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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074064
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】状態検出装置及び状態検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01H 3/00 20060101AFI20240523BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20240523BHJP
   F03D 17/00 20160101ALI20240523BHJP
【FI】
G01H3/00 A
F03D1/06 A
F03D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185127
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【弁理士】
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】中津 友里
(72)【発明者】
【氏名】小灘 聰一郎
(72)【発明者】
【氏名】安念 正人
【テーマコード(参考)】
2G064
3H178
【Fターム(参考)】
2G064AA01
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB15
2G064AB22
2G064BA02
2G064CC03
2G064CC29
2G064CC42
2G064CC46
2G064DD08
2G064DD14
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB56
3H178CC02
3H178DD52X
(57)【要約】
【課題】風力発電装置等の設備、又は、その構成要素であるブレード等を診断するに際し、診断対象の異常等の種々の状態の検出精度を向上できる状態検出装置及び状態検出システムを提供する。
【解決手段】状態検出装置10は、検出対象の状態を検出する解析部12を備える。解析部12は、検出対象で発生した音に対応する音響情報を取得し、音響情報の周波数成分の時間変化を表す画像に含まれるパターンに基づいて検出対象の状態を検出し、検出対象の状態の検出結果を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の状態を検出する解析部を備え、
前記解析部は、
前記検出対象で発生した音の測定結果を音響情報として取得し、
前記音響情報の周波数成分の時間変化を表す画像に含まれるパターンに基づいて前記検出対象の状態を検出し、
前記検出対象の状態の検出結果を出力する、
状態検出装置。
【請求項2】
前記解析部は、前記パターンで表される音が発生した前記検出対象の部位を解析する、請求項1に記載の状態検出装置。
【請求項3】
前記解析部は、正常パターンに対する前記パターンの差分を表す数値が差分閾値以上である場合、前記パターンで表される音が発生した部位の状態が異常であることを出力する、請求項2に記載の状態検出装置。
【請求項4】
前記解析部は、
前記パターンと前記検出対象の状態とを対応づけたデータベースに基づいて前記検出対象の状態を検出し、
前記検出対象の状態が正常である場合の音響情報に基づいて前記正常パターンを生成して前記データベースに登録する、請求項3に記載の状態検出装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の状態検出装置と、検出対象で発生する音を測定し、測定結果を音響情報として前記状態検出装置に出力する収音装置とを備える、状態検出システム。
【請求項6】
前記収音装置は、
複数のマイクを備え、
前記複数のマイクのそれぞれで検出した音に基づいて所定方向から前記収音装置に到来する音の成分を表す音響情報を生成する、請求項5に記載の状態検出システム。
【請求項7】
