(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074042
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】半透明化紙及び半透明化紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 21/26 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
D21H21/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185092
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193220
【弁理士】
【氏名又は名称】喜納 やよい
(72)【発明者】
【氏名】浅山 良行
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AA03
4L055AC06
4L055BE08
4L055BE10
4L055EA04
4L055EA08
4L055EA11
4L055EA12
4L055EA14
4L055FA12
4L055GA41
(57)【要約】
【課題】本発明は半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときでも視認性に優れる包装体が得られる半透明化紙を提供する。
【解決手段】本発明は、紙の少なくとも一部分に半透明領域を有する半透明化紙において、前記半透明領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上である半透明領域を有する半透明化紙。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙の少なくとも一部分に半透明領域を有する半透明化紙において、前記半透明領域が下記測定条件1の視感透過率(T50)が20%以上である半透明化紙。
「測定条件1」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記半透明化紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)。
【請求項2】
紙の少なくとも一部分に半透明領域を有する半透明化紙において、前記半透明領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上である半透明領域を有する半透明化紙。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【請求項3】
紙の少なくとも一部分に半透明領域を有する半透明化紙において、前記半透明領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上である請求項1記載の半透明化紙。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【請求項4】
紙を構成するパルプが、針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの比が80:20~51:49である請求項1~3のいずれかに記載の半透明化紙。
【請求項5】
前記半透明領域に透明化材料が含侵してなる請求項1~3のいずれかに記載の半透明化紙。
【請求項6】
前記半透明領域の少なくとも一部に光吸収性物質が付着した網掛け印刷部をさらに有する、請求項1~3のいずれかに記載の半透明化紙。
【請求項7】
半透明化紙用原紙の少なくとも一部分の領域が下記測定条件1の視感透過率(T50)が20%以上となるように透明化材料を含侵する半透明化紙の製造方法。
「測定条件1」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記半透明化紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)。
【請求項8】
半透明化紙用原紙の少なくとも一部分の領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上となるように透明化材料を含侵する半透明化紙の製造方法。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【請求項9】
半透明化紙用原紙の少なくとも一部分の領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上となるように透明化材料を含侵する請求項7記載の半透明化紙の製造方法。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透明化紙及び半透明化紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
封筒、商品パッケージ等の包装体は、外部から宛名や内容物を視認するための透明な領域を設けることがある。透明な領域には透明な樹脂フィルムをされていることが多いが、資源の再利用等の観点では、半透明紙や包装用紙の少なくとも一部を透明化した半透明領域を有する半透明化紙の使用が好ましい。
【0003】
紙を透明化する方法はいくつかある。例えば、叩解度を高めたパルプ繊維は、グラシン紙、トレーシングペーパー等の半透明紙の製造に用いられている。しかし、高叩解によりパルプ繊維がすり潰され、カットされていること等の理由から、叩解度を高めたパルプ繊維は封筒の窓には用いられても、強度が求められる包装袋等の用途には適用しにくい。
一方、セルロース繊維間の空隙に透明化樹脂を含浸させる方法によれば、紙強度を維持でき、また、透明化樹脂が含浸した半透明領域の透明度を高めることができる(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-91481号公報
【特許文献2】特開昭61-132699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、封筒のように、書類のような薄い内容物の包装が主な用途として想定される場合、手指で半透明領域を内容物に押し当てれば視認性を確保できる。ところが、包装体のなかには、奥行のある立体形状の商品の包装に使用されるものがある。加えて、近年の環境対応に対する要求から、プラスチックパッケージの代替品として紙製の包装体の適用範囲は拡大している。
【0006】
しかし、従来の半透明紙等は、半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときに内容物を明瞭に視認しにくい。そのため、奥行の空間をもって内容物が包装されたときの視認性が不充分である。
本発明は、半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときでも視認性に優れる包装体が得られる半透明化紙及び半透明化紙の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 紙の少なくとも一部分に半透明領域を有する半透明化紙において、前記半透明領域が下記測定条件1の視感透過率(T50)が20%以上である半透明化紙。
