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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074025
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】二酸化炭素電解装置
(51)【国際特許分類】
   C25B 3/26 20210101AFI20240523BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20240523BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240523BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20240523BHJP
【FI】
C25B3/26
C25B3/03
C25B9/00 G
C25B15/023
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185068
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】倉品 大輔
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】牛島 輝幸
(72)【発明者】
【氏名】マイ フォントゥ
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AC02
4K021BB03
4K021BB05
4K021DB36
(57)【要約】
【課題】電解反応により得られた炭素化合物と水素とを適切な比率で反応させる。
【解決手段】装置100は、再生可能エネルギーにより発電された電力により電解を行う電解スタック10と、電解スタック10に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部30と、二酸化炭素が供給されるとき電解スタック10での電解により生じた第1ガスを貯留する第1貯留部60aと、二酸化炭素の供給が停止されているとき電解スタック10での電解により生じた第2ガスを貯留する第2貯留部60bと、第1ガスと第2ガスとが導かれる反応器70と、電解スタック10の電圧を検出する電圧センサ16と、電圧が所定値を超えるとき電解スタック10に二酸化炭素を供給するように二酸化炭素供給部30を制御する一方、電圧が所定値以下のとき電解スタック10への二酸化炭素の供給を停止するように二酸化炭素供給部30を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーにより発電された電力により電解を行う電解スタックと、
前記電解スタックに二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部と、
前記二酸化炭素供給部により二酸化炭素が供給されるとき、前記電解スタックでの電解により生じた第1ガスを貯留する第1貯留部と、
前記二酸化炭素供給部による二酸化炭素の供給が停止されているとき、前記電解スタックでの電解により生じた第2ガスを貯留する第2貯留部と、
前記第1貯留部に貯留された前記第1ガスと前記第2貯留部に貯留された前記第2ガスとが導かれる反応器と、
前記電解スタックの電圧を検出する電圧センサと、
前記電圧センサにより検出された電圧が所定値を超えるとき、前記電解スタックに二酸化炭素を供給するように前記二酸化炭素供給部を制御する一方、前記電圧センサにより検出された電圧が前記所定値以下のとき、前記電解スタックへの二酸化炭素の供給を停止するように前記二酸化炭素供給部を制御する制御部と、を備えることを特徴とする二酸化炭素電解装置。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素電解装置において、
前記第1ガスを精製して前記第1貯留部に供給する第1精製部と、
前記第2ガスを精製して前記第2貯留部に供給する第2精製部と、
前記第1精製部および前記第2精製部で生じたオフガスにより前記反応器を昇温する昇温部と、をさらに備えることを特徴とする二酸化炭素電解装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の二酸化炭素電解装置において、
前記反応器の温度を検出する温度センサと、
