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特開2024-73949移動体制御システム、その制御方法、プログラム、及び移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073949
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】移動体制御システム、その制御方法、プログラム、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240523BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240523BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240523BHJP
   B60W 30/14 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G05D1/02 K
B60W30/10
B60W30/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184949
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】相澤 航輝
(72)【発明者】
【氏名】松永 英樹
(72)【発明者】
【氏名】若山 涼至
(72)【発明者】
【氏名】白方 健登
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA08
3D241BA12
3D241BB01
3D241BB31
3D241BC01
3D241CC03
3D241CD11
3D241CE05
3D241DC42Z
3D241DC43Z
3D241DC44Z
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL09
5H301AA03
5H301AA10
5H301BB05
5H301BB14
5H301CC03
5H301CC06
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD07
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG14
5H301HH01
5H301HH02
5H301JJ01
(57)【要約】
【課題】本発明は、高精度な地図情報を利用しない場合において道路形状の認識状況に応じて好適に速度計画を行うことにある。
【解決手段】本移動体制御システムは、移動体による移動先の走行領域の撮像画像を取得し、撮像画像に含まれる道路形状を認識し、認識された道路形状に基づいて、移動体の軌道を生成し、生成された軌道と、道路形状の認識状況とに基づいて、移動体の速度計画を生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体制御システムであって、
移動体による移動先の走行領域の撮像画像を取得する撮像手段と、
前記撮像画像に含まれる道路形状を認識する認識手段と、
前記認識手段によって認識された道路形状に基づいて、前記移動体の軌道を生成する軌道生成手段と、
前記軌道生成手段によって生成された軌道と、該道路形状の認識状況とに基づいて、前記移動体の速度計画を生成する速度計画手段と
を備えることを特徴とする移動体制御システム。
【請求項2】
前記速度計画手段は、進路変更を伴う方向指示情報が取得されると、前記移動体の減速を開始させるように速度計画を生成することを特徴とする請求項1に記載の移動体制御システム。
【請求項3】
前記速度計画手段は、前記認識手段によって進入部を有する道路形状が認識されると、前記移動体の現在位置から前記進入部までの距離に応じて前記移動体の減速値を決定することを特徴とする請求項2に記載の移動体制御システム。
【請求項4】
前記速度計画手段は、前記進入部までに、進路変更方向のそれぞれに応じた目標速度まで前記移動体の速度を減速させるように、前記減速値を決定することを特徴とする請求項3に記載の移動体制御システム。
【請求項5】
前記目標速度は、さらに前記軌道生成手段によって生成された軌道の曲率に従って決定されることを特徴とする請求項4に記載の移動体制御システム。
【請求項6】
前記目標速度は、予め定められた値であることを特徴とする請求項4に記載の移動体制御システム。
【請求項7】
前記速度計画手段は、前記減速値として、不連続の複数の候補値から選択することを特徴とする請求項3に記載の移動体制御システム。
【請求項8】
前記速度計画手段は、ヒステリシスを持たせて前記減速値を変化させることを特徴とする請求項7に記載の移動体制御システム。
【請求項9】
前記速度計画手段は、さらに前記認識手段による前記道路形状の認識確度に応じて、前記減速値を変化させることを特徴とする請求項3に記載の移動体制御システム。
【請求項10】
前記速度計画手段は、
前記道路形状の認識確度が高いほど、前記減速値を小さくし、
前記道路形状の認識確度が低いほど、前記減速値を大きくすることを特徴とする請求項9に記載の移動体制御システム。
【請求項11】
前記速度計画手段は、さらに前記軌道生成手段による軌道の生成状況に応じて前記移動体の速度を変化させることを特徴とする請求項4に記載の移動体制御システム。
【請求項12】
前記速度計画手段は、前記軌道生成手段によって生成された軌道が長いほど、前記移動体の速度を上げることを特徴とする請求項11に記載の移動体制御システム。
【請求項13】
前記移動体の移動先に関する前記方向指示情報を受け付ける方向指示手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の移動体制御システム。
【請求項14】
前記進入部と前記進路変更を伴う少なくとも1つの進出部とを有する前記道路形状とは、交差点、T字路、及び道路沿いの施設への入り口を含む走行領域の何れかであることを特徴とする請求項3に記載の移動体制御システム。
【請求項15】
移動体制御システムの制御方法であって、
移動体による移動先の走行領域の撮像画像を取得する撮像工程と、
前記撮像画像に含まれる道路形状を認識する認識工程と、
前記認識工程で認識された道路形状に基づいて、前記移動体の軌道を生成する軌道生成工程と、
前記軌道生成工程で生成された軌道と、該道路形状の認識状況とに基づいて、前記移動体の速度計画を生成する速度計画工程と
