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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074022
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】ローテーション支援方法
(51)【国際特許分類】
   B60S 5/00 20060101AFI20240523BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B60S5/00
G01M17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185065
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】栗谷 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】石坂 信吉
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026BA27
(57)【要約】
【課題】タイヤローテーションにおけるタイヤの移動作業ミスを抑制し、作業効率を高めることができるローテーション支援方法を提供する。
【解決手段】ローテーション支援方法は、図形配置処理ステップ、操作受付ステップおよび図形移動処理ステップを備える。図形配置処理ステップは、車両の車軸位置におけるタイヤを表すタイヤ図形、およびタイヤの仮置き箇所を表す図形を表示画面中に配置する。操作受付ステップは、図形配置処理ステップによって配置されたタイヤ図形を移動させるユーザの操作を受け付ける。図形移動処理ステップは、操作受付ステップにより受け付けた操作に基づき、車軸位置および仮置き箇所においてタイヤ図形を移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車軸位置におけるタイヤを表すタイヤ図形、およびタイヤの仮置き箇所を表す図形を表示画面中に配置する図形配置処理ステップと、
前記図形配置処理ステップによって配置された前記タイヤ図形を移動させるユーザの操作を受け付ける操作受付ステップと、
前記操作受付ステップにより受け付けた操作に基づき、前記車軸位置および前記仮置き箇所において前記タイヤ図形を移動させる図形移動処理ステップと、
を含むことを特徴とするローテーション支援方法。
【請求項2】
前記図形配置処理ステップは、タイヤホイールの向きを示す情報を表示させることを特徴とする請求項1に記載のローテーション支援方法。
【請求項3】
前記図形配置処理ステップは、前記タイヤの溝の残溝量を示す情報を表示させることを特徴とする請求項1または2に記載のローテーション支援方法。
【請求項4】
前記図形配置処理ステップは、少なくとも2台以上の車両のそれぞれにおける前記タイヤ図形を表示画面中に表示し、
前記操作受付ステップは、前記図形配置処理ステップによって配置された少なくとも2台以上の車両間で前記タイヤ図形を移動させるユーザの操作を受け付けることを特徴とする請求項1または2に記載のローテーション支援方法。
【請求項5】
前記図形移動処理ステップにより移動した前記タイヤ図形に対応するタイヤの識別情報と移動後の前記車軸位置とを対応づけて記憶させることを特徴とする請求項1または2に記載のローテーション支援方法。
【請求項6】
前記図形移動処理ステップは、車軸位置に配置されている前記タイヤ図形の選択を受け付けた場合に、車軸位置から前記タイヤ図形が取り外されるタイヤ未装着の状態とし、タイヤ未装着の車軸位置の選択に基づいて、新品タイヤのリストを表示させ、新品タイヤの選択を受け付けた場合に、選択された新品タイヤに関する前記タイヤ図形を前記車軸位置に配置する請求項1または2に記載のローテーション支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されるタイヤのローテーションを支援するローテーション支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは走行状態や走行距離等に応じて摩耗が進行し、タイヤが装着されている軸位置によって摩耗が偏ることがある。タイヤは、車両内または車両間の軸位置で付け替えるタイヤローテーションによって、偏った摩耗を抑制し、より長く使用できるように保守されている。
