(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074041
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】半透明化紙及び半透明化紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 21/26 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
D21H21/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185091
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193220
【弁理士】
【氏名又は名称】喜納 やよい
(72)【発明者】
【氏名】浅山 良行
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055AG71
4L055AH50
4L055BE08
4L055BE10
4L055EA04
4L055EA05
4L055EA08
4L055EA11
4L055EA14
4L055EA19
4L055FA12
4L055GA41
(57)【要約】
【課題】本発明は、リサイクル適性を有する透明化紙を提供する。
【解決手段】半透明化紙用原紙と、前記半透明化紙用原紙の少なくとも一部領域に透明化材料が塗布・含侵してなる半透明領域を有する半透明化紙であって、下記の要件(1)~(3)の全てを満足することを特徴とする半透明化紙である。
要件(1):半透明化紙用原紙の坪量(W)が30~100g/m
2
要件(2):半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量(C)が10~70g/m
2
要件(3):C/(W+C)×100の値が20~40%
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透明化紙用原紙と、前記半透明化紙用原紙の少なくとも一部領域に透明化材料が塗布・含侵してなる半透明領域を有する半透明化紙であって、下記の要件(1)~(3)の全てを満足することを特徴とする半透明化紙。
要件(1):半透明化紙用原紙の坪量(W)が30~100g/m2
要件(2):半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量(C)が10~70g/m2
要件(3):C/(W+C)×100の値が20~40%
【請求項2】
半透明化紙用原紙が、針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプを主成分である請求項1記載の半透明化紙。
【請求項3】
針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの比が80:20~51:49である請求項2記載の半透明化紙。
【請求項4】
透明化材料の屈折率が1.4~1.6である請求項1記載の半透明化紙。
【請求項5】
前記半透明領域が下記測定条件1の視感透過率(T50)が20%以上である請求項1記載の半透明化紙。
「測定条件1」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記半透明化紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)。
【請求項6】
前記半透明領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上である請求項1又は5記載の半透明化紙。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【請求項7】
半透明化紙用原紙の少なくとも一部領域に、透明化材料を含む塗布・含侵液を塗布及び/又は含侵して半透明領域を形成する半透明化紙の製造方法であって、下記の要件(1)~(3)の全てを満足することを特徴とする半透明化紙の製造方法。
要件(1):半透明化紙用原紙の坪量(W)が30~100g/m2
要件(2):半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量(C)が10~70g/m2
要件(3):C/(W+C)×100の値が20~40%
【請求項8】
半透明化紙用原紙が、針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプを主成分である請求項7記載の半透明化紙の製造方法。
【請求項9】
針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの比が80:20~51:49である請求項7記載の半透明化紙の製造方法。
【請求項10】
前記針葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度が400~700mLであり、
前記広葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度が350~650mLである
請求項8又は9記載の半透明化紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透明化紙及び半透明化紙の製造方法に関する。更に詳しくは、包装用紙、印刷用紙、出版用紙、情報用紙等に利用可能な紙であり、その一部分領域乃至全領域が半透明化された半透明化紙及び半透明化紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
封筒、商品パッケージ等の紙製包装体は、外部から宛名や内容物を視認できる窓を有することがある。その窓には、透明な樹脂フィルムが貼付されていたり、グラシン紙が貼付されていたりする。資源の再利用等の観点では、後者のグラシン紙を用いることが好ましい。
【0003】
グラシン紙は、パルプを細かく叩解して抄紙した紙を高圧のカレンダー処理をした半透明紙で、従来から知られている。グラシン紙は、封筒等の包装体として用いるには強度が不十分であることから、封筒の窓に部分のみに貼付される等、用途が限られていた。これに代わる半透明化紙として、例えば、透明化樹脂を紙の繊維間に含浸させる手法が提案されている(例えば、特許文献1~4)。紙のセルロース繊維間の空隙に透明化樹脂を含浸させることで、透明化樹脂が含浸した半透明領域の透明度を高めることができる。半透明化紙は、グラシン紙に比べ強度が優れるため、封筒等の包装体としても使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-132698号公報