を含むことを特徴とする移動体制御システムの制御方法。
【請求項16】
コンピュータを、請求項1から14のいずれか1項に記載の移動体制御システムの各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項17】
移動体であって、
移動体による移動先の走行領域の撮像画像を取得する撮像手段と、
前記撮像画像に含まれる道路形状を認識する認識手段と、
前記認識手段によって認識された道路形状に基づいて、前記移動体の軌道を生成する軌道生成手段と、
前記軌道生成手段によって生成された軌道と、該道路形状の認識状況とに基づいて、前記移動体の速度計画を生成する速度計画手段と
を備えることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体制御システム、その制御方法、プログラム、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超小型モビリティ(マイクロモビリティとも称する。)と呼ばれる、乗車定員が1~2名程度の電動車両や、人に対して種々のサービスを提供する移動型ロボットなどの小型の移動体が知られている。このような移動体には、目的地までの走行経路を周期的に生成しながら自律走行を行うものがある。なお、小型の移動体においてはハードウェア資源が乏しく、経路を生成するための高精度な地図情報を記憶する領域や、大量の地図情報を高速に取得する通信デバイスを確保することは難しい。したがって、このような小型の移動体においては高精度な地図情報を利用することなく、経路を生成しつつ、生成した経路に従って速度を制御することが要求されている。
【0003】
特許文献1は、目標経路及び計画速度に従った走行制御中において、車両に作用する制動力を変化させる操作介入が行われた場合に、速度計画を変更するのではなく、現在の実速度に基づいて走行計画を立て直す自動運転システムを提案している。また、特許文献2は、周辺状況を認識し、所定条件(速度計画に関する制約)を満たす目標軌道候補に従って運転制御を行う車両制御装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-93740号公報
【特許文献2】特開2022-6429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、目標経路等に従って速度を制御することについて考慮しているものの、そもそも高精度な地図情報なしで経路生成を行うものではない。一方、高精度な地図情報なしで経路生成を行う場合は、移動体に設けられたカメラ等による撮像画像を解析して道路構造等を認識し、当該認識結果に応じて経路を生成する必要がある。つまり、カメラ等による撮像範囲内で経路を生成するものであり、移動体の移動に合わせて段階的に経路が生成されうる。例えば、交差点等の進路変更を伴う場合には、交差点等に進入する前には進路変更した先の道路形状が認識されておらず経路が計画できていない可能性がある。このような場合においては、経路生成を支援するためや急激な減速などを回避するために、道路形状の認識状況に応じて速度計画を行う必要がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、高精度な地図情報を利用しない場合において道路形状の認識状況に応じて好適に速度計画を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、移動体制御システムであって、移動体による移動先の走行領域の撮像画像を取得する撮像手段と、前記撮像画像に含まれる道路形状を認識する認識手段と、前記認識手段によって認識された道路形状に基づいて、前記移動体の軌道を生成する軌道生成手段と、前記軌道生成手段によって生成された軌道と、該道路形状の認識状況とに基づいて、前記移動体の速度計画を生成する速度計画手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高精度な地図情報を利用しない場合において道路形状の認識状況に応じて好適に速度計画を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る移動体のハードウェアの構成例を示すブロック図
図2】本実施形態に係る移動体の制御構成を示すブロック図
図3】本実施形態に係る移動体の機能構成を示すブロック図
図4】本実施形態に係る(a)撮像画像、(b)撮像画像の道路形状を示す図
図5】本実施形態に係る速度計画手法の一例を示す図
図6】本実施形態に係るヒステリシス関数を示す図
図7】本実施形態に係る交差点の軌道生成手順の一例を示す図
図8】本実施形態に係る交差点の速度計画手順の一例を示す図
図9】本実施形態に係る移動体の走行を制御する処理手順を示すフローチャート
図10】本実施形態に係る移動体の速度計画の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<移動体の構成>
図1を参照して、本実施形態に係る移動体100の構成について説明する。図1(a)は本実施形態に係る移動体100の側面を示し、図1(b)は移動体100の内部構成を示している。図中矢印Xは移動体100の前後方向を示しFが前をRが後を示す。矢印Y、Zは移動体100の幅方向(左右方向)、上下方向を示す。
【0012】
移動体100は、走行ユニット12を備え、バッテリ13を主電源として主にモータの動力で移動する超小型モビリティである。超小型モビリティとは、一般的な自動車よりもコンパクトであり、乗車定員が1又は2名程度の超小型車両である。本実施形態では、移動体100の一例として四輪の超小型モビリティを例に説明するが、本発明を限定する意図はなく例えば三輪車両や鞍乗型車両であってもよい。また、本発明の移動体は、乗り物に限らず、荷物を積載して人の歩行に並走する移動体や、人を先導する移動体であってもよい。さらに、本発明には、四輪や二輪等の車両に限らず、自律移動が可能な歩行型ロボットなども適用可能である。
【0013】
バッテリ13は例えばリチウムイオンバッテリ等の二次電池であり、バッテリ13から供給される電力により走行ユニット12によって移動体100は自走する。走行ユニット12は、左右一対の前輪20と、左右一対の後輪21とを備えた四輪車である。走行ユニット12は三輪車の形態等、他の形態であってもよい。移動体100は、一人用又は二人用の座席14を備える。座席14の前方には、乗員が方向指示を入力するための操作ユニット25が設けられる。操作ユニット25は、移動体100の移動方向を指示する任意のデバイスであり、例えばジョイスティックなどの多方向への入力が可能なデバイスを適用することができる。運転者は、例えば交差点等の進路変更を伴う出口を有する道路形状へ進入する前に、操作ユニット25を操作することにより何れの方向の出口から抜けるかを指示することができる。