【0003】
特許文献1には従来のタイヤ管理システムが記載されている。このタイヤ管理システムは、タイヤ情報取得部、センサ情報取得部および管理部を備える。タイヤ情報取得部は、車両に装着されるタイヤの識別情報を取得する。センサ情報取得部は、タイヤに配設されたセンサの識別情報を取得する。管理部は、タイヤ情報取得部によって取得したタイヤの識別情報と、センサ情報取得部によって取得したセンサの識別情報とを対応付けて記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-075243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタイヤ管理システムは、タイヤの識別情報とセンサの識別情報を対応付けて管理している。本発明者は、実際のタイヤローテーションにおけるタイヤの移動作業ミスを抑制し、作業効率を高める上で、車両の軸位置間でのタイヤの移動を分かりやすく模擬することで、従来のタイヤローテーション作業の改善を図ることができると考えた。また本発明者は、タイヤローテーションの情報をデータ提供することによって、タイヤの車両における軸位置を考慮したタイヤ摩耗推定システムにおける、タイヤの軸位置管理の手間を低減化することができると考えた。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤローテーションにおけるタイヤの移動作業ミスを抑制し、作業効率を高めることができるローテーション支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様のローテーション支援方法は、車両の車軸位置におけるタイヤを表すタイヤ図形、およびタイヤの仮置き箇所を表す図形を表示画面中に配置する図形配置処理ステップと、前記図形配置処理ステップによって配置された前記タイヤ図形を移動させるユーザの操作を受け付ける操作受付ステップと、前記操作受付ステップにより受け付けた操作に基づき、前記車軸位置および前記仮置き箇所において前記タイヤ図形を移動させる図形移動処理ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、タイヤローテーションにおけるタイヤの移動作業ミスを抑制し、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るローテーション支援装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】図形配置処理部による表示画面の一例を示す模式図である。
図3】ローテーション支援装置によるタイヤローテーション処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4(a)および図4(b)は、表示画面中でのタイヤローテーションの一例を示す模式図である。
図5】表示画面中での2台の車両間におけるタイヤローテーションの一例を示す模式図である。
図6】表示画面中でタイヤホイールの向きを示す情報を付加した例を示す模式図である。
図7】表示画面中でタイヤ溝の溝残量を示す情報を付加した例を示す模式図である。
図8】ローテーション支援装置を含むタイヤ摩耗量推定システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図8を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るローテーション支援装置100の機能構成を示すブロック図である。ローテーション支援装置100は、操作部10、表示部15、記憶部20および制御部30を備え、タイヤのローテーション作業においてタイヤの配置や移動に関する画像を表示し、表示画面での作業者のタイヤの移動操作などの環境を提供する。
【0012】
ローテーション支援装置100における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0013】
操作部10は、例えばタッチパネル、スイッチ、キーボードおよびマウスなどの操作可能な入力装置である。作業者は、操作部10を操作することによって、表示部15に表示されたタイヤを表す図形(以下、タイヤ図形と表記する。)を移動させ、タイヤローテーションを模擬する。
【0014】
