(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074038
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】鉄筋保持器具および補強土工法
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20240523BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
E21D20/00 L
E04C5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185087
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】390036504
【氏名又は名称】日特建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】外村 勉
(72)【発明者】
【氏名】三村 政徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慎一
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164AA13
2E164BA43
2E164BA46
(57)【要約】
【課題】鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができ、また仮固定時の見栄えもよい鉄筋固定器具およびこれを用いた補強土工法を提供する。
【解決手段】掘削孔内に挿入された鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部2と、掘削孔の開口部に当接することで前記本体部2が取り付けられた前記鉄筋を前記掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3と、を備える鉄筋保持器具1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削孔内に挿入された鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部と、
掘削孔の開口部に当接することで前記本体部が取り付けられた前記鉄筋を前記掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部と、
を備える鉄筋保持器具。
【請求項2】
前記本体部は、中空で前記鉄筋を挿通可能な筒状部材と、前記筒状部材の周壁を貫通する貫通孔と、前記貫通孔の内周面に設けられたねじ部と、前記貫通孔内に挿入されるとともに前記ねじ部に螺合するボルトと、により構成され、
前記位置決め部は、前記筒状部材の外周面に設けられた、傾斜面を有する1つ若しくは複数の突出片、又は前記筒状部材に紐状の連結体を介して連結された、傾斜面を有する1つ若しくは複数の楔状部材である請求項1に記載の鉄筋保持器具。
【請求項3】
前記鉄筋は外周面にねじ部を有するロックボルトであり、
前記本体部は、前記ロックボルトに螺合するねじ部を有する中空の筒状部材であり、
前記位置決め部は前記筒状部材の外周面に設けられたテーパ面である請求項1に記載の鉄筋保持器具。
【請求項4】
前記テーパ面の外周面には前記筒状部材の軸方向に沿う溝部が形成されている請求項3に記載の鉄筋保持器具。
【請求項5】
前記鉄筋は外周面にねじ部を有するロックボルトであり、
前記本体部は、前記ロックボルトに螺合するねじ部を有する中空の筒状部材であり、
前記位置決め部は、前記筒状部材に紐状の連結体を介して連結された、傾斜面を有する1つ若しくは複数の楔状部材、又は前記筒状部材の外周面に設けられた、傾斜面を有する1つ若しくは複数の突出片である請求項1に記載の鉄筋保持器具。
【請求項6】
前記本体部は、2つの貫通孔が設けられた板状部材と、前記板状部材の前記貫通孔に取り付けられ前記鉄筋を挿通可能なUボルトと、前記Uボルトに螺合する2つのナットにより構成され、
前記位置決め部は、前記板状部材に設けられた傾斜面を有する1つ若しくは複数の突出片、又は前記板状部材に紐状の連結体を介して連結された、傾斜面を有する1つ若しくは複数の楔状部材である請求項1に記載の鉄筋保持器具。
【請求項7】
前記板状部材は平板部材である請求項6に記載の鉄筋保持器具。
【請求項8】
前記板状部材は、半割管と、前記半割管の径方向における両端部からそれぞれ径方向外側に向けて延在するフランジ部を有し、前記フランジ部に前記貫通孔が設けられているとともに、前記半割管の外周面に前記突出片が設けられているか、又は前記半割管若しくは前記フランジ部に前記連結体を介して前記楔状部材が設けられている請求項6に記載の鉄筋保持器具。
【請求項9】
前記本体部は、2つの貫通孔が設けられた板状部材と、前記板状部材の前記貫通孔に取り付けられ前記鉄筋を挿通可能なUボルトと、前記Uボルトに螺合する2つの第1ナットと、を有し、
前記位置決め部は、前記板状部材から立設され外周面にねじ部が形成された軸部と、前記ねじ部に螺合し前記軸部の軸方向に沿い進退動作が可能なストッパー部材と、を有する請求項1に記載の鉄筋保持器具。
【請求項10】
前記本体部は、中空で前記鉄筋を挿通可能な筒状部材と、前記筒状部材の周壁を貫通する貫通孔と、前記貫通孔の内周面に設けられた第1ねじ部と、前記貫通孔に挿入されるとともに前記第1ねじ部に螺合するボルトと、を有し、
前記位置決め部は、前記筒状部材から立設され外周面に第2ねじ部が形成された軸部と、前記第2ねじ部に螺合し前記軸部の軸方向に沿い進退動作が可能なストッパー部材と、を有する請求項1に記載の鉄筋保持器具。
【請求項11】
地盤に掘削孔を形成する工程と、
前記掘削孔中に前記鉄筋を一端側から挿入する工程と、
前記掘削孔内に挿入された前記鉄筋の他端側を、請求項1乃至10の何れか1項に記載の鉄筋保持器具により前記掘削孔の中央位置に位置決めしつつ仮固定する工程と、
前記鉄筋保持器具により前記鉄筋の位置決めと仮固定がされている前記掘削孔中にグラウト材を注入する工程と、
を備える補強土工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋固定器具およびこれを用いた補強土工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、法面にロックボルト等の鉄筋(アンカー)を打設して法面表層土の崩壊を防止する鉄筋挿入工では、法面に掘削孔を形成した後、掘削孔内に鉄筋を挿入し、鉄筋が挿入された掘削孔内にグラウト材を注入することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