【0014】
走行ユニット12は操舵機構22を備える。操舵機構22はモータ22aを駆動源として一対の前輪20の舵角を変化させる機構である。一対の前輪20の舵角を変化させることで移動体100の進行方向を変更することができる。走行ユニット12は、また、駆動機構23を備える。駆動機構23はモータ23aを駆動源として一対の後輪21を回転させる機構である。一対の後輪21を回転させることで移動体100を前進又は後進させることができる。
【0015】
移動体100は、移動体100の周囲の物標を検知する検知ユニット15~17を備える。検知ユニット15~17は、移動体100の周辺を監視する外界センサ群であり、本実施形態の場合、いずれも移動体100の周囲の画像を撮像する撮像装置であり、例えば、レンズなどの光学系とイメージセンサとを備える。しかし、撮像装置に代えて或いは撮像装置に加えて、レーダやライダ(Light Detection and Ranging)を採用することも可能である。
【0016】
検知ユニット15は移動体100の前部にY方向に離間して二つ配置されており、主に、移動体100の前方の物標を検知する。検知ユニット16は移動体100の左側部及び右側部にそれぞれ配置されており、主に、移動体100の側方の物標を検知する。検知ユニット17は移動体100の後部に配置されており、主に、移動体100の後方の物標を検知する。また、本実施形態では、移動体100の前後左右に検知ユニットを設ける例について説明するが、本発明を限定する意図はなく、移動体100の一部の方向(例えば、前方)のみに設ける構成としてもよい。
【0017】
本実施形態に係る移動体100は、少なくとも検知ユニット15を用いて移動体100の前方領域を撮像し、撮像画像から道路形状を抽出し、抽出した道路形状を示す認識情報と運転者からの操作ユニット25の操作指示、または目的地までの経路計画から得られる進路変更に関する情報に従って経路を生成する。認識情報については、画像情報(撮像画像)を処理する機械学習モデルによって出力される、機械学習モデルは、例えば、ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いた深層学習アルゴリズムの演算を行って、画像情報に含まれる道路形状を認識する処理を行う。認識情報には、道路の各種ラインや各種レーン情報、自車両が位置するレーン(Ego lane)、各種のインターセクション(交差点など、Intersection)、各種道路への入り口(Road entrance)などが含まれる。
【0018】
<移動体の制御構成>
図2は、本実施形態に係る移動体100の制御系のブロック図である。ここでは本発明を実施する上で必要な構成を主に説明する。従って、以下で説明する構成に加えてさらに他の構成が含まれてもよい。また、本実施形態では、以下で説明する各部が移動体100に含まれるものとして説明するが、本発明を限定する意図はなく、複数のデバイスを含む移動体制御システムとして実現されてもよい。例えば、制御ユニット30の一部の機能が通信可能に接続されたサーバ装置によって実現されてもよいし、検知ユニット15~17やGNSSセンサ34が外部デバイスとして設けられてもよい。移動体100は、制御ユニット(ECU)30を備える。制御ユニット30は、CPUに代表されるプロセッサ、半導体メモリ等の記憶デバイス、外部デバイスとのインタフェース等を含む。記憶デバイスにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。プロセッサ、記憶デバイス、インタフェースは、移動体100の機能別に複数組設けられて互いに通信可能に構成されてもよい。
【0019】
制御ユニット30は、検知ユニット15~17の検知結果、操作パネル31の入力情報、音声入力装置33から入力された音声情報、GNSSセンサ34からの位置情報、操作ユニット25からの方向指示情報、及び通信ユニット36を介した受信情報を取得して、対応する処理を実行する。制御ユニット30は、モータ22a、23aの制御(走行ユニット12の走行制御)、操作パネル31の表示制御、スピーカ32の音声による移動体100の乗員への報知、情報の出力を行う。
【0020】
音声入力装置33は、移動体100の乗員の音声を収音する。制御ユニット30は、入力された音声を認識して、対応する処理を実行可能である。GNSS(Global Navigation Satellite system)センサ134は、GNSS信号を受信して移動体100の現在位置を検知する。記憶装置35は、検知ユニット15~17による撮像画像、障害物情報、過去に生成した経路、及び占有格子地図等を記憶する記憶デバイスである。記憶装置35にも、プロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納されてよい。記憶装置35は、制御ユニット30によって実行される音声認識や画像認識用の機械学習モデルの各種パラメータ(例えばディープニューラルネットワークの学習済みパラメータやハイパーパラメータなど)を格納してもよい。
【0021】
通信ユニット36は、例えば、Wi‐Fiや第5世代移動体通信などの無線通信を介して外部装置である通信装置120と相互に通信を行う。通信装置120は、例えばスマートフォンであるが、これに限らず、イヤフォン型の通信端末であってもよいし、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、ゲーム機などであってもよい。通信装置120は、例えば、Wi‐Fiや第5世代移動体通信などの無線通信を介してネットワークに接続する。
【0022】
通信装置120を所有するユーザは、当該通信装置120を介して移動体100に対して指示を行うことができる。当該指示は、例えば移動体100をユーザが所望する位置へ呼び寄せて合流するための指示を含む。当該指示を受信すると、移動体100は指示に含まれる位置情報に基づいて目標位置を設定する。なお、移動体100はこのような指示以外にも、検知ユニット15~17の撮像画像から目標位置を設定したり、移動体100に乗車するユーザからの操作パネル31を介した指示に基づいて目標位置を設定したりすることができる。撮像画像から目標位置を設定する場合は、例えば撮像画像内に移動体100に向かって手を挙げている人を検出し、検出された人の位置を推定して目標位置として設定する。