前記状態検出装置の解析部は、複数の方向のそれぞれから前記収音装置に到来する音の成分を表す複数の音響情報を取得し、前記複数の音響情報に基づいて前記検出対象の状態を検出する、請求項6に記載の状態検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、状態検出装置及び状態検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風車のブレードの異常を判定するに際し、ブレードが発する音響情報(風切音)の解析結果中に、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移するドップラーシフト成分の存在を検出する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-281279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
風力発電装置等の設備、又は、その構成要素であるブレード等を診断するに際し、診断対象の異常等の種々の状態を検出することが求められる。
【0005】
本開示は、上述の点に鑑みてなされたものであり、風力発電装置等の設備、又は、その構成要素であるブレード等を診断するに際し、診断対象の異常等の種々の状態の検出精度を向上できる状態検出装置及び状態検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る状態検出装置は、検出対象(風力発電装置のブレード等)の状態(異常等)を検出する解析部を備える。前記解析部は、前記検出対象で発生した音の測定結果を音響情報として取得し、前記音響情報の周波数成分の時間変化を表す画像に含まれるパターンに基づいて前記検出対象の状態を検出し、前記検出対象の状態の検出結果を出力する。状態検出装置は、上述したように検出対象の状態を検出することによって、風力発電装置等の設備、又は、その構成要素であるブレード等を診断するに際し、診断対象の異常等の種々の状態の検出精度を向上できる。
【0007】
一実施形態に係る状態検出装置において、前記解析部は、前記パターンで表される音が発生した前記検出対象の部位を解析してよい。このようにすることで、解析された部位に対する検査又は修理等が実行されやすい。その結果、検出対象の安全性が向上する。
【0008】
一実施形態に係る状態検出装置において、前記解析部は、正常パターンに対する前記パターンの差分を表す数値が差分閾値以上である場合、前記パターンで表される音が発生した部位の状態が異常であることを出力してよい。このようにすることで、検出対象の状態の判定基準が明確になる。その結果、状態の検出精度が向上する。また、この閾値は固定的な値だけでなく、運転状態又は風況などを利用した値に設定されてもよい。このようにすることでも状態の検出精度が向上する。
【0009】
一実施形態に係る状態検出装置において、前記解析部は、前記パターンと前記検出対象の状態とを対応づけたデータベースに基づいて前記検出対象の状態を検出してよい。前記解析部は、前記検出対象の状態が正常である場合の音響情報に基づいて前記正常パターンを生成して前記データベースに登録してよい。このようにすることで、パターンの分類精度が向上する。その結果、検出対象の状態の検出精度が向上する。
【0010】
幾つかの実施形態に係る状態検出システムは、上記状態検出装置と、検出対象で発生する音を測定し、測定結果を音響情報として前記状態検出装置に出力する収音装置とを備えてよい。状態検出システムは、上記状態検出装置を備えることによって、風力発電装置等の設備、又は、その構成要素であるブレード等を診断するに際し、診断対象の異常等の種々の状態の検出精度を向上できる。
【0011】
一実施形態に係る状態検出システムにおいて、前記収音装置は、複数のマイクを備えてよい。前記収音装置は、前記複数のマイクのそれぞれで検出した音に基づいて所定方向から前記収音装置に到来する音の成分を表す音響情報を生成してよい。このようにすることで、背景音等の検出対象以外で発生する音の影響が低減され得る。その結果、検出対象の状態の検出精度が向上する。
【0012】
一実施形態に係る状態検出システムにおいて、前記状態検出装置の解析部は、複数の方向のそれぞれから前記収音装置に到来する音の成分を表す複数の音響情報を取得してよい。前記解析部は、前記複数の音響情報に基づいて前記検出対象の状態を検出してよい。複数の音響情報に基づいて検出対象の状態を検出することによって、背景音等の検出対象以外で発生する音の影響が低減され得る。その結果、検出対象の状態の検出精度が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、風力発電装置等の設備、又は、その構成要素であるブレード等を診断するに際し、診断対象の異常等の種々の状態の検出精度を向上できる状態検出装置及び状態検出システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】比較例に係る音響情報の解析例を示す図である。