前記温度センサにより検出された前記反応器の温度に応じて前記反応器までの前記第1ガスおよび前記第2ガスの流れを制御する流れ制御部と、をさらに備えることを特徴とする二酸化炭素電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を電解還元する二酸化炭素電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、二酸化炭素を電解還元する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。上記特許文献1記載の装置では、二酸化炭素が溶解した強アルカリ水溶液からなる電解液をカソードとアノードの間に設けられた液流路に流し、カソードで電解液中の溶存二酸化炭素を電解還元する。
【0003】
排気ガスや大気中の二酸化炭素を回収し、炭素源として利用することで、炭素排出量を低減し、気候変動の緩和または影響軽減に寄与することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-131811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載の装置では、二酸化炭素を電解すると所望の炭素化合物のほかに副生成物として水素ガスが発生する。このような電解反応により得られた炭素化合物と水素とを適切な比率で反応させることで、燃料等のさらに有用な化合物を得ることができるが、上記特許文献1では、この点について何ら提案されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様である二酸化炭素電解装置は、再生可能エネルギーにより発電された電力により電解を行う電解スタックと、電解スタックに二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部と、二酸化炭素供給部により二酸化炭素が供給されるとき、電解スタックでの電解により生じた第1ガスを貯留する第1貯留部と、二酸化炭素供給部による二酸化炭素の供給が停止されているとき、電解スタックでの電解により生じた第2ガスを貯留する第2貯留部と、第1貯留部に貯留された第1ガスと第2貯留部に貯留された第2ガスとが導かれる反応器と、電解スタックの電圧を検出する電圧センサと、電圧センサにより検出された電圧が所定値を超えるとき、電解スタックに二酸化炭素を供給するように二酸化炭素供給部を制御する一方、電圧センサにより検出された電圧が所定値以下のとき、電解スタックへの二酸化炭素の供給を停止するように二酸化炭素供給部を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電解反応により得られた炭素化合物と水素とを適切な比率で反応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素電解装置の電解スタックの一例を模式的に示す断面図。
図2】本発明の実施形態に係る二酸化炭素電解装置の全体構成の一例を概略的に示すブロック図。
図3図2の電解スタックの電圧の変動について説明するための図。
図4】本発明の実施形態に係る二酸化炭素電解装置の制御構成の一例を概略的に示すブロック図。
図5】本発明の実施形態に係る二酸化炭素電解装置による電解反応切替処理の一例を示すフローチャート。
図6】本発明の実施形態に係る二酸化炭素電解装置による反応器オンオフ処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図6を参照して本発明の実施形態について説明する。地球の平均気温は、大気中の温室効果ガスにより、生物に適した温暖な状態に保たれている。具体的には、太陽光で暖められた地表面から宇宙空間へと放射される熱の一部を温室効果ガスが吸収し、地表面へと再放射することで、大気が温暖な状態に保たれている。このような大気中の温室効果ガスの濃度が増加すると、地球の平均気温が上昇する(地球温暖化)。
【0010】
温室効果ガスの中でも地球温暖化への寄与が大きい二酸化炭素の大気中における濃度は、植物や化石燃料として地上や地中に固定された炭素と、二酸化炭素として大気中に存在する炭素とのバランスによって決定される。例えば、植物の生育過程での光合成により大気中の二酸化炭素が吸収されると大気中の二酸化炭素濃度が減少し、化石燃料の燃焼により二酸化炭素が大気中に放出されると大気中の二酸化炭素濃度が増加する。地球温暖化を抑制するには、化石燃料を太陽光、風力、水力、地熱、あるいはバイオマス等の再生可能エネルギーで代替し、炭素排出量を低減することが必要となる。
【0011】
