IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カワサキモータース株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両 図1
  • 特開-車両 図2
  • 特開-車両 図3
  • 特開-車両 図4
  • 特開-車両 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073968
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20240523BHJP
   F02M 35/024 20060101ALI20240523BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20240523BHJP
   B62J 40/00 20200101ALI20240523BHJP
【FI】
F01M13/00 F
F02M35/024 521E
F01M13/00 G
B62M7/02 W
B62J40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184982
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大堀 亮介
【テーマコード(参考)】
3G015
【Fターム(参考)】
3G015AB02
3G015BD01
3G015BD10
3G015BD24
3G015CA06
3G015CA16
3G015DA02
3G015DA04
(57)【要約】
【課題】エンジンとエアクリーナとをブリーザチューブにより接続した車両において、ブリーザチューブにより車両のメンテナンス性が低下するのを防止する。
【解決手段】
車両は、クランクケースと、クランクケースに接続されたシリンダブロックとを有する走行用の内燃機関と、内燃機関に供給される吸気を浄化するエアクリーナと、クランクケースとエアクリーナとに接続され、クランクケース内の気体をエアクリーナに向けて供給するブリーザチューブと、を備え、ブリーザチューブとクランクケースとの接続部分が、シリンダブロックの車幅方向中央よりも車幅方向一方に配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースと、前記クランクケースに接続されたシリンダブロックとを有する走行用の内燃機関と、
前記内燃機関に供給される吸気を浄化するエアクリーナと、
前記クランクケースと前記エアクリーナとに接続され、前記クランクケース内の気体を前記エアクリーナに向けて供給するブリーザチューブと、を備え、
前記ブリーザチューブと前記クランクケースとの接続部分が、前記シリンダブロックの車幅方向中央よりも車幅方向一方に配置されている、車両。
【請求項2】
前記ブリーザチューブと前記クランクケースとの前記接続部分が、前記シリンダブロックよりも前記車幅方向一方の外方に配置されている、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ブリーザチューブと前記クランクケースとの前記接続部分が、前記シリンダブロックの前記車幅方向中央よりも前記車幅方向一方に偏位した位置に配置され、
前記ブリーザチューブの前記エアクリーナ側の開口が、前記シリンダブロックの前記車幅方向中央よりも車幅方向他方に偏位した位置に配置されている、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記ブリーザチューブは、
前記クランクケースとの前記接続部分から、前記シリンダブロックの前記車幅方向一方の外方を通って前記エアクリーナに向けて延びる第1領域と、
前記エアクリーナとの接続部分から、前記エアクリーナの前記車幅方向一方に向けて延びる第2領域と、を有する、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項5】
前記シリンダブロックの後方で且つ前記クランクケースの上方に配置された、前記内燃機関に対する付属部品を更に備え、
前記ブリーザチューブの前記第2領域が、前記付属部品よりも上方に配置されている、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記クランクケースは、オイルの貯留空間を有する第1室と、前記第1室と区画されて、前記シリンダブロックの前記車幅方向中央よりも前記車幅方向一方に偏位した位置に配置された第2室とを有し、
