(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007403
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】新規な遷移金属化合物、それを含む遷移金属触媒組成物、およびそれを用いたエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/00 20060101AFI20240111BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240111BHJP
C08F 210/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C07F7/00 Z CSP
C08F4/6592
C08F210/00 510
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023103453
(22)【出願日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2022-0082230
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522318173
【氏名又は名称】ハンファ トータルエナジーズ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANWHA TOTALENERGIES PETROCHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】103,Dokgot-2-ro, Daesan-eup, Seosan-si, Chungcheongnam-do 31900, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ホ ユン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ト フン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヨン チュ
(72)【発明者】
【氏名】リ,トン クン
【テーマコード(参考)】
4H049
4J128
【Fターム(参考)】
4H049VN07
4H049VP01
4H049VQ12
4H049VR22
4H049VR32
4H049VS12
4H049VU14
4H049VV06
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC01
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01A
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4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC15A
4J128BC15B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB07
4J128EC02
4J128FA02
4J128FA07
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA08
4J128GA19
4J128GA26
4J128GB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規な遷移金属化合物、それを含むエチレンとα-オレフィンの共重合体製造用として高い触媒活性を有する遷移金属触媒組成物、それを用いたエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法、および製造されたエチレンとα-オレフィンの共重合体を提供する。
【解決手段】例えば、下記式1の構造を有する遷移金属化合物が示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される遷移金属化合物。
[化学式1]
[前記化学式1中、
Mは、第4族遷移金属であり、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、非置換のまたは(C1-C10)アルキルで置換された(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであり、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、非置換のまたは(C1-C10)アルキルで置換された(C6-C20)アリールであり、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、((C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール)(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルコキシ(C6-C20)アリールオキシ、-OSiR
aR
bR
c、-SR
d、-NR
eR
f、-PR
gR
h、または(C1-C20)アルキリデンであり、
R
a~R
dは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルであり、
R
e~R
hは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、またはトリ(C6-C20)アリールシリルであり、
X
1またはX
2の一方が(C1-C20)アルキリデンである場合、他方は存在しない。]
【請求項2】
前記化学式1のMは、Ti、Zr、またはHfであり、
R1およびR2は、それぞれ独立して、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、非置換のまたは(C1-C5)アルキルで置換された(C6-C12)アリールであり、
X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、または(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルである、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項3】
前記化学式1のMは、Hfであり、
R1およびR2は、それぞれ独立して、(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキルであり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、(C6-C12)アリールであり、
X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、(C6-C12)アリール、または(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキルである、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項4】
前記化学式1のMは、Hfであり、
R
3およびR
4は、フェニルであり、
X
1およびX
2は、それぞれ独立して、メチル、ベンジル、またはClであり、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、下記化学式2で表されるものである、請求項1に記載の遷移金属化合物。
[化学式2]
[前記化学式2中、
Lは、直鎖状または分岐鎖状の(C1-C10)アルキレンである。]
【請求項5】
前記遷移金属化合物は、[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ、[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジベンジル、または[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジメチルである、請求項1に記載の遷移金属化合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の遷移金属化合物と、
