
(3)流路内に設定する観測領域の位置(照射光Laの照射位置)を移動させながら測定を行うことができ、同一領域を複数回測定することができるため、計測結果の信頼性を高めることが可能となる。また、同一領域を複数回測定する場合に、例えば、奇数回目は流路の一端側(例えば入口側)から他端側(例えば出口側)に向かって移動させながら測定を行い、偶数回目は方向を逆にして流路の他端側から一端側に向かって移動させながら測定を行うようにすれば、移動と測定を兼ねることができ、移動のみに費やす時間を最小限に抑制することができるため、測定全体の所要時間を短縮することが可能となる。
【0073】
(4)フローセルの流路における広い領域でスキャニングがなされるため、従来の粒子計測装置よりも測定全体の所要時間が長くなるものの、現場によっては、測定対象となる試料流体が常に流れたままではなく、流れたり止まったりする場合もあることから、そのような現場においては、次の試料流体が到達するまでの時間を有効活用して測定を行うことが可能である。また、試料流体の流速が遅い場合や、敢えて遅くする場合にも、同様の効果を期待できる。
【0074】
(5)シート状(断面が円形や扁平等の形状)の照射光Laを発する光源を用いることにより、照射光Laの照射により形成される観測領域Mを大きくすることができるため、フローセルの流路における広い領域を1回又は数回のスキャニングで測定することができ、測定全体の所要時間を短縮することができる。
【0075】
(6)照射光学系(光源、ミラー等)及び受光光学系(レンズ、受光素子)を複数のステージに分けて配置することにより、全てを同じステージに配置する場合と比較して、1つのステージ上の部品の総重量を減らすことができるため、個々のステージを移動させる上で要求されるスライダの性能が下がり、比較的性能の低いスライダによっても実装が可能となる。結果として、ステージに関連する構成部品のコストを下げることができる。
【0076】
本発明は、上述した実施形態に制約されることなく、種々に変形して実施することが可能である。
【0077】
上述した実施形態においては、光源からの照射光をミラーが反射してフローセルに入射させているが、ミラーとフローセルとの間にレンズを設けてもよい。これにより、照射光を絞り込みエネルギ密度を高めた状態でフローセルの観測領域に集光することが可能となる。また、ミラーもレンズも設けることなく、光源からの照射光を直接フローセルに入射させてもよい。
【0078】
上述した実施形態においては、フローセルの下方に位置するミラーが照射光Laを直上方向に反射することで、照射光Laをフローセルの底面に対し略直角に入射させているが、照射光Laの入射角はこれに限定されず、底面に対し斜めに入射させてもよい。
【0079】
上述した実施形態においては、1つのフローセルを対象としてスキャニングを行っているが、複数のフローセルをY方向に整列して配置することにより、マルチフローセルを対象としてスキャニングを行うことが可能である。
【0080】
上述した実施形態においては、フローセルをベースに固定しつつ、照射光学系及び受光光学系(より正確には、これらが固定された各ステージ)を1次元又は2次元方向に移動させることにより、照射光学系と受光光学系との相対的な位置関係を保持したまま観測領域Mの位置を変更してスキャニングを行っているが、これとは逆に、照射光学系及び受光光学系をベースに固定しつつ、フローセルを1次元又は2次元方向に移動させることにより、観測領域の位置を変更してスキャニングを行ってもよい。
【0081】
その他、粒子計測装置100,200,300に関する説明の過程で挙げた構成や数値等はあくまで例示であり、本発明の実施に際して適宜に変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0082】
100 粒子計測装置
110 フローセル
120 光源
130 ミラー
140 受光光学系
150 流量調整機構
160 ステージ
163 X軸スライダ
164 Y軸スライダ
170 ベース
190 制御ユニット
192 測定制御部(計測制御部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11