(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074046
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】個装吸収性物品の製造方法、及び個装吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/15 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
A61F13/15 358
A61F13/15 220
A61F13/15 393
A61F13/15 356
A61F13/15 355B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185096
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 千咲
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200DF08
3B200DF09
3B200EA18
3B200EA24
(57)【要約】
【課題】紙製の包装シートを用いてなる個装吸収性物品の製造方法において、手間やコストをかけず、個装吸収性物品の両縁部のシール部を適切な強度で形成する。
【解決手段】紙製の包装シートと、前記包装シートにより個装された吸収性物品とを含む個装吸収性物品の製造方法であって、紙製の包装シートとなる包装シート長尺体の内面に吸収性物品を搬送方向に間隔を空けて載置し、前記包装シート長尺体を、前記吸収性物品と共に、前記搬送方向と直交する直交方向に折り畳み、前記包装シート長尺体同士を、前記吸収性物品の間の位置で、加熱された一対のロールによって厚み方向に圧着することを含み、前記ロールの少なくとも一方の温度を110~180℃とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の包装シートと、前記包装シートにより個装された吸収性物品とを含む個装吸収性物品の製造方法であって、
前記紙製の包装シートとなる包装シート長尺体の内面に吸収性物品を搬送方向に間隔を空けて載置し、
前記包装シート長尺体を、前記吸収性物品と共に、前記搬送方向と直交する直交方向に折り畳み、
前記包装シート長尺体同士を、前記吸収性物品の間の位置で、加熱された一対のロールによって厚み方向に圧着することを含み、
前記ロールの少なくとも一方の温度を110~180℃とする、個装吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記ロールの少なくとも一方の線熱膨張係数が5~50μm/Kである、請求項1に記載の個装吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記圧着を、接着剤を使用することなく行う、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
前記一対のロールの一方の表面に複数の圧着部形成用凸部が形成され、他方の表面が平坦になっている、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品の製造方法。
【請求項5】
前記紙製の包装シートの厚みが40~200μmである、請求項1又は2に記載の個装吸収性物品の製造方法。
【請求項6】
紙製の包装シートと、前記包装シートにより個装された吸収性物品とを含む個装吸収性物品であって、
前記包装シートの内面に前記吸収性物品が載置された状態で、前記包装シートが前記吸収性物品と共に前記包装シートの長手方向に折り畳まれ、前記長手方向に直交する短手方向の両縁部がシールされており、
前記シールが110~180℃での熱圧着により形成されている、個装吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個装吸収性物品の製造方法、及び個装吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品は、保管時の衛生確保、持ち運びの際の利便性向上等の理由から、包装シートによって個別に包装された状態で個装吸収性物品(個別包装体)として提供されている。
【0003】