「測定条件1」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記半透明化紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)。
【0008】
[2] 紙の少なくとも一部分に半透明領域を有する半透明化紙において、前記半透明領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上である半透明領域を有する半透明化紙。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【0009】
[3] 紙の少なくとも一部分に半透明領域を有する半透明化紙において、前記半透明領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上である[1]記載の半透明化紙。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【0010】
[4] 紙を構成するパルプが、針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの比が80:20~51:49である[1]~[3]のいずれかに記載の半透明化紙。
[5] 前記半透明領域に透明化材料が含侵してなる[1]~[3]のいずれかに記載の半透明化紙。
[6] 前記半透明領域の少なくとも一部に光吸収性物質が付着した網掛け印刷部をさらに有する、[1]~[3]のいずれかに記載の半透明化紙。
【0011】
[7] 半透明化紙用原紙の少なくとも一部分の領域が下記測定条件1の視感透過率(T50)が20%以上となるように透明化材料を含侵する半透明化紙の製造方法。
「測定条件1」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記半透明化紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)。
【0012】
[8] 半透明化紙用原紙の少なくとも一部分の領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上となるように透明化材料を含侵する半透明化紙の製造方法。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【0013】
[9] 半透明化紙用原紙の少なくとも一部分の領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上となるように透明化材料を含侵する[7]記載の半透明化紙の製造方法。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、半透明化紙と表示との間に空間や隙間があるときでも視認性に優れる半透明化紙及び半透明化紙の製造方法が提供される。また、半透明化紙を用いて、半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときでも視認性に優れる包装体が得られる包装用紙;および前記包装用紙を備えた包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】透明な樹脂フィルムが視認性に優れることを模式図に示す説明図である。
【
図2】従来の半透明紙等の視認性が不充分となることを模式図に示す説明図である。
【
図3】視感透過率の測定方法を説明する説明図である。
【
図4】視感透過率比の測定方法を説明する説明図である。
【
図5】半透明化紙の一例を模式的に示す平面図である。
【
図6】
図5の半透明化紙のVII-VII断面を模式的に示す図である。
【
図7】網掛け印刷部によって視認性が向上する推定メカニズムを模式図に示す説明 図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含むことを意味する。
本明細書に開示の数値範囲の下限値および上限値は任意に組み合わせて新たな数値範囲とすることができる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照しながら説明する。図面における寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なったものである。また、以下の図面において、同一の構成については同じ符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
【0018】
[視認性の指標]
消費者やユーザーは、半透明領域を有する紙を包装用紙として用いた場合、半透明領域を透して包装体の内容物を視認する。半透明領域の視認性(目視面感)の優劣は、視認像がヒトの目にどのように知覚されるかによって判断ないし判定される。
図1に示すように対象像11が上面に印刷された内容物10の上側に透明な樹脂フィルムFを置いたとき、対象像11から反射した光線は視覚位置、すなわち視認像の位置に向かって直線的に進む。そのため、視認像12Aの輪郭は鮮明であり、対象像11の情報を樹脂フィルムF越しにクリアに視認できる。
一方で
図2に示すように、半透明領域を有する紙21の場合、対象像11から反射した光線は半透明領域22の内部で屈折しやすく、また、拡散光や散乱光も多い。そのため、視認像12Bは輪郭がはっきりしない不鮮明な像となる。
【0019】
ところで従来、半透明領域の視認性を評価するためにヘイズや不透明度が使用されてきた。しかし、本発明者の検討によれば、ヘイズや不透明度の数値傾向は、ヒトの目視による視認性の優劣と一致しないことが多い。例えば、試料の白色度が高いとき、可視光の透過率は高くなるが、視認性や目視面感が必ずしも優れるとは限らない。
【0020】
ヘイズの数値傾向が視認性の優劣と一致しない理由は、以下の通りと考えられる。ヘイズは、試料を透過した光線の全光線透過率に対する拡散透過率の比率として算出される。
拡散透過率は、試料に直線光を入射し、該試料を透過した光線のうち平行成分を除いた拡散光の透過率である。一方で、
図1、
図2に示したようにヒトの目は拡散角度の広い拡散光や散乱光よりも、直線的に進む光や拡散角度の狭い光を優先的に認識しやすい。
このようにヘイズの算出においては、ヒトの目で認識しやすい平行成分の光を計測対象から除き、また、ヒトの目で認識しにくい拡散光を計測対象に含めて拡散透過率を求めている。ヘイズはかかる拡散透過率から算出されるため、ヒトの目視面感の評価や奥行方向の視認性の優劣の評価に適していない。
同様に、不透明度もヒトの目で認識しにくい拡散光を計測対象に含めて求められるため、ヒトの目視面感の評価や奥行方向の視認性の評価には適していない。
【0021】
本発明者は鋭意検討した結果、半透明領域を透して見える内容物のボケ具合の多寡に基づいて、半透明領域の視認性の優劣を評価することに想到した。ボケ具合は、半透明領域を透過した光の拡散パターンに起因する。ボケ具合が多い半透明領域の場合、拡散角度の広い拡散光が相対的に多く透過光に含まれるため、内容物の視認性が低下する。対してボケ具合が少ない半透明領域の場合、直線的に進む光や拡散角度の狭い光が相対的に多く透過光に含まれるため、内容物の視認性がよい。