アルミニウム化合物、ホウ素化合物、またはこれらの混合物から選択される助触媒と、
を含む、エチレンとα-オレフィンの共重合体製造用遷移金属触媒組成物。
【請求項7】
前記助触媒として用いられるアルミニウム化合物は、アルミノキサンおよび有機アルミニウムから選択される1つまたは2つ以上である、請求項6に記載のエチレンとα-オレフィンの共重合体製造用遷移金属触媒組成物。
【請求項8】
a)請求項6に記載のエチレンとα-オレフィンの共重合体製造用遷移金属触媒組成物、エチレン、およびα-オレフィンコモノマーを混合するステップと、
b)110~170℃の温度で共重合反応を行うステップと、
を含む、エチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記エチレンと共重合する前記α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン(Norbornene)、フェニルノルボルネン、スチレン(styrene)、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、および3-クロロメチルスチレンから選択される1つまたは2つ以上である、請求項8に記載のエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記b)ステップは、120~160℃の温度および10~100barの圧力で行われる、請求項8に記載のエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法。
【請求項11】
前記エチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法は、C5-C12脂肪族炭化水素溶媒中で行われる、請求項8に記載のエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の遷移金属化合物を触媒として用いて製造される、エチレンとα-オレフィンの共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な遷移金属化合物、それを含むエチレンとα-オレフィンの共重合体製造用遷移金属触媒組成物、それを用いたエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法、および前記遷移金属化合物を触媒として用いて製造されたエチレンとα-オレフィンの共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレン単独重合体およびエチレンとα-オレフィンとの共重合体の製造には、チタンまたはバナジウム化合物の主触媒成分とアルキルアルミニウム化合物の助触媒成分とから構成される、いわゆる、チーグラー・ナッタ触媒系が一般的に用いられてきた。チーグラー・ナッタ触媒系はエチレン重合に対して高い活性を示すが、不均一な触媒活性部位のため、一般的に生成される重合体は分子量分布が広く、特にエチレンとα-オレフィンの共重合体においては組成分布が均一でないという欠点があった。
【0003】
その後、単一種の触媒活性部位を有する均一系触媒として、従来のチーグラー・ナッタ触媒系に比べて、分子量分布が狭く、組成分布が均一なポリエチレンを製造できるジルコニウム、ハフニウムなどの周期表第4族遷移金属のメタロセン化合物と助触媒であるメチルアルミノキサンとから構成されるメタロセン触媒系に関する研究が多様に行われてきた。前記メタロセン化合物は、異なる置換パターンを有するシクロペンタジエニルベースの触媒として現在産業的に活発に用いられており、ポリエチレンだけでなく、ポリプロピレンの製造にも用いられている。
【0004】
しかし、前記触媒系では高分子量の重合体を得ることが困難であった。すなわち、高温で行われる溶液重合法に適用する場合、重合活性が急激に減少し、β-脱水素反応が優勢であるため、高分子量の重合体を製造するには適さないことが知られている。
【0005】
溶液重合条件でエチレン単独重合またはエチレンとα-オレフィンとの共重合において、高い触媒活性と高分子量の重合体を製造できる触媒として、遷移金属を環状に連結させた遷移金属触媒が発表された。
【0006】
US6313240では、シクロペンタジエニルリガンドまたは芳香族で縮合および置換されたシクロペンタジエニルリガンド;芳香族で縮合および置換されたシクロペンタジエニルリガンド;および2つのシクロペンタジエニルリガンドを連結するブリッジを有するハフニウム有機金属化合物を含む触媒システムを記述している。
【0007】
また、US6559253では、置換体のないフルオレンに、ジフェニルで置換されたブリッジと1つのシクロペンタジエンリガンドが連結された構造を例として開示している。US6300433では、置換されたジフェニルメチレンブリッジを有する、1つ以上の置換されたシクロペンタジエニル-フルオレニルリガンドの構造を開示している。
【0008】
このような触媒の場合、触媒自体の低くなった立体障害効果によりα-オレフィンとの反応性が著しく改善されたが、商業的に利用するには多くの困難がある。したがって、経済性を基にした商業化触媒の要求特性、すなわち、優れた高温活性、優れたα-オレフィンとの反応性、および高分子量を有する重合体の製造能力など、より競争力のある触媒系の確保が重要視されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一実施形態は、新規な遷移金属化合物を提供することにある。
本発明の別の実施形態は、エチレンとα-オレフィンの高分子量の共重合体を製造できる前記遷移金属化合物を含む遷移金属触媒組成物を提供することにある。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態は、産業的に経済的かつ利用しやすい、前記遷移金属化合物を含む触媒組成物を用いたエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するために、本発明者らが研究を行った結果、触媒として用いられる化合物の活性部位を安定化させると、高温溶液重合でエチレンとα-オレフィンの高分子量の共重合体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、下記化学式1で表される遷移金属化合物を提供する。
【0013】
【0014】
[前記化学式1中、
Mは、第4族遷移金属であり、
R1およびR2は、それぞれ独立して、非置換のまたは(C1-C10)アルキルで置換された(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、非置換のまたは(C1-C10)アルキルで置換された(C6-C20)アリールであり、
X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、((C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール)(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルコキシ(C6-C20)アリールオキシ、-OSiRaRbRc、-SRd、-NReRf、-PRgRh、または(C1-C20)アルキリデンであり、
Ra~Rdは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルであり、
Re~Rhは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、またはトリ(C6-C20)アリールシリルであり、
X1またはX2の一方が(C1-C20)アルキリデンである場合、他方は存在しない。]
【0015】
詳細には、前記化学式1のMは、Ti、Zr、またはHfであり、R1およびR2は、それぞれ独立して、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであり、R3およびR4は、それぞれ独立して、非置換のまたは(C1-C5)アルキルで置換された(C6-C12)アリールであり、X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、または(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであってもよい。