排気ガスや大気中の二酸化炭素を回収し、炭素源として利用することで、炭素排出量を低減することができる。本実施形態では、再生可能電力を利用した電解反応により二酸化炭素を還元して炭素化合物を生成するとともに、副生成物として得られた水素を利用してさらに還元することで、再生可能燃料等を製造できるよう、以下のように二酸化炭素電解装置を構成する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る二酸化炭素電解(以下、装置)100の電解スタック10の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、電解スタック10は、アノード部11aとカソード部11bとの間にアニオン交換型の固体高分子電解質膜(AEM(Anion Exchange Membrane))12を挟み込んだ電解セルあるいは電解セルを積層(直列接続)した電解スタックとして構成される。アノード部11aおよびカソード部11bは、それぞれ液流路13a,13bと、電極触媒14a,14bと、ガス流路15a,15bと、を含む。液流路13a,13bとガス流路15a,15bとは、それぞれ電極触媒14a,14bに隣接して設けられる。
【0013】
液流路13a,13bには、電解スタック10の外部から水酸化カリウム水溶液等の強アルカリ水溶液からなる電解液を導入し、流通させることができる。液流路13a,13bから流出した電解液を再び液流路13a,13bに導入し、循環させてもよい。
【0014】
カソード部11bのガス流路15bには、電解スタック10の外部から二酸化炭素を供給することができる。また、ガス流路15a,15bを介して、電解反応により生じたガスを電解スタック10の外部に排出することができる。
【0015】
アノード部11aの電極触媒14a(アノード)は、ニッケル等の非貴金属または白金等の貴金属で構成され、電解スタック10の外部に設けられた直流電源(以下、電解電源)20の正極に接続される。カソード部11bの電極触媒14b(カソード)は、銅等で構成され、電解電源20の負極に接続される。
【0016】
電解電源20から電解スタック10に電力が供給されると、電力の大きさに応じてアノードとカソードとの間に電位差が生じ、電位差が電解電圧に達すると電解反応が進行する。より具体的には、ガス流路15bに二酸化炭素が供給されている場合、カソード部11bの液流路13bと電極触媒14bとガス流路15bとの三相界面では、電解反応により二酸化炭素が還元されて一酸化炭素、メタン、エチレン等の炭素化合物が生成する。例えば、下式(i)の電解反応により一酸化炭素が生成する。また、ガス流路15bに二酸化炭素が供給されているか否かによらず、下式(ii)の電解反応により電解液中の水が還元されて水酸化物イオンが生成する。カソード部11bで生成した炭素化合物(気体)および水素(気体)は、ガス流路15bを介して電解スタック10の外部に排出される。
CO2+H2O→CO+2OH- ・・・(i)
2H2O→H2+2OH- ・・・(ii)
【0017】
一方、カソード部11bで生成した水酸化物イオンは、カソード部11bの液流路13bの電解液中を移動した後、AEM12を透過し、アノード部11aの液流路13aの電解液中をアノード部11aの電極触媒14aとの界面まで移動する。アノード部11aの電極触媒14aの表面では、下式(iii)の電解反応により水酸化物イオンが酸化されて酸素が生成する。アノード部11aで生成した酸素(気体)は、ガス流路15aを介して電解スタック10の外部に排出され、水(液体)は、そのまま液流路13aを流通、循環する。
4OH-→O2+2H2O ・・・(iii)
【0018】
二酸化炭素の電解反応に要する電解電圧、すなわち上式(i)および上式(iii)の電解反応に要する電解電圧(1.35V程度)は、水の電解反応に要する電解電圧、すなわち上式(ii)および上式(iii)の電解反応に要する電解電圧(1.23V程度)よりも高い。
【0019】
図2は、装置100の全体構成の一例を概略的に示すブロック図である。図2に示すように、装置100は、電解スタック10と、電解スタック10に電力を供給する電解電源20と、電解スタック10に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部30と、電解スタック10に電解液を供給する電解液供給部40a,40bと、を備える。
【0020】
電解スタック10には、電解スタック10の電圧(以下、スタック電圧)を検出する電圧センサ16が設けられる。電圧センサ16は、コントローラ90(図4)に接続され、電圧センサ16のセンサ値は、コントローラ90に出力される。
【0021】
