(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000740
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】部材設置装置および部材設置方法
(51)【国際特許分類】
E01D 21/00 20060101AFI20231226BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
E01D21/00 A
E01D22/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099612
(22)【出願日】2022-06-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 説明場所 :NEXCO西日本(西日本高速道路株式会社)関西支社 新名神京都事務所 1F会議室(〒607-8034京都府京都市山科区四ノ宮泓37) 説明日:2022年2月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(72)【発明者】
【氏名】永尾 和大
(72)【発明者】
【氏名】中村 信也
(72)【発明者】
【氏名】伊佐 和人
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA07
2D059CC05
2D059DD06
2D059DD13
(57)【要約】
【課題】橋梁の上部構造同士の間に橋軸方向に空間が連なっていて、この空間へ部材の設置を行う場合に、施工の実施が当該空間の幅の影響を受けにくい部材設置装置および部材設置方法を提供する。
【解決手段】橋梁100の上部構造102、104の間の空間60に部材を設置するための部材設置装置であって、上方から見て空間60を間に挟むように橋梁100の上部構造102、104に配置された2つの柱部12と、空間60の上方を跨ぐように配置されていて2つの柱部12に支持された受梁14と、受梁14に取り付けられていて、設置する前記部材を昇降可能に吊り支持する吊り部16と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の上部構造同士の間の空間に部材を設置するための部材設置装置であって、
上方から見て前記空間を間に挟むように前記橋梁の前記上部構造に配置された2つの柱部と、
前記空間の上方を跨ぐように配置されていて前記2つの柱部に支持された受梁と、
前記受梁に取り付けられていて、設置する前記部材を昇降可能に吊り支持する吊り部と、
を備えることを特徴とする部材設置装置。
【請求項2】
請求項1に記載の部材設置装置を、上方から見て前記空間が延びる方向に複数備えてなることを特徴とする部材設置装置。
【請求項3】
前記複数の前記部材設置装置のうち、上方から見て前記空間が延びる方向に隣り合う前記部材設置装置の前記受梁同士が、長尺部材によって連結されていることを特徴とする請求項2に記載の部材設置装置。
【請求項4】
前記受梁は、上フランジ、下フランジおよび前記上フランジと前記下フランジとの間を連結する少なくとも1つのウェブを有する鋼製の梁であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の部材設置装置。
【請求項5】
前記受梁は、足場を吊り下げて支持できることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の部材設置装置。
【請求項6】
前記吊り部は、センターホールジャッキ及びゲビンデスターブを有してなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の部材設置装置。
【請求項7】
前記吊り部は、センターホールジャッキ及びゲビンデスターブを有してなり、前記ゲビンデスターブは2つの前記ウェブの間を挿通していることを特徴とする請求項4に記載の部材設置装置。
【請求項8】
前記吊り部は、ワイヤー及びワイヤークランプ装置を有してなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の部材設置装置。
【請求項9】
前記橋梁は、上り線と下り線を有しており、前記空間は、上り線の上部構造と下り線の上部構造との間の空間であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の部材設置装置。
【請求項10】
請求項1に記載の部材設置装置を用いて部材を設置する部材設置方法であって、
請求項1に記載の部材設置装置を橋梁の上部構造同士の間の空間を跨ぐように設置する設置工程と、
前記設置工程で設置した前記部材設置装置に前記部材を吊って支持させる部材吊り支持工程と、
前記部材吊り支持工程で吊って支持させた前記部材を前記橋梁に連結する部材連結工程と、
を有することを特徴とする部材設置方法。
【請求項11】
前記設置工程を複数回行って、請求項1に記載の部材設置装置を、上方から見て前記空間が延びる方向に複数設置することを特徴とする請求項10に記載の部材設置方法。
【請求項12】
上方から見て前記空間が延びる方向に複数設置した前記部材設置装置のうち、上方から見て前記空間が延びる方向に隣り合う前記部材設置装置の受梁同士を、長尺部材によって連結する連結工程を有することを特徴とする請求項11に記載の部材設置方法。