このような個装吸収性物品の製造においては、搬送される長尺状の包装シートに吸収性物品を間欠的に配置し、長尺状の包装シートを吸収性物品と共に、搬送方向に直交する方向に内三つ折りした後、長尺状の包装シートを吸収性物品がない位置で、対向配置された2つのロールにより熱圧してシール部が形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
個装吸収性物品の包装シートとして実際に使用されている材料は、樹脂フィルム及び不織布がほとんどであり、これらはプラスチック材料から製造されたシートである。そのため、個装吸収性物品の短手方向両縁部のシールを形成する際には、熱によって包装シート材料同士を融着させることができるので、必要なシール強度の確保が容易である。
【0006】
これに対し、近年、プラスチック削減という観点から、紙製の包装シートの実用化が進められている。紙は通常の条件では昇温しても溶融しないため、紙製の包装シートを含む個装吸収性物品の製造での両縁部のシール形成には、包装シート同士が物理的に噛み合うような接合形式、或いは接着剤等が利用されている。このようなシール手法は、既存の装置とは異なる装置を別途準備する必要があるので、製造の手間及びコストがかかってしまう。
【0007】
上記に鑑みて、本発明の一態様は、紙製の包装シートを用いてなる個装吸収性物品の製造方法において、手間やコストをかけず、個装吸収性物品の両縁部のシール部を適切な強度で形成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、紙製の包装シートと、前記包装シートにより個装された吸収性物品とを含む個装吸収性物品の製造方法であって、前記紙製の包装シートとなる包装シート長尺体の内面に吸収性物品を搬送方向に間隔を空けて載置し、前記包装シート長尺体を、前記吸収性物品と共に、前記搬送方向と直交する直交方向に折り畳み、前記包装シート長尺体同士を、前記吸収性物品の間の位置で、加熱された一対のロールによって厚み方向に圧着することを含み、前記ロールの少なくとも一方の温度を110~180℃とする。
【0009】
個装吸収性物品の製造において、紙製の包装シートを用いた場合、プラスチック材料からなる包装シートのように融着によるシール形成ができない。そのため、従来用いられてきたシールの手法は、包装シート同士の物理的な噛合いや、接着剤の利用等に留まっていた。これに対し、本発明者らは、鋭意検討の結果、上記第一の態様のように、所定の温度で加熱された一対のロールを用いて包装シート長尺体(又は包装シート)同士を圧着することで、包装シートが紙製であっても適切な強度のシールを形成できること、すなわち、使用前に意図せぬ開封を防止できること(封止性)、及び開封時には包装シート同士を困難なく剥がすことができ容易に展開できること(開封性)を両方兼ね備えた適度なシール強度を有するシールを形成できることを見出した。
【0010】
ロールが加熱されることでロールがやや膨張するので、一対のロール間の間隔を狭くすることができるので、圧着時の圧力を増大させることができる。圧力が増すことで、対向する紙製包装シートの各々に含まれるセルロール繊維同士が絡みやすくなり、包装シート同士のシール強度を高めることができる。また、ロールが加熱されていることで、包装シートも昇温するため、セルロース繊維の表面の官能基の活性が高まり、対向する包装シートのそれぞれに含まれるセルロール繊維間で化学的な結合(水素結合等)が形成されやすくなることでも、包装シート同士が分子レベルでもより強固に結合でき、両縁部のシールの強度を高めることができる。
【0011】
本発明の第二の態様では、前記ロールの少なくとも一方の線熱膨張係数が5~50μm/Kである。
【0012】
本発明の第二の態様によれば、ロールが膨張して、一対のロール間の間隔を狭くできるという上述の効果を一層向上させることができる。
【0013】
本発明の第三の態様では、前記圧着を、接着剤を使用することなく行う。
【0014】
上述のように、紙製の包装シートであっても十分な強度を有するシールを形成できるので、上記第三の態様では、紙製の包装シートの場合に従来よく用いられる接着剤にかかるコスト、及び接着剤の塗布の手間を省くことができる。
【0015】
本発明の第四の態様では、前記一対のロールの一方の表面に複数の圧着部形成用凸部が形成され、他方の表面が平坦になっている。
【0016】
