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特開2024-73970リチウムイオン二次電池製造方法及びリチウムイオン二次電池製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073970
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池製造方法及びリチウムイオン二次電池製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/1393 20100101AFI20240523BHJP
【FI】
H01M4/1393
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022184984
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平澤 俊介
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA19
5H050BA17
5H050CB08
5H050CB09
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA28
5H050GA29
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】負極合剤中の黒鉛を磁場により配向させる際に、負極合剤の粘度変動を制御する。
【解決手段】リチウムイオン二次電池製造装置100は、集電体としての金属箔に対して、黒鉛を含む負極合剤を供給し、負極合剤が供給された金属箔の面に直交する方向に磁力線が向いた磁場を付与し、磁場が付与された後の金属箔の負極合剤側の面の黒色度を測定し、黒色度に基づいて、負極合剤に含まれる黒鉛を磁場により配向させる際の負極合剤の粘度を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体としての金属箔に対して、黒鉛を含む負極合剤を供給する工程と、
前記負極合剤が供給された前記金属箔の面に直交する方向に磁力線が向いた磁場を付与する工程と、
前記磁場が付与された後の前記金属箔の前記負極合剤側の面の黒色度を測定する工程と、
前記黒色度に基づいて、前記負極合剤に含まれる前記黒鉛を前記磁場により配向させる際の前記負極合剤の粘度を制御する工程と、
を含むリチウムイオン二次電池製造方法。
【請求項2】
前記負極合剤の粘度を制御する工程は、前記黒色度に基づいて、前記金属箔に対して前記負極合剤を供給するダイ及び前記負極合剤を貯留するタンクの少なくとも一方を加熱することにより、前記負極合剤の粘度を制御する
請求項1に記載のリチウムイオン二次電池製造方法。
【請求項3】
前記負極合剤の粘度を制御する工程は、前記黒色度が低いほど、前記ダイ及び前記タンクの少なくとも一方を加熱する温度を高く制御する
請求項2に記載のリチウムイオン二次電池製造方法。
【請求項4】
集電体としての金属箔に対して、黒鉛を含む負極合剤を供給する供給部と、
前記負極合剤が供給された前記金属箔の面に直交する方向に磁力線が向いた磁場を付与する磁場付与部と、
前記磁場が付与された後の前記金属箔の前記負極合剤側の面の黒色度を測定する測定部と、
前記黒色度に基づいて、前記負極合剤に含まれる前記黒鉛を前記磁場により配向させる際の前記負極合剤の粘度を制御する制御部と、
を備えたリチウムイオン二次電池製造装置。
【請求項5】
前記供給部は、前記金属箔に対して前記負極合剤を供給するダイ及び前記負極合剤を貯留するタンクを含み、
前記制御部は、前記黒色度に基づいて、前記ダイ及び前記タンクの少なくとも一方を加熱することにより、前記負極合剤の粘度を制御する
請求項4に記載のリチウムイオン二次電池製造装置。
【請求項6】
前記磁場付与部は、前記ダイに対向して設けられた磁場ロールであって、前記ダイから前記負極合剤が供給された前記金属箔に前記磁場を付与する前記磁場ロールを含む