【0016】
また、前記化学式1のMは、Hfであり、R1およびR2は、それぞれ独立して、(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキルであり、R3およびR4は、それぞれ独立して、(C6-C12)アリールであり、X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、(C6-C12)アリール、または(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキルであってもよい。
【0017】
より詳細には、本発明の一実施形態に係る前記化学式1のMは、Hfであり、R3およびR4は、フェニルであり、X1およびX2は、それぞれ独立して、メチル、ベンジル、またはClであり、R1およびR2は、それぞれ独立して、下記化学式2で表されるものであってもよい。
【0018】
【0019】
[前記化学式2中、
Lは、直鎖状または分岐鎖状の(C1-C10)アルキレンである。]
【0020】
本発明の一実施形態に係る前記遷移金属化合物は、[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ、[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジベンジル、または[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジメチルであってもよい。
【0021】
本発明は、本発明の一実施形態に係る遷移金属化合物と、アルミニウム化合物、ホウ素化合物、またはこれらの混合物から選択される助触媒と、を含む、エチレンとα-オレフィンの共重合体製造用遷移金属触媒組成物を提供する。
【0022】
前記助触媒として用いられるアルミニウム化合物は、アルミノキサンおよび有機アルミニウムから選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
また、本発明は、エチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法を提供し、前記製造方法は、a)本発明の一実施形態に係る遷移金属触媒組成物、エチレン、およびα-オレフィンコモノマーを混合するステップと、b)110~170℃の温度で共重合反応を行うステップと、を含んでもよい。
【0023】
前記エチレンと共重合するα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン(Norbornene)、フェニルノルボルネン、スチレン(styrene)、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、および3-クロロメチルスチレンから選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
【0024】
具体的に、前記b)ステップは、120℃~160℃の温度および10~100barの圧力で行われてもよい。
また、前記エチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法は、C5-C12脂肪族炭化水素溶媒中で行われてもよい。
【0025】
本発明は、本発明の一実施形態に係る遷移金属化合物を触媒として用いて製造される、エチレンとα-オレフィンの共重合体を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の新規な遷移金属化合物は、穏やかな条件の単純な工程により高収率で容易に製造することができ、単一活性部位触媒である前記遷移金属化合物およびそれを含む触媒組成物は、熱的安定性に優れ、高温でも優れた触媒活性を維持することができる。したがって、それを利用すると、エチレンとα-オレフィンの高分子量の共重合体を製造することができる。このようなエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法は、単純な工程により高収率で様々な物性を有する共重合体を得ることができるため、非常に経済的な方法であり、産業的に大量生産に容易に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の新規な遷移金属化合物、それを含む遷移金属触媒組成物、およびそれを用いたエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法について詳しく説明する。
【0028】
本発明で用いられる単数の形態は、文脈上、特に指示しない限り、複数の形態も含むことを意図し得る。
本発明に記載された「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、または「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料、または工程を排除するものではない。
【0029】
本発明に記載された「アルキル」は、炭素および水素原子のみからなる1価の直鎖状もしくは分岐鎖状の飽和炭化水素基を意味し、このようなアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、ノニルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0030】
本発明に記載された「アリール」は、芳香族炭化水素から1つの水素原子を除去することにより誘導された有機基であり、各環に適切には4~7個、好ましくは5または6個の環原子を含む単環または縮合環系を含み、複数のアリールが単結合で連結されている形態まで含む。縮合環系は、飽和または部分的に飽和した環のような脂肪族環を含んでもよく、必ず1つ以上の芳香族環を含む。また、前記脂肪族環は、窒素、酸素、硫黄、カルボニルなどを環内に含んでもよい。前記アリール基の具体例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、インデニル(indenyl)、フルオレニル、フェナントレニル、アントラセニル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、9,10-ジヒドロアントラセニルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0031】
本発明に記載された「シクロアルキル」は、1つ以上の環からなる1価の飽和炭素環式基を意味する。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
本発明に記載された「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素原子を意味する。
本発明に記載された「アルコキシ」は、-OCH3、-OCH2CH3、-O(CH2)2CH3、-O(CH2)3CH3、-O(CH2)4CH3、-O(CH2)5CH3、およびその類似物を含む-O-(アルキル)を意味し、ここで、「アルキル」は、上記で定義されたとおりである。
【0033】
本発明に記載された「アリールオキシ」は、それぞれ-O-アリール基を意味し、ここで、「アリール」は、上記で定義されたとおりである。
本発明に記載された「アルキリデン」は、1つの共通炭素原子上に2の原子価を有する、直鎖状または分岐鎖状の飽和2価炭化水素基を意味する。
【0034】
本発明は、下記化学式1で表される遷移金属化合物を提供する。
【0035】
【0036】
[前記化学式1中、
Mは、第4族遷移金属であり、
R1およびR2は、それぞれ独立して、非置換のまたは(C1-C10)アルキルで置換された(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであり、
R3およびR4は、それぞれ独立して、非置換のまたは(C1-C10)アルキルで置換された(C6-C20)アリールであり、
