(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074035
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20240523BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240523BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20240523BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240523BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240523BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240523BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B60C11/03 Z
B60C1/00 A
B60C11/00 F
B60C11/00 D
C08K3/36
C08K3/04
C08L7/00
C08L9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185081
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 顕哉
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131BA01
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
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3D131BA20
3D131BB01
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3D131BC13
3D131EA10U
3D131EB07U
3D131LA28
4J002AC012
4J002AC01X
4J002AC062
4J002AC06X
4J002AC081
4J002AC08W
4J002BA003
4J002BA00Y
4J002BC023
4J002BC02Y
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4J002BK003
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4J002CE003
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4J002DA037
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD017
4J002FD023
4J002FD02Y
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】高速走行時の操縦安定性の向上を図る。
【解決手段】トレッドを備えたタイヤであって、
前記トレッドは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物で構成され、
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が80質量部以上であり、
前記ゴム組成物は、下記式(1)~(2)を満たし、
前記ゴム組成物におけるシリカの含有量A(質量部)、前記トレッドの最大厚みB(mm)、前記トレッドのランド比C(%)、及び、前記ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、下記式(3)~(4)を満たすタイヤ。
(1)イソプレン系ゴムの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
(2)カーボンブラックの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
(3)A/B>8
(4)|C/D|>2.00
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備えたタイヤであって、
前記トレッドは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物で構成され、
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が80質量部以上であり、
前記ゴム組成物は、下記式(1)~(2)を満たし、
前記ゴム組成物におけるシリカの含有量A(質量部)、前記トレッドの最大厚みB(mm)、前記トレッドのランド比C(%)、及び、前記ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、下記式(3)~(4)を満たすタイヤ。
(1)イソプレン系ゴムの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
(2)カーボンブラックの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
(3)A/B>8
(4)|C/D|>2.00
【請求項2】
前記トレッドから切り出したゴムが、加硫後180日以内において、下記式(5)を満たす請求項1記載のタイヤ。
(5)Hso/Hsa×100≧93.0
(上記式(5)中、Hsoは、常温硬度を表す。Hsaは、80℃で168時間熱処理した後の常温硬度を表す。)
【請求項3】
前記トレッドから切り出したゴムが、下記式(6)を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
(6)ゴムの破壊エネルギー(MPa・%)=ゴムの破断時伸度(%)×ゴムの破断時強度(MPa)×1/2≧5000
【請求項4】
前記ゴム組成物が、下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
50>イソプレン系ゴムの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>8
【請求項5】
前記ゴム組成物が、下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
50>カーボンブラックの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>5
【請求項6】
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムを10~70質量%含む請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを10~100質量部含む請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ゴム成分中の総スチレン量が、5.0~60.0質量%である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ゴム組成物におけるシリカの含有量A(質量部)、及び、前記トレッドの最大厚みB(mm)が、下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
30>A/B>10
【請求項10】
前記トレッドのランド比C(%)、及び、前記ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
5.50>|C/D|>2.50
【請求項11】
前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して、シリカを90~200質量部含む請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項12】
前記トレッドの最大厚みが、5.0~10.0mmである請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項13】
前記トレッドのランド比が、60~95%である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項14】
前記ゴム組成物のガラス転移温度が、-45℃~0℃である請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項15】
前記トレッドから切り出したゴムが、加硫後180日以内において、下記式を満たす請求項1又は2記載のタイヤ。