上記第四の態様のような、一方のロールのみに圧着部形成用凸部が形成されているシール手段は、一対のロールの両方の表面に凹凸が形成されてその凹凸が互いに噛み合うように構成されているシール手段に比べて、包装シート同士の機械的な噛合いを形成し難い。しかしながら、本態様ではロールが加熱されることで、噛み合うタイプのロールでなくとも、十分な強度のシールを形成できる。
【0017】
本発明の第五の態様では、前記紙製の包装シートの厚みが40~200μmである。
【0018】
上記第五の態様により、比較的薄い包装シートであっても、より確実にシール形成ができる。
【0019】
本発明の第六の態様では、紙製の包装シートと、前記包装シートにより個装された吸収性物品とを含む個装吸収性物品であって、前記包装シートの内面に前記吸収性物品が載置された状態で、前記包装シートが前記吸収性物品と共に前記包装シートの長手方向に折り畳まれ、前記長手方向に直交する短手方向の両縁部がシールされており、前記シールが110~180℃での熱圧着により形成されている。
【0020】
上記第六の態様により、紙製包装シートであっても適度なシール強度のシール部を備え、コスト及び手間を抑えた個装吸収性物品を提供できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様によれば、紙製の包装シートを用いてなる個装吸収性物品の製造方法において、手間やコストをかけず、個装吸収性物品の両縁部のシール部を十分な強度で形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による個装吸収性物品の平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による個装吸収性物品の製造方法における接合工程について説明するための図である。
【
図6】
図5におけるロールの加圧部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図面において、特に説明がない限り、同一の又は対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0024】
<個装吸収性物品の基本構造>
まず、個装吸収性物品の基本的な構成について説明する。
図1に、個装吸収性物品100の平面図を示す。
図2に、
図1の個装吸収性物品を展開した状態の平面図であり、包装シート10の内面から若しくは吸収性物品1肌側から見た図を示す。また、
図3に
図1のI-I線断面を示す。
【0025】
図1~
図3に示すように、個装吸収性物品100は、包装シート10と、包装シート10によって個装された吸収性物品1とを含む。
図2に示すように、包装シート10は展開した状態で細長形状であってよく、長手方向(縦方向)D1と、当該長手方向に直交する短手方向(横方向)D2とを有する。また、包装シート10の長手方向D1及び短手方向D2は、それぞれ吸収性物品1の長手方向及び短手方向にも対応する。
【0026】
(吸収性物品)
包装シート10により包装される吸収性物品1は、体液(経血、おりもの、尿等)の排出口に対向させるように装着するための、扁平で細長形状の物品であってよい。吸収性物品1の具体例は、生理用ナプキン、パンティライナー(おりものシート)、軽失禁用パッド等であってよい。
【0027】
吸収性物品1は、例えば
図2に示すように、液透過性のトップシート3と、液不透過性のバックシート(不図示)と、これらのトップシート3とバックシートとの間に配置された吸収体4とを有していてよい。
【0028】
バックシートとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シート等の少なくとも遮水性を有するシート材を用いることができる。ポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在させて実質的に不透液性を確保した不織布の積層シート等を用いることができる。また、透湿性を有するものが用いられてもよい。
【0029】
トップシート3としては、有孔又は無孔の不織布や多孔性プラスチックシート等が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維、及びこれらの混紡繊維、並びに綿等の天然繊維を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