【特許文献2】特開昭61-132699号公報
【特許文献3】特開2018-9047号公報
【特許文献4】特開2021-91481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、透明化樹脂を含侵した半透明化紙は、透明性の高い紙となるが、使用後に古紙パルプとしてリサイクルする際、離解性に影響することを見出した。本発明は、透明化樹脂を含侵することで得られる半透明化紙の透明性とリサイクル適性を両立した半透明化紙及び半透明化紙の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]半透明化紙用原紙と、前記半透明化紙用原紙の少なくとも一部領域に透明化材料が塗布・含侵してなる半透明領域を有する半透明化紙であって、下記の要件(1)~(3)の全てを満足することを特徴とする半透明化紙。
要件(1):半透明化紙用原紙の坪量(W)が30~100g/m2
要件(2):半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量(C)が10~70g/m2
要件(3):C/(W+C)×100の値が20~40%
[2]半透明化紙用原紙が、針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプを主成分である[1]記載の半透明化紙。
[3]針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの比が80:20~51:49である[2]記載の半透明化紙。
[4]透明化材料の屈折率が1.4~1.6である[1]記載の半透明化紙。
【0007】
[5]前記半透明領域が下記測定条件1の視感透過率(T50)が20%以上である[1]記載の半透明化紙。
「測定条件1」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記半透明化紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)。
【0008】
[6]前記半透明領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上である[1]又は[5]記載の半透明化紙。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【0009】
[7]半透明化紙用原紙の少なくとも一部領域に、透明化材料を含む塗布・含侵液を塗布及び/又は含侵して半透明領域を形成する半透明化紙の製造方法であって、下記の要件(1)~(3)の全てを満足することを特徴とする半透明化紙の製造方法。
要件(1):半透明化紙用原紙の坪量(W)が30~100g/m2
要件(2):半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量(C)が10~70g/m2
要件(3):C/(W+C)×100の値が20~40%
[8]半透明化紙用原紙が、針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプを主成分である[7]記載の半透明化紙。
[9]針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの比が80:20~51:49である[8]記載の半透明化紙。
[10] 前記針葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度が400~700mLであり、
前記広葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度が350~650mLである
[8]又は[9]記載の半透明化紙の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明性に優れ、且つリサイクル適性を有する半透明化紙およびその半透明化紙の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】半透明化紙の一例を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1の半透明化紙のI-I断面を模式的に示す図である。
【
図3】
図1の他の態様の半透明化紙のI-I断面を模式的に示す図である。
【
図4】透明な樹脂フィルムが視認性に優れることを模式図に示す説明図である。
【
図5】従来の半透明化紙等の視認性が不充分となることを模式図に示す説明図であ る。
【
図6】視感透過率の測定法の例を模式的に示す説明図である。
【
図7】視感透過率比の測定法の例を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(半透明化紙)
本発明の半透明化紙は、半透明化紙用原紙の少なくとも一部領域に透明化材料を塗布・含侵することで、塗布・含侵したその領域が半透明になり、半透明化紙となる。透明化材料の塗布・含侵は、半透明化紙用原紙を平面視した際の全領域に施しても、一部分領域に施しても構わない。その領域の形状、個数については特に限定するものではない。透明化材料の塗布・含侵した領域では、半透明化紙用原紙の厚み方向に透明化材料が浸透し、紙内部の空隙をできるだけ透明化材料により埋めることで、紙が半透明化する。なお、半透明化とは、処理前の紙の不透明度よりも処理後の紙の不透明度が低下することをいい、特に限定するものではないはないが、半透明とは処理後の領域の不透明度が4~25%程度のものをいう。
【0013】
そして、本発明の半透明化紙は、下記の要件(1)~(3)の全てを満足する必要がある。
要件(1):半透明化紙用原紙の坪量(W)が30~100g/m2
要件(2):半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量(C)が10~70g/m2
要件(3):C/(W+C)×100の値が20~40%
【0014】