前記ブリーザチューブと前記クランクケースとの前記接続部分において、前記ブリーザチューブが前記第1室と連通している、請求項3に記載の車両。
【請求項7】
前記エアクリーナは、前記シリンダブロックの車幅方向に並んで配置されて前記シリンダブロックに吸気を供給する複数の供給管を有し、
前記ブリーザチューブの前記エアクリーナ側の開口は、前記複数の供給管のうち最も前記シリンダブロックの車幅方向他方に位置する供給管の開口と異なる方向に向けられ、且つ、前記供給管の前記開口の中心よりも前記車幅方向他方に偏位した位置で、前記車幅方向他方に向けられている、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項8】
前記エアクリーナは、前記ブリーザチューブの前記エアクリーナ側の開口と対向して配置された壁面を有する、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項9】
前記車両の前記車幅方向一方の側に配置されたサイドスタンドを備える、請求項3に記載の車両。
【請求項10】
前記内燃機関の駆動力が伝達される駆動輪と、
前記内燃機関と前記駆動輪との間の動力伝達経路を接続及び遮断するクラッチと、を備え、
前記クラッチが、前記シリンダブロックの前記車幅方向中央よりも車幅方向他方に偏位した位置に配置されている、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項11】
前記ブリーザチューブの一部が、前記エアクリーナの上面と重ねて配置されている、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項12】
自動二輪車である、請求項1又は2に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関し、特に、ブリーザチューブの配置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、自動二輪車のエンジンに設けられたクランクケースの内圧を逃がすため、エンジンに導入される空気を浄化するエアクリーナをブリーザチューブによりクランクケース内に連通させた構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3102257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動二輪車において、作業者が外部からブリーザチューブにアクセスしてエンジン等をメンテナンスする際、ブリーザチューブにアクセスしにくいことで自動二輪車のメンテナンス性が低下する場合がある。この課題は、自動二輪車以外の車両でも同様に生じうる。
【0005】
そこで本開示は、エンジンとエアクリーナとをブリーザチューブにより接続した車両において、ブリーザチューブにより車両のメンテナンス性が低下するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両は、クランクケースと、前記クランクケースに接続されたシリンダブロックとを有する走行用の内燃機関と、前記内燃機関に供給される吸気を浄化するエアクリーナと、前記クランクケースと前記エアクリーナとに接続され、前記クランクケース内の気体を前記エアクリーナに向けて供給するブリーザチューブと、を備え、前記ブリーザチューブと前記クランクケースとの接続部分が、前記シリンダブロックの車幅方向中央よりも車幅方向一方に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、エンジンとエアクリーナとをブリーザチューブにより接続した車両において、ブリーザチューブにより車両のメンテナンス性が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る車両の左斜め後方から見た要部外観図である。
図2図2は、図1の車両の後方から見た要部外観図である。
図3図3は、図1のブリーザチューブのエアクリーナ側の一部構成とエアクリーナの一部構成とを示す図である。
図4図4は、従来の車両が転倒したときのブリーザチューブの状態を示す図である。
