(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074045
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】個装吸収性物品、及び包装シート
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
A61F13/15 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185095
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 千咲
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200BA16
3B200CA11
3B200DF09
(57)【要約】
【課題】紙製の包装シートを用いてなる個装吸収性物品において、包装シートに触れた時に音が発生し難く、且つ開封時等に包装シートが破れ難い構成を得る。
【解決手段】吸収性物品が紙製の包装シートにより個装されてなる個装吸収性物品であって、前記包装シートが、前記包装シートの内面に配置された前記吸収性物品と共に前記包装シートの長手方向に内面側に折り畳まれ、前記長手方向に直交する短手方向の両縁部がシールされており、前記包装シートの少なくとも前記長手方向の引張強度が15N/25mm以下であり、前記シール部における前記包装シート同士の剥離強度をSs、前記包装シートの引張強度をSwとして、Ss<Swである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品が紙製の包装シートにより個装されてなる個装吸収性物品であって、
前記包装シートが、前記包装シートの内面に配置された前記吸収性物品と共に前記包装シートの長手方向に内面側に折り畳まれ、前記長手方向に直交する短手方向の両縁部がシールされてシール部が形成され、
前記包装シートの少なくとも前記長手方向の引張強度が15N/25mm以下であり、 前記シール部における前記包装シート同士の剥離強度をSs、前記包装シートの引張強度をSwとして、Ss<Swである、個装吸収性物品。
【請求項2】
前記包装シートの前記長手方向の露出した端部が、止着テープによって止着されており、
前記止着テープと前記包装シートとの剥離強度をStとして、Ss<Stである、請求項1に記載の個装吸収性物品。
【請求項3】
St<Swである、請求項2に記載の個装吸収性物品。
【請求項4】
前記包装シートの厚みが40~200μmである、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品。
【請求項5】
吸収性物品を個装するための紙製の包装シートであって、
前記包装シートの内面に配置された前記吸収性物品と共に前記包装シートの長手方向に内面側に折り畳まれ、前記長手方向に直交する短手方向の両縁部がシールされてシール部が形成された、個装吸収性物品を構成するものであって、
前記シール部における前記包装シート同士の剥離強度をSs、前記包装シートの引張強度をSwとして、Ss<Swである、包装シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個装吸収性物品、及び包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の多くの吸収性物品は、保管時の衛生、持ち運びの際の利便性等の理由から、包装シートによって個別に包装されて封止された状態で個装吸収性物品(個別包装体)として提供されている。個装吸収性物品の放送構造としては、例えば、包装シートの内面に吸収性物品と配置し、吸収性物品と共に包装シートを内面側に折り畳んだ後、両縁部をシールした形態が一般的である。
【0003】
包装シートの材質としては、依然として樹脂フィルム、不織布等が主流であるが、紙製の包装シートも知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙製の包装シートは、特に近年、持続可能な開発目標の観点等からも着目されている。しかしながら、紙という材料が他の材料に比べ破れ易い傾向がある等の理由から、実用化がそれほど進んでないのが現状である。ここで、紙製包装シートの破れを防ぐためには、例えば、目付及び/又は大きな厚みを有する強度の大きい紙製包装シートを使用することも考えられるが、そのような強度の大きい包装シートは、例えば持ち運び時や開封時に、カサカサとした音が発生しやすいため、使用者に好まれない場合もある。
【0006】
よって、包装シートに触れた時に音が発生し難く、且つ開封時に個装吸収性物品におけるシールを剥がす際に包装シートが破れ難い構成が求められている。
