(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074011
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 40/10 20200101AFI20240523BHJP
B62J 35/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B62J40/10
B62J35/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185048
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】内澤 昭憲
(72)【発明者】
【氏名】奥野 彰太
(72)【発明者】
【氏名】白石 尚也
(57)【要約】
【課題】エアクリーナに液滴が進入することを低減しつつ運転者に対してエアクリーナの吸気音を効率よく聞かせることが可能な鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】自動二輪車100は、燃料タンク10、タンクカバー20およびエアクリーナ30を備える。燃料タンク10は、シート50の車両前方かつエンジン5の上方の位置に設けられる。タンクカバー20は、燃料タンク10を少なくとも上方から覆うように設けられている。エアクリーナ30は、吸気口39を有する。吸気口39は、燃料タンク10よりも下方かつ燃料タンク10の中心CPよりも車両後方の位置で上方に向かって開口している。タンクカバー20には、平面視で燃料タンク10に重なる1または複数の貫通孔THが形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両であって、
シートの車両前方かつエンジンの上方の位置に設けられる燃料タンクと、
前記燃料タンクを少なくとも上方から覆うように設けられたタンクカバーと、
吸気口を有するエアクリーナとを備え、
前記吸気口は、前記燃料タンクよりも下方かつ前記燃料タンクの中心よりも車両後方の位置で上方に向かって開口し、
前記タンクカバーには、平面視で前記燃料タンクに重なる1または複数の貫通孔が形成された、鞍乗型車両。
【請求項2】
平面視で前記燃料タンクを車両左右方向に3等分した場合に、前記1または複数の貫通孔は、平面視で前記燃料タンクの中央部分に重なる、請求項1記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
平面視で前記燃料タンクを車両左右方向に3等分した場合に、前記1または複数の貫通孔は、平面視で前記燃料タンクの左部分および右部分に重ならない、請求項2記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
平面視で前記燃料タンクを車両前後方向に3等分した場合に、前記1または複数の貫通孔は、平面視で前記燃料タンクの中央部分および後部分のいずれかに重なり、平面視で前記燃料タンクの前部分に重ならない、請求項1~3のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記1または複数の貫通孔は、前記タンクカバーにおいて分散配置された複数の貫通孔を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
前記吸気口は、
平面視で前記燃料タンクの後端部を含む一部分に重なる第1の開口領域と、
平面視で前記第1の開口領域に隣り合いかつ前記燃料タンクに重ならない第2の開口領域とを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
前記エアクリーナの前記吸気口よりも上方の位置で、前記エアクリーナの前記吸気口の少なくとも一部を覆う遮断部材をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項8】
前記遮断部材の右端部は、平面視で前記吸気口よりも右方に位置し、
前記遮断部材の左端部は、平面視で前記吸気口よりも左方に位置する、請求項7記載の鞍乗型車両。
【請求項9】
前記遮断部材は、前壁部、液受け部および後壁部を有し、
前記前壁部は、車両前後方向に平行な鉛直断面において前記液受け部の前端部から上方に向かって一定距離突出するように形成され、
前記後壁部は、車両前後方向に平行な鉛直断面において前記液受け部の後端部から上方に向かって一定距離突出するように形成された、請求項7記載の鞍乗型車両。
【請求項10】
前記タンクカバーの前記1または複数の貫通孔のうち少なくとも一の貫通孔は、平面視で面形状を呈しかつ側面視で面形状を呈する、請求項1~3のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項11】
前記エアクリーナと前記タンクカバーとの間には、前記エアクリーナの前記吸気口から前記タンクカバーの前記1または複数の貫通孔まで連続して延びるように形成された音伝達空間が形成された、請求項1~3のいずれか一項に記載の鞍乗型車両。
【請求項12】
前記吸気口の少なくとも一部は、平面視で前記燃料タンクの一部分に重なり、
前記音伝達空間は、前記燃料タンクの前記一部分を迂回しつつ前記エアクリーナの前記吸気口から前記タンクカバーの前記1または複数の貫通孔まで連続して延びる、請求項11記載の鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンおよびエアクリーナを備える鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エアクリーナは、エンジンに清浄な空気を導入する。エンジンを備える鞍乗型車両の走行時には、エアクリーナから吸気音が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアクリーナから発生する吸気音が運転者に疾走感を与える吸気音である場合、その吸気音を運転者に積極的に聞かせることにより、運転者は鞍乗型車両の運転を楽しむことができる。また、エアクリーナから発生する吸気音がエンジンの動作状態に応じて変化する場合、その吸気音を運転者に積極的に聞かせることにより、運転者はエンジンの動作状態を把握しつつスロットル操作およびハンドル操作等を行うことができる。
【0005】