電解電源20は、太陽光等の再生可能エネルギーを利用して直流電力(再生可能電力)を発電し、発電された直流電力を電解スタック10に供給する発電装置として構成される。電解電源20の正極は、電解スタック10のアノード(アノード部11aの電極触媒14a)に接続され、電解電源20の負極は、電解スタック10のカソード(カソード部11bの電極触媒14b)に接続される。太陽光等の自然エネルギーを利用する電解電源20の発電量は、日照等の気象条件によって変動し、これにより電解スタック10のスタック電圧が変動する。
【0022】
図3は、スタック電圧の変動について説明するための図である。図3に示すように、太陽光等の自然エネルギーを利用する場合の発電量は、日照等の気象条件によって変動し、発電量の変動に伴ってスタック電圧も変動する。スタック電圧が二酸化炭素の電解反応に要する電解電圧(所定値)以下の場合は、電解スタック10に二酸化炭素を供給したとしても二酸化炭素の電解反応(式(i),(iii))は進行せず、水の電解反応(式(ii),(iii))のみが進行する。
【0023】
二酸化炭素供給部30は、ポンプ等を含んで構成される。二酸化炭素供給部30は、配管31を介して電解スタック10のカソード部11bのガス流路15b入口に接続され、所定濃度以上の二酸化炭素を含む空気を圧送することで、電解スタック10に二酸化炭素(気体)を供給する。所定濃度以上の二酸化炭素を含む空気は、化石燃料の燃焼を伴う装置や設備からの排気ガスであってもよく、濃縮装置により二酸化炭素が濃縮された大気であってもよい。二酸化炭素供給部30と電解スタック10との間の配管31には、開閉可能に構成された電動バルブ32が設けられる。二酸化炭素供給部30および電動バルブ32は、コントローラ90(図4)により制御される。
【0024】
電解液供給部40a,40bは、それぞれポンプ等を含んで構成される。電解液供給部40a,40bは、それぞれ配管41a,41bを介して電解スタック10の液流路13a,13b入口に接続され、電解液を圧送することで、電解スタック10に電解液を供給する。電解液供給部40a,40bには、それぞれ不図示の配管を介して電解スタック10の液流路13a,13b出口から電解液が還流される。
【0025】
装置100は、さらに、電解スタック10での電解により生じたガスを精製する第1精製部50aおよび第2精製部50bと、第1精製部50aおよび第2精製部50bから供給されるガスをそれぞれ貯留する第1貯留部60aおよび第2貯留部60bと、を備える。また、第1貯留部60aおよび第2貯留部60bに貯留されたガスが導かれる反応器70と、反応器70を昇温する昇温部80と、をさらに備える。
【0026】
第1精製部50aは、二酸化炭素供給部30により二酸化炭素が供給されるとき、電解スタック10での電解により生じた炭素化合物を主成分とする第1ガスを精製する。第1精製部50aは、吸着剤を用いたPSA(Pressure Swing Adsorption)方式またはTSA(Thermal Swing Adsorption)方式の吸着分離装置として構成される。
【0027】
第1精製部50aは、配管51aを介して電解スタック10のカソード部11bのガス流路15b出口に接続され、配管51aには、開閉可能に構成された電動バルブ52aが設けられる。二酸化炭素供給部30により二酸化炭素が供給されるとき、電動バルブ52aが開放され、電解により生じた第1ガスが電解スタック10から第1精製部50aに供給され、第1ガスに含まれる炭素化合物以外の混合物が吸着材に吸着(PSA方式の場合は加圧吸着、TSA方式の場合は常温吸着)される。電動バルブ52aは、コントローラ90(図4)により制御される。
【0028】
第1精製部50aは、さらに、配管53aを介して第1貯留部60aに接続されるとともに、配管54aを介して昇温部80に接続される。第1精製部50aと第1貯留部60aとの間の配管53aには、開閉可能に構成された電動バルブ55aが設けられ、第1精製部50aと昇温部80との間の配管54aには、流量調整可能に構成された電動バルブ56aが設けられる。
【0029】
第1精製部50aにおいて第1ガスに含まれる炭素化合物以外の混合物が吸着材に吸着されるとき、電動バルブ55aが開放されるとともに電動バルブ56aが閉鎖され、精製された高純度の炭素化合物が第1精製部50aから第1貯留部60aに供給され、貯留される。一方、第1精製部50aにおいて吸着材から炭素化合物以外の混合物が脱着(PSA方式の場合は減圧脱着、TSA方式の場合は高温脱着)されるとき、電動バルブ55aが閉鎖されるとともに電動バルブ56aが開放され、吸着材から脱着された混合物を含むオフガスが第1精製部50aから昇温部80に供給される。第1精製部50aおよび電動バルブ55a,56aは、コントローラ90(図4)により制御される。