吸収体4は、体液を吸収して保持できる材料であれば限定されないが、綿状パルプと吸水性ポリマーとを含むことが好ましい。吸水性ポリマーとしては、高吸水ポリマー粒状粉(superabsorbent polymer(SAP))、高吸水ポリマー繊維(superabsorbent fiber(SAF))及びこれらの組合せを用いることができる。パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられる。パルプとしては、広葉樹材から得られる広葉樹パルプ、針葉樹材から得られる針葉樹パルプ、又はその混合パルプであってよい。また、パルプは、使用済みのパルプから再生されたリサイクルパルプであってもよい。
【0031】
吸収体4の厚みは、0.5~25mmであってよい。吸収体4は、体液排出口に対応させる領域(体液排出口対応領域)や、体液排出口対応領域より後方の、臀部の溝に対向する領域を、膨出させた構造とすることもできる。吸収体4は、トップシート3及びバックシートからはみ出さない寸法及び形状を有し、吸収体の前方及び後方の端縁部では、バックシートとトップシート3との外縁がホットメルト等の接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合されている。
【0032】
図2に示すように、吸収体4の側方の外方においては、短手方向D2両端部に長手方向D1に沿ってサイドシート7、7が設けられていてもよい。サイドシート7としては、撥水処理不織布又は親水処理不織布を使用することができる。
【0033】
なお、
図1~
図3に示す例では、吸収性物品1は、ウィングのない、いわゆる羽なしのタイプのものであるが、側方にそれぞれ延出するウィングを有する羽つきの物品として構成してもよい。ウィングは、サイドシートとバックシートとの接合により形成されていてよい。
【0034】
また、吸収性物品1のバックシートの側(非肌側、すなわち装着時に下着に対向させる側)には、吸収性物品1を下着に取り付けた際に下着からズレないようにするためのズレ止め用粘着部が設けられていてもよい。ズレ止め用粘着部は、長手方向D1又は短手方向D2に延在する複数の帯状に形成されていてよい。
【0035】
吸収性物品1の全長は、140~430mmとすることができ、吸収性物品1の幅(ウィングを有する場合にはウィングを除いた本体の幅)は40~130mmとすることができる。
【0036】
(包装シート)
本形態における包装シート10は紙である。紙製の包装シート10を利用することで、プラスチック削減に貢献でき、持続可能な開発目標の達成に寄与することができる。また、紙は、独特の風合い、例えば天然素材の優しい印象の見た目及び手触りを付与できる。なお、本明細書において、紙とは、植物繊維その他の繊維を膠着剤で膠着させて薄い平板状にしたものを指す。特に、植物繊維を主原料としたもの、例えば含有繊維のうち植物繊維、特にセルロース繊維が50%以上であるもの、好ましくは80%以上であるものを指すことができる。紙の原料たる植物繊維(パルプ)としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプが含まれていてよく、これらは、機械パルプ、化学パルプのいずれであってもよい。パルプは、吸収性物品の構成要素及び/又は吸収性物品用の包装シートからリサイクルされたパルプであってもよい。また、紙には、添加剤が添加されていてもよい。具体的な紙の例としては、洋紙、和紙、加工紙、合成紙等の様々な種類の紙を挙げることができる。さらに、従来他の用途で使用されている紙、例えば、新聞用紙、印刷用紙(上質紙を含む)、筆記用紙、図画用紙、包装用紙、薄葉紙、雑種紙等と呼ばれる紙であってもよい。薄葉紙である場合、薄口模造紙、インディアンペーパー、ライスペーパー、グラシン紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、ろ紙等であってもよい。
【0037】
なお、本明細書における、紙製の包装シートとは、主として上述の紙を含むシートを指す。紙製の包装シートには、紙のみからなる包装シートはもちろん、紙と、紙以外の材料からなるシートとが積層された積層シートも含まれ得る。包装シート10が、紙以外の材料からなるシートと含む場合、紙以外の材料は、樹脂フィルム、不織布等であってよい。但し、包装シート10が紙のみからなる場合、プラスチック削減の観点から、且つ/又は紙独特の自然な風合いを製品に付与できるという観点で、特に好ましい。