こうした鉄筋挿入工においては、掘削孔内に挿入した鉄筋の掘削孔から突出した部分(残尺)を所定の長さにするとともに、鉄筋の残尺側を掘削孔の中心位置に位置決めした状態でグラウト材を注入する必要がある。そのため、鉄筋の残尺側については、作業者による目検討で掘削孔の中心に位置合わせが行われた後、法面に沿い設けられた番線やさし木に針金等を用いて鉄筋を固定することで鉄筋の位置決めと仮固定とが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉄筋を目検討で位置決めして番線やさし木により仮固定する場合には、鉄筋の位置決め箇所に誤りがあったり残尺の長さに誤りがあったりした場合には針金等をほどき正確に位置決めした後再び針金等による固定を行わなければならず作業が煩雑であった。また、番線やさし木により仮固定を行うと見栄えも悪かった。
【0006】
本発明はこのような問題を解決することを課題とするものであって、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができ、また仮固定時の見栄えもよい鉄筋固定器具およびこれを用いた補強土工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、掘削孔内に挿入された鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部と、掘削孔の開口部に当接することで前記本体部が取り付けられた前記鉄筋を前記掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部と、を備える鉄筋保持器具であることを特徴とする。
【0008】
上記発明において、前記本体部は、中空で前記鉄筋を挿通可能な筒状部材と、前記筒状部材の周壁を貫通する貫通孔と、前記貫通孔の内周面に設けられたねじ部と、前記貫通孔内に挿入されるとともに前記ねじ部に螺合するボルトと、により構成され、前記位置決め部は、前記筒状部材の外周面に設けられた、傾斜面を有する1つ若しくは複数の突出片、又は前記筒状部材に紐状の連結体を介して連結された、傾斜面を有する1つ若しくは複数の楔状部材であることが好ましい。
【0009】
上記発明において、前記鉄筋は外周面にねじ部を有するロックボルトであり、前記本体部は、前記ロックボルトに螺合するねじ部を有する中空の筒状部材であり、前記位置決め部は前記筒状部材の外周面に設けられたテーパ面であることが好ましい。
【0010】
上記発明において、前記テーパ面の外周面には前記筒状部材の軸方向に沿う溝部が形成されていることが好ましい。
【0011】
上記発明において、前記鉄筋は外周面にねじ部を有するロックボルトであり、前記本体部は、前記ロックボルトに螺合するねじ部を有する中空の筒状部材であり、前記位置決め部は、前記筒状部材に紐状の連結体を介して連結された、傾斜面を有する1つ若しくは複数の楔状部材、又は前記筒状部材の外周面に設けられた、傾斜面を有する1つ若しくは複数の突出片であることが好ましい。
【0012】
上記発明において、前記本体部は、2つの貫通孔が設けられた板状部材と、前記板状部材の前記貫通孔に取り付けられ前記鉄筋を挿通可能なUボルトと、前記Uボルトに螺合する2つのナットにより構成され、前記位置決め部は、前記板状部材に設けられた傾斜面を有する1つ若しくは複数の突出片、又は前記板状部材に紐状の連結体を介して連結された、傾斜面を有する1つ若しくは複数の楔状部材であることが好ましい。
【0013】
上記発明において、前記板状部材は平板部材であることが好ましい。
【0014】
上記発明において、前記板状部材は、半割管と、前記半割管の径方向における両端部からそれぞれ径方向外側に向けて延在するフランジ部を有し、前記フランジ部に前記貫通孔が設けられているとともに、前記半割管の外周面に前記突出片が設けられているか、又は前記半割管若しくは前記フランジ部に前記連結体を介して前記楔状部材が設けられていることが好ましい。
【0015】
上記発明において、前記本体部は、2つの貫通孔が設けられた板状部材と、前記板状部材の前記貫通孔に取り付けられ前記鉄筋を挿通可能なUボルトと、前記Uボルトに螺合する2つの第1ナットと、を有し、前記位置決め部は、前記板状部材から立設され外周面にねじ部が形成された軸部と、前記ねじ部に螺合し前記軸部の軸方向に沿い進退動作が可能なストッパー部材と、を有することが好ましい。
【0016】
上記発明において、前記本体部は、中空で前記鉄筋を挿通可能な筒状部材と、前記筒状部材の周壁を貫通する貫通孔と、前記貫通孔の内周面に設けられた第1ねじ部と、前記貫通孔に挿入されるとともに前記第1ねじ部に螺合するボルトと、を有し、前記位置決め部は、前記筒状部材から立設され外周面に第2ねじ部が形成された軸部と、前記第2ねじ部に螺合し前記軸部の軸方向に沿い進退動作が可能なストッパー部材と、を有することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、地盤に掘削孔を形成する工程と、前記掘削孔中に前記鉄筋を一端側から挿入する工程と、前記掘削孔内に挿入された前記鉄筋の他端側を、上記鉄筋保持器具により前記掘削孔の中央位置に位置決めしつつ仮固定する工程と、前記鉄筋保持器具により前記鉄筋の位置決めと仮固定がされている前記掘削孔中にグラウト材を注入する工程と、を備える補強土工法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鉄筋保持器具および補強土工法によると、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができ、また仮固定時の見栄えをよくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る鉄筋保持器具が使用される様子を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る鉄筋保持器具を用いた補強土工法を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第4実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第5実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図8】本発明の第6実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第7実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第8実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図11】本発明の第9実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第10実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【