本発明者はかかるボケ具合を定量的に評価する手法および指標を考案し、そのボケ具合の指標が特定の数値以上であれば、半透明領域を透して視認した内容物の視認性が優れることを見出した。その指標が視感透過率、視感透過率比である。
【0022】
「視感透過率の測定」
視感透過率の測定には、光源からの光をサンプルに投光する投光部、サンプルを透過した光を受光する受光部、受光した光を計測するセンサーを含み、投光部と受光部の間の距離が50mm以上あり、更にサンプルなしで測定した場合、受光感度特性が明所視標準比視感度とほぼ一致する視感透過率測定器を用いる。視感透過率測定器は、メガネレンズ、フィルターガラス、透明導電膜ガラスなどの測定で多数市販されており、上記測定条件に一致する装置を用いて測定することができる。また、分光光度計などで、上記測定条件に一致する装置であれば視感透過率測定器として使用することができる。
【0023】
「視感透過率(T50)」
本発明は、下記測定条件の視感透過率(T50)が20%以上である半透明領域を有する紙である。
「測定条件1」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率。
【0024】
図3がその測定を説明する説明図である。視感透過率測定器100の投光部101にサンプルSの一方の面S1を接するように配置することで視感透過率(T50)を測定することができる。本発明では、視感透過率測定器として販売されている朝日分光株式会社のTLV-304―LCを使用した。この装置は、投光部と受光部の間の距離が51.5mmである。少なくとも50mm離れた視感透過率(T50)を20%以上とすることで、視認性の優れた透明化領域を有する紙となる。値が大きいほど視認性が優れ、好ましくは23%以上である。
視感透過率(T50)は、サンプルから出てきた光を直ぐに測定するのでなく、50mm離れた位置で測定するため、50mmの間に散乱して受光部に届かない光を除いているので、視認性に一致する。空気中では光は散乱しないので、散乱の原因は、サンプルの内部及び表面の状態に起因するものである。
【0025】
「視感透過率比」
本発明は、下記測定条件の視感透過率比が44以上である半透明領域を有する紙である。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【0026】
図4の(a)及び(b)がその測定を説明する説明図である。視感透過率測定器100の投光部101にサンプルSの一方の面S1を接するように配置することで視感透過率(T50)を測定することができる(a)。受光部102にサンプルSの他方の面S2を接するように配置することで視感透過率(T0)を測定することができる(b)。なお、視感透過率(T0)を測定する際、自重によるサンプルの撓みが生じないように、リング状の治具などで押さえるとよい。本発明では、視感透過率測定器として販売されている朝日分光株式会社のTLV-304―LCを使用した。この装置は、投光部と受光部の間の距離が51.5mmである。少なくとも50mm離れた二点の視感透過率(T50)、視感透過率(T0)により、視感透過率比=(T50/T0)×100を求める。この値が44以上とすることで、視認性の優れた透明化領域を有する紙となる。値が大きいほど視認性が優れ、好ましくは48以上、より好ましくは50以上である。
視感透過率比は、サンプルから出てきた光を直ぐに測定した(T0)が、50mm離れた位置で測定した(T50)がどの程度低下したかを示す。(T50)が、50mmの間に散乱して受光部に届かない光を除いているので、視認性に一致する。空気中では光は散乱しないので、散乱の原因は、サンプルの内部及び表面の状態に起因するものである。
【0027】
更に、上記視感透過率と視感透過率比の両方を満足することがより好ましい。
【0028】
透明化領域の上記視感透過率が20%以上、上記視感透過率比が44以上とするためには、光の入射する紙の表面、入射した光の紙の内部、透過光の紙の表面での光の屈折や散乱等をコントロールするとよい。
【0029】
[半透明化紙]
以下、半透明化紙について説明する。
本発明の半透明化紙は紙の少なくとも一部分に半透明領域を有する。半透明領域を形成される前の紙(以下、半透明化紙用原紙とも言う。)の少なくとも一部領域に透明化材料を塗布・含侵することで、塗布・含侵したその領域が半透明になり、半透明化紙となる。透明化材料の塗布・含侵は、半透明化紙用原紙を平面視した際の全領域に施しても、一部分領域に施しても構わない。なお、半透明領域の形状、個数については特に限定するものではない。透明化材料が塗布・含侵した領域では、半透明化紙用原紙の厚み方向に透明化材料が浸透し、紙内部の空隙をできるだけ透明化材料により埋めることで、紙が半透明化する。半透明化とは、処理前の紙の不透明度よりも処理後の紙の不透明度が低下することをいい、特に限定するものではないが、半透明とは処理後の領域の不透明度(JIS P 8138)が4~25%程度のものをいう。
【0030】
(半透明化紙用原紙)
半透明化紙用原紙は、特に限定するものではないが、針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプを主成分とした紙であることが好ましい。針葉樹化学パルプとしては、例えば、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、針葉樹未晒サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、針葉樹半晒サルファイトパルプ(NSBSP)が挙げられる。広葉樹化学パルプとしては、例えば、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、広葉樹未晒サルファイトパルプ(LUSP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、広葉樹半晒サルファイトパルプ(LSBSP)が挙げられる。中でも、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)の組み合わせが好ましい。
【0031】
針葉樹化学パルプは、広葉樹化学パルプよりも長く太い繊維構造であるので、針葉樹化学パルプを多く配合すると、空隙率が高い原紙となり、透明化材料を効率よく含侵することができる。なお、針葉樹化学パルプを過剰に配合した場合は、半透明化紙用原紙の地合が低下し、均一な半透明領域を形成することができない。一方、広葉樹化学パルプは、細く短い繊維構造なので、紙の地合いをよくするが、配合比率を高めると空隙率の低い原紙となり、透明化材料の浸透が不十分となりやすい。透明化材料の浸透が不十分であると、紙内部に透明化材料が浸透していない空隙が発生し、入射した光が紙内部で散乱、反射を生じやすくなり、視感透過率、視感透過率比の値が小さくなる。
【0032】
針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの配合比は、80:20~51:49であることが好ましい。より好ましい配合比は75:25~55:45であり、更に好ましい配合比は70:30~60:40である。針葉樹化学パルプと広葉樹化学パルプの割合を規定することで、透明化材料が浸透しやすくなり、視感透過率、視感透過率比の値を高めることができる。
【0033】