特許文献1には、エンジンの後方にエアクリーナボックスが設けられた鞍乗型車両の一例が記載されている。その鞍乗型車両においては、エアクリーナボックスの側壁に吸気口が設けられている。また、エアクリーナボックスの側壁の吸気口をさらに鞍乗型車両の側方から覆うようにサイドカバーが設けられている。サイドカバーには、エアクリーナから発生する吸気音を運転者に聞かせるためのサイドカバー開口が形成されている。
【0006】
サイドカバー開口は、車両の側方を向くように形成されている。そのため、特許文献1の鞍乗型車両に関して、当該鞍乗型車両に搭乗する運転者は、実際には、エアクリーナボックスから発生した吸気音を聞きとることが難しい。
【0007】
吸気音を運転者に積極的に聞かせるためには、エアクリーナボックスの吸気口を運転者の頭部に近い位置に配置しかつその吸気口を運転者の頭部に向ける、すなわち吸気口を上方に向けることが望ましい。しかしながら、このような構成では、エアクリーナボックスの吸気口に雨水等の液滴が進入しやすい。
【0008】
本発明の目的は、エアクリーナに液滴が進入することを低減しつつ運転者に対してエアクリーナの吸気音を効率よく聞かせることが可能な鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面に従う鞍乗型車両は、鞍乗型車両であって、シートの車両前方かつエンジンの上方の位置に設けられる燃料タンクと、前記燃料タンクを少なくとも上方から覆うように設けられたタンクカバーと、吸気口を有するエアクリーナとを備え、前記吸気口は、前記燃料タンクよりも下方かつ前記燃料タンクの中心よりも車両後方の位置で上方に向かって開口し、前記タンクカバーには、平面視で前記燃料タンクに重なる1または複数の貫通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エアクリーナに液滴が進入することを低減しつつ運転者に対してエアクリーナの吸気音を効率よく聞かせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の側面図である。
【
図3】
図2の平面図のうちタンクカバーの全体およびシートの前端部およびその近傍部分が拡大された自動二輪車の一部拡大平面図である。
【
図4】エアクリーナの上方に位置するタンクカバーが取り外された状態を示す自動二輪車の一部拡大平面図である。
【
図5】エアクリーナの上方に位置する燃料タンクおよびシートが取り外された状態を示す自動二輪車の一部拡大平面図である。
【
図6】エアクリーナの上方に位置する第2の遮断部材が取り外された状態を示す自動二輪車の一部拡大平面図である。
【
図8】
図3のB-B線における模式的な断面図である。
【
図9】
図5の第2の遮断部材を有しない自動二輪車からタンクカバーが取り外された構成を示す一部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態に係る鞍乗型車両について図面を参照しつつ説明する。鞍乗型車両の一例として自動二輪車を説明する。
【0013】
1.自動二輪車の概略構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動二輪車の側面図である。
図2は、
図1の自動二輪車100の平面図である。
図1および
図2では、自動二輪車100が路面に対して垂直に起立した状態が示される。
図1以降の各図では、自動二輪車100の前後方向FB、左右方向LRおよび上下方向UDが適宜矢印で示される。前後方向FBにおいて矢印が向かう方向を前方と呼び、その逆の方向を後方と呼ぶ。また、左右方向LRにおいて矢印が向かう方向を左方と呼び、その逆の方向を右方と呼ぶ。さらに、上下方向UDにおいて矢印が向かう方向を上方と呼び、その逆の方向を下方と呼ぶ。
図1以降の各図で方向の矢印とともに示される符号F,B,L,R,U,Dは、前方、後方、左方、右方、上方および下方をそれぞれ表す。
【0014】
自動二輪車100は、金属製の車体フレーム1を備える。車体フレーム1は、ヘッドパイプHP、中継フレーム1M、下部フレーム1Uおよび左右一対の上部レール1UR,1ULを含む。ヘッドパイプHPは、車体フレーム1の前端部により構成される。中継フレーム1Mは、ヘッドパイプHPから後方に向かって一定距離延びるように形成されている。左右の上部レール1UR,1ULは、中継フレーム1Mの後端部からさらに後方に延びるように形成されている。下部フレーム1Uは、ヘッドパイプHPから後方かつ下方に向かって延びるように形成されている。
【0015】
ヘッドパイプHPには、フロントフォーク2がヘッドパイプHPの中心軸を基準として回転可能に設けられている。フロントフォーク2の下端部に前輪3が回転可能に支持されている。フロントフォーク2の上端部には、ハンドル4が設けられている。
【0016】
下部フレーム1UはヘッドパイプHPよりも下方の位置でエンジン5を支持する。エンジン5の上方でかつヘッドパイプHPの後方に位置するように燃料タンク10が設けられている。
図1および
図2では、燃料タンク10が太い二点鎖線で示される。燃料タンク10を上方から覆うように樹脂製のタンクカバー20が設けられている。タンクカバー20は、燃料タンク10の上部に加えて、燃料タンク10の両側部を覆うように形成されている。
【0017】
燃料タンク10の前方には、当該燃料タンク10とヘッドパイプHPとの間に位置するように、キーシリンダKSが設けられている。一方、燃料タンク10の後方には、シート50が設けられている。キーシリンダKS、燃料タンク10およびシート50は、車体フレーム1により支持され、中継フレーム1Mおよび左右の上部レール1UR,1UL上に位置する。
【0018】
燃料タンク10およびシート50の下方の位置でかつエンジン5の後方かつ斜め上方の位置に、エアクリーナ30が設けられている。
図1および
図2では、エアクリーナ30が太い一点鎖線で示される。エアクリーナ30は、車体フレーム1により支持され、吸気管IPを介してエンジン5の吸気ポートに接続されている。エアクリーナ30の大部分は、左右の上部レール1UR,1ULよりも下方に位置する。主としてエアクリーナ30の両側部を覆うように、左右一対のサイドカバー40が設けられている。
【0019】
下部フレーム1Uから後方に延びるように、リアアーム6が設けられている。リアアーム6は、図示しないピボット軸を用いて下部フレーム1Uに支持されている。リアアーム6の後端部に後輪7が回転可能に支持されている。後輪7は、駆動輪としてエンジン5から発生される動力により回転する。