図2】一実施形態に係る状態検出システムの構成例を示す模式図である。
図3】一実施形態に係る状態検出システムの構成例を示すブロック図である。
図4】音の周波数成分の時間変化の一例をグレースケールの画像として表す図である。
図5】第1方向から到来した音の成分に対応する音響情報の周波数成分の時間変化の一例をグレースケールの画像として表す図である。
図6】第2方向から到来した音の成分に対応する音響情報の周波数成分の時間変化の一例をグレースケールの画像として表す図である。
図7】グレースケールの画像に含まれる周期的なパターンの一例を示す図である。
図8】グレースケールの画像に含まれる粒状のパターンの一例を示す図である。
図9】グレースケールの画像に含まれる線状のパターンの一例を示す図である。
図10】一実施形態に係る状態検出方法の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(比較例)
比較例に係るシステムは、風車の回転するブレードで発生する風切音を定位置に設置したマイクで検出する。図1にグラフとして示されるように、音は周波数成分の経時変化として表される。図1のグラフの横軸は時間を表す。縦軸は周波数を表す。風車のブレードの音の周波数成分は、領域90として表される。また、ブレードに傷等の特徴的な部位が存在する場合、その特徴的な部位で発生する音は、領域90の中でも際立った領域として区別される。
【0016】
ここで、回転する風車のブレードは固定されたマイクに対して速度を有する。音の発生源がブレードとともに動く場合、ブレードの異常な凹凸が空気の流れを変えることによって発生する音響がブレードの音とともにマイクによって検出される。比較例に係るシステムは、音響信号中の、時間推移とともに尖鋭度が高い周波数成分が推移する(ドップラーシフト)成分の存在を検出することで、ブレードの異常を判定する。また、比較例に係るシステムは、尖鋭度が高い周波数成分の推移が所定の傾きを有する場合をブレードの異常として判定する。
【0017】
しかし、比較例に係るシステムは、音響信号中に尖鋭度が高い周波数成分の時間推移又は傾きとして現れる状態しか検出できない。
【0018】
そこで、本開示は、風車40のブレード42(図2参照)等の検出対象で発生する音に基づく音響信号中の尖鋭度が高い周波数成分の時間推移又は傾きを検出できずとも、検出対象の種々の状態を検出できる状態検出システム1(図2及び図3参照)を説明する。
【0019】
(本開示の実施形態)
図2及び図3に示されるように、一実施形態に係る状態検出システム1は、状態検出装置10と、収音装置20と、表示装置30とを備える。状態検出システム1は、検出対象で発生した音に基づいて検出対象の状態を検出する。本実施形態において、検出対象は、図2に示される風車40のブレード42であるとする。風車40は、ブレード42の他に、ナセル44と、支柱46とを備える。本実施形態において、ブレード42で異常が生じていると仮定する。ブレード42で生じている異常は、ブレード42の表面の傷、ひび、割れ、突起若しくは陥没、又は、ブレード42の内部の空洞、ひび若しくは割れ等の種々の態様を含んでよい。状態検出システム1は、ブレード42を検出対象として、ブレード42で生じている異常を検出してよい。ブレード42において異常が生じている部位は、異常部位48とも称される。
【0020】
(状態検出システム1の構成例)
以下、状態検出システム1の構成例が説明される。
【0021】
<状態検出装置10>
状態検出装置10は、検出対象であるブレード42で発生した音の波形に対応する音響情報に基づいてブレード42の状態を検出する。検出対象は、ブレード42に限られず、ナセル44等の他の部分を含んでもよい。状態検出装置10は、音響情報の周波数成分又は音響情報の周波数成分の時間変化に基づかずにブレード42の状態を検出してよい。状態検出装置10は、後述する収音装置20から音響情報、音響情報の周波数成分、又は、音響情報の周波数成分の時間変化を取得してよい。状態検出装置10は、収音装置20から音響情報を取得して音響情報の周波数解析を実行することによって音響情報の周波数成分又は音響情報の周波数成分の時間変化を取得してよい。状態検出装置10は、解析部12と、記憶部14と、インタフェース16とを備える。
【0022】
解析部12は、状態検出装置10の各構成部を制御する。解析部12は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成されてよい。解析部12は、プロセッサに所定のプログラムを実行させることによって所定の機能を実現してもよい。