表示部15は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置であり、車軸位置を模した図形、タイヤ図形、および移動させるタイヤを車軸位置から外して置いておく仮置き箇所の図形を表示装置に画面表示する。作業者は、表示部15に表示された画面表示を見ながらタイヤ図形を移動させる。
【0015】
記憶部20は、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD等によって構成される記憶装置である。記憶部20は、制御部30で実行するコンピュータプログラム、車両の車軸位置に関する情報およびローテーション後の車軸位置とタイヤの識別情報を対応付けたタイヤ軸位置情報20aなどを記憶する。車両の車軸位置に関する情報は、例えば車名および車両型式などに対応して決まっており、記憶部20に記憶させてもよいし、ローテーション作業時にサーバ装置(図示略)から取得し、一時的に記憶部20に記憶するようにしてもよい。
【0016】
制御部30は、図形配置処理部31、操作受付部32、図形移動処理部33およびタイヤ位置管理部34を備える。図2は、図形配置処理部31による表示画面の一例を示す模式図である。図形配置処理部31は、車軸位置に関する情報、および車軸位置に装着されたタイヤを表すタイヤ図形、および仮置き箇所の図形を表示画面に配置する。
【0017】
図2に示すように、図形配置処理部31は、車軸位置A1を車両の前輪側に配置した線分により、車軸位置A2およびA3を車両の後輪側に配置した線分によって表している。図形配置処理部31は、車軸位置A1の左右にタイヤ図形B11およびB12を配置している。図形配置処理部31は、車軸位置A2の左右にタイヤ図形B21、B22、B23およびB24を配置している。図形配置処理部31は、車軸位置A3の左右にタイヤ図形B31、B32、B33およびB34を配置している。各タイヤ図形にはB11等の符号を付しておき、タイヤ図形に符号が付されたまま移動するようにすることで、移動した先が作業者に理解し易くなる。また、図形配置処理部31は、タイヤの仮置き箇所の図形C1およびC2を配置している。
【0018】
図形配置処理部31は、タイヤホイールの向きを示す情報や、タイヤ溝の残溝量を示す方法を含むタイヤ図形を配置するようにしてもよい。また、図形配置処理部31は、少なくとも2台以上の車両について表示画面に配置するようにしてもよく、それぞれの車両の車軸位置とタイヤ図形が表示画面に配置される。
【0019】
操作受付部32は、操作部10による作業者の操作入力を受け付ける。操作受付部32は、表示画面中で車軸位置にあるタイヤ図形を仮置き箇所の図形の位置に移動させる操作を受け付ける。操作受付部32は、表示画面中で車軸位置にあるタイヤ図形をタイヤ図形が無い別の車軸位置に移動させる操作、仮置き箇所にあるタイヤ図形をタイヤ図形が無い車軸位置に移動させる操作を受け付ける。
【0020】
操作受付部32は、表示画面中で車軸位置にあるタイヤ図形を、別の車軸位置に存在するタイヤ図形に重なるように移動させる操作を受け付けるようにしてもよいし、受け付けないようにしてもよい。
【0021】
図形移動処理部33は、操作受付部32によって受け付けた作業者の操作を表示画面に反映させる。例えば、作業者が表示画面中でタイヤ図形B12を仮置き箇所の図形へ移動させる操作を行うと、図形移動処理部33は、タイヤ図形B12を仮置き箇所へ移動させる。図形移動処理部33は、表示画面中で車軸位置にあるタイヤ図形をタイヤ図形が無い別の車軸位置に移動させる。図形移動処理部33は、表示画面中で仮置き箇所にあるタイヤ図形をタイヤ図形が無い車軸位置に移動させる。図形移動処理部33は、少なくとも2台以上の車両について、各車両の車軸位置および仮置き箇所におけるタイヤ図形を移動させる。
【0022】
図形移動処理部33は、表示画面中でのタイヤローテーションの模擬試行における操作を記憶部20に記憶させておき、作業者の操作を初めから再生する機能を有していてもよい。図形移動処理部33によって再生したタイヤ図形の移動を、別の作業者や車両のユーザが確認したり、実際のタイヤローテーションを車両で実施する際に再生して確認しながら、作業することができる。
【0023】
また図形移動処理部33は、表示画面中でのタイヤローテーション後の表示画面を画像データとして記憶部20へ記憶させるようにしてもよい。図形移動処理部33による画像データは、年月の経過とともに車両において実施される複数回のタイヤローテーションの記録として保管することができる。