70≧Hso≧45
(上記式中、Hsoは、常温硬度を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの性能として、ドライバーの思い通りに走行時に安定して走行できるようにする操縦安定性が求められる。例えば、3,4-結合単位を含む1,3,7-オクタトリエンに由来する構造単位を含有する重合体をゴム組成物に配合することにより操縦安定性を向上させることが記載される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両性能の向上や高速道の整備も進み高速で長距離を移動することも珍しくない昨今において、高速走行時の操縦安定性については更なる向上が望まれていると考えられる。
本発明は、前記課題を解決し、高速走行時の操縦安定性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が80質量部以上であり、前記ゴム組成物は、下記式(1)~(2)を満たし、前記ゴム組成物におけるシリカの含有量A(質量部)、前記トレッドの最大厚みB(mm)、前記トレッドのランド比C(%)、及び、前記ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、下記式(3)~(4)を満たすタイヤである。
(1)イソプレン系ゴムの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
(2)カーボンブラックの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
(3)A/B>8
(4)|C/D|>2.00
【発明の効果】
【0006】
本発明は、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が80質量部以上であり、前記ゴム組成物は、上記式(1)~(2)を満たし、前記ゴム組成物におけるシリカの含有量A(質量部)、前記トレッドの最大厚みB(mm)、前記トレッドのランド比C(%)、及び、前記ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、上記式(3)~(4)を満たすタイヤであるので、高速走行時の操縦安定性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のタイヤは、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が80質量部以上であり、前記ゴム組成物は、上記式(1)~(2)を満たし、前記ゴム組成物におけるシリカの含有量A(質量部)、前記トレッドの最大厚みB(mm)、前記トレッドのランド比C(%)、及び、前記ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、上記式(3)~(4)を満たす。前記タイヤは、高速走行時の操縦安定性の向上を図ることができる。
【0008】
前述の効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムによるものと推察される。
[1]トレッドを構成するゴム組成物のゴム成分が、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有することで、ゴム相内にミクロ相分離構造が形成されると考えられる。更に、上記式(1)を満たすように、イソプレン系ゴムの含有量をゴム成分中の総スチレン量よりも多くすることで、スチレンブタジエンゴムのスチレン部が凝集したスチレンドメインをゴム相内に形成させることができると考えられる。このスチレンドメイン部がトレッド表面で路面との間で引っかき効果を生じさせると共に、周囲のゴム分子鎖などとのこすれを生じさせるため、トレッド表面のグリップ性を向上させることができると考えられる。
[2]更にこのとき、ゴム成分中の総スチレン量よりも多くカーボンブラックを配合する、すなわち、カーボンブラックの含有量とゴム成分中の総スチレン量とが上記式(2)を満たすことで、発熱性の高いカーボンブラックとスチレンブタジエンゴムのスチレン部とが相互作用し、よりトレッド表面のグリップ性を向上させることができると考えられる。
[3]そして、シリカの含有量とトレッドの最大厚みとが上記式(3)を満たすように、トレッドの最大厚みに対してシリカを十分多く配合することにより、シリカによってトレッド表面の摩擦をタイヤ内部へと伝えやすくすることができると考えられる。特に、シリカはカーボンブラックと異なり、周囲のゴム分子鎖との摩擦のエネルギーロスが小さいことから、トレッド表面で生じた摩擦による変形をタイヤ内部に伝え、それに対する反力を瞬時に生じさせ易いと考えられる。
[4]更に、ゴム組成物のガラス転移温度は低いほど高速走行時において、剛性が低く、反力を発生させにくいと考えられる。そのため、トレッドのランド比とゴム組成物のガラス転移温度とが上記式(4)を満たすように、ゴム組成物のガラス転移温度に対してランド比を十分大きくすることで、トレッド表面で発生する反力を大きくすることができると考えられる。
上記[1]~[4]により、トレッド表面のグリップ性を向上させると共にトレッド表面で生じた摩擦による変形をタイヤ内部へ瞬時に伝え、応答しやすくなるため、高速走行時の操縦安定性を向上させやすくすることができると考えられる。
以上の作用により、高速走行時の操縦安定性の向上を図ることができると推察される。
【0009】
このように、本発明は、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物で構成され、前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が80質量部以上であり、前記ゴム組成物は、式(1)「イソプレン系ゴムの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0」、式(2)「カーボンブラックの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0」を満たし、前記ゴム組成物におけるシリカの含有量A(質量部)、前記トレッドの最大厚みB(mm)、前記トレッドのランド比C(%)、及び、前記ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、式(3)「A/B>8」、式(4)「|C/D|>2.00」を満たすタイヤの構成にすることにより、高速走行時の操縦安定性の向上を図るという課題(目的)を解決するものである。すなわち、式(1)~(4)のパラメータは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、高速走行時の操縦安定性の向上を図ることであり、そのための解決手段として前記パラメータを満たすような構成としたものである。
【0010】
本発明のタイヤは、トレッドを備えたタイヤであって、前記トレッドは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物で構成される。
【0011】
本明細書において、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上で、架橋に寄与する成分である。
【0012】
上記ゴム成分の重量平均分子量は、好ましくは17万以上、より好ましくは20万以上、更に好ましくは25万以上であり、また、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下、更に好ましくは100万以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0013】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0014】
上記ゴム組成物において、ゴム成分中の総スチレン量(質量%)は、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは7.0質量%以上、更に好ましくは10.0質量%以上、特に好ましくは12.0質量%以上であり、また、上限は好ましくは60.0質量%以下、より好ましくは50.0質量%以下、更に好ましくは40.0質量%以下、より更に好ましくは35.0質量%以下、特に好ましくは30.0質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0015】