図13】本発明の第11実施形態に係る鉄筋保持器具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に従う鉄筋保持器具および補強土工法の実施形態について説明する。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る鉄筋保持器具1を示す斜視図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る鉄筋保持器具1が使用される様子を模式的に示す断面図である。
【0022】
図1および
図2に示すように、鉄筋保持器具1は、鉄筋Sに着脱可能に取り付けられる本体部2と、鉄筋Sを掘削孔H内の中心位置に位置決めする位置決め部3と、を備えている。
【0023】
本体部2は、中空で鉄筋を挿通可能な筒状部材21と、筒状部材21の周壁を貫通する貫通孔22と、貫通孔22の内周面に設けられたねじ部23と、貫通孔22内に挿入されるとともにねじ部23に螺合するボルト24と、により構成されている。なお、貫通孔22の内周面に設けられたねじ部23およびボルト24に形成されねじ部23に螺合するボルト24側のねじ部は図示が省略されている。
【0024】
位置決め部3は、筒状部材21の外周面に設けられた、傾斜面31を有する突出片32である。本実施形態に係る鉄筋保持器具1では筒状部材21の外周面において、周方向に等間隔で4つの突出片32が設けられている。
【0025】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1を使用する際には、
図2に示すように、掘削孔H内に挿入された鉄筋Sに本体部2が取り付けられる。具体的には、掘削孔Hから外部に突出する鉄筋Sの先端部分の長さである残尺長がおおよそ所定の長さになるように調整しつつ鉄筋Sの先端部分を本体部2内に挿入した後、ボルト24の仮締めが行われる。
【0026】
次に、位置決め部3の傾斜面31を掘削孔Hの開口部h1に当接させて、鉄筋保持器具1が取り付けられた鉄筋Sを掘削孔H内の中心位置に位置決めした後、残尺長を所望の長さに正確に合わせてボルト24を本締めして、鉄筋保持器具1を鉄筋Sに着脱可能に固定する。
【0027】
なお、鉄筋保持器具1により鉄筋Sを保持した後、残尺長を変更したい場合には、ボルト24を緩めて本体部2内の鉄筋Sを動かせる状態にして、鉄筋Sの残尺長を所望の長さに変更した後に再度ボルト24を締めることにより容易に残尺長の変更を行うことができる。
【0028】
上述した実施形態に係る鉄筋保持器具1によると、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0029】
次に、上述した第1実施形態に係る鉄筋保持器具1を用いた補強土工法について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る鉄筋保持器具1を用いた補強土工法を示すフローチャートである。
【0030】
図3に示すように、第1実施形態に係る鉄筋保持器具1を用いた補強土工法では、まず地盤の削孔が行われ、鉄筋Sが挿入される掘削孔H(
図2参照)が形成される(ステップS1)。
【0031】
次に、形成された掘削孔Hに鉄筋Sが挿入される(ステップS2)。ここで、鉄筋Sの中途部分には1つ又は複数の鞘状のスペーサ(不図示)を取り付けておく。このようなスペーサにより、鉄筋Sの中途部分については掘削孔H内の中心位置に位置決めすることができる。一方、残尺部分については鉄筋Sがたわむことにより掘削孔H内の中心位置に位置決めされていない状態になっている。
【0032】
次に、鉄筋保持器具1を用いた鉄筋Sの仮固定が行われる(ステップS3)。具体的には、鉄筋Sの残尺長がおおよそ所定の長さになるように調整しつつ鉄筋Sの残尺部分を本体部2内に挿入し、ボルト24を仮締めする。
【0033】
そして、位置決め部3の傾斜面31を掘削孔Hの開口部h1に当接させて鉄筋保持器具1内に挿入された鉄筋Sを掘削孔H内の中心位置に位置決めした後、鉄筋Sの残尺長を所望の長さに正確に合わせて、ボルト24を本締めする。これにより鉄筋Sは鉄筋保持器具1により所望の残尺長になり、かつ残尺部分が掘削孔H内の中心位置に位置決めされた状態で、着脱可能に保持された状態になる。
【0034】
次に、掘削孔H内にグラウトが注入される(ステップS4)。グラウトは注入ホースを用いて掘削孔H内に注入されるが、鉄筋保持器具1の突出片32間に形成されているスペースを通じて掘削孔H内に注入ホースを挿入することができるため、掘削孔H内へのグラウトの注入が可能になっている。
【0035】
次に、鉄筋保持器具1により鉄筋Sを仮固定した状態が所定時間維持され、グラウトの硬化が行われる(ステップS5)。こうして掘削孔H内のグラウトが硬化され鉄筋Sが動かない状態になった後、ボルト24が緩められて鉄筋保持器具1が取り外され、残尺部分の端部処理としてプレートやキャップ等が設置され、一連の工程が終了する。
【0036】
上述した補強土工法によると、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る鉄筋保持器具1Bについて説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る鉄筋保持器具1Bを示す斜視図である。
図4に示すように、第2実施形態に係る鉄筋保持器具1Bは、鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部2Bと、鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3Bと、を備えている。
【0038】