【0024】
タイヤ位置管理部34は、各タイヤ図形に対応するタイヤの識別情報を取得し、タイヤローテーション作業後の車軸位置(車軸の左右の情報も含む)とタイヤの識別情報とを対応付けて記憶部20へタイヤ軸位置情報20aとして記憶させる。タイヤ位置管理部34は、前回のタイヤローテーション後に記憶されているタイヤ軸位置情報20aを記憶部20から読み出して各タイヤ図形に対応するタイヤの識別情報を取得するようにしてもよい。
【0025】
タイヤ位置管理部34は、前回のタイヤローテーション後のタイヤ軸位置情報20aが無い場合には、サーバ装置に蓄積されているタイヤ軸位置情報を取得してもよいし、作業者によるタイヤの識別情報の入力によってタイヤ軸位置情報を取得してもよい。
【0026】
次にローテーション支援装置100の動作について説明する。図3は、ローテーション支援装置100によるタイヤローテーション処理の手順を示すフローチャートである。ローテーション支援装置100の図形配置処理部31は、表示画面中に、車両に応じた車軸位置、タイヤ図形、および仮置き箇所の図形を配置する(S1)。図形配置処理部31は、タイヤホイールの向きを示す情報やタイヤ溝の溝残量を示す情報を、タイヤ図形の付加情報として表示する(S2)。
【0027】
操作受付部32は、終了ボタンが押下されたか否かを判定し(S3)、終了ボタンが押下されたと判定した場合(S3:YES)には処理を終了する。操作受付部32は、終了ボタンが押下されなかったと判定した場合(S3:NO)、次のステップS4へ移行する。尚、終了ボタンは、例えば表示画面中に配置されており、作業者が表示画面中で終了ボタンを押下する操作を行う。
【0028】
操作受付部32は、タイヤ図形の移動に関する作業者の操作入力を受け付ける(S4)。図形移動処理部33は、操作受付部32によって受け付けた作業者の操作に従って、車軸位置および仮置き箇所においてタイヤ図形を移動させ、作業者の操作を表示画面に反映させて(S5)、ステップS3へ帰還する。
【0029】
ローテーション支援装置100は、操作受付部32でタイヤ図形の移動に関する作業者の操作を受け付け、車軸位置および仮置き箇所においてタイヤ図形を移動させることによって、視覚的に分かり易くタイヤローテーションを模擬し、タイヤローテーション作業を支援することができる。ローテーション支援装置100は、タイヤローテーションを作業者に分かり易く模擬することで、実際のタイヤローテーション作業における作業ミスを抑制し、不要なタイヤ取外および取付などを低減して作業効率を高めることができる。
【0030】
図4(a)および図4(b)は、表示画面中でのタイヤローテーションの一例を示す模式図である。この例では、図4(a)に示すように、タイヤ図形B12を仮置き箇所の図形C1へ移動させ、車軸位置A2のタイヤ図形B23を車軸位置A1に移動させ、仮置き箇所の図形C1にあったタイヤ図形B12を車軸位置A2へ移動させている。図4(b)の表示画面にはタイヤローテーション後のタイヤ図形の配置が表されている。
【0031】
作業者は、例えば実際の車両に装着されたタイヤに、符号B11等を記載したシールを貼り付けておき、タイヤローテーションを実施するとよい。ローテーション支援装置100によるタイヤローテーションの模擬試行の結果である図4(b)の表示画面中でのタイヤ図形に付された符号と、実施したタイヤローテーション後のタイヤに貼り付けられているシールの符号とを照合することで、作業ミスを抑制することができる。
【0032】
またローテーション支援装置100は、図形移動処理部33によってタイヤ図形の移動を再生して確認しながら、実際のタイヤローテーション作業を実施することによって、タイヤローテーションの作業ミスを抑制することができる。
【0033】
図5は、表示画面中での2台の車両間におけるタイヤローテーションの一例を示す模式図である。図5に示す例では、車軸位置A1のタイヤ図形B12を仮置き箇所の図形C1へ移動させ、車軸位置D2のタイヤ図形E22を車軸位置A1に移動させている。ローテーション支援装置100は、2台の車両間においても、視覚的に分かり易くタイヤローテーションを模擬し、タイヤローテーション作業を支援することができる。
【0034】
図6は、表示画面中でタイヤホイールの向きを示す情報を付加した例を示す模式図である。図6では、タイヤホイールを模した図形H12をタイヤ図形B12などに付加することによってタイヤホイールの向きを示している。また、表示画面中では、タイヤホイールを模した図形H12がタイヤ図形B12とともに移動する。
