(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074052
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/20 20060101AFI20240523BHJP
B60C 9/18 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B60C9/20 E
B60C9/18 G
B60C9/18 K
B60C9/18 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185104
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】中井 尭志
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131AA44
3D131AA45
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC11
3D131BC19
3D131BC31
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA44
3D131DA46
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
(57)【要約】
【課題】 耐久性能を維持しながら、転がり抵抗を低減することができる重荷重用タイヤを提供する。
【解決手段】 重荷重用タイヤである。第2ベルトプライ7Bのベルトコード11bと、第3ベルトプライ7Cのベルトコード11cとは、タイヤ赤道面Cに対して互いに逆向きに傾斜している。第1ベルトプライ7Aのベルトコード11aの第1角度β1は、第2ベルトプライ7Bのベルトコード11bの第2角度β2、及び、第3ベルトプライ7Cのベルトコード11cの第3角度β3よりも大きい。第4ベルトプライ7Dの第4エンズは、第3ベルトプライ7Cのエンズである第3エンズよりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重荷重用タイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、
前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、
前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されるベルト層とを含み、
前記ベルト層は、前記カーカス側からタイヤ半径方向外側に向かって順次重なる第1ベルトプライ、第2ベルトプライ、第3ベルトプライ、及び、第4ベルトプライを含み、
前記第1ないし第4ベルトプライは、それぞれ、タイヤ赤道面に対して傾斜したベルトコードを含み、
前記第2ベルトプライのベルトコードと、前記第3ベルトプライのベルトコードとは、タイヤ赤道面に対して互いに逆向きに傾斜しており、
前記第1ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第1角度は、前記第2ベルトプライの前記ベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第2角度、及び、前記第3ベルトプライの前記ベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第3角度よりも大きく、
単位プライ幅当たりの前記ベルトコードの打ち込み本数であるエンズについて、前記第4ベルトプライのエンズである第4エンズは、前記第3ベルトプライのエンズである第3エンズよりも小さい、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記第4エンズは、前記第3エンズの40%以上かつ100%未満である、請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記第4ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第4角度は、前記第2角度及び前記第3角度以上であり、かつ、前記第1角度よりも小さい、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記第4角度は、15~30°である、請求項3に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記第2角度及び前記第3角度は、15~20°である、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項6】
前記第3ベルトプライの前記ベルトコードと、前記第4ベルトプライの前記ベルトコードとは、タイヤ赤道面に対して同一方向に傾斜している、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項7】
前記トレッド部は、タイヤ赤道面の各側において、最もトレッド端側に配されたショルダー周方向溝を含み、