【0023】
<移動体の機能構成>
次に、図3を参照して、本実施形態に係る移動体100の機能構成について説明する。ここで説明する機能構成は、制御ユニット30において、例えばCPUがROM等のメモリに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、以下で説明する機能構成は、本発明を説明する上で必要な機能のみについて説明するものであり、移動体100に実際に含まれる機能構成の全てを説明するものではない。つまり、本発明に係る移動体100の機能構成を以下で説明する機能構成に限定するものではない。
【0024】
ユーザ指示取得部301は、ユーザからの指示を受け付ける機能を有し、操作ユニット25や操作パネル31を介したユーザ指示や、通信ユニット36を介して通信装置120等の外部装置からユーザ指示、音声入力装置33を介してユーザの発話による指示を受け付けることができる。ユーザ指示には上述したように、移動体100の目標位置(目的地とも称する。)を設定する指示や、移動体100の走行制御に関わる指示が含まれる。
【0025】
画像情報処理部302は、検知ユニット15~17によって取得された撮像画像を処理する。具体的には、画像情報処理部302は、検知ユニット15~17によって取得された撮像画像から認識した道路形状を抽出する。また、画像情報処理部302は、画像情報を処理する機械学習モデルを含み、当該機械学習モデルの学習段階の処理や推論段階の処理を実行してもよい。画像情報処理部302の機械学習モデルは、例えば、ディープニューラルネットワーク(DNN)を用いた深層学習アルゴリズムの演算を行って、画像情報に含まれる道路形状等を認識する処理を行うことができる。認識した道路形状を示す認識情報には、例えば、白線などのライン、レーン、交差点の形状、交差点の進入口や出口などを示す情報が含まれる。
【0026】
軌道生成部303は、ユーザ指示取得部301によって設定された目標位置に対しての移動体100の走行経路(軌道)を生成する。具体的には、軌道生成部303は、高精度地図の障害物情報を必要とすることなく、検知ユニット15~17の撮像画像から認識した道路形状(認識情報)と、操作ユニット25を介した方向指示情報とに基づいて軌道を生成する。なお、認識情報は、移動体100から所定範囲の道路形状の情報であり、それらより遠方の道路形状を認識することができない。一方で、認識情報は、移動体100が進むにつれて周期的に更新される情報である。したがって、移動体100の移動に合わせて遠方の領域が徐々に認識される。軌道生成部303は、更新される認識情報に従って逐次的に軌道を生成する。また、方向指示情報については、操作ユニット25を介して受け付ける情報に限られず、目的地までの経路計画によって得られる進路変更の情報に基づくものであってもよい。したがって、本発明は操作ユニット25を必須の構成とするものではなく、操作ユニット25を有していない移動体等にも適用することができる。
【0027】
また、速度計画部304は、軌道生成部303によって生成された軌道の曲率に従って速度を計画するとともに、運転者による方向指示や認識された道路形状の確度に基づいて速度を計画する。例えば、交差点等において右左折の指示が行われた場合において、速度計画では、直進からカーブを開始するまでに、右折の場合は8kmまで減速し、左折の場合は6kmまで減速するように制御する。このように生成された軌道と、運転者からの指示とに応じて、速度を制御することにより、急激な減速などを回避することができる。また、道路形状の認識確度が高ければ減速度を小さくし、認識確度が低ければ減速度を高く設定する。認識確度は、例えば、画像情報処理部302によって認識された道路形状を示す道路構造体に付与されたパラメータに応じて判断することができる。詳細については後述する。
【0028】
走行制御部305は、生成された軌道と速度計画に従って移動体100の走行を制御する。具体的には、走行制御部305は、軌道及び速度計画に従って走行ユニット12を制御して移動体100の速度及び角速度を制御する。走行制御部305は、運転者の操作によって軌道の運転計画にずれが生じた場合には、再度、軌道生成部303によって生成された新たな軌道を取得して走行を制御してもよいし、使用中の軌道からのずれを解消するように移動体100の速度及び角速度を制御してもよい。
【0029】
<撮像画像>
図4は、本実施形態に係る(a)撮像画像、(b)撮像画像に含まれる道路形状の一例を示す。図4(a)に示す撮像画像400は、移動体100の前方に設けられた検知ユニット15によって撮像された画像を示す。なお、網掛け領域401は、撮像画像400に写り込んだ移動体100のコクピット内を示す。網掛け領域401以外の領域は、移動体100の前方領域に広がる周辺環境が撮影された領域である。
【0030】
図4(b)は、図4(a)に示す撮像画像400に含まれる道路形状を示す。410の点線領域は三叉路(T字路)の交差点を示す。図4(b)に示すように、移動体100の前方領域には、手前に三叉路の交差点が存在し、交差点の出口として進行方向を直進した先の出口と、右折した場合の出口とが存在する。交差点を直進した場合の出口の先は、右に大きくカーブする道路が続いている。撮像画像400に示すように、交差点410へ進入する前の移動体100からの視点では、矢印に示す複数の出口が存在することが認識できるものの、出口の先の道路形状を認識することができない。したがって、本実施形態に係る移動体100は、移動するにつれて、明らかとなった道路形状を用いて逐次的又は段階的に軌道を生成し、速度計画を行う。つまり、移動体100は、所定の道路形状へ近づくにつれて、その認識の確度が高まり、認識具合に応じて軌道及び速度計画を生成する。また、本実施形態に係る移動体100は、撮像画像400から認識された道路形状において、複数の進出部が含まれる場合、又は、少なくとも1つの進出部が現在の進行方向から所定範囲外に位置する場合には、当該道路形状が進路変更を伴う少なくとも1つの進出部を含むものと判断する。このように判断した場合において本実施形態によれば、進路変更の可能性があるものと判断して、後述する軌道生成を実行する。また、速度計画については、進路変更を伴う方向指示情報を取得すると、減速を開始するものであってもよいし、進路変更を伴う少なくとも1つの進出部が認識された段階で減速を開始するようにしてもよい。このように、本実施形態によれば、進路変更の可能性が生じた場合に、進路変更に備えて減速を開始するものである。