【0023】
記憶部14は、解析部12の動作に用いられる各種情報、又は、解析部12の機能を実現するためのプログラム等を格納してよい。記憶部14は、解析部12のワークメモリとして機能してよい。記憶部14は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部14は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを含んで構成されてよい。記憶部14は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体として構成されてもよい。記憶部14は、解析部12に含まれてもよい。
【0024】
インタフェース16は、状態検出装置10を、収音装置20又は表示装置30と通信可能に接続する通信デバイスを含んで構成される。通信デバイスは、例えば4G(4th Generation)若しくはLTE(Long Term Evolution)又は5G(5th Generation)等の移動体通信規格に基づいて通信可能に構成されてよい。通信デバイスは、例えばLAN(Local Area Network)の通信規格に基づいて通信可能に構成されてよい。通信デバイスは、有線又は無線で通信可能に構成されてよい。
【0025】
インタフェース16は、表示デバイスを含んで構成されてよい。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。インタフェース16は、スピーカ等の音声出力デバイスを含んで構成されてよい。インタフェース16は、これらに限られず、他の種々の出力デバイスを含んで構成されてよい。
【0026】
インタフェース16は、ユーザからの入力を受け付ける入力デバイスを含んで構成されてよい。入力デバイスは、例えば、キーボード又は物理キーを含んでよいし、タッチパネル若しくはタッチセンサ又はマウス等のポインティングデバイスを含んでよい。入力デバイスは、これらの例に限られず、他の種々のデバイスを含んで構成されてよい。
【0027】
状態検出装置10は、PC(Personal Computer)として構成されてよいし、少なくとも1台のサーバ装置として構成されてよい。状態検出装置10は、クラウドコンピューティングのシステムで実現されてもよい。
【0028】
状態検出装置10は、例えばブレード42等を含む検出対象の状態を検出するためのパラメータ等を入力可能に構成されてよい。
【0029】
<収音装置20>
収音装置20は、1つ又は複数のマイクを備える。収音装置20は、検出対象又はその周囲の環境から発生する音を1つ又は複数のマイクで検出する。つまり、収音装置20は、検出対象が存在する環境で発生する音を1つ又は複数のマイクで検出する。収音装置20は、1つ又は複数のマイクで検出した音の検出結果を音響情報として状態検出装置10に出力する。音響情報は、音圧の時間変化を表す波形として表されてよい。音響情報は、音圧の振幅と位相とによって表されてもよい。
【0030】
収音装置20が複数のマイクを備える場合、複数のマイクは、アレイ状に配置されたアレイマイクとして構成されてよい。収音装置20は、アレイマイクを構成する各マイクで検出した音の波形の測定結果を音響情報として状態検出装置10に出力してよい。状態検出装置10は、音響情報として取得した各マイクの測定結果の波形の振幅及び位相を解析することによって、収音装置20に対して所定方向から到来する音の成分の波形に対応する音響情報を生成してよい。例えば、状態検出装置10は、検出対象の所定部分から到来する音の成分の波形に対応する音響情報を生成してよい。検出対象の所定部分から収音装置20に向かう方向は、第1方向とも称される。第1方向から収音装置20に到来する音の成分を表す音響情報は、第1音響情報とも称される。状態検出装置10は、検出対象以外の所定部分から到来する音の成分の波形に対応する音響情報を生成してよい。検出対象以外の所定部分から収音装置20に向かう方向は、第2方向とも称される。第2方向から収音装置20に到来する音の成分を表す音響情報は、第2音響情報とも称される。状態検出装置10は、第1方向及び第2方向のそれぞれから到来する音の成分の波形に対応する音響情報を生成してよい。状態検出装置10は、複数の方向のそれぞれから到来する音の成分の波形に対応する複数の音響情報を生成してよい。
【0031】