本体部2Bは、上述した第1実施形態に係る鉄筋保持器具1と同様の構成であり、中空で鉄筋を挿通可能な筒状部材21Bと、筒状部材21Bの周壁を貫通する貫通孔(不図示)と、貫通孔の内周面に設けられたねじ部(不図示)と、貫通孔内に挿入されるとともにねじ部に螺合するボルト24Bと、により構成されている。
【0039】
位置決め部3Bは、本体部2Bに紐状の連結体33Bを介して連結された、傾斜面31Bを有する2つの楔状部材32Bにより構成されている。なお、本発明においては楔状部材32Bの数は2つに限定されず、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0040】
連結体33Bは、本実施形態においては鋼線であり、その一端部が溶接個所34Bにおいて筒状部材21Bに溶接されて固定されている。なお、本発明においてはこれに限らず、鋼線以外の鎖等の連結体33Bを用いてもよい。また、連結体33Bの固定も、溶接以外の、例えば筒状部材21Bの外周面にアーチ状のフックを形成し、当該フックに連結体33Bを巻回した後連結体33Bの端部を連結体33Bの中途部分に結束固定する等の方法を用いて行ってもよい。
【0041】
楔状部材32Bは、平面視で直角三角形状の板状部材であり、一辺が傾斜面31Bになっている。楔状部材32Bには貫通孔35Bが形成されていて、この貫通孔35Bに連結体33Bの他端部が挿通され固定手段(不図示)により脱落しないように固定されることにより、楔状部材32Bが連結体33Bに固定された状態になっている。楔状部材32Bを本体部2Bと別体として連結体33Bにより連結する態様とすることにより、鉄筋保持器具1Bの位置決めに用いられる楔状部材32Bの数を掘削孔の直径等の状況に応じて調整することができ、また、楔状部材32Bが破損した際にはこれを容易に交換することができる。
【0042】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1Bを使用する際には、まず
図2に示した第1実施形態に係る鉄筋保持器具1と同様に、掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長がおおよそ所定の長さになるように調整しつつ鉄筋の先端部分を本体部2B内に挿入した後、ボルト24Bが仮締めされる。そして、傾斜面31Bが掘削孔の開口部に当接するようにして、楔状部材32Bが本体部2Bと掘削孔の内周面との間に挿入される。
【0043】
次に、ボルト24Bの本締めが行われる。これにより鉄筋Sは鉄筋保持器具1Bにより所望の残尺長になり、かつ残尺部分が掘削孔H内の中心位置に位置決めされた状態で、着脱可能に保持された状態になる。
【0044】
上述した第2実施形態に係る鉄筋保持器具1Bによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0045】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る鉄筋保持器具1Cについて説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る鉄筋保持器具1Cを示す斜視図である。
図5に示すように、第3実施形態に係る鉄筋保持器具1Cは、鉄筋としてロックボルトを用いる場合に使用されるものであり、ロックボルトに着脱可能に取り付けられる本体部2Cと、ロックボルトを掘削孔H内の中心位置に位置決めする位置決め部3Cと、を備えている。
【0046】
本体部2Cは、内周面にロックボルトに螺合するねじ部21Cを有する中空の筒状部材22Cである。筒状部材22Cの一端側は内部空間に通じる解放端部になっていて、他端側は閉鎖端部になっている。筒状部材22Cの閉鎖端部側にはアーチ状のフック23Cが設けられている。
【0047】
位置決め部3Cは、本体部2Cの外周面に設けられたテーパ面31Cである。テーパ面31Cの外周面には、本体部2Cの軸方向に沿い溝部32Cが形成されている。
【0048】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1Cを使用する際には、まずロックボルトの先端部分を筒状部材22C内に挿入し螺合し着脱可能に取り付けた後、本体部2Cに形成されたフック23Cを用いて重機等で鉄筋保持器具1Cが取り付けられたロックボルトを吊り下げ掘削孔に挿入する。フック23Cが形成されていることにより、鉄筋保持器具1Cが取り付けられたロックボルトを重機等により吊り下げることができ、掘削孔内へのロックボルトの挿入時等にロックボルトの取り扱いを容易にすることができる。
【0049】
そして、鉄筋保持器具1Cのテーパ面31Cを掘削孔の開口部に当接させて、鉄筋保持器具1Cが取り付けられたロックボルトを掘削孔の中心位置に位置決めする。さらに、掘削孔から外部に突出するロックボルトの残尺長が所定の長さになるように鉄筋保持器具1Cを回転し、鉄筋保持器具1C内に進入するロックボルトの長さを調整することで、掘削孔から外部に突出するロックボルトの残尺長を所定の長さにする。
【0050】
上述した第3実施形態に係る鉄筋保持器具1Cによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0051】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る鉄筋保持器具1Dについて説明する。
図6は、本発明の第4実施形態に係る鉄筋保持器具1Dを示す斜視図である。
図6に示すように、第4実施形態に係る鉄筋保持器具1Dは、鉄筋としてロックボルトを用いる場合に使用されるものであり、ロックボルトに着脱可能に取り付けられる本体部2Dと、ロックボルトを掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3Dと、を備えている。
【0052】
本体部2Dは、内周面にロックボルトに螺合するねじ部21Dを有する中空の筒状部材22Dである。筒状部材22Dの一端側は内部空間に通じる解放端部になっていて、他端側は閉鎖端部になっている。筒状部材22Dの閉鎖端部側にはアーチ状のフック23Dが設けられている。
【0053】
位置決め部3Dは、本体部2Dに紐状の連結体33Dを介して連結された、傾斜面31Dを有する2つの楔状部材32Dにより構成されている。なお、本発明においては楔状部材32Dの数は2つに限定されず、1つまたは3つ以上であってもよい。
【0054】