【0020】
エアクリーナ30は、エンジン5に供給されるべき空気が導入される吸気口39を有する。自動二輪車100の外部の空気がエアクリーナ30の吸気口39に導入される際には、吸気口39から吸気音が発生する。「発明の概要」において説明したように、吸気音が運転者に疾走感を与える吸気音である場合、運転者はその吸気音を聞くことにより自動二輪車100の運転を楽しむことができる。また、吸気音がエンジン5の動作状態に応じて変化する場合、運転者はその吸気音を聞くことにより、エンジン5の動作状態を把握することができる。
【0021】
そこで、本実施の形態に係る自動二輪車100においては、エアクリーナ30から発生する吸気音を運転者に効率よく聞かせるために、エアクリーナ30およびその周辺部材の構成に工夫が施されている。
【0022】
このような工夫として、本実施の形態に係るエアクリーナ30の吸気口39は、
図1に示すように、燃料タンク10よりも下方かつ燃料タンク10の中心CPよりも後方に位置する。この場合、吸気口39は、自動二輪車100においてシート50に着座する運転者の頭部に比較的近い部分に位置する。また、エアクリーナ30の吸気口39は、上方に向かって開口している。この場合、シート50に着座する運転者の頭部が吸気口39の上方に位置するので、運転者は、吸気口39から上方に出力される吸気音を聞きやすい。
【0023】
本実施の形態においては、シート50に着座する運転者とは、路面に対して垂直に起立した自動二輪車100のシート50上に、通常の乗車姿勢(前後左右方向に大きく傾斜しない姿勢)で着座する運転者をいう。
【0024】
さらに、本実施の形態に係る自動二輪車100においては、吸気口39の全体が自動二輪車100の上方の空間に露出しないように、エアクリーナ30の吸気口39の上方にタンクカバー20が位置する。これにより、吸気口39に、雨水等の液滴が多量に進入することが防止される。また、タンクカバー20には、エアクリーナ30の吸気口39から発生する吸気音を、自動二輪車100の主として上方に向けて出力するための複数(本例では4つ)の貫通孔THが形成されている。以下、エアクリーナ30およびその周辺部材の構成について詳細を説明する。
【0025】
2.エアクリーナ30およびその周辺部材の構成
上記のように、自動二輪車100においては、エアクリーナ30の上方の位置で、上記の燃料タンク10、タンクカバー20およびシート50を含む複数の構成要素が、車体フレーム1により支持される。
【0026】
図3は、
図2の平面図のうちタンクカバー20の全体およびシート50の前端部およびその近傍部分が拡大された自動二輪車100の一部拡大平面図である。
図4~
図6は、エアクリーナ30の上方に位置する複数の構成要素が順次取り外された状態を示す自動二輪車100の一部拡大平面図である。
図4~
図6の一部拡大平面図は、
図3の一部拡大平面図に対応する。
図7は、
図3のA-A線断面図である。
【0027】
(1)主としてタンクカバー20に関して
図3では、タンクカバー20が太い実線で示されるとともに、タンクカバー20により覆われる燃料タンク10が二点鎖線で示される。
図3に示すように、タンクカバー20は、燃料タンク10の全体を上方から覆う。タンクカバー20の後方には、タンクカバー20の後端部に隣り合うようにシート50が設けられている。燃料タンク10の上部でかつ平面視で燃料タンク10の中心CPよりもやや前方の位置には、タンクキャップ60が設けられている。燃料タンク10の内部には、当該燃料タンク10内の燃料をエンジン5に供給するための燃料ポンプ90が設けられている(
図7)。
【0028】
本実施の形態に係るタンクカバー20は、中央カバー20A、右カバー20Bおよび左カバー20Cが互いに接続された構成を有する。平面視で燃料タンク10を左右方向LRに3等分した場合に、中央カバー20Aは、タンクキャップ60の部分を除いて、平面視で概ね燃料タンク10の中央部分Ra1を上方から覆う。中央カバー20Aの前方には、中央カバー20Aに隣り合うようにキーシリンダKSが設けられている。
【0029】
一方、右カバー20Bは、平面視で概ね燃料タンク10の右部分Ra2を上方から覆うとともに、燃料タンク10の右端部を右側方から覆う。他方、左カバー20Cは、平面視で概ね燃料タンク10の左部分Ra3を上方から覆うとともに、燃料タンク10の左端部を左側方から覆う。
【0030】
ここで、
図1および
図2を用いて説明したタンクカバー20の複数の貫通孔THは、平面視で燃料タンク10の中央部分Ra1に重なり、中央カバー20Aに形成されている。一方、複数の貫通孔THは、平面視でタンクカバー20の右部分Ra2および左部分Ra3に重ならない。そのため、タンクカバー20の右部分Ra2および左部分Ra3には、貫通孔THが形成されていない。
【0031】
後述するように、
図1のエアクリーナ30の吸気口39から発生した吸気音は、複数の貫通孔THから自動二輪車100の外部に出力される。上記の構成によれば、シート50に着座する運転者の頭部と複数の貫通孔THとの間の距離は、複数の貫通孔THが平面視で燃料タンク10の右部分Ra2に重なる場合に比べて短くなる。また、シート50に着座する運転者の頭部と複数の貫通孔THとの間の距離は、複数の貫通孔THが平面視で燃料タンク10の左部分Ra3に重なる場合に比べて短くなる。これにより、運転者は、エアクリーナ30の吸気音を聞きやすい。
【0032】
また、平面視で燃料タンク10を前後方向FBに3等分した場合に、複数の貫通孔THは、平面視で燃料タンク10の後部分Rb3に重なり、前部分Rb1および中央部分Rb2に重ならない。この場合、シート50に着座する運転者の頭部と複数の貫通孔THとの間の距離は、複数の貫通孔THが平面視で燃料タンク10の前部分Rb1または中央部分Rb2に重なる場合に比べて短くなる。また、複数の貫通孔THが平面視で燃料タンク10の前部分Rb1または中央部分Rb2に重なる場合に比べて、複数の貫通孔THとエアクリーナ30の吸気口39との間の距離を短くすることができる。これらの結果、運転者は、エアクリーナ30の吸気音を聞きやすい。
【0033】
本実施の形態に係るタンクカバー20においては、複数の貫通孔THとして4つの貫通孔THが分散配置されている。具体的には、4つの貫通孔THのうち2つは中央カバー20Aの後部かつ右縁部近傍で前後に並ぶように形成されている。4つの貫通孔THのうち他の2つは中央カバー20Aの後部かつ左縁部近傍で前後に並ぶように形成されている。