【0007】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、紙製の包装シートを用いてなる個装吸収性物品において、包装シートに触れた時に音が発生し難く、且つ開封時等に包装シートが破れ難い構成を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、吸収性物品が紙製の包装シートにより個装されてなる個装吸収性物品であって、前記包装シートが、前記包装シートの内面に配置された前記吸収性物品と共に前記包装シートの長手方向に内面側に折り畳まれ、前記長手方向に直交する短手方向の両縁部がシールされててシール部が形成され、前記包装シートの少なくとも前記長手方向の引張強度が15N/25mm以下であり、前記シール部における前記包装シート同士の剥離強度をSs、前記包装シートの引張強度をSwとして、Ss<Swである。
【0009】
上記第一の態様によれば、包装シートが比較的小さい所定の引張強度を有する。そのため、包装シートの柔らかさが向上し、包装シートに触れた時に発生するカサカサとした音を低減できる。また、包装シートに触れた時のゴワゴワした感じも低減でき、手触りが良好になる。また、このような引張強度の比較的小さい包装シートを用いてなる個装吸収性物品であっても、本態様により、個装吸収性物品におけるシール部のシール強度と、包装シートの引張強度とが所定の関係にあることで、開封時にシールを剥がす際にも包装シートが破け難くなっている。
【0010】
本発明の第二の態様では、前記包装シートの前記長手方向の露出した端部が、止着テープによって止着されており、前記止着テープと前記包装シートとの剥離強度をStとして、Ss<Stである。
【0011】
上記第二の態様によれば、止着テープが設けられていることで、開封時に包装シートの端部を把持し易く、開封が容易になる。また、止着テープは、使用済みの吸収性物品の廃棄時に使用済み吸収性物品を包装シートで包む場合に、包んだ後に包装シートを止着するためにも使用できるという利点がある。そして、このように止着テープを備えた構成であっても、本態様により、シール部のシール強度と、止着テープの剥離強度とが所定の関係にあることで、シール部のシールを剥がす際に止着テープが脱離する懸念をなくすことができる。
【0012】
本発明の第三の態様では、St<Swである。
【0013】
第三の態様によれば、開封時に包装シートの先端部を持って、包装シート(外側に配置された領域)を長手方向D1に展開する際、或いは包装シートの展開終了時若しくは終了後に、はずみ等で止着テープに急激に過度に大きな力が掛かったとしても、包装シートが破れる前に止着テープが外れることが可能であり、包装シートの破れを防止できる。
【0014】
本発明の第四の態様では、前記包装シートの厚みが40~200μmである。
【0015】
上記第四の態様により、比較的薄い包装シートを用いることで、包装シートの柔軟性を確保でき、包装シートに触れた時のカサカサ音の低減、及び手触りの向上が得られる。また、このような比較的薄い包装シートであっても、本態様によれば、個装吸収性物品におけるシールのシール強度と、包装シートの引張強度とが所定の関係にあることで、開封時にシールを剥がす際に包装シートが破れ難くなっている。
【0016】
本発明の第五の態様では、吸収性物品を個装するための紙製の包装シートであって、前記包装シートの内面に配置された前記吸収性物品と共に前記包装シートの長手方向に内面側に折り畳まれ、前記長手方向に直交する短手方向の両縁部がシールされててシール部が形成された、個装吸収性物品を構成するものであって、前記シール部における前記包装シート同士の剥離強度をSs、前記包装シートの引張強度をSwとして、Ss<Swである。
【0017】
上記第五の態様により、上記第一の態様と同様の効果を奏する包装シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、紙製の包装シートを用いてなる個装吸収性物品において、包装シートに触れた時に音が発生し難く、且つ開封時等に包装シートが破れ難い構成が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態による個装吸収性物品の平面図である。
【
図5】個装吸収性物品の製造について説明するための図である。
【
図6】実施例における止着テープの剥離強度試験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0021】
<個装吸収性物品の基本構造>
まず、個装吸収性物品の基本的な構成について説明する。
図1に、個装吸収性物品100の平面図を示す。
図2に、
図1の個装吸収性物品を展開した状態の平面図であり、包装シート10の内面から若しくは吸収性物品1を肌側から見た図を示す。また、
図3に
図1のI-I線断面を示す。
【0022】
図1~
図3に示すように、個装吸収性物品100は、包装シート10と、包装シート10によって個装された吸収性物品1とを含む。
図2に示すように、包装シート10は展開した状態で細長形状であってよく、長手方向(縦方向)D1と、当該長手方向に直交する短手方向(横方向)D2とを有する。包装シート10の長手方向D1及び短手方向D2は、それぞれ吸収性物品1の長手方向及び短手方向にも対応する。また、個装吸収性物品100の状態では、包装シート10の長手方向D1は開封方向、短手方向D2は幅方向と呼ぶ場合がある。
【0023】
(吸収性物品)