【請求項13】
前記部材吊り支持工程の前に、前記設置工程で設置した前記部材設置装置に足場を吊って支持させる足場吊り支持工程を有することを特徴とする請求項10~12のいずれかに記載の部材設置方法。
【請求項14】
前記足場吊り支持工程で吊り支持した前記足場を用いて、前記橋梁の上部構造の一部を撤去する撤去工程を有することを特徴とする請求項13に記載の部材設置方法。
【請求項15】
前記橋梁は、上り線と下り線を有しており、前記空間は、上り線の上部構造と下り線の上部構造との間の空間であることを特徴とする請求項10~12のいずれかに記載の部材設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材設置装置および部材設置方法に関し、特には、橋梁の上部構造を拡幅する際の拡幅部材の設置に好適に使用可能な部材設置装置および部材設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路を一部供用しながら橋梁を拡幅する技術として、特許文献1に記載の技術がある。この技術では、
図19に示されるように、既設鋼橋400の拡幅に用いる増設主桁310の吊り上げおよび吊り下げを行って増設主桁310を所定の位置に配置する吊りフレーム300を用いるが、この吊りフレーム300の第1の脚部302(既設鋼橋400から遠い側の脚部)は、既設鋼橋400から拡幅工事を行う側に突出するように既設鋼橋400の既設桁402に取り付けられた受け横梁304に支持されている。
【0003】
このため、例えば、上り線の橋梁と下り線の橋梁の上部構造同士の間に橋軸方向に空間が連なっていて、上り線の橋梁と下り線の橋梁の両方において、この空間への拡幅を行う場合、空間の幅によっては、吊りフレーム300を上下線同時に設置することが困難な場合があり、上下線同時の施工が困難となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、橋梁の上部構造同士の間に橋軸方向に空間が連なっていて、この空間へ部材の設置を行う場合に、施工の実施が当該空間の幅の影響を受けにくい部材設置装置および部材設置方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記課題を解決する発明であり、以下のような部材設置装置および部材設置方法である。
【0007】
即ち、本発明に係る部材設置装置の第1の態様は、橋梁の上部構造同士の間の空間に部材を設置するための部材設置装置であって、上方から見て前記空間を間に挟むように前記橋梁の前記上部構造に配置された2つの柱部と、前記空間の上方を跨ぐように配置されていて前記2つの柱部に支持された受梁と、前記受梁に取り付けられていて、設置する前記部材を昇降可能に吊り支持する吊り部と、を備えることを特徴とする部材設置装置である。
【0008】
本発明に係る部材設置装置の第2の態様は、前記第1の態様の部材設置装置を、上方から見て前記空間が延びる方向に複数備えてなるように構成されている態様である。
【0009】
本発明に係る部材設置装置の第3の態様は、前記第2の態様において、前記複数の前記部材設置装置のうち、上方から見て前記空間が延びる方向に隣り合う前記部材設置装置の前記受梁同士が、長尺部材によって連結されている、ように構成されている態様である。
【0010】
ここで、上方から見て前記空間が延びる方向に隣り合う前記部材設置装置の前記受梁同士を連結する「長尺部材」は、1部材で構成されているものだけでなく、複数の部材を連結することによって長尺部材としたものも含む。本願の他の箇所の記載においても同様である。
【0011】
本発明に係る部材設置装置の第4の態様は、前記第1~第3の態様のいずれかの態様において、前記受梁が、上フランジ、下フランジおよび前記上フランジと前記下フランジとの間を連結する少なくとも1つのウェブを有する鋼製の梁であるように構成されている態様である。
【0012】
本発明に係る部材設置装置の第5の態様は、前記第1~第4の態様のいずれかの態様において、前記受梁が、足場を吊り下げて支持できるように構成されている態様である。
【0013】
本発明に係る部材設置装置の第6の態様は、前記第1~第5の態様のいずれかの態様において、前記吊り部が、センターホールジャッキ及びゲビンデスターブを有してなるように構成されている態様である。
【0014】
本発明に係る部材設置装置の第7の態様は、前記第4の態様において、前記吊り部が、センターホールジャッキ及びゲビンデスターブを有してなり、前記ゲビンデスターブが2つの前記ウェブの間を挿通している、ように構成されている態様である。
【0015】
本発明に係る部材設置装置の第8の態様は、前記第1~第5の態様のいずれかの態様において、前記吊り部が、ワイヤー及びワイヤークランプ装置を有してなるように構成されている態様である。
【0016】
本発明に係る部材設置装置の第9の態様は、前記第1~第8の態様のいずれかの態様において、前記橋梁は、上り線と下り線を有しており、前記空間は、上り線の上部構造と下り線の上部構造との間の空間である、ように構成されている態様である。
【0017】
