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特開2024-73987射出成形機の計測装置、及び射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073987
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】射出成形機の計測装置、及び射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/77 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
B29C45/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185014
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平岩 和也
(72)【発明者】
【氏名】堤 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】丸本 洋嗣
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AP03
4F206AP05
4F206AP13
4F206JA07
4F206JF01
4F206JF06
4F206JF48
4F206JL09
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP22
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】成形材料が射出された量を適切に認識する。
【解決手段】一実施形態に係る射出成形機の計測装置は、射出成形機の射出装置から射出された成形材料を充填可能な充填口と、成形材料を排出可能な排出口と、充填口と排出口とを接続する空間と、を有する計測機構と、排出口から排出された成形材料の量を算出し、空間に残留している成形材料の量を算出し、n(nは、2以上の自然数を示す)回目の射出によって排出口から排出された成形材料の量と、当該n回目の射出後の空間に残留している成形材料の量と、n-1回目の射出後の空間に残留している成形材料の量と、に基づいて、n回目の射出で射出装置から充填口に射出された成形材料の量を算出するように構成されている制御部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の射出装置から射出された成形材料を充填可能な充填口と、前記成形材料を排出可能な排出口と、前記充填口と前記排出口とを接続する空間と、を有する計測機構と、
前記排出口から排出された前記成形材料の量を算出し、
前記空間に残留している前記成形材料の量を算出し、
n(nは、2以上の自然数を示す)回目の射出によって前記排出口から排出された前記成形材料の量と、当該n回目の射出後の前記空間に残留している前記成形材料の量と、n-1回目の射出後の前記空間に残留している前記成形材料の量と、に基づいて、当該n回目の射出で前記射出装置から前記充填口に射出された前記成形材料の量を算出するように構成されている制御部と、
を備える射出成形機の計測装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記空間に残留している前記成形材料の圧力及び温度を検出部から取得し、
前記空間の体積、前記圧力及び前記温度に基づいて、前記空間に残留している前記成形材料の量を算出し、
前記射出装置が前記充填口に前記成形材料を射出している間に、前記検出部から取得された前記成形材料の前記圧力及び前記温度に基づいて、前記n回目の射出によって前記排出口から排出された前記成形材料の量を算出する、
請求項1に記載の射出成形機の計測装置。
【請求項3】
前記計測機構を加熱する加熱部をさらに備え、
前記制御部は、
前記空間の体積、前記圧力及び前記温度に基づいて、前記加熱部による加熱で溶融状態となっている前記成形材料の前記量を算出し、
前記射出装置が前記充填口に前記成形材料を射出している間に、前記検出部から取得された前記圧力及び前記温度に基づいて、前記排出口から排出された、前記加熱部による加熱で溶融状態となっている前記成形材料の前記量を算出するように構成されている、
請求項2に記載の射出成形機の計測装置。
【請求項4】
前記計測機構は、前記空間のうち、前記充填口と前記排出口とを接続する、前記成形材料の流路において、前記流路の他の領域と比べて開口面積が狭くなる絞りが設けられ、
前記制御部は、前記絞りを通過する前の前記成形材料の前記温度及び前記圧力を取得すると共に、前記絞りを通過した後の前記成形材料の前記温度及び前記圧力を取得するように構成されている、
請求項2又は3に記載の射出成形機の計測装置。
【請求項5】
前記計測機構は、前記射出成形機に設けられた金型装置と置き換えて、前記射出成形機に対して設置可能である、
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の射出成形機の計測装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一つに記載の前記計測装置が設けられた射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の計測装置、及び射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機において充填された成形材料の量を計測するためには、成形材料の充填先である金型装置内で冷却固化された後に、冷却固化によって生成された成形品を、天秤等で計測する技術が一般的に用いられている。当該技術では、冷却固化するまで待つ必要があるとともに、天秤等で重さを計測するためには時間を要する。
【0003】
近年、射出成形機においては、冷却固化する前に成形材料の量(例えば、金型に充填された充填重量)を計測する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02-265724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、金型装置に充填された成形材料の充填重量を算出する技術であって、射出装置から射出された成形材料の量を算出する技術ではない。
【0006】
本発明の一態様は、射出成形機の射出装置から射出された成形材料の量を算出する機構を提供する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る射出成形機の計測装置は、射出成形機の射出装置から射出された成形材料を充填可能な充填口と、成形材料を排出可能な排出口と、充填口と排出口とを接続する空間と、を有する計測機構と、排出口から排出された成形材料の量を算出し、空間に残留している成形材料の量を算出し、n(nは、2以上の自然数を示す)回目の射出によって排出口から排出された成形材料の量と、当該n回目の射出後の空間に残留している成形材料の量と、n-1回目の射出後の空間に残留している成形材料の量と、に基づいて、n回目の射出で射出装置から充填口に射出された成形材料の量を算出するように構成されている制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、射出された成形材料の量のばらつきを認識できる技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る射出成形機の計測装置を例示した図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る計測機構のうち、図3の第1領域を拡大して示した図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る計測機構のうち、図3の第2領域を拡大して示した図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る情報処理装置の構成要素を機能ブロックで示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る射出装置による、計測機構に対する成形材料の充填による変化を示した図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る成形材料のPVT特性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。また、以下で説明する実施形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施形態に記述される全ての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、第1の実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向およびY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0012】