包装シート10により包装される吸収性物品1は、体液(経血、おりもの、尿等)の排出口に対向させるように装着するための、扁平で細長形状の物品であってよい。吸収性物品1の具体例は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等であってよい。本明細書では主に、吸収性物品が生理用ナプキンである例に基づき説明する。
【0024】
吸収性物品1は、例えば
図2に示すように、液透過性のトップシート3と、液不透過性のバックシート(不図示)と、これらのトップシート3とバックシートとの間に配置された吸収体4とを有していてよい。
【0025】
バックシートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、透湿性を有するものが用いられてもよい。
【0026】
トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。パルプとしては、広葉樹材から得られる広葉樹パルプ、針葉樹材から得られる針葉樹パルプ、又はその混合パルプであってよい。また、パルプは、使用済みのパルプから再生されたリサイクルパルプであってもよい。
【0028】
吸収体4の厚みは、0.5~25mmであってよい。吸収体4は、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。吸収体4は、トップシート3及びバックシートからはみ出さない寸法及び形状を有し、吸収体の前方及び後方の端縁部では、バックシートとトップシート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。
【0029】
図2に示すように、吸収体4の側方の外方においては、短手方向D2両端部に長手方向D1に沿ってサイドシート7、7が設けられていてもよい。サイドシート7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。
【0030】
なお、
図1~
図3に示す例では、吸収性物品1は、ウィングのない、いわゆる羽なしのタイプのものであるが、側方にそれぞれ延出するウィングを有する羽つきの物品として構成してもよい。ウィングは、サイドシートとバックシートとの接合により形成されていてよい。
【0031】
また、吸収性物品1のバックシートの側(非肌側、すなわち装着時に下着に対向させる側)には、吸収性物品1を下着に取り付けた際に下着からズレないようにするためのズレ止め用粘着部が設けられていてもよい。ズレ止め用粘着部は、長手方向D1又は短手方向D2に延在する複数の帯状に形成されていてよい。
【0032】
吸収性物品1の全長は、140~430mmとすることができ、吸収性物品1の幅(ウィングを有する場合にはウィングを除いた本体の幅)は40~130mmとすることができる。
【0033】
(包装シート)
本形態における包装シート10は紙製である。紙製の包装シート10を利用することで、プラスチック削減に貢献でき、持続可能な開発目標の達成に寄与することができる。また、紙は、独特の風合い、例えば天然素材の優しい印象の見た目及び手触りを付与できる。なお、本明細書において、紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着剤で膠着させて薄い平板状にしたものを指す。特に、植物繊維を主原料としたもの、例えば含有繊維のうち植物繊維、特にセルロース繊維が50%以上であるもの、好ましくは80%以上であるものを指すことができる。紙の原料たる植物繊維(パルプ)としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプが含まれていてよく、これらは、機械パルプ、化学パルプのいずれであってもよい。パルプは、吸収性物品の構成要素及び/又は吸収性物品用の包装シートからリサイクルされたパルプであってもよい。また、紙には、添加剤が添加されていてもよい。具体的な紙の例としては、洋紙、和紙、加工紙、合成紙等の様々な種類の紙を挙げることができる。さらに、従来他の用途で使用されている紙、例えば、新聞用紙、印刷用紙(上質紙を含む)、筆記用紙、図画用紙、包装用紙、薄葉紙、雑種紙等と呼ばれる紙であってもよい。薄葉紙である場合、薄口模造紙、インディアンペーパー、ライスペーパー、グラシン紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ろ紙等であってもよい。
【0034】
なお、本明細書における、紙製の包装シートとは、主として上述の紙を含むシートを指す。紙製の包装シートには、紙のみからなる包装シートはもちろん、紙と、紙以外の材料からなるシートとが積層された積層シートも含まれ得る。包装シート10が、紙以外の材料からなるシートと含む場合、紙以外の材料は、樹脂フィルム、不織布等であってよい。但し、包装シート10が紙のみからなる場合、プラスチック削減の観点から、且つ/又は紙独特の自然な風合いを製品に付与できるという観点で、特に好ましい。
【0035】
