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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024073996
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/239 20060101AFI20240523BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240523BHJP
【FI】
B60R21/239
B60R21/2338
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185026
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄也
(72)【発明者】
【氏名】田中 志幸
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA14
3D054CC11
3D054CC15
(57)【要約】
【課題】迅速に内圧を下げることができるエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】エアバッグ装置(1)は、車両のインストルメントパネルの内側に収容され、乗員席に向かって開口が形成されたエアバッグケース(10)と、エアバッグケース内に配置され、ガスを噴射するインフレータ(25)と、可撓性を有するシート材により形成された周壁(105)を有し、エアバッグケース内に収納され、インフレータから噴射されるガスにより開口(21)から乗員席に向かって膨張展開するバッグ部(100)と、を備え、周壁には、膨張展開の実行状態においてバッグ部内からガスを排出するホール(40L,40R)が設けられており、ホールは、膨張展開の完了した展開完了状態において開口の近傍に位置するように、前壁に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される乗員席用のエアバッグ装置であって、
前記車両のインストルメントパネルの内側に収容され、前記乗員席に向かって開口が形成されたエアバッグケースと、
前記エアバッグケース内に配置され、ガスを噴射するインフレータと、
可撓性を有するシート材により形成された周壁を有し、前記エアバッグケース内に収納され、前記インフレータから噴射される前記ガスにより前記開口から前記乗員席に向かって膨張展開するバッグ部と、
を備え、
前記周壁には、前記膨張展開の実行状態において前記バッグ部内から前記ガスを排出するホールが設けられており、
前記ホールは、前記膨張展開の完了した展開完了状態において前記開口の近傍に位置するように、前記周壁に形成されている、
エアバッグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグ装置において、
前記ホールは、前記展開完了状態において、前記車両の車幅方向に見て、前記バッグ部を前記車両の前後方向に二分割したうちで、前記車両の前方側に位置するように、前記周壁に設けられていることにより、前記開口の近傍に位置する、
エアバッグ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグ装置において、
前記ホールは、前記展開完了状態において、前記車幅方向に見て、前記開口から前記ホールまでの前記前後方向に沿った距離が、前記バッグ部の前記前後方向の寸法の1/2以下の距離となるように、前記周壁に形成されていることにより、前記開口の近傍に位置する、
エアバッグ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のエアバッグ装置において、
前記ホールは、前記展開完了状態において、前記開口の上端よりも下方に少なくとも一部が位置するように、前記周壁に形成されていることにより、前記開口の近傍に位置する、
エアバッグ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のエアバッグ装置において、
一端および他端を有し前記バッグ部内に設置されるテザーであって、前記一端が前記展開完了状態において前記バッグ部内における上方側に位置するように前記周壁の内側面に接続され、前記他端が前記バッグ部における前記ホールの周囲に接続されるテザーをさらに備え、