X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、(C3-C20)シクロアルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、((C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール)(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルコキシ、(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリールオキシ、(C1-C20)アルコキシ(C6-C20)アリールオキシ、-OSiRaRbRc、-SRd、-NReRf、-PRgRh、または(C1-C20)アルキリデンであり、
Ra~Rdは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、または(C3-C20)シクロアルキルであり、
Re~Rhは、それぞれ独立して、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール、(C3-C20)シクロアルキル、トリ(C1-C20)アルキルシリル、またはトリ(C6-C20)アリールシリルであり、
X1またはX2の一方が(C1-C20)アルキリデンである場合、他方は存在しない。]
【0037】
前記化学式1で表される遷移金属化合物は、中心金属として周期表第4族遷移金属が、電子が豊富で広く非局在化しているシクロペンタジエニル基と、2、7位にアリールアルキル置換体で置換されたフルオレニル基により連結され、シクロペンタジエニル基とフルオレニル基は、炭素により連結された構造を有する化合物であり、前記2、7位にアリールアルキル置換体で置換されたフルオレニル基により触媒活性部位が安定化されることができるため、エチレン単独重合またはエチレンとα-オレフィンとの共重合に優れた触媒活性を示すことができる。さらに、高温で行われる溶液重合工程に前記遷移金属化合物を利用すると、高分子量を有するエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体を製造することができる。
【0038】
詳細には、前記化学式1のMは、Ti、Zr、またはHfであり、R1およびR2は、それぞれ独立して、(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであり、R3およびR4は、それぞれ独立して、非置換のまたは(C1-C5)アルキルで置換された(C6-C12)アリールであり、X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C20)アルキル、(C6-C20)アリール、または(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキルであってもよい。
【0039】
一実施形態に係る前記化学式1のMは、Hfであり、R1およびR2は、それぞれ独立して、(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキルであり、R3およびR4は、それぞれ独立して、(C6-C12)アリールであり、X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C10)アルキル、(C6-C12)アリール、または(C6-C12)アリール(C1-C10)アルキルであってもよい。
【0040】
また、一実施形態に係る前記化学式1のMは、Hfであり、R1およびR2は、それぞれ独立して、(C6-C12)アリール(C1-C5)アルキルであり、R3およびR4は、それぞれ独立して、(C6-C12)アリールであり、X1およびX2は、それぞれ独立して、ハロゲン、(C1-C5)アルキル、(C6-C12)アリール、または(C6-C12)アリール(C1-C5)アルキルであってもよい。
【0041】
より詳細には、本発明の一実施形態に係る前記化学式1のMは、Hfであり、R3およびR4は、フェニルであり、X1およびX2は、それぞれ独立して、メチル、ベンジル、またはClであり、R1およびR2は、それぞれ独立して、下記化学式2で表されるものであってもよい。
【0042】
【0043】
[前記化学式2中、
Lは、直鎖状または分岐鎖状の(C1-C10)アルキレンである。]
【0044】
より詳細には、前記化学式2のLは、直鎖状または分岐鎖状の(C1-C5)アルキレンであってもよい。
本発明の一実施形態に係る前記遷移金属化合物は、[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ、[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジベンジル、または[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジメチルであってもよい。
【0045】
一方、本発明の一実施形態に係る遷移金属化合物は、エチレンとα-オレフィンの共重合体の製造に用いられる活性触媒成分となるために、好ましくは、前記化学式1の遷移金属化合物のX1およびX2リガンドを抽出して中心金属をカチオン化させつつ、弱い結合力を有する対イオン、すなわち、アニオンとして作用できるアルミニウム化合物、ホウ素化合物、またはこれらの混合物が助触媒として共に作用することができる。
【0046】
したがって、本発明は、本発明の一実施形態に係る遷移金属化合物と、アルミニウム化合物、ホウ素化合物、またはこれらの混合物から選択される助触媒と、を含む、エチレンとα-オレフィンの共重合体製造用遷移金属触媒組成物を提供する。
【0047】
本発明の一実施形態に係るエチレンとα-オレフィンの共重合体製造用遷移金属触媒組成物において、前記助触媒として用いられるアルミニウム化合物は、アルミノキサン、有機アルミニウム、および有機アルミニウムオキシド化合物から選択される1つまたは2つ以上であってもよく、前記アルミニウム化合物は、具体的に、下記化学式3または4のアルミノキサン化合物、下記化学式5の有機アルミニウム化合物、または下記化学式6または7の有機アルミニウムオキシド化合物から選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
【0048】
[化学式3]
(-Al(R11)-O-)m
【0049】
[化学式4]
(R11)2Al-(-O(R11)-)q-(R11)2
【0050】
[化学式5]
(R12)rAl(E)3-r
【0051】
[化学式6]
(R13)2AlOR14
【0052】
[化学式7]
R13Al(OR14)2
【0053】
[前記化学式3~7中、
R11は、(C1-C20)アルキルであり、
R12およびR13は、それぞれ(C1-C20)アルキルであり、
Eは、水素またはハロゲンであり、
R14は、(C1-C20)アルキルまたは(C6-C20)アリールであり、
mおよびqは、それぞれ5~20の整数であり、
rは、1~3の整数である。]
【0054】
具体的に、前記化学式3および4のR11は、メチルまたはイソブチルであってもよい。
前記アルミニウム化合物として使用可能な具体例として、アルミノキサン化合物の例としては、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサンが挙げられ、有機アルミニウム化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、およびトリオクチルアルミニウムを含むトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジプロピルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、およびジヘキシルアルミニウムクロライドを含むジアルキルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、プロピルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、およびヘキシルアルミニウムジクロライドを含むアルキルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジプロピルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、およびジヘキシルアルミニウムヒドリドを含むジアルキルアルミニウムヒドリドが挙げられる。