紙製の包装シート10は、何等かの加工が施されたものであってもよい。この加工には、例えば、クレープ加工、エンボス加工、カレンダー加工、撥水加工、スリット加工、プライ加工、印刷加工等が含まれていてよい。クレープ加工、エンボス加工等を行うことにより、紙の強度及び/又は柔軟性を向上させることができる。また、撥水加工(例えば、シリコーン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素樹脂等を含む撥水剤を塗布)を行うことによって、防汚機能を高められる。また、吸収性物品1の裏面のズレ止め用粘着部に対向する側に撥水加工した場合には、剥離シートなしで包装シート10にズレ止め用粘着部を接触させることができる。
【0036】
包装シート10の寸法は、包装する吸収性物品1の大きさや形状に応じて、例えば、包装シート10を完全に広げた状態(折り返しされていない状態)で、長手方向D1の長さ(単に長さと呼ぶ場合がある)は100~450mmとすることができ、短手方向D2の長さ(単に幅と呼ぶ場合がある)は70~250mmとすることができる。図示の例では、包装シート10は、展開した状態で長方形の形状を有するが、例えば長楕円形等の形状を有していてもよい。
【0037】
<個装吸収性物品の基本的な包装構造>
図1~
図3に示すように、吸収性物品1は、包装シート10と共に折り畳まれることによって包装されて、個装吸収性物品100が形成される。折り畳みの際には、
図2に示すように、包装シート10の内面に吸収性物品1を、吸収性物品1のバックシート側が対向するように載置された状態とする。そして、包装シート10と吸収性物品1とが共に、幅方向D2に沿った第1折り線F1及び第2折り線F2にて長手方向D1に共に折り畳まれる。より具体的には、第1折り線F1にて、包装シート10の長手方向D1の一端11を含む第1領域R1が長手方向D1に折り返され、第2折り線F2にて、包装シート10の長手方向D1の他端12を含む第2領域R2が折り返される。包装シート10の第1領域R1と第2領域R2との間の領域は、第3領域R3である。図示の例では、包装シート10は、第2領域R2が先に折り畳まれ、第1領域R1が第2領域R2の外面に重なるように折り畳まれているが(
図1及び
図2)、第1領域R1及び第2領域R2の折り順は逆であってもよい。このように、包装シート10を吸収性物品1と共に巻三つ折り(内三つ折り)にして吸収性物品1を包んだ後に、短手方向D2の両縁部が、長手方向D1に沿ってシールされ、シール部15、15が形成される。
【0038】
このような三つ折り以上の包装形式は、比較的簡便に形成でき、吸収性物品1を衛生的に包むことができるし、また吸収性物品1の取出しも容易である。なお、折り畳みの形式は三つ折りに限られず、四つ折り以上としてもよいし、二つ折りにすることもできる。
【0039】
(シール部)
図1に示すように、個装吸収性物品100においては、短手方向D2の両縁の、吸収性物品1が存在しない場所がシールされ、シール部15、15が形成されている。シール部15、15は、個装吸収性物品100の長手方向D1の全長にわたって形成されていてよい。これにより、ごみや塵、或いは誤って指又は小さい物体が短手方向の端縁から侵入することを防止できる(封止性が得られる)という観点で好ましい。シール部15、15は、例えば、一対のロールに挿通させ、両ロールによって圧力をかけることによって、包装シート10同士を厚み方向に圧着して形成されたものであってよい(後述)。
【0040】
シール部15が設けられている短手方向D2の範囲は、短手方向D2の端縁から20mmまでの範囲であってよい。シール部15は、上記範囲全体に形成されていてもよいし、上記範囲内の一部分に、例えば短手方向D2の端縁から離れた位置に形成されていてもよい。シール部15自体の短手方向D2の長さ(幅)は、3~15mmであると好ましい。
【0041】
図4に、シール部15を含む部分IIの拡大図を示す。
図4に示すように、シール部15は、平面視で互いに離隔した複数の圧着部(若しくは接合部)15a、15a、…を含んでいてよい。各圧着接合部15a、15a、…は、包装シート10同士が厚み方向に、圧着により接合されてなる部分である。図示の例では、複数の圧着部15a、15a、…以外の部分は、包装シート10同士が接合されていない非接合部である。このように、圧着部15a、15a、…が、互いに離隔して点在していることで、例えばシール部15の全面にわたって連続して包装シート10同士が接合されている場合等に比べて、開封時の包装シート同士の剥がしが容易となって開封性を上げることができ、また、個装吸収性物品100の両縁部が過度に硬くなり手触りを損ねることも防止できる。
【0042】
なお、圧着部15a、15a、…1個の平面視形状は、
図4に示す例では正方形であるが、図示の形状に限らず、例えば、長方形、平行四辺形等の正方形以外の四角形、四角形以外の多角形、円形、楕円形、ハート形、星形、滴形等であってもよい。また、シール部15において、圧着部15aの1個のサイズは、一辺0.25~2.5mmの正方形、又はそれと同等の面積を有するサイズであってよい。また、複数の圧着部15a、15a、…の配置も、
図4に示すような格子状であってもよいし、千鳥状になっていてもよい。
【0043】
(止着テープ)
図1等に示すように、個装吸収性物品100には、第1領域R1の端縁(包装シート10の一端11)付近において短手方向D2中央には、止着テープ30が設けられていてよい。そして、止着テープ30は、