図1図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800で成形された成形品を突き出すエジェクタ装置200と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910および射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0013】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0014】
型締装置100は、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧および型開を行う。金型装置800は、固定金型810と可動金型820とを含む。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定金型810が取付けられる固定プラテン110と、可動金型820が取付けられる可動プラテン120と、固定プラテン110に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる移動機構102と、を有する。
【0015】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0016】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0017】
移動機構102は、固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉、昇圧、型締、脱圧、および型開を行う。移動機構102は、固定プラテン110と間隔をおいて配置されるトグルサポート130と、固定プラテン110とトグルサポート130を連結するタイバー140と、トグルサポート130に対して可動プラテン120を型開閉方向に移動させるトグル機構150と、トグル機構150を作動させる型締モータ160と、型締モータ160の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構170と、固定プラテン110とトグルサポート130の間隔を調整する型厚調整機構180と、を有する。
【0018】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて配設され、型締装置フレーム910上に型開閉方向に移動自在に載置される。なお、トグルサポート130は、型締装置フレーム910上に敷設されるガイドに沿って移動自在に配置されてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0019】
なお、本実施形態では、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し固定され、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されるが、トグルサポート130が型締装置フレーム910に対し固定され、固定プラテン110が型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置されてもよい。
【0020】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0021】
なお、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0022】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配置され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、型開閉方向に移動するクロスヘッド151と、クロスヘッド151の移動によって屈伸する一対のリンク群と、を有する。一対のリンク群は、それぞれ、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152と第2リンク153とを有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152と第2リンク153とが屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0023】
なお、トグル機構150の構成は、図1および図2に示す構成に限定されない。例えば図1および図2では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0024】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152と第2リンク153とを屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0025】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0026】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、および型開工程などを行う。
【0027】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や移動速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。
【0028】
なお、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の移動速度を検出するクロスヘッド移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の移動速度を検出する可動プラテン移動速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0029】
昇圧工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。
【0030】
型締工程では、型締モータ160を駆動して、クロスヘッド151の位置を型締位置に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0031】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0032】
脱圧工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を型締位置から型開開始位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、型締力を減少させる。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0033】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0034】