ここで、ゴム成分中の総スチレン量は、ゴム成分全量中に含まれるスチレン部の合計含有量(単位:質量%)であり、Σ(各ゴム成分の含有量×各ゴム成分中のスチレン量/100)で算出できる。例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量40質量%のSBRが85質量%、スチレン量25質量%のSBRが5質量%、スチレン量0質量%のBRが10質量%である場合、ゴム成分中の総スチレン量は、35.25質量%(=85×40/100+5×25/100+10×0/100)である。
【0016】
なお、各ゴム成分中のスチレン量は、核磁気共鳴(NMR)法によって測定できる。
また、ゴム成分中の総スチレン量について、本明細書の実施例では、上述の計算式に沿って算出しているが、例えば、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置(Py-GC/MS)等により、タイヤから分析してもよい。
【0017】
上記ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含有するゴム成分を含む。
【0018】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0019】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できるが、効果がより良好に得られるという観点から、乳化重合スチレンブタジエンゴムが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0021】
SBRのビニル量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ゴム成分のビニル量は、1H-NMR測定により算出される。
【0022】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。また、公知の方法により合成したものを使用することもできる。
【0023】
なお、上述のSBRのスチレン量は、SBRが1種である場合、当該SBRのスチレン量を意味し、複数種である場合、平均スチレン量を意味する。
SBRの平均スチレン量は、{Σ(各SBRの含有量×各SBRのスチレン量)}/全SBRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、スチレン量40質量%のSBRが85質量%、スチレン量25質量%のSBRが5質量%である場合、SBRの平均スチレン量は、39.2質量%(=(85×40+5×25)/(85+5))である。
【0024】
また、上述のSBRのビニル量はSBR中におけるブタジエン部の総質量を100としたときのビニル結合の割合であり(単位:質量%)、ビニル量[質量%]+シス量[質量%]+トランス量[質量%]=100[質量%]となる。SBRが1種である場合、当該SBRのビニル量を意味し、複数種である場合、平均ビニル量を意味する。
SBRの平均ビニル量は、Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン量[質量%])×各SBRのビニル量[質量%]}/Σ{各SBRの含有量×(100[質量%]-各SBRのスチレン量[質量%])}で算出でき、例えば、ゴム成分100質量部中、スチレン量40質量%、ビニル量30質量%のSBRが75質量部、スチレン量25質量%、ビニル量20質量%のSBRが15質量部、残り10質量部がSBR以外である場合、SBRの平均ビニル量は、28質量%(={75×(100[質量%]-40[質量%])×30[質量%]+15×(100[質量%]-25[質量%])×20[質量%])}/{75×(100[質量%]-40[質量%])+15×(100[質量%]-25[質量%])}である。
【0025】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、シリカ、カーボンブラック等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記官能基としては、例えば、窒素原子、酸素原子、及び珪素原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0028】
また、SBRとしては、水素添加されたSBR(水添SBR)を用いることもでき、効果がより良好に得られる観点から、SBRとしては水添SBRを用いることが好ましい。
【0029】
上記水添SBRの水素添加率(SBRのブタジエン部に対して水素添加された割合)は、75モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が更に好ましく、93モル%以上が特に好ましい。また、99モル%以下が好ましく、98モル%以下がより好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、水素添加率は、1H-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0030】
上記水添SBRを製造するための方法、反応条件については特に制限されず、公知の方法、公知の条件でSBRに水素添加すればよい。通常は、20~150℃、0.1~10MPaの水素加圧下、水添触媒の存在下で実施される。なお、水素添加率は、水添触媒の量、水添反応時の水素圧力、反応時間等を変えることにより、任意に選定することができる。水添触媒として、通常は、元素周期表4~11族金属のいずれかを含む化合物を用いることができる。例えば、Ti、V、Co、Ni、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Pt原子を含む化合物を水添触媒として用いることができる。より具体的な水添触媒としては、Ti、Zr、Hf、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Rh、Re等のメタロセン系化合物;Pd、Ni、Pt、Rh、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた担持型不均一系触媒;Ni、Co等の金属元素の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機アルミニウム等の還元剤とを組み合わせた均一系チーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物又は錯体;水素を吸蔵させたフラーレンやカーボンナノチューブ等を挙げることができる。
【0031】
これらのうち、Ti、Zr、Hf、Co、Niのいずれかを含むメタロセン化合物は、不活性有機溶媒中、均一系で水添反応できる点で好ましい。更に、Ti、Zr、Hfのいずれかを含むメタロセン化合物が好ましい。特に、チタノセン化合物とアルキルリチウムとを反応させた水添触媒は、安価で工業的に特に有用な触媒であるので好ましい。具体的な例として、例えば、特開平1-275605号公報、特開平5-271326号公報、特開平5-271325号公報、特開平5-222115号公報、特開平11-292924号公報、特開2000-37632号公報、特開昭59-133203号公報、特開昭63-5401号公報、特開昭62-218403号公報、特開平7-90017号公報、特公昭43-19960号公報、特公昭47-40473号公報に記載の水添触媒を挙げることができる。なお、これらの水添触媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、水添SBRとして、スチレンと、エチレン、1ブテンのいずれか1つ以上と、任意でブタジエンをモノマーとして共重合して得たものを用いても良い。
【0032】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴム及びSBRの合計含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0033】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0034】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0035】
上記ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びSBR以外の他のゴム成分を含んでもよい。
他のゴム成分として、例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、上記以外のゴム成分としては、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRが好ましい。
【0036】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