【0038】
紙製の包装シート10は、何等かの加工が施されたものであってもよい。この加工には、例えば、クレープ加工、エンボス加工、カレンダー加工、撥水加工、スリット加工、プライ加工、印刷加工等が含まれていてよい。クレープ加工、エンボス加工等を行うことにより、紙の強度及び/又は柔軟性を向上させることができる。本形態で用いられる包装シート10は、クレープ加工されたクレープ紙であってよい。それにより、資材の厚みが薄くても、丈夫で且つ柔軟な包装シート10となり、また、表面に適度な微細凹凸ができることで手触りや持ちやすさを向上させることができる。また、包装シート10を撥水加工する場合、例えば、シリコーン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素樹脂等を含む撥水剤を、包装シート10の外面(吸収性物品1が包装された状態で外部に露出する側)及び外面と反対側の内面の少なくとも一方に塗布することができる。包装シート10の内面に撥水加工を施した場合、吸収性物品1の裏面に配置されたズレ止め用粘着部が包装シート10に対して容易に着脱可能になるので、剥離シートを省くことができる。但し、本形態による加熱されたロールを用いた圧着によりシール部を形成する製造方法では、包装シート10に撥水加工が施されていたとしても、撥水剤が脱離可能なシール部の形成を妨げる可能性があるため、個装吸収性物品100の両縁部のシール部15(後に詳述)に形成されていないことが好ましい。
【0039】
包装シート10の寸法は、包装する吸収性物品1の大きさや形状に応じて、例えば、包装シート10を完全に広げた状態(折り返しされていない状態)で、長手方向D1の長さ(単に長さと呼ぶ場合がある)は100~450mmとすることができ、短手方向D2の長さ(単に幅と呼ぶ場合がある)は70~250mmとすることができる。図示の例では、包装シート10は、展開した状態で長方形の形状を有するが、例えば長楕円形等の形状を有していてもよい。
【0040】
(個装吸収性物品の包装構造)
図1及び
図3に示すように、吸収性物品1は、包装シート10と共に折り畳まれることによって包装されて、個装吸収性物品100が形成されている。折り畳みの際には、
図2に示すように、包装シート10の内面に吸収性物品1を、吸収性物品1のバックシート側が対向するように載置された状態とする。そして、包装シート10と吸収性物品1とが共に、幅方向D2に沿った第1折り線F1及び第2折り線F2にて長手方向D1に共に折り畳まれる。より具体的には、第1折り線F1にて、包装シート10の長手方向D1の一端11を含む第1領域R1が長手方向D1に折り返され、第2折り線F2にて、包装シート10の長手方向D1の他端12を含む第2領域R2が折り返される。包装シート10の第1領域R1と第2領域R2との間の領域は、第3領域R3である。図示の例では、包装シート10は、第2領域R2が先に折り畳まれ、第1領域R1が第2領域R2の外面に重なるように折り畳まれているが(
図1及び
図2)、第1領域R1及び第2領域R2の折り順は逆であってもよい。このように、包装シート10を吸収性物品1と共に巻三つ折り(内三つ折り)にして吸収性物品1を包んだ後に、短手方向D2の両縁部が、長手方向D1に沿ってシールされ、シール部15、15が形成される。
【0041】
このような三つ折り以上の包装形式は、比較的簡便に形成でき、吸収性物品1を衛生的に包むことができるし、また吸収性物品1の取出しも容易である。なお、折り畳みの形式は三つ折りに限られず、四つ折り以上としてもよいし、二つ折りにすることもできる。
【0042】
さらに、個装吸収性物品100には、第1領域R1の端縁(包装シート10の一端11)付近において短手方向D2中央には、止着テープ30が設けられていてよい。止着テープ30は、
図1に示すように、包装シート10の一端11を跨ぐように、第1領域R1及び第2領域R2にわたって設けられていてよい。止着テープ30が設けられていることで、個装吸収性物品100の開封時には、使用者は止着テープ30を持って第1領域R1を持ち上げて引っ張ることができるので、開封がより容易となる。その際には、第1領域R1が、その下に位置する第2領域R2から剥がされる。
【0043】
(シール部)