要件(1):半透明化紙用原紙の坪量(W)は30~100g/m2である。坪量は、40~80g/m2であることが好ましく、43~70g/m2であることがより好ましく、45~65g/m2であることが更に好ましい。坪量が前記数値範囲の下限値以上であると、紙の強度が得られ、包装用紙、印刷用紙等の用途に適した半透明化紙となる。坪量が前記数値範囲の上限値以下であると、半透明化紙の透明性を高めることができる。坪量は、JIS P8124にしたがって測定される。
【0015】
要件(2):半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量(C)は10~70g/m2である。塗布・含侵量は、20~60g/m2がより好ましく、25~60g/m2がさらに好ましい。単位面積当たりの塗布・含浸量が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域の透明性を高めやすい。単位面積当たりの塗布・含浸量が前記数値範囲の上限値以下であると、リサイクル適性を高めることができる。ここで半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量とは、この領域に塗布・含侵された固形分の質量であり、紙内部に浸透している透明化材料だけでなく、紙表面に付着している透明化材料、或いは塗布・含侵された助剤を含めた材料の乾燥後の固形分質量である。
【0016】
要件(3):更に、塗布・含侵量をC、坪量をWとした際、C/(W+C)×100の値が20~40%となる必要がある。好ましくは、25~38%であり、より好ましくは28~36%である。この値が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域の透明性を高めやすく、前記数値範囲の上限値以下であると、リサイクル適性を高めることができる。
【0017】
本発明の半透明化紙は、上記のように半透明化紙用原紙に透明化材料を塗布・含侵することで、透明化材料が浸透した領域が半透明になった紙である。例えば、
図1に示すように半透明領域4は、半透明化紙用原紙2の平面視における一部の領域に形成されてもよい。例えば、
図1、
図2に例示する、半透明化紙用原紙2と;半透明化紙用原紙2内に透明化材料3が含浸した半透明領域4と;を有する半透明化紙1Aや、
図1、
図3に例示する、半透明化紙用原紙2と;半透明化紙用原紙2内に透明化材料3が含浸した半透明領域4と;半透明領域4を覆うコーティング層5を有する半透明化紙1Bが含まれる。なお、コーティング層5を有する場合、半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量に、コーティング層の塗布・含侵量を含める。
【0018】
(半透明化紙用原紙)
半透明化紙用原紙は、特に限定するものではないが、針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプを主成分とした紙であることが好ましい。針葉樹化学パルプとしては、例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹未晒サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、針葉樹半晒サルファイトパルプ(NSBSP)が挙げられる。広葉樹化学パルプとしては、例えば、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹未晒サルファイトパルプ(LUSP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、広葉樹半晒サルファイトパルプ(LSBSP)が挙げられる。中でも、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)の組み合わせが好ましい。
【0019】
針葉樹化学パルプは、広葉樹化学パルプよりも長く太い繊維構造であるので、針葉樹化学パルプを多く配合すると、空隙率が高い原紙となり、透明化材料を効率よく含侵することができる。なお、針葉樹化学パルプを過剰に配合した場合は、半透明化紙用原紙の地合が低下し、均一な半透明領域を形成することができない。一方、広葉樹化学パルプは、細く短い繊維構造なので、紙の地合いをよくするが、配合比率を高めると空隙率の低い原紙となり、透明化材料の浸透が不十分となりやすい。透明性を高めるために透明化材料を多量に含侵させると、リサイクル適性を損なうことになる。また、広葉樹化学パルプは細く短い繊維構造なので、透明化材料に含まれる樹脂に被覆されやすく、古紙としてリサイクルを行う際、解繊しにくくなる。
【0020】
針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの配合比は、80:20~51:49であることが好ましい。より好ましい配合比は75:25~55:45であり、更に好ましい配合比は70:30~60:40である。針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの割合を規定することで、透明性とリサイクル適性のバランスのとれた半透明化紙を得ることができる。
【0021】
前記針葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度は、400~700mLであることが好ましい。カナダ標準ろ水度は、420~650mlCSFがより好ましく、450~600mlCSFがさらに好ましい。カナダ標準ろ水度が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明化紙用原紙の空隙を保持できるので、透明化材料の含侵性に優れる。カナダ標準ろ水度が前記数値範囲の上限値以下であると、半透明化紙用原紙の地合いを高めることができ、透明性、視認性に優れた半透明領域を有する半透明化紙が得られやすい。
【0022】
前記広葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度は、350~650mLであることが好ましい。カナダ標準ろ水度は、370~630mlCSFがより好ましく、400~600mlCSFがさらに好ましい。カナダ標準ろ水度が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明化紙用原紙の強度を高めることができる。カナダ標準ろ水度が前記数値範囲の上限値以下であると、半透明化紙用原紙の地合いを高めることができ、透明性、視認性に優れた半透明領域を有する半透明化紙が得られやすい。