請求項5に記載のリチウムイオン二次電池製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン二次電池製造方法及びリチウムイオン二次電池製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、集電体と、集電体に付着した負極合剤層と、を備えたリチウムイオン二次電池が記載されている。このリチウムイオン二次電池は、負極合剤層は黒鉛と結着剤とを含み、集電体の表面から負極合剤層の厚さが半分までの部分よりも、負極合剤層の厚さが半分から負極合剤層の表面までの部分の方が、結着剤の重量割合が少なく、かつ、黒鉛は、六角板状結晶の層の層間面が集電体の表面に対して直交するように配向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-96386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の技術では、負極合剤中の黒鉛を磁場により配向させるには、粘度を500[mPa・s]以上5000[mPa・s]以下(E型粘度計、25度、2rpm時)とすることが望ましいとされている。しかしながら、材料の種類や投入量のバラツキ等が原因で粘度変動が発生し、磁場配向に不向きとされる、5000[mPa・s]を超える粘度となる場合がある。この場合、十分な磁場配向が行えない可能性がある。
【0005】
本開示は、以上の事実を考慮して成されたもので、負極合剤中の黒鉛を磁場により配向させる際に、負極合剤の粘度変動を制御可能なリチウムイオン二次電池製造方法及びリチウムイオン二次電池製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1態様に係るリチウムイオン二次電池製造方法は、集電体としての金属箔に対して、黒鉛を含む負極合剤を供給する工程と、前記負極合剤が供給された前記金属箔の面に直交する方向に磁力線が向いた磁場を付与する工程と、前記磁場が付与された後の前記金属箔の前記負極合剤側の面の黒色度を測定する工程と、前記黒色度に基づいて、前記負極合剤に含まれる前記黒鉛を前記磁場により配向させる際の前記負極合剤の粘度を制御する工程と、を含む。
【0007】
第2態様に係るリチウムイオン二次電池製造方法は、第1態様に係るリチウムイオン二次電池製造方法において、前記負極合剤の粘度を制御する工程が、前記黒色度に基づいて、前記金属箔に対して前記負極合剤を供給するダイ及び前記負極合剤を貯留するタンクの少なくとも一方を加熱することにより、前記負極合剤の粘度を制御する。
【0008】
第3態様に係るリチウムイオン二次電池製造方法は、第2態様に係るリチウムイオン二次電池製造方法において、前記負極合剤の粘度を制御する工程が、前記黒色度が低いほど、前記ダイ及び前記タンクの少なくとも一方を加熱する温度を高く制御する。
【0009】
上記目的を達成するために、第4態様に係るリチウムイオン二次電池製造装置は、集電体としての金属箔に対して、黒鉛を含む負極合剤を供給する供給部と、前記負極合剤が供給された前記金属箔の面に直交する方向に磁力線が向いた磁場を付与する磁場付与部と、前記磁場が付与された後の前記金属箔の前記負極合剤側の面の黒色度を測定する測定部と、前記黒色度に基づいて、前記負極合剤に含まれる前記黒鉛を前記磁場により配向させる際の前記負極合剤の粘度を制御する制御部と、を備える。
【0010】
第5態様に係るリチウムイオン二次電池製造装置は、第4態様に係るリチウムイオン二次電池製造装置において、前記供給部が、前記金属箔に対して前記負極合剤を供給するダイ及び前記負極合剤を貯留するタンクを含み、前記制御部が、前記黒色度に基づいて、前記ダイ及び前記タンクの少なくとも一方を加熱することにより、前記負極合剤の粘度を制御する。
【0011】
第6態様に係るリチウムイオン二次電池製造装置は、第5態様に係るリチウムイオン二次電池製造装置において、前記磁場付与部が、前記ダイに対向して設けられた磁場ロールであって、前記ダイから前記負極合剤が供給された前記金属箔に前記磁場を付与する前記磁場ロールを含む。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本開示によれば、負極合剤中の黒鉛を磁場により配向させる際に、負極合剤の粘度変動を制御することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るリチウムイオン二次電池製造装置の構成の一例を示す図である。
図2A】磁場付与前の金属箔及び負極合剤の断面の一例を示す模式図である。
図2B】磁場付与後の金属箔及び負極合剤の断面の一例を示す模式図である。
図3】第1の実施形態に係る制御装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る制御装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図5】負極合剤の粘度と温度との対応関係の一例を示すグラフである。