前記針葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度は、400~700mLであることが好ましい。カナダ標準ろ水度は、420~650mlCSFがより好ましく、450~600mlCSFがさらに好ましい。カナダ標準ろ水度が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明化紙用原紙の空隙を保持できるので、透明化材料の浸透性に優れる。カナダ標準ろ水度が前記数値範囲の上限値以下であると、半透明化紙用原紙の地合いを高めることができ、透明性、視認性に優れた半透明領域を有する半透明化紙が得られやすい。
【0034】
前記広葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度は、350~650mLであることが好ましい。カナダ標準ろ水度は、370~630mlCSFがより好ましく、400~600mlCSFがさらに好ましい。カナダ標準ろ水度が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明化紙用原紙の強度を高めることができる。カナダ標準ろ水度が前記数値範囲の上限値以下であると、半透明化紙用原紙の地合いを高めることができ、透明性、視認性に優れた半透明領域を有する半透明化紙が得られやすい。
【0035】
また、針葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度が広葉樹化学パルプのカナダ標準ろ水度よりも高いと、紙の強度と透明性に優れるため好ましい。なお、パルプのカナダ標準ろ水度紙は、JIS P8121-2:2012に従って測定される。因みに、従来から半透明紙として一般に知られているグラシン紙においては、叩解度を高めた化学パルプ、例えば、カナダ標準ろ水度が250mlCSF以下の化学パルプが使用されている。しかし、叩解度を高めたパルプ繊維はすり潰され、また、カットされているため、例えば封筒の透明窓には用いられても、強度が求められる包装袋等の用途には適用しにくい。
【0036】
パルプには、本発明の効果を損なわない範囲で、針葉樹化学パルプ及び広葉樹化学パルプ以外のパルプを併用することができる。例えば、メカニカルパルプ、サーモメカニカルパルプ、脱墨パルプ、非木材パルプ、合成パルプなどが例示できる。
【0037】
半透明化紙用原紙の坪量は30~150g/m2が好ましく、40~100g/m2がより好ましく、50~85g/m2がさらに好ましい。坪量が前記数値範囲の下限値以上であると、良好な紙強度が得られやすい。坪量が前記数値範囲の上限値以下であると、半透明領域の透明性を高めやすい。半透明化紙用原紙の坪量は、JIS P8124にしたがって測定される。
【0038】
半透明化紙用原紙の透気度が10~40秒であることが好ましい。透気度は、12~35秒であることが好ましく、15~33秒であることがより好ましい。透気度が前記数値範囲の下限値以上であると、紙の強度が得られ、包装用紙、印刷用紙等の用途に適した半透明化紙となる。透気度が前記数値範囲の上限値以下であると、透明化材料の浸透性が優れ、半透明化紙の透明性を高めることができる。透気度は、J.TAPPI-5-2:2000に準拠して測定される王研式透気度にしたがって測定される。
【0039】
半透明化紙用原紙の密度は0.5~0.85g/cm3であることが好ましく、0.6~0.8g/cm3がより好ましい。密度が前記数値範囲の下限値以上であると、紙の強度が得られ、包装用紙、印刷用紙等の用途に適した半透明化紙となる。密度が前記数値範囲の上限値以下であると、透明化材料の浸透性が優れ、半透明化紙の透明性を高めることができる。密度は、JIS P8118にしたがって測定される。
【0040】
半透明化紙用原紙の空隙率は30~80%が好ましく、40~70%がより好ましく、50~70%がさらに好ましい。半透明化紙用原紙の空隙率が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域の透明性を高めやすい。半透明化紙用原紙の空隙率が前記数値範囲の上限値以下であると、シートの物理的強度が低下しにくい。紙基材の空隙率は、JIS P8118にしたがって測定された密度をセルロースの真密度1.50で除した値から算出される。
【0041】
半透明化紙用原紙の少なくとも一方の面のパーカープリントサーフ平滑度が7μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。下限値は特に限定しない。値が小さければ小さい程、平滑であることが言える。パーカープリントサーフ平滑度は細部の平滑性を評価でき、この値が小さいほど、紙表面の光の散乱を低減できるので、視感透過率、視感透過率比の値を高めることができる。パーカープリントサーフ平滑度は、ISO8791-4:1992に準拠して求められるパーカープリントサーフ平滑度(ソフトバッキング/クランプ圧500kPa)
【0042】
半透明化紙用原紙には、パルプの他に、紙力増強剤、サイズ剤、填料、着色剤など公知の抄紙用助剤を適宜配合することができる。なお、填料の配合は、紙の隠蔽性を高める方向に働くため、透明性、視認性を損なわない範囲内での配合に留めることが好ましく、半透明化紙用原紙は填料を配合しないことがより好ましい。
【0043】
半透明化紙用原紙の製造方法は、特に限定されない。例えば、半透明化紙用原紙の原料となるパルプを叩解する工程と、叩解したパルプを含むパルプスラリーを抄紙する工程と、抄紙して得られたウェットシートを乾燥する工程を含む方法が挙げられる。
【0044】
叩解する工程においては、前記のカナダ標準ろ水度となるように原料のパルプを叩解することが好ましい。叩解機は特に限定されない。例えば、ダブルディスクリファイナー等の公知の叩解機が挙げられる。
抄紙に用いられる抄紙機は特に限定されない。例えば、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機等が挙げられる。
乾燥する工程も特に限定されない。例えば、抄紙機に付属のドライヤーが使用できる。
【0045】
半透明化紙用原紙は、平滑化処理を施してもよい。平滑化処理を施すことにより、紙表面における光の散乱を低減できるので、半透明化部分んp視感透過率、視感透過率比の値を高めることができる。平滑化処理としては、例えば、緊度プレス、マシンカレンダー、グロスカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダーなどが例示できるが、これらの装置は、紙の密度を高めるので、線圧を下げて密度が高くなりすぎないように注意する必要がある。一方、紙が湿潤状態であるうちに平滑な面に貼り付け、乾燥することで平滑な面を移しとる転写方式は、紙の密度が高くならないので好ましい。例えば、ヤンキーシリンダー、キャストドラム、フィルム転写などの技術が使用できる。中でも、ヤンキーシリンダーを用いたヤンキードライヤーは、抄紙機に付属されているので生産性が優れ好ましい。
【0046】
半透明化紙用原紙としては、例えば、クラフト紙、片艶クラフト紙、片艶紙、上質紙、電子写真用紙、インクジェット記録用紙、熱転写記録用紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、白板紙、色板紙、段ボール用ライナーが挙げられる。なかでも、顔料の含有量が少なく、半透明領域において優れた視認性が得られやすい点で、上質紙、電子写真用紙、クラフト紙、片艶クラフト紙、片艶紙が好ましく、片艶クラフト紙、片艶紙がより好ましい。