【0023】
また、針葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度が広葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度よりも高いと、紙の強度と透明性に優れるため好ましい。なお、パルプのカナダ標準ろ水度紙は、JIS P8121-2:2012に従って測定される。因みに、従来から半透明紙として一般に知られているグラシン紙においては、叩解度を高めた化学パルプ、例えば、カナダ標準ろ水度が250mlCSF以下の化学パルプが使用されている。しかし、叩解度を高めたパルプ繊維はすり潰され、また、カットされているため、例えば封筒の透明窓には用いられても、強度が求められる包装袋等の用途には適用しにくい。
【0024】
パルプには、本発明の効果を損なわない範囲で、針葉樹化学パルプ及び広葉樹化学パルプ以外のパルプを併用することができる。例えば、メカニカルパルプ、サーモメカニカルパルプ、脱墨パルプ、非木材パルプ、合成パルプなどが例示できる。
【0025】
半透明化紙用原紙の透気度が10~40秒であることが好ましい。透気度は、12~35秒であることが好ましく、15~33秒であることがより好ましい。透気度が前記数値範囲の下限値以上であると、紙の強度が得られ、包装用紙、印刷用紙等の用途に適した半透明化紙となる。透気度が前記数値範囲の上限値以下であると、透明化材料の浸透性が優れ、半透明化紙の透明性を高めることができる。透気度は、J.TAPPI-5-2:2000に準拠して測定される王研式透気度にしたがって測定される。
【0026】
半透明化紙用原紙の密度は0.5~0.85g/cm3であることが好ましく、0.6~0.8g/cm3がより好ましい。密度が前記数値範囲の下限値以上であると、紙の強度が得られ、包装用紙、印刷用紙等の用途に適した半透明化紙となる。密度が前記数値範囲の上限値以下であると、透明化材料の浸透性が優れ、半透明化紙の透明性を高めることができる。密度は、JIS P8118にしたがって測定される。
【0027】
半透明化紙用原紙の空隙率は30~80%が好ましく、40~70%がより好ましく、50~70%がさらに好ましい。半透明化紙用原紙の空隙率が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域の透明性を高めやすい。半透明化紙用原紙の空隙率が前記数値範囲の上限値以下であると、シートの物理的強度が低下しにくい。紙基材の空隙率は、JIS P8118にしたがって測定された密度をセルロースの真密度1.50で除した値から算出される。
【0028】
半透明化紙用原紙の少なくとも一方の面のパーカープリントサーフ平滑度が7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。下限値は特に限定しない。値が小さければ小さい程、平滑であることが言える。パーカープリントサーフ平滑度は細部の平滑性を評価でき、この値が小さいほど、紙表面の光の散乱を低減できるので、半透明化部分を透しての視認性を高めることができる。パーカープリントサーフ平滑度は、ISO8791-4:1992に準拠して求められるパーカープリントサーフ平滑度(ソフトバッキング/クランプ圧500kPa)
【0029】
半透明化紙用原紙には、パルプの他に、紙力増強剤、サイズ剤、填料、着色剤など公知の抄紙用助剤を適宜配合することができる。なお、填料の配合は、紙の隠蔽性を高める方向に働くため、透明性、視認性を損なわない範囲内での配合に留めることが好ましく、半透明化紙用原紙は填料を配合しないことがより好ましい。
【0030】
半透明化紙用原紙の製造方法は、特に限定されない。例えば、半透明化紙用原紙の原料となるパルプを叩解する工程と、叩解したパルプを含むパルプスラリーを抄紙する工程と、抄紙して得られたウェットシートを乾燥する工程を含む方法が挙げられる。
【0031】
叩解する工程においては、前記のカナダ標準ろ水度となるように原料のパルプを叩解することが好ましい。叩解機は特に限定されない。例えば、ダブルディスクリファイナー等の公知の叩解機が挙げられる。
抄紙に用いられる抄紙機は特に限定されない。例えば、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機等が挙げられる。
乾燥する工程も特に限定されない。例えば、抄紙機に付属のドライヤーが使用できる。
【0032】
半透明化紙用原紙は、平滑化処理を施してもよい。平滑化処理を施すことにより、紙表面における光の散乱を低減できるので、半透明化部分を透しての視認性を高めることができる。平滑化処理としては、例えば、緊度プレス、マシンカレンダー、グロスカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダーなどが例示できるが、これらの装置は、紙の密度を高めるので、線圧を下げて密度が高くなりすぎないように注意する必要がある。一方、紙が湿潤状態であるうちに平滑な面に貼り付け、乾燥することで平滑な面を移しとる転写方式は、紙の密度が高くならないので好ましい。例えば、ヤンキーシリンダー、キャストドラム、フィルム転写などの技術が使用できる。中でも、ヤンキーシリンダーを用いたヤンキードライヤーは、抄紙機に付属されているので生産性が優れ好ましい。
【0033】
(透明化材料)
透明化材料は、半透明化紙用原紙に含侵することにより、含侵した部分が半透明化する材料であれば特に特に限定されない。例えば、透明化材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース、セラック、ロジン等の樹脂類;桐油、亜麻仁油、ヒマシ油、親水ヒマシ油、ヤシ油、大豆油、市販のサラダ油等の植物油;カウナバワックス、パームワックス、蜜蝋、鯨蝋、木蝋等の蝋、ワックス類が挙げられる。透明化材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