本発明に係る部材設置方法の第1の態様は、前記第1の態様の部材設置装置を用いて部材を設置する部材設置方法であって、前記第1の態様の部材設置装置を橋梁の上部構造同士の間の空間を跨ぐように設置する設置工程と、前記設置工程で設置した前記部材設置装置に前記部材を吊って支持させる部材吊り支持工程と、前記部材吊り支持工程で吊って支持させた前記部材を前記橋梁に連結する部材連結工程と、を有することを特徴とする部材設置方法である。
【0018】
本発明に係る部材設置方法の第2の態様は、部材設置方法の前記第1の態様において、前記設置工程を複数回行って、前記第1の態様の部材設置装置を、上方から見て前記空間が延びる方向に複数設置する、ように構成されている部材設置方法である。
【0019】
本発明に係る部材設置方法の第3の態様は、部材設置方法の前記第2の態様において、上方から見て前記空間が延びる方向に複数設置した前記部材設置装置のうち、上方から見て前記空間が延びる方向に隣り合う前記部材設置装置の受梁同士を、長尺部材によって連結する連結工程を有する、ように構成されている部材設置方法である。
【0020】
本発明に係る部材設置方法の第4の態様は、部材設置方法の前記第1~第3の態様のいずれかの態様において、前記部材吊り支持工程の前に、前記設置工程で設置した前記部材設置装置に足場を吊って支持させる足場吊り支持工程を有する、ように構成されている部材設置方法である。
【0021】
本発明に係る部材設置方法の第5の態様は、部材設置方法の前記第4の態様において、前記足場吊り支持工程で吊り支持した前記足場を用いて、前記橋梁の上部構造の一部を撤去する撤去工程を有する、ように構成されている部材設置方法である。
【0022】
本発明に係る部材設置方法の第6の態様は、部材設置方法の前記第1~第5の態様のいずれかの態様において、前記橋梁は、上り線と下り線を有しており、前記空間は、上り線の上部構造と下り線の上部構造との間の空間である、ように構成されている部材設置方法である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、橋梁の上部構造同士の間に橋軸方向に空間が連なっていて、この空間へ部材の設置を行う場合に、施工の実施が当該空間の幅の影響を受けにくい部材設置装置および部材設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10で主桁ブロック70を吊っている状態を模式的に示す斜視図
【
図2】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10の受梁14の鉛直断面図
【
図3】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10と主桁ブロック70との連結部を拡大して示す斜視図
【
図4】
図3における矢視IV方向から見た拡大正面図
【
図5】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を上方から見て空間60の延びる方向(橋梁100の橋軸方向)に複数配置してなる、本発明の第2実施形態に係る部材設置装置20を上方から見た状態を模式的に示す平面図
【
図7】本発明の第2実施形態に係る部材設置装置20を橋梁100の橋軸直角方向から見た状態を模式的に示す側面図
【
図8】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS1)を模式的示す模式図
【
図9】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS2)を模式的示す模式図
【
図10】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS3)を模式的示す模式図
【
図11】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS4)を模式的示す模式図
【
図12】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS5)を模式的示す模式図
【
図13】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS6)を模式的示す模式図
【
図14】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS7)を模式的示す模式図
【
図15】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS8)を模式的示す模式図
【
図16】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS9)を模式的示す模式図
【
図17】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS10)を模式的示す模式図
【
図18】本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いて拡幅工事(関連する工事も含む)を行う手順の1つのステップ(ステップS11)を模式的示す模式図
【