【0034】
シート50に着座する運転者の身体がタンクカバー20に接触することにより一の貫通孔THが閉塞されると、その一の貫通孔THからは吸気音が出力されない。上記の構成によれば、複数の貫通孔THがタンクカバー20に分散配置されているので、運転者の身体がタンクカバー20に接触する場合でも、全ての貫通孔THが同時に閉塞されにくい。そのため、複数の貫通孔THの一部が閉塞されかつ残りの貫通孔THが閉塞されていない場合には、残りの貫通孔THからエアクリーナの吸気音が出力される。したがって、吸気音が出力されなくなることが低減される。
【0035】
また、複数の貫通孔THの各々に関して、右の2つの貫通孔THは、平面視で面形状を呈しかつ右側面視で面形状を呈する。左の2つの貫通孔THは、平面視で面形状を呈しかつ左側面視で面形状を呈する(
図1の吹き出し内の拡大図参照)。このような構成によれば、シート50に着座する運転者の身体が上方からタンクカバー20に接触する場合でも、各貫通孔THは、当該貫通孔THの少なくとも一部が側方(右方または左方)に開口した状態で維持されやすい。また、シート50に着座する運転者の身体が側方(右方または左方)からタンクカバー20に接触する場合でも、各貫通孔THは、当該貫通孔THの少なくとも一部が上方に開口した状態で維持されやすい。したがって、エアクリーナ30の吸気音が出力されなくなることが低減される。
【0036】
(2)主として燃料タンク10に関して
図4に、
図3のタンクカバー20が取り外された状態を示す自動二輪車100の一部拡大平面図が示される。
図4では、燃料タンク10およびシート50の下方に位置するエアクリーナ30およびその吸気口39が一点鎖線で示される。
【0037】
図4に示すように、燃料タンク10およびシート50は、車体フレーム1上に支持されている。前後方向FBにおいて、燃料タンク10の後端部とシート50の前端部との間には、隙間が形成されている。
【0038】
平面視で、エアクリーナ30の吸気口39のうちの一部の領域は、燃料タンク10の後端部およびその近傍部分に重なる。以下の説明では、平面視で燃料タンク10に重なる吸気口39の一部の領域を、第1の開口領域R1と呼ぶ。また、平面視で、吸気口39のうち第1の開口領域R1を除く他の領域を、第2の開口領域R2と呼ぶ。第2の開口領域R2は、第1の開口領域R1の後方の位置で第1の開口領域R1に隣り合う。
【0039】
上記のように、燃料タンク10を上方から覆うタンクカバー20には、複数の貫通孔THが形成されている。そのため、複数の貫通孔THには、雨水等の液滴が進入する場合がある。このような場合でも、複数の貫通孔THが平面視で燃料タンク10に重なるので、複数の貫通孔THから下方に落下する液滴は燃料タンク10の上面により受け止められる。
【0040】
また、
図7に示すように、燃料タンク10は、その上面が水平面に対して傾斜するように車体フレーム1上に支持されている。そのため、燃料タンク10の上面で受け止められた液滴は、燃料タンク10の後端部または両側部に流れ、燃料タンク10の下方の位置には落下しない。したがって、吸気口39の第1の開口領域R1には、液滴が直接進入しない。
【0041】
一方、
図4に示すように、吸気口39の第2の開口領域R2の上方には、燃料タンク10が存在しない。そのため、燃料タンク10の上面により受け止められた液滴がその上面を伝って後方に流れると、当該液滴が燃料タンク10の後端部から落下し、第2の開口領域R2に進入する可能性がある。
【0042】
そこで、本実施の形態に係る自動二輪車100においては、第2の開口領域R2に液滴が進入することを防止するために、吸気口39の上方の位置で吸気口39の一部を覆う第1の遮断部材70および第2の遮断部材80が設けられている。
図4および後続の所定の図には、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80の形状が理解しやすいように、第1の遮断部材70にドットパターンを付し、第2の遮断部材80にハッチングを付している。
図4に示すように、第2の遮断部材80は、左右の上部レール1UR,1ULの間に位置し、その一部が平面視で吸気口39の第2の開口領域R2に重なる。
【0043】
(3)主として第1および第2の遮断部材70,80に関して
図5に、
図4の燃料タンク10およびシート50が取り外された状態を示す自動二輪車100の一部拡大平面図が示される。
図6に、
図5の第2の遮断部材80が取り外された状態を示す自動二輪車100の一部拡大平面図が示される。
図5および
図6では、エアクリーナ30を除いて中継フレーム1Mおよび上部レール1UR,1ULよりも下方に位置する部材の図示を省略している。また、
図5および
図6では、燃料タンク10が二点鎖線で示される。
【0044】
図6に示すように、第1の遮断部材70は、平面視で一方向に帯状に延びる金属製の板状部材である。第1の遮断部材70は、左右の上部レール1UR,1UL上で、左右方向LRに延びるように配置されている。第1の遮断部材70の右端部71は、右の上部レール1UR上にねじ止めされている。第1の遮断部材70の左端部72は、左の上部レール1UL上にねじ止めされている。これにより、第1の遮断部材70は、左右の上部レール1UR,1ULを連結する。したがって、第1の遮断部材70は、後述する液滴の受け止め機能に加えて、車体フレーム1を補強する機能を有する。
【0045】
図5に示すように、第2の遮断部材80は、平面視で一方向に帯状に延びる樹脂製の板状部材である。第2の遮断部材80の長手方向の長さは、第1の遮断部材70の長手方向の長さよりも短い。第2の遮断部材80は、第1の遮断部材70の後端部に、ねじを用いて接続可能に構成されている。
【0046】
車体フレーム1に取り付けられた第1の遮断部材70に第2の遮断部材80が接続されることにより、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80はこの順で前後に並ぶ。この状態で、第2の遮断部材80は、平面視で左右の上部レール1UR,1ULの間に位置する。また、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80は、吸気口39の大部分の領域を上方から覆う。
【0047】
吸気口39のうち第1の遮断部材70および第2の遮断部材80により覆われる領域、すなわち吸気口39のうち平面視で第1の遮断部材70および第2の遮断部材80に重なる領域は、