なかでも、経時的に安定な樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。アクリル樹脂のなかでも、特に、紫外線硬化型のアクリル樹脂は表面被覆性に優れ、また断面視における透明化材料の含浸した領域の界面が鮮明になるため好ましい。例えば、紫外線硬化型のアクリル樹脂としては、特開2021-91481号公報の段落0025、段落0026に開示のものが挙げられる。
【0035】
透明化材料としては、以上例示したもののなかから屈折率が1.4~1.6、好ましくは1.45~1.58、より好ましくは1.50~1.58、さらに好ましくは1.52~1.58の範囲内にあるものを選択することが好ましい。セルロース繊維の屈折率は一般に1.4~1.6の範囲内にあると言われているためである。透明化材料の屈折率が前記数値範囲内であると、セルロース繊維の屈折率との差が小さく、半透明領域の透明性、視認性を高めやすい。透明化材料の屈折率は、JIS K 7142にしたがって測定される。
【0036】
セルロース繊維の屈折率に近い屈折率の透明化材料を半透明化紙用原紙に含浸させ、紙内部のセルロース繊維間の空隙を充填することで、半透明化紙用原紙内の透明化材料に起因する光の屈折を低減できる。よって、透明性、視認性に優れる半透明領域が得られやすくなる。屈折率の調整のために、ジルコニウム、チタニウム等の高屈折率物質を必要に応じて用いてもよい。
【0037】
透明化材料は半透明化紙用原紙に塗布・含浸させることから、常温または加熱状態で液体のものが好ましい。また、常温または加熱状態で有機溶剤等の液状媒体に溶解可能なものも浸透性の点で好ましい。すなわち、透明化材料は、製造時には浸透性のある液状の透明化剤として半透明化紙用原紙内に含浸させることができるものが好ましい。
【0038】
半透明化紙の半透明領域の表面の凹凸による光の乱反射を低減するために、半透明領域の表面の少なくとも一部にコーティング層を設けてもよい。このコーティング層によれば、半透明領域の表面の平滑度を高め、半透明領域の表面における光の乱反射を防ぎ、半透明領域の視認性を向上させることができる。コーティング層の材料として、例えば、透明化材料、OPニスが挙げられる。透明化材料としては、半透明領域の項で例示したものと同じものが挙げられる。コーティング層が透明化材料を含む場合、コーティング層の透明化材料と半透明領域の透明化材料は、互いに同一でもよく、異なる種類でもよい。また、コーティング層の材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
OPニスは、オーバープリントニスと呼ばれることがある。OPニスの成分は、製品、製造業者等に応じて異なるが、亜麻仁油、桐油および硝化綿からなる群から選ばれる少なくとも一以上を含むOPニスが好ましい。OPニスの市販品としては、例えば、東洋インキ株式会社、株式会社T&K TOKA、富士インキ製造株式会社の製品が挙げられる。 OPニスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。乾燥方式は酸化重合によるもの、UV効果によるもの等を用いてもよい。
【0040】
コーティング層の材料としては、これらのなかから屈折率が1.4~1.6、好ましくは1.45~1.60、より好ましくは1.48~1.60、さらに好ましくは1.50~1.60、特に好ましくは1.50~1.58の範囲内にあるものを選択することが好ましい。セルロース繊維の屈折率は一般に1.4~1.6の範囲内にあると言われているためである。コーティング層の屈折率をセルロース繊維の屈折率と近い値とすることで、コーティング層と半透明化紙用原紙の界面での光の屈折を低減できる。よって、視認性に優れる半透明領域が得られやすくなる。コーティング層の屈折率は、JIS K 7142にしたがって測定される。
【0041】
コーティング層を設ける場合、コーティング層の厚みは0.5~2.5μmが好ましく、0.5~2.0μmがより好ましく、0.7~2.0μmがさらに好ましい。コーティング層5の厚みが前記数値範囲の下限値以上であると、光沢感のある面感となり、半透明領域において優れた視認性が得られやすい。コーティング層の厚みが前記数値範囲の上限値以下であると、塗工部分と非塗工部分の乾燥後の収縮差による紙シートの凹凸やカール発生が抑えられる。コーティング層の厚みは、平面に対して垂直な断面を切り出し、当該断面を電子顕微鏡で観察したときの厚み方向の最大値を測定した値である。
【0042】
半透明領域の不透明度としては4~25%が好ましく、4~20%がより好ましく、4~15%がさらに好ましい。半透明領域の不透明度は、JIS P 8138:1976にしたがって測定される。不透明度は値が小さいほど透明である。
【0043】
半透明領域のヘイズとしては80%以下が好ましい。半透明領域のヘイズが80%以下であると、半透明領域の透明性が向上する。半透明領域のヘイズの下限値は特に限定されないが、例えば、10%以上、好ましくは20%以上である。半透明領域のヘイズは、JIS-K7136にしたがって測定される。ヘイズは、値が小さいほど曇りが少ない。
【0044】
これまで、半透明領域の視認性を評価するためにヘイズや不透明度が使用されてきた。しかし、本発明者の検討によれば、ヘイズや不透明度の数値傾向は、ヒトの目視による視認性の優劣と一致しないことが多い。例えば、試料の白色度が高いとき、可視光の透過率は高くなるが、視認性や目視面感が必ずしも優れるとは限らない。
【0045】
ヘイズの数値傾向が視認性の優劣と一致しない理由は、以下の通りと考えられる。ヘイズは、試料を透過した光線の全光線透過率に対する拡散透過率の比率として算出される。拡散透過率は、試料に直線光を入射し、該試料を透過した光線のうち平行成分を除いた拡散光の透過率である。一方で、
図4、
図5に示したようにヒトの目は拡散角度の広い拡散光や散乱光よりも、直線的に進む光や拡散角度の狭い光を優先的に認識しやすい。
このようにヘイズの算出においては、ヒトの目で認識しやすい平行成分の光を計測対象から除き、また、ヒトの目で認識しにくい拡散光を計測対象に含めて拡散透過率を求めている。ヘイズはかかる拡散透過率から算出されるため、ヒトの目視面感の評価や奥行方向の視認性の優劣の評価に適していない。
同様に、不透明度もヒトの目で認識しにくい拡散光を計測対象に含めて求められるため、ヒトの目視面感の評価や奥行方向の視認性の評価には適していない。
【0046】