図5図5は、図1の車両が転倒したときのブリーザチューブの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に記載する各方向は、車両1の搭乗者から見た各方向を基準とする。図1は、実施形態に係る車両1の左斜め後方から見た要部外観図である。
【0010】
図1に示される車両1は、一例として、複数の走行用駆動源を備えるハイリッド型車両である。本実施形態の複数の走行用駆動源は、内燃機関Eと電動モータMとを含む。図1及び後述する図2では、電動モータMの輪郭を破線で模式的に示している。車両1は、電動モータMのみが用いられる走行モードと、少なくとも内燃機関Eが用いられる走行モードとで切替可能に構成されている。また車両1は、一例として、搭乗者が跨って乗る鞍乗車両であり、自動二輪車である。なお車両1は、自動二輪車に限定されない。また車両1は、ハイブリッド型車両に限定されない。車両1は、走行用駆動源として内燃機関Eのみを備えていてもよい。
【0011】
内燃機関Eは、クランクシャフトS1と、内部でクランクシャフトS1が軸支されたクランクケース15と、クランクケース15の上方に配置されたシリンダブロック16と、シリンダブロック16の上方に配置されたシリンダヘッドカバー17と、クランクケース15の下方に配置されたオイルパン18とを有する。また内燃機関Eは、後述するエアクリーナ2を通過した吸気をシリンダブロック16の内部に供給する複数の吸気管19を有する(図3参照)。
【0012】
また車両1は、エアクリーナ2と、ブリーザチューブ3と、スロットルボディ4と、駆動輪DWとを備える。エアクリーナ2は、内燃機関Eに供給される吸気を浄化する。一例として、エアクリーナ2は、前後方向から見て内燃機関Eの最上端と重なる位置に配置されている。エアクリーナ2は、エアクリーナボックス20を有する。エアクリーナボックス20は、互いに組み合わされたロアケース21とアッパーケース22とを含む。ブリーザチューブ3は、クランクケース15とエアクリーナ2とに接続される。ブリーザチューブ3は、クランクケース15内の気体をエアクリーナ2に向けて供給する。ブリーザチューブ3の内部を流通する気体には、空気とオイルとが含まれている。
【0013】
本実施形態のブリーザチューブ3は、一端3aがクランクケース15に接続され、他端3bがエアクリーナ2に接続されている。一例として、ブリーザチューブ3は、屈曲姿勢でクランクケース15とエアクリーナ2とに接続されている。また一例として、ブリーザチューブ3は、車両1の側面視において、シリンダブロック16とスロットルボディ4とに重なるように配置されている。また一例として、ブリーザチューブ3の一部は、エアクリーナ2の上面と重ねて配置されている。スロットルボディ4は、内燃機関Eの吸気量を調整する。本実施形態のスロットルボディ4は、シリンダヘッドカバー17とエアクリーナ2との間に配置されている。一例として、ブリーザチューブ3のスロットルボディ4と車幅方向に重なる領域には、ブリーザチューブ3をスロットルボディ4から保護するための保護テープ30が配置されている。駆動輪DWは、内燃機関Eの駆動力が伝達される。自動二輪車である本実施形態の車両1では、駆動輪DWは後輪である。ブリーザチューブ3は、駆動輪DWよりも前方に位置している。
【0014】
車両1は、走行用駆動源の出力を変速する変速機TMを備える。変速機TMは、車体の前後方向に延びる変速機ケース35を有する。本実施形態の変速機ケース35は、クランクケース15の後方に配置されている。一例として、変速機ケース35は、クランクケース15と一体的に形成されている。鉛直方向において、ブリーザチューブ3の一部は、変速機ケース35と重なっている。電動モータMは、変速機ケース35の上方に配置されている。電動モータMは、シリンダブロック16の後方で、変速機TMの上方に配置されている。
【0015】
本実施形態の車両1は、車両1の車幅方向一方の側に配置されたサイドスタンド5を備える。サイドスタンド5は、車両1の車体に接続される。サイドスタンド5の使用時には、サイドスタンド5は路面と接触する。車両1は、サイドスタンド5により、車幅方向一方の側に若干傾斜した状態で支持される。なお本実施形態では、「車幅方向一方」は、一例として車両1の車幅方向左を指すが、車幅方向右であってもよい。
【0016】