図6】第1の実施形態に係る制御プログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】第2の実施形態に係る磁場付与部近傍の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本開示の技術を実施するための形態の一例について詳細に説明する。なお、動作、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。各図面は、本開示の技術を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本開示の技術は、図示例のみに限定されるものではない。また、本実施形態では、本開示と直接的に関連しない構成や周知な構成については、説明を省略する場合がある。
【0015】
本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充電可能な蓄電デバイス一般をいう。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」は、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電子の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係るリチウムイオン二次電池製造装置100の構成の一例を示す図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池製造装置100は、大きく分けて、制御装置10と、金属箔供給部20と、走行経路24と、負極合剤供給部30と、磁場付与部40と、乾燥部50と、回収部60と、ラインカメラ70と、ヒータ71と、を備えている。
【0018】
走行経路24は、集電体としての金属箔23A(例えば、銅箔)を予め定められた経路に沿って走行し得るガイド22を備えている。ガイド22は、走行経路24に沿って配置された複数のガイドローラで構成されている。なお、走行経路24には、金属箔23Aに適切な張力が付与されるように、張力を調整する機構(例えば、ダンサローラ)が必要に応じて配置されているとよい。また、走行経路24には、金属箔23Aの幅方向の位置を調整する機構(例えば、エッジセンサ及びポジションコントローラを組み合わせた位置調整機構)が必要に応じて配置されているとよい。
【0019】
金属箔供給部20は、走行経路24に金属箔23Aを供給する。金属箔供給部20は、走行経路24の始端に設けられている。金属箔供給部20には、予め巻き芯21に巻き取られた金属箔23Aが配置されており、適当な量の金属箔23Aが金属箔供給部20から走行経路24に供給される。
【0020】
回収部60は、走行経路24から金属箔23Aを回収する。回収部60は、走行経路24の終端に設けられている。回収部60は、走行経路24において所定の処理が施された金属箔23Aを巻き芯61に巻き取る巻取装置によって構成されている。この巻取装置は、例えば、制御装置10による制御に従って駆動するモータ62を備えている。巻き芯61は、モータ62に連動して動作し金属箔23Aを巻き取る。
【0021】
負極合剤供給部30は、供給部の一例であり、走行経路24に沿って走行する金属箔23Aに対して、黒鉛を含む負極合剤23Bを供給する。負極合剤23Bは、負極活物質としての黒鉛を含むペースト状の合剤である。黒鉛は、リチウムイオンを吸収したり、放出したりすることができ、かつ、磁場によって配向する材料であればよい。黒鉛は、例えば、六角板状結晶が複数の層を形成するように重なった層構造を有している。具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛、これらのアモルファスカーボン等の炭素系材料が用いられる。負極合剤23Bの溶媒には、水性溶媒及び非水溶媒の何れも使用可能であるが、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が用いられる。
【0022】
なお、負極合剤23Bには、バインダ(結着剤)を含んでいてもよい。バインダには、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が用いられる。また、負極合剤23Bは、例えば、PTFEのように、比較的、マイグレーションの影響を受けない結着剤を含むことが望ましい。PTFEは、黒鉛(負極活物質)同士の結合力を高めることができる。
【0023】