前記テザーは、前記展開完了状態において、前記バッグ部における前記テザーの接続部分の周囲を前記バッグ部内に引き込むことで、前記ホールを閉じる、
エアバッグ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のエアバッグ装置において、
前記テザーの前記一端は、前記展開完了状態において、前記バッグ部内における最上部に位置するように、前記内側面に接続されている、
エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に衝突が発生した際に、助手席に着座している乗員を保護するためのエアバッグ装置が種々提案されている。例えば特許文献1は、膨張展開を早期に完了させることができる助手席用エアバッグ装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-056993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1で開示されているようなエアバッグケースの開口が助手席に向いている構成のエアバッグ装置の場合、エアバッグケースの開口が上方側に向いた構成と比較して、エアバッグの膨張開始からエアバッグと助手席の乗員との接触までの時間が短いため、膨張展開後、迅速にエアバッグの内圧を下げる技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0006】
(1)本開示の一形態によれば、車両に搭載される乗員席用のエアバッグ装置が提供される。この形態のエアバッグ装置は、前記車両のインストルメントパネルの内側に収容され、前記乗員席に向かって開口が形成されたエアバッグケースと、前記エアバッグケース内に配置され、ガスを噴射するインフレータと、可撓性を有するシート材により形成された周壁を有し、前記エアバッグケース内に収納され、前記インフレータから噴射される前記ガスにより前記開口から前記乗員席に向かって膨張展開するバッグ部と、を備え、前記周壁には、前記膨張展開の実行状態において前記バッグ部内から前記ガスを排出するホールが設けられており、前記ホールは、前記膨張展開の完了した展開完了状態において前記開口の近傍に位置するように、前記周壁に形成されている。
この形態のエアバッグ装置によれば、バッグ部の周壁には、展開完了状態において開口の近傍に位置するホールが形成されているので、ホールが開口から離れた位置に形成されている構成と比較して、膨張展開の実行状態においてより早い段階でガスをバッグ部の外部に排出でき、迅速にバッグ部の内圧を下げることができる。
(2)上記形態のエアバッグ装置において、前記ホールは、前記展開完了状態において、前記車両の車幅方向に見て、前記バッグ部を前記車両の前後方向に二分割したうちで、前記車両の前方側に位置するように、前記周壁に設けられていることにより、前記開口の近傍に位置してもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、ホールは、展開完了状態において、車両の車幅方向に見て、バッグ部を車両の前後方向に二分割したうちで、車両の前方側に位置するように、周壁に設けられていることにより、前記開口の近傍に位置するので、ホールが車幅方向に見てバッグ部を車両の前後方向に二分割したうちで車両の後方側に形成されている構成と比較して、開口により近い位置にてバッグ部内のガスを排出できる。これにより、インフレータから供給されたガスをより早い段階でバッグ部の外部に排出でき、膨張展開の実行状態におけるバッグ部の内圧を迅速に下げることができる。
(3)上記形態のエアバッグ装置において、前記ホールは、前記展開完了状態において、前記車幅方向に見て、前記開口から前記ホールまでの前記前後方向に沿った距離が、前記バッグ部の前記前後方向の寸法の1/2以下の距離となるように、前記周壁に形成されていることにより、前記開口の近傍に位置してもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、ホールは、展開完了状態において、車幅方向に見て、開口からホールまでの前後方向に沿った距離が、バッグ部の前後方向の寸法の1/2以下の距離となるように、周壁に形成されているので、ホールがバッグ部100の前後方向の寸法の1/2超の距離となるように周壁に形成されている構成と比較して、開口により近い位置にてバッグ部内のガスを排出できる。これにより、インフレータから供給されたガスをより早い段階でバッグ部の外部に排出でき、膨張展開の実行状態におけるバッグ部の内圧を迅速に下げることができる。