【0030】
第2精製部50bは、二酸化炭素供給部30による二酸化炭素の供給が停止されているとき、電解スタック10での電解により生じた水素を主成分とする第2ガスを精製する。第2精製部50bも、吸着剤を用いたPSA方式またはTSA方式の吸着分離装置として構成される。
【0031】
第2精製部50bは、配管51bを介して電解スタック10のカソード部11bのガス流路15b出口に接続され、配管51bには、開閉可能に構成された電動バルブ52bが設けられる。二酸化炭素供給部30による二酸化炭素の供給が停止されているとき、電動バルブ52bが開放され、電解により生じた第2ガスが電解スタック10から第2精製部50bに供給され、第2ガスに含まれる水素以外の混合物が吸着材に吸着される。電動バルブ52bは、コントローラ90(図4)により制御される。
【0032】
第2精製部50bは、さらに、配管53bを介して第2貯留部60bに接続されるとともに、配管54bを介して昇温部80に接続される。第2精製部50bと第2貯留部60bとの間の配管53bには、開閉可能に構成された電動バルブ55bが設けられ、第2精製部50bと昇温部80との間の配管54bには、流量調整可能に構成された電動バルブ56bが設けられる。
【0033】
第2精製部50bにおいて第2ガスに含まれる水素以外の混合物が吸着材に吸着されるとき、電動バルブ55bが開放されるとともに電動バルブ56bが閉鎖され、精製された高純度の水素が第2精製部50bから第2貯留部60bに供給され、貯留される。一方、第2精製部50bにおいて吸着材から水素以外の混合物が脱着されるとき、電動バルブ55bが閉鎖されるとともに電動バルブ56bが開放され、吸着材から脱着された混合物を含むオフガスが第2精製部50bから昇温部80に供給される。第2精製部50bおよび電動バルブ55b,56bは、コントローラ90(図4)により制御される。
【0034】
反応器70は、配管71aを介して第1貯留部60aに接続されるとともに、配管71bを介して第2貯留部60bに接続される。配管71bおよび配管71bには、それぞれ流量調整可能に構成された電動バルブ72a,72bが設けられる。反応器70には、電動バルブ72aの開度に応じて第1貯留部60aに貯留された高純度の炭素化合物が導かれるとともに、電動バルブ72bの開度に応じて第2貯留部60bに貯留された高純度の水素が導かれる。電動バルブ72a,72bは、コントローラ90(図4)により制御される。
【0035】
昇温部80は、反応器70全体を覆うように設けられた熱交換器として構成され、第1精製部50aおよび第2精製部50bから供給されたオフガス(熱媒)により反応器70を昇温する。反応器70には、反応器70の温度を検出する温度センサ73が設けられる。温度センサ73は、コントローラ90(図4)に接続され、温度センサ73のセンサ値は、コントローラ90に出力される。
【0036】
反応器70では、第1貯留部60aから供給される炭素化合物を、第2貯留部60bから供給される水素により還元することで、再生可能燃料等を製造する。例えば、FT(Fischer-Tropsch)合成により再生可能メタノール燃料を製造する。反応器70は、所望の再生可能燃料等を得るための反応を促進可能な触媒が設けられた触媒反応装置として構成される。反応器70の温度は、所望の再生可能燃料等を得るための反応の種類に応じ、電動バルブ56a,56bにより熱媒の流量を介して調整することができる。反応器70に導入される反応物(二酸化炭素、水素)の比率や流量は、所望の再生可能燃料等を得るための反応の種類に応じ、反応器70内の温度や圧力等を考慮して、電動バルブ72a,72bにより調整することができる。
【0037】
図4は、装置100の制御構成の一例を概略的に示すブロック図である。図4に示すように、装置100は、さらに、二酸化炭素供給部30、電解液供給部40a,40b、第1精製部50a、第2精製部50b、および電動バルブ32~72bを制御するコントローラ90を備える。コントローラ90には、電圧センサ16と温度センサ73とがそれぞれ接続される。コントローラ90は、CPUなどの演算部91、ROM,RAMなどの記憶部92、およびその周辺回路などを有するコンピュータを含んで構成される。コントローラ90の記憶部92には、演算部91が実行するプログラムや設定値等の情報が記憶される。
【0038】