図2は、図1の車両1の後方から見た要部外観図である。図2では、シリンダブロック16の車幅方向中央を通る鉛直線Xを示している。図2に示されるように、車両1のブリーザチューブ3とクランクケース15との接続部分C1は、シリンダブロック16の車幅方向中央よりも車幅方向一方に配置されている。このため、例えば車両1のメンテナンス時において、作業者が車両1の車幅方向外側からブリーザチューブ3に容易にアクセスできる。よって、車両1のメンテナンス時において、ブリーザチューブ3にアクセスしにくいことで車両1のメンテナンス性が低下するのが防止される。ここで「メンテナンス」とは、例えば、内燃機関Eの点火プラグの交換等の目的のために、エアクリーナ2を内燃機関Eから取り外す作業を例示できる。
【0017】
車両1では、ブリーザチューブ3とクランクケース15との接続部分C1と、サイドスタンド5とが、車体の車幅方向の同じ側に配置されている。また一例として、接続部分C1は、電動モータMの後端よりも前方に配置されている。本実施形態の接続部分C1では、ブリーザチューブ3の一端3aが、クランクケース15に設けられてクランクケース15の内部と連通する連通管15aに挿通された状態で、一端3aの外周にバンドを巻回されることで、ブリーザチューブ3の一端3aが連通管15aに固定されている。なお、接続部分C1の構成は、これに限定されない。
【0018】
本実施形態のブリーザチューブ3とクランクケース15との接続部分C1は、シリンダブロック16よりも車幅方向一方の外方に配置されている。このため車両1では、シリンダブロック16よりも車幅方向一方の外方で、接続部分C1を外部に露出させることができる。また、本実施形態のブリーザチューブ3は、以下の第1領域A1と第2領域A2とを有する。第1領域A1は、接続部分C1から、シリンダブロック16の車幅方向一方の外方を通ってエアクリーナ2に向けて延びている。第2領域A2は、ブリーザチューブ3とエアクリーナ2との接続部分C2からエアクリーナ2の車幅方向一方に向けて延びている。
【0019】
本実施形態の接続部分C1、C2は、互いに車両1の上下方向に離隔して配置されている。一例として、接続部分C2は、車両1の前後方向から見てシリンダヘッドカバー17と重なる位置に配置されている。接続部分C1、C2は、互いに車両1の電動モータMの車幅方向中心を挟む反対側に配置されている。また接続部分C1、C2は、互いに車両1のエアクリーナ2の車幅方向中心を挟む反対側に配置されている。車両1の前後方向から見て、接続部分C1、C2は、車両1の上下方向で互いに重ならない位置に配置されている。また一例として、第2領域A2は直線状である。本実施形態の第2領域A2は、車両1の車幅方向と平行である。ここで言う平行には、厳密な平行状態の他、第2領域A2の軸線方向と、車両1の車幅方向との間の角度が0°以上5°以下の範囲の値である傾斜状態が含まれる。
【0020】
一例として車両1は、内燃機関Eに対する付属部品6を更に備える。付属部品6は、シリンダブロック16の後方で且つクランクケース15の上方に配置されている。付属部品6としては、例えば、走行用の電動モータM、走行用駆動源の出力を変速する変速機の段数を切り替える電動シフタ、クーラー、過給機等の部品を例示できるが、これに限定されない。ブリーザチューブ3の第2領域A2は、付属部品6よりも上方に配置されている。これにより、車両1のメンテナンス時において、作業者が、外部からブリーザチューブ3の第2領域A2に対して容易にアクセスできる。
【0021】
また図2に示されるように、車両1は、内燃機関Eと駆動輪DWとの間の動力伝達経路を接続及び遮断するクラッチ7を備える。クラッチ7は、シリンダブロック16の車幅方向中央よりも車幅方向他方に偏位した位置に配置されている。クラッチ7は、一例として摩擦クラッチである。摩擦クラッチとしては、油圧式多板クラッチを例示できる。なお、クラッチ7の構成はこれに限定されない。
【0022】
また一例として、クランクケース15は、オイルの貯留空間を有する第1室R1と、第1室R1と区画されて、シリンダブロック16の車幅方向中央よりも車幅方向一方に偏位した位置に配置された第2室R2とを有する。第1室R1は、オイルパン18と連通している。第2室R2は、第1室R1からオイルが入り込まないように区画されている。また、本実施形態の車両1は、内燃機関Eの回転駆動力により発電するジェネレータ8を備える。第2室R2には、ジェネレータ8が収容されている。ジェネレータ8としては、例えば内燃機関Eを始動させるISG(Integrated Starter Generator)を例示できる。