収音装置20は、図2に例示されるように検出対象としての風車40の支柱46の周囲に配置されてよい。収音装置20は、ブレード42が最も低い位置まで回転してきたときに、ブレード42の回転軸からブレード42の先端に向かう線(鉛直方向の線)の延長線が地面と交わる地点の付近に配置されてよい。収音装置20は、図2に例示される位置に限られず、ナセル44等の他の種々の位置に配置されてもよい。収音装置20は、ブレード42の先端が回転軸から水平の位置まで回転したときに、ブレード42の先端から鉛直方向に向かう線が地面と交わる地点の付近に配置されてもよい。
【0032】
<表示装置30>
表示装置30は、状態検出装置10による検出対象の状態の検出結果を表示する。表示装置30は、音響情報、音響情報の周波数成分、又は、音響情報の周波数成分の時間変化等の種々のデータを表示してよい。表示装置30は、例えば液晶ディスプレイ等の種々のディスプレイを含んでよい。状態検出システム1は、収音装置20で測定した音響そのもの、又は、検出対象の状態の検出結果に応じて生成された警告音等の音声を出力するスピーカを備えてもよい。
【0033】
(状態検出システム1の動作例)
状態検出システム1において、状態検出装置10は、検出対象が存在する環境で発生した音の波形に対応する音響情報に基づいて検出対象の状態を検出できる。以下、状態検出システム1の構成例が説明される。
【0034】
<音響情報の解析>
状態検出装置10の解析部12は、音響情報について、例えばFFT(Fast Fourier Transform)、又は、1/1若しくは1/3オクターブ分析等の手法を用いて、各周波数の音圧を数値化してよい。解析部12は、各周波数における音圧の変化量を数値化してよい。解析部12は、指定した一定の時間幅において音圧が極大値となる周波数をピーク周波数として算出してよい。解析部12は、ピーク周波数のトラッキングによって、ピークの継続時間と、ピーク周波数の移動量と、ピーク周波数における音圧の大きさと、ピーク周波数を含む周波数帯における音圧の分散度とを算出してよい。解析部12は、音響情報の解析結果を、音響情報とともに記憶部14に格納してよい。
【0035】
解析部12は、音響情報の周波数成分の時間変化に基づいて検出対象の状態を検出してよい。音響情報の周波数成分の時間変化は、図4に例示されるように、ある時間における音響情報のある周波数の成分の大きさをグレースケールで表す画素を含む画像として表されてよい。図4に例示される画像に含まれる各列の画素(上下方向に並ぶ画素)は、同じ時間における音響情報の各周波数の成分の大きさを表す。図4に例示される画像に含まれる各行の画素(左右方向に並ぶ画素)は、各時間における音響情報の同じ周波数の成分の大きさを表す。図4の画像において、ある時間における、ある周波数成分を表す点の色が黒に近い(濃い)ほど、その時間における、その周波数成分の音圧が大きいことを意味する。逆に、ある時間における、ある周波数成分を表す点の色が白に近い(薄い)ほど、その時間における、その周波数成分の音圧が小さいことを意味する。つまり、図4の画像は、時間と音響情報の周波数と各時間における各周波数の成分の大きさとの関係を、実質的に3次元のグラフで表している。
【0036】
図4に例示されるグレースケールの画像は、検出対象としてのブレード42が存在する環境において収音装置20に向けて種々の方向から到来する音を合わせた音響情報の周波数成分の時間変化を表す。言い換えれば、図4に例示されるグレースケールの画像は、収音装置20が指向性を有しないで検出した音響情報の周波数成分の時間変化を表す。音響情報の周波数成分の時間変化は、グレースケールの画像に限られず、RGB画像で表されてもよいし、他の種々の態様で表されてもよい。
【0037】
収音装置20は、上述したようにマイクアレイで音を検出することによって、特定の方向から到来する音の成分の波形に対応する音響情報を生成できる。つまり、収音装置20は、指向性を有するように音を検出して音響情報を生成できる。
【0038】
図5に例示されるグレースケールの画像は、第1方向から収音装置20に到来した音の成分の波形に対応する音響情報の周波数成分の時間変化を表す。図6に例示されるグレースケールの画像は、第2方向から収音装置20に到来した音の成分の波形に対応する音響情報の周波数成分の時間変化を表す。図5及び図6に例示されるグレースケールの画像において、各列の画素(上下方向に並ぶ画素)は、同じ時間における音響情報の各周波数の成分の大きさを表す。図4に例示される画像に含まれる各行の画素(左右方向に並ぶ画素)は、各時間における音響情報の同じ周波数の成分の大きさを表す。
【0039】
<フィルタリング>