連結体33Dは、本実施形態においては鋼線であり、その一端部が溶接個所34Dにおいて筒状部材22Dに溶接されて固定されている。なお、本発明においてはこれに限らず、鋼線以外の鎖等の連結体33Dを用いてもよい。また、連結体33Dの固定も、溶接以外の、例えば筒状部材22Dの外周面にアーチ状のフックを形成し、当該フックに連結体33Dを巻回した後連結体33Dの端部を連結体33Dの中途部分に結束固定する等の方法を用いて行ってもよい。
【0055】
楔状部材32Dは、平面視で直角三角形状の板状部材であり、一辺が傾斜面31Dになっている。楔状部材32Dには貫通孔35Dが形成されていて、この貫通孔35Dに連結体33Dの他端部が挿通され固定手段(不図示)により脱落しないように固定されることにより、楔状部材32Dが連結体33Dに固定された状態になっている。楔状部材32Dを本体部2Dと別体として連結体33Dにより連結する態様とすることにより、鉄筋保持器具1Dの位置決めに用いられる楔状部材32Dの数を掘削孔の直径等の状況に応じて調整することができ、また、楔状部材32Dが破損した際にはこれを容易に交換することができる。
【0056】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1Dを使用する際には、まずロックボルトの先端部分を筒状部材22D内に挿入し螺合し着脱可能に取り付けた後、本体部2Dに形成されたフック23Dを用いて重機等で鉄筋保持器具1Dが取り付けられたロックボルトを吊り下げ掘削孔に挿入する。フック23Dが形成されていることにより、鉄筋保持器具1Dが取り付けられたロックボルトを重機等により吊り下げることができ、掘削孔内へのロックボルトの挿入時等にロックボルトの取り扱いを容易にすることができる。
【0057】
そして、傾斜面31Dが掘削孔の開口部に当接するようにして、楔状部材32Dが本体部2Dと掘削孔の内周面との間に挿入されて、ロックボルトを掘削孔の中心位置に位置決めする。
【0058】
次に、掘削孔から外部に突出するロックボルトの残尺長が所定の長さになるように鉄筋保持器具1Dを回転し、鉄筋保持器具1D内に進入するロックボルトの長さを調整することで、掘削孔から外部に突出するロックボルトの残尺長を所定の長さにする。
【0059】
上述した第4実施形態に係る鉄筋保持器具1Dによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0060】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る鉄筋保持器具1Eについて説明する。
図7は、本発明の第5実施形態に係る鉄筋保持器具1Eを示す斜視図である。
図7に示すように、第5実施形態に係る鉄筋保持器具1Eは、鉄筋としてロックボルトを用いる場合に使用されるものであり、ロックボルトに着脱可能に取り付けられる本体部2Eと、ロックボルトを掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3Eと、を備えている。
【0061】
本体部2Eは、内周面にロックボルトに螺合するねじ部21Eを有する中空の筒状部材22Eである。筒状部材22Eの一端側は内部空間に通じる解放端部になっていて、他端側は閉鎖端部になっている。筒状部材22Eの閉鎖端部側にはアーチ状のフック23Eが設けられている。
【0062】
位置決め部3Eは、筒状部材22Eの外周面に設けられた、傾斜面31Eを有する突出片32Eである。本実施形態に係る鉄筋保持器具1Eでは筒状部材22Eの外周面において、周方向に等間隔で4つの突出片32Eが設けられている。なお、本実施形態においては筒状部材22Eに4つの突出片32Eが設けられているが、本発明においてはこれに限らず、1つ以上の任意の数の突出片32Eを設けることができる。
【0063】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1Eを使用する際には、まずロックボルトの先端部分を筒状部材22E内に挿入し螺合し着脱可能に取り付けた後、本体部2Eに形成されたフック23Eを用いて重機等で鉄筋保持器具1Eが取り付けられたロックボルトを吊り下げ掘削孔に挿入する。フック23Eが形成されていることにより、鉄筋保持器具1Eが取り付けられたロックボルトを重機等により吊り下げることができ、掘削孔内へのロックボルトの挿入時等にロックボルトの取り扱いを容易にすることができる。
【0064】
そして、傾斜面31Eを掘削孔の開口部に当接させることで、ロックボルトを掘削孔の中心位置に位置決めする。
【0065】
次に、掘削孔から外部に突出するロックボルトの残尺長が所定の長さになるように鉄筋保持器具1Eを回転し、鉄筋保持器具1E内に進入するロックボルトの長さを調整することで、掘削孔から外部に突出するロックボルトの残尺長を所定の長さにする。
【0066】
上述した第5実施形態に係る鉄筋保持器具1Eによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0067】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る鉄筋保持器具について説明する。
図8は、本発明の第6実施形態に係る鉄筋保持器具1Fを示す斜視図である。
図8に示すように、第6実施形態に係る鉄筋保持器具1Fは、鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部2Fと、鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3Fと、を備えている。
【0068】
本体部2Fは、2つの貫通孔(不図示)が設けられた平板部材21Fと、平板部材21Fの貫通孔に取り付けられ鉄筋を挿通可能なUボルト22Fと、Uボルト22Fに螺合する2つのナット23Fにより構成されている。
【0069】
位置決め部3Fは、平板部材21Fに溶接して設けられた、傾斜面31Fを有する平面視が三角形状の突出片32Fにより構成されている。なお、本実施形態においては突出片32Fは1つのみ設けられているが、本発明においてはこれに限らず、2つ以上の突出片32Fが設けられていてもよい。
【0070】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1Fを使用する際には、まず掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長が所定の長さになるように大まかに調整し、鉄筋の先端部分を平板部材21FとUボルト22Fとの間に挿入しつつUボルト22Fを平板部材21Fの貫通孔に挿入した後、ナット23Fを仮締めする。