本発明者は鋭意検討した結果、半透明領域を透して見える内容物のボケ具合の多寡に基づいて、半透明領域の視認性の優劣を評価することに想到した。ボケ具合は、半透明領域を透過した光の拡散パターンに起因する。ボケ具合が多い半透明領域の場合、拡散角度の広い拡散光が相対的に多く透過光に含まれるため、内容物の視認性が低下する。対してボケ具合が少ない半透明領域の場合、直線的に進む光や拡散角度の狭い光が相対的に多く透過光に含まれるため、内容物の視認性がよい。
本発明者はかかるボケ具合を定量的に評価する手法および指標を考案し、そのボケ具合の指標が特定の数値以上であれば、半透明領域を透して視認した内容物の視認性が優れることを見出した。その指標が視感透過率、視感透過率比である。
【0047】
「視感透過率の測定」
視感透過率の測定には、光源からの光をサンプルに投光する投光部、サンプルを透過した光を受光する受光部、受光した光を計測するセンサーを含み、投光部と受光部の間の距離が50mm以上あり、更にサンプルなしで測定した場合、受光感度特性が明所視標準比視感度とほぼ一致する視感透過率測定器を用いる。視感透過率測定器は、メガネレンズ、フィルターガラス、透明導電膜ガラスなどの測定で多数市販されており、上記測定条件に一致する装置を用いて測定することができる。また、分光光度計などで、上記測定条件に一致する装置であれば視感透過率測定器として使用することができる。
【0048】
「視感透過率(T50)」
本発明では、下記測定条件の視感透過率(T50)が20%以上であることが好ましい。
「測定条件1」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率。
【0049】
図6はその測定を説明する説明図である。視感透過率測定器100の投光部101にサンプルSの一方の面S1を接するように配置することで視感透過率(T50)を測定することができる。本発明では、視感透過率測定器として販売されている朝日分光株式会社のTLV-304―LCを使用した。この装置は、投光部と受光部の間の距離が51.5mmである。少なくとも50mm離れた視感透過率(T50)を20%以上とすることで、視認性の優れた透明化領域を有する紙となる。値が大きいほど視認性が優れ、好ましくは23%以上である。
視感透過率(T50)は、サンプルから出てきた光を直ぐに測定するのでなく、50mm離れた位置で測定するため、50mmの間に散乱して受光部に届かない光を除いているので、視認性に一致する。空気中では光は散乱しないので、散乱の原因は、サンプルの内部及び表面の状態に起因するものである。
【0050】
「視感透過率比」
本発明では、下記測定条件の視感透過率比が44以上である半透明領域を有することが好ましい。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【0051】
図7の(a)及び(b)がその測定を説明する説明図である。視感透過率測定器100の投光部101にサンプルSの一方の面S1を接するように配置することで視感透過率(T50)を測定することができる(a)。受光部102にサンプルの他方の面S2を接するように配置することで視感透過率(T0)を測定することができる(b)。なお、視感透過率(T0)を測定する際、自重によるサンプルの撓みが生じないように、リング状の治具などで押さえるとよい。本発明では、視感透過率測定器として販売されている朝日分光株式会社のTLV-304―LCを使用した。この装置は、投光部と受光部の間の距離が51.5mmである。少なくとも50mm離れた二点の視感透過率(T50)、視感透過率(T0)により、視感透過率比=(T50/T0)×100を求める。この値が44以上とすることで、視認性の優れた透明化領域を有する紙となる。値が大きいほど視認性が優れ、好ましくは48以上、より好ましくは50以上である。
視感透過率比は、サンプルから出てきた光を直ぐに測定した(T0)が、50mm離れた位置で測定した(T50)がどの程度低下したかを示す。(T50)が、50mmの間に散乱して受光部に届かない光を除いているので、視認性に一致する。空気中では光は散乱しないので、散乱の原因は、サンプルの内部及び表面の状態に起因するものである。
【0052】
更に、上記「視感透過率(T50)と「視感透過率比」の両方を満足することがより好ましい。
【0053】
透明化領域の上記視感透過率(T50)が20%以上、上記視感透過率比が44以上とするためには、光の入射する紙の表面、入射した光の紙の内部、透過光の紙の表面での光の屈折や散乱等をコントロールするとよい。
【0054】
半透明化紙の半透明領域の密度は、0.7~2.5g/cm3が好ましく、0.7~2.0g/cm3がより好ましく、0.8~2.0g/cm3がさらに好ましい。半透明領域の密度が前記数値範囲の下限値以上であると、セルロース繊維間の空気層が樹脂成分の含浸により充分に排除されていると考えられる。半透明領域の密度が前記数値範囲の上限値以下であると、半透明化紙を包装体等とする際の加工性が向上する。半透明領域の密度は、JIS P 8118にしたがって測定される。
【0055】
本発明の半透明化紙は、分別することなくリサイクルが可能である。一般的に紙のリサイクルは、集められた古紙が1%濃度程度の紙・パルプ濃度でパルパーと呼ばれる大型解繊機で離解され、9mmφ程度の粗繊機で未分散のものが取り除かれた後、さらに分散されてクリーナーや1.6mmφ程度のスクリーンを通して細かな未分散のものが取り除かれる。樹脂が過剰に含有する場合、離解、分散性が悪化し、これらのスクリーンを詰まらせたり、未分散のものが抄紙工程で塵発生して紙に持ち込まれ塵斑点の問題となる場合がある。このため、再離解したのちに砕片のような未分散物のものがないようにすることが必要である。本発明の半透明化紙は、原紙の坪量と、透明化材料等の塗布・含浸量と、それらの比率を規定することにより、透明化材料による透明性の向上と、透明化材料の含侵によるリサイクル適性の低下を抑制することを両立することができる。
【0056】
(半透明化紙の製造方法)
本発明の半透明化紙の製造方法は、半透明化紙用原紙の少なくとも一部領域に、透明化材料を含む塗布・含侵液を塗布及び/又は含侵して半透明領域を形成する半透明化紙の製造方法であって、下記の要件(1)~(3)の全てを満足することを特徴とする半透明化紙の製造方法。
要件(1):半透明化紙用原紙の坪量(W)が30~100g/m2
要件(2):半透明領域の単位面積当たりの塗布・含侵量(C)が10~70g/m2
要件(3):C/(W+C)×100の値が20~40%
【0057】