【0035】
ローテーション支援装置100は、タイヤホイールの向きを示す情報をタイヤ図形に付加することによって、タイヤローテーションの際に、どの向きでタイヤが車軸位置に取り付けることができるかを作業者が容易に理解することができる。
【0036】
図7は、表示画面中でタイヤ溝の溝残量を示す情報を付加した例を示す模式図である。図7では、溝残量の数値を各タイヤ図形に付加し、作業者に溝残量が容易に理解できるようにしている。また、表示画面中では、溝残量の数値がタイヤ図形とともに移動する。
【0037】
図7に示す例では、車軸位置A1でのタイヤ摩耗が小さく、車軸位置A3でのタイヤ摩耗が大きいので、例えば、車軸位置A1のタイヤを車軸位置A3へ移動し、車軸位置A3のタイヤを車軸位置A1へ移動するローテーション計画を立て易くなる。ローテーション支援装置100は、タイヤ溝の溝残量を示す情報をタイヤ図形に付加することによって、作業者に溝残量の情報を提供し、タイヤローテーション計画の立案を支援することができる。
【0038】
図7に示す例では、タイヤ溝の溝残量を示すことによってタイヤの偏摩耗に関する情報が表示画面中に表される。また図7に示すように偏摩耗が他のタイヤよりも大きいタイヤ図形B11およびB12に対して溝残量の数値を例えば四角形の図形で囲んで表示している。ローテーション支援装置100は、偏摩耗が他のタイヤよりも大きいことを示す図形をタイヤ図形に付加することで、作業者によるタイヤローテーション計画の立案を支援することができる。
【0039】
図8は、ローテーション支援装置100を含むタイヤ摩耗量推定システム110の構成を示す模式図である。タイヤ摩耗量推定システム110は、タイヤ摩耗量推定装置102を備え、車両からの車両情報と、ローテーション支援装置100からのタイヤ軸位置情報20aに基づいてタイヤの摩耗量を推定する。
【0040】
車両情報は、例えば、車両の仕様に関する情報、車両の走行状態の情報などを含んでいる。車両の仕様は、例えば車両の重量、車軸位置、駆動輪などの情報である。また車両の走行状態の情報は、車両自体の走行距離、速度、加速度などの情報や、タイヤに設けられたセンサによって計測されるタイヤ温度、タイヤ空気圧などの情報を含んでいる。
【0041】
タイヤ摩耗量推定装置102は、車両情報を入力してタイヤの摩耗量を推定する学習型の演算モデルを有し、実際の車両走行でのタイヤ摩耗量計測値に基づいて演算モデルを学習させ、学習済みの演算モデルにより、タイヤの摩耗量を推定する。タイヤ摩耗量推定装置102は、車両においてタイヤのローテーションがあった場合には、ローテーション支援装置100からタイヤ軸位置情報20aを取得し、演算モデルにおいて各タイヤの車軸位置を変更する。
【0042】
タイヤ摩耗量推定システム110は、タイヤ摩耗量推定装置102がローテーション支援装置100からタイヤ軸位置情報20aを取得することで、タイヤ摩耗量の推定に対してタイヤのローテーションを確実に反映させることができる。
【0043】
(変形例)
上述の実施形態では、表示画面中でのタイヤ図形の移動を作業者が操作して行う例を示したが、ローテーション支援装置100が所定のローテーションのルールに従ってタイヤ図形を移動させてローテーション計画を作業者に提示するようにしてもよい。
【0044】
タイヤのローテーションのルールは、偏摩耗量が他のタイヤよりも大きいタイヤを、偏摩耗量が少ない他のタイヤの車軸位置へ移動させることや、車軸位置を変える場合には左右の位置を変えることなどが挙げられる。ローテーション支援装置100は、このようなローテーションのルールを記憶部20に記憶しておく。
【0045】
図形移動処理部33は、タイヤ溝の溝残量の情報に基づく偏摩耗の程度を各タイヤについて算出し、記憶部20から読み出したローテーションのルールに基づいて、表示画面中で自動的にタイヤ図形を移動させて作業者に提示する。ローテーション支援装置100は、ローテーションのルールに基づくタイヤ図形の移動を提示することによって、作業者がローテーション計画を立て易くすることができる。
【0046】