図4の第2の開口領域R2を含む。これにより、仮に燃料タンク10の上面を流れる液滴が燃料タンク10の後端部またはその近傍から吸気口39の第2の開口領域R2に落下する場合でも、その液滴は第1の遮断部材70および第2の遮断部材80のいずれかにより受け止められる。したがって、液滴が直接エアクリーナ30の内部に進入することが防止される。
【0048】
また、
図5および
図6に示すように、第1の遮断部材70の右端部71および第2の遮断部材80の右端部81は、平面視で吸気口39よりも右方に位置する。さらに、第1の遮断部材70の左端部72および第2の遮断部材80の左端部82は、平面視で吸気口39よりも左方に位置する。これにより、仮に車両が側方(右方または左方)に傾斜した状態で第1の遮断部材70に液滴が落下する場合でも、第1の遮断部材70により受け止められた液滴は、吸気口39に落下することなく右端部71または左端部72から落下する。また、仮に車両が側方(右方または左方)に傾斜した状態で第2の遮断部材80に液滴が落下する場合でも、第2の遮断部材80により受け止められた液滴は、吸気口39に落下することなく右端部81または左端部82から落下する。したがって、車両の旋回走行時等に、液滴がエアクリーナ30の内部に進入することが防止される。
【0049】
図7の点線の吹き出し内に、互いに接続された第1の遮断部材70および第2の遮断部材80の拡大断面図が示される。
図7に示すように、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80は、液受け部mp1、前壁部mp2および後壁部mp3を有する。
【0050】
液受け部mp1は、第1の遮断部材70の一部分(前端部を除く部分)および第2の遮断部材80の一部分(後端部を除く部分)により構成される。液受け部mp1は、平面視で少なくとも燃料タンク10の後端部およびタンクカバー20の後端部に重なる上面を有する。これにより、液受け部mp1は、燃料タンク10の上面またはタンクカバー20の内面を伝って燃料タンク10の後端部またはタンクカバー20の後端部から落下する液滴を受け止める。
【0051】
前壁部mp2は、第1の遮断部材70の他の部分(前端部)で構成され、液受け部mp1の前端部から上方に向かって一定距離突出するように形成されている。一方、後壁部mp3は、第2の遮断部材80の他の部分(後端部)で構成され、液受け部mp1の後端部から上方に向かって一定距離突出するように形成されている。
【0052】
上記の構成によれば、液受け部mp1で受け止められた液滴がその液受け部mp1上で車両前方に流れる場合でも、液受け部mp1の前端部に流れた液滴は前壁部mp2により受け止められ、第1の遮断部材70の前方に落下しない。また、液受け部mp1で受け止められた液滴がその液受け部mp1上で車両後方に流れる場合でも、液受け部mp1の後端部に流れた液滴は後壁部mp3により受け止められ、第2の遮断部材80の後方に落下しない。これらの結果、車両走行時に、自動二輪車100の外部から複数の貫通孔TH内に進入した液滴がエアクリーナ30の吸気口39に落下することが防止される。
【0053】
(4)吸気口39から複数の貫通孔THに至る吸気音の伝達経路
図7に示すように、本実施の形態に係るエアクリーナ30は、基本的にエアクリーナボックス32内に筒状(より具体的には長円筒状)のフィルタエレメント31が設けられた構成を有する。エアクリーナボックス32内部の空間は、フィルタエレメント31によりダーティサイド室とクリーンサイド室とに区画される。フィルタエレメント31の内側の空間がダーティサイド室となる。クリーンサイド室の雰囲気を
図1のエンジン5に導くように、エアクリーナ30には吸気管IPの一端が接続されている。
【0054】
エンジン5の動作時には、自動二輪車100の外部から自動二輪車100の各部材間の隙間および左右の上部レール1UR,1ULの間の空間を通して吸気口39に空気が導入される。このとき、吸気口39から吸気音が発生する。エアクリーナ30の吸気口39で発生する吸気音は、タンクカバー20内に形成されている音伝達空間SSを通してタンクカバー20の複数の貫通孔THから自動二輪車100の外部に出力される。
【0055】
音伝達空間SSは、
図7に太い一点鎖線の矢印で示すように、吸気口39から第1の遮断部材70、第2の遮断部材80および燃料タンク10の後端部を迂回しつつタンクカバー20の複数の貫通孔THまで連続的に延びている。音伝達空間SSは、エアクリーナ30の吸気口39と第1の遮断部材70および第2の遮断部材80との間の隙間空間を含む。音伝達空間SSは、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80と燃料タンク10との間の隙間空間を含む。さらに、音伝達空間SSは、燃料タンク10とタンクカバー20(中央カバー20A)との間の隙間空間を含む。
【0056】
上記の構成によれば、音伝達空間SSは、前後方向FBに平行な鉛直断面において、タンクカバー20の複数の貫通孔THとエアクリーナ30の吸気口39との間でジグザクに形成される。これにより、燃料タンク10の形状および配置を調整することにより、エアクリーナ30の吸気口39からタンクカバー20の複数の貫通孔THに至る吸気音の伝達経路の長さを調整することができる。あるいは、タンクカバー20における複数の貫通孔THの位置を調整することにより、エアクリーナ30の吸気口39からタンクカバー20の複数の貫通孔THに至る吸気音の伝達経路の長さを調整することができる。吸気音の伝達経路の長さは、吸気音の共振周波数に寄与する。したがって、所望の吸気音が発生するように燃料タンク10の形状および配置を予め定めておくことにより、距離調整用の新たなダクトを用意することなく不快な吸気音の発生を防止することができる。あるいは、所望の吸気音が発生するようにタンクカバー20における複数の貫通孔THの位置を予め定めておくことにより、距離調整用の新たなダクトを用意することなく不快な吸気音の発生を防止することができる。
【0057】
(5)複数の貫通孔THに進入した液滴の流れの一例
図8は、
図3のB-B線における模式的な断面図である。
図7および