図1に示すように、個装吸収性物品100においては、短手方向D2の両縁の、吸収性物品1が存在しない場所がシールされ、シール部15、15が形成されている。本形態においては、このシール部15、15は、加熱された一対のロールに挿通させることで、包装シート10同士を厚み方向に圧着することで形成されたものである(後にさらに詳述)。
【0044】
図1に示すように、シール部15、15は、個装吸収性物品100の長手方向D1の全長にわたって形成されていてよい。これにより、ごみや塵、或いは誤って指又は小さい物体が短手方向の端縁から侵入することを防止できる(封止性が得られる)という観点で好ましい。
【0045】
シール部15が設けられている短手方向D2の範囲は、短手方向D2の端縁から20mmまでの範囲であってよい。シール部15は、上記範囲全体に形成されていてもよいし、上記範囲内の一部分に、例えば短手方向D2の端縁から離れた位置に形成されていてもよい。シール部15自体の短手方向D2の長さ(幅)は、3~15mmであると好ましい。シール部15の短手方向D2の内縁は、長手方向D1に沿って直線状に延在していてもよいし、曲線状に、例えば波状に延在していてもよい。
【0046】
図4に、シール部15を含む部分IIの拡大図を示す。
図4に示すように、シール部15は、平面視で互いに離隔した複数の圧着部(若しくは接合部)15a、15a、…を含んでいてよい。各圧着接合部15a、15a、…は、包装シート10同士が厚み方向に、圧着により接合されてなる部分である。図示の例では、複数の圧着部15a、15a、…以外の部分は、包装シート10同士が接合されていない非接合部である。このように、圧着部15a、15a、…が、互いに離隔して点在していることで、例えばシール部15の全面にわたって連続して包装シート10同士が接合されている場合等に比べて、開封時の包装シート同士の剥がしが容易となって開封性を上げることができ、また、個装吸収性物品100の両縁部が過度に硬くなり手触りを損ねることも防止できる。
【0047】
なお、着圧部15a、15a、…1個の平面視形状は、
図4に示す例では正方形であるが、図示の形状に限らず、例えば、長方形、平行四辺形等の正方形以外の四角形、四角形以外の多角形、円形、楕円形、ハート形、星形、滴形等であってもよい。また、シール部15において、圧着部15aの1個のサイズは、一辺0.25~2.5mmの正方形、又はそれと同等の面積を有するサイズであってよい。
【0048】
<個装吸収性物品の製造方法>
本発明の一実施形態は、上述の個装吸収性物品100の製造方法に係る。本形態による個装吸収性物品100の製造装置80の模式図(
図5)を参照しながら説明する。まず、紙製の包装シート10(
図1~
図3)となる包装シート長尺体10Aを搬送方向Dtに搬送させる。包装シート長尺体10Aは、ロール状に巻き付けられた状態で入手することができ、そのようなロール状体から繰り出して利用できる。包装シート長尺体10Aは、その長手方向に沿って搬送され、その包装シート長尺体10Aの内面に、間隔を空けて吸収性物品1、1を配置していく。吸収性物品1は、吸収性物品1の長手方向が、搬送方向Dtと直交する直交方向Dvに沿うように配置する。続いて、製造装置80の包装部40にて、包装シート長尺体10Aを吸収性物品1とともに、直交方向Dv(すなわち吸収性物品1の長手方向D1)に、搬送方向Dtに沿った折り位置にて、折り畳む。折り畳みは内三つ折りとし、折り畳み後に吸収性物品1が露出しないようにすることが好ましい。
【0049】
搬送方向Dtに間隔を空けて配置された吸収性物品1、1、…は、包装シート長尺体10Aによって包まれた状態で、さらに装置80のシール形成部50へと搬送される。
図5に示すように、シール形成部50は、一対のロール51、52を含む。シール形成部50では、吸収性物品1、1…間の位置(吸収性物品1が配置されない位置)で、厚み方向に重ねられた包装シート長尺体10A同士が、一対のロール51、52によって厚み方向に加圧されてシール15が形成される。一対のロールのうち第1ロール51には、周方向に沿って加圧部53、53、…が設けられ、同様に第2ロール52にも、周方向に沿って加圧部54、54、…が設けられている。そして、ロールが回転する際、第1ロール51の加圧部53と第2ロール52の加圧部54とが対向して、その間に挟まれた包装シート長尺体10Aが厚み方向に加圧されるようになっている。
【0050】
ここで、