【0071】
次に、位置決め部3Fの傾斜面31Fが掘削孔の開口部に当接することで、鉄筋保持器具1Fが取り付けられた鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めすることができる。このように位置決めがされた状態で鉄筋の残尺長を所定の長さになるように正確に調整し、ナット23Fを本締めすることで、鉄筋保持器具1Fが鉄筋に着脱可能に固定され、掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長を所定の長さにすることができる。
【0072】
上述した第6実施形態に係る鉄筋保持器具1Fによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0073】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係る鉄筋保持器具について説明する。
図9は、本発明の第7実施形態に係る鉄筋保持器具1Gを示す斜視図である。
図9に示すように、第7実施形態に係る鉄筋保持器具1Gは、鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部2Gと、鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3Gと、を備えている。
【0074】
本体部2Gは、2つの貫通孔(不図示)が設けられた平板部材21Gと、平板部材21Gの貫通孔に取り付けられ鉄筋を挿通可能なUボルト22Gと、Uボルト22Gに螺合する2つのナット23Gにより構成されている。
【0075】
位置決め部3Gは、本体部2Gの平板部材21Gに紐状の連結体33Gを介して連結された、傾斜面31Gを有する楔状部材32Gにより構成されている。なお、本発明においては楔状部材32Gの数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。
【0076】
連結体33Gは、本実施形態においては鋼線であり、その一端部が溶接個所34Gにおいて平板部材21Gに溶接されて固定されている。なお、本発明においてはこれに限らず、鋼線以外の鎖等の連結体33Gを用いてもよい。また、連結体33Gの固定も、溶接以外の、例えば平板部材21Gの外周面にアーチ状のフックを形成し、当該フックに連結体33Gを巻回した後連結体33Gの端部を連結体33Gの中途部分に結束固定する等の方法を用いて行ってもよい。
【0077】
楔状部材32Gは、平面視で直角三角形状の板状部材であり、一辺が傾斜面31Gになっている。楔状部材32Gには貫通孔35Gが形成されていて、この貫通孔35Gに連結体33Gの他端部が挿通され固定手段(不図示)により脱落しないように固定されることにより、楔状部材32Gが連結体33Gに固定された状態になっている。楔状部材32Gを本体部2Gと別体として連結体33Gにより連結する態様とすることにより、楔状部材32Gが2つ以上ある場合に、鉄筋保持器具1Gの位置決めに用いられる楔状部材32Gの数を掘削孔の直径等の状況に応じて調整することができ、また、楔状部材32Gが破損した際にはこれを容易に交換することができる。
【0078】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1Gを使用する際には、まず掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長が所定の長さになるように大まかに調整し、鉄筋の先端部分を平板部材21GとUボルト22Gとの間に挿入しつつUボルト22Gを平板部材21Gの貫通孔に挿入した後、ナット23Gを仮締めする。
【0079】
次に、傾斜面31Gが掘削孔の開口部に当接するようにして、楔状部材32Gが本体部2Gと掘削孔の内周面との間に挿入されて、鉄筋を掘削孔の中心位置に位置決めする。このように位置決めがされた状態で鉄筋の残尺長を所定の長さになるように正確に調整し、ナット23Gを本締めすることで、鉄筋保持器具1Gが鉄筋に着脱可能に固定され、掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長を所定の長さにすることができる。
【0080】
上述した第7実施形態に係る鉄筋保持器具1Gによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0081】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8実施形態に係る鉄筋保持器具について説明する。
図10は、本発明の第8実施形態に係る鉄筋保持器具1Hを示す斜視図である。
図10に示すように、第8実施形態に係る鉄筋保持器具1Hは、鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部2Hと、鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3Hと、を備えている。
【0082】
本体部2Hは、2つの貫通孔(不図示)が設けられた板状部材21Hと、板状部材21Hの貫通孔に取り付けられ鉄筋を挿通可能なUボルト22Hと、Uボルト22Hに螺合する2つのナット23Hにより構成されている。
【0083】
板状部材21Hは、半割管211Hと、半割管211Hの径方向における両端部からそれぞれ径方向外側に向けて延在するフランジ部212Hを有している。フランジ部212Hにはそれぞれ貫通孔(不図示)が設けられている。本体部2Hが半割管211Hを備えていることにより、鉄筋の外周全体を半割管211HとUボルト22Hで覆うようにして挟み込むことがでるため、鉄筋をずれにくい状態で保持することが可能になる。
【0084】
位置決め部3Hは、本体部2Hの半割管211Hの外周面に溶接して設けられた、傾斜面31Hを有する平面視が三角形状の突出片32Hにより構成されている。なお、本実施形態においては突出片32Hは1つのみ設けられているが、本発明においてはこれに限らず、2つ以上の突出片32Hが設けられていてもよい。