コントローラ90(演算部91)は、電圧センサ16により検出されたスタック電圧が所定値(図3)を超えるとき、電解スタック10に二酸化炭素を供給するように二酸化炭素供給部30および電動バルブ32を制御する。また、電解スタック10から第1精製部50aに第1ガスが供給されるように電動バルブ52a,52bを制御するとともに、供給された第1ガスを精製するように第1精製部50aを制御する。さらに、第1精製部50aで精製された高純度の炭素化合物が第1貯留部60aに供給され、吸着材から脱着された混合物を含むオフガスが昇温部80に供給されるように電動バルブ55a,56aを制御する。
【0039】
コントローラ90は、電圧センサ16により検出されたスタック電圧が所定値以下のとき、電解スタック10への二酸化炭素の供給を停止するように二酸化炭素供給部30および電動バルブ32を制御する。また、電解スタック10から第2精製部50bに第2ガスが供給されるように電動バルブ52a,52bを制御するとともに、供給された第2ガスを精製するように第2精製部50bを制御する。さらに、第2精製部50bで精製された高純度の水素が第2貯留部60bに供給され、吸着材から脱着された混合物を含むオフガスが昇温部80に供給されるように電動バルブ55b,56bを制御する。
【0040】
コントローラ90は、さらに、温度センサ73により検出された反応器70の温度に応じて、反応器70の温度が所望の再生可能燃料等を得るための反応を促進可能な所定温度となるように、電動バルブ56a,56bを制御する。また、反応器70の温度が所定温度以上のとき、第1貯留部60aおよび第2貯留部60bから反応器70に反応物(二酸化炭素、水素)が供給されるように電動バルブ72a,72bを制御する。反応器70の温度が所定温度未満のときは、反応器70に反応物(二酸化炭素、水素)を供給しても所望の反応が進行しないため、第1貯留部60aおよび第2貯留部60bから反応器70への反応物の供給を停止するように電動バルブ72a,72bを制御する。
【0041】
図5は、装置100による電解反応切替処理の一例を示すフローチャートであり、コントローラ90の演算部91により実行される処理の一例を示す。このフローチャートに示す処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。図5に示すように、先ずステップS1で、電圧センサ16により検出された電解スタック10のスタック電圧を読み込む。次いでステップS2で、ステップS1で読み込まれたスタック電圧が所定値(図3)を超えるか否かを判定する。
【0042】
ステップS2で肯定されるとステップS3に進み、電解スタック10に二酸化炭素を供給するように二酸化炭素供給部30および電動バルブ32を制御する。また、電解スタック10から第1精製部50aに第1ガスが供給されるように電動バルブ52a,52bを制御し、第1ガスを精製するように第1精製部50aを制御する。また、第1精製部50aで精製された第1ガス(高純度の炭素化合物)が第1貯留部60aに供給され、吸着材から脱着された混合物を含むオフガスが昇温部80に供給されるように電動バルブ55a,56aを制御する。
【0043】
一方、ステップS2で否定されるとステップS4に進み、電解スタック10への二酸化炭素の供給を停止するように二酸化炭素供給部30および電動バルブ32を制御する。また、電解スタック10から第2精製部50bに第2ガスが供給されるように電動バルブ52a,52bを制御し、第2ガスを精製するように第2精製部50bを制御する。また、第2精製部50bで精製された第2ガス(高純度の水素)が第2貯留部60bに供給され、吸着材から脱着された混合物を含むオフガスが昇温部80に供給されるように電動バルブ55b,56bを制御する。
【0044】
太陽光等の自然エネルギーを利用する場合の発電量は、日照等の気象条件によって変動し、発電量の変動に伴ってスタック電圧も変動する。スタック電圧が二酸化炭素の電解電圧(所定値)以下の場合は、電解スタック10への二酸化炭素の供給を停止して水電解のみを行い、スタック電圧が所定値を超える場合に限って、電解スタック10に二酸化炭素を供給して二酸化炭素の電解を行う。このように、再生可能電力の変動に応じて電解電圧の異なる複数の電解反応を切り替えることで、複数の物質(炭素化合物と水素)を効率的に生成することができる。
【0045】
図6は、装置100による反応器オンオフ処理の一例を示すフローチャートであり、コントローラ90の演算部91により実行される処理の一例を示す。このフローチャートに示す処理は、所定時間毎に繰り返し実行される。図6に示すように、先ずステップS10で、温度センサ73により検出された反応器70の温度を読み込む。次いでステップS11、ステップS10で読み込まれた温度が所定温度以上であるか否かを判定する。