【0047】
(半透明領域の形成)
半透明領域は、半透明化紙用原紙の少なくとも一部分に半透明化材を塗布・含浸することで形成される。半透明化紙用原紙が、片艶クラフト紙、片艶紙のように、相対的に平滑度が高い艶面と、相対的に平滑度が低い非艶面とを有する場合、半透明化材の塗布・含浸は、相対的に平滑度が低い非艶面に行うことが好ましい。半透明化材の浸透性が優れるとともに、相対的に平滑度が高い艶面の平滑性を損なわないため、表面での光散乱を防ぐことができる。
【0048】
(透明化材料)
透明化材料は特に限定されない。透明化材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ニトロセルロース、セラック、ロジン等の透明化樹脂;桐油、亜麻仁油、ヒマシ油、親水ヒマシ油、ヤシ油、大豆油、市販のサラダ油等の植物油;カウナバワックス、パームワックス、蜜蝋、鯨蝋、木蝋等の蝋、ワックス類が挙げられる。透明化材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
なかでも、経時的に安定な透明化樹脂が好ましく、アクリル樹脂がより好ましい。アクリル樹脂のなかでも、特に、紫外線硬化型のアクリル樹脂は表面被覆性に優れ、また断面視における透明化材料の含浸した領域の界面が鮮明になるため好ましい。紫外線硬化型のアクリル樹脂としては、特開2021-91481号公報の段落0025、段落0026に開示のものが挙げられる。
【0050】
透明化材料としては、上述したもののなかから屈折率が1.4~1.6、好ましくは1.45~1.58、より好ましくは1.50~1.58、さらに好ましくは1.52~1.58の範囲内にあるものを選択することが好ましい。半透明化紙用原紙を構成するパルプのセルロース繊維の屈折率は一般に1.4~1.6の範囲内にあると言われているためである。透明化材料の屈折率が前記数値範囲内であると、セルロース繊維の屈折率との差が小さく、半透明領域の透明性、視認性を高めやすい。透明化材料の屈折率は、JIS K 7142にしたがって測定される。
【0051】
セルロース繊維の屈折率に近い屈折率の透明化材料を半透明化紙用原紙に含浸させ、セルロース繊維間の空隙を充填することで、半透明化紙用原紙内の空隙に起因する光の屈折を低減できる。よって、透明性、視認性に優れる半透明領域が得られやすくなる。屈折率の調整のために、ジルコニウム、チタニウム等の高屈折率物質を必要に応じて用いてもよい。
【0052】
透明化材料に着色がある場合、その透明化材料の色と補色の関係にある着色剤(顔料、染料)を半透明領域の半透明化紙用原紙内に存在させることが好ましい。セルロース繊維間に入り込んだ補色の着色剤が入射光を吸収することで、光の乱反射、散乱が抑制される結果、視認性が向上すると考えられる。着色剤としては、例えば、青色系着色剤、紫色系着色剤、黒色系着色剤が挙げられる。
ここで「補色の関係にある色」とは、例えば、色相環において正反対に位置する色の組み合わせを意味する。ただし、本発明の効果が得られる範囲内であれば、「補色の関係にある色」は、色相環の正反対に厳密に位置する色のみならず、その周辺の連続した領域にある色の組み合わせでもよい。
【0053】
例えば、セラック、ロジンのような非石油成分由来の透明化樹脂には着色がある。セラックの場合、その橙色と補色の関係にある着色剤が好ましい。ロジンの場合、その琥珀色と補色の関係にある着色剤が好ましい。着色のある非石油成分由来の透明化材料が環境対応の点で好まれる場合、その透明化材料の色と補色の関係にある着色剤を利用することは有用である。
【0054】
透明化材料は半透明化紙用原紙に含浸させることから、常温または加熱状態で液体のものが好ましい。また、常温または加熱状態で有機溶剤等の液状媒体に溶解可能なものも浸透性の点で好ましい。すなわち、透明化材料は、製造時には浸透性のある液状の透明化剤として半透明化紙用原紙内に含浸させることができるものが好ましい。透明化剤については後述する。
【0055】
透明化材料を有する半透明領域の密度は0.7~2.5g/cm3が好ましく、0.7~2.0g/cm3がより好ましく、0.8~2.0g/cm3がさらに好ましい。半透明領域の密度が前記数値範囲の下限値以上であると、繊維間の空気層が樹脂成分の含浸により充分に排除されていると考えられる。半透明領域の密度が前記数値範囲の上限値以下であると、包装用紙を包装体等とする際の加工性が向上する。半透明領域の密度は、JIS P 8118にしたがって測定される。
【0056】
(透明化剤)
透明化剤は、透明化材料を含む液体である。透明化材料が常温で固体の場合、透明化材料を溶解可能な液状媒体を用い、液状の透明化剤を調製する。透明化材料が常温で液体の場合、液状媒体を用いて透明化材料の濃度を変更してもよく、液状媒体を用いずにそのまま透明化剤として用いてもよい。
【0057】
液状媒体は特に限定されない。水性溶剤、有機溶剤のいずれも使用できる。液状媒体が水分を含むと、水分により半透明化紙用原紙が膨潤しやすい。また、その後の乾燥時には半透明化紙用原紙が収縮しやすい。そのためカール、ぼこつき、および凹凸が発生しやすい。よって、液状媒体は水分を含まないことが好ましく、有機溶剤がより好ましい。
【0058】
有機溶剤は極性溶媒でもよく、非極性溶媒でもよい。
極性溶媒としては、例えば、アルコール類、エーテル類、エステル類、非極性溶媒等が挙げられる。
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノールが挙げられる。
エーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、テトラエチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングルコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、トリエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、テトラエチレングルコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、プロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノターシャリブチルエーテル等の種々のグリコールエーテルが挙げられる。
エステル類としては、例えば、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
非極性溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等のパラフィン系炭化水素;イソヘキサン、イソオクタン、イソドデカン等のイソパラフィン系炭化水素;流動パラフィン等のアルキルナフテン系炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素;シリコーンオイルなどが挙げられる。
【0059】