【0085】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1Hを使用する際には、まず掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長が所定の長さになるように大まかに調整される。次に、鉄筋の先端部分を本体部2Hの半割管211HとUボルト22Hとの間に挿入しつつ、Uボルト22Hをフランジ部212Hの貫通孔に挿入し、ナット23Hを仮締めすることにより、鉄筋が鉄筋保持器具1Hにより緩く固定される。
【0086】
次に、位置決め部3Hの傾斜面31Hを掘削孔の開口部に当接させることで、鉄筋保持器具1Hが取り付けられた鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めすることができる。そして、鉄筋の残尺長を所定の長さになるように正確に調整し、ナット23Hを本締めすることで、鉄筋保持器具1Hが鉄筋に着脱可能に固定され、掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長を所定の長さにすることができる。
【0087】
上述した第8実施形態に係る鉄筋保持器具1Hによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0088】
[第9実施形態]
次に、本発明の第9実施形態に係る鉄筋保持器具について説明する。
図11は、本発明の第9実施形態に係る鉄筋保持器具1Iを示す斜視図である。
図11に示すように、第9実施形態に係る鉄筋保持器具1Iは、鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部2Iと、鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3Iと、を備えている。
【0089】
本体部2Iは、2つの貫通孔(不図示)が設けられた板状部材21Iと、板状部材21Iの貫通孔に取り付けられ鉄筋を挿通可能なUボルト22Iと、Uボルト22Iに螺合する2つのナット23Iにより構成されている。
【0090】
板状部材21Iは、半割管211Iと、半割管211Iの径方向における両端部からそれぞれ径方向外側に向けて延在するフランジ部212Iを有している。フランジ部212Iにはそれぞれ貫通孔(不図示)が設けられている。本体部2Iが半割管211Iを備えていることにより、鉄筋の外周全体を半割管211IとUボルト22Iで覆うようにして挟み込むことがでるため、鉄筋をずれにくい状態で保持することが可能になる。
【0091】
位置決め部3Iは、本体部2Iのフランジ部212Iに紐状の連結体33Iを介して連結された、傾斜面31Iを有する楔状部材32Iにより構成されている。なお、本実施形態においては楔状部材32Iは1つのみ設けられているが、本発明においては楔状部材32Iの数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。また、本実施形態においては楔状部材32Iはフランジ部212Iに連結されているが、本発明においてはこれに限らず、半割管211Iの外周面に連結されていてもよい。
【0092】
連結体33Iは、本実施形態においては鋼線であり、その一端部が溶接個所34Iにおいてフランジ部212Iに溶接されて固定されている。なお、本発明においてはこれに限らず、鋼線以外の鎖等の連結体33Iを用いてもよい。また、連結体33Iの固定も、溶接以外の、例えばフランジ部212Iの外周面にアーチ状のフックを形成し、当該フックに連結体33Iを巻回した後連結体33Iの端部を連結体33Iの中途部分に結束固定する等の方法を用いて行ってもよい。
【0093】
楔状部材32Iは、平面視で直角三角形状の板状部材であり、一辺が傾斜面31Iになっている。楔状部材32Iには貫通孔35Iが形成されていて、この貫通孔35Iに連結体33Iの他端部が挿通され固定手段(不図示)により脱落しないように固定されることにより、楔状部材32Iが連結体33Iに固定された状態になっている。楔状部材32Iを本体部2Iと別体として連結体33Iにより連結する態様とすることにより、楔状部材32Iが2つ以上ある場合に、鉄筋保持器具1Iの位置決めに用いられる楔状部材32Iの数を掘削孔の直径等の状況に応じて調整することができ、また、楔状部材32Iが破損した際にはこれを容易に交換することができる。
【0094】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1Iを使用する際には、まず掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長が所定の長さになるように大まかに調整される。次に、鉄筋の先端部分を本体部2Iの半割管211IとUボルト22Iとの間に挿入しつつ、Uボルト22Iをフランジ部212Iの貫通孔に挿入し、ナット23Iを仮締めすることにより、鉄筋が鉄筋保持器具1Iにより緩く固定される。
【0095】
次に、傾斜面31Iが掘削孔の開口部に当接するようにして、楔状部材32Iが半割管211Iと掘削孔の内周面との間に挿入される。これにより、鉄筋保持器具1Iが取り付けられた鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めすることができる。そして、鉄筋の残尺長を所定の長さになるように正確に調整し、ナット23Iを本締めすることで、鉄筋保持器具1Iが鉄筋に着脱可能に固定され、掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長を所定の長さにすることができる。
【0096】
上述した第9実施形態に係る鉄筋保持器具1Iによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0097】
[第10実施形態]
次に、本発明の第10実施形態に係る鉄筋保持器具について説明する。
図12は、本発明の第10実施形態に係る鉄筋保持器具1Jを示す斜視図である。
図12に示すように、第9実施形態に係る鉄筋保持器具1Jは、鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部2Jと、鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3Jと、を備えている。
【0098】
本体部2Jは、2つの貫通孔(不図示)が設けられた平板部材21Jと、平板部材21Jの貫通孔に取り付けられ鉄筋を挿通可能なUボルト22Jと、Uボルト22Jに螺合する2つのナット23Jにより構成されている。
【0099】