図19】特許文献1に記載の吊りフレーム300の概要を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態の説明においては、上り線の橋梁の上部構造と下り線の橋梁の上部構造との間の空間に新設の鋼桁を設置する場合を取り上げて説明するが、この場合のみに本発明の適用が限定されるわけではない。例えば、本発明はコンクリート桁の設置にも適用可能であり、また、床版等の桁以外の上部構造部材の設置にも適用可能である。また、上部構造部材の設置だけでなく、上部構造部材の撤去にも適用可能である。
【0026】
(1)第1実施形態および第2実施形態
(1-1)構成
図1は本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10で主桁ブロック70を吊っている状態を模式的に示す斜視図であり、
図2は、本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10の受梁14の鉛直断面図であり、
図3は、本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10と主桁ブロック70との連結部を拡大して示す斜視図であり、
図4は、
図3における矢視IV方向から見た拡大正面図である。
図5は本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を上方から見て空間60の延びる方向(橋梁100の橋軸方向)に複数配置してなる、本発明の第2実施形態に係る部材設置装置20を上方から見た状態を模式的に示す平面図であり、
図6は
図5のVI-VI線断面図であり、
図7は本発明の第2実施形態に係る部材設置装置20を橋梁100の橋軸直角方向から見た状態を模式的に示す側面図である。なお、
図1では、図示の都合上、吊り部16の連結具16Cの記載は省略しており、
図5では、図示の都合上、橋脚P2近傍の部位の記載は省略している。また、
図2では、吊り部16およびその構成部材(センターホールジャッキ16Aおよびゲビンデスターブ16B)を2点鎖線で記載しており、
図3では、図示の都合上、本来隠れ線(破線)で描く部位も一部の部位について実線で記載している。また、
図6において、符号80を付した破線の部位は増設主桁であり、符号82を付した破線の部位は増設横桁であり、符号84を付した破線の部位は拡幅床版である。
【0027】
本発明の第2実施形態に係る部材設置装置20は、本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を空間60の延びる方向(橋梁100の橋軸方向)に複数配置してなる部材設置装置であるが、通常は、第1実施形態に係る部材設置装置10は1つだけで単独で用いることはなく、
図5に示すように、上方から見て部材を設置する空間60が延びる方向に複数配置して第2実施形態に係る部材設置装置20として使用することが通常である。
【0028】
また、
図5に示すように、本発明の実施形態に係る部材設置装置10、20を用いて、空間60への拡幅工事を行う場合、空間60側の所定の領域は常設作業帯102X、104Xとして、工事専用の領域とする必要があり、通常は2車線程度必要となる。本発明の実施形態に係る部材設置装置10、20を用いて空間60への拡幅工事を行う対象の橋梁100の上下線の上部構造102、104はどちらも3車線であるので、部材設置装置10、20を用いた工事期間中は、上下線とも、空間60側の2車線は常設作業帯102X、104Xとして工事専用の領域として確保し、残りの1車線を常時走行車線102Y、104Yとして供用することになる。
【0029】
本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10は、2つの柱部12と、受梁14と、吊り部16と、を有してなり、橋梁100の上部構造102、104の間の空間60の上方を受梁14が跨ぐように配置されており、上部構造102、104を拡幅するための部材(主桁ブロック70等)を吊って空間60に設置することができる。部材設置装置10は、受梁14が空間60を跨ぐように配置するので、部材設置装置10を用いた施工の実施に際して、空間60の幅員方向(橋軸直角方向)の幅の影響を受けにくい。また、部材設置装置10および部材設置装置10を空間60の延びる方向(橋梁100の橋軸方向)に複数配置してなる部材設置装置20は、拡幅に用いる部材(主桁ブロック70等)を吊って支持する際に用いることができるだけでなく、拡幅工事の前段階での撤去工事(上部構造102、104の一部である壁高欄や床版を撤去する工事)において、撤去する部材を撤去時に吊って支持することに用いることもできる。
【0030】
第1実施形態に係る部材設置装置10に2つ備えられた柱部12は、上部構造102、104の間の空間60を挟んで反対側に位置するように、上部構造102、104の上に配置されており、受梁14の両端部を下方から支持して、受梁14を所定の高さに下方から支持する部位である。柱部12は、