半透明化紙用原紙については、先の述べたように、要件(1)~要件(3)を満足することにより、透明化材料による透明性の向上と、透明化材料の含侵によるリサイクル適性の低下を抑制することを両立することができる。
【0058】
透明化材料の塗布・含浸は、液状の透明化材料を半透明化紙用原紙に塗布・含侵することで浸透する。塗布・含侵する面は半透明化紙用原紙のどちらの面に行ってもよい。半透明化紙用原紙の一方の面のパーカープリントサーフ平滑度が5μm以下である場合、他方の面に透明化材料を塗布・含侵すると、効率よく浸透するので好ましい。表裏ともパーカープリントサーフ平滑度が5μm以下である場合は、値が大きい面に塗布・含侵するとよい。パーカープリントサーフ平滑度の値が小さい面は、平滑度が高いため、表面に近いほど、セルロース繊維の密度が高い。よって、セルロース密度の小さい面に塗布・含侵することで、透明化材料の浸透を行う。一方、パーカープリントサーフ平滑度が5μm以下は平滑なため、紙表面での光散乱を抑制できるので、視認性に優れるので、好ましい。
【0059】
透明化材料が常温で固体の場合、透明化材料を溶解可能な液状媒体を用い、塗布・含侵液を調製する。透明化材料が常温で液体の場合、液状媒体を用いて透明化材料の濃度を変更してもよく、液状媒体を用いずにそのまま塗布・含侵液として用いてもよい。
【0060】
液状媒体は特に限定されない。水性溶剤、有機溶剤のいずれも使用できる。液状媒体が水分を含むと、水分により半透明化紙用原紙が膨潤しやすい。また、その後の乾燥時には半透明化紙用原紙が収縮しやすい。そのためカール、ぼこつき、および凹凸が発生しやすい。よって、液状媒体は水分を含まないことが好ましく、有機溶剤がより好ましい。
【0061】
有機溶剤は極性溶媒でもよく、非極性溶媒でもよい。
極性溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、エステル類、非極性溶媒等が
挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノールが挙げられる。
エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングルコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、テトラエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル等の種々のグリコールエーテルが挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
非極性溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等のパラフィン系炭化水素;イソヘキサン、イソオクタン、イソドデカン等のイソパラフィン系炭化水素;流動パラフィン等のアルキルナフテン系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素;シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0062】
塗布・含侵液は、透明化材料および液状媒体以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、例えば、アンモニア、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の塩基性物質;グリセリン、エチレングリコール等の粘度調整剤;ジルコニウム、チタニウム等の高屈折率物質;消泡剤;離型剤;着色剤が挙げられる。ただし、他の成分はこれらの例示に限定されない。
【0063】
塗布・含侵の際には、半透明化紙用原紙内の断面において透明化材料が塗布・含侵面の反対側の面の一部に達していない部分を形成してもよい。該部分において、平滑度が相対的に高い面の表面状態を透明化材料の塗布・含侵前の状態のまま維持できるためである。
塗布・含侵の際には、半透明化紙用原紙の両面から透明化材料を浸透させてもよい。紙内部に透明化材料の含侵を十分に行うためで、未透明化材料が未含侵の空隙部分を減らすためである。
【0064】
塗布・含侵液の単位面積当たりの塗布・含浸量は10~70g/m2が好ましく、20~60g/m2がより好ましく、30~60g/m2がさらに好ましい。塗布・含侵液の単位面積当たりの塗布・含侵量が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域の透明性を高めやすい。塗布・含侵液の単位面積当たりの塗布・含侵量が前記数値範囲の上限値以下であると、リサイクル適性を高めることができる。
【0065】
塗布・含侵液の粘度は50~5000mPa・sが好ましく、50~4000mPa・sがより好ましく、50~3000mPa・sがさらに好ましい。粘度が前記数値範囲の上限値以下であると、塗布・含侵液が紙内部に浸透しやすく、半透明領域の透明性を高めやすい。粘度が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域と非半透明領域の境界がはっきりする。粘度は、30℃、60rpmの条件でBlookfield型粘度計を用いて測定される。
【0066】
塗布・含侵液の塗布方法は特に限定されない。例えば、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷、ロールコート、バーコート、ブレードコート等が挙げられる。中でも、印刷方式を採用すると、半透明化部分の位置合わせが容易であるため好ましく、多色印刷機の場合、塗布・含侵液を複数回重ねて塗布・含侵できるのでより好ましい。
【0067】
透明化材料を含む塗布・含侵液を半透明化紙用原紙内に含浸させることで、半透明化紙内のセルロース繊維間の空隙を透明化材料で埋めることができる。屈折率が1.4~1.6の範囲内にある透明化材料を含む塗布・含侵液を用いる場合、半透明化紙内の空隙をセルロースの屈折率に近い透明化材料で埋めることができる。そのため、半透明化紙内の空隙に起因する光の屈折を低減できる。
【0068】
塗布・含侵液の半透明化紙用原紙への含侵塗工は一度で行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けて行う場合、複数回のそれぞれにおいて用いる透明化材料の構成成分および組成は同じでもよく、互いに異なってもよい。