BRのシス量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、上限は特に限定されない。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ゴム成分のシス量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0038】
なお、上述のBRのシス量は、BRが1種である場合、当該BRのシス量を意味し、複数種である場合、平均シス量を意味する。
BRの平均シス量は、{Σ(各BRの含有量×各BRのシス量)}/全BRの合計含有量で算出でき、例えば、ゴム成分100質量%中、シス量:90質量%のBRが20質量%、シス量:40質量%のBRが10質量%である場合、BRの平均シス量は、73.3質量%(=(20×90+10×40)/(20+10))である。
【0039】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性SBRと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0040】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0041】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0042】
ゴム成分は、オイルで伸展された油展ゴム、樹脂で伸展された樹脂伸展ゴムであってもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、油展ゴムに使用されるオイル、樹脂伸展ゴムに使用される樹脂は、後述の可塑剤で説明したものと同様である。また、油展ゴム中のオイル分、樹脂伸展ゴム中の樹脂分は特に限定されないが、通常、ゴム固形分100質量部に対して10~50質量部程度である。
【0043】
上記ゴム組成物は、シリカを含有する。
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。また、もみ殻などのバイオマス材料を原料としたバイオマスシリカを適宜用いても良い。
【0044】
シリカとしては、例えば、エボニックデグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0045】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは80m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上、更に好ましくは120m2/g以上、特に好ましくは150m2/g以上である。また、該N2SAは、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは250m2/g以下、更に好ましくは200m2/g以下、特に好ましくは180m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-81に準拠して測定できる。
【0046】
ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量は、80質量部以上、好ましくは85質量部以上、より好ましくは90質量部以上、更に好ましくは95質量部以上、特に好ましくは100質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下、更に好ましくは150質量部以下、特に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0047】
上記ゴム組成物は、シリカを含有する場合、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られるという理由から、スルフィド系、メルカプト系が好ましい。
【0048】
シランカップリング剤としては、例えば、エボニックデグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0049】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、8質量部以上が更に好ましく、また、25質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0050】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含有する。
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。また、プラスチック製品やタイヤ等のカーボンブラックを含むゴム製品を熱分解して得られたリサイクルカーボンブラックを用いても良い。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましく、114m2/g以上が更に好ましく、120m2/g以上がより更に好ましく、135m2/g以上が特に好ましい。また、上記N2SAは、250m2/g以下が好ましく、200m2/g以下がより好ましく、160m2/g以下が更に好ましく、150m2/g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0052】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)は、80ml/100g以上が好ましく、90ml/100g以上がより好ましく、100ml/100g以上が更に好ましく、110ml/100g以上が特に好ましく、114ml/100g以上が最も好ましい。また、上記DBP吸油量は、200ml/100g以下が好ましく、170ml/100g以下がより好ましく、150ml/100g以下が更に好ましく、125ml/100g以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量は、JIS K6217-4:2001に準拠して求められる。
【0053】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0054】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量は、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0055】
上記ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック以外の他のフィラー(充填剤)を含んでもよい。他のフィラー(充填剤)としては、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー;難分散性フィラー等が挙げられる。
【0056】
ゴム成分100質量部に対する充填剤の総量(充填剤の合計含有量)は、好ましくは90質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは110質量部以上、特に好ましくは120質量部以上であり、また、好ましくは300質量部以下、より好ましくは250質量部以下、更に好ましくは200質量部以下、特に好ましくは150質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0057】
上記ゴム組成物において、充填剤100質量%中のシリカ含有率は、40質量%以上が好ましく、50質量%以上が好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0058】
上記ゴム組成物は、可塑剤を含有してもよい。
本明細書において、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、常温(25℃)において液体であっても、固体であっても良い。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
上記ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、より更に好ましくは55質量部以上、より更に好ましくは60質量部以上、特に好ましくは65質量部以上、最も好ましくは70質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、可塑剤の含有量には、ゴム(油展ゴム、樹脂伸展ゴム)、硫黄(オイル含有硫黄)に含まれるオイルや樹脂の量も含まれる。
【0060】
可塑剤としては、オイル、液状ポリマー、樹脂類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、ライフサイクルアナリシスの観点から、ゴム混合用ミキサーや自動車エンジンなどで使用されたあとの潤滑油や廃食油などを適宜用いても良い。