【0055】
より好ましくは、前記アルミニウム化合物は、メチルアルミノキサン、修飾メチルアルミノキサン、テトライソブチルアルミノキサン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、およびトリイソブチルアルミニウムから選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
【0056】
本発明における助触媒として使用可能なホウ素化合物は、下記化学式8~10で表されるホウ素化合物の中から選択されてもよい。
【0057】
[化学式8]
B(R21)3
【0058】
[化学式9]
[R22]+[B(R21)4]-
【0059】
[化学式10]
[(R23)pZH]+[B(R21)4]-
【0060】
[前記化学式8~10中、
Bは、ホウ素原子であり、
Zは、窒素またはリン原子であり、
R21は、フェニルであり、
前記フェニルは、フルオロ、フルオロで置換もしくは非置換の(C1-C20)アルキル、およびフルオロで置換もしくは非置換の(C1-C20)アルコキシから選択される3~5個の置換基でさらに置換されていてもよく、
R22は、(C5-C7)アリール基、(C1-C20)アルキル(C6-C20)アリール基、または(C6-C20)アリール(C1-C20)アルキル基であり、
R23は、(C1-C50)アルキル基または窒素原子と共に2個の(C1-C10)アルキルで置換されたアニリニウム(Anilinium)基であり、
pは、2または3の整数である。]
【0061】
より具体的に、R22は、トリフェニルメチリウム(triphenylmethylium)基であってもよい。
好ましくは、前記助触媒として用いられるホウ素化合物は、ジメチルフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリチルテトラフェニルボレート、ジメチルフェニルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、アニリニウムテトラフェニルボレート、アニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、および銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートから選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
【0062】
一方、前記助触媒は、反応物中の触媒に毒として作用する不純物を除去するスカベンジャー(scavenger)の役割をすることができる。
本発明に係る一実施形態において、前記アルミニウム化合物およびホウ素化合物を助触媒として用いる場合、本発明の遷移金属化合物と助触媒との比の好ましい範囲は、遷移金属(M):アルミニウム原子(Al):ホウ素原子(B)のモル比が1:(10~3,000):(1~100)の範囲であってもよく、より好ましくは1:(100~1,000):(3~10)の範囲であってもよい。
【0063】
本発明の遷移金属化合物と助触媒との比が上記範囲である場合、遷移金属化合物の活性化が十分に行われることで、遷移金属化合物の触媒活性度に優れることができるが、これに限定されず、反応の条件および目的に応じて比の範囲が変動することができる。
【0064】
本発明は、エチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法を提供し、前記製造方法は、a)本発明の一実施形態に係る遷移金属触媒組成物、エチレン、およびα-オレフィンコモノマーを混合するステップと、b)110~170℃の温度で共重合反応を行うステップと、を含んでもよい。
【0065】
また、本発明は、前記共重合体の製造方法だけでなく、エチレン単独重合体の製造方法も提供し、前記共重合体の製造方法において、コモノマーの代わりにエチレンのみを用いて同様の方法で行ってもよい。
【0066】
具体的に、前記b)ステップは、120~165℃の温度および10~100barの圧力で行われてもよく、好ましく130~160℃の温度および15~50barの圧力で行われてもよい。
【0067】
本発明の一実施形態に係るエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法において、前記α-オレフィンとしては、(C3~C18)α-オレフィン、(C5~C20)シクロオレフィン、スチレンおよびその誘導体から選択される1つまたは2つ以上を用いてもよく、(C3~C18)α-オレフィンの例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、および1-オクタデセンからなる群から選択される1つまたは2つ以上であってもよく、(C5~C20)シクロオレフィンの例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネン(Norbornene)、およびフェニルノルボルネンからなる群から選択される1つまたは2つ以上であってもよく、スチレンおよびその誘導体の例としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、および3-クロロメチルスチレンから選択される1つまたは2つ以上であってもよい。より具体的に、α-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、および1-デセンから選択される1つまたは2つ以上であってもよいが、これに限定されない。
【0068】
本発明の一実施形態に係る遷移金属触媒組成物を用いたエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法は、適切な有機溶媒の存在下で、上記の遷移金属触媒、助触媒、α-オレフィンコモノマー、およびエチレンを接触させて行ってもよい。この際、遷移金属触媒、助触媒、およびα-オレフィンコモノマー成分は、反応器内に別に投入するかまたは各成分を予め混合して反応器に投入してもよい。
【0069】
また、前記製造方法は、C5-C12脂肪族炭化水素溶媒中で行われてもよく、具体的に、C5-C12脂肪族炭化水素溶媒は、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、およびメチルシクロヘキサンから選択される1つまたは2つ以上であってもよく、好ましくは、ヘキサン、シクロヘキサン、またはこれらの混合物であってもよい。
【0070】
本発明の一実施形態に係るエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法は、共重合体の製造に一般的に用いられる共溶媒であるトルエンを用いないため、製造工程上のトルエン溶媒の除去ステップが減り、より経済的な製造方法である。
【0071】
本発明は、本発明の一実施形態に係る遷移金属触媒組成物を用いて製造されたエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体を提供し、前記製造された単独重合体または共重合体は、エラストマーから0.850g/mL~0.910g/mLの密度を有し、0.001~20g/10minの溶融流量を有する高密度ポリエチレン(HDPE)領域まで非常に経済的に容易に製造することができる。
【0072】
また、本発明に係るエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造時に分子量を調節するために水素を分子量調節剤として用いてもよく、製造される前記単独重合体または共重合体の重量平均分子量は5,000~1,000,000g/mol、具体的には10,000~800,000g/mol、より具体的には30,000~500,000g/molであってもよい。
【0073】