前記第4ベルトプライのタイヤ軸方向の外端は、タイヤ赤道面の各側において、前記ショルダー周方向溝よりも、タイヤ軸方向外側に配される、請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックやバスなどに用いられる重荷重用タイヤが、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、重荷重用タイヤには、耐久性能が求められる一方、地球環境問題への関心の高まりに伴って、転がり抵抗の低減が要求されている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、耐久性能を維持しながら、転がり抵抗を低減することができる重荷重用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、重荷重用タイヤであって、トレッド部と、一対のサイドウォール部と、それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されるベルト層とを含み、前記ベルト層は、前記カーカス側からタイヤ半径方向外側に向かって順次重なる第1ベルトプライ、第2ベルトプライ、第3ベルトプライ、及び、第4ベルトプライを含み、前記第1ないし第4ベルトプライは、それぞれ、タイヤ赤道面に対して傾斜したベルトコードを含み、前記第2ベルトプライのベルトコードと、前記第3ベルトプライのベルトコードとは、タイヤ赤道面に対して互いに逆向きに傾斜しており、前記第1ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第1角度は、前記第2ベルトプライの前記ベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第2角度、及び、前記第3ベルトプライの前記ベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第3角度よりも大きく、単位プライ幅当たりの前記ベルトコードの打ち込み本数であるエンズについて、前記第4ベルトプライのエンズである第4エンズは、前記第3ベルトプライのエンズである第3エンズよりも小さい、重荷重用タイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の重荷重用タイヤは、上記の構成を採用することにより、耐久性能の維持しながら、転がり抵抗を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の重荷重用タイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0010】
[重荷重用タイヤ]
図1には、本実施形態のタイヤ回転軸(図示省略)を含む重荷重用タイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある。)1の右側半分の子午線断面が示される。本実施形態のタイヤ1は、例えば、トラック、バス用などの重荷重用の空気入りタイヤに好適に利用される。本明細書では、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値で示される。正規状態とは、タイヤ1が正規リムにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填された無負荷の状態である。
【0011】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムである。したがって、正規リムは、例えば、JATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば"Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0012】
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧である。したがって、正規内圧は、例えば、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0013】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、一対のビード部4とを含んで構成されている。一対のビード部4には、それぞれにビードコア5が埋設されている。
【0014】
本実施形態のトレッド部2は、一対のトレッド端2tと、複数本の周方向溝9とを有している。一対のトレッド端2tは、正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。
【0015】
「正規荷重」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重である。したがって、正規荷重は、例えば、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0016】
複数本の周方向溝9は、一対のトレッド端2tの間をタイヤ周方向に連続して延びている。このような周方向溝9により、ウェット走行時において、トレッド部2と路面との間の水が排出され、ウェット性能が向上する。周方向溝9の溝幅W1は、例えば、トレッド幅TWの3~10%に設定される。周方向溝9の溝深さD1は、例えば、15~25mm程度に設定される。トレッド幅TWは、一対のトレッド端2t間のタイヤ軸方向の距離として定められる。
【0017】
本実施形態の周方向溝9は、一対のショルダー周方向溝9Aと、一対のセンター周方向溝9Bとが含まれている。なお、周方向溝9は、このような態様に限定されるわけではなく、例えば、一対のセンター周方向溝9Bが省略されてもよいし、他の周方向溝(図示省略)がさらに含まれてもよい。
【0018】
一対のショルダー周方向溝9Aは、タイヤ赤道面Cの各側(タイヤ軸方向の両外側)において、最もトレッド端2t側にそれぞれ配されている。これらのショルダー周方向溝9Aにより、トレッド部2のタイヤ軸方向外側において、路面との間の水が排出されうる。一方、一対のセンター周方向溝9Bは、ショルダー周方向溝9Aとタイヤ赤道面Cとの間にそれぞれ配されている。これらのセンター周方向溝9Bにより、トレッド部2のタイヤ赤道面C側において、路面との間の水が排出されうる。このような一対のショルダー周方向溝9A及び一対のセンター周方向溝9Bにより、ウェット性能が向上する。