【0062】
上記植物油としては、例えば、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。
【0063】
上記オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。
【0064】
上記液状ポリマーとしては、例えば、25℃で液状ジエン系ポリマー(液状ゴム)や液状ファルネセン系ポリマーなどが挙げられる。液状ゴムとしては液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0065】
上記液状ジエン系ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、1.0×103~5.0×104であることが好ましく、3.0×103~1.5×104であることがより好ましい。また、該液状ジエン系ポリマーのMwの下限又は上限は、4500、8500でもよい。
なお、本明細書において、液状ジエン系ポリマーのMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算値である。
【0066】
上記液状ジエン系ポリマーとしては、例えば、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0067】
上記樹脂としては、タイヤ配合物として、通常用いられる樹脂(レジン)を使用でき、常温(25℃)において液体であっても固体であっても良い。例えば芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。これらのなかでも、効果がより良好に得られる観点から、芳香族ビニル重合体、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましく、芳香族ビニル重合体が特に好ましい。
【0068】
上記ゴム組成物において、樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは25質量部以上、特に好ましくは40質量部以上、最も好ましくは50質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0069】
上記樹脂の軟化点は、常温において固体である樹脂を用いる場合は50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましく、85℃以上が特に好ましい。また、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、140℃以下が更に好ましく、100℃以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、樹脂が常温において液体である場合には軟化点は20℃以下が好ましく、10℃以下が好ましく、0℃以下であることが好ましい。
なお、上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0070】
上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0071】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0072】
上記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0073】
上記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0074】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0075】
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0076】
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、C9/DCPD樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂、C9/DCPD樹脂、C9/水添DCPD樹脂が好ましい。
【0077】
上記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり、例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネンなど、フェノール系化合物としては、フェノール、ビスフェノールAなど、芳香族化合物としては、スチレン系化合物(スチレン、α-メチルスチレンなど)が挙げられる。
【0078】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0079】
上記樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、エクソンモービル社、KRATON社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0080】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含有してもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
上記ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0082】
上記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
上記ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0084】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
上記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは3.0質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0086】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
上記ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0088】
上記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に架橋剤として用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
上記ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは1.8質量部以上であり、また、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは2.8質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0090】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
上記ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.5質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上であり、また、好ましくは10.0質量部以下、より好ましくは8.0質量部以下、更に好ましくは7.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0092】
上記ゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0093】
上記ゴム組成物は、イソプレン系ゴムの含有量(ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量(質量%))、ゴム成分中の総スチレン量(質量%)が下記式(1)を満たす。
(1)イソプレン系ゴムの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