本発明の一実施形態に係る触媒組成物は、重合反応器にて均一な形態を維持することができるため、高温の溶液重合工程に非常に適しているが、多孔性金属オキシド支持体に前記触媒および触媒を含む組成物を支持させて得られる不均一触媒の形態でスラリー重合工程または気相重合工程にも適用することができる。
【0074】
本発明は、一実施形態に係る遷移金属化合物を触媒として用いて製造される、高分子量のエチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体を提供する。
【0075】
以下、具体的な実施例により、本発明に係る新規な遷移金属化合物、それを含む遷移金属触媒組成物、およびそれを用いたエチレンとα-オレフィンの共重合体の製造方法についてより詳細に説明する。
【0076】
下記の全ての合成反応は、窒素(Nitrogen)またはアルゴン(Argon)などの不活性雰囲気(Inert Atmosphere)下で行われ、標準シュレンク(Standard Schlenk)技術およびグローブボックス(Glove Box)技術を利用した。
【0077】
また、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)、n-ヘキサン(n-Hexane)、n-ペンタン(n-Pentane)、ジエチルエーテル(Diethyl Ether)、塩化メチレン(Methylene Chloride、CH2Cl2)などの合成用溶媒(Solvent)は、活性化アルミナカラム(Activated Alumina Column)を通過させて水分を除去した後、活性化分子篩上で保管しつつ使用した。大半の試薬は、特に言及しない限り、Sigma-Aldrich、TCI、Alfa、Stremから購入して用いた。
【0078】
合成された化合物の1H NMR分析は、常温でBruker 500MHzを用いて行った。
エチレン単独重合体またはエチレンとα-オレフィンの共重合体の分子量および共重合性特性は、下記のような方法により分析した。
【0079】
MFR分析は、プラスチックを190℃で溶かした後、荷重2.16、5および21.6kgで10分間、一定規格の毛細管(Orifice)に流れる押出物の重量測定を通じて行った。ASTM D1238測定規格に準じて、溶融指数(MI、Melt Index)で表した(g/10min)。前記MIが低いと、分子量が大きくなり、流動性が低下するため、加工性は減少し、物性は向上する。
【0080】
GPC分析は、重合体の分子量平均(Mw、Mn)、分子量分布(MWD)により記されたその幅に関するものであり、ポリマー・ラボラトリー社(Polymer Laboratories)のPLXT-20高速GPC重合体分析システム(ポンプ、屈折率検出器、および粘度検出器を含む)上で、160℃で、3PLgel Olexisカラム(300×7.5mm、ポリマー・ラボラトリー社)を直列に連結し、高温サイズ排除クロマトグラフィー(HTSEC)により分析した。ブチル化ヒドロキシトルエン(0.5g/L)およびイルガノックス1010(20mg/L)を含有する1,2,4-トリクロロベンゼンを溶離液として1.0mL/minの流速で用いた。分子量は、ポリエチレン標準物質(Mp=5,310~1,510,000g/mol、ポリマー・ラボラトリー社)を基準に計算した。ポリマー・ラボラトリー社のPL XT-220ロボットサンプルハンドリングシステムをオートサンプラーとして用いた。サンプルの濃度は2~4ポリマーmg/TCBmLと分析された。
【0081】
密度が0.850~0.910g/mLの範囲で、密度が0.85に近いほど共重合性が高い。密度を測定するために、単位体積当たりの樹脂の重量測定を行った。標準カラムの密度とカラムの高さに関する検量線を作成した密度勾配法を用い、ASTM D1505(KS M3016)測定規格に準じで分析を行った。
【0082】
温度調節されたDSC実験は、ISO 11357-1に準じて変調モードで作動し、インジウム、スズ、および亜鉛で較正されたTA Instruments社のQ2000 DSCで行われた。サンプル5mgをアルミニウムパンに入れ、初期温度180℃に昇温させた後、標準DSCと同様に10℃/minで-88℃まで下げた。その後、60秒ごとに0.32℃の温度制御を行いながら、2℃/minの加熱速度で昇温させた。ガラス転移温度は、可逆熱流サーモグラムから測定し、転移時の反転点を示した。共重合性に高いほど、Tmが低く測定された。
【0083】
[製造例1][1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパニル)-フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ(化合物1)の製造
【0084】
ステップ1:2,7-ジベンゾイル-フルオレン(化合物1-a)の製造
【0085】
シュレンクフラスコに、AlCl3(17.6g、132.3mmol)、DCM(120mL)、およびフルオレン(10g、60.2mmol)を入れ、0℃で塩化ベンゾイル(13.9mL、120.4mmol)を添加した後、常温で18時間撹拌した。氷と水を徐々に入れて反応を終結させた後、DCMを入れて抽出した。有機層を集め、MgSO4で乾燥および濾過して減圧した後、エーテル/Hexを用いて再結晶化し、黄色の固体化合物1-a(20g、収率91%)を得た。
【0086】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ7.90(s,2H),7.88(d,J=7.7Hz,2H),7.85(d,J=7.5Hz,2H)7.83(m,4H),7.60(d,J=7.7Hz,2H),7.50(m,4H),4.05(s,2H)
【0087】
ステップ2:2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)-フルオレン(化合物1-b)の製造
【0088】
シュレンクフラスコに、化合物1-a(8.2g、22mmol)、トルエン(109mL)、および酢酸(0.3mL、5.47mmol)を入れた後、トリメチルアルミニウム(109mL、219mmol、2.0M in Hex)を添加し、100℃で6時間還流した。1N HClと氷を入れて反応を終結させ、エーテルで3回抽出した。有機層を集め、MgSO4で乾燥および濾過して減圧した後、シリカカラム(溶媒Hex)で精製し、黄色の固体化合物1-b(8.5g、収率96%)を得た。
【0089】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ7.61(d,J=7.7Hz,2H),7.38(s,2H),7.23(m,8H),7.21(m,2H),7.17(m,2H),3.78(s,2H),1.72(s,12H)。
【0090】
ステップ3:1-(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)-フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン(化合物1-c)の製造
【0091】
THF 87mLに化合物1-b(12g、43.1mmol)を溶解させた後、nBuLi(1.6M in Hex、27.1mL、43.1mmol)を添加して常温で3時間撹拌した。6,6-ジフェニルフルベン(6,6-Diphenylfulvene)(10g、43.1mmol)を添加し、反応溶液を16時間撹拌した後、NH4Cl水溶液(40mL)を添加して反応を終結させた。生成物を有機層に抽出し、MgSO4で乾燥および濾過して減圧した後、生成された黄色固体をエタノールで洗浄し、白色の固体化合物1-c(24g、収率94%)を得た。
【0092】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ7.02~7.30(m,28H),6.21(s,2H),5.41(s,1H),2.83(br s,1H),1.53(s,12H)。
【0093】
ステップ4:[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-(2-フェニルプロパン-2-イル)-フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ(化合物1)の製造
【0094】