(4)上記形態のエアバッグ装置において、前記ホールは、前記展開完了状態において、前記開口の上端よりも下方に少なくとも一部が位置するように、前記周壁に形成されていることにより、前記開口の近傍に位置してもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、ホールは、展開完了状態において、開口の上端よりも下方に少なくとも一部が位置するように、周壁に形成されていることにより、開口の近傍に位置するので、ホールが開口の上端よりも上方に位置する構成と比較して、開口により近い位置にてバッグ部内のガスを排出できる。これにより、インフレータから供給されたガスをより早い段階でバッグ部の外部に排出でき、実行状態におけるバッグ部の内圧を迅速に下げることができる。
(5)上記形態のエアバッグ装置において、一端および他端を有し前記バッグ部内に設置されるテザーであって、前記一端が前記展開完了状態において前記バッグ部内における上方側に位置するように前記周壁の内側面に接続され、前記他端が前記バッグ部における前記ホールの周囲に接続されるテザーをさらに備え、前記テザーは、前記展開完了状態において、前記バッグ部における前記テザーの接続部分の周囲を前記バッグ部内に引き込むことで、前記ホールを閉じてもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、テザーは、展開完了状態において、バッグ部におけるテザーの接続部分の周囲をバッグ部内に引き込むことで、ホールを閉じるので、膨張展開の実行状態においてはホールからガスを排出し、展開完了状態においてはガスの排出を抑制できる。これにより、膨張展開の実行状態におけるバッグ部の内圧を迅速に下げるとともに、展開完了状態におけるバッグ部の内圧が過剰に低下することを抑制できる。加えて、テザーの一端は、バッグ部内における上方側に位置するように周壁の内側面に接続されているので、バッグ部内における下方側に位置する構成と比較して、テザーが弛緩状態から緊張状態となるまでの時間、すなわちホールが閉じられるまでの時間を長くできる。これにより、実行状態におけるホールがガスを排出する時間を長くすることができ、実行状態におけるバッグ部の内圧をより下げることができる。一般に、バッグ部は、膨張展開の際に、下方側よりも上方側により大きく膨らむ。これは、下方側の近傍には乗員の膝があるために大きく膨らませないのに対して、乗員の膝から上方側にはバッグ部にて受け止めるべき広い領域が存在するためである。このため、バッグ部の膨張展開の完了タイミングは下方側よりも上方側が遅い。このため、上述のようにテザーの一端がバッグ部内の上方側に位置するように周壁の内側面に接続されることにより、ホールが閉じられるまでの時間を長くできる。
(6)上記形態のエアバッグ装置において、前記テザーの前記一端は、前記展開完了状態において、前記バッグ部内における最上部に位置するように、前記内側面に接続されていてもよい。
この形態のエアバッグ装置によれば、テザーの一端は、展開完了状態においてバッグ部内における最上部に位置するように内側面に接続されているので、最上部以外のバッグ内にテザーの一端が接続されている構成と比較して、テザーが弛緩状態から緊張状態となるまでの時間、すなわちホールが閉じられるまでの時間をより長くできる。これにより、実行状態におけるホールがガスを排出する時間をより長くすることができ、実行状態におけるバッグ部の内圧をより下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一形態におけるエアバッグ装置の概略構成を示す図である。
図2】本開示の一形態におけるエアバッグ装置の概略構成を示す図である。
図3】本開示の一形態におけるエアバッグ装置の概略構成を示す図である。
図4】一対の拘束面シートの平面図である。
図5】一対の側面シートの平面図である。
図6】実行状態におけるホールの説明図である。
図7】展開完了状態におけるホールの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.実施形態:
図1図3は、本開示の一形態におけるエアバッグ装置1の概略構成を示す図である。図1は、エアバッグ装置1が搭載される車両の車幅方向に見たエアバッグ装置1の概略図である。図2は、左側後方から見たエアバッグ装置1の概略図である。図3は、車両の助手席ST側から見たエアバッグ装置1の概略図である。なお、図面および以下の記載における「前後方向」は、車両の進行方向を「前方」としたときの前後方向を示し、「左右(横)」は車両の左右方向(幅方向)を示し、「上下方向」は、車両の高さ方向を示す。図1図3では、バッグ部100の膨張展開が完了した状態(後述の展開完了状態)を示す。また、図2および図3では、助手席STは省略している。
【0009】
本実施形態におけるエアバッグ装置1は、車両の助手席ST前方に配置される。エアバッグ装置1は、車両に衝突が発生した場合、または衝突が予測された場合に、助手席STの乗員を衝撃から保護する。エアバッグ装置1は、エアバッグケース20と、インフレータ25と、バッグ部100と、を備える。
【0010】
エアバッグケース20は、車両のインストルメントパネル10(以下、インパネ10と呼ぶ)の内側に収容され、有底の箱状形状を有する。エアバッグケース20には、助手席STに向かって開口21が形成されている。換言すると、開口21は、フロントガラスFGに向かわない方向に形成されている。開口21は、バッグ部100が収納されている状態においては、不図示の扉部により塞がれている。
【0011】
インフレータ25は、バッグ部100にガスを噴射する。インフレータ25は、エアバッグケース20内に配置されており、不図示のリテーナとともにエアバッグケース20の底部22に固定されている。
【0012】
バッグ部100は、袋状の形状を有する。バッグ部100は、通常時はエアバッグケース20内に収納されており、インフレータ25によりガスが注入されると不図示の扉部を押し開き、助手席STに向かって膨張展開する。エアバッグ装置1の状態には、「実行状態」と「展開完了状態」が含まれる。「実行状態」は、ガスの噴射によりバッグ部100が膨張展開中の状態を指す。「展開完了状態」とは、ガスの噴射によりバッグ部100の膨張展開が完了した状態を指す。
【0013】
バッグ部100は、可撓性を有するシート材により形成された周壁105を有する。可撓性を有するシート材は、例えばポリアミド製の織布等である。図4は、一対の拘束面シート120L,120Rの平面図である。図5は、一対の側面シート110L,110Rの平面図である。本実施形態の周壁105は、複数のシート、すなわち一対の拘束面シート120L,120Rと、一対の側面シート110L,110Rと、により構成されている。図4に示すように、左拘束面シート120Lと右拘束面シート120Rとは、互いに左右対称の形状を有する。一対の拘束面シート120L,120Rは、周壁105のうちで、展開完了状態において助手席STの乗員と対向する部分である。左拘束面シート120Lと右拘束面シート120Rとは、互いに図4の中央部分で縫製部Aおよび縫製部B同士を重ね合わせるようにして縫製される。図5に示すように、左側面シート110Lと右側面シート110Rとは、互いに左右対称の形状を有する。一対の側面シート110L,110Rは、バッグ部100の展開完了状態において、左右方向に位置する。左側面シート110Lと右側面シート110Rとは、互いのインフレータ挿入孔72L,72Rを重ね合わせるようにして縫製される。また、図4および図5に示すように、左拘束面シート120Lの縫製部Cと左側面シート110Lの縫製部Cとを重ね合わせるようにし、右拘束面シート120Rの縫製部Dと右側面シート110Rの縫製部Dと重ね合わせるようにして、互いに縫製される。図5に示すように、一対の側面シート110L,110Rのそれぞれは、インフレータ挿入孔72L,72Rと、排出口60L,60Rと、テザー取付部30L,30Rと、を備える。
【0014】
インフレータ挿入孔72L,72Rは、インフレータ25の排気口が挿入される開口である。インフレータ挿入孔72L,72Rの周囲には、複数の取付孔73L,73Rが設けられている。複数の取付孔73L,73Rにはボルト等の固定部材が挿入され、リテーナと、バッグ部100と、インフレータ25とが、エアバッグケース20に固定される。
【0015】
排出口60L,60Rは、一対の側面シート110L,110Rのそれぞれの中央付近に設けられた開口である。膨張展開したバッグ部100内のガスは、排出口60L,60Rを介してバッグ部100の外部に排出される。余剰のガスが排出口60L,60Rを介して排出されることで、バッグ部100は、適切な圧力で乗員を受け止めることができる。
【0016】