図1に示すように、円筒状の柱本体部12Aと、上フランジ12Bと、下フランジ12Cと、サンドル12Dと、を有してなり、柱本体部12Aの上端部に上フランジ12Bが溶接で取り付けられており、柱本体部12Aの下端部に下フランジ12Cが溶接で取り付けられている。下フランジ12Cの下面にはサンドル12Dがボルト(図示せず)で取り付けられており、下フランジ12Cはサンドル12Dによって補強されている。そして、2つの柱部12の下フランジ12Cおよびサンドル12Dは、あと施工アンカー(図示せず)で上部構造102、104に固定されている。2つの柱部12の上フランジ12Bには、上方に位置する受梁14の下フランジ14Cの両端部がボルトで取り付けられている。なお、柱本体部12Aの形状は円筒状に限定されるわけではなく、例えば角筒状の形状等にしてもよい。
【0031】
受梁14は、橋梁100の上部構造102、104の間の空間60の上方を跨ぐように、橋梁100の橋軸直角方向に配置されており、両端部が柱部12によって下方から支持されている。受梁14の上フランジ14Bの上面には吊り部16が設けられており、受梁14は、吊り部16が吊る部材の荷重を支持して、両端部に位置する柱部12にその荷重を伝達する部材である。
【0032】
また、
図6に示すように、受梁14に足場30を吊る吊り具30Aを連結することもでき、受梁14は足場30を吊る際に用いることもできる。したがって、受梁14は、部材の設置および撤去に用いることができるだけでなく、工事に用いる足場30を吊る役割を担うこともでき、部材設置装置10、20を用いて施工を行うことにより、下方にベントを設けることを不要とすることができる。したがって、施工箇所の下方が海や河川の場合において、部材設置装置10、20は特に好適に使用することができる。なお、
図6において、符号30Bおよび符号30Cも足場30を吊る吊り具を示しているが、吊り具30Bは上部構造102、104の既設主桁に連結されており、吊り具30Cは上部構造102、104の既設横桁に連結されている。
【0033】
受梁14は、
図2に示すように、2つのウェブ14Aと、上フランジ14Bと、下フランジ14Cと、を有してなり、2つのウェブ14Aの上端部に上フランジ14Bが溶接で取り付けられ、2つのウェブ14Aの下端部に下フランジ14Cが溶接で取り付けられており、受梁14は、2つのウェブを有するツーウェブタイプの鋼製の梁である。2つのウェブ14Aは所定の間隔を空けて配置されており、2つのウェブ14Aの間には空間14A1が設けられている。受梁14の下フランジ14Cは、その長手方向の両端部が柱部12の上フランジ12Bにボルトで取り付けられている。
【0034】
受梁14の上フランジ14Bの上面には、吊り部16のセンターホールジャッキ16Aが設けられており、センターホールジャッキ16Aに把持される吊り部16のゲビンデスターブ16Bは、受梁14の上フランジ14Bおよび下フランジ14Cの貫通孔14B1、14C1、ならびに受梁14の2つのウェブ14Aの間の空間14A1を鉛直方向に挿通している。部材設置装置10では、吊り部16のゲビンデスターブ16Bが受梁14を鉛直方向に挿通できるようにするために、受梁14を、2つのウェブを有するツーウェブタイプの梁にしているが、2つのウェブを有するツーウェブタイプの梁とすることにより、受梁14の機械的な特性も向上している。
【0035】
また、受梁14の上フランジ14Bの上面には、吊り部16と干渉しないような位置に橋梁100の橋軸方向に通し桁18(
図7参照)が連結されており、各部材設置装置10を橋梁100の橋軸方向に連結している。通し桁18は、具体的には例えば断面H形の長尺鋼材であるが、必ずしも1部材で構成されている必要はなく、複数の部材を長手方向に連結して1部材としたものであってもよい。
【0036】
本実施形態では、通し桁18は、
図6に示すように、受梁14の上フランジ14Bの上面に2本設けられている。通し桁18は、通常は、足場30を吊る吊り具30Aの位置に対応するような位置に設置する。通し桁18を設けることにより、各部材設置装置10が橋梁100の橋軸方向に横倒れしにくくなる。通し桁18を設けなくても安全性の確保ができる場合には、通し桁18は必ずしも設けなくてもよく、また、複数の部材設置装置10のうちの隣り合う一部の部材設置装置10同士を連結するだけでもよいが、通し桁18を設けることにより安全性が向上するので、通し桁18は全ての部材設置装置10を連結するように設けた方が好ましい。通し桁18は、部材設置装置10を橋梁100の上部構造102、104の上に複数設ける場合に使用する部材であり、部材設置装置10を複数有してなる第2実施形態に係る部材設置装置20で用いる部材である。通し桁18には、足場30を吊る吊り具30D(
図7参照)を連結することもでき、通し桁18は足場30を吊る際に用いることもできる。なお、
図5では、図示の都合上、通し桁18の記載は省略している。
【0037】
吊り部16は、設置する部材および撤去する部材を上下方向に移動可能に吊る役割を担う部位である。吊り部16は、センターホールジャッキ16Aと、ゲビンデスターブ16Bと、を有しており、センターホールジャッキ16Aは受梁14の上フランジ14Bの上面に設けられている。
【0038】
吊り部16のゲビンデスターブ16Bは、受梁14の上フランジ14Bおよび下フランジ14Cの貫通孔14B1、14C1、ならびに受梁14の2つのウェブ14Aの間の空間14A1を鉛直方向に挿通していて、鉛直方向に移動可能なようにセンターホールジャッキ16Aにより把持されている。したがって、吊り部16が吊り支持する対象物の上下方向の位置の調整を行うことができるようになっている。ゲビンデスターブ16Bの下端部には、