図1に示すように、包装シート10の一端11を跨ぐように、第1領域R1及び第2領域R2にわたって設けられていてよい。本明細書では、止着テープ30のうち、平面視で、第1領域R1に貼着されている部分を根元部31、第2領域R2に貼着されている部分を先端部32と呼ぶ。
【0044】
止着テープ30が設けられていることで、個装吸収性物品100の開封時には、使用者は止着テープ30(より具体的には止着テープ30の先端部32)を持って第1領域R1を持ち上げて引っ張ることができるので、開封がより容易となる。また、止着テープ30があることで、吸収性物品の交換時に、使用済みの吸収性物品を、新たに開封した個装吸収性物品から得られた包装シートで包んだ後、包装シートの端部を包装シートの他の場所に止着することができる。これ移により、包装シートが開いてしまって使用済み吸収性物品が露出すること等を防止でき、使用済みの吸収性物品を衛生的に廃棄することができる。
【0045】
止着テープ30の幅(短手方向D2長さ)は、好ましくは5~30mm、より好ましくは10~20mmであってよい。また、止着テープ30全体の長さは、好ましくは10~50mm、より好ましくは15~40mmであってよい。
【0046】
<包装シート強度、シール強度、及び止着テープの剥離強度、並びにそれらの関係>
本形態で使用される包装シート10の材料(資材)等の基本的な特徴については、上述した通りであるが、本形態では、より詳細には包装シート10として、従来のものより強度が小さいものを用いる。例えば、包装シート10の引張強度が15N/25mm以下であってよい。包装シートの引張強度は、より好ましくは13N/25mm以下、さらに好ましくは10N/25mm以下、さらに好ましくは8N/25mm、さらに好ましくは5N/25mmであってよい。そして、上記引張強度の上限は、包装シート10の少なくとも長手方向D1での引張強度であってよい。すなわち、包装シート10が、長手方向D1のみで上記範囲の引張強度を有していてよいし、長手方向D1及び短手方向D2の両方で上記範囲の引張強度を有していてもよい。上記範囲の強度を有する包装シート10を用いることで、包装シート10の柔らかさを確保でき、包装シートに触れた時に発生するカサカサとした音が低減し、また、包装シート10に触れた時のゴワゴワした感じも低減し、手触りが良好になる。
【0047】
さらに、包装シート10の引張強度は、包装シートとしての本来の機能を維持するために、好ましくは1N/25mm以上、より好ましくは3N/25mm以上、さらに好ましくは4N/25mm以上であってよい。当該引張強度の下限も、包装シート10の少なくとも長手方向D1での引張強度の下限であってよい。すなわち、包装シート10が、長手方向D1のみで上記範囲の引張強度を有していてよいし、長手方向D1及び短手方向D2の両方で上記範囲の引張強度を有していてもよい。
【0048】
包装シート10の短手方向D2(個装吸収性物品における幅方向)は、包装シート製造時の流れ方向(MD方向)であってよく、包装シート10の長手方向D1(個装吸収性物品における開封方向)は、包装シート製造時の流れ方向(MD方向)に直交する横方向(CD方向)であってよい。
【0049】
なお、包装シートの引張強度は、当分野で一般的に用いられている引張試験機(例えば、オリエンテック社製の引張試験機)を用いて、所定の幅を有する試験片の試験により測定できる。
【0050】
個装吸収性物品100の開封動作時には、折り畳まれていた包装シート10が長手方向D1外方に展開される(例えば、
図1における第1領域R1及び第2領域R2がこの順に展開される)が、この際、短手方向D2の両縁部のシール部15、15のシールが剥がされる。この時、シール部15のシール強度が過度に大きいと、シールが剥がれる前に、包装シート10が破れてしまうことがある。これに対し、本形態では、包装シートの強度とシール強度とを所定の関係にすることで、開封動作時に包装シート10を展開してシールを剥がしていく際に、特に第1領域R1を第2領域R2から剥がしていく動作時に、包装シート10が破け難くなっている。より具体的には、包装シートの少なくとも長手方向D1の引張強度をSw(N)とし、シール部における包装シート同士の剥離強度をSs(N)として、Ss<Swとする。包装シート10の引張強度Swは、開封動作時に把持する指の幅を考慮して、25mm幅当たりの引張強度とする。シール強度(N)は、両縁部のうち片側のシール部のシールを剥がす際の剥離強度であって、シール部15の幅、シールの形成方式、シールパターン(圧着部のサイズ、配置等)によって調整され得る。シール強度も、2枚の包装シート同士の剥離強度として、上述の引張試験機を用いて測定できる。個装吸収性物品100の開封時には、包装シートには一定方向のみならず、様々な方向にも引張力が掛かり、また引張力以外の力も掛かるが、包装シート10の長手方向D1での引張強度は、開封時の包装シートの破れを回避できる強度、或いは止着テープの脱離を回避できる強度の目安にすることができる。
【0051】
さらに、包装シートの引張強度とシール強度との差(Sw-Ss)は、好ましくは3N以上、より好ましくは3.5N以上であってよい。これにより、包装シートの強度が大きく、開封時に包装シート10を破け難くするという効果を一層向上できる。