【0031】
<速度計画手法>
図5は、本実施形態に係る速度計画手法の一例を示す。ここでは、速度計画部304による速度計画の機能構成について説明する。本実施形態に係る移動体100の速度計画は、画像情報処理部302による交差点等の道路形状の認識状況に応じて計画される。速度計画部304は、機能構成として、交差点距離速度計画501、曲率ベース速度計画502、及び検出確度速度計画503を有する。
【0032】
交差点距離速度計画501では、画像情報処理部302によって認識された交差点等の進入部までの距離に応じて速度計画が生成される。具体的には、ここでは、交差点進入後に移動体100の移動先方向に応じて目標速度まで減速する速度計画が生成される。例えば移動方向が進路変更を伴う左折方向であれば、認識された交差点等の進入部において移動体100の速度が6km/hとなるように計画される。また、移動方向が進路変更を伴う右折方向であれば、認識された交差点等の進入部において移動体100の速度が8km/hとなるように計画される。さらに、移動方向が直進である場合には、認識された交差点等の進入部において移動体100の速度10km/hとなるように計画される。なお、これらの数値は一例であり本発明を限定するものではない。右左折については、操作ユニット25による右左折の操作指示や、又は目的地までの経路計画から得られる進路変更に関する情報に基づいて判断される。また、速度計画による減速値としては、不連続の複数の候補値から選択されるようにしてもよい。これらの候補値は予め記憶装置35に記載されている。
【0033】
曲率ベース速度計画502では、軌道生成部303によって生成された軌道、特にその曲率に応じて速度計画が生成される。ここでは、生成された軌道に応じて、制限速度の範囲内で急旋回や急減速が発生しないように速度計画が生成される。また、曲率ベース速度計画502では、生成された軌道の生成状況に応じて移動体の速度を変化させるように速度計画が生成される。例えば、生成された軌道が長いほど、移動体100の速度を上げるように調整される。
【0034】
また、検出確度速度計画503では、画像情報処理部302によって認識される道路形状の認識確度に応じて速度計画が生成される。例えば、道路形状の認識確度が高いほど速度を上げ、認識確度が低いほど速度を下げるように速度計画が行われる。言い換えれば、道路形状の認識確度が高いほど減速値を小さくし、認識確度が低いほど減速値を大きくするように速度計画が行われる。これにより、道路形状が明確に認識できていない状態においては、移動体100の速度を抑えて道路形状の認識を優先させることができる。一方で道路形状が明確に認識されると、生成される軌道も長くなり、移動体100の速度を上げることができる。なお、道路形状の認識状況については、画像情報処理部302から出力される認識情報のパラメータを参照することで判断することができる。上述したように、当該パラメータには、認識情報には、道路の各種ラインや各種レーン情報、自車両が位置するレーン(Ego lane)、各種のインターセクション(交差点など、Intersection)、各種道路への入り口(Road entrance)などが含まれ、認識できるごとに各パラメータが増加するものである。従って、交差点においてその進入部と全ての進出部やその先の道路情報(パラメータ)が認識できれば、当該交差点については明確に認識できたと判断することができる。
【0035】
このように本実施形態に係る移動体100では、各種の条件に基づいて複数の速度計画が随時生成される。生成された複数の速度計画(速度値)は504の最小化ブロックに入力され、最小の速度値を有する速度計画が選択される。なお、常に501~503の機能構成から速度計画が出力されるのではなく、各機能構成において速度計画が生成可能なタイミングにおいて随時生成されて入力が発生するものである。したがって、同時に複数の入力があればそれらのうち最小の速度値を有する速度計画が選択され、続く減速計画505の機能構成へ入力される。減速計画505では、移動体100の現在の速度と、入力された速度計画とに基づいて移動体100の減速値が決定される。なお、ここでは一例として減速値を例に説明しているが、進路変更後等においては加速も行われるものであり、その場合は加速値となる。即ち、ここでは、速度計画に応じて加速値又は減速値が生成される。
【0036】
また、減速値を変化させる場合には、図6に示すようにヒステリシス関数を用いて制御が行われる。図6において横軸は減速計画505に入力される減速値を示し、縦軸は減速計画505が出力する減速値を示す。また、実線が減速値の上昇時を示し、点線が減速値の下降時を示す。通常時の減速では0.1Gで減速させることが好ましいが、方向指示等のタイミングによっては0.1G以上の減速を行わないと目標速度を達成できない場合が発生しうる。一方で減速Gを可変にする減速値を逐次計算すると移動体100における振動が激しくなり、乗り心地に悪影響を与えてしまう。そこで、本実施形態によれば、図6に示すように、ヒステリシスを持たせて減速値を変化させる。
【0037】
<交差点等の軌道生成手順>
図7は、本実施形態に係る交差点の認識状況に応じた軌道生成手順を示す。ここでは、図4(b)に示す交差点(T字路)に近づいた際の軌道生成手順について説明する。本実施形態によれば、進入部と進路変更を伴う進出部とを有する交差点等の道路形状を通過する際の軌道を、撮像画像から得られた道路形状の認識情報に応じて逐次的(段階的)に生成する。
【0038】
ここでは移動体100と交差点との距離に応じて4段階で軌道制御を行う例について説明する。図7に示すように、フェーズ0は、移動体100から交差点までの距離が30mよりも離れている状態である。この状態において、画像情報処理部302は、検知ユニット15~17によって取得された撮像画像から、移動体100が走行している走行領域を示す”Ego lane”を認識しているものの、交差点となる道路形状については認識していない状態である。
【0039】
フェーズ1は、移動体100から交差点までの距離が30mより近づいた状態で、且つ操作ユニット25から右折の指示を受け付けた状態である。この状態において、画像情報処理部302は、上記”Ego lane”に加えて、交差点を認識することができる。なお、ここでの交差点の認識情報では、交差点の形状と進入部(”Road entrance”)は認識されているものの、その先の進出部(出口)や走行領域までは明確に認識できていない状態である。