型閉工程、昇圧工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および昇圧工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0035】
脱圧工程および型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程および型開工程におけるクロスヘッド151の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0036】
なお、クロスヘッド151の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0037】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0038】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0039】
型締装置100は、型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う。なお、型厚調整のタイミングは、例えば成形サイクル終了から次の成形サイクル開始までの間に行われる。型厚調整機構180は、例えば、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に且つ進退不能に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0040】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転駆動力は、回転駆動力伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。なお、回転駆動力伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0041】
回転駆動力伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に従動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の従動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。なお、回転駆動力伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0042】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させる。その結果、トグルサポート130のタイバー140に対する位置が調整され、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lが調整される。なお、複数の型厚調整機構が組合わせて用いられてもよい。
【0043】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。なお、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0044】
型締装置100は、金型装置800の温度を調節する金型温調器を有してもよい。金型装置800は、その内部に、温調媒体の流路を有する。金型温調器は、金型装置800の流路に供給する温調媒体の温度を調節することで、金型装置800の温度を調節する。
【0045】
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0046】
なお、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0047】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0048】
エジェクタ装置200は、可動プラテン120に取付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッド210と、エジェクタロッド210を可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構220とを有する。
【0049】
エジェクタロッド210は、可動プラテン120の貫通穴に進退自在に配置される。エジェクタロッド210の前端部は、可動金型820のエジェクタプレート826と接触する。エジェクタロッド210の前端部は、エジェクタプレート826と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0050】
駆動機構220は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッド210の直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0051】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタロッド210を設定移動速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、エジェクタプレート826を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータを駆動してエジェクタロッド210を設定移動速度で後退させ、エジェクタプレート826を元の待機位置まで後退させる。
【0052】
エジェクタロッド210の位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、エジェクタロッド210の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド210の移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0053】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0054】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、シリンダ310内で計量された成形材料を、金型装置800内のキャビティ空間801に充填する。射出装置300は、例えば、成形材料を加熱するシリンダ310と、シリンダ310の前端部に設けられるノズル320と、シリンダ310内に進退自在に且つ回転自在に配置されるスクリュ330と、スクリュ330を回転させる計量モータ340と、スクリュ330を進退させる射出モータ350と、射出モータ350とスクリュ330の間で伝達される荷重を検出する荷重検出器360と、を有する。
【0055】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0056】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0057】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0058】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0059】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0060】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0061】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0062】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0063】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0064】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0065】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0066】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される荷重を検出する。検出した荷重は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の荷重の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する荷重を検出する。