【0019】
本実施形態のタイヤ1は、一対のビード部4の間を延びるカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されるベルト層7とがさらに含まれる。
【0020】
[カーカス]
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では1枚のカーカスプライ6Aを含んでいる。カーカスプライ6Aは、一対のビード部4の間を跨るように延びている。本実施形態のカーカスプライ6Aは、本体部6aと、一対の折返し部6bとを含んで構成されている。本体部6aと折返し部6bとの間には、ビードコア5から半径方向外側に向かって延びるビードエーペックスゴム8が設けられている。
【0021】
本体部6aは、一対のビード部4のビードコア5間を延びている。一方、一対の折返し部6bは、一対のビード部4のそれぞれにおいて、ビードコア5の周りをタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されている。このようなカーカスプライ6Aにより、トレッド部2からビード部4にかけて、タイヤ1の剛性が高められる。本実施形態では、本体部6aと折返し部6bとを含むカーカスプライ6Aが例示されたが、このような態様に限定されない。カーカスプライ6Aは、例えば、本体部6aのみで構成されてもよい。
【0022】
図2は、カーカス6及びベルト層7の展開図である。
図2では、カーカスコード10やベルトコード11a~11dが簡略化して示されており、それらの一部が省略されている。
【0023】
カーカスプライ6Aは、従来と同様に、タイヤ赤道面Cに対して75~90°の角度αで配列されたカーカスコード10を含んでいる。カーカスコード10としては、例えば、スチールコードが好適に採用され得る。
【0024】
[ベルト層]
図3は、
図1のトレッド部2の部分拡大図である。
図1ないし
図3に示されるように、ベルト層7は、複数枚のベルトプライで構成されている。
【0025】
複数枚のベルトプライは、第1ベルトプライ7A、第2ベルトプライ7B、第3ベルトプライ7C、及び、第4ベルトプライ7Dを含んで構成されている。これらの第1ベルトプライ7A~第4ベルトプライ7Dは、カーカス6側からタイヤ半径方向外側に向かって、順次重なっている。
【0026】
図2に示されるように、各第1ベルトプライ7Aないし第4ベルトプライ7Dには、タイヤ赤道面Cに対して傾斜したベルトコード11a~11dがそれぞれ設けられている。
図3に示されるように、本実施形態では、ベルトコード11a~11dの配列体が、トッピングゴム12でそれぞれ被覆されることで、第1ベルトプライ7Aないし第4ベルトプライ7Dが構成されている。これらの第1ベルトプライ7A~第4ベルトプライ7Dのタガ効果により、トレッド部2が強固に補強され、タイヤ1の耐久性能が維持されうる。
【0027】
ベルトコード11a~11dは、複数本のスチールフィラメント(図示省略)を撚り合わせた撚線として構成されている。なお、ベルトコード11a~11dは、撚線に限定されるものではなく、例えば、スチール単線であってもよい。
【0028】
図2に示されるように、各第1ベルトプライ7Aないし第4ベルトプライ7Dについて、ベルトコード11a~11dのタイヤ赤道面Cに対する角度は、第1角度β1、第2角度β2、第3角度β3及び第4角度β4でそれぞれ特定される。第1角度β1は、第1ベルトプライ7Aのベルトコード11aのタイヤ赤道面Cに対する角度である。第2角度β2は、第2ベルトプライ7Bのベルトコード11bのタイヤ赤道面Cに対する角度である。第3角度β3は、第3ベルトプライ7Cのベルトコード11cのタイヤ赤道面Cに対する角度である。第4角度β4は、第4ベルトプライ7Dのベルトコード11dのタイヤ赤道面Cに対する角度である。これらの第1角度β1ないし第4角度β4は、例えば、10~50°の範囲でそれぞれ設定されうる。
【0029】
第2ベルトプライ7Bのベルトコード11bと、第3ベルトプライ7Cのベルトコード11cとは、タイヤ赤道面Cに対して互いに逆向きに傾斜している。これらの第2ベルトプライ7B及び第3ベルトプライ7Cにより、タイヤ半径方向内側への拘束力(タガ効果)が高められ、トレッド部2(
図1及び
図3に示す)が強固に補強される。したがって、タイヤ1の耐久性能が向上する。さらに、本実施形態では、第2ベルトプライ7Bのベルトコード11bと、第3ベルトプライ7Cのベルトコード11cと、カーカスコード10とが、三角形状に交差する強固なトラス構造が形成される。これにより、上記の拘束力(タガ効果)が効果的に高められうる。
【0030】
図1に示されるように、第2ベルトプライ7B及び第3ベルトプライ7Cは、第1ベルトプライ7A及び第4ベルトプライ7Dに比べて、タイヤ軸方向の幅が相対的に大きく設定されるのが好ましい。これにより、第2ベルトプライ7B及び第3ベルトプライ7Cの上記の拘束力が、トレッド部2のタイヤ軸方向の広範囲に亘って作用し、タイヤの耐久性が向上する。
【0031】
図2に示されるように、第2ベルトプライ7B及び第3ベルトプライ7Cによる上記の拘束力が高めるために、第2角度β2及び第3角度β3が小さく設定されると、これらの第2角度β2及び第3角度β3と、カーカスコード10の角度αとの差が大きくなる。このようなコード間の角度差(角度αと第2角度β2との差)が大きくなると、カーカスプライ6Aと第2ベルトプライ7Bとの間において、歪エネルギーが大きくなりやすい。