透明化剤は、透明化材料および液状媒体以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分としては、例えば、アンモニア、エチレンジアミン、トリエチルアミン等の塩基性物質;グリセリン、エチレングリコール等の粘度調整剤;ジルコニウム、チタニウム等の高屈折率物質;消泡剤;離型剤;着色剤が挙げられる。ただし、他の成分はこれらの例示に限定されない。
【0060】
含浸の際には、半透明化紙用原紙内の断面において透明化材料が他面の一部に達していない部分を形成してもよい。該部分において、平滑度が相対的に高い表面状態を透明化材料の含浸前の状態のまま維持できるためである。半透明領域の表面の凹凸を減らしやすく、半透明領域の視認性がさらに向上しやすい。
【0061】
透明化剤の単位面積当たりの塗布量は10~70g/m2が好ましく、20~60g/m2がより好ましく、30~60g/m2がさらに好ましい。透明化剤の単位面積当たりの塗布量が前記数値範囲の下限値以上であると、半透明領域の透明性を高めやすい。透明化剤の単位面積当たりの塗布量が前記数値範囲の上限値以下であると、透明化剤が内側の一部に到達しにくい。
【0062】
透明化剤の粘度は50~5000mPa・sが好ましく、50~4000mPa・sがより好ましく、50~3000mPa・sがさらに好ましい。透明化剤の粘度の粘度が前記数値範囲の上限値以上であると、透明化剤が内側の一部に到達しにくい。透明化剤の粘度の粘度が前記数値範囲の上限値以下であると、透明化剤が半透明化紙用原紙内に含浸しやすい。透明化剤の粘度は、30℃、60rpmの条件でBlookfield型粘度計を用いて測定される。
【0063】
透明化剤の塗布方法は特に限定されない。透明化剤の塗布方法としては、例えば、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷、ロールコート、バーコート、ブレードコートが挙げられる。
【0064】
透明化剤を半透明化紙用原紙内に含浸させることで、半透明化紙用原紙内の繊維間の空隙を透明化材料で埋めることができる。屈折率が1.4~1.6の範囲内にある透明化材料を含む透明化剤を用いる場合、半透明化紙用原紙内の空隙をセルロースの屈折率に近い透明化剤で埋めることができる。そのため、半透明化紙用原紙内の透明化材料に起因する光の屈折を低減できる。
【0065】
透明化剤の半透明化紙用原紙への塗布および含浸は一度で行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。複数回に分けて行う場合、複数回のそれぞれにおいて用いる透明化剤の構成成分および組成は同じでもよく、互いに異なってもよい。
【0066】
紫外線硬化型の透明化剤を用いる場合、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ等の種々の光源を使用できる。積算光量は特に限定されない。透明化剤の使用量および透明化樹脂の種類に応じて適宜変更すればよい。
【0067】
(コーティング層)
半透明領域の紙表面にコーティング層を設けられてもよい。コーティング層は、半透明領域の表面の平滑度を高め、凹凸を減らすためのものである。表面の凹凸が少なくなると、結果として半透明領域の表面における光の乱反射を防止できる。また、コーティング層は入射光量の反射による光量減少を防止する一方で、平行成分の光量を維持できる。このようなコーティング層の作用により半透明領域の透過光における拡散角度の広い拡散光の割合が減少することは、ボケ具合が低減し、奥行き方向の視認性が向上する要因の一つであると考えられる。
【0068】
コーティング層の材料は、視認性の点で透明な材料が好ましい。コーティング層の材料として、例えば、透明化材料、OPニスが挙げられる。透明化材料の具体的については、後述する。コーティング層が透明化材料を含む場合、コーティング層の透明化材料と半透明領域の透明化材料は、互いに同一でもよく、異なる種類でもよい。また、コーティング層の材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
OPニスは、オーバープリントニスと呼ばれることがある。OPニスの成分は、製品、製造業者等に応じて異なるが、亜麻仁油、桐油および硝化綿からなる群から選ばれる少なくとも一以上を含むOPニスが好ましい。OPニスの市販品としては、例えば、東洋インキ株式会社、株式会社T&K TOKA、富士インキ製造株式会社の製品が挙げられる。 OPニスは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。乾燥方式は酸化重合によるもの、UV効果によるもの等を用いてもよい。
【0070】
コーティング層の材料としては、これらのなかから屈折率が1.4~1.6、好ましくは1.45~1.60、より好ましくは1.48~1.60、さらに好ましくは1.50~1.60、特に好ましくは1.50~1.58の範囲内にあるものを選択することが好ましい。セルロース繊維の屈折率は一般に1.4~1.6の範囲内にあると言われているためである。コーティング層の屈折率をセルロース繊維の屈折率と近い値とすることで、コーティング層と半透明化紙用原紙の界面での光の屈折を低減できる。よって、視認性に優れる半透明領域が得られやすくなる。コーティング層の屈折率は、JIS K 7142にしたがって測定される。
【0071】
コーティング層の平滑度は50~1000secが好ましく、50~500secがより好ましく、100~500secがさらに好ましい。コーティング層の平滑度が前記数値範囲内であると、視認性がさらに向上しやすい。コーティング層の平滑度は、JAPAN TAPPI 紙・パルプ試験方法No.5-2、JIS P8155にしたがって測定される。
【0072】
コーティング層の厚みは0.5~2.5μmが好ましく、0.5~2.0μmがより好ましく、0.7~2.0μmがさらに好ましい。コーティング層の厚みが前記数値範囲の下限値以上であると、光沢感のある面感となり、半透明領域において優れた視認性が得られやすい。コーティング層の厚みが前記数値範囲の上限値以下であると、塗工部分と非塗工部分の乾燥後の収縮差による紙シートの凹凸やカール発生が抑えられる。コーティング層の厚みは、平面に対して垂直な断面を切り出し、当該断面を電子顕微鏡で観察したときの厚み方向の最大値を測定した値である。
【0073】
なお、コーティング層が半透明領域の平面方向の全面に設けることが好ましいが、半透明領域の平面方向の一部に設けられていてもよい。また、コーティング層の数は1つでも複数でもよい。コーティング層の材料の一部は、半透明化紙用原紙の表面付近に浸透していてもよい。コーティング層の材料によって半透明化紙用原紙の繊維間の空隙を埋めれば、透明性を高めやすい。
【0074】
コーティング層の材料を含む塗工液の塗布方法は、特に限定されない。例えば、ロールコート、バーコート、ブレードコート、ディップ塗工、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の種々の塗工方法が挙げられる。また、乾燥する場合の乾燥方法も特に限定されない。自然乾燥でもよく、加熱乾燥でもよい。
【0075】
(網掛け印刷部)
半透明化紙の半透明領域に、光吸収性物質の網掛け印刷を施すことができる。
図7に示すように、網掛け印刷部6は半透明化紙用原紙2内で生じた散乱光を吸収できる。そのため対象像11から反射した光線のうち、視覚位置に向かって直線的に進む光や拡散角度の狭い光が選択的に半透明領域を通過しやすい。よって、視認像12Cの輪郭は視認像12B(