【0052】
また、片側のシール部15のシール強度Ssは、好ましくは0.05N以上、より好ましくは0.1N以上であってよい。上記範囲のシール強度Ssとすることで、使用開始前の意図せぬ開封を防止できる。
【0053】
個装吸収性物品100に止着テープ30(
図1等)が設けられている場合には、包装シートの外面に対する止着テープ30の剥離強度をStとした場合に、Ss<Stであることが好ましい。なお、止着テープの剥離強度Stも、上述の引張試験機を用いて測定できる強度であり、当該剥離強度は、止着テープ30の幅や、用いられる粘着剤の種類によって調整され得る。シール強度Ssと止着テープの剥離強度Stとが上記関係にあることで、止着テープ30を持って個装吸収性物品100を開封する際、すなわち、長手方向D1の外方への包装シート10の展開時(第1領域R1を第2領域R2から剥がしていく動作時)に、シール強度に負けて、止着テープ30が脱離してしまうことを防止できる。
【0054】
さらに、止着テープの剥離強度Stとシール強度との差、すなわちSt-Ssは、好ましくは1N以上であってよい。また、シール部15、15が個装吸収性物品100の両縁部に形成されていることに鑑みると、止着テープの剥離強度Stが、シール強度Ssの2倍超であると(St>2×Ss)、包装シート10の展開時で止着テープ30の脱離をより確実に回避でき、好ましい。
【0055】
また、包装シートの引張強度Swと、止着テープの剥離強度Stとを比較した場合、St<Swであると好ましい。これにより、開封時に先端部31を持って第1領域R1を持ち上げて長手方向D1に展開する際、或いは第1領域R1の展開終了時若しくは終了後に、はずみ等で止着テープ30に急激に過度に大きな力が掛かった場合、包装シート10が破れる前に止着テープが外れることが可能であり、包装シートの破れを防止できる。
【0056】
さらに、包装シートの引張強度Swと止着テープの剥離強度Stとの差、すなわちSw-Stは、好ましくは0.1N以上、より好ましくは0.125N以上、さらに好ましくは1N以上であってよい。これにより、止着テープ30に包装シート10の資材が残ることを回避できるという効果を一層向上できる。また、Sw-Stは、好ましくは2N以下、より好ましくは1.5N以下であってよい。これにより、止着テープ30の剥離強度が過度に弱くなって止着テープ30が小さな力でも脱離し易くなることを防止できる。
【0057】
紙製の包装シート10の厚み(クレープ紙の場合にはクレープ加工後の厚み)は、好ましくは40~200μm、より好ましくは70~150μm、さらに好ましくは90~150μmであってよい。また、装シート10の目付は、好ましくは12~50g/m2、より好ましくは15~40g/m2、さらに好ましくは15~35g/m2であってよい。このような比較的薄い且つ/又は目付の小さい包装シートは、柔軟であり、開封時や持ち運びの際に発生する音を低減できる。また、手触りも良好である。そして、本形態によれば、このような厚みの薄い且つ/又は目付の小さい紙製包装シートを使用しても、包装シートの引張強度Swとシール強度Ssとの所定の関係によって、開封時に破れ難い包装シート10を備えた個装吸収性物品を提供できる。
【0058】
<個装吸収性物品の製造>
図5に、個装吸収性物品100の製造装置80の一例の概略図を示す。
図5に示すように、紙製の包装シート10(
図1~
図3)となる包装シート長尺体10Aを搬送方向Dtに搬送させる。包装シート長尺体10Aは、ロール状に巻き付けられた状態で入手することができ、そのようなロール状体から繰り出して利用できる。包装シート長尺体10Aは、その長手方向に沿って搬送され、その包装シート長尺体10Aの内面に、間隔を空けて吸収性物品1、1を配置していく。吸収性物品1は、吸収性物品1の長手方向が、搬送方向Dtと直交する直交方向Dvに沿うように配置する。続いて、製造装置80の包装部40にて、包装シート長尺体10Aを吸収性物品1とともに、直交方向Dv(すなわち吸収性物品1の長手方向D1)に、搬送方向Dtに沿った折り位置にて、折り畳む。折り畳みは内三つ折りとし、折り畳み後に吸収性物品1が露出しないようにすることが好ましい。
【0059】
搬送方向Dtに間隔を空けて配置された吸収性物品1、1、…は、包装シート長尺体10Aによって包まれた状態で、さらに装置80のシール形成部50へと搬送される。
図5に示すように、シール形成部50は、一対のロール51、52を含む。シール形成部50では、吸収性物品1、1…間の位置(吸収性物品1が配置されない位置)で、厚み方向に重ねられた包装シート長尺体10A同士が、一対のロール51、52によって厚み方向に加圧されてシール部15が形成される。シール形成部50においては、隣り合う2つの個装吸収性物品となる部分のシール部15、15(例えば、搬送方向下流の個装吸収性物品の右側のシール部と搬送方向上流の個装吸収性物品の左側のシール部と)が同時に形成される。
【0060】
シール形成部50における一対のロールのうち第1ロール51に、周方向に沿って加圧部53、53、…が設けられ、同様に第2ロールに52に、周方向に沿って加圧部54、54、…が設けられていてよい。ここで、例えば、第1ロール51の加圧部53、53、…のそれぞれの表面には、後に圧着部15a、15a、…(