負極合剤供給部30は、バックロール31と、ダイ32と、フィルタ33と、ポンプ34と、タンク35と、を備えている。バックロール31は、走行経路24に沿って配設されており、金属箔23Aを支持するローラである。ダイ32は、負極合剤23Bを吐出する吐出口を有する。タンク35は、ダイ32から供給される負極合剤23Bを貯留する容器である。ポンプ34は、タンク35からダイ32に負極合剤23Bを供給する装置である。フィルタ33は、タンク35からダイ32に送られる負極合剤23Bの供給経路に配置されている。
【0024】
タンク35に貯留された負極合剤23Bは、ポンプ34によって吸い上げられて、ダイ32を通じて、バックロール31によって支持された金属箔23Aの表面に供給される。
【0025】
磁場付与部40は、負極合剤23Bが供給された金属箔23Aの面に直交する方向に磁力線が向いた磁場を付与する。なお、ここでいう「直交する方向」とは、完全な直交でなくてもよく、予め定めた誤差を許容するものとする。具体的に、磁場付与部40は、走行経路24を走行する金属箔23Aを挟むように対向して設けられた一対の磁石41で構成されている。磁石41は、例えば、永久磁石で構成してもよいし、電気の作用によって磁力を生じさせる電磁石で構成してもよい。この場合、磁石41は、走行経路24を走行する金属箔23Aに対して、金属箔23Aに直交する方向に磁力線が向いた磁場が発生するように配置される。このため、金属箔23Aを挟むように対向して配置した一対の磁石41は、それぞれ金属箔23Aに向けて一方がS極、他方がN極になるように配置される。
【0026】
図2Aは、磁場付与前の金属箔23A及び負極合剤23Bの断面の一例を示す模式図である。また、図2Bは、磁場付与後の金属箔23A及び負極合剤23Bの断面の一例を示す模式図である。
【0027】
図2A及び図2Bに示すように、金属箔23Aに供給された負極合剤23B中の黒鉛23Cが磁場の作用によって配向する。金属箔23Aに対して、金属箔23Aに直交する方向に磁力線が向いた磁場が作用すると、黒鉛23Cは、エッジ部が金属箔23Aに直交する方向に配向する。つまり、黒鉛23Cの六角板状結晶の面(黒鉛の層間の面)が磁力線(金属箔に直交する方向)に平行になるように配向する。
【0028】
黒鉛23Cの配向の程度は、例えば、磁場付与工程で負極合剤23Bに作用する磁場の強さと、磁場を与える時間が影響すると考えられる。磁場付与工程では、黒鉛が適切に配向するように、負極合剤23Bに作用させる磁場の強さと磁場を与える時間を調整することが望ましい。磁場付与工程で、負極合剤23Bに磁場を作用させる時間は短ければ短いほどよく、例えば、0.5秒程度の短時間で黒鉛23Cが十分に配向するようにしたい。このため、磁場付与工程で負極合剤23Bに作用させる磁場の強さは、例えば、走行経路24で負極合剤23Bが走行する近辺において、1.0[T]以上、より好ましくは1.5[T]以上、さらには2.0[T]以上であるとよい。
【0029】
また、黒鉛23Cの配向の程度は、供給される負極合剤23Bの粘度や、固形分濃度による影響があると考えられる。ここで供給される負極合剤23Bの粘度は、例えば、500[mPa・s]以上5000[mPa・s]以下(E型粘度計、25℃、2rpm時)であるとよい。また、供給される負極合剤23Bの固形分濃度は、例えば、40[wt%]以上60[wt%]以下であるとよい。磁場付与部40によって負極合剤23B中の黒鉛23Cが配向した金属箔23Aは、走行経路24に沿って乾燥部50に送られる。なお、金属箔23Aへの磁場付与は、負極合剤23Bが金属箔23Aに供給された後にできるだけすぐに行うとよい。
【0030】
乾燥部50には、走行経路24に沿って乾燥炉51が設けられている。乾燥炉51は、磁場付与部40にて磁場が付与された負極合剤23Bに熱を与えて、負極合剤23Bを乾燥させる。乾燥部50によって負極合剤23Bを乾燥させた金属箔23Aは、走行経路24に沿って回収部60に送られる。
【0031】
制御装置10は、ポンプ34、磁石41、乾燥炉51、モータ62、ラインカメラ70、及びヒータ71の各々と接続されると共に、リチウムイオン二次電池製造装置100の各部の動作を制御するコントローラである。なお、ラインカメラ70は、撮像装置の一例であり、金属箔23Aに供給された負極合剤23Bの面を撮像可能な装置であればよい。また、ヒータ71は、加熱装置の一例であり、ダイ32及びタンク35の少なくとも一方を加熱可能な装置であればよい。
【0032】
図3は、第1の実施形態に係る制御装置10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0033】