図2参照)より鮮明となる。
【0076】
網掛け印刷部6の各ドットの光吸収性物質は、半透明化紙用原紙2内で散乱した光を吸収する機能を有する。そのため、半透明化紙用原紙2を透過する光量は減るので視感透過率T50、T0の値は低下するものの、散乱光が抑制されるため視感透過率比の値を高めることができる。
【0077】
網掛け印刷部6のドットパターンの形状は特に限定されない。例えば、網点、格子、斜線、円、環、多角形のパターンが挙げられるが、形状はこれら例示に何ら限定されない。ドットパターンの形状は、網掛け印刷を行う際の設定条件によって適宜変更できる。
【0078】
網掛け印刷部6の各ドットの大きさは、特に限定されない。例えば、40~100μmが好ましく、50~80μmがより好ましい。ドットの大きさが前記数値範囲の下限値以上であると、網掛け印刷部6によって散乱光を吸収しやすい。ドットの大きさが前記数値範囲の上限値以下であると、網掛け印刷部6によって半透明領域4の色調や色感が影響を受けにくいと考えられる。
ドットの大きさは、1つのドットを内包する外接円または外接楕円のうち、面積が最小となる外接円の直径または面積が最小となる外接楕円の短径として測定される値である。ドットの大きさは、網掛け印刷を行う際の設定条件によって適宜変更できる。
【0079】
網掛け印刷部6の面積率は20~80%が好ましく、25~75%がより好ましい。面積率が前記数値範囲の下限値以上であると、網掛け印刷部6によって散乱光を吸収しやすい。面積率が前記数値範囲の上限値以下であると、網掛け印刷部6によって半透明領域4の色調や色感が影響を受けにくいと考えられる。
網掛け印刷部の面積率とは、単位面積あたりに占めるドットの面積を百分率で表わした値である。ベタ印刷の場合、面積率は100%となり、ドットがない場合、面積率は0%となる。面積率は、網掛け印刷を行う際の設定条件によって適宜変更できる。
【0080】
光吸収性物質7は、吸収係数の高い物質であれば特に限定されない。光吸収性物質7は網掛け印刷によって形成されるため、印刷時のインクを調製して使用できる。例えば、黒色系の成分、特に黒色系インクは、光の吸収性に優れる点で好ましい。黒色系インクとしては、単色の黒インクでもよく、複数色を併用したコンポジットブラックでもよい。ただし、光吸収性物質7の色は黒に限定されない。
【0081】
光吸収性物質7の色は、包装用紙1Bの用途、包装体とした際の内容物、半透明化紙用原紙の色合い、内容物の色に応じて適宜変更することが好ましい。例えば、ユーザーや消費者の好みに合わせて視認性や色感を変更できるためである。商品化においては、例えば、包装体の内容物の色と同系色の光吸収性物質を用いてもよく、包装体の内容物の色と補色関係にある光吸収性物質を用いてもよい。
また、網掛け印刷部6のドットパターンの形状、各ドットの大きさ、面積率についても、包装用紙の用途、包装体とした際の内容物、内容物の色に応じて適宜変更することが好ましい。ユーザーや消費者の好みに合わせて視認性や色感を変更できるためである。
【0082】
図5、
図6に示す一例において半透明化紙1Bは、光吸収性物質7が第1の面2a側の半透明領域4の平面方向のほぼ全面にわたって付着した網掛け印刷部6を有するが、他の例においては、網掛け印刷部は、第1の面2a側の半透明領域4の一部に光吸収性物質7が付着して形成されてもよい。第1の面2a側の半透明領域4の少なくとも一部に光吸収性物質7が付着した場合でも、網掛け印刷部による散乱光の吸収効果は得られる。
【0083】
包装用紙1Bの製造方法は特に限定されない。光吸収性物質7を網掛け印刷により半透明化紙用原紙2の表面に付着させればよい。網掛け印刷は、透明化材料の半透明化紙用原紙内への含浸の前に行ってもよく、透明化材料の半透明化紙用原紙内への含浸の後に行ってもよい。
【0084】
網掛け印刷の手法は特に限定されない。種々の印刷方法を使用できる。例えば、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、電子写真印刷が挙げられる。また、網掛け印刷は透明化剤の塗布および含浸と同じ印刷機で行ってもよく、別々の印刷機で行ってもよい。
【0085】
以上の例示説明に用いた図面は模式的なものである。そのため、平面視における半透明化紙用原紙2と半透明領域4の境界線、平面視における半透明化紙用原紙2とコーティング層5の境界線は、模式的に図示したように明確に存在するとは限らない。また、断面視における各界面も模式的に図示したように明確に存在するとは限らない。
【0086】
(半透明化紙の製造方法)
本発明の半透明化紙の製造方法は、下記の(1)、(2)、(3)のいずれかである
【0087】
(1) 半透明化紙用原紙の少なくとも一部分の領域が下記測定条件1の視感透過率(T50)が20%以上となるように透明化材料を含侵する半透明化紙の製造方法。
「測定条件1」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記半透明化紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)。
【0088】
(2) 半透明化紙用原紙の少なくとも一部分の領域が下記測定条件2の視感透過率比が44以上となるように透明化材料を含侵する半透明化紙の製造方法。
「測定条件2」
投光部と受光部の間に少なくとも50mmの間隔がある視感透過率測定器を用い、
前記紙の半透明領域を測定するサンプルとし、
投光部にサンプルの一方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T50)、
受光部にサンプルの他方の面を接するように配置して測定した際の視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求める。
数式1: 視感透過率比=(T50/T0)×100
【0089】
(3) 半透明化紙用原紙の少なくとも一部分の領域が上記測定条件1の視感透過率(T50)が20%以上及び上記測定条件2の視感透過率比が44以上となるように透明化材料を含侵する半透明化紙の製造方法。
【0090】
半透明化紙の半透明領域は、半透明化紙用原紙に透明化材料が含侵して形成されるが、製造する際に上記視感透過率、視感透過率比を満足するように、半透明化紙用原紙の製造、半透明化紙用原紙の選択、透明化材料の選択、透明化材料を含有する含侵・塗工液の調製、含侵・塗布液の含浸量の調製、コーティング層の採用、網掛けの印刷部の採用などを行う。
【0091】
(用途)
本発明の半透明化紙、本発明方法で得られた半透明化紙は、透明性や視認性が得られることから、包装用紙、印刷用紙、書籍用紙、複写用紙、情報用紙、ラベル用紙等において、紙基材を透して紙の反対面にある像(文字、記号、画像、物体等)を視認するための種々の用途に使用できる。
【0092】
包装用紙の場合、半透明領域を透して視認した内容物のボケ具合が少なく、内容物の視認性が優れたものとなる。また、半透明領域と内容物の間の空間や隙間があるときも視認性がよい。よって、奥行方向での目視面感もよく、奥行の空間をもって内容物が包装されたときも視認性に優れる包装体が得られる。包装体としては、例えば、封筒、種々の商品のパッケージが挙げられる。