【0023】
第2室R2にISGを配置した場合、例えば、第1室R1内にISGを配置した場合に比べて、第1室R1内で発生した熱がISGに及ぶのを抑制できる。よって例えば、ISGに耐熱性の制約がある場合でも、車両1にISGを備え易くできる。また、ISGを配置した第2室R2内に外気を流通させることで、ISGを空冷等により冷却し易くできる。なお第2室R2には、ジェネレータ8以外の要素が収容されていてもよい。変速機TMは、出力軸S2を有する。出力軸S2は、変速機TMの車幅方向一方側において、変速機ケース25の外部に露出している。出力軸S2の回転駆動力は、駆動輪DWに伝達される。
【0024】
図3は、図1のブリーザチューブ3のエアクリーナ2側の一部構成とエアクリーナ2の一部構成とを示す図である。図3では、エアクリーナボックス20の断面を示している。図3に示されるように、ブリーザチューブ3の接続部分C2は、ブリーザチューブ3の全周方向に延び且つ長手方向に並んで配置された一対のリブ31、32を有する。一対のリブ31、32のうち、開口3cに近接して配置されたリブ32は、リブ31よりも小さい外径を有する。リブ32の開口3c側の主面32aは、開口3cに向けて先細りとなるテーパー形状を有する。エアクリーナ2は、内燃機関Eの複数の吸気管19と連通し且つエアクリーナボックス20により区画される内部空間を有する。エアクリーナボックス20は、外部と連通する貫通孔20aを有する。
【0025】
一例として、ブリーザチューブ3の接続部分C2は、エアクリーナボックス20の貫通孔20aの開口周縁に主面32aを接触させて、貫通孔20aにリブ32を圧入した状態で、一対のリブ31、リブ32によりエアクリーナボックス20の貫通孔20aの周縁部分を挟むことで、ブリーザチューブ3とエアクリーナ2とを接続する。ブリーザチューブ3が一対のリブ31、32を有することで、例えば接続部分C2を外部よりクランプする手間を省略できる。なお、接続部分C2の構成は、これに限定されない。また接続部分C2は、例えば、シリンダブロック16の車幅方向中央と重なる位置に配置されていてもよい。
【0026】
エアクリーナボックス20は、車幅方向に延びてエアクリーナボックス20の内方に窪む窪み部20bを有する。一例として、窪み部20bはアッパーケース22に配置されている。図3に示すように、窪み部20bの内部空間には、ブリーザチューブ3の第2領域A2の少なくとも一部が配置される。これにより、ブリーザチューブ3とエアクリーナボックス20との干渉が回避されている。また、ブリーザチューブ3の第2領域A2が、アッパーケース22の上面から上方に突出する突出量が低減されている。
【0027】
本実施形態のスロットルボディ4は、複数の吸気管19と重ねて配置された複数のスロットルバルブ40を有する。内燃機関Eの吸気管19は、スロットルバルブ40により開閉される。複数の吸気管19は、シリンダブロック16の車幅方向に並んで配置されている。また、本実施形態のエアクリーナ2は、シリンダブロック16の車幅方向に並んで配置されて前記シリンダブロックに吸気を供給する複数の供給管23を有する。複数の供給管23は、複数の吸気管19と個別に対応して配置されている。供給管23を通過した吸気は、スロットルバルブ40を介して吸気管19を流通し、シリンダブロック16の内部に供給される。
【0028】
ブリーザチューブの開口3cは、複数の供給管23のうち最もシリンダブロック16の車幅方向他方に位置する供給管23の開口23aと異なる方向に向けられ、且つ、前記供給管23の前記開口23aの中心Oよりも、車幅方向他方に偏位した位置で、車幅方向他方に向けられている。ブリーザチューブ3の開口3cと、吸気管23の開口23aとは、互いに異なる方向を向いている。ここで言う「異なる方向」とは、同一軸線上で互いに向き合う一対の方向を含まない。これにより、ブリーザチューブ3を通過したオイルが、供給管23と吸気管19とを介してシリンダブロック16の内部に流入するのが抑制されている。
【0029】