【0067】
荷重検出器360は、検出した荷重の信号を制御装置700に送る。荷重検出器360によって検出される荷重は、スクリュ330と成形材料との間で作用する圧力に換算され、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0068】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0069】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0070】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。なお、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0071】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0072】
計量工程におけるスクリュ330の位置および回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置および計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0073】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0074】
充填工程におけるスクリュ330の位置および移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置およびV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0075】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。スクリュ330の圧力が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、スクリュ330の圧力が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、スクリュ330の圧力が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0076】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0077】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力および保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0078】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0079】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0080】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0081】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0082】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0083】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。なお、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0084】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0085】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0086】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0087】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0088】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0089】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704と、通信インターフェース705とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。また、制御装置700は、通信インターフェース705で外部の装置に情報を送信する。
【0090】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し生産する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0091】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の完了は型開工程の開始と一致する。
【0092】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0093】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、および突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0094】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0095】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を削減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0096】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。タッチパネル770は、表示された画面領域に操作を受け付け可能とする。また、タッチパネル770の画面領域には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0097】
なお、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750および表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0098】
(第1の実施形態)
本実施形態においては、射出成形機10の射出装置300から射出された成形材料の量(本実施形態では、その一例として重量)を算出するために計測装置を用いる例とする。本実施形態は、成形材料の量の一例として重量を示したものあって、成形材料の量は重量以外であってもよい。
【0099】
図3は、本実施形態に係る射出成形機10の計測装置を例示した図である。
【0100】
計測装置1200は、計測機構1000と、情報処理装置1100と、で構成される。
【0101】
本実施形態では、射出装置300から射出された成形材料の重量を算出するために、射出成形機10に対して計測機構1000を装着する。本実施形態においては、計測機構1000を装着するために、射出成形機10に取り付けられている金型装置800を取り外す。そして、金型装置800が設けられている位置に計測機構1000を装着することで、金型装置800の代わりに計測機構1000に対して成形材料が射出される。
【0102】