図3および
図4に示すように、連結具16Cが取り付けられている。連結具16Cは、対向する2つの側壁鋼板16C1と、上段鋼板16C2と、中段鋼板16C3と、対向する2つの下段鋼板16C4と、連結ボルト16C5と、脱落防止ナット16C6と、定着ナット16C7と、を有してなる。
【0039】
側壁鋼板16C1は、
図3および
図4に示すように、長手方向が鉛直方向になるように配置された細長い鋼板であり、所定の間隔を空けて対向して2つ平行に設けられている。2つの側壁鋼板16C1の下部には、連結ボルト16C5が挿通する貫通孔16C1aがそれぞれ対向するように設けられている。
図3および
図4に示すように、対向する2つの側壁鋼板16C1の上端には、上段鋼板16C2が、面内方向が水平方向となるように溶接されており、上段鋼板16C2の面内方向の中央部にはゲビンデスターブ16Bが挿通する貫通孔16C2aが設けられている。対向する2つの側壁鋼板16C1の高さ方向の中央部付近のやや上側には、中段鋼板16C3が、面内方向が水平方向となるように溶接されており、中段鋼板16C3の面内方向の中央部にはゲビンデスターブ16Bが挿通する貫通孔16C3aが設けられている。対向する2つの側壁鋼板16C1の両側端の高さ方向の中央部付近のやや下側には、下段鋼板16C4が対向するように溶接されている。
【0040】
ゲビンデスターブ16Bは、上段鋼板16C2の貫通孔16C2aおよび中段鋼板16C3の貫通孔16C3aを挿通しており、挿通したゲビンデスターブ16Bの下端部には定着ナット16C7が螺合されており、該定着ナット16C7を中段鋼板16C3の下面に定着させている。このような態様で、連結具16Cは、定着ナット16C7および中段鋼板16C3を介して、ゲビンデスターブ16Bによって吊り支持されている。
【0041】
主桁ブロック70の上フランジ70Aの上面には、吊り部16と連結するための連結用ピース72が溶接されて設けられている。連結用ピース72には、連結ボルト16C5が挿通する貫通孔72Aが設けられている。
【0042】
吊り部16で主桁ブロック70を吊る際には、連結用ピース72の貫通孔72Aと、2つの側壁鋼板16C1の下部に設けられた貫通孔16C1aが、一直線上に位置するように、主桁ブロック70および連結具16Cの位置の微調整を行う。そして、連結ボルト16C5を、2つの側壁鋼板16C1の下部に設けられた貫通孔16C1aおよび連結用ピース72の貫通孔72Aに挿通させて、挿通させた連結ボルト16C5の一端を脱落防止ナット16C6で締結する。脱落防止ナット16C6は、対象物を吊り部16が吊っているときに連結ボルト16C5が外れることを防止するためのものであるので、強く締め込む必要はない。
【0043】
以上記載したようにして、吊り部16のゲビンデスターブ16Bは、連結具16Cおよび連結用ピース72を介して主桁ブロック70に連結し、吊り部16は主桁ブロック70を吊ることができる。
【0044】
部材設置装置10の吊り部16は、前述したように、センターホールジャッキ16Aおよびゲビンデスターブ16Bを備えて構成されているが、吊り部16はこの構成に限定されるわけではなく、この構成に替えて、例えば、ワイヤークランプ装置およびワイヤーを備えた構成にしてもよい。
【0045】
(1-2)設置作業手順
本第1実施形態に係る部材設置装置10は、前述したように、2つの柱部12と、受梁14と、吊り部16と、を有してなる構成であり、受梁14の長さは、橋梁100の上部構造102、104の間の空間60の橋軸直角方向の幅によるが、受梁14の長さは、通常の場合15m程度以下で足りることが多い。したがって、通常の場合、輸送のために受梁14を長さ方向に分割する必要はなく、部材設置装置10を予め工場等で組み立てた状態で現場に搬入することができ、現場においては、予め工場等で組み立てた状態の部材設置装置10をクレーン車200で所定の場所に設置するだけでよく、設置作業に手間がかからない。
【0046】
ただし、柱部12と受梁14との連結はボルトで連結するだけでよく、柱部12と受梁14を連結する作業は大きな手間とはならないので、柱部12と受梁14とを分離した状態で現場に搬入し、現場において柱部12と受梁14とを連結する作業を行ってもよい。柱部12と受梁14とは分離した状態の方が、1台のトレーラーに多く積むことができるので、部材設置装置10を多数設置する場合には、柱部12と受梁14とを分離した状態で現場に搬入し、現場において柱部12と受梁14とを連結する作業を行った方がコスト的に有利になることも考えられる。予め工場等で組み立てた状態で部材設置装置10を現場に搬入するか、柱部12と受梁14とを分離した状態で現場に搬入するかについては、状況に応じて適宜に選択すればよい。
【0047】
(1-3)部材設置方法
本発明の第2実施形態に係る部材設置装置20を用いて、橋梁100の上部構造102、104の間の空間60に、2つの増設主桁80を設置する拡幅工事について、
図8~