テザー取付部30L,30Rには、後述のテザー50L,50Rが縫製により接続される。テザー取付部30L,30Rには、長孔であるホール40L,40Rが形成されている。図1に示すように、ホール40L,40Rは、バッグ部100の展開完了状態において、開口21の近傍に位置するように形成されている。ホール40L,40Rのかかる位置関係については、後述する。テザー取付部30L,30Rは、補強のために内側からシート部材を貼り付けた二重の構造となっている。図1図3に示すように、テザー50L,50Rは、細長いシート状の外観形状を有し、バッグ部100内に設置される。テザー50L,50Rは、周壁105と同様に、可撓性を有するシート材により形成される。テザー50L,50Rの一端は、バッグ部100の展開完了状態において、バッグ部100内における上方側に位置するように、周壁105の内側面に接続される。「上方側」とは、バッグ部100を鉛直方向に二分割したうちで、上側に位置する部分を指す。本実施形態では、50L,50Rは、バッグ部100の最上部に接続されている。本実施形態における「最上部」とは、鉛直方向において最も上の部分だけでなく、-3%程度の誤差も含む広い意味を有する。テザー50L,50Rの他端は、ホール40L,40Rの周囲に接続される。
【0017】
本実施形態のホール40L,40Rは、実行状態においてバッグ部100内からガスを排出する。また、展開完了状態において、テザー50L,50Rがバッグ部100とテザー50L,50Rとの接続部分、すなわちテザー取付部30L,30Rをバッグ部100内部に引き込むことで、ホール40L,40Rは閉じられる。図6は、実行状態におけるホール40Lの説明図である。図7は、展開完了状態におけるホール40Lの説明図である。図6および図7では、左側面シート110Lにおけるホール40Lの周囲のみを示し、他の部分は省略している。図6に示すように、ホール40Lの周囲には、バッグ部100の外側に突出する筒状の筒部45Lが形成されている。筒部45Lは、周壁105と一体に形成されていてもよいし、シート部材により形成され周壁105に縫製されてもよい。筒部45Lの内周面には、テザー50Lの他端が接続されている。図1図3に示すように、テザー50Lの一端は、展開完了状態においてバッグ部100内の最上部に位置するように接続されているため、テザー50Lは、バッグ部100が膨張展開中である実行状態においては、撓んだ弛緩状態である。かかる状態では、ホール40Lはバッグ部100の内外を連通させており、バッグ部100内のガスを外部に排出できる。
【0018】
他方、展開完了状態において、テザー50Lは、膨張展開したバッグ部100の内側面に引っ張られることにより緊張状態となる。このとき、図7に示すように、筒部45Lにおけるテザー50Lの接続部は、筒部45Lと共に、バッグ部100内部に引き込まれる。このようにして、ホール40Lは閉じられる。なお、ここでの「ホール40Lが閉じられる」とは、ホール40Lが完全に閉塞される状態だけでなく、僅かにガスが流通できる程度の小孔が存在する状態も含む広い意味を有する。
【0019】
上述のように、ホール40Lは、実行状態においてはバッグ部100内からガスを排出することで、バッグ部100の内圧を迅速に下げることができる。また、ホール40Lは、展開完了状態において閉じられることで、バッグ部100の内圧が過剰に低下することを抑制できる。なお、図6および図7では左側面シート110Lについて説明したが、右側面シート110Rも同様の構造を有し、同様の効果を奏する。
【0020】
また、ホール40L,40Rは、展開完了状態において、開口21の近傍に位置するように形成されている。このため、ホール40L,40Rが開口21から離れた位置にある構成と比較して、インフレータ25から供給されたガスがより早い段階でバッグ部100の外部に排出される。したがって、実行状態におけるバッグ部100の内圧を迅速に下げることができる。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のホール40L,40Rは、車幅方向に見て、バッグ部100を車両の前後方向に二分割したうちで、車両の前方側に位置するように周壁105に形成されている。図1の軸線C1は、車幅方向に見たバッグ部100の中心線である。なお、ここでの中心は、車幅方向に見たバッグ部100の車両前後方向と平行な方向の長さのうちで、開口21の中心を通る長さの中心である。かかる位置にホール40L,40Rが形成されていることで、ホール40L,40Rが車幅方向に見てバッグ部100を車両の前後方向に二分割したうちで車両の後方側に形成されている構成と比較して、開口21により近い位置にホール40L,40Rが形成される。これにより、インフレータ25から供給されたガスをより早い段階でバッグ部100の外部に排出することができ、実行状態におけるバッグ部100の内圧を迅速に下げることができる。