このように、計測機構1000は、射出成形機10に設けられた金型装置800と置き換えて、射出成形機10に対して設置可能である。
【0103】
そして、計測機構1000に設けられた各種センサの検知結果に基づいて、情報処理装置1100が、射出された成形材料の重量を算出する。
【0104】
図3に示される計測機構1000は、射出成形機10の固定プラテン110に対して固定される。固定手法は、任意の手法でよく、例えばボルトで計測機構1000を固定プラテン110に固定してもよい。なお、可動プラテン120は、計測機構1000の―X軸方向側の端部近傍に存在しなければ、どの位置に存在してもよい。
【0105】
図3に示されるように、計測機構1000は、固定プラテン110側(+X軸方向側)に、射出装置300のノズル320を配置するためのノズル収納空間1006が形成されている。
【0106】
そして、ノズル収納空間1006の―X軸方向側の端部に、射出成形機10の射出装置300から射出された成形材料を充填可能な充填口1021が設けられている。計測機構1000には、当該充填口1021から成形材料が充填される。
【0107】
また、計測機構1000の―X軸方向側の端部には、成形材料を排出可能な排出口1022が設けられている。排出口1022からは状況に応じて、成形材料が排出される。成形材料が排出された状況については後述する。
【0108】
計測機構1000には、充填口1021と、排出口1022と、を接続する空間が存在する。本実施形態では、計測機構1000の内部の空間は、金型装置800の内部に近づけるために、少なくともスプル部1001、ランナ部1002、及びキャビティ部1004を含む例とする。例えば、スプル部1001、ランナ部1002、及びキャビティ部1004は、各部を接続する流路であって、円筒形の形状を有していてもよい。計測機構1000の内部の構成は、一例を示したもので、当該構成に制限されるものではない。
【0109】
スプル部1001は、直径Dと、長さLとで構成される空間とする。長さL及び直径Dは、実施態様に応じて定められる。
【0110】
ランナ部1002は、直径Dと、長さLとで構成される空間とする。長さL及び直径Dは、実施態様に応じて定められる。なお、ランナ部1002の直径Dは、本実施形態においては、スプル部1001の直径Dより小さく形成されている。なお、本実施形態は、ランナ部1002を設けた例について説明するが、ランナ部1002を設けない態様であってもよい。ランナ部1002を設けない態様の場合、例えば、スプル部1001からゲート1003に直接つないでもよい。当該態様であっても、成形材料の量の算出は可能である。
【0111】
キャビティ部1004は、直径Dと、長さLとで構成される空間とする。長さL及び直径Dは、実施態様に応じて定められる。なお、キャビティ部1004の直径Dは、本実施形態においては、ランナ部1002の直径Dより大きく形成された例とする。本実施形態は一例として示したものであって、例えば、キャビティ部1004の直径Dが、ランナ部1002の直径Dより小さく形成されてもよい。
【0112】
長さL、L、Lは、実施態様に応じて定められてもよく、数十mm以下とするのが好ましい。それぞれの長さは、例えば、長さLを、長さL、Lと比べて短くするなどしてもよい。直径D、D、Dは、実施態様に応じて定められてもよく、数mm以下とするのが好ましい。
【0113】
また、ランナ部1002とキャビティ部1004との間には、成形材料の移動を抑制するためのゲート(絞りの一例)1003が設けられている。
【0114】
図4は、第1の実施形態に係る計測機構のうち、図3の第1領域1050Aを拡大して示した図である。図4に示されるように、計測機構1000は、充填口1021と排出口1022とを接続する成形材料の流路において、流路上に存在するスプル部1001、ランナ部1002、及びキャビティ部1004(他の領域)と比べて開口面積が狭くなるゲート1003(絞りの一例)が設けられている。ゲート(絞りの一例)1003は、円筒形の形状を有していてもよい。
【0115】
ゲート1003は、成形材料の移動を抑制するための絞りとする。例えば、ゲート1003は、射出装置300から射出を行うために射出圧が掛かった場合には成形材料が流れ、射出以外で圧力(例えば背圧)が掛かった場合には成形材料が流れるのを抑制する抵抗が生じるように、直径Dを定めるのが好ましい。
【0116】
例えば、成形材料の粘度が2~20(Pa・S)とした場合、ゲート1003の直径Dは0.2~0.5(mm)とする。ゲート1003の長さLは、キャビティ部1004の長さL及びランナ部1002の長さLと比べて短くてよく、例えば、0.5~1(mm)とするのが好ましい。
【0117】
さらに、排出口1022には、ドルーリングを抑制するために絞り部が設けられている。
【0118】
図5は、第1の実施形態に係る計測機構のうち、図3の第2領域1050Bを拡大して示した図である。図5に示されるように、排出口1022とキャビティ部1004との間には、絞り部1005が設けられている。絞り部1005は、円筒形の形状を有していてもよい。
【0119】
排出口1022は、射出装置300から成形材料が射出されている時に、成形材料が排出されるが、それ以外の状況でもドルーリング(成形材料漏れ)が生じる可能性がある。
【0120】
そこで、本実施形態では、成形材料のドルーリングを抑制するために絞り部1005が設けられている。絞り部1005の直径Dは、少なくともキャビティ部1004の直径Dと比べて小さくする。つまり、本実施形態においては、絞り部1005の直径Dを、キャビティ部1004の直径Dより小さくすることで、成形材料の移動に対する抵抗が存在するので、成形材料が流れることを抑制する。
【0121】
例えば、成形材料の粘度が2~20(Pa・S)とした場合、絞り部1005の直径Dは0.5~3(mm)とする。絞り部1005の長さLは、実施態様に応じて定められれば良い。
【0122】
本実施形態で射出装置300から射出される成形材料は、例えば樹脂である。本実施形態においては、射出装置300から溶融状態となった成形材料が、充填口1021から充填される。
【0123】
本実施形態に係る計測機構1000には、加熱器1051が設けられている。加熱器(加熱部の一例)1051は、例えば、バンドヒータ等とする。加熱器1051が計測機構1000を周囲から加熱することで、計測機構1000内に射出された成形材料は溶融状態が維持される。
【0124】
従って、本実施形態では、スプル部1001、ランナ部1002、ゲート1003、キャビティ部1004、及び絞り部1005には、ノズル320から排出された溶融状態の成形材料が充填された後、成形材料の溶融状態が保持される。
【0125】
また、計測機構1000には、成形材料を計測するためのセンサが設けられている。ところで、本実施形態では、成形材料の移動を抑制するために、ゲート1003を設けている。換言すれば、ゲート1003を介して、成形材料の状況(例えば、圧力及び温度)が変化する。そこで、本実施形態では、成形材料がゲートを通過する前のスプル部1001にセンサ1011を備えると共に、成形材料がゲートを通過した後のキャビティ部1004にセンサ1012を備える。
【0126】
センサ1011は、スプル部1001に存在する成形材料の状態を検出するためのセンサとする。センサ1011は、圧力センサと温度センサとを含む。成形材料の状態(例えば、粘土)を検出することができれば良いが、コストやサイズ、引き回しのしやすさによるレイアウトへの影響などを鑑みると圧力センサと温度センサが好ましい。
【0127】
例えば、センサ1011としての圧力センサは、当該センサ1011に隣接している、スプル部1001の内部の成形材料の圧力を検出する。
【0128】
センサ1011としての温度センサは、当該センサ1011に隣接している、スプル部1001の内部の成形材料の温度を検出する。
【0129】
センサ1012は、キャビティ部1004に存在する成形材料の状態を検出するためのセンサとする。センサ1012は、少なくとも、圧力センサと温度センサとを含む。
【0130】