図6(a)に、第1ロール51の加圧部53、及び第2ロール52の加圧部54の拡大図を示す。
図6(a)においては、挟まれている包装シート長尺体10Aの図示は省略する。
図6に示すように、第1ロール51の加圧部53の表面には、圧着部形成用凸部53a、53a、…が形成されている。一方、第2ロール52は、表面が平坦になっているロール(アンビルロール)である。よって、第1ロール51の圧着部形成用凸部53a、53a、…のサイズ、形状、及び配置は、得ようとする個装吸収性物品100のシール部15の圧着部15a、15a、…(
図4)に対応させて、圧着部15a、15a、…の所望のサイズ、形状、及び配置に応じて設計することができる。但し、第1ロール51及び第2ロール52の両方の表面に凹凸が形成されていて、互いに噛み合うように構成されていてもよい。
【0051】
本形態では、第1ロール51、52の少なくとも一方が加熱される。よって、第1ロール51、52の少なくとも一方の少なくとも表面が昇温されるように構成されていてよい。昇温手段の例としては、電気加熱式が挙げられ、例えば、ロール51、52の中心部、或いはロール51、52の加圧部53、53、…、54、54、…(
図5及び
図6)内に、熱を発生させることのできる抵抗式のヒータ(熱芯)がそれぞれ埋設されていてもよい。また、誘導発熱式、熱媒循環式、蒸気加熱式等による手段を利用してもよい。このうち、ロール表面を均一に加工し易い方式であることから、電気加熱式で加熱をすることが好ましい。
【0052】
このように、シール部15の形成のために、加熱された一対のロール51、52を利用することで、包装シート長尺体10Aを加熱及び加圧しつつ、厚み方向に接合することができる。ロールが加熱されるとロールはやや膨張する。
図6(a)及び(b)は、膨張前後のロール51、52の加圧部53、54の拡大模式図である。加熱後には、
図6(b)に示すように、膨張後の圧着部形成用凸部53a、53a、…を含む加圧部53が膨張して、加圧部54に近付き、加圧部54も膨張して加圧部53に近付く。なお、
図6(b)における点線は、加熱前の加圧部53、54を示す。このように、膨張により、加熱された状態での第1ロール51の加圧部53と第2ロール52の加圧部54との間隔c2は、加熱前の第1ロール51の加圧部53と第2ロール52の加圧部54との間隔c1よりも狭くなる。別言すると、第1ロール51と第2ロール52との間隔は、加熱前よりも加熱後の方が小さくなる。したがって、加熱されたロールを用いることで、加熱されていないロールを用いた場合と比較して、より大きな圧力で包装シートを加圧できる。この加熱による膨張の度合は微細であるので、本形態は微細な圧力調整を行いたい場合に好適である。
【0053】
一対のロールによる圧着圧は、好ましくは0.1~10MPa、より好ましくは0.3~5MPaであってよい。そして、加熱による圧着圧の増加分は1~100kPaとなり得る。
【0054】
さらに、加熱されることで、包装シート長尺体10(若しくは包装シート10)に含まれる紙材料の繊維同士が絡みやすくなる。より具体的には、紙材料に含まれるセルロール繊維の表面に露出する官能基(水酸基等)が活性化され、重ねられて対向する包装シート長尺体10(若しくは包装シート10)のそれぞれに含まれるセルロース繊維間で化学的な結合、例えば水素結合が形成されやすくなる。そのため、包装シート長尺体10A同士が、分子レベルでも(微視的にも)強固に結合され得る。そのため、包装シート長尺体10A同士を噛み合わせるような強制的なシール部を形成する必要はない。
【0055】
紙材料は融着成分を含まないことから、従来、紙製の包装シートを用いた個装吸収性物品の製造では、シール部の形成は、包装シート同士の物理的な噛合せ、或いは接着剤を利用することによって試みられてきたが、本形態では、加熱されたロールを用いることで、適切なシール強度を有するシール部が形成できるので、ロールに新たな表面パターンを形成したり接着剤の塗布装置を設置したりする必要がなく、そのためコスト及び手間を省くことができる。また、包装シート同士を物理的に噛み合わせることによってシール部を形成する場合、包装シートの材料に負担がかかり、包装シートが損傷したり、また損傷を防ぐためにより厚手の材料を利用したり必要があった。本形態によれば、そのような懸念も抑制される。
【0056】