図8に示すように、燃料タンク10は、主として上部材11および下部材12から構成される。上部材11および下部材12の各々は、例えば板金を所定形状にプレス加工することにより作製される。上部材11および下部材12は、平面視で同じ外形を有する。上部材11および下部材12の外周端部が互いに接合されることにより、上部材11および下部材12との間に燃料を貯留可能な空間が形成される。
【0058】
上部材11と下部材12との接合部分は、燃料タンク10の内部空間を形成する上部材11および下部材12の部分から、燃料タンク10の外方に所定幅突出する。この上部材11と下部材12との接合部分を燃料タンク10の突出部10pと呼ぶ。
図4に示すように、突出部10pは、平面視で燃料タンク10の外周端部の全体に渡って延びている。
【0059】
図8に示すように、左右方向LRに平行な鉛直断面において、右カバー20Bの内面および左カバー20Cの内面は、ともに燃料タンク10の突出部10pに接するように設けられている。これにより、シート50に着座する運転者がタンクカバー20を両足の太ももで挟み込む場合には、燃料タンク10の突出部10pによりタンクカバー20の変形が抑制される。
【0060】
燃料タンク10の上部材11は、左右方向LRにおいて燃料タンク10の中心CPから離れるにつれて湾曲しつつ下方に延びる。それにより、複数の貫通孔THに進入して燃料タンク10の上面(上部材11の上面)で受け止められる液滴の少なくとも一部は、その上面を伝って燃料タンク10の左右両端部に向かって流れ、突出部10p上に到達する。
【0061】
ここで、
図7に示すように、燃料タンク10は、側面視で上部材11と下部材12との接合面が後方に向かって斜め下方に延びるように車体フレーム1に支持されている。それにより、燃料タンク10の突出部10p上に到達した液滴は、さらに突出部10p上で、車両後方に向かって流れ、エアクリーナ30の吸気口39から離間した位置で落下する。
【0062】
このように、上記の燃料タンク10においては、タンクカバー20が燃料タンク10上に設けられることにより、突出部10pがタンクカバー20の補強部材として機能する。また、突出部10pが、貫通孔THから進入した液滴をエアクリーナ30の吸気口39から離間した位置に導く溝の一部として機能する。
【0063】
3.効果
上記のように、本実施の形態に係る自動二輪車100においては、エアクリーナ30の吸気口39が、燃料タンク10よりも下方かつ燃料タンク10の中心CPよりも後方の位置で上方に向かって開口している。これにより、運転者はエアクリーナ30の吸気音を聞きやすい。また、タンクカバー20の複数の貫通孔THは、平面視で燃料タンク10に重なる。それにより、タンクカバー20の上方から複数の貫通孔THを通してタンクカバー20の下方の空間に雨水等の液滴が進入する場合でも、進入した液滴が燃料タンク10により受け止められる。そのため、エアクリーナ30の吸気口39に液滴が直接進入することが防止される。その結果、エアクリーナ30に液滴が進入することを低減しつつ運転者に対してエアクリーナ30の吸気音を効率よく聞かせることが可能になる。
【0064】
4.他の実施の形態
(1)上記実施の形態においては、エアクリーナ30の吸気口39の一部を覆うように、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80が設けられるが、本発明はこれに限定されない。第1の遮断部材70および第2の遮断部材80は、液受け部mp1が平面視で吸気口39の全体を覆うように形成されてもよい。換言すれば、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80は、液受け部mp1が平面視で吸気口39の全体に重なるように形成されてもよい。この場合、吸気口39に液滴が進入することがより低減される。
【0065】
または、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80は設けられなくてもよい。あるいは、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80のうち第2の遮断部材80は設けられなくてもよい。
図9は、
図5の第2の遮断部材80を有しない自動二輪車100からタンクカバー20が取り外された構成を示す一部拡大平面図である。
【0066】
図9の構成によれば、吸気口39のうち第2の開口領域R2は第2の遮断部材80によって覆われない。しかしながら、このような構成においても、吸気口39の第2の開口領域R2は、タンクカバー20により覆われる。また、第2の開口領域R2は、平面視でタンクカバー20の複数の貫通孔THには重ならない。したがって、自動二輪車100の外部から複数の貫通孔THに液滴が進入する場合でも、その液滴が直接第2の開口領域R2に向かって直接落下することが防止される。
【0067】
また、上記の構成によれば、第2の開口領域R2が平面視で燃料タンク10に重ならないので、吸気口39において発生する吸気音の一部は、燃料タンク10を迂回することなくタンクカバー20の複数の貫通孔THから直接出力される。また、この場合、吸気口39の第2の開口領域R2は、燃料タンク10の後端部近傍に位置する。燃料タンク10の後端部はシート50の前端部に隣り合うので、シート50に着座する運転者の頭部に近い。これらの結果、運転者は、エアクリーナ30の吸気音を聞きやすい。
【0068】
(2)上記実施の形態に係る第1の遮断部材70および第2の遮断部材80は、互いに接続された状態で車体フレーム1に取り付けられるが、本発明はこれに限定されない。第1の遮断部材70および第2の遮断部材80は、共通の材料(例えば金属または樹脂)で作成された単一部材で構成されてもよい。
【0069】
(3)上記実施の形態に係るタンクカバー20は、個別に作製された中央カバー20A、右カバー20Bおよび左カバー20Cが互いに接続された構成を有するが、本発明はこれに限定されない。タンクカバー20は、単一部材で構成されてもよい。
【0070】
(4)上記実施の形態に係るタンクカバー20には、4つの貫通孔THが形成されているが、本発明はこれに限定されない。タンクカバー20には、1つの貫通孔THのみが形成されてもよい。または、タンクカバー20には、2つまたは3つの貫通孔THが形成されてもよい。あるいは、タンクカバー20には、5または6以上の複数の貫通孔THが形成されていてもよい。
【0071】