上記式(1)の右辺は、1が好ましく、2がより好ましく、5が更に好ましく、8が特に好ましい。また、上記式(1)において、「イソプレン系ゴムの含有量-ゴム成分中の総スチレン量」は、100未満が好ましく、70未満がより好ましく、50未満が更に好ましく、45未満がより更に好ましく、40未満がより更に好ましく、30未満が特に好ましく、20未満が最も好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0094】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックの含有量(ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部))、ゴム成分中の総スチレン量(質量%)が下記式(2)を満たす。
(2)カーボンブラックの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
上記式(2)の右辺は、1が好ましく、2がより好ましく、3が更に好ましく、5が特に好ましい。また、上記式(2)において、「カーボンブラックの含有量-ゴム成分中の総スチレン量」は、50未満が好ましく、40未満がより好ましく、30未満が更に好ましく、20未満がより更に好ましく、15未満がより更に好ましく、10未満が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0095】
上記ゴム組成物(加硫後)のガラス転移温度(tanδピーク温度)は、好ましくは-45℃以上、より好ましくは-40℃以上、更に好ましくは-35℃以上、特に好ましくは-30℃以上である。また、好ましくは0℃以下、より好ましくは-5℃以下、更に好ましくは-10℃以下、特に好ましくは-15℃以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記ガラス転移温度は、粘弾性温度分散測定試験により後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0096】
上記ゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0097】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100℃以上180℃以下、好ましくは120℃以上170℃以下である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80℃以上110℃以下である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140℃以上190℃以下、好ましくは150℃以上185℃以下である。加硫時間は、通常5分以上15分以下である。
【0098】
上記ゴム組成物は、トレッド(特に、走行時に路面に接する部分(キャップトレッド))に使用される。
【0099】
効果がより良好に得られる観点から、上記トレッドから切り出したゴムは、加硫後180日以内において、下記式(5)を満たすことが好ましい。
(5)Hso/Hsa×100≧93.0
(上記式(5)中、Hsoは、常温硬度を表す。Hsaは、80℃で168時間熱処理した後の常温硬度を表す。)
【0100】
このような効果が得られる理由としては、以下のようなことが考えられる。
トレッド表面は高速走行時に路面との間の摩擦により温度が高くなる。したがって、熱劣化時のトレッドゴムの硬さの変化を小さくすることで、トレッドゴム表面での追従性及び硬さの異なるドメインによるひっかき効果が得られやすくなり、操縦安定性を向上させやすくすることができると考えられる。
【0101】
上記式(5)の右辺は、93.2が好ましく、93.4がより好ましく、93.8が更に好ましい。また、上記式(5)において、「Hso/Hsa×100」の上限は特に限定されず、100であってもよいが、例えば、99.0以下が好ましく、98.0以下がより好ましく、97.0以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、Hso、Hsaは、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0102】
Hsoは、上記式(5)を満たす範囲で適宜調整すればよいが、好ましくは70以下、より好ましくは65以下であり、また、好ましくは45以上、より好ましくは50以上である。同様に、Hsaは、好ましくは75以下、より好ましくは70以下であり、また、好ましくは55以上、より好ましくは60以上、特に好ましくは62以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0103】
Hso、Hsaの調整方法は特に限定されないが、Hsoについては、例えば、補強剤量を増やす、軟化剤量を減らす、硫黄量を増やす、加硫促進剤量を増やす等の方法で高くすることが可能である。一方、補強剤量を減らす、軟化剤量を増やす、硫黄量を減らす、加硫促進剤量を減らす等の方法で低くすることができる。また、Hsaについては、例えば、共役ジエン単位が少ない(共)重合体をゴム成分として使用する、Hsoを低くする、硫黄量を減らし加硫促進剤量を増やす、酸化亜鉛量とステアリン酸量を増やす、ヨウ素価が100~150g/100gの可塑剤を配合する、加硫で与える熱量を増やす(時間を長く/温度を高く)等の方法で低くすることができる。そして、Hsoを高くする、硫黄量を増やし加硫促進剤量を減らす、酸化亜鉛量とステアリン酸量を減らす、加硫で与える熱量を減らす等の方法で高くすることができる。
【0104】
効果がより良好に得られる観点から、上記トレッドから切り出したゴムは、下記式(6)を満たすことが好ましい。
(6)ゴムの破壊エネルギー(MPa・%)=ゴムの破断時伸度(%)×ゴムの破断時強度(MPa)×1/2≧5000
【0105】
このような効果が得られる理由としては、以下のようなことが考えられる。
摩耗エネルギーが大きいほど、ゴムがちぎれにくくなると考えられる。したがって、高速で走行した際にトレッド表面が路面との摩擦によりちぎれることを抑制し、実接地面積が低下することを抑制することができるため、高速走行時の操縦安定性を向上させやすくすることができると考えられる。
【0106】
上記式(6)の右辺は、5100が好ましく、5500がより好ましく、6000が更に好ましく、6500が特に好ましい。また、上記式(6)において、ゴムの破壊エネルギーの上限は特に限定されず、大きければ大きいほど好ましいが、例えば、100000以下が好ましく、50000以下がより好ましく、10000以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0107】
なお、本明細書において、ゴムの破壊エネルギー(MPa・%)は、JIS K6251:2010に準じて測定した23℃におけるゴムの破断時伸度EB(%)、ゴムの破断時強度TB(MPa)の値から算出したTB×EB/2の値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定できる。
【0108】
EB(破断時伸度)は、主に補強剤や軟化剤の配合量により調整することができ、TB(破断時強度)は、主に補強剤、ゴム成分の種類や配合量により調整することができる。
【0109】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを得る。
【0110】
上記タイヤは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物から作製されたトレッドを備え、該ゴム組成物におけるシリカの含有量A(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))、該トレッドの最大厚みB(mm)が、下記式(3)を満たす。
(3)A/B>8
上記式(3)の右辺は、9が好ましく、10がより好ましく、11が更に好ましく、13が特に好ましい。また、上記式(3)において、「A/B」は、30未満が好ましく、25未満がより好ましく、20未満が更に好ましく、15未満が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0111】
なお、本明細書において、トレッドの最大厚み(B)とは、タイヤ使用前(新品)のトレッドの厚みを指し、タイヤ半径方向断面における、赤道面上におけるトレッド表面(タイヤ外表面)からバンド層などの補強層の外面までのタイヤ径方向厚みを意味する。なお、タイヤ赤道面上に溝有している場合には、当該溝のタイヤ径方向外側端部同士を繋いだ直線と、タイヤ赤道面の交点から、前記バンド層などの補強層の外面までのタイヤ径方向距離を指す。
【0112】
上記トレッドの最大厚み(トレッド部最大厚み)B(mm)は、好ましくは5.0mm以上、より好ましくは5.5mm以上、更に好ましくは6.0mm以上、特に好ましくは7.0mm以上であり、また、好ましくは10.0mm以下、より好ましくは9.5mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは8.5mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0113】