図4等)に対応する複数の凸部が設けられていてよい。一方、第2ロール52の加圧部54、54、…の表面は平坦になっていてよい。このような一対のロールが回転することで、第1ロール51の加圧部53と第2ロール52の加圧部54とが対向して、その間に挟まれた包装シート長尺体10Aが厚み方向に加圧される。この際、包装シート長尺体10Aが加熱されるように、ロールを昇温しておくこともできる。
【0061】
シール形成部50にてシール部15が形成された後、切断部60にて、隣り合う2つの個装吸収性物品となる部分のシール部15、15が設けられている位置で、包装シート長尺体10Aが切断され、個装吸収性物品100を得ることができる。シール形成部50及び切断部60は一体化された手段になっていてもよい、すなわち、シール部の形成と切断とが1つの装置で行われてもよい。
【0062】
なお、搬送方向Dtが、包装シート長尺体10Aが製造された際の流れ方向(MD方向)であってよく、上記直交方向Dvが、流れ方向(MD方向)に直交する横方向(CD方向)であってよい。これにより、個装吸収性物品100における包装シート10の短手方向D2がMD方向、包装シート10の長手方向D1がCD方向となる。しかしながら、材料のMD方向及びCD方向を、包装シート10の個装吸収性物品100におけるどの方向にするかは、上記に限られず、個装吸収性物品100における包装シート10の短手方向D2がCD方向、包装シート10の長手方向D1がMD方向となっていてもよい。
【実施例0063】
[1]展開時の包装シートの破れ試験(例1-1~例1-5)
包装シートによって生理用ナプキン(20.5cm、羽つき)が包装されてなる個装吸収性物品を準備した。包装シートは、広葉樹パルプと針葉樹パルプを主とする材料から製造されたクレープ紙(厚み90μm、目付18g/m
2)であり、長手方向(開封方向)D1長さ240mm×短手方向(幅方向)D2長さ120mmのサイズであった。より具体的には、個装吸収性物品は、生理用ナプキンの長手方向が包装シートの長手方向に沿うような方向で載置され、包装シートを生理用ナプキンと共に、
図1~
図3に示すような内三つ折りに折り畳まれ、包装シートの短手方向の両縁部がシールされたものであった。シールにより形成されたシール部は、
図5のシール形成部50のような一対のロールによる圧着によって、
図1及び
図4に示すような複数の圧着部からなる、幅6mmのシール部であった。一対のロールの一方の表面には、圧着部に対応するドット状の凸部が複数形成されており、他方の表面は平坦であった。圧着は、いずれの例でも、ロール温度(設定値)152℃、ラインスピード1050枚/分の条件で行った。但し、得られた各例におけるシール強度が異なるようにした。さらに、包装シートの折り畳み後に露出している長手方向の端部の前後方向にわたって止着テープ(
図1及び
図3における符号30)を貼着した。止着テープは幅12mmであって、当該止着テープの、包装シートに対する剥離強度は3.47N/12mmであり、シール部のシール強度に対して十分に大きいものであった。
【0064】
各例の個装吸収性物品を、展開時の包装シートの破れの観点で評価した。また、使用された包装シートの長手方向の引張強度(N)を測定した。さらに、各例におけるシール部のシール強度(N)も測定した。なお、シール部のシール強度(N)は、測定したい例の個装吸収性物品と同様に製作された別の個装吸収性物品を準備し、その別の個装吸収性物品のシール部を評価した。
【0065】
評価・測定の方法は以下の通りであった。結果は表1に示す。
【0066】
<包装シート破れ評価(第1領域展開時の包装シートの破れ評価)>
各例の個装吸収性物品を通常の方法で、具体的には、止着テープを持って長手方向に展開した(
図1及び
図3における第1領域R1を展開した)。その際、短手方向両縁部のシールを剥がす時に、包装シートに破れが生じたか否かを観察した。包装シートの破れが生じなかった場合を「〇」、包装シートの若干の破れ(5mm以下)が生じた場合を「△」、包装シートの大きな破れ(5mm超)が生じた場合を「×」とした。
【0067】
なお、例1-1~例1-5の開封性評価において、止着テープの剥がし始めで(止着テープを第2領域R2(
図1)から剥がす時に)包装シートが破れることはなく、止着テープが脱離することはなかった。
【0068】
<包装シートの引張強度Sw>
包装シートの長手方向(個装吸収性物品における開封方向)の引張強度を測定した。包装シートから、包装シートの長手方向(個装吸収性物品における開封方向)120mm×包装シートの短手方向(個装吸収性物品における幅方向)25mmを有する長方形の試験片を切り出し、引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン試験機「RTC-1210A」)を用いて、チャック間隔50mm、引張速度500mm/分で引張試験を行い、引張強度及び引張伸度を測定した。包装シートの引張強度(N)は、6回の測定による測定値の平均値とした。
【0069】
<シール強度Ss>