紙製の包装シート長尺体10A又は包装シート10の厚みは、好ましくは40~200μm、より好ましくは70~150μm、さらに好ましくは90~150μmであってよい。また、包装シート長尺体10A又は包装シート10の目付は、好ましくは12~50g/m2、より好ましくは15~40g/m2、さらに好ましくは15~35g/m2でってよい。本形態によれば、このような厚みの薄い且つ/又は目付の小さい紙製包装シートを使用する場合であっても、個装吸収性物品のシール部15を適切な強度で形成できる。
【0057】
シール形成の際には、少なくとも一方のロール、好ましくは両方のロールを昇温させることが好ましい。ロールの温度は110℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、さらに好ましくは140℃以上であってよい。温度を90℃以上とすることで適切な強度のシール部を形成できる。また、温度の上限は、紙材料が変性又は損傷しない程度の温度であればよいが、例えば、180℃以下、好ましくは170℃以下であってよい。なお、加熱は、ロールにおいて少なくとも加圧部53、54の表面の温度(加圧部53の場合には圧着部形成用凸部53aの表面の温度)が、上記温度となるように加熱されることが好ましい。上記温度は、装置の設定温とすることができる。
【0058】
さらに、ロール51、52は、少なくとも一方、好ましくは両方が、線熱膨張係数5~50μm/Kの材料で形成されていると好ましい。また、少なくとも、第1ロール51の加圧部53及び/又は第2ロール52の加圧部54が、線熱膨張係数5~50μm/Kの材料で形成されていると好ましい。上記熱線膨張係数は、好ましくは5~25μm/Kであってよい。このような熱線膨張係数を有する材料でロール51、52が構成されていることで、加熱時にロール51、52の適切な膨張が得られる。すなわち、ロール51、52間の間隔を狭くできるという上述の効果を一層向上できるとともに、過度な膨張を防止して、操業時のシール形成時の圧着圧の調整を容易にできる。
【0059】
ロールを構成する材料は、金属、セラミックスを含む無機材料が好ましく、金属がより好ましい。ロールを構成する金属は単体金属であっても合金であってもよく、具体例としては、超硬合金、ステンレス鋼(SUS430、SUS304等)、炭素鋼、ハイス鋼、ダイス鋼、鉄、金、同、黄銅、アルミニウム等が挙げられる。このうち、ハイス鋼、ダイス鋼が、適切な線熱膨張係数を有することから、加熱時にロールを適切に膨張させることができ、好ましい。
【実施例0060】
長手方向に240mmの長さを有する紙製の包装シート(厚み90μm、目付18g/m
2)を、
図1及び
図2に示す包装シート10と同様に内三つ折りして得られた折り畳み体を、折り畳み方向に直交する方向に、ハイス鋼(線熱膨張係数11.2μm/K)製の一対のロール間に挿通して、厚み方向に加圧することによって、幅6mmのシール部を形成した。一対のロールとして、
図6を参照して説明したような、一方が表面に圧着部形成用凸部を備えたロールであり、他方が表面に凹凸のない平坦なロールであるものを用いた。また、加熱なしでの設定ロール圧は3.3MPaであり、ロールの回転速度は350回転/分であった。
【0061】
そして、シール部の形成を、ロールの表面の温度(加圧部の温度)を変更して行い、各温度の場合の、シール部の封止性を目視で評価した。評価は以下の基準で行った。
〇:口開きがなかった。
△:5mm未満の口開きが認められた。
×:5mm以上の口開きがあった
なお、口開きは、内三つ折りにした際に外側に配置され露出する包装シートの端縁付近が、その下に重ねられた包装シートに接合していない状態を指す。上記のうち「〇」及び「△」が、シール部として許容される範囲である。
【0062】
【0063】
表1に示すように、本実施例における金属ロール(ハイス鋼ロール)の例では、ロールの表面温度を特に130℃以上、より好ましくは140℃以上とすることで、シール部の封止性を向上できることが分かった。
【0064】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。上記実施形態は、特許請求の範囲に記載された範囲内において、様々な変更、修正、置換、付加、削除、及び組合せ等が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に属する。また、上述した構成要素は任意に組合せが可能である。