化合物1-c(2.5g、3.95mmol)をエーテル39mLに溶解させた後、nBuLi(1.6M in Hex、5.43mL、8.69mmol)を添加して16時間撹拌した。真空乾燥でエーテルを除去した後、Hexを添加およびデカントして減圧した。グローブボックスにて、リチウム(2.5g、3.89mmol)およびHfCl4(1.24g、3.89mmol)を測量してエーテル35mLに溶解させた後、常温で16時間撹拌し、真空乾燥でエーテルを除去した。トルエン80mLを入れて50℃で2時間加熱した後、生成されたLiClを沈殿させて濾過した。濾液を真空乾燥後に結晶状態にし、黄色の結晶化合物1(2.4g、収率71%)を得た。
【0095】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ7.94(d,J=9.5Hz,2H),7.80(d,J=7.4Hz,2H),7.71(d,J=7.5Hz,2H),7.05~7.34(m,18H),6.28(t,J=7.5Hz,2H),6.19(s,2H),5.28(t,J=7.4Hz,2H),1.42(s,6H),1.38(s,6H)
【0096】
[比較製造例1][1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ(化合物2)の合成
【0097】
[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-フルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ(化合物2)は、文献[A.Razavi、J.L.Atwood、J.Organometallic.Chen、459(1993)、117-123]の製造過程に従って合成した。
【0098】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ8.19(d,J=8.5Hz,2H),7.95(d,J=8.3Hz,2H),7.88(d,J=8.5Hz,2H),7.55(t,J=8.0Hz,2H),7.44(t,J=8.2Hz,2H),7.31(m,4H),7.01(t,J=8.1Hz,2H),6.47(d,J=7.1Hz,2H),6.33(s,2H),5.75(s,2H)
【0099】
[比較製造例2][1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ(化合物3)の製造
【0100】
ステップ1:1-(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン(化合物3-a)の製造
【0101】
THF 87mLに2,7-ジ-t-ブチルフルオレン(12g、43.1mmol)を溶解させた後、nBuLi(1.6M in Hex、27.1mL、43.1mmol)を添加して常温で3時間撹拌した。6,6-ジフェニルフルベン(10g、43.1mmol)を添加して16時間撹拌した後、NH4Cl水溶液(40mL)を添加して反応を終結させた。生成物を有機層に抽出し、MgSO4で乾燥および濾過して減圧した後、生成された黄色固体をエタノールで洗浄し、白色固体の化合物3-a(20g、収率93%)を得た。
【0102】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ6.21~7.35(m,20H),5.45(s,1H),3.01(m,1H),1.14(s,18H)
【0103】
ステップ2:[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-t-ブチルフルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ(化合物3)の製造
【0104】
化合物3-a(5g、9.82mmol)をエーテル60mLに溶解させた後、nBuLi(1.6M in Hex、13.5mL、21.6mmol)を添加して16時間撹拌した。真空乾燥でエーテルを除去した後、Hexを添加してデカントして減圧した。グローブボックスにて、リチウム(5.1g、9.79mmol)およびHfCl4(3.13g、9.79mmol)を測量してエーテル80mLに溶解させた後、常温で16時間撹拌した。真空乾燥でエーテルを除去した後、トルエン80mLを入れて50℃で2時間加熱し、生成されたLiClを沈殿させて濾過した。濾液を真空乾燥後に結晶状態にし、黄色の結晶化合物3(4.4g、収率60%)を得た。
【0105】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ8.03(d,J=9.0Hz,2H),7.97(d,J=2.5Hz,2H),7.96(d,J=3.0Hz,2H),7.57(d,J=9.0Hz,2H),7.45(m,2H),7.36(m,2H),7.29(m,2H),6.37(s,2H),6.29(t,J=2.5Hz,2H),5.63(t,J=3.0Hz,2H),1.04(s,18H)
【0106】
[比較製造例3][1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-フェニルフルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ(化合物4)の製造
【0107】
ステップ1:2,7-ジ-フェニルフルオレン(化合物4-a)の製造
【0108】
シュレンクフラスコに、Pd(PPh3)4(1.8g、1.54mmol)および2,7-ジブロモ-9H-フルオレン(5g、15.4mmol)を投入した。トルエン100mLを添加した後、フェニルボロン酸(7.5g、61.7mmol)を追加し、トルエン50mLおよびK2CO3水溶液(30mL、2M)を加えた。100℃で16時間還流した後、水とエーテルを入れて3回抽出した。有機層を集め、MgSO4で乾燥および濾過して減圧した後、シリカカラム(Hex:Ethyl Acetate=10:1)で精製し、白色固体の化合物4-a(3.1g、63%)を得た。
【0109】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ7.87(d,J=7.7Hz,2H),7.79(s,2H),7.67(m,6H),7.46(m,4H),7.36(d,J=7.7Hz,2H),4.03(s,2H)
【0110】
ステップ2:1-(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(2,7-ジ-フェニルフルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン(化合物4-b)の製造
【0111】
THF 40mLに化合物4-a(7g、21mmol)を溶解させた後、nBuLi(1.6M in Hex、14mL、21mmol)を添加して常温で3時間撹拌した。6,6-ジフェニルフルベン(5g、21mmol)を添加して16時間撹拌した後、NH4Cl水溶液(20mL)を添加して反応を終結させた。生成物を有機層に抽出し、MgSO4で乾燥および濾過して減圧した後、生成された黄色固体をエタノールで洗浄し、白色固体の化合物4-b(20g、収率91%)を得た。
【0112】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ7.30~7.73(m,30H),5.61(s,1H),4.09(s,1H)
【0113】
ステップ3:[1-(η5-シクロペンタジエン-1-イル)-1-(η5-2,7-ジ-フェニルフルオレニル)-1,1-ジフェニルメタン]ハフニウムジクロロ(化合物4)の製造
【0114】
化合物4-b(5g、9.11mmol)をエーテル60mLに溶解させた後、nBuLi(1.6M in Hex、13.5mL、21.6mmol)を添加して16時間撹拌した。真空乾燥でエーテルを除去した後、Hexを添加およびデカントして減圧した。グローブボックスにて、リチウム(5.1g、9.11mmol)およびHfCl4(2.91g、9.11mmol)を測量してエーテル80mLに溶解させた。常温で16時間撹拌した後、真空乾燥でエーテルを除去した後、トルエン80mLを入れて50℃で2時間加熱した後、生成されたLiClを沈殿させて濾過した。濾液を真空乾燥後に結晶状態にし、黄色の結晶化合物4(10g、収率67%)を得た。