個装吸収性物品の短手方向の縁部を、短手方向端縁から25mmの位置で切断し、上記引張試験機を用いて試験を行った。具体的には、包装シートの露出した長手方向の端縁(
図1における第1領域R1に含まれる長手方向一端11)から少し剥がして、一方のチャックを装着し、個装吸収性物品の長手方向の端縁(
図1における折り線F2)付近に他方のチャックを装着し、チャック間隔10mm、引張速度100mm/分で、両チャックを互いに反対方向に引っ張り、極大点荷重(N)をシール強度(剥離強度)とした。
【0070】
【0071】
表1に示すように、例1-1~例1-5は、シール強度Ssと包装シートの引張強度Swとを比較して、Ss<Swを満たしていた。よって、このような関係を満たす個装吸収性物品では、包装シートが破れ難いことが分かった。さらに、シール強度Ssと包装シートの引張強度Swとの差が3N以上である場合(例1-1~例1-3)、特に破れが生じ難くなることが分かった。
【0072】
[2]止着テープの剥離試験(例2-1~例2-7)
例1-1~例1-5と同様にして、例2-1~例2-7による個装吸収性物品を準備した。但し、例2-1~例2-7のいずれにおいても、シール部の強度は便宜上、同等のシール強度(0.25N)となるようにした。また、各例で、止着テープの種類を変え、止着テープの接着強度が異なるようにした。
【0073】
各例で使用された止着テープの剥離強度(接着強度)(N)を測定した。また、測定時に、止着テープ側における包装シートの資材付着についても評価した。本発明者らは、止着テープへの包装シートの資材付着の評価は、開封時の包装シートの破れ易さ及び破れ難さの目安の1つとなると考えた。評価・測定は以下の通りにして行った。結果は表2に示す。
【0074】
<止着テープの剥離強度>
個装吸収性物品から、止着テープが貼着された部分を切り出した。具体的には、止着テープの先端部(
図1等における符号31の部分)を包装シートから剥がし、止着テープの根元部(
図1等における符号32の部分)は貼着されたままで、包装シートを短手方向(D2)100mm、長手方向(D1)20mmにカットされた包装シート片10aを試験片とした。そして、
図6に示すように、短手方向D2の端部を折り返して台紙Bに貼り付け、包装シート片10aと台紙Bとで輪が形成されるようにした。包装シート片10aと台紙Bとの貼り付け領域は、
図6に斜線で示す。そして、一方のチャックで台紙Bを把持し、他方のチャックで止着テープ30の先端を把持して反対方向に引っ張った。この剥離強度試験は、引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン試験機「RTC1210」)を用いて、チャック間隔20mm、引張速度300mm/分で行った。
【0075】
<止着テープへの包装シートの資材付着評価)>
上記の剥離試験において、止着テープを剥がした時の、止着テープにおける包装シートに資材の付着残りを観察した。止着テープの面積に対して、包装シートの資材が残っている面積が0~30%未満であった場合を「〇」、30%以上80%未満であった場合を「△」、80%超であった場合を「×」とした。「△」の場合でも、止着テープへの資材の付着があっても、個装吸収性物品としての開封に係る品質は十分であり、吸収性物品の交換時に包装シートで使用済み吸収性物品を包む場合に止着テープを再利用できる。
【0076】
【0077】
表2において、12mm幅の止着テープの剥離強度St(N)と、25mm幅の包装シートの引張強度(N)とを比較したところ、St<Swの例(例2-6及び例2-7)において、止着テープへの包装シートの資材付着が顕著であったことが分かった。また、St<Swを満たしている例のうち、特に、Sw-Stが0.1N以上の場合(例2-1~例2-4)に、止着テープへの包装シートの資材付着が生じ難いことが分かった。
【0078】
[3]止着テープの脱離試験(例3-1及び例3-2)
止着テープの剥離強度St及びシール強度Ssを変更して、止着テープの脱離を観察するために、本試験を行った。例1-1~例1-5及び例2-1~例2-7と同様にして、例3-1及び例3-2による個装吸収性物品を準備した。但し、例3-1及び例3-2では、シール強度が同等となるようにした一方、各例の止着テープの種類を変え、止着テープの接着強度が異なるようにした。
【0079】
各例の個装吸収性物品を、止着テープの脱離し易さという観点で評価した。結果を表3に示す。
【0080】
<止着テープの脱離評価>
各例の個装吸収性物品を通常の方法で、具体的には、止着テープを持って長手方向に展開した(
図1及び
図3における第1領域R1を最後まで展開した)。その際、止着テープが脱離せず、剥がれも全く生じなかった場合を「〇」、止着テープが脱離しなかったが、部分的に剥がれが生じた場合を「△」、止着テープが脱離した場合を「×」とした。
【0081】
【0082】
表3に示すように、例3-1及び例3-2はいずれもSs<Stを満たしているが、これらのうち、St-Ssが1N以上である場合(例3-2)の方が、包装シートの展開時に、止着テープの剥がれが生じ難かった。
【0083】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。また、上述した構成要素は任意に組合せが可能である。