(5)上記実施の形態に係るタンクカバー20においては、複数の貫通孔THは、平面視で燃料タンク10の左右方向LRの中央部分Ra1にのみ重なるが、本発明はこれに限定されない。複数の貫通孔THは、それらのうち少なくとも1つの貫通孔THが平面視で燃料タンク10の中央部分Ra1に重なっていればよい。そのため、複数の貫通孔THのうち1つの貫通孔THが平面視で燃料タンク10の中央部分Ra1に重なるのであれば、他の貫通孔THは、平面視で燃料タンク10の右部分Ra2および左部分Ra3のうち少なくとも一方に重なってもよい。
【0072】
(6)上記実施の形態に係るタンクカバー20においては、複数の貫通孔THは、平面視で燃料タンク10の前後方向FBの後部分Rb3にのみ重なるが、本発明はこれに限定されない。複数の貫通孔THは、燃料タンク10の前後方向FBの中央部分Rb2および後部分Rb3のうち少なくとも一方の部分に形成されていればよい。この場合、複数の貫通孔THが平面視で燃料タンク10の前部分Rb1に重なる場合に比べて、複数の貫通孔THとエアクリーナ30の吸気口39との間の距離を短くすることができる。したがって、運転者は、エアクリーナ30の吸気音を聞きやすい。
【0073】
(7)上記実施の形態は本発明を自動二輪車に適用した例であるが、これに限らず、自動四輪車、自動三輪車もしくはATV(All Terrain Vehicle;不整地走行車両)等の他の鞍乗型車両に本発明を適用してもよい。
【0074】
5.実施の形態の各部と請求項の各構成要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各構成要素との対応の例について説明する。請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0075】
上記の実施の形態においては、自動二輪車100が鞍乗型車両の例であり、シート50がシートの例であり、エンジン5がエンジンの例であり、燃料タンク10が燃料タンクの例であり、タンクカバー20がタンクカバーの例であり、吸気口39が吸気口の例であり、エアクリーナ30がエアクリーナの例である。
【0076】
また、複数の貫通孔THが1または複数の貫通孔の例であり、第1の開口領域R1が第1の開口領域の例であり、第2の開口領域R2が第2の開口領域の例であり、第1の遮断部材70および第2の遮断部材80からなる構成が遮蔽部材の例であり、液受け部mp1が液受け部の例であり、前壁部mp2が前壁部の例であり、後壁部mp3が後壁部の例であり、音伝達空間SSが音伝達空間の例である。
【0077】
6.実施の形態の総括
(第1項)第1項に係る鞍乗型車両は、
鞍乗型車両であって、
シートの車両前方かつエンジンの上方の位置に設けられる燃料タンクと、
前記燃料タンクを少なくとも上方から覆うように設けられたタンクカバーと、
吸気口を有するエアクリーナとを備え、
前記吸気口は、前記燃料タンクよりも下方かつ前記燃料タンクの中心よりも車両後方の位置で上方に向かって開口し、
前記タンクカバーには、平面視で前記燃料タンクに重なる1または複数の貫通孔が形成されている。
【0078】
その鞍乗型車両においては、エアクリーナの吸気口が、鞍乗型車両のうちシートに着座する運転者の頭部に比較的近い部分に位置する。また、エアクリーナの吸気口は上方を向いて開口している。これにより、エンジンの動作時には、エアクリーナの吸気口で発生する吸気音が、タンクカバーの1または複数の貫通孔を通してタンクカバーの上方に出力される。したがって、運転者はエアクリーナの吸気音を聞きやすい。
【0079】
また、タンクカバーの1または複数の貫通孔は、平面視で燃料タンクに重なる。それにより、タンクカバーの上方から1または複数の貫通孔を通してタンクカバーの下方の空間に雨水等の液滴が進入する場合でも、進入した液滴がエアクリーナの吸気口に直接進入することが防止される。
【0080】
これらの結果、エアクリーナに液滴が進入することを低減しつつ運転者に対してエアクリーナの吸気音を効率よく聞かせることが可能になる。
【0081】
(第2項)第1項に係る鞍乗型車両において、
平面視で前記燃料タンクを車両左右方向に3等分した場合に、前記1または複数の貫通孔は、平面視で前記燃料タンクの中央部分に重なってもよい。
【0082】
この場合、シートに着座する運転者の頭部と1または複数の貫通孔との間の距離は、1または複数の貫通孔が平面視で燃料タンクの左部分に重なる場合に比べて短くなる。また、シートに着座する運転者の頭部と1または複数の貫通孔との間の距離は、1または複数の貫通孔が平面視で燃料タンクの右部分に重なる場合に比べて短くなる。これにより、運転者は、エアクリーナの吸気音を聞きやすい。
【0083】
(第3項)第2項に係る鞍乗型車両において、
平面視で前記燃料タンクを車両左右方向に3等分した場合に、前記1または複数の貫通孔は、平面視で前記燃料タンクの左部分および右部分に重ならなくてもよい。
【0084】
この場合、1または複数の貫通孔が平面視で燃料タンクの左部分および右部分に重ならない。これにより、運転者に対してエアクリーナの吸気音を効率よく聞かせることが可能になる。
【0085】
(第4項)第1項~第3項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
平面視で前記燃料タンクを車両前後方向に3等分した場合に、前記1または複数の貫通孔は、平面視で前記燃料タンクの中央部分および後部分のいずれかに重なり、平面視で前記燃料タンクの前部分に重ならなくてもよい。
【0086】
この場合、シートに着座する運転者の頭部と1または複数の貫通孔との間の距離は、1または複数の貫通孔が平面視で燃料タンクの前部分に重なる場合に比べて短くなる。これにより、運転者は、エアクリーナの吸気音を聞きやすい。
【0087】
(第5項)第1項~第4項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記1または複数の貫通孔は、前記タンクカバーにおいて分散配置された複数の貫通孔を含んでもよい。
【0088】
シートに着座する運転者の身体がタンクカバーに接触することにより一の貫通孔が閉塞されると、その一の貫通孔からは吸気音が出力されない。上記の構成によれば、複数の貫通孔がタンクカバーに分散配置されているので、運転者の身体がタンクカバーに接触する場合でも、全ての貫通孔が同時に閉塞されにくい。そのため、複数の貫通孔の一部が閉塞されかつ残りの貫通孔が閉塞されていない場合には、残りの貫通孔からエアクリーナの吸気音が出力される。したがって、吸気音が出力されなくなることが低減される。
【0089】