例えば、センサ1012としての圧力センサは、当該センサ1012に隣接している、キャビティ部1004の内部の成形材料の圧力を検出する。
【0131】
センサ1012としての温度センサは、当該センサ1012に隣接している、キャビティ部1004の内部の成形材料の温度を検出する。
【0132】
本実施形態に係るセンサ1011、1012は、成形材料の状態を常に測定している。
【0133】
さらに、本実施形態では、センサ1011による成形材料の検知結果は、スプル部1001及びランナ部1002に存在する成形材料に適用される。つまり、ゲート1003を通過する前であれば、成形材料の圧力及び温度に変化は生じないものとみなして、センサ1011による成形材料の検知結果を、スプル部1001のみならずランナ部1002にも適用される。
【0134】
なお、本実施形態は、センサの設置態様の一例を示したものであって、スプル部1001及びランナ部1002の各々に、センサを設置してもよい。
【0135】
本実施形態においては、さらにセンサ1013が設けられている。センサ1013は、計測機構1000の外周近傍の温度を検出し、検出結果を情報処理装置1100に出力する。そして、情報処理装置1100は、計測機構1000内の成形材料が溶融状態を保持できるように、加熱器1051の温度制御を行う。
【0136】
次に、センサ1011、1012の検出結果を用いて、射出装置300から射出された成形材料の射出量として重量を計測する情報処理装置1100について説明する。本実施形態では、射出装置300から射出された回数を、ショット数としてカウントする。本実施形態は、射出された成形材料の射出量として重量を計測する例について説明する。なお、本実施形態は、射出量の一例として重量を示したものあって、射出量を重量に制限するものではない。
【0137】
図6は、第1の実施形態に係る情報処理装置1100の構成要素を機能ブロックで示す図である。情報処理装置1100は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)1101と、記憶媒体1102とを有する。情報処理装置1100は、記憶媒体1102に記憶されたプログラムをCPU1101に実行させることにより、各種の制御を行う。
【0138】
図6に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU1101にて実行されるプログラムにて実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。図6に示すように、CPU1101は、取得部1111と、排出量算出部1112と、残留量算出部1113と、射出量算出部1114と、書込制御部1115と、を備える。また、制御装置700は、記憶媒体1102に、ログ情報記憶部1121を備える。
【0139】
ログ情報記憶部1121は、射出装置300から充填口1021に射出された成形材料の量に関するログ情報を記憶する。ログ情報は、例えば、射出が行われる毎に、当該射出された成形材料の重量に関する情報とする。
【0140】
本実施形態では、情報処理装置1100が、計測機構1000内における成形材料の移動を考慮して、射出された成形材料の射出量を算出する。そこで、本実施形態における計測機構1000内の成形材料の移動と、計測機構1000に対する成形材料の射出と、の関係について説明する。
【0141】
図7は、本実施形態に係る射出装置300による、計測機構1000に対する成形材料の射出による変化を示した図である。
【0142】
図7の状況1701は、n-1ショット目(n-1回目の例)の保圧完了時を示している。状況1701においては、n-1ショット目までの射出によって、計測機構1000内の空間(スプル部1001、ランナ部1002、ゲート1003、キャビティ部1004、絞り部1005)には、溶融状態の成形材料が残留している状態となる。本実施形態では、n-1ショット目の保圧完了時における、計測機構1000内の空間内の成形材料の量(例えば重量)を、n-1ショット目に残留している成形材料の残留量と定義する。なお、nは、2以上の自然数とする。
【0143】
図7の状況1702は、nショット目(n回目の例)の射出時を示している。状況1702においては、nショット目の射出によって、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料が、ノズル320から計測機構1000内に射出される。計測機構1000に成形材料が射出されたことに伴い、矢印1721で示されるように、排出口1022から成形材料が排出される。本実施形態では、nショット目の射出時に射出装置300から計測機構1000の充填口1021に射出された成形材料の量(例えば重量)を、nショット目の成形材料の射出量と定義する。本実施形態では、nショット目の射出時における、計測機構1000の排出口1022から排出された成形材料の量(例えば重量)を、nショット目の成形材料の排出量と定義する。
【0144】
図7の状況1703は、nショット目(n回目の例)の保圧完了時を示している。状況1703においては、nショット目までの射出によって、計測機構1000内の空間(スプル部1001、ランナ部1002、ゲート1003、キャビティ部1004、絞り部1005)には、溶融状態の成形材料が射出された状態となる。本実施形態では、nショット目の保圧完了時における、計測機構1000内の空間内の成形材料の量(例えば重量)を、nショット目の成形材料の残留量と定義する。
【0145】
nショット目にノズル320から射出された成形材料の重量と、nショット目に排出口1022から排出された成形材料の重量と、の差は、n-1ショット目とnショット目との保圧完了後に計測機構1000内に残留する成形材料の重量の差となる。つまり、"nショット目の成形材料の射出量-nショット目の成形材料の排出量=nショット目の後の成形材料の残留量-'n―1'ショット目の後の成形材料の残留量"が成り立つ。したがって、nショット目の成形材料の射出量は、下記の式(1)で算出できる。なお、(射出量)nは、nショット目に射出された成形材料の重量とし、(排出量)nは、nショット目に排出された成形材料の重量とし、(残留量)n-1は、n-1ショット目の後に残留している成形材料の重量とし、(残留量)nは、nショット目の後に残留している成形材料の重量として算出する。
【0146】
【数1】
【0147】
そこで、本実施形態に係る情報処理装置1100は、上述した式(1)に基づいて、nショット目に射出された成形材料の射出量(例えば重量)を算出する。
【0148】
取得部1111は、各種センサからの検出結果を取得する。例えば、取得部1111は、センサ1011、1012の検出結果を取得する。具体的には、取得部1111は、スプル部1001に残留している成形材料の温度及び圧力をセンサ(検出部の一例)1011から取得する。取得部1111は、キャビティ部1004に残留している成形材料の温度及び圧力をセンサ(検出部の一例)1012から取得する。
【0149】
残留量算出部1113は、計測機構1000内の空間(スプル部1001、ランナ部1002、ゲート1003、キャビティ部1004、及び絞り部1005)に残留している成形材料の残留量を算出する。
【0150】
本実施形態に係る残留量算出部1113は、式(1)でされる、n-1ショット目の後に計測機構1000に残留している成形材料の重量を示した(残留量)n-1と、nショット目の後に計測機構1000に残留している成形材料の重量を示した(残留量)nと、を算出する。(残留量)nは、下記の式(2)を用いて算出する。ρnキャビティは、nショット目の後のキャビティ部1004に残留している成形材料の密度とする。ρnスプルは、nショット目の後のスプル部1001に残留している成形材料の密度とする。Vキャビティは、キャビティ部1004の体積とする。V絞りは、絞り部1005の体積とする。Vスプルは、スプル部1001の体積とする。Vランナは、ランナ部1002の体積とする。Vゲートは、ゲート1003の体積とする。
【0151】