図3に示すように、本実施形態に係る制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力部(I/O)14と、記憶部15と、入出力インタフェース(入出力I/F)16と、を備えている。
【0034】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14は、バスを介して各々接続されている。I/O14には、記憶部15と、入出力I/F16と、を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O14を介して、CPU11と相互に通信可能とされる。
【0035】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14によって制御回路が構成される。制御回路は、制御装置10の一部の動作を制御するサブ制御回路として構成されてもよいし、制御装置10の全体の動作を制御するメイン制御回路の一部として構成されてもよい。制御回路の各ブロックの一部又は全部には、例えば、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はIC(Integrated Circuit)チップセットが用いられる。上記各ブロックに個別の回路を用いてもよいし、一部又は全部を集積した回路を用いてもよい。上記各ブロック同士が一体として設けられてもよいし、一部のブロックが別に設けられてもよい。また、上記各ブロックのそれぞれにおいて、その一部が別に設けられてもよい。制御回路の集積化には、LSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いてもよい。
【0036】
記憶部15としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部15には、本実施形態に係る制御プログラム15Aが記憶される。なお、この制御プログラム15Aは、ROM12に記憶されていてもよい。
【0037】
制御プログラム15Aは、例えば、制御装置10に予めインストールされていてもよい。制御プログラム15Aは、不揮発性の記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、制御装置10に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0038】
入出力I/F16は、ポンプ34、磁石41、乾燥炉51、モータ62、ラインカメラ70、及びヒータ71の各々と接続するためのインタフェースである。
【0039】
ところで、上述したように、負極合剤23B中の黒鉛23Cを磁場により配向させるには、粘度を500[mPa・s]以上5000[mPa・s]以下(E型粘度計、25度、2rpm時)とすることが望ましいとされている。しかしながら、材料の種類や投入量のバラツキ等が原因で粘度変動が発生し、磁場配向に不向きとされる、5000[mPa・s]を超える粘度となる場合がある。この場合、十分な磁場配向が行えない可能性がある。
【0040】
このため、第1の実施形態に係る制御装置10のCPU11は、ROM12又は記憶部15に記憶されている制御プログラム15AをRAM13に書き込んで実行することにより、図4に示す各部として機能する。
【0041】
図4は、第1の実施形態に係る制御装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0042】
図4に示すように、本実施形態に係る制御装置10のCPU11は、測定部11A及び制御部11Bとして機能する。なお、記憶部15には、黒色度・温度対応テーブル15Bが記憶されている。
【0043】
測定部11Aは、磁場付与部40によって磁場が付与された後の金属箔23Aの負極合剤側の面の黒色度を測定する。具体的に、測定部11Aは、一例として、上述の図1に示すように、ラインカメラ70によって撮像された、金属箔23Aの負極合剤側の面の画像から、黒色度を測定する。負極合剤23Bの黒色度と粘度とは相関関係があり、画像の黒色度が低い、つまり、画像が明るいほど、粘度が高くなる。換言すれば、黒色度が高い(粘度が低い)と、黒鉛23Cの配向が適切であり、黒色度が低い(粘度が高い)と、黒鉛23Cの配向が不適切とみなすことができる。黒色度の測定方法には、公知の技術が適用され、特に限定されるものではないが、例えば、黒色度を複数レベル(例えば、高、中、低)のうち何れのレベルであるかを判定してもよい。なお、黒色度の測定は、ラインカメラ70で撮像された画像による解析的な手法に限定されるものではなく、例えば、カラーセンサによる光学的な手法を用いてもよい。