【0040】
画像情報処理部302が機械学習モデルを用いて抽出した道路形状の認識情報(例えば、交差点等を示す”Intersection”)には、その認識状況に応じて各種パラメータが含まれる。当該パラメータには、例えば進入部や進路変更を伴う進出部を示す”Road entrance”や、”Intersection”の境界を示す情報、付近の道路形状の白線(ライン)を示す情報、車線(走行領域、レーン)を示す情報などが含まれる。つまり、認識状況によっては、”Intersection”の形状(境界)を示すパラメータのみが含まれることもあり、分岐先のレーンやラインについては認識できていない可能性もある。
【0041】
従って、軌道生成部303は、そのような認識状況に応じて逐次的に軌道を生成及び更新する必要がある。当該フェーズ1においては、右折の指示を受け付けているものの、まだ交差点の進出部(出口)やその先の走行領域を特定できていない。よって、軌道生成部303は、軌道としては現状の軌道を維持し、進路を変更するような軌道は生成しない。
【0042】
フェーズ2は、移動体100から交差点までの距離が20mより近づいた状態で、且つ操作ユニット25から右折の指示を受け付けた状態である。この状態において、画像情報処理部302は、上記フェーズ1の認識情報に加えて、その先の走行領域”Target lane”を認識して、当該走行領域に対する進出部を抽出する。なお、ここでは、走行領域”Target lane”を認識しているものの、当該走行領域の境界を示すラインは認識できておらず、当該走行領域の認識の確度は低いものとなっている。一方で、指示された右折する場合の交差点の進出部”Road entrance”は明確に認識できている状態である。例えば、フェーズ2においては、交差点に近づいてきており、右折側の交差点の境界を明確に認識することができ、その上側半分が走行車線(走行領域”Target lane”)として推定でき、下側半分が対向車線と推定できるためである。
【0043】
従って、フェーズ2において軌道生成部303は、より確度高く認識できる情報に基づいて、進路変更の軌道を生成する。具体的には、軌道生成部303は、移動体100の現在位置から、既に認識されている交差点の進入部”Road entrance”までの第1軌道と、当該進入部から右折側の交差点の進出部”Road entrance”までの第2軌道とを生成する。第2軌道については、単曲線、クロソイド曲線、及び3次曲線などの少なくとも1つの曲線の軌道を含むように生成される。第2軌道は、このような曲線に加えて直線を含むものであってもよい。また、第2軌道については、進入部の中心から特定された進出部の中心までの軌道として生成されてもよい。
【0044】
フェーズ3は、移動体100が交差点へ進入した状態である。この状態において、画像情報処理部302は、上記フェーズ2の認識情報に加えて、その先の走行領域”Target lane”の境界を示す白線(ライン)をさらに認識することができ、走行領域”Target lane”をフェーズ2よりも正確に認識できる。従って、フェーズ3において軌道生成部303は、上記フェーズ2で生成した第2軌道に続く第3軌道であって、認識された走行領域内の第3軌道を生成する。これにより、交差点において右折指示が行われた場合の軌道を生成することができる。
【0045】
なお、上記フェーズ3においては、移動体100が交差点に進入した後に、走行領域”Target lane”の白線(例えば、車線の境界を示す線”Lane instance”)を認識してより正確に走行領域”Target lane”が確定したタイミングで第3軌道を生成する例について説明したが、本発明を限定するものではない。例えば、上記のように走行領域”Target lane”を確定したタイミングではなく、軌道生成部303は、移動体100が交差点への進入部より先に進むと、走行領域”Target lane”がある程度確定したと判断して、第3軌道を生成するようにしてもよい。なお、移動体100が交差点への進入部より先に進むタイミングとは、即ち、上記第2軌道の走行を開始したタイミングとなる。或いは、軌道生成部303は、特定された右折側の進出部から所定の距離まで移動体100が近づくと、走行領域”Target lane”がある程度確定したと判断して、第3軌道を生成するようにしてもよい。
【0046】
また、本発明では、操作ユニット25からの方向指示の情報に基づいて右左折等の進路変更を判断する例について説明したが、本発明を限定するものではない。例えば、予め設定されている目的地に従って経路計画を行っている中で、次の交差点を右折する必要があれば、軌道生成部303は、上記のような方向指示情報を受け付けるまでもなく、右折するものと判断して軌道を生成するようにしてもよい。また、例えば進行方向が突き当りになっており、左折もしくは右折しなければならない場合に操作ユニット25からの方向指示の情報を受け付けていない場合、左折又は右折を行うと判断して軌道を生成するようにしてもよい。この場合、例えば、目的地までの経路計画に対して、当該目的地へ近づく方向への進路変更が選択されうる。
【0047】
また、本実施形態によれば、速度計画部304は、図7の「速度」の行に示すように、各フェーズにおける目標速度を計画する。例えば、交差点を認識した状態で右左折の指示を受け付けた場合には、進路変更が発生するため、交差点の進入部までに所定の速度(例えば、右折の場合は時速8km、左折の場合は時速6km)まで減速する必要がある。したがって、速度計画部304は、急激な減速を回避するため、各フェーズにおいて段階的に減速を行うことが望ましい。具体的な減速手法については図8を用いて説明する。
【0048】
<交差点等の速度計画>
図8は本実施形態に係る交差点等の道路形状の認識状況に応じた速度計画手順を示す。グラフ800は横軸に時間(s)を示し、縦軸に移動体100の速度(km/h)を示す。ここでは、図4に示したT字路に移動体100が近づいた際の速度計画について説明する。なお、本実施形態では、進入部と進路変更を伴う進出部(出口)を有する道路形状の一例としてT字路を用いて説明するが、本発明は、進入部と進路変更を伴う進出部(出口)を有する道路形状として交差点や、T字路、道路沿いの施設への入り口、L字形状などの走行領域などであってもよい。道路沿いの施設への入り口とは、例えばショッピングモールやガソリンスタンド、駐車場などへの入り口を含む。
【0049】