図18を参照しつつ、拡幅工事の前段階での撤去工事(上部構造102、104の一部である拡幅側(空間60側)の壁高欄や床版を撤去する工事)および増設主桁80を設置した後の拡幅床版等の設置工事も含めて説明する。前述したように、本発明の第2実施形態に係る部材設置装置20は、本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を空間60の延びる方向(橋梁100の橋軸方向)に複数配置してなる部材設置装置であるので、本発明の第2実施形態に係る部材設置装置20を用いれば、本発明の第1実施形態に係る部材設置装置10を用いることになる。また、ここでの説明では、部材設置装置10の柱部12と受梁14は、分離した状態で現場に搬入するものとする。
【0048】
なお、
図8~
図18において、A図は、施工の一つの段階を模式的に示す橋軸直角方向から見た鉛直断面図(B図におけるA-A線断面図)であり、B図は、施工の一つの段階を模式的に示す橋軸方向から見た鉛直断面図(A図におけるB-B線断面図)である。また、
図8~
図18のA図において上部構造102の壁高欄は描いておらず、
図8~
図18のB図において橋脚P1、P2は描いていない。
図8~
図18において、符号102Aは上部構造102の既設主桁を示し、符号102Bは上部構造102の既設床版を示し、符号104Aは上部構造104の既設主桁を示し、符号104Bは上部構造104の既設床版を示す。
【0049】
(ステップS1)
まず、増設主桁80を設置する橋梁100の上部構造102、104の間の空間60を間に挟むように2つの柱部12を上部構造102、104上の所定の位置に配置する。そして、配置した2つの柱部12の上に両端部が位置するように受梁14を配置して柱部12と連結する(受梁14には予め吊り部16が所定の位置に設けられている。)。その結果、
図8に示すように、受梁14が空間60の上方を跨ぐように、部材設置装置10が上部構造102、104の上に配置される。
【0050】
(ステップS2)
上方から見て空間60が延びる方向(橋梁100の橋軸方向)に、必要な数の部材設置装置10を上部構造102、104の所定の位置に配置するべく、前記ステップS1を繰り返し行って、
図9に示すように、複数の部材設置装置10を有してなる部材設置装置20を、上部構造102、104の上に設置する。
【0051】
(ステップS3)
前記ステップS2で複数設置された部材設置装置10の受梁14同士を橋梁100の橋軸方向に連結するように、
図10に示すように、受梁14の上面に通し桁18を設置する。通し桁18は、
図10に示すように、長手方向が橋梁100の橋軸方向となるように、かつ、足場30を吊る吊り具30Aの位置に対応するように、受梁14の上フランジ14Bの上面に2本設置する。通し桁18を設置することにより、各部材設置装置10が橋梁100の橋軸方向に横倒れすることが防止され、部材設置装置20の安全性が向上する。また、通し桁18は、足場30を吊るための吊り具を連結して、足場30を吊るための部材として活用することもできる。
図10~
図15のA図では、図示の都合上、通し桁18を2点鎖線で描いている。
【0052】
(ステップS4)
前記ステップS3で通し桁18を設置した後、
図11に示すように足場30を設置する。足場30は、受梁14に連結した吊り具30Aおよび既設主桁102A、104Aに連結した吊り具30Bを用いて吊り支持する。
【0053】
(ステップS5)
前記ステップS4で足場30を設置した後、
図12に示すように、橋梁100の上部構造102、104の拡幅側(空間60側)の既設床版および既設壁高欄を撤去する。撤去する既設床版および既設壁高欄を部材設置装置20で支持した状態で、撤去する既設床版および既設壁高欄を所定の位置で上部構造102、104から切り離すことで、安全に撤去作業を進めることができる。
【0054】
(ステップS6)
前記ステップS5で、橋梁100の上部構造102、104の拡幅側(空間60側)の既設床版および既設壁高欄を撤去した後、空間60に拡幅するために用いる主桁ブロック70を部材設置装置20で吊り支持する。主桁ブロック70は、
図13に示すように、橋脚P1側から架設を行う。最初に架設する主桁ブロック70は、クレーン車200(
図6および
図7参照)で吊り上げて一端を橋脚P1の支承に載置し、クレーン車200で吊り支持した状態で、最も橋脚P1に近い部材設置装置10の吊り部16の真下に位置する部位を当該部材設置装置10の吊り部16で吊り支持する。最も橋脚P1に近い部材設置装置10の吊り部16で最初の主桁ブロック70を吊り支持させたら、クレーン車200での吊り支持は解除して、クレーン車200を、次に架設する2番目の主桁ブロック70に対応する地点に移動させる。
【0055】
(ステップS7)
前記ステップS6で、最も橋脚P1に近い最初の主桁ブロック70を部材設置装置10で吊り支持させて、クレーン車200を、次に架設する2番目の主桁ブロック70に対応する地点に移動させたら、次に架設する2番目の主桁ブロック70をクレーン車200で所定の位置(最初に架設した主桁ブロック70に橋軸方向に隣接する位置)に吊り支持させ、その状態で当該2番目の主桁ブロック70の一端を、部材設置装置10ですでに吊り支持されている最初の主桁ブロック70の一端に添接板で連結するとともに、橋脚P1に2番目に近い部材設置装置10の吊り部16の真下に位置する2番目の主桁ブロック70の部位を当該部材設置装置10の吊り部16で吊り支持する。この時の状態を