【0032】
本実施形態では、カーカスプライ6Aと第2ベルトプライ7Bとの間に配される第1ベルトプライ7Aの第1角度β1が、第2角度β2及び第3角度β3よりも大きく設定されている。これにより、第1角度β1は、カーカスコード10の角度αと、第2角度β2との間の大きさに設定される。このような第1角度β1に設定された第1ベルトプライ7Aにより、カーカスプライ6Aと第2ベルトプライ7Bとの間の歪エネルギーが緩和されうる。これにより、タイヤ1の転がり抵抗が低減する。
【0033】
第4ベルトプライのエンズである第4エンズは、第3ベルトプライのエンズである第3エンズよりも小さく設定されている。ここで、エンズとは、各第1ベルトプライ7A~第4ベルトプライ7Dについて、単位プライ幅当たりのベルトコード11a~11dの打ち込み本数である。また、単位プライ幅は、正規状態のタイヤ子午線断面において、エンズが特定される各第1ベルトプライ7A~第4ベルトプライ7Dに沿って測定される長さである。本実施形態の単位プライ幅は、50mmである。
【0034】
本実施形態では、第4エンズが第3エンズよりも小さく設定されることで、第3ベルトプライ7Cのベルトコード11cの本数に比べて、第4ベルトプライ7Dのベルトコード11dの本数が少なくなる。これにより、第3ベルトプライ7Cによる上記の拘束力を維持しつつ、トレッド部2の接地面側に配される第4ベルトプライ7Dの剛性が緩和される。これにより、ベルト層7に生じる歪エネルギーが低下する。さらに、第4ベルトプライ7Dの重量が低下する。これらの歪エネルギー及び重量の低下により、タイヤ1の転がり抵抗が低減する。
【0035】
このように、本実施形態のタイヤ1は、各第1ベルトプライ7A~第4ベルトプライ7Dについて、第1角度β1、第2角度β2及び第3角度β3が上記の関係を満たし、かつ、第4エンズが第3エンズよりも小さく設定されている。これにより、本実施形態のタイヤ1は、耐久性能の維持しながら、転がり抵抗を低減することが可能となる。
【0036】
第4エンズは、第3エンズの40%以上かつ100%未満が好ましい。第4エンズが第3エンズの100%未満に設定されることで、第4ベルトプライ7Dの剛性及び重量が適度に低下し、転がり抵抗が低減する。一方、第4エンズが第3エンズの40%以上に設定されることで、第4ベルトプライ7Dの剛性が必要以上に低下するのが抑制され、耐久性能が維持される。このような観点より、第4エンズは、好ましくは、第3エンズの80%以下であり、また、好ましくは60%以上である。
【0037】
第3エンズ及び第4エンズは、上記の関係が維持されれば、適宜設定されうる。第3エンズは、例えば、19~27(本/50mm)に設定されうる。第4エンズは、例えば、12~22(本/50mm)に設定されうる。なお、第1ベルトプライのエンズである第1エンズ、及び、第2ベルトプライのエンズである第2エンズは、例えば、第3エンズと同一範囲に設定されうる。
【0038】
第4ベルトプライ7Dのベルトコード11dのコード径である第4コード径は、第3ベルトプライ7Cのベルトコード11cのコード径である第3コード径よりも小さくてもよい。これにより、第4ベルトプライ7Dの剛性が緩和し、その重量が低下するため、タイヤ1の転がり抵抗がさらに低減する。このような作用を効果的に発揮させるために、第4コード径は、第3コード径の65%~100%に設定されるのが好ましい。なお、コード径は、ベルトコード11c、11dが複数本のスチールフィラメントを撚り合わせた撚線として構成される場合、スチールフィラメントの集合体の外接円の直径として特定されうる。
【0039】
第1角度β1は、30~60°に設定されるのが望ましい。第1角度β1が30°以上に設定されることで、上述したカーカスプライ6Aと第2ベルトプライ7Bとの間の歪エネルギーが、第1ベルトプライ7Aによって緩和されうる。一方、第1角度β1が60°以下に設定されることで、第1ベルトプライ7Aによる拘束力の低下が抑制され、タイヤ1の耐久性能が維持されうる。このような観点より、第1角度β1は、好ましくは35°以上であり、また、好ましくは55°以下である。
【0040】
第2角度β2及び第3角度β3は、15~20°に設定されるのが好ましい。第2角度β2及び第3角度β3が20°以下に設定されることで、第2ベルトプライ7B及び第3ベルトプライ7Cによる拘束力(タガ効果)が高められ、耐久性が向上する。一方、第2角度β2及び第3角度β3が15°以上に設定されることで、上記の拘束力(タガ効果)が必要以上に高くなるのが抑制される。その結果、第2ベルトプライ7Bと第3ベルトプライ7Cとの間の歪エネルギーの増大が抑制され、転がり抵抗が低減されうる。このような観点より、第2角度β2及び第3角度β3は、好ましくは19°以下であり、また、好ましくは16°以上である。
【0041】
第4角度β4は、第2角度β2及び第3角度β3以上に設定されるのが好ましい。これにより、第4ベルトプライ7Dの拘束力が必要以上に高くなるのが抑制され、第3ベルトプライ7Cと第4ベルトプライ7Dとの間において歪エネルギーの増大が抑制される。したがって、タイヤ1の転がり抵抗が低減する。一方、第4角度β4は、第1角度β1よりも小さく設定されるのが好ましい。これにより、トレッド部2の接地面側に配される第4ベルトプライ7Dの拘束力が維持され、ベルト層7の剛性低下が抑制される。これにより、タイヤ1の耐久性能が維持されうる。
【0042】