(第6項)第1項~第5項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記吸気口は、
平面視で前記燃料タンクの後端部を含む一部分に重なる第1の開口領域と、
平面視で前記第1の開口領域に隣り合いかつ前記燃料タンクに重ならない第2の開口領域とを含んでもよい。
【0090】
この場合、タンクカバーの1または複数の貫通孔に雨水等の液滴が進入する場合でも、進入した液滴は燃料タンクの一部分に重なる吸気口の第1の開口領域には直接進入しない。また、タンクカバーの1または複数の貫通孔に進入した液滴は、燃料タンクのうち平面視でタンクカバーの1または複数の貫通孔に重なる部分により受け止められるので、第2の開口領域には直接進入しない。したがって、エアクリーナの吸気口に多量の液滴が進入することが防止される。
【0091】
また、上記の構成によれば、吸気口の第2の開口領域が平面視で燃料タンクに重ならないので、吸気口において発生する吸気音の一部は、燃料タンクを迂回することなくタンクカバーの1または複数の貫通孔から直接出力される。また、この場合、吸気口の第2の開口領域は、燃料タンクの一部分近傍に位置する。燃料タンクの一部分はシートに隣り合うので、シートに着座する運転者の頭部に近い。したがって、運転者は、エアクリーナの吸気音を聞きやすい。
【0092】
(第7項)第1項~第6項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記鞍乗型車両は、
前記エアクリーナの前記吸気口よりも上方の位置で、前記エアクリーナの前記吸気口の少なくとも一部を覆う遮断部材をさらに備えてもよい。
【0093】
上記の構成によれば、雨水等の液滴がエアクリーナの吸気口に落下する場合でも、その液滴の少なくとも一部は遮断部材により受け止められる。したがって、エアクリーナに液滴が進入することが低減される。
【0094】
(第8項)第7項に係る鞍乗型車両において、
前記遮断部材の右端部は、平面視で前記吸気口よりも右方に位置し、
前記遮断部材の左端部は、平面視で前記吸気口よりも左方に位置してもよい。
【0095】
上記の構成によれば、遮断部材上に液滴が落下する場合に、遮断部材により受け止められた液滴は、吸気口に落下することなく遮断部材の右端部または左端部から落下する。したがって、エアクリーナに液滴が進入することがより低減される。
【0096】
(第9項)第7項または第8項に係る鞍乗型車両において、
前記遮断部材は、前壁部、液受け部および後壁部を有し、
前記前壁部は、車両前後方向に平行な鉛直断面において前記液受け部の前端部から上方に向かって一定距離突出するように形成され、
前記後壁部は、車両前後方向に平行な鉛直断面において前記液受け部の後端部から上方に向かって一定距離突出するように形成されてもよい。
【0097】
上記の構成によれば、遮断部材の液受け部で受け止められた液滴がその液受け部上で車両前方に流れる場合でも、液受け部の前端部に流れた液滴は前壁部により受け止められ、遮断部材の前方に落下しない。また、遮断部材の液受け部で受け止められた液滴がその液受け部上で車両後方に流れる場合でも、液受け部の後端部に流れた液滴は後壁部により受け止められ、遮断部材の後方に落下しない。
【0098】
(第10項)第1項~第9項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記タンクカバーの前記1または複数の貫通孔のうち少なくとも一の貫通孔は、平面視で面形状を呈しかつ側面視で面形状を呈してもよい。
【0099】
上記の構成によれば、シートに着座する運転者の身体が上方からタンクカバーに接触する場合でも、一の貫通孔は、当該貫通孔の少なくとも一部が側方に開口した状態で維持されやすい。また、シートに着座する運転者の身体が側方からタンクカバーに接触する場合でも、一の貫通孔は、当該貫通孔の少なくとも一部が上方に開口した状態で維持されやすい。したがって、エアクリーナの吸気音が出力されなくなることが低減される。
【0100】
(第11項)第1項~第10項のいずれか一項に係る鞍乗型車両において、
前記エアクリーナと前記タンクカバーとの間には、前記エアクリーナの前記吸気口から前記タンクカバーの前記1または複数の貫通孔まで連続して延びるように形成された音伝達空間が形成されてもよい。
【0101】
この場合、エアクリーナの吸気口が音伝達空間を通してタンクカバーの外部に出力される。
【0102】
(第12項)第11項に係る鞍乗型車両において、
前記吸気口の少なくとも一部は、平面視で前記燃料タンクの一部分に重なり、
前記音伝達空間は、前記燃料タンクの前記一部分を迂回しつつ前記エアクリーナの前記吸気口から前記タンクカバーの前記1または複数の貫通孔まで連続して延びてもよい。
【0103】
上記の構成によれば、音伝達空間は、所定の鉛直断面において、タンクカバーの1または複数の貫通孔とエアクリーナの吸気口との間でジグザクに形成される。これにより、燃料タンクの形状および配置を調整することにより、エアクリーナの吸気口からタンクカバーの1または複数の貫通孔に至る吸気音の伝達経路の長さを調整することができる。吸気音の伝達経路の長さは、吸気音の共振周波数に寄与する。したがって、所望の吸気音が発生するように燃料タンクの形状および配置を予め定めておくことにより、距離調整用の新たなダクトを用意することなく不快な吸気音の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0104】
1…車体フレーム,1M…中継フレーム,1U…下部フレーム,1UL,1UR…上部レール,2…フロントフォーク,3…前輪,4…ハンドル,5…エンジン,6…リアアーム,7…後輪,10…燃料タンク,10p…突出部,11…上部材,12…下部材,20…タンクカバー,20A…中央カバー,20B…右カバー,20C…左カバー,30…エアクリーナ,31…フィルタエレメント,32…エアクリーナボックス,39…吸気口,40…サイドカバー,50…シート,60…タンクキャップ,70…第1の遮断部材,71,81…右端部,72,82…左端部,80…第2の遮断部材,90…燃料ポンプ,100…自動二輪車,CP…中心,HP…ヘッドパイプ,IP…吸気管,KS…キーシリンダ,R1…第1の開口領域,R2…第2の開口領域,Ra1,Rb2…中央部分,Ra2…右部分,Ra3…左部分,Rb1…前部分,Rb3…後部分,SS…音伝達空間,TH…貫通孔,mp1…液受け部,mp2…前壁部,mp3…後壁部