ローテーション支援装置100は、タイヤローテーションで使用するモードと、タイヤ交換で使用するモードを備えていてもよい。タイヤローテーションで使用するモードにおける機能は、上述のとおりである。タイヤ交換で使用するモードでは、タイヤ図形を取り外す機能および新品タイヤに関するタイヤ図形を表示する機能を持たせる。タイヤ交換で使用するモードでは、例えば、操作受付部32により車軸位置に配置されているタイヤ図形の選択を受け付けた場合、図形移動処理部33は、車軸位置からタイヤ図形を取り外して当該タイヤ図形の表示を消し、当該車軸位置はタイヤ未装着の状態(枠のみが表示された状態)とする。またタイヤ交換で使用するモードでは、操作受付部32によりタイヤ未装着の車軸位置の選択を受け付けた場合、図形移動処理部33は、新品タイヤのリストを表示する。操作受付部32により新品タイヤのリストから新品タイヤの選択を受け付けると、図形移動処理部33は、選択された新品タイヤに関するタイヤ図形を当該車軸位置に配置する。
【0047】
ローテーション支援装置100は、1つのタイヤに対応するタイヤ図形をローテーション後の車軸位置に移動させた場合に、移動後の車軸位置におけるタイヤ寿命が表示されるようにしてもよい。タイヤ寿命の表示は、タイヤローテーションを実施しなかった場合の予想走行可能距離、タイヤローテーション後の予想走行可能距離、タイヤローテーション後の予想走行可能距離の増加率などとする。タイヤ寿命は、例えば移動後の車軸位置において、元のタイヤの摩耗進行の度合い(摩耗量に対する走行距離の比率など)を予め算出しておき、当該車軸位置にローテーション後に配置されたタイヤの現在の摩耗量に対して、算出した摩耗進行の度合いに基づいてタイヤ寿命を算出すればよい。
【0048】
次に実施形態および変形例に係るローテーション支援方法の特徴について説明する。
ローテーション支援方法は、図形配置処理ステップ、操作受付ステップおよび図形移動処理ステップを備える。図形配置処理ステップは、車両の車軸位置におけるタイヤを表すタイヤ図形、およびタイヤの仮置き箇所を表す図形を表示画面中に配置する。操作受付ステップは、図形配置処理ステップによって配置されたタイヤ図形を移動させるユーザの操作を受け付ける。図形移動処理ステップは、操作受付ステップにより受け付けた操作に基づき、車軸位置および仮置き箇所においてタイヤ図形を移動させる。このローテーション支援方法によれば、タイヤローテーションにおけるタイヤの移動作業ミスを抑制し、作業効率を高めることができる。
【0049】
また図形配置処理ステップはタイヤホイールの向きを示す情報を表示させる。このローテーション支援方法によれば、タイヤローテーションの際に、どの向きでタイヤが車軸位置に取り付けることができるかを作業者が容易に理解することができる。
【0050】
また図形配置処理ステップは、タイヤの溝の残溝量を示す情報を表示させる。このローテーション支援方法によれば、作業者に溝残量の情報を提供し、タイヤローテーション計画の立案を支援することができる。
【0051】
また図形配置処理ステップは、少なくとも2台以上の車両のそれぞれにおけるタイヤ図形を表示画面中に表示し、操作受付ステップは、図形配置処理ステップによって配置された少なくとも2台以上の車両間でタイヤ図形を移動させるユーザの操作を受け付ける。このローテーション支援方法によれば、少なくとも2台以上の車両間においても、視覚的に分かり易くタイヤローテーションを模擬し、タイヤローテーション作業を支援することができる。
【0052】
またローテーション支援方法は、図形移動処理ステップにより移動したタイヤ図形に対応するタイヤの識別情報と移動後の車軸位置とを対応づけて記憶させる。このローテーション支援方法によれば、タイヤの識別情報と移動後の車軸位置の情報をタイヤ摩耗量推定システム110等へ提供することができる。
【0053】
また図形移動処理ステップは、車軸位置に配置されているタイヤ図形の選択を受け付けた場合に、車軸位置からタイヤ図形が取り外されるタイヤ未装着の状態とする。図形移動処理ステップは、タイヤ未装着の車軸位置の選択に基づいて、新品タイヤのリストを表示させ、新品タイヤの選択を受け付けた場合に、選択された新品タイヤに関するタイヤ図形を車軸位置に配置する。このローテーション支援方法によれば、タイヤローテーションだけでなく、タイヤ交換を模擬することができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0055】
31 図形配置処理部、 32 操作受付部、 33 図形移動処理部、
34 タイヤ位置管理部、 100 ローテーション支援装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8