なお、ランナ部1002、ゲート1003の成形材料の圧力及び温度は、スプル部1001の圧力及び温度と同様とみなし、絞り部1005の成形材料の圧力及び温度は、キャビティ部1004の圧力及び温度と同様とみなす。これは仮に圧力及び温度に誤差がある場合でも、体積Vランナ、Vゲート、絞りは、体積Vスプル、Vキャビティと比べて小さいので、演算結果に与える影響はほとんど生じないと考えられるためである。なお、ランナ部1002の長さL、直径Dが、キャビティ部1004の長さL及び直径D及びスプル部1001の長さL、直径Dのうちいずれか一方以上と比べて小さくない場合には、ランナ部1002内の成形材料の温度及び圧力等を検出するためのセンサを設けてもよい。
【0152】
【数2】
【0153】
式(2)に示されるように、密度ρnキャビティは、ρ(Pnキャビティ,Tnキャビティ)と表す。ρ(Pnキャビティ,Tnキャビティ)は、圧力Pnキャビティ及び温度Tnキャビティに基づいて、密度ρnキャビティを算出する演算手法を示している。圧力Pnキャビティは、nショット目の後のキャビティ部1004に残留している成形材料の圧力を示し、温度Tnキャビティは、nショット目の後のキャビティ部1004に残留している成形材料の温度を示している。
【0154】
次に、成形材料のPVT特性について説明する。図8は、本実施形態に係る成形材料のPVT特性を示した図である。図8に示されるように、縦軸は、比容積(cm3/g)を示し、横軸は温度(℃)を示している。図8に示される各線は、圧力毎の被容積(cm3/g)と温度(℃)との対応関係を示している。各線で示される圧力は、圧力P1<圧力P2<圧力P3<圧力P4<圧力P5<圧力P6(MPa)となる。
【0155】
図8に示されるように、成形材料の圧力と温度とから、成形材料の比容積(cm3/g)を特定できる。比容積(cm3/g)は、密度の逆数である。つまり、ρ(Pnキャビティ,Tnキャビティ)で示されるように、圧力Pnキャビティ及び温度Tnキャビティに基づいて、成形材料の密度ρnキャビティを算出できる。キャビティ部1004の成形材料の圧力Pnキャビティ及び温度Tnキャビティは、センサ1012から取得できる。このため、残留量算出部1113は、キャビティ部1004の圧力Pnキャビティ及び温度Tnキャビティに基づいて、成形材料の密度ρnキャビティを算出する。キャビティ部1004の密度ρnキャビティの具体的な算出手法は、図8に示されるPVT線図のような対応関係を示すテーブル情報等に基づいて算出してもよいし、予め定められた関数に、圧力Pnキャビティ及び温度Tnキャビティを代入することで算出してもよい。
【0156】
また、式(2)に示されるように、密度ρnスプルは、ρ(Pnスプル,Tnスプル)と表すことができる。ρ(Pnスプル,Tnスプル)は、圧力Pnスプル及び温度Tnスプルに基づいて、密度ρnスプルを算出する演算手法を示している。圧力Pnスプルは、nショット目の後のスプル部1001に残留している成形材料の圧力を示し、温度Tnスプルは、nショット目の後のスプル部1001に残留している成形材料の温度を示している。スプル部1001の成形材料の圧力Pnスプル及び温度Tnスプルは、センサ1011から取得できる。このため、残留量算出部1113は、スプル部1001の成形材料の圧力Pnスプル及び温度Tnスプルに基づいて、スプル部1001の成形材料の密度ρnスプルを算出する。スプル部1001の密度ρnスプルの具体的な算出手法は、図8に示されるPVT線図のような対応関係を示すテーブル情報等に基づいて算出してもよいし、予め定められた関数に、圧力Pnスプル及び温度Tnスプルを代入することで算出してもよい。
【0157】
キャビティ、V絞り、Vスプル、Vランナ、Vゲートは、計測機構1000の各種寸法から算出できる。例えば、スプル部1001、ランナ部1002、ゲート1003、キャビティ部1004、絞り部1005は、上述したように、各部を接続する流路であって、円筒形の形状を有していてもよい。この場合、ランナ部1002、ゲート1003、キャビティ部1004、絞り部1005の各々の直径及び長さから体積Vスプル、Vランナ、Vゲート、Vキャビティ、絞りを導出できる。このように、体積Vスプル、Vランナ、Vゲート、Vキャビティ、絞りは定数となる。
【0158】
したがって、残留量算出部1113は、nショット目の後にセンサ1012から取得した圧力及び温度、並びに、nショット目の後にセンサ1011から取得した圧力及び温度を、式(2)に代入することで、nショット目の後の成形材料の残留重量を示した(残留量)nを算出できる。
【0159】
同様に、残留量算出部1113は、n-1ショット目の後にセンサ1012から取得した圧力及び温度、並びに、n-1ショット目の後にセンサ1011から取得した圧力及び温度を、式(2)に代入することで、n-1ショット目の後の成形材料の残留重量を示した(残留量)n-1を算出できる。
【0160】
つまり、残留量算出部1113は、上述した式(2)によって、計測機構1000内の空間の体積、当該空間に残留している成形材料の圧力及び温度に基づいて、空間に残留している成形材料の重量を算出できる。当該成形材料は、加熱器1051による計測機構1000の加熱で、溶融状態が保持されている。したがって、残留量算出部1113は、溶融状態の成形材料の重量を算出できる。
【0161】
排出量算出部1112は、排出口1022から排出された成形材料の排出量を算出する。
【0162】
本実施形態に係る排出量算出部1112は、式(1)でされる、nショット目に排出口1022から排出された成形材料の重量を示した(排出量)nを算出する。(排出量)nは、下記の式(3)を用いて算出する。
【0163】
【数3】
【0164】
ρ(Pnキャビティ,Tnキャビティ)は上述したとおり、キャビティ部1004内の成形材料の密度である。Q(Pnキャビティ,Tnキャビティ)は、単位時間当たりの成形材料の流量を示している。そして、nショット目に排出された成形材料の重量を算出するために、充填開始から保圧完了までの間で式(3)の積分を行う。本実施形態においては、充填開始から保圧完了までの間で、センサ1012が検出を行う単位時間毎に、センサ1012に検出される成形材料の温度及び圧力を用いる。
【0165】
Q(Pnキャビティ,Tnキャビティ)は、ハーゲンポアズイユ式を用いることで算出できる。圧力Pnキャビティ,温度Tnキャビティは、センサ1012により検出される。本実施形態では、排出口1022から排出された成形材料の流量を算出するために、センサ1012から排出口1022までの間の流路の長さ、絞り部1005の直径D、及びキャビティ部1004の直径Dを用いる。センサ1012から排出口1022までの間の流路の長さは、センサ1012から絞り部1005までの長さL41と、絞り部1005の長さLと、を含んでいる。これらの変数を考慮することで、式(4)を導出できる。式(4)に示される、キャビティ部1004に残留している成形材料の粘度η(Tnキャビティ)とする。また、圧力P大気圧は、排出口1022から外側の圧力、換言すれば大気圧とする。大気圧の検出手法は、どのような手法を用いてもよい。式(4)で示される例では、キャビティ部1004及び絞り部1005の形状が円筒形であって、円筒形の側面が、成形材料を排出口1022まで導くための内壁となる例とする。
【0166】
【数4】
【0167】
粘度η(Tnキャビティ)は、下記の式(5)で示される指数関数を用いて算出できる。式(5)で示されるように、変数B、η0は、成形材料の固有の定数とする。Rは、気体定数とする。
【0168】
【数5】
【0169】
従って、本実施形態に係る排出量算出部1112は、成形材料の流量Qを算出できる。また、式(3)及び式(4)から下記の式(6)を算出できる。温度Tnキャビティと及び圧力Pnキャビティは、nショット目における、充填開始から保圧完了までの間にセンサ1012に検出された成形材料の温度及び圧力とする。したがって、排出量算出部1112は、センサ1012が単位時間毎に計測しているキャビティ部1004の成形材料の温度Tnキャビティと及び圧力Pnキャビティを、式(6)に適用することで、(排出量)nを算出する。
【0170】
【数6】
【0171】