【0044】
制御部11Bは、測定部11Aによって測定された黒色度に基づいて、負極合剤23Bに含まれる黒鉛23Cを磁場により配向させる際の負極合剤23Bの粘度を制御する。具体的に、制御部11Bは、黒色度に基づいて、黒色度・温度対応テーブル15Bを参照し、ダイ32及びタンク35の少なくとも一方をヒータ71により加熱することにより、負極合剤23Bの粘度を制御する。つまり、黒色度が低いほど、ダイ32及びタンク35の少なくとも一方を加熱する温度が高くなるようにヒータ71が制御される。なお、黒色度・温度対応テーブル15Bは、黒色度とダイ32(又はタンク35)を加熱する温度とを対応付けたデータテーブルである。
【0045】
図5は、負極合剤23Bの粘度と温度との対応関係の一例を示すグラフである。なお、図5において、縦軸は負極合剤の粘度[mPa・s]を示し、横軸は負極合剤の温度[℃]を示す。
【0046】
図5に示すグラフから、負極合剤23Bの粘度は、各条件下(2、20、50、100rpm)において、温度が高いほど低くなる傾向があることが分かる。これより、磁場配向に不向きな5000[mPa・s]を超える高粘度になることを抑制するには、負極合剤23Bの温度を上昇させればよいと考えられる。つまり、負極合剤23Bの黒色度が比較的低い、つまり、負極合剤23Bの粘度が比較的高いときに、負極合剤23Bの温度を上昇させることで、負極合剤23Bの粘度が低くなり、磁場配向に適した粘度に制御される。
【0047】
次に、図6を参照して、第1の実施形態に係るリチウムイオン二次電池製造装置100が備える制御装置10の作用を説明する。
【0048】
図6は、第1の実施形態に係る制御プログラム15Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。図6の例では、一例として、上述の図1に示すリチウムイオン二次電池製造装置100によって具現化されるリチウムイオン二次電池製造方法のうち負極合剤供給工程、磁場付与工程、乾燥工程、及び巻取り工程について示している。
【0049】
図6のステップS101では、CPU11が、モータ62を制御して、走行経路24に沿って、負極合剤供給部30に金属箔23Aを供給する。
【0050】
ステップS102では、CPU11が、ヒータ71を制御して、負極合剤23Bを供給するダイ32、又は、負極合剤23Bを貯留するタンク35を加熱する。
【0051】
ステップS103では、CPU11が、ポンプ34を制御して、タンク35に貯留された負極合剤23Bを、ポンプ34によって吸い上げ、ダイ32を通じて、バックロール31によって支持された金属箔23Aの表面に供給する。
【0052】
ステップS104では、CPU11が、磁石41を制御して、負極合剤23Bが供給された金属箔23Aの面に直交する方向に磁力線が向いた磁場を付与する。
【0053】
ステップS105では、CPU11が、ラインカメラ70を制御して、磁石41によって磁場が付与された後の金属箔23Aの負極合剤側の面の黒色度を測定する。
【0054】
ステップS106では、CPU11が、測定した黒色度に基づいて、負極合剤23Bに含まれる黒鉛23Cを磁場により配向させる際の負極合剤23Bの粘度を制御する。つまり、CPU11が、黒色度が管理値以上であるか否かを判定する。黒色度が管理値以上、つまり、黒色度が比較的高いと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップS107に移行し、黒色度が管理値未満、つまり、黒色度が比較的低いと判定した場合(否定判定の場合)、ステップS109に移行する。なお、管理値は、例えば、実験あるいは過去の知見に基づいて、黒鉛23Cが十分に配向されているときの黒色度として予め設定されている。
【0055】
ステップS107では、CPU11が、乾燥炉51を制御して、金属箔23Aに供給された負極合剤23Bを乾燥させる。
【0056】
ステップS108では、CPU11が、モータ62を制御して、負極合剤23Bを乾燥させた金属箔23Aを巻き芯61に巻き取り、本制御プログラム15Aによる一連の処理を終了する。なお、巻き芯61に巻き取られた金属箔23Aは次工程に送られる。
【0057】
一方、ステップS109では、CPU11が、黒色度が規格値(<管理値)以上であるか否かを判定する。黒色度が規格値以上、つまり、黒色度が比較的高いと判定した場合(肯定判定の場合)、ステップS110に移行し、黒色度が規格値未満、つまり、黒色度が比較的低いと判定した場合(否定判定の場合)、ステップS111に移行する。なお、規格値は、管理値より小さい値として、例えば、実験あるいは過去の知見に基づいて、黒鉛23Cが十分ではないがある程度配向されているときの黒色度として予め設定されている。