上記タイヤは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物から作製されたトレッドを備え、該トレッドのランド比C(%)、該ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、下記式(4)を満たす。
(4)|C/D|>2.00
上記式(4)の右辺は、2.10が好ましく、2.50がより好ましく、3.00が更に好ましく、3.40が特に好ましい。また、上記式(4)において、「|C/D|」は、7.00未満が好ましく、6.50未満がより好ましく、6.00未満が更に好ましく、5.50未満がより更に好ましく、5.00未満がより更に好ましく、4.50未満が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0114】
なお、本明細書において、上記タイヤが空気入りタイヤの場合、ランド比(C)は、正規リム、正規内圧、正規荷重条件下における接地形状から計算される。非空気入りタイヤの場合、正規内圧を必要とせずに、同様に測定できる。
【0115】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMA(日本自動車タイヤ協会)であれば「JATMA YEAR BOOK」に記載されている適用サイズにおける標準リム、ETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)であれば「STANDARDS MANUAL」に記載されている“Measuring Rim”、TRA(The Tire and Rim Association,Inc.)であれば「YEAR BOOK」に記載されている“Design Rim”を指し、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、参照時に適用サイズがあればその規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合には、リム組み可能であって、内圧が保持できるリム、即ちリム/タイヤ間からエア漏れを生じさせないリムの内、最もリム径が小さく、次いでリム幅が最も狭いものを指す。
【0116】
「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値を意味し、「正規リム」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合、前記正規リムを標準リムとして記載されている別のタイヤサイズ(規格に定められているもの)の正規内圧(但し、250KPa以上)を指す。なお、250KPa以上の正規内圧が複数記載されている場合には、その中の最小値を指す。
【0117】
「正規荷重」とは、前記したタイヤが基づいている規格を含む規格体系における各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、タイヤに負荷されることが許容される最大の質量を指しており、JATMAであれば最大負荷能力、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES” に記載の最大値を指し、前記した「正規リム」や「正規内圧」の場合と同様に、JATMA、ETRTO、TRAの順に参照し、その規格に従う。そして、規格に定められていないタイヤの場合は、以下の計算により、正規荷重WLを求める。
V={(Dt/2)2-(Dt/2-Ht)2}×π×Wt
WL=0.000011×V+175
WL:正規荷重(kg)
V:タイヤの仮想体積(mm3)
Dt:タイヤ外径(mm)
Ht:タイヤの断面高さ(mm)
Wt:タイヤの断面幅(mm)
【0118】
接地形状は、タイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることにより得ることができるため、タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させる。すなわち、5回、接地形状を得る。このとき、5つの接地形状について、該輪郭の溝で途切れた部分を滑らかに繋ぎ、得られる形状を仮想接地面とする。
【0119】
ランド比(C)は、厚紙の転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/(5つの接地形状から仮想接地面の面積の平均値)×100(%)で計算される。
【0120】
上記トレッドのランド比(総接地面積中の陸部比率)C(%)は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上であり、また、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは85%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0121】
上記タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)、オールシーズンタイヤ、等として好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用タイヤ、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なお、乗用車用タイヤとは、四輪以上で走行する自動車に装着されることを前提としたタイヤであって、その最大負荷能力(正規荷重)が1400kg以下のものを指す。
【実施例0122】
以下では、実施をする際に好ましいと考えられる例(実施例)を示すが、本発明の範囲は実施例に限られない。
【0123】
以下に示す各種薬品を用いて各表に従って配合等を変化させて得られるタイヤを検討し、下記評価方法に基づいて算出した結果を各表に示す。
【0124】
NR:TSR20
SBR1:下記製造例1で製造されるSBR(スチレン含量:30質量%、ビニル含量:30質量%)
水素添加処理SBR:下記製造例2で製造される水素添加処理SBR(スチレン含量:30質量%、ビニル含量:31質量%)
SBR2:SLR6430(Trinseo社製、スチレン含量:40質量%、ビニル含量:25質量%)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス量:97質量%)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックI(N220、N2SA:114m2/g、DBP吸油量:114ml/100g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
レジン1:SYLVARES SA85(アリゾナケミカル社製、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、軟化点:85℃)
レジン2:Oppera PR395(エクソンモービル社製、C9/水素添加DCPDレジン、軟化点:115℃)
レジン3:Sylvatraxx 4150(KRATON社製、ポリテルペン樹脂、軟化点:150℃)
オイル:H&R社製のVIVATEC400/500(TDAEオイル)
ステアリン酸:ステアリン酸「椿」(日油社製)
酸化亜鉛:三井金属鉱業株式会社製の酸化亜鉛2種
老化防止剤:アンチゲン6C(住友化学株式会社製、N-(1,3-ジメチルブチル)-N´-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:サンノックN(大内新興化学工業株式会社製)
硫黄:粉末硫黄(軽井沢硫黄(株)製)
加硫促進剤CZ:ノクセラーCZ(大内新興化学株式会社製、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:ノクセラーD(大内新興化学株式会社製、1,3-ジフェニルグアニジン)
【0125】
(製造例1)
十分に窒素置換した耐熱反応容器にn-ヘキサン2000ml、スチレン60g、ブタジエン140g、TMEDA0.93g、n-ブチルリチウム0.45mmolを加えて、50℃で5時間攪拌し、重合反応を行った。次いでメタノールを20ml添加して未反応の反応容器より抜き出し、反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒をスチームストリッピングにより除去することによって、SBRを得た。得られたSBRの重量平均分子量(Mw)は480,000であった。また、スチレン含量は30質量%であり、ビニル含量は30質量%であった。