解析部12は、音響情報に対してフィルタリングを実行してよい。解析部12は、高い周波数若しくは低い周波数、又は、高い周波数と低い周波数とを組み合わせた周波数フィルタリングを実行してよい。解析部12は、短期間の突発的な音圧の上昇(スパイク)を削除するフィルタリングを実行してよい。解析部12は、一次遅れ又は移動平均等を用いたデジタルフィルタを実行してよい。解析部12は、記録又は定義された背景音の音圧データを利用した背景音フィルタリングを実行してよい。解析部12は、上述した音響情報の解析の前にフィルタリングを実行してよい。
【0040】
<特徴的なパターンの検出>
音響情報の周波数成分の時間変化を表す画像は、特徴的なパターンを含む。解析部12は、ブレード42の通過と同期する音響情報をブレード42の音響情報と認識してよい。ブレード42の音響情報の中で音圧が時間軸(音響情報の時間変化を表す画像の左右方向)若しくは周波数軸(音響情報の時間変化を表す画像の上下方向)で隣接する画素又は近傍に位置する画素を含む周辺部と比較して大小が際立っている周波数は、ピーク周波数とも称される。解析部12は、ピーク周波数を含むパターンを特徴的なパターンとして検出してよい。解析部12は、音響情報の画像の中でピーク周波数となる点を含み、かつ、ピーク周波数となる点の音圧に対して所定の割合を乗じた音圧以上となる点を含む範囲を特徴的なパターンとして検出してよい。
【0041】
解析部12は、図7に例示されるように、検出対象としての3枚のブレード42のそれぞれの風切り音に対応するパターンとして、パターン51、パターン52及びパターン53を検出してよい。解析部12は、パターン51、52及び53を検出する時間の間隔に基づいてブレード42の回転数を算出してよい。
【0042】
解析部12は、パターン51、52及び53のそれぞれが現れる周波数範囲を算出してよい。解析部12は、各パターンが現れる周波数範囲の経時変化に基づいて、各ブレード42の状態が変化したか判定してよい。
【0043】
解析部12は、パターン52の中に、パターン51及び53の中に存在しない特徴的なパターンとして特徴パターン54を検出してよい。解析部12は、特徴パターン54を検出することによって、特徴パターン54を検出したブレード42の状態が異常である可能性を検出してよい。解析部12は、特徴パターン54の単位時間当たりの周波数の変化量に基づいてブレード42の中のどの部位の状態が異常である可能性があるか解析してよい。状態が異常になっている可能性がある部位を解析することによって、その部位に対する検査又は修理等が実行されやすい。その結果、検出対象の安全性が向上する。
【0044】
ブレード42で特徴音を発する部位における異物又は傷等の大きさの変化によって、特徴音が変化する。解析部12は、特徴音の周波数の変化、又は、ピーク周波数における音圧の大きさ若しくはピーク周波数を含む特徴的なパターンの広がりを監視することによって、ブレード42で特徴音を発する部位の状態の変化を検出してよい。特徴音の周波数、又は、ピーク周波数における音圧の大きさ若しくはピーク周波数を含む特徴的なパターンの広がりは、ブレード42と風との相対速度の変化、又は、乱流の発生によって変化することがある。解析部12は、収音装置20によってブレード42が1回転する周期で同じ特徴音を複数回にわたって検出した場合に、各回に検出した特徴音の音響情報を互いに比較することによって、風の変化又は乱流の発生による影響を特徴音から低減して、特徴音を発する部位の状態の変化の検出精度を向上できる。
【0045】
解析部12は、他のパターンとして、周波数が低い領域に存在するパターン55を検出してよい。解析部12は、パターン55を検出した場合、検出対象の周辺に存在する変電設備の音、又は、海岸若しくは海上の波の音等を検出していると判定してよい。解析部12は、他のパターンとして、周波数が高い領域に存在するパターン56を検出してよい。解析部12は、パターン56を検出した場合、検出対象の周辺で吹いている風の音、又は、航空機の騒音等を検出していると判定してよい。
【0046】
解析部12は、図8に例示されるように、粒状の特徴パターン57を検出してよい。解析部12は、ブレード42に対応するパターンの中で粒状の特徴パターン57を検出した場合、ブレード42で細かい振動(いわゆるビビり)が生じていることを検出してよい。解析部12は、図9に例示されるように、線状の特徴パターン58を検出してよい。解析部12は、ブレード42に対応するパターンの中で線状の特徴パターン58を検出した場合、ブレード42の表面に凹凸が生じていることを検出してよい。
【0047】