また一例として、エアクリーナ2は、ブリーザチューブ3の開口3cと対向して配置された壁面20aを有する。またエアクリーナボックス20は、エアクリーナ2の内部空間を区画する外壁20cと、外壁20cから前記内部空間に向けて突出する板状のリブ20dを有する。リブ20dは、壁面20aを含む。本実施形態の壁面20aは、車幅方向他方から見て、ブリーザチューブ3の開口3cと重なる位置に配置されている。エアクリーナ2が壁面20aを有することで、ブリーザチューブ3を通過したミスト状のオイルを含む気体が壁面20aと衝突し、当該気体の気液分離が促進される。
【0030】
図4は、従来の車両が転倒したときのブリーザチューブ300の状態を示す図である。また図5は、図1の車両1が転倒したときのブリーザチューブ3の状態を示す図である。図4に示すように、従来の車両が、転倒等により車両の車幅方向一方側に大きく傾斜した場合、ブリーザチューブ300は、水平方向に延びる状態となる。クランクケース150内のオイルは、前記水平方向に延びる姿勢となったブリーザチューブ300を介し、クランクケース150とブリーザチューブ300との接続部分からブリーザチューブ300内へ流入する。これにより、ブリーザチューブ300内のオイルは、外部に流出してエアクリーナに流入する場合がある。
【0031】
図5に示すように、これに対して本実施形態の車両1では、接続部分C1が、シリンダブロック16の車幅方向中央よりも車幅方向一方に配置され、且つ、シリンダブロック16の前記車幅方向中央よりも前記車幅方向一方に偏位した位置に配置されている。また、ブリーザチューブ3のエアクリーナ2側の開口3cが、シリンダブロック16の車幅方向中央よりも車幅方向他方に偏位した位置に配置されている。
【0032】
このため車両1が、転倒等により車両の車幅方向一方側に大きく傾斜した場合にクランクケース15からブリーザチューブ3内にオイルが流入しても、ブリーザチューブ3の内部の油面の高さ位置が、ブリーザチューブ3のエアクリーナ2側の開口3cの高さ位置を超えるまで、ブリーザチューブ3内のオイルが外部に流出することはない。これにより、ブリーザチューブ3を介して、クランクケース15内のオイルがエアクリーナ2内に流入するのが防止される。
【0033】
また図5に示すように、本実施形態のブリーザチューブ3は、接続部分C1からシリンダブロック16の車幅方向一方の外方を通ってエアクリーナ2に向けて延びる第1領域A1と、接続部分C2からエアクリーナ2の車幅方向一方に向けて延びる第2領域A2とを有する。このため、仮にクランクケース15内のオイルがブリーザチューブ3内に流出した場合でも、ブリーザチューブ3内のオイルが第1領域A1と第2領域A2の両方に完全に充満するまで、ブリーザチューブ3内のオイルが外部に流出することはない。従って、少なくともブリーザチューブ3内のオイルが第1領域A1と第2領域A2の両方に完全に充満するまでの間、クランクケース15内からブリーザチューブ3内に流出したオイルを、ブリーザチューブ3内に留まらせることができる。これにより、例えばエアクリーナ2内に複雑な構造を有する気液分離室を配置することなく、オイルがブリーザチューブ3からエアクリーナ2に流入するのを防止できる。
【0034】
ここで本実施形態では、一例として、第2領域A2が車両1の車幅方向と平行に配置されている。このため、車両1が車幅方向一方に転倒した場合、第2領域A2は、鉛直方向に向けて延びる。これによりブリーザチューブ3内のオイルがエアクリーナ2に流入するのを一層防止できる。なお例えば、車両1が車幅方向一方に転倒したときのブリーザチューブ3の開口3cの高さ位置を、車両1が車幅方向一方に転倒したときのクランクケース15内のオイルの油面よりも上方に位置するように設定すれば、ブリーザチューブ3のオイルがエアクリーナ2に流入するのを更に防止できる。なお図5では、ブリーザチューブ3の内部の油面を破線で示しているが、油面の位置は、これに限定されない。
【0035】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態中の一部の構成を他の構成に適用してもよく、実施形態中の一部の構成は、その実施形態中の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
【0036】
(開示項目)
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0037】
[項目1]
クランクケースと、前記クランクケースに接続されたシリンダブロックとを有する走行用の内燃機関と、
前記内燃機関に供給される吸気を浄化するエアクリーナと、