まず、速度計画部304は、交差点等が検出されているかどうかに係わらず、例えば操作ユニット25を介して方向指示情報を受け付けると、次の交差点等において受け付けた方向に進路変更を行うものと判断し、減速を開始する(上記フェーズ0)。ここでの減速値は、0.05Gなど所定値に決定される。また、移動体100の現在の速度に応じて決定されてもよい。なお、方向指示情報の受け付けるタイミングは交差点等を検出した後の可能性もある。移動体100の現在の速度にも依存するが、先に交差点等を検出した場合には、方向指示情報を受け付ける前に減速を開始してもよい。
【0050】
画像情報処理部302が交差点等を検出した後に、さらに交差点等の進入部”Road entrance”を認識すると交差点等までの距離が認識される(上記フェーズ1)。ここで、速度計画部304は、交差点等の進入部までの目標速度(例えば、右折の場合は時速8km、左折の場合は時速6km)に応じて減速値を更新する。例えば、0.1G~0.2Gに更新される。
【0051】
その後、交差点等の進出部”Road entrance”が認識され(上記フェーズ2)、交差点内の軌道が生成されると、曲率ベース速度計画502にて速度計画が生成され、必要に応じて減速値が調整される。なお、フェーズ3の前後において、移動体100は交差点等の進入部へ到達しているため目標速度まで減速していることとなる。さらに、目標レーンが決定して進出部を抜けた先の軌道が生成される(上記フェーズ3)と、曲率ベース速度計画502にて速度計画が新たに生成され、必要に応じて減速値が調整される。
【0052】
また、交差点等を通過する際には、当該交差点等の認識確度に応じて、検出確度速度計画503によって速度計画が生成される。複数の速度計画が生成された場合には、図5を用いて説明したように、最小の速度が選択されて、減速値が決定される。
【0053】
<基本フロー>
図9は、本実施形態に係る移動体100の基本制御を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、制御ユニット30において、例えばCPUがROM等のメモリに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。
【0054】
S101で制御ユニット30は、ユーザ指示取得部301によって受信したユーザ指示に基づいて、移動体100の目標位置を設定する。ユーザ指示については、上述したように、種々の方法で受け付けることができる。続いて、S102で制御ユニット30は、方向指示情報を取得する。ここでは、運転者が操作ユニット25を操作した場合の方向指示情報や、設定された目的位置に応じて定まる進路変更の方向指示情報が含まれる。ここでは、方向指示情報を取得する処理として、便宜的にS102で行われる説明としているが、実際には運転者が操作ユニット25を操作したタイミングで割り込み処理として随時発生する処理である。したがって、S102の処理以降においても操作割り込みにより、方向指示情報が取得され、軌道生成に用いられるものである。
【0055】
次に、S103で制御ユニット30は、検知ユニット15によって移動体100の前方領域(進行方向)を撮像し、撮像画像を取得する。その後S104で制御ユニットは、取得した撮像画像を画像情報処理部302によって処理し、機械学習モデルを用いて認識した道路形状を示す認識情報を取得する。なお、S103及びS104の処理は継続的又は周期的に実施され、撮像画像や撮像画像から取得される認識情報は随時更新される情報となる。
【0056】
次に、S105で制御ユニット30は、S104で取得された認識情報に従って、軌道生成部303によって移動体100の軌道を生成する。続いて、S106で制御ユニット30は、生成した軌道や、方向指示情報、認識情報に基づいて、移動体100の速度計画を生成する。速度計画部304による速度計画の詳細な手順については図10を用いて後述する。さらにS107で制御ユニット30は、走行制御部305によって移動体100の速度及び角速度を決定し、走行を制御する。その後、S108で制御ユニット30は、移動体100が目標位置へ到達したかどうかをGNSSセンサ34からの位置情報に基づいて判断し、目標位置へ到達していない場合は処理をS102に戻して、撮像画像を更新しながら軌道を生成し、走行を制御する処理を繰り返し行う。一方、目標位置へ到達した場合は、本フローチャートの処理を終了する。
【0057】
<速度計画の処理手順>
図10は、本実施形態に係る速度計画(S106)の詳細な処理手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、制御ユニット30において、例えばCPUがROM等のメモリに格納されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。
【0058】
まずS201で速度計画部304は、S105で軌道が更新されたかどうかを判断する。更新されていればS202に進み、そうでなければS203へ進む。S202で速度計画部304は、更新された軌道の曲率に従って速度計画を生成する。ここでは、移動体100の現在位置から生成された軌道の終点までの速度を計画し、S203へ進む。一方で、前回までに生成された軌道に変化がない場合には、新たに生成された軌道の部分についての速度計画のみを生成するようにしてもよい。
【0059】
S203で速度計画部304は、S102で方向指示情報を受け付けたかどうかを判断する。受け付けた場合はS204に進み、そうでない場合はS205に進む。S204で速度計画部304は、方向指示情報を受け付けたため進路変更が発生するものと判断して減速を開始し、S205に進む。ここでは、所定の減速値、例えば0.05Gで減速を開始する。
【0060】
S205で速度計画部304は、S104で取得した認識情報において交差点等が検出されているかどうかを判断する。検出されている場合はS206に進み、そうでない場合はS208に進む。S206で速度計画部304は、検出された交差点等の進入部が認識されると、移動体100から進入部までの距離と、進路変更方向とに応じて所定の速度まで減速すべく、当該進入部までの速度計画を生成する。続いて、S207で速度計画部304は、交差点等の認識確度に応じて速度計画を生成し、S208へ進む。
【0061】
S208で速度計画部304は、S202、S206、及びS207で生成された場合のそれぞれの速度計画を用いて、現在実行している速度計画を調整し、本フローチャートの処理を終了して処理をS107へ戻す。調整方法については例えば図5で説明したように、速度が最小となる速度計画が選択されるようにしてもよい。なお、S206の処理は、交差点等の進入部までの速度計画が既に生成されている場合は省略される。