【0022】
また、図1に示すように、本実施形態のホール40L,40Rは、展開完了状態において、開口21の上端よりも下方に位置するように、周壁105に形成されている。かかる位置にホール40L,40Rが形成されていることで、ホール40L,40Rが開口21の上端よりも上方に位置する構成と比較して、開口21により近い位置にホール40L,40Rが形成される。これにより、インフレータ25から供給されたガスをより早い段階でバッグ部100の外部に排出することができ、実行状態におけるバッグ部100の内圧を迅速に下げることができる。なお、ホール40L,40Rは、その全体が開口21の上端よりも下方に位置する場合だけでなく、少なくともその一部が開口21の上端より下方に位置することでも、同様の効果を奏する。
【0023】
以上説明した第1実施形態のエアバッグ装置1によれば、バッグ部100の周壁105には、展開完了状態において開口21の近傍に位置するホール40L,40Rが形成されているので、ホール40L,40Rが開口21から離れた位置に形成されている構成と比較して、膨張展開の実行状態においてより早い段階でガスをバッグ部100の外部に排出でき、迅速にバッグ部100の内圧を下げることができる。
【0024】
また、ホール40L,40Rは、展開完了状態において、車両の車幅方向に見て、バッグ部100を車両の前後方向に二分割したうちで、車両の前方側に位置するように、周壁105に設けられていることにより、開口21の近傍に位置するので、ホール40L,40Rが車幅方向に見てバッグ部100を車両の前後方向に二分割したうちで車両の後方側に形成されている構成と比較して、開口21により近い位置にてバッグ部100内のガスを排出できる。これにより、インフレータ25から供給されたガスをより早い段階でバッグ部100の外部に排出でき、実行状態におけるバッグ部100の内圧を迅速に下げることができる。
【0025】
また、ホール40L,40Rは、展開完了状態において、開口21の上端よりも下方に少なくとも一部が位置するように、周壁105に形成されていることにより、開口21の近傍に位置するので、ホール40L,40Rが開口21の上端よりも上方に位置する構成と比較して、開口21により近い位置にホール40L,40Rを形成できる。これにより、インフレータ25から供給されたガスをより早い段階でバッグ部100の外部に排出でき、実行状態におけるバッグ部100の内圧を迅速に下げることができる。
【0026】
また、テザー50L,50Rは、展開完了状態において、バッグ部100におけるテザー50L,50Rの接続部分の周囲をバッグ部100内に引き込むことで、ホール40L,40Rを閉じるので、実行状態においてはホール40L,40Rからガスが排出され、展開完了状態においてはガスの排出が抑制される。これにより、実行状態におけるバッグ部100の内圧を迅速に下げるとともに、展開完了状態におけるバッグ部100の内圧が過剰に低下することを抑制できる。
【0027】
また、テザー50L,50Rの一端は、展開完了状態においてバッグ部100内における最上部に位置するように内側面に接続されているので、最上部以外のバッグ部100内にテザー50L,50Rの一端が接続されている構成と比較して、テザー50L,50Rが弛緩状態から緊張状態となるまでの時間、すなわちホール40L,40Rが閉じられるまでの時間をより長くできる。これにより、実行状態におけるホール40L,40Rがガスを排出する時間をより長くすることができ、実行状態におけるバッグ部100の内圧をより下げることができる。一般に、バッグ部100は、膨張展開の際に、下方側よりも上方側により大きく膨らむ。これは、下方側の近傍には乗員の膝があるために大きく膨らませないのに対して、乗員の膝から上方側にはバッグ部100にて受け止めるべき広い領域が存在するためである。このため、バッグ部100の膨張展開の完了タイミングは下方側よりも上方側が遅い。このため、上述のようにテザー50L,50Rの一端がバッグ部内の最上部に位置するように周壁105の内側面に接続されることにより、ホール40L,40Rが閉じられるまでの時間を長くできる。
【0028】