例えば、包装用紙を袋状にして包装袋とすることができる。包装用紙の半透明領域は包装袋の内容物を確認するための窓として使用できる。包装袋とする場合、包装用紙を種々の接着剤やヒートシール剤等を用いて接着して袋状に加工して作製すればよい。
包装袋の形状は特に限定されない。例えば、封筒、平袋、角底袋、マチ付き袋、手提袋が挙げられるが、特に限定されない。内容物に応じて適宜選択すればよい。
【0093】
以上、一実施形態におけるいくつかの例について説明したが、本発明は本明細書に開示の実施形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。本明細書に開示の実施形態は、その他の様々な形態で実施可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更が可能である。
【実施例0094】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載に限定されない。
【0095】
[原料]
(半透明化紙用原紙)
以下の例では、坪量50g/m2の片艶クラフト紙(1)を用いた。片艶クラフト紙(1)の艶面の平滑度は120secであり、非艶面の平滑度は10secである。片艶クラフト紙(1)の密度は0.75g/cm3であり、厚みは67μmであり、空隙率は50%である。
【0096】
(透明化剤)
半透明領域を形成するための透明化剤として、以下の透明化剤(1)を用いた。
透明化剤(1):アクリル系パラフィン溶剤(商品名:クラリテンDC、大和化学工業社製、透明化材料の屈折率:1.50、30℃,60rpmにおける粘度:2000mPa・s)。屈折率は株式会社アタゴのアッペ式屈折率測定器で測定した。
【0097】
(コーティング層)
コーティング層を形成する際の塗工液として、以下の塗工液(1)を用いた。
塗工液(1):DC AB OPニス OJ3(DICグラフィックス株式会社製)
【0098】
(光吸収性物質)
黒色インク(商品名:NCPマット墨、DICグラフィックス社製)を用いた。
【0099】
[実施例1]
松尾産業マイクロメーター調整式アプリケーターを用いて、塗布量が34g/m2となるように透明化剤(1)を片艶クラフト紙(1)の非艶面に塗布した。その後、120℃の熱風ドライヤーにて30秒間乾燥させて半透明領域を形成し、実施例1の紙を得た。
【0100】
[実施例2]
松尾産業マイクロメーター調整式アプリケーターを用いて、塗布量が34g/m2となるように透明化剤(1)を片艶クラフト紙(1)の非艶面に塗布し、半透明領域を形成した。次いで、片艶クラフト紙(1)の艶面側に黒色インクで網掛け印刷を行った。網掛け印刷の面積率は25%とし、ドットの大きさは50μm、各ドットの形状は円形状とした。網掛け印刷の後、120℃の熱風ドライヤーにて30秒間乾燥させ、実施例2の紙を得た。
【0101】
[実施例3]
松尾産業マイクロメーター調整式アプリケーターを用いて、塗布量が34g/m2となるように透明化剤(1)を片艶クラフト紙(1)の非艶面に塗布して半透明領域を形成した。網掛け印刷は行わず、片艶クラフト紙(1)の艶面側に塗布量が1.5g/m2となるように塗工液(1)を塗布した。その後、日本文化精工株式会社のNPT-453(4.8kW、2灯)を用いて紫外線硬化させ、実施例3の紙を得た。
【0102】
[実施例4]
松尾産業マイクロメーター調整式アプリケーターを用いて、塗布量が34g/m2となるように透明化剤(1)を片艶クラフト紙(1)の非艶面に塗布して半透明領域を形成した。次いで、片艶クラフト紙(1)の艶面側に黒色インクで網掛け印刷を行った。網掛け印刷の面積率は25%とし、ドットの大きさは50μm、各ドットの形状は円形状とした。網掛け印刷の後、120℃の熱風ドライヤーにて30秒間乾燥させ、その後、塗布量が1.5g/m2となるように塗工液(1)を塗布し、日本文化精工株式会社のNPT-453(4.8kW、2灯)を用いて紫外線硬化を厚みが1.0μmのコーティング層(平滑度130sec)を片艶クラフト紙(1)の艶面に形成し、実施例4の紙を得た。
【0103】
[実施例5]
塗布量が25g/m2となるように片艶クラフト紙の非艶面に塗布した以外は実施例1と同様にして、実施例5の紙を得た。
【0104】
[比較例1]
晒包装用紙(王子マテリア品60g/m2)を原紙として用意した。坪量は65g/m2で艶面の平滑度は90secであり、非艶面の平滑度は8secである。密度は0.78g/cm3であり、厚みは78μmであり、空隙率は47.8%である。そのほかは、実施例1と同じ手法により晒包装用紙に半透明領域を形成し、比較例1の紙を得た。
【0105】
[参考例1]
透明なポリエステル樹脂フィルム(東洋紡社製品「コスモシャインA4160」)を用意した。
【0106】
[サンプル]
実施例1~実施例5、比較例1で得られた半透明領域を有する紙、参考例1のフィルムをサンプルとした。
【0107】
「視感透過率(T50)」
視感透過率測定器として朝日分光株式会社のTLV-304―LCを用い、
図3で示すようにして視感透過率(T50)を測定した。
【0108】
「視感透過率比」
視感透過率測定器として朝日分光株式会社のTLV-304―LCを用い、
図4で示すようにして、視感透過率(T50)及び視感透過率(T0)を測定し、下記数式で視感透過率比を求めた。
【0109】
[ヘイズ、不透明度]
JIS-K7136に準拠した「HZ-V3」(スガ試験機社製品)を用いてヘイズを測定した。
JIS P8149に準拠した「SC-WT」(スガ試験機社製品社製品)を用いて不透明度を測定した。
【0110】
[奥行き方向の視認性の評価]
水平な台の上に10.5ポイントのワード文書をプリントしたA4版の印刷物を置き、その上方5.0cmの位置に各例の包装用紙を配置した。さらに包装用紙の上方30cmの位置から包装用紙の半透明領域を透して印刷物の文字を見たときの視認性を以下の基準に基づいて評価した。
A:文字の欠落が無くはっきり認識できる。
B:文字の欠落が僅かにあるが、文字をはっきり認識できる。
C:文字の欠落が一部あるが、文字を認識できる。
D:文字が複数個所で欠落し、文字を読み難い。
E:文字が至る所で欠落し、文字としても著しく認識しがたい。
【0111】
[結果]
結果を表1に示す。
【0112】
【0113】
実施例1~実施例5の包装用紙は、奥行き方向の視認性に優れていた。対して、視感透過率(T50)、視感透過率比がいずれも所定の要件を満たさない半透明領域を有する比較例1の包装用紙は、視認性の評価結果に劣っていた。また、視感透過率(T50)、視感透過率比の数値傾向は、ヒトの目視による視認性の優劣の傾向と概ね一致した。
本発明の一態様によれば、半透明な領域と内容物の間に空間や隙間があるときでも視認性に優れる包装体が得られる包装用紙;および前記包装用紙を備えた包装体が提供される。
本発明のさらなる態様によれば、半透明な領域を透して見たときの視認性に優れる坪量30g/m2以上の紙が提供される。
1(1A、1B)…半透明化紙、2…半透明化紙用原紙、3…透明化材料、4…半透明領域、5…コーティング層、6…網掛け印刷部、7…光吸収性物質、10…包装物、11…対象像、12…視認像、F…樹脂フィルム、100…視感透過率測定器、101…投光部、102…受光部、S…サンプル、S1…サンプルの片面、S2…サンプルの他面。