前記クランクケースと前記エアクリーナとに接続され、前記クランクケース内の気体を前記エアクリーナに向けて供給するブリーザチューブと、を備え、
前記ブリーザチューブと前記クランクケースとの接続部分が、前記シリンダブロックの車幅方向中央よりも車幅方向一方に配置されている、車両。
【0038】
上記構成によれば、ブリーザチューブとクランクケースとの接続部分が、シリンダブロックの車幅方向一方の外方に配置されているため、例えば車両のメンテナンス時において、作業者が車両の前記車幅方向外側からブリーザチューブにアクセスし易い。従って、ブリーザチューブにアクセスしにくいことで車両のメンテナンス性が低下するのを防止できる。これにより、例えばメンテナンス時において、内燃機関の点火プラグの交換等のためにエアクリーナを内燃機関から取り外す作業を行う場合でも、ブリーザチューブに外部から容易にアクセスし、ブリーザチューブをエアクリーナ又は内燃機関から外して作業を行うことができる。
【0039】
[項目2]
前記ブリーザチューブと前記クランクケースとの前記接続部分が、前記シリンダブロックよりも前記車幅方向一方の外方に配置されている、項目1に記載の車両。
【0040】
上記構成によれば、前記接続部分を、シリンダブロックよりも前記車幅方向一方の外方で外部に露出させることができる。よって、メンテナンス時において、作業者がブリーザチューブとクランクケースとの接続部分にアクセスするために、車両のシリンダブロックよりも車幅方向内側に手を入れる必要がない。これにより、シリンダブロック及びエアクリーナに対するブリーザチューブの着脱性を更に向上し易くできる。
【0041】
[項目3]
前記ブリーザチューブと前記クランクケースとの前記接続部分が、前記シリンダブロックの前記車幅方向中央よりも前記車幅方向一方に偏位した位置に配置され、
前記ブリーザチューブの前記エアクリーナ側の開口が、前記シリンダブロックの前記車幅方向中央よりも車幅方向他方に偏位した位置に配置されている、項目1又は2に記載の車両。
【0042】
上記構成によれば、ブリーザチューブと、エアクリーナとの接続部分の付近において、例えばブリーザチューブにシリンダブロックの車幅方向一方から他方に向けて延びる領域を設けることができる。これにより、仮に車両が前記車幅方向一方に転倒することでクランクケース内のオイルがブリーザチューブ内に流出しても、ブリーザチューブ内のオイルを前記領域の内部に留まらせることで、ブリーザチューブからエアクリーナ内にオイルが流れ込むのを抑制できる。
【0043】
[項目4]
前記ブリーザチューブは、
前記クランクケースとの前記接続部分から、前記シリンダブロックの前記車幅方向一方の外方を通って前記エアクリーナに向けて延びる第1領域と、
前記エアクリーナとの接続部分から、前記エアクリーナの前記車幅方向一方に向けて延びる第2領域と、を有する、項目1~3のいずれか1項に記載の車両。
【0044】
上記構成によれば、ブリーザチューブが前記第1領域と前記第2領域を有するため、仮に車両が前記車幅方向一方に転倒することでクランクケース内のオイルがブリーザチューブ内に流出しても、少なくともオイルが前記第1領域と前記第2領域との両方の内部に充満するまでブリーザチューブ内に留まらせることができる。これにより、ブリーザチューブからエアクリーナ内にオイルが流れ込むのを抑制できる。
【0045】
[項目5]
前記シリンダブロックの後方で且つ前記クランクケースの上方に配置された、前記内燃機関に対する付属部品を更に備え、
前記ブリーザチューブの前記第2領域が、前記付属部品よりも上方に配置されている、項目4に記載の車両。
【0046】
上記構成によれば、ブリーザチューブの第2領域が前記付属部品よりも上方に配置されていることで、車両のメンテナンス時に作業者が外部からブリーザチューブの第2領域に容易にアクセスできる。また、ブリーザチューブの第2領域と前記付属部品との干渉を抑制できる。
【0047】
[項目6]
前記クランクケースは、オイルの貯留空間を有する第1室と、前記第1室と区画されて、前記シリンダブロックの前記車幅方向中央よりも前記車幅方向一方に偏位した位置に配置された第2室とを有し、
前記ブリーザチューブと前記クランクケースとの前記接続部分において、前記ブリーザチューブが前記第1室と連通している、項目1~5のいずれか1項に記載の車両。
【0048】