位置決め部3Jは、平板部材21Jの表面において、貫通孔の中間位置から立設される支柱部31Jと、支柱部31Jの先端部分を縮径して形成された縮径部32Jと、縮径部32Jの表面に形成されたねじ部33Jと、縮径部32Jの直径よりも大きな直径を有するとともに支柱部31Jの直径より小さな直径を有する貫通孔(不図示)が形成され、当該貫通孔を縮径部32Jに挿入しつつ支柱部31Jに取り付けられた板状部材34Jと、板状部材34Jの表側と裏側においてねじ部33Jに螺合する1組のナット35Jにより構成されている。
【0100】
上述した鉄筋保持器具1Jを使用する際には、まず掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長が所定の長さになるように調整し、鉄筋の先端部分を平板部材21JとUボルト22Jとの間に挿入しつつUボルト22Jを平板部材21Jの貫通孔に挿入した後、ナット23Jを仮締めすることにより、鉄筋が所望の残尺長になった状態で鉄筋保持器具1Jにより緩く保持される。
【0101】
次に、板状部材34Jを掘削孔の開口部近傍の内周面に当接させつつ、1組のナット35Jを回転させて板状部材34Jの位置を調節することで、板状部材34Jと本体部2Jとの距離を調節することができ、これにより板状部材34Jが当接している開口部の内周面と、本体部2J内に挿入されている鉄筋との距離を調節することができ、鉄筋保持器具1Jが取り付けられた鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めすることができる。そして、鉄筋の残尺長を所望の長さに正確に調整した後、ナット23Jを本締めすることにより、鉄筋保持器具1Jが鉄筋に着脱可能に固定され、掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長を所定の長さにすることができる。
【0102】
上述した第10実施形態に係る鉄筋保持器具1Jによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0103】
[第11実施形態]
次に、本発明の第11実施形態に係る鉄筋保持器具について説明する。
図13は、本発明の第11実施形態に係る鉄筋保持器具1Kを示す斜視図である。
図13に示すように、第11実施形態に係る鉄筋保持器具1Kは、鉄筋に着脱可能に取り付けられる本体部2Kと、鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めする位置決め部3Kと、を備えている。
【0104】
本体部2Kは、中空で鉄筋を挿通可能な筒状部材21Kと、筒状部材21Kの周壁を貫通する第1貫通孔(不図示)と、貫通孔の内周面に設けられた第1ねじ部(不図示)と、第1貫通孔に挿入されるとともに第1ねじ部に螺合する、つまみ部232Kを有する第1ボルト23Kと、を有している。
【0105】
位置決め部3Kは、筒状部材21Kから立設され縮径された先端部32Kの外周面に第2ねじ部33Kが形成された軸部31Kと、第2ねじ部33Kに螺合し軸部31Kの軸方向に沿い進退動作が可能なストッパー部材34Kを備えて構成されている。
【0106】
ストッパー部材34Kは平板状の部材であり、ストッパー部材34Kの表側と裏側において第2ねじ部33Kに螺合する1組のナット35Kにより軸部31K上の位置を調節可能になっている。
【0107】
上述した構成を備える鉄筋保持器具1Kを使用する際には、まず掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長が所定の長さになるように調整しつつ鉄筋の先端部分を本体部2K内に挿入した後、使用者がつまみ部232Kを指でつまんで第1ボルト23Kを仮締めすることにより、鉄筋が所望の残尺長になった状態で鉄筋保持器具1Kにより緩く保持される。
【0108】
次に、ストッパー部材34Kを掘削孔の開口部近傍の内周面に当接させつつ、1組のナット35Kを回転させてストッパー部材34Kの位置を調節することで、ストッパー部材34Kと本体部2Kとの距離を調節することができ、これによりストッパー部材34Kが当接している開口部の内周面と、本体部2K内に挿入された鉄筋との距離を調節することができ、鉄筋保持器具1Kが取り付けられた鉄筋を掘削孔内の中心位置に位置決めすることができる。そして、鉄筋の残尺長を所望の長さに正確に調整した後、使用者がつまみ部232Kを指でつまんで第1ボルト23Kを本締めすることにより、鉄筋保持器具1Kが鉄筋に着脱可能に固定され、掘削孔から外部に突出する鉄筋の残尺長を所定の長さにすることができる。
【0109】
上述した第11実施形態に係る鉄筋保持器具1Kによっても、鉄筋挿入工において掘削孔への鉄筋の位置決めと残尺長の調整を容易に行うことができる。また、番線やさし木による仮固定を行わずに専用の固定器具を用いるため、仮固定時の見栄えもよくすることができる。
【0110】
なお、上述した第2実施形態に係る鉄筋保持器具1Bから第11実施形態に係る鉄筋保持器具1Kを用いても、
図3のフローチャートに示すような補強土工法を実施することが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0111】
1、1B、1C、1D、1E:逆止弁
1F、1G、1H、1I、1J、1K:逆止弁
2、2B、2C、2D、2E:本体部
2F、2G、2H、2I、2J、2K:本体部
3、3B、3C、3D、3E:位置決め部
2F、3G、3H、3I、3J:位置決め部
3、3B、3C、3D、3E:位置決め部
3F、3G、3H、3I、3J:位置決め部
21、21B、21K:筒状部材
21C、21D、21E:ねじ部
21F、21G、21J:平板部材
21H、21I:板状部材
22:貫通孔
22C、22D、22E:筒状部材
22F、22G、22H、22I、22J:Uボルト
23:ねじ部
23C、23D、23E:フック
23F、23G、23H、23I、23J:ナット
23K:第1ボルト
24、24B:ボルト
31、31B、31D、31F、31G、31H、31I:傾斜面
31C:テーパ面
31J:支柱部
31K:軸部
32、32E、32F、32H:突出片
32B、32D、32G:楔状部材
32C:溝部
32J:縮径部
33B、33D、33G、33I:連結体
33J:ねじ部
35J:ナット
33K:第2ねじ部
34D、34G、34I:溶接個所
34J:板状部材
34K:ストッパー部材
35D、35G、35I:貫通孔
35K:ナット
211H、211I:半割管
212H、212I:フランジ部
232K:つまみ部
H:掘削孔
h1:開口部
S:鉄筋