第4角度β4は、15~30°に設定されるのが好ましい。第4角度β4が15°以上に設定されることで、第4ベルトプライ7Dの拘束力が必要以上に高くなるのが抑制され、タイヤ1の転がり抵抗が低減する。一方、第4角度β4が30°以下に設定されることで、第4ベルトプライ7Dの拘束力の低下が抑制され、タイヤ1の耐久性能が維持されうる。このような観点より、第4角度β4は、好ましくは20°以上であり、また、好ましくは25°以下である。
【0043】
第3ベルトプライ7Cのベルトコード11cと、第4ベルトプライ7Dのベルトコード11dとは、タイヤ赤道面Cに対して同一方向に傾斜しているのが好ましい。これにより、内圧充填や転動に伴うタイヤ1の外径変化によって、第3角度β3及び第4角度β4が変化する際に、ベルトコード11cと11dとの間のトッピングゴム12(
図3に示す)において、歪の増大が抑制される。これにより、第3ベルトプライ7Cと第4ベルトプライ7Dとの間の歪エネルギーが低下し、転がり抵抗が低減する。
【0044】
同様に、第1ベルトプライ7Aのベルトコード11aと、第2ベルトプライ7Bのベルトコード11bとは、タイヤ赤道面Cに対して同一方向(第3ベルトプライ7C及び第4ベルトプライ7Dの各ベルトコード11c、11dと逆向き)に傾斜するのが好ましい。
【0045】
図1に示されるように、第4ベルトプライ7Dのタイヤ軸方向の外端7Dtは、タイヤ赤道面Cの各側(タイヤ軸方向の両外側)において、ショルダー周方向溝9Aよりも、タイヤ軸方向外側に配されるのが好ましい。これにより、ショルダー周方向溝9Aのタイヤ半径方向の内側部分が強固に補強され、ショルダー周方向溝9Aの開口が広がる向きに変形する所謂ゲーピングが抑制される。したがって、ゲーピングに起因するトレッドゴム2Gの歪エネルギーの増大が抑制され、転がり抵抗が低減する。
【0046】
第4ベルトプライ7Dの外端7Dtと、ショルダー周方向溝9Aとのタイヤ軸方向の最短距離L1は、トレッド幅TWの1.5%~5.0%に設定されるのが好ましい。最短距離L1がトレッド幅TWの1.5%以上に設定されることで、上記のゲーピングが抑制される。一方、最短距離L1がトレッド幅TWの5.0%以下に設定されることで、第4ベルトプライ7Dの剛性及び重量の増加が抑制され、転がり抵抗が低減する。このような観点より、最短距離L1は、好ましくは、トレッド幅TWの2.0%以上であり、また、好ましくは4.5%以下である。
【0047】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0048】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0049】
[本発明1]
重荷重用タイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、
前記一対のビード部の間を延びるカーカスと、
前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつ前記トレッド部の内部に配されるベルト層とを含み、
前記ベルト層は、前記カーカス側からタイヤ半径方向外側に向かって順次重なる第1ベルトプライ、第2ベルトプライ、第3ベルトプライ、及び、第4ベルトプライを含み、
前記第1ないし第4ベルトプライは、それぞれ、タイヤ赤道面に対して傾斜したベルトコードを含み、
前記第2ベルトプライのベルトコードと、前記第3ベルトプライのベルトコードとは、タイヤ赤道面に対して互いに逆向きに傾斜しており、
前記第1ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第1角度は、前記第2ベルトプライの前記ベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第2角度、及び、前記第3ベルトプライの前記ベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第3角度よりも大きく、
単位プライ幅当たりの前記ベルトコードの打ち込み本数であるエンズについて、前記第4ベルトプライのエンズである第4エンズは、前記第3ベルトプライのエンズである第3エンズよりも小さい、
重荷重用タイヤ。
[本発明2]
前記第4エンズは、前記第3エンズの40%以上かつ100%未満である、本発明1に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明3]
前記第4ベルトプライのベルトコードのタイヤ赤道面に対する角度である第4角度は、前記第2角度及び前記第3角度以上であり、かつ、前記第1角度よりも小さい、本発明1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明4]
前記第4角度は、15~30°である、本発明3に記載の重荷重用タイヤ。
[本発明5]
前記第2角度及び前記第3角度は、15~20°である、本発明1ないし4の何れかに記載の重荷重用タイヤ。
[本発明6]
前記第3ベルトプライの前記ベルトコードと、前記第4ベルトプライの前記ベルトコードとは、タイヤ赤道面に対して同一方向に傾斜している、本発明1ないし5の何れかに記載の重荷重用タイヤ。
[本発明7]
前記トレッド部は、タイヤ赤道面の各側において、最もトレッド端側に配されたショルダー周方向溝を含み、
前記第4ベルトプライのタイヤ軸方向の外端は、タイヤ赤道面の各側において、前記ショルダー周方向溝よりも、タイヤ軸方向外側に配される、本発明1ないし6の何れかに記載の重荷重用タイヤ。
【符号の説明】
【0050】
7A 第1ベルトプライ
7B 第2ベルトプライ
7C 第3ベルトプライ
7D 第4ベルトプライ
11a ベルトコード
11b ベルトコード
11c ベルトコード
β1 第1角度
β2 第2角度
β3 第3角度