上記構成によれば、クランクケースが第1室と第2室とを有することにより、クランクケースが第1室を有さない場合に比べて、クランクケース内の油面の高さ位置が上昇し易い場合であっても、車両が前記車幅方向一方に転倒して第1室内のオイルがブリーザチューブに流出した際、ブリーザチューブ内のオイルがエアクリーナ内に流入するのを防止できる。
【0049】
[項目7]
前記エアクリーナは、前記シリンダブロックの車幅方向に並んで配置されて前記シリンダブロックに吸気を供給する複数の供給管を有し、
前記ブリーザチューブの前記エアクリーナ側の開口は、前記複数の供給管のうち最も前記シリンダブロックの車幅方向他方に位置する供給管の開口と異なる方向に向けられ、且つ、前記供給管の前記開口の中心よりも前記車幅方向他方に偏位した位置で、前記車幅方向他方に向けられている、項目1~6のいずれか1項に記載の車両。
【0050】
上記構成によれば、ブリーザチューブを流通したオイルがエアクリーナ内に流入しても、オイルが複数の供給管を介してシリンダブロックの内部に流れ込む流れ込み量を抑制できる。
【0051】
[項目8]
前記エアクリーナは、前記ブリーザチューブの前記エアクリーナ側の開口と対向して配置された壁面を有する、項目1~7のいずれか1項に記載の車両。
【0052】
上記構成によれば、オイルと気体とを含むミストがブリーザチューブからエアクリーナ内に噴出した場合でも、ミストがエアクリーナの壁面に吹き付けられることで、ミストの気液分離を図り易くできる。これにより、ミストに含まれるオイルが、エアクリーナの内燃機関へ向かう吸気通路を通過するのを防止できる。また、エアクリーナが前記壁面を有することで、エアクリーナの内部にミストの気液分離を図るための専用の複雑な構造を設ける必要がない。
【0053】
[項目9]
前記車両の前記車幅方向一方の側に配置されたサイドスタンドを備える、項目1~8のいずれか1項に記載の車両。
【0054】
上記構成によれば、車両が、サイドスタンド側に転倒する場合であっても、サイドスタンドと、ブリーザチューブとクランクケースとの接続部分が前記車体の車幅方向の同じ側に配置されているため、ブリーザチューブを通過したオイルがエアクリーナ内に流入するのを防止できる。
【0055】
[項目10]
前記内燃機関の駆動力が伝達される駆動輪と、
前記内燃機関と前記駆動輪との間の動力伝達経路を接続及び遮断するクラッチと、を備え、
前記クラッチが、前記シリンダブロックの前記車幅方向中央よりも車幅方向他方に偏位した位置に配置されている、項目1~9のいずれか1項に記載の車両。
【0056】
上記構成によれば、ブリーザチューブがクラッチと干渉するのを防止しつつ、ブリーザチューブとクランクケースとの接続部分を、シリンダブロックの車幅方向中央よりも車幅方向一方に偏位した位置に配置し易くできる。
【0057】
[項目11]
前記ブリーザチューブの一部が、前記エアクリーナの上面と重ねて配置されている、項目1~10のいずれか1項に記載の車両。
【0058】
上記構成によれば、ブリーザチューブに対し、作業者が外部よりエアクリーナの上方から容易にアクセスできる。よって、エアクリーナ及びシリンダブロックに対するブリーザチューブの着脱性を一層向上できる。
【0059】
[項目12]
自動二輪車である、項目1~11のいずれか1項に記載の車両。
【0060】
自動二輪車は、他の車両に比べて、車体が傾斜し易く、ブリーザチューブを通過したオイルがエアクリーナ内に流入し易い。また自動二輪車は、車体の内部スペースが限られており、メンテナンス性の向上や部品同士の干渉の抑制が特に要求される。よって上記構成によれば、車両が自動二輪車である場合において、車両のメンテナンス性を特に向上させることができる。
【符号の説明】
【0061】
A1 ブリーザチューブの第1領域
A2 ブリーザチューブの第2領域
C1 ブリーザチューブとクランクケースとの接続部分
C2 ブリーザチューブとエアクリーナとの接続部分
DW 駆動輪
E 内燃機関
O 供給管の開口の中心
R1 クランクケースの第1室
R2 クランクケースの第2室
1 車両
2 エアクリーナ
2a エアクリーナの壁面
3 ブリーザチューブ
3a ブリーザチューブの一端
3b ブリーザチューブの他端
3c ブリーザチューブの開口
5 サイドスタンド
6 付属部品
7 クラッチ
15 クランクケース
16 シリンダブロック
20a エアクリーナの壁面
23 供給管
23a 供給管の開口
図1
図2
図3
図4
図5