【0115】
1H NMR(500MHz,Chloroform-d)δ8.23(d,J=9.0Hz,2H),7.96(d,J=2.5Hz,2H),7.94(d,J=3.0Hz,2H),7.78(d,J=9.0Hz,2H),7.27~7.48(m,16H),6.60(s,2H),6.28(s,2H),5.74(s,2H)
【0116】
[実施例1]エチレンとα-オレフィンの共重合体の製造
常温で、4Lの反応器に、Hex 1Lおよびトリイソブチルアルミニウム(1M、2mL)を添加した後、1-オクテン(100mL)を添加した。グローブボックスにて、製造例1(化合物1)(3.9μmol)をトリイソブチルアルミニウム(0.1M in Hex、2mL)に溶解させた後、ヘキサン5mLを追加して反応器の注入口に注入する。グローブボックスにて、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(19.5μmol)をHex 5mLに溶解させ、注入口に入れた。反応器を140℃に昇温した後、高圧窒素で注入口の溶液を投入した。エチレンの注入は、300psigで15分間行われ、活性に比例して初期温度が増加することが分かる。重合反応の終了後、反応器の温度を30℃に冷却した後、反応器内部のエチレン圧力を徐々に排気させて除去した。エタノールとアセトンで生成された重合体を洗浄し、濾過して真空乾燥した。製造された重合体の結果を表1に示した。
【0117】
[実施例2]
前記実施例1において、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの代わりにアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いたことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0118】
[実施例3]
前記実施例1において、反応温度140℃の代わりに150℃で行ったことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0119】
[実施例4]
前記実施例1において、反応温度140℃の代わりに150℃で行い、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの代わりにアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いたことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0120】
[比較例1]
前記実施例1において、化合物1(製造例1)の代わりに化合物2(比較製造例1)を用いたことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0121】
[比較例2]
前記実施例1において、化合物1(製造例1)の代わりに化合物2(比較製造例1)を用い、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの代わりにアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いたことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0122】
[比較例3]
前記実施例1において、化合物1(製造例1)の代わりに化合物3(比較製造例2)を用いたことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0123】
[比較例4]
前記実施例1において、化合物1(製造例1)の代わりに化合物3(比較製造例2)を用い、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの代わりにアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いたことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0124】
[比較例5]
前記実施例1において、化合物1(製造例1)の代わりに化合物3(比較製造例2)を用い、反応温度140℃の代わりに150℃で行ったことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0125】
[比較例6]
前記実施例1において、化合物1(製造例1)の代わりに化合物3(比較製造例2)を用い、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの代わりにアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用い、反応温度140℃の代わりに150℃で行ったことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0126】
[比較例7]
前記実施例1において、化合物1(製造例1)の代わりに化合物4(比較製造例3)を用いたことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0127】
[比較例8]
前記実施例1において、化合物1(製造例1)の代わりに化合物4(比較製造例3)のものを用い、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートの代わりにアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いたことを除いては、実施例1の過程を同様に行い、その結果を表1に示した。
【0128】
同一の温度および助触媒を用いる実施例1、比較例1、比較例3、および比較例7の共重合体のDSCおよびGPCに対する分析結果を下記表2に示した。
【0129】
【0130】
【0131】
前記表1に示すように、エチレンと1-オクテンの共重合体の製造において、本発明の実施例1~4は、化合物が変更されたそれぞれの同一条件の比較例に比べて優れた触媒活性を示すことが分かる。
【0132】
また、前記表2に示すように、同一条件で製造された実施例1、比較例1、比較例3、および比較例7のエチレンと1-オクテンの共重合体を比較した結果、本発明の実施例1が、重量平均分子量において1.3~2.0倍高い値を示し、数平均分子量において1.6~2.2倍高い値を示しており、本発明の遷移金属化合物を触媒として用いる場合に非常に高い分子量を有する重合体を製造できることが分かる。
【0133】
同様に、本発明の実施例1が、比較例1、比較例3、および比較例7に比べて低いTm結果を示しており、上述のように共重合性に優れるほど、低いTmを有するという点で、本発明の遷移金属化合物を触媒として用いる場合に優れた共重合性を有することが分かる。
【0134】
本発明の遷移金属化合物は、中心金属として周期表第4族遷移金属が、電子が豊富で広く非局在化しているシクロペンタジエニル基と、活性部位を安定化可能な2、7位にアリールアルキルが置換されたフルオレニル基により連結された構造を有するため、エチレンとオレフィン類の高温溶液重合において優れた触媒活性および高分子量を示すことができる。
【0135】
したがって、エチレンとα-オレフィンの共重合体の製造に本発明の遷移金属化合物を含む触媒組成物を利用すると、高収率で著しく向上した高分子量の共重合体を製造することができ、産業的に非常に経済的な方法で、優れた物性を示す共重合体の大量生産が可能であると期待される。
【0136】
以上、特定の事項と限定された実施例および比較例により本発明を説明したが、これは、本発明のより全般的な理解のために提供されたものにすぎず、本発明は上記の実施例に限定されない。本発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。
【0137】
したがって、本発明の思想は、説明された実施例に限定されて決まってはならず、添付の特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的変形を有するものは、いずれも本発明の思想の範囲に属するといえる。