また、ホール40L,40Rは、長孔なので、丸孔や角孔の構成と比較して、開口面積を小さくできる。このため、テザー50L,50Rによりホール40L,40Rが閉じられる構成においては、より迅速にホール40L,40Rを閉じることができる。
【0029】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、ホール40L,40Rは、展開完了状態において、車幅方向に見て、開口21からホール40L,40Rまでの前後方向に沿った距離が、バッグ部100の前後方向の寸法の1/2以下の距離となるように、周壁105に形成されていることにより、開口21の近傍に位置してもよい。かかる構成によれば、ホール40L,40Rがバッグ部100の前後方向の寸法の1/2超の距離となるように周壁105に形成されている構成と比較して、ホール40L,40Rが開口21のより近くに形成されているので、インフレータ25から供給されたガスが比較的早い段階でバッグ部100の外部に排出されることで、実行状態におけるバッグ部100の内圧を迅速に下げることができる。
【0030】
(B2)上記実施形態において、テザー50L,50Rの一端は、展開完了状態において、バッグ部100内における最上部に位置するように、周壁105の内側面に接続されていたが、本開示はこれに制限されない。テザー50L,50Rの一端は、展開完了状態において、バッグ部100内における上方の任意の位置に接続されていてもよい。かかる構成によっても、テザー50L,50Rが弛緩状態から緊張状態となるまでの時間、すなわちホール40L,40Rが閉じられるまでの時間を長くできる。これにより、実行状態におけるホール40L,40Rがガスを排出する時間を長くすることができ、実行状態におけるバッグ部100の内圧をより下げることができる。
【0031】
(B3)上記実施形態において、エアバッグ装置1は車両の助手席STに用いられていたが、本開示はこれに制限されない。エアバッグ装置1は、車両における任意の乗員席に配置されてもよい。エアバッグ装置1は、例えばステアリング装置を備えない自動運転車両の乗員席に用いられてもよい。
【0032】
(B4)上記実施形態において、ホール40L,40Rは、展開完了状態においてテザー50L,50Rにより閉じられる構成であったが、テザー50L,50Rを備えず、ホール40L,40Rが展開完了状態において閉じられない構成であってもよい。かかる構成によっても、ガスが実行状態においてホール40L,40Rを介してバッグ部100外部に排出されるので、バッグ部100の内圧を迅速に下げることができる。なお、かかる構成においては、排出口60L,60Rを省略してもよい。
【0033】
(B5)上記実施形態において、ホール40L,40Rは長孔であったが、任意の平面形状を有する孔であってもよい。
【0034】
(B6)上記実施形態において、テザー50L,50Rの他端は、筒部45Lの内周面に接続されていたが、本開示はこれに制限されない。テザー50L,50Rの他端は、バッグ部100の外表面または内表面におけるホール40L,40Rの周囲に接続されていてもよい。かかる構成によっても、展開完了時にテザー50L,50Rが緊張状態となることで、ホール40L,40Rを閉じることができる。また、バッグ部100は、筒部45Lを備えない構成であってもよい。
【0035】
(B7)上記実施形態において、バッグ部100の内部における左右方向または前後方向の両端に、テザーを設けてもよい。かかる構成によれば、実行状態においてバッグ部100の左右方向または前後方向の膨張展開量が規制されるので、展開完了状態においてバッグ部100の位置を、乗員を保護するために適切な位置に制御できる。
【0036】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…エアバッグ装置、10…インストルメントパネル、20…エアバッグケース、21…開口、22…底部、25…インフレータ、30L,30R…テザー取付部、40L,40R…ホール、45L…筒部、50L,50R…テザー、60L,60R…排出口、72L,72R…インフレータ挿入孔、73L,73R…取付孔、100…バッグ部、105…周壁、110L…左側面シート、110R…右側面シート、120L…左拘束面シート、120R…右拘束面シート、A,B,C,D…縫製部、C1…軸線、FG…フロントガラス、ST…助手席
図1
図2
図3
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図5
図6
図7