【0069】
紫外線硬化型の透明化剤を用いる場合、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ等の種々の光源を使用できる。積算光量は特に限定されない。透明化剤の使用量および透明化樹脂の種類に応じて適宜変更すればよい。
【0070】
(半透明領域)
半透明領域は、半透明化紙の平面視における一部の領域に形成されている。半透明化紙を包装体とした際に包装体の外部から内容物やあて名を半透明領域越しに見ることができる。
平面視における半透明領域の形状および面積割合は何ら限定されない。包装用紙、包装体、印刷用紙の用途に応じて適宜設定または変更が可能である。また、他の例においては、半透明領域は半透明化紙の平面方向の全部の領域であってもよい。また、半透明領域の数は特に限定されず、1つでも複数でもよい。複数の半透明領域を備えた半透明化紙の場合、各半透明領域の大きさや形状も特に限定されない。
【0071】
(用途)
本発明の半透明化紙によれば、これまでにない透明性や視認性が得られるとともに、リサイクル適性にも優れることから、包装用紙だけでなく、印刷用紙、書籍用紙、複写用紙、情報用紙、ラベル用紙等において、紙基材を透して紙の反対面にある像(文字、記号、画像、物体等)を視認するための種々の用途に使用できる。
【実施例0072】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0073】
(化学パルプの調製)
NBKP:叩解しカナダ標準ろ水度が550mLとした針葉樹晒クラフトパルプ
LBKP:叩解しカナダ標準ろ水度が500mLとした広葉樹晒クラフトパルプ
【0074】
(半透明紙用原紙の製造)
表1に示す化学パルプの配合で、ヤンキードライヤーを有する長網式抄紙機を用いて、半透明紙用原紙を製造した。
【0075】
【0076】
(含侵塗工液の調製)
含侵塗工液1:透明化材料として、アクリル系パラフィン溶剤(商品名:クラリテンDC、大和化学工業社製)を準備した。この透明化材料の屈折率は1.50である。屈折率は株式会社アタゴのアッペ式屈折率測定器で測定した。
溶媒として、芳香族パラフィン系溶剤(商品名:クラリテンS、大和化学工業社製)を準備した。これらの透明化材料と溶媒を混合し、透明化材料の濃度が75%質量%の含侵塗工液)を調製した。含侵塗工液の30℃、60rpmにおける粘度は1800mPa・sであった。
含侵塗工液2:40%セラック(興洋化学株式会社製)を健栄製薬の無水エタノールで希釈して、固形分のセラックの含有量が25.0質量%のセラックのアルコール希釈液を調製した。屈折率は1.46であった。屈折率は株式会社アタゴのアッペ式屈折率測定器で測定した。この希釈液の全質量に対して0.2質量%となるように、住化ケムテックス株式会社製のSumifix HFのNavy2G gran液(藍色)を滴下して添加し、株式会社シンキー製の自転・公転ミキサーあわとり練太郎ARE310を使用して分散させ、含侵塗工液を調製した。含侵塗工液の30℃、60rpmにおける粘度は1200mPa・sであった。
【0077】
実施例1~実施例6、比較例1~5
(半透明紙の製造)
製造例1~製造例8で得られた半透明紙用原紙の平滑度の高い面の反対側の面に、松尾産業マイクロメーター調整式アプリケーターを用い、含侵塗工液1を塗工・印刷し、ヒートテック社の熱風循環乾燥器を用い100℃5分乾燥した。塗布・含侵量は表2及び表3となるように行った。
【0078】
実施例7
また、製造例1で得られた半透明紙用原紙の平滑度の高い面の反対側の面に、株式会社ローラン製のハンドKロックスの彫刻ロール(仕様100/18)を用いて上記含侵塗工液2を含浸塗工させた。具体的には、ゴムロール転写法で、含侵塗工液2を繰り返し塗工し、常温で乾燥させ、半透明化紙を得た。塗布・含侵量は表3となるように行った。
【0079】
(評価)
実施例1~実施例7、比較例1~5で得られた半透明化紙と参考例1として 市販のグラシン紙を用意した。
【0080】
[不透明度]
JIS P8149に準拠した「SC-WT」(スガ試験機社製品社製品)を用いて不透明度を測定した。
「視感透過率(T50)」
視感透過率測定器として朝日分光株式会社のTLV-304―LCを用い、
図6で示すようにして視感透過率(T50)を測定した。
【0081】
「視感透過率比」
視感透過率測定器として朝日分光株式会社のTLV-304―LCを用い、
図7で示すようにして、視感透過率(T50)及び視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求めた。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【0082】
[奥行き方向の視認性の評価]
水平な台の上に10.5ポイントのワード文書をプリントしたA4版の印刷物を置き、その上方5.0cmの位置に各例の包装用紙を配置した。さらに包装用紙の上方50cmの位置から包装用紙の半透明領域を透して印刷物の文字を見たときの視認性を以下の基準に基づいて評価した。
A:文字の欠落が無くはっきり認識できる。
B:文字の欠落が僅かにあるが、文字をはっきり認識できる。
C:文字の欠落が一部あるが、文字を認識できる。
C’ :少し暗い状態だが、文字を認識できる。
D:文字が複数個所で欠落し、文字を読み難い。
E:文字が至る所で欠落し、文字としても著しく認識しがたい。
【0083】
「リサイクル適性」
リサイクル適性の評価として、以下の再離解性評価を行った。
得られた半透明化紙を10mm角に手でちぎり濃度3%とした500mlを家庭用ミキサー、テスコム社のミキサー TM856-Wにて30秒撹拌してHOGAの12メッシュ篩で篩分けをした。
◎:篩分けできた
〇:篩分けできなかったものの乾燥後の重量が0.5g以下であった。
×:篩分けできなかったものの乾燥後の重量が0.5gを超えていた。
【0084】
【0085】
【0086】
実施例の半透明化紙は、透明性、視認性に優れるとともに、離解適性を有するものであった。
1(1A、1B)…半透明化紙、2…半透明化紙用原紙、3…透明化材料、4…半透明領域、5…コーティング層、10…包装物、11…対象像、12…視認像、F…樹脂フィルム、100…視感透過率測定器、101…投光部、102…受光部、S…サンプル、S1…サンプルの片面、S2…サンプルの他面。