図14に示す。橋脚P1に2番目に近い部材設置装置10の吊り部16で2番目の主桁ブロック70を吊り支持させたら、クレーン車200での吊り支持は解除して、クレーン車200を、次に架設する3番目の主桁ブロック70に対応する地点に移動させる。
【0056】
(ステップS8)
前記ステップS7を繰り返し行って、必要な数の主桁ブロック70を架設して、必要な数の主桁ブロック70を連結してなる増設主桁80の一端を、
図15に示すように、橋脚P2に到達させる。
図15は、増設主桁80の両端が、橋脚P1、P2上の支承(図示せず)に支持された状態を示しており、増設主桁80の架設が完了した状態を示している。
【0057】
(ステップS9)
前記ステップS8で増設主桁80の架設を完了させた後、
図16に示すように、部材設置装置20を撤去し、全ての部材設置装置10を撤去するとともに、架設を完了させた増設主桁80に吊り具30Eを取り付け、足場30を吊り具30Eで吊る。本ステップS9で全ての部材設置装置10を撤去すると、部材設置装置10に支持されていた吊り具30Aも全て撤去することになるため、架設を完了させた増設主桁80に吊り具30Eを新たに取り付けて、吊り具30Aに替えて吊り具30Eで足場30を吊るようにし、足場30を吊り具30Bと吊り具30Eで吊るようにする。
【0058】
(ステップS10)
前記ステップS9で全ての部材設置装置10を撤去した後、吊り具30Bと吊り具30Eで吊った足場30も活用して、
図17に示すように、拡幅床版84等の拡幅部材を空間60に設け、橋梁100の空間60側への拡幅を完了する。
【0059】
(ステップS11)
前記ステップS10で橋梁100の空間60側への拡幅を完了させた後、
図18に示すように、足場30を撤去して、橋梁100の拡幅工事を完了させる。
【0060】
(2)補足
以上説明した実施形態では、受梁14として、2つのウェブを有するツーウェブタイプの鋼製の梁を用いたが、ツーウェブタイプの鋼製の梁を用いることに替えて、1つのウェブを有する通常タイプの鋼製の梁を2つ並行させて用いるようにすることも可能であり、この場合、吊り部16のゲビンデスターブ16Bが、2つ並行する通常タイプの鋼製の梁のウェブの間の空間を鉛直方向に挿通するように構成する。
【0061】
また、以上説明した実施形態では、橋梁100の上下線の上部構造102、104の間の空間60に新設の増設主桁80を2つ設置する場合を取り上げており、
図6に示すように、橋梁100の上下線の上部構造102、104にそれぞれ1台ずつクレーン車200を配置して工事を行うことを前提に説明を行ったが、主桁ブロック70の重量が大きくない場合には、クレーン車200のアームを伸ばすことによって、上下線のどちらか一方のみにクレーン車200を配置させるだけでも実施することが可能な場合もある。
【0062】
また、
図6では、上方から見た空間60の幅(橋軸直角方向の幅)を一定にして描いているが、上方から見た空間60の幅(橋軸直角方向の幅)が一定でなくても本発明は適用可能である。上方から見た空間60の幅(橋軸直角方向の幅)が一定でない場合には、例えば、受梁14の長さを変えることで対応することも可能である。したがって、本発明は上方から見た空間60の幅(橋軸直角方向の幅)に応じてフレキシブルに対応可能であり、橋梁の上部構造同士の間に橋軸方向に空間が連なっていて、この空間60への部材の設置に本発明を用いる場合、当該施工の実施は空間60の幅の影響を受けにくい。ただし、受梁14を支持する柱部12間の距離が変わると、対象部材を吊り支持した際に受梁14に加わる曲げモーメントの大きさが変わるので、必要に応じて受梁14の断面形状(上フランジ14Bおよび下フランジ14Cの厚さ等)も変更する。
【0063】
また、本発明は、橋梁の上部構造の間にすでに存在する空間に上部構造を拡幅する場合のみに適用が限定されるわけではなく、例えば、橋梁の上部構造の一部を改修するために、既設主桁や既設床版の一部を撤去して生じた空間に、新設主桁や新設床版を設ける場合にも適用することができる。また、上方から縦桁を配置できるように既設床版を撤去した後、既設主桁の間に縦桁を配置する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10、20…部材設置装置
12…柱部
12A…柱本体部
12B…上フランジ
12C…下フランジ
12D…サンドル
14…受梁
14A…ウェブ
14A1…空間
14B…上フランジ
14C…下フランジ
14B1、14C1…貫通孔
16…吊り部
16A…センターホールジャッキ
16B…ゲビンデスターブ
16C…連結具
16C1…側壁鋼板
16C2…上段鋼板
16C3…中段鋼板
16C4…下段鋼板
16C5…連結ボルト
16C6…脱落防止ナット
16C7…定着ナット
16C1a、16C2a、16C3a…貫通孔
18…通し桁
30…足場
30A、30B、30C、30D、30E…吊り具
60…空間
70…主桁ブロック
70A…上フランジ
72…連結用ピース
72A…貫通孔
80…増設主桁
82…増設横桁
84…拡幅床版
100…橋梁
102、104…上部構造
102A、104A…既設主桁
102B、104B…既設床版
102X、104X…常設作業帯
102Y、104Y…常時走行車線
200…クレーン車
300…吊りフレーム
302…第1の脚部
304…受け横梁
310…増設主桁
400…既設鋼橋
402…既設桁