従って、排出量算出部1112は、射出装置300が充填口1021に成形材料を射出している間に、センサ1011、1012(検出部の一例)から取得された成形材料の圧力及び温度に基づいて、n回目の射出によって排出口1022から排出された成形材料の重量を算出できる。当該成形材料は、加熱器1051による計測機構1000の加熱で、溶融状態が保持されている。したがって、排出量算出部1112は、溶融状態の成形材料の重量を算出できる。
【0172】
射出量算出部1114は、n(nは、2以上の自然数を示す)回目の射出によって排出口1022から排出された成形材料の重量と、当該n回目の射出後の計測機構1000内の空間に残留している成形材料の重量と、当該n-1回目の射出後の空間に残留している成形材料の重量と、に基づいて、当該n回目の射出で射出装置300から充填口1021に射出された成形材料の重量を算出する。
【0173】
射出量算出部1114は、残留量算出部1113によって算出される(残留量)n、(残留量)n-1と、排出量算出部1112によって算出される(排出量)nと、を式(1)に代入することで、(射出量)nを算出できる。したがって、nショット目に射出装置300からの射出された成形材料の重量が算出される。
【0174】
ところで、式(1)に対して、式(2)から算出される(残留量)n、(残留量)n-1及び式(6)から算出される(排出量)nを代入することで、以下に示す式(7)を導出できる。
【0175】
【数7】
【0176】
従って、射出量算出部1114は、センサ1011、1012(検出部の一例)から取得された成形材料の圧力及び温度を式(7)に適用して、nショット目に射出装置300からの射出された成形材料の重量が算出してもよい。
【0177】
書込制御部1115は、ログ情報記憶部1121に記憶されているログ情報の登録、更新を行う。例えば、書込制御部1115は、射出量算出部1114によって算出された、nショット目に射出装置300からの射出された成形材料の重量を、射出した条件等と対応付けて、ログ情報記憶部1121に記憶されているログ情報に、登録する。
【0178】
本実施形態にかかる情報処理装置1100は、上述した制御によって、ショット毎に射出装置300から射出された成形材料の重量を算出できる。そして、算出された成形材料の重量は、ログ情報として、ログ情報記憶部1121に登録される。したがって、ユーザは、ログ情報を参照することで、射出された成形材料の重量(射出された成形材料の量の一例)のばらつきを認識できる。
【0179】
上述した実施形態においては、計測機構1000の内部の構造は一例として示したものであって、当該構造に制限するものではない。本実施形態においては、計測機構1000の内部において、スプル部1001、ランナ部1002、ゲート1003、キャビティ部1004、及び絞り部1005を有する例について説明するが、当該構造に制限するものではない。つまり、計測機構1000に残留している成形材料の重量を算出可能な構造であればよい。
【0180】
本実施形態においては、射出時以外に排出口1022から成形材料が排出されることを抑制するために、ゲート1003を設ける例について説明するが、ゲート1003を設ける手法に制限するものではなく、ゲート1003の代わりに、射出時以外に排出口1022から成形材料が排出されることを抑制するような他の機構を設けてもよい。
【0181】
本実施形態においては、加熱器1051を設けて、計測機構1000内の成形材料の溶融状態を保持する例について説明したが、加熱器1051を設ける手法に制限するものではなく、他の機構又は他の手法を用いて成形材料の溶融状態を保持してもよい。さらには、本実施形態においては、センサ1011、1012で成形材料の温度及び圧力を適切に検出可能であれば、成形材料の溶融状態を保持する手法を必ずしも用いなくてもよい。
【0182】
本実施形態においては、成形材料の重量を算出するために、検出された成形材料の圧力、及び温度に基づいて、成形材料の重量を算出する手法について説明した。しかしながら、本実施形態においては、検出された成形材料の圧力、及び温度に基づいて、成形材料の重量を算出する手法に制限するものではなく、残留している成形材料の重量、及び排出された成形材料の重量を算出する手法するために他の手法を用いてもよい。
【0183】
<作用>
上述した実施形態では、上述した構成を備えることで、射出装置300からの射出が行われる毎に、センサ1011、1012(検出部の一例)から取得された成形材料の圧力及び温度に基づいて、nショット目の射出によって射出装置300から射出された成形材料の重量を算出できる。したがって、射出成形機のショット単位で計測機構1000に射出された成形材料の重量を算出できる。従来のように成形品が冷却固化するまで待機する必要がないので、射出が行われる毎に重量計測するまでの時間を短縮できる。
【0184】
本実施形態では、計測機構1000を用いた上で、センサ1011、1012(検出部の一例)から取得された成形材料の圧力及び温度に基づいて、nショット目の射出によって射出装置300から射出された成形材料の重量を算出できるので、金型装置800の容量に制限されることなく、射出装置300から計測機構1000に射出された成形材料の重量を算出できる。このように、計測装置1200は、射出装置300から射出された成形材料の量を適切に認識することができる。
【0185】
また、射出を複数回行うことで、計測装置1200は、射出条件に応じて射出された成形材料の重量のばらつきを認識できる。当該重量のばらつきは、射出成形機10に設定された条件毎に計測できる。したがって、本実施形態に係る計測装置1200は、射出条件に応じて射出された成形材料の重量のばらつきを認識できる。このため、上述した実施形態で記録されたログ情報を参照することで、ばらつきを抑制できるような射出条件を導出できるので、射出時の安定性を向上させることができる。
【0186】
また、本実施形態においては、計測装置1200は、射出装置300から射出された後の成形材料の重量を算出できる。換言すれば、射出装置300のシリンダ310内の成形材料の状況の検出結果によって、射出された成形材料の重量を推測するのではなく、実際に射出された後の成形材料の重量を算出する。したがって、実際に射出された成形材料の重量を算出するので、シリンダ310内部の状態の検出結果から射出された成形材料の重量を推測する場合と比べて、重量の算出精度の向上を実現できる。
【0187】
さらには、上述した実施形態においては、加熱器1051で計測機構1000の周囲を加熱するので、計測機構1000内の成形材料の溶融状態を保持できる。したがって、金型装置800を用いた場合には、金型装置800内部の成形材料のような冷却固化を抑制できる。つまり、センサ1011、1012の壁面近傍に成形材料の冷却固化を抑制できる。したがって、センサ1011、1012近傍に冷却固化された成形材料が生成されることで、溶融状態の成形材料の温度及び圧力が計測できなくないような状況が生じることを抑制できる。換言すれば、上述した実施形態においては、溶融状態の成形材料の温度及び圧力を検出できるので、実際に射出された成形材料の重量の算出精度が低下することを抑制できる。
【0188】
以上、本発明に係る射出成形機の計測装置、及び射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0189】
10 射出成形機
300 射出装置
310 シリンダ
320 ノズル
1200 計測装置
1000 計測機構
1001 スプル部
1002 ランナ部
1003 ゲート
1004 キャビティ部
1005 絞り部
1006 ノズル収納空間
1011、1012 センサ
1021 充填口
1022 排出口
1051 加熱器
1100 情報処理装置
1101 CPU
1111 取得部
1112 排出量算出部
1113 残留量算出部
1114 射出量算出部
1115 書込制御部
1102 記憶媒体
1121 ログ情報記憶部
図1
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図8