【0126】
(製造例2)
十分に窒素置換した耐熱反応容器にn-ヘキサン2000ml、スチレン60g、ブタジエン140g、TMEDA0.93g、n-ブチルリチウム0.45mmolを加えて、50℃で5時間攪拌し、重合反応を行った。次いで、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら20分間撹拌し、未反応のポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。水素ガス供給圧力を0.7MPa-Gauge、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主体とする触媒を用いて水素添加を行った。水素の吸収が目的の水素添加率となる積算量に達した時点で、反応温度を常温とし、水素圧を常圧に戻して反応容器より抜き出し、反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒をスチームストリッピングにより除去することによって、水素添加処理SBRを得た。得られた水素添加処理SBRの水素添加率は80モル%であり、重量平均分子量(Mw)は480,000であった。また、スチレン含量は30質量%であり、ビニル含量は31質量%であった。
【0127】
<試験用タイヤの製造>
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を160℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得る。次に、得られる混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。
得られる未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、次いで、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を製造する。
【0128】
表1に従って配合を変化させた組成物により得られる加硫ゴム組成物、試験用タイヤを想定して、下記の評価方法に基づいて、算出した結果を表1に示す。
なお、操縦安定性の評価基準は、比較例3とする。
【0129】
(粘弾性温度分散測定試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用い、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.20%および昇温速度2℃/minの条件下で、加硫ゴム組成物のtanδの温度分布曲線を作成し、得られた温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度をtanδピーク温度(Tg(℃))とする。tanδピーク温度は、ゴム組成物(加硫後)のガラス転移温度(配合Tg(℃))に相当する。
【0130】
(硬度)
上記試験用タイヤのトレッド(キャップトレッド)から切り出される試験片について、JIS K6253-3(2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に準じて、タイプAデュロメータを用いて、常温(25℃)における硬度(JIS-A硬度)を測定する(Hso)。また、測定後の試験片を、酸素濃度20%の条件下、80℃で168時間熱処理した後、同様の方法で常温における硬度を測定する(Hsa)。
【0131】
(破壊エネルギー)
上記試験用タイヤのトレッド(キャップトレッド)から切り出される試験片について、JIS K6251:2010「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準じて、温度23℃の条件下で引張試験を実施し、23℃における破断時伸度EB〔%〕(23℃)、破断時強度TB〔MPa〕(23℃)を測定し、破壊エネルギー(破壊E〔MPa・%〕)(=TB×EB/2)を算出する。
(引張試験の条件)
環境温度=23℃
試験機=東洋精機製作所社製の商品名「ストログラフ」
引張速度=500mm/min
【0132】
<操縦安定性>
各試験用タイヤを車両に装着して、平均時速120kmで乾燥路面を走行したときのハンドリング性を5段階(5点満点)で官能評価する。評価は10人のテストドライバーで行い、その合計値を、評価基準を100として指数表示する。数値が大きい程、高速走行時の操縦安定性に優れていることを示す。
【0133】
【0134】
本発明(1)は、トレッドを備えたタイヤであって、
前記トレッドは、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックとを含むゴム組成物で構成され、
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が80質量部以上であり、
前記ゴム組成物は、下記式(1)~(2)を満たし、
前記ゴム組成物におけるシリカの含有量A(質量部)、前記トレッドの最大厚みB(mm)、前記トレッドのランド比C(%)、及び、前記ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、下記式(3)~(4)を満たすタイヤである。
(1)イソプレン系ゴムの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
(2)カーボンブラックの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>0
(3)A/B>8
(4)|C/D|>2.00
【0135】
本発明(2)は、前記トレッドから切り出したゴムが、加硫後180日以内において、下記式(5)を満たす本発明(1)記載のタイヤである。
(5)Hso/Hsa×100≧93.0
(上記式(5)中、Hsoは、常温硬度を表す。Hsaは、80℃で168時間熱処理した後の常温硬度を表す。)
【0136】
本発明(3)は、前記トレッドから切り出したゴムが、下記式(6)を満たす本発明(1)又は(2)記載のタイヤである。
(6)ゴムの破壊エネルギー(MPa・%)=ゴムの破断時伸度(%)×ゴムの破断時強度(MPa)×1/2≧5000
【0137】
本発明(4)は、前記ゴム組成物が、下記式を満たす本発明(1)~(3)のいずれかに記載のタイヤである。
50>イソプレン系ゴムの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>8
【0138】
本発明(5)は、前記ゴム組成物が、下記式を満たす本発明(1)~(4)のいずれかに記載のタイヤである。
50>カーボンブラックの含有量-ゴム成分中の総スチレン量>5
【0139】
本発明(6)は、前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムを10~70質量%含む本発明(1)~(5)のいずれかに記載のタイヤである。
【0140】
本発明(7)は、前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを10~100質量部含む本発明(1)~(6)のいずれかに記載のタイヤである。
【0141】
本発明(8)は、前記ゴム成分中の総スチレン量が、5.0~60.0質量%である本発明(1)~(7)のいずれかに記載のタイヤである。
【0142】
本発明(9)は、前記ゴム組成物におけるシリカの含有量A(質量部)、及び、前記トレッドの最大厚みB(mm)が、下記式を満たす本発明(1)~(8)のいずれかに記載のタイヤである。
30>A/B>10
【0143】
本発明(10)は、前記トレッドのランド比C(%)、及び、前記ゴム組成物のガラス転移温度D(℃)が、下記式を満たす本発明(1)~(9)のいずれかに記載のタイヤである。
5.50>|C/D|>2.50
【0144】
本発明(11)は、前記ゴム組成物が、前記ゴム成分100質量部に対して、シリカを90~200質量部含む本発明(1)~(10)のいずれかに記載のタイヤである。
【0145】
本発明(12)は、前記トレッドの最大厚みが、5.0~10.0mmである本発明(1)~(11)のいずれかに記載のタイヤである。
【0146】
本発明(13)は、前記トレッドのランド比が、60~95%である本発明(1)~(12)のいずれかに記載のタイヤである。
【0147】
本発明(14)は、前記ゴム組成物のガラス転移温度が、-45℃~0℃である本発明(1)~(13)のいずれかに記載のタイヤである。
【0148】
本発明(15)は、前記トレッドから切り出したゴムが、加硫後180日以内において、下記式を満たす本発明(1)~(14)のいずれかに記載のタイヤである。
70≧Hso≧45
(上記式中、Hsoは、常温硬度を表す。)