【0058】
ステップS110では、CPU11が、一例として、上述の図4に示す黒色度・温度対応テーブル15Bを参照し、ヒータ71を制御して、ダイ32及びタンク35の少なくとも一方を加熱し、ステップS107に移行する。
【0059】
一方、ステップS111では、CPU11が、一例として、上述の図4に示す黒色度・温度対応テーブル15Bを参照し、ヒータ71を制御して、ダイ32及びタンク35の少なくとも一方を加熱し、ステップS112に移行する。なお、ステップS111での温度調整量は、ステップS110での温度調整量よりも大きいものとする。
【0060】
ステップS112では、CPU11が、乾燥炉51を制御して、金属箔23Aに供給された負極合剤23Bを乾燥させる。
【0061】
ステップS113では、CPU11が、モータ62を制御して、負極合剤23Bを乾燥させた金属箔23Aを巻き芯61に巻き取り、本制御プログラム15Aによる一連の処理を終了する。なお、ステップS111での加熱前に巻き芯61に巻き取られた金属箔23Aは廃棄とされる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、集電体としての金属箔の負極合剤側の面の黒色度を測定し、測定した黒色度に基づいて、負極合剤の粘度変動を制御することができる。これにより、負極合剤の粘度範囲を磁場配向に適した範囲にすることができるため、負極合剤中の黒鉛を適切に配向させることができる。
【0063】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、バックロールよりも後の経路に設けられた一対の磁石を用いて磁場を付与する形態について説明した。第2の実施形態では、バックロール自体を磁場ロールで構成した形態について説明する。
【0064】
図7は、第2の実施形態に係る磁場付与部40A近傍の構成の一例を示す図である。
【0065】
図7に示すように、本実施形態に係る磁場付与部40Aは、一対の磁石41に代えて、磁場ロール31Aを備えている。磁場ロール31Aは、バックロール31に代えて、ダイ32に対向して設けられたマグネットローラである。磁場ロール31Aは、ダイ32から負極合剤23Bが供給された金属箔23Aに磁場を付与する。
【0066】
上述したように、金属箔23Aへの磁場付与は、負極合剤23Bが金属箔23Aに供給された後にできるだけすぐに行うとよい。図7の例では、負極合剤23Bが金属箔23Aに供給された直後に磁場ロール31Aによって磁場が付与される。このため、上述の図1に示す一対の磁石41を用いる場合と比較して、黒鉛23Cの配向性が向上することが期待される。
【0067】
なお、上記各実施形態では、負極合剤23Bを加熱することによって負極合剤23Bの粘度を低下させることができるが、粘度低下によって負極合剤23Bのダレが発生し、塗工幅の制御に影響が出る場合がある。この場合、磁場配向直後にエアを利用してダレを抑制すると共に、ダイ32と金属箔23Aとの間のクリアランスを制御することで対応が可能とされる。
【0068】
以上、実施形態に係るリチウムイオン二次電池製造装置及びリチウムイオン二次電池製造装置が備える制御装置を例示して説明した。実施形態は、制御装置の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態としてもよい。
【0069】
その他、上記実施形態で説明したリチウムイオン二次電池製造装置及び制御装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0070】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0072】
10 制御装置
11 CPU
11A 測定部
11B 制御部
12 ROM
13 RAM
14 I/O
15 記憶部
15A 制御プログラム
15B 黒色度・温度対応テーブル
16 入出力I/F
20 金属箔供給部
23A 金属箔
23B 負極合剤
23C 黒鉛
24 走行経路
30 負極合剤供給部
31A 磁場ロール
32 ダイ
35 タンク
40、40A 磁場付与部
41 磁石
50 乾燥部
60 回収部
70 ラインカメラ
71 ヒータ
100 リチウムイオン二次電池製造装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7