【0062】
<実施形態のまとめ>
1.上記実施形態の移動体制御システム(例えば、100)は、
移動体による移動先の走行領域の撮像画像を取得する撮像手段と、(例えば、15~17)
前記撮像画像に含まれる道路形状を認識する認識手段と、(例えば、302)
前記認識手段によって認識された道路形状に基づいて、前記移動体の軌道を生成する軌道生成手段と(例えば、303)
前記軌道生成手段によって生成された軌道と、該道路形状の認識状況とに基づいて、前記移動体の速度計画を生成する速度計画手段と(例えば、304)
を備えることを特徴とする。
【0063】
この実施形態によれば、高精度な地図情報を利用しない場合において道路形状の認識状況に応じて好適に速度計画を行うことができる。
【0064】
2.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記速度計画手段は、進路変更を伴う方向指示情報が取得されると、前記移動体の減速を開始させるように速度計画を生成する。
【0065】
この実施形態によれば、進路変更を行う前に事前に減速を開始することにより、実際に旋回を開始する際の急減速を回避することができる。
【0066】
3.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記速度計画手段は、前記認識手段によって進入部を有する道路形状が認識されると、前記移動体の現在位置から前記進入部までの距離に応じて前記移動体の減速値を決定する。
【0067】
この実施形態によれば、進路変更を行う際において、最適な速度で旋回を開始することができる。
【0068】
4.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記速度計画手段は、前記進入部までに、進路変更方向のそれぞれに応じた目標速度まで前記移動体の速度を減速させるように、前記減速値を決定する。
【0069】
この実施形態によれば、進路変更方向に応じて最適な速度で旋回を開始することができる。
【0070】
5.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記目標速度は、さらに前記軌道生成手段によって生成された軌道の曲率に従って決定される。
【0071】
この実施形態によれば、生成された軌道の曲率に応じて、急減速や急旋回を回避するように速度計画を行うことができる。
【0072】
6.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記目標速度は、予め定められた値である。
【0073】
この実施形態によれば、右左折のそれぞれにおいて異なる旋回時の半径に応じて、最適な速度で旋回を行うことができる。
【0074】
7.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記速度計画手段は、前記減速値として、不連続の複数の候補値から選択する。
【0075】
この実施形態によれば、都度算出するよりも処理負荷を低減することができる。
【0076】
8.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記速度計画手段は、ヒステリシスを持たせて前記減速値を変化させる。
【0077】
この実施形態によれば、速度計画に従った減速において、急減速を回避することができる。
【0078】
9.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記速度計画手段は、さらに前記認識手段による前記道路形状の認識確度に応じて、前記減速値を変化させる。
【0079】
この実施形態によれば、認識確度に応じて速度を切り替えることにより、道路形状の認識をサポートすることができる。
【0080】
10.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記速度計画手段は、
前記道路形状の認識確度が高いほど、前記減速値を小さくし、
前記道路形状の認識確度が低いほど、前記減速値を大きくする。
【0081】
この実施形態によれば、認識確度に応じて、走行速度を優先したり、道路形状の認識をサポートしたりすることができる。
【0082】
11.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記速度計画手段は、さらに前記軌道生成手段による軌道の生成状況に応じて前記目標速度を変化させる。
【0083】
この実施形態によれば、軌道が生成されているにも関わらず、無駄に減速することを回避することができる。
【0084】
12.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記速度計画手段は、前記軌道生成手段によって生成された軌道が長いほど、前記目標速度を上げる。
【0085】
この実施形態によれば、生成された軌道が長ければ、無駄な減速を回避ことができる。
【0086】
13.上前記移動体の移動先に関する前記方向指示情報を受け付ける方向指示手段をさらに備える。
【0087】
この実施形態によれば、ユーザの意図による進路変更に応じた速度計画を生成することができる。
【0088】
14.上記実施形態の移動体制御システムでは、前記進入部と前記進路変更を伴う少なくとも1つの進出部とを有する前記道路形状とは、交差点、T字路、及び道路沿いの施設への入り口を含む走行領域の何れかである。
【0089】
この実施形態によれば、種々の道路形態に対応して速度計画を生成することができる。
【0090】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0091】
100…移動体、12…走行ユニット、13…バッテリ、14…座席、15~17…検知ユニット、20…前輪、21…後輪、22…操舵機構、22a、23a…モータ、25…操作ユニット、30…制御ユニット、31…操作パネル、32…スピーカ、33…音声入力装置、34…GNSSセンサ、35…記憶装置、36…通信ユニット、120…通信装置、301…ユーザ指示取得部、302…画像情報処理部、303…軌道生成部、304…速度計画部、305…走行制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10