【0046】
ステップS11で肯定されるとステップS12に進み、第1貯留部60aおよび第2貯留部60bから反応器70に反応物(二酸化炭素、水素)が供給されるように電動バルブ72a,72bを制御する。一方、ステップS11で否定されるとステップS13に進み、第1貯留部60aおよび第2貯留部60bから反応器70への反応物の供給を停止するように電動バルブ72a,72bを制御する。
【0047】
このように、生成された炭素化合物と水素とをそれぞれ貯留した上で反応器70に導入することで、単一の電解スタック10での電解反応により得られた炭素化合物と水素とを適切な比率で反応させることができる。また、精製により生じるオフガスの廃熱を利用して反応器70を昇温し、反応温度が確保されたときに反応器70に反応ガスを供給することで、装置100全体の効率を一層向上することができる。
【0048】
本実施形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)装置100は、再生可能エネルギーにより発電された電力により電解を行う電解スタック10と、電解スタック10に二酸化炭素を供給する二酸化炭素供給部30と、二酸化炭素供給部30により二酸化炭素が供給されるとき、電解スタック10での電解により生じた第1ガスを貯留する第1貯留部60aと、二酸化炭素供給部30による二酸化炭素の供給が停止されているとき、電解スタック10での電解により生じた第2ガスを貯留する第2貯留部60bと、第1貯留部60aに貯留された第1ガスと第2貯留部60bに貯留された第2ガスとが導かれる反応器70と、電解スタック10のスタック電圧を検出する電圧センサ16と、電圧センサ16により検出されたスタック電圧が所定値を超えるとき、電解スタック10に二酸化炭素を供給するように二酸化炭素供給部30を制御する一方、電圧センサ16により検出されたスタック電圧が所定値以下のとき、電解スタック10への二酸化炭素の供給を停止するように二酸化炭素供給部30を制御するコントローラ90と、を備える(図2図4)。
【0049】
このように、再生可能電力の変動に伴うスタック電圧の変動に応じて二酸化炭素の供給、非供給を切り替えることで、炭素化合物と水素とを効率的に製造することができる。また、単一の電解スタック10での電解により得られた炭素化合物と水素とをそれぞれ貯留した上で反応器70に導入することで、炭素化合物と水素とを適切な比率で反応させることができる。
【0050】
(2)装置100は、第1ガスを精製して第1貯留部60aに供給する第1精製部50aと、第2ガスを精製して第2貯留部60bに供給する第2精製部50bと、第1精製部50aおよび第2精製部50bで生じたオフガスにより反応器70を昇温する昇温部80と、をさらに備える(図2)。精製により生じるオフガスの廃熱を利用することで、装置100全体の効率を一層向上することができる。
【0051】
(3)装置100は、反応器70の温度を検出する温度センサ73と、電動バルブ72a,72bと、をさらに備える(図2図4)。コントローラ90は、温度センサ73により検出された反応器70の温度に応じて反応器70までの第1ガスおよび第2ガスの流れを制御する。反応器70の温度に応じて反応ガスを供給することで、装置100全体の効率を一層向上することができる。
【0052】
上記実施形態では、図1等で二酸化炭素が供給されるときに電解スタック10のカソード側で進行する電解反応を二酸化炭素から一酸化炭素への電解還元反応として説明したが、一酸化炭素は一例であり、二酸化炭素が供給されるときの電解により生じる第1ガスは一酸化炭素に限定されない。二酸化炭素から第1ガスを精製する電解反応は、電解電圧が副反応である水の電解反応と異なるものであればよい。
【0053】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 電解スタック、16 電圧センサ、20 電解電源、30 二酸化炭素供給部、32,52a,52b,55a,55b,56a,56b,72a,72b 電動バルブ、40a,40b 電解液供給部、50a 第1精製部、50b 第2精製部、60a 第1貯留部、60b 第2貯留部、70 反応器、73 温度センサ、80 昇温部、90 コントローラ、91 演算部、92 記憶部、100 二酸化炭素電解装置(装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6