解析部12は、粒状又は線状のような形状だけでなく、他の事項に基づいてブレード42の状態を検出してよい。例えば、解析部12は、音響情報のどの周波数帯域にどれだけの長さの時間で特徴的なパターンが現れているかに基づいて、ブレード42の状態を検出してよい。解析部12は、音響情報のどの周波数帯域にどれだけの長さの時間で特徴的なパターンが現れているかを、音響情報の画像における特徴的なパターンの面積として算出し、算出した特徴的なパターンの面積に基づいて、ブレード42の状態を検出してよい。解析部12は、特徴的なパターンに含まれる周波数成分の大きさ(音圧の大きさ、又は、成分の大きさをグレースケールで表した場合の画素の色の濃さ)に基づいて、ブレード42の状態を検出してよい。
【0048】
解析部12は、ブレード42の通過と同期しない音響情報を、ブレード42以外の周辺の環境で発生する音と認識してよいし、検出対象としてのブレード42の少なくとも一部に鳥又は飛来物等が衝突した音と認識してもよい。
【0049】
<特徴的なパターンの分類>
音響情報を表現する画像に含まれるパターンは、検出対象の状態を表す区分と、検出対象の状態に関係しない区分とに分類される。検出対象の状態を表す区分は、検出対象の状態が正常であることを表す区分と、検出対象の状態が異常であることを表す区分とに更に分類される。検出対象の状態が異常であることを表す区分は、検出対象で発生している異常の態様を表す区分に更に分類される。検出対象の状態に関係しない区分は、検出対象が存在する環境の風若しくは波等の自然の音を表す区分と、検出対象の周辺で発生している人工の音を表す区分とに更に分類される。人工の音を表す区分は、自動車が走行する音、船舶が航行する音、又は、航空機が飛行する音等の種々の人工の音を表す区分に更に分類されてよい。区分は、これらの例に限られない。
【0050】
解析部12は、区分をあらかじめ設定しておき、検出したパターンを設定した区分に分類してよい。解析部12は、パターンを分類した区分が検出対象の状態を表す場合、その区分が表す状態を特徴的なパターンを検出したときの検出対象の状態として検出してよい。解析部12は、例えば、特徴的なパターンをブレード42の表面に存在する穴を表す区分に分類した場合、ブレード42の表面に穴が存在することを検出対象の状態として検出してよい。解析部12は、例えば、特徴的なパターンを検出対象の状態に関係しない区分又は検出対象の状態が正常であることを表す区分に分類した場合、検出対象の状態を異常になっていない状態として検出してよい。
【0051】
解析部12は、特徴的なパターンの区分と検出対象の状態とを対応づけたデータをあらかじめデータベースに登録しておいてよい。解析部12は、データベースに登録されている区分に特徴的なパターンを分類してよい。データベースを用いて特徴的なパターンを分類することによって、特徴的なパターンの分類精度が向上する。解析部12は、分類した区分に対応づけられている状態を検出対象の状態として検出してよい。特徴的なパターンの分類精度が高くなった上で検出対象の状態を検出することによって、検出対象の状態の検出精度が向上する。データベースは、記憶部14に格納されてよいし、状態検出装置10に接続される外部の記憶装置に格納されてもよい。
【0052】
データベースは、風車40のブレード42の個体毎に生成されてよい。ブレード42の個体毎の修理履歴又は製造時の部品の誤差若しくは組み立て時の誤差等の要因によって、各ブレードの状態が異常である場合のパターンがブレード42毎に異なることがある。解析部12は、ブレード42毎に修理直後の音を収音装置20で測定して波形を取得したり、解析部12によって音響情報の画像から特徴的なパターンを抽出したりすることによって、ブレード42毎に修理跡の情報を正常なパターンとしてデータベースに登録してよい。
【0053】
データベースは、複数のブレード42で共通に生成されてよい。複数のブレード42で共通のデータベースが生成される場合、共通のデータベースにおいて、上述したブレード42の個体差が考慮されなければ、各ブレード42の音響情報を表現する画像に含まれる特徴的なパターンがブレード42の正常な状態に対応する場合でも、解析部12は、ブレード42の状態を異常な状態と判定することがある。解析部12は、逆に、特徴的なパターンがブレード42の異常な状態に対応する場合でも、ブレード42の状態を正常な状態と判定することがある。つまり、ブレード42の個体差によって、特徴的なパターンに対応する状態を正しく認識できる割合(認識率)が低下し得る。解析部12は、認識率を維持できるように、風車40の新規運転開始時、又は、ブレード42の修理後の運転再開時に、同一又は類似のパターンが正常な状態又は異常な状態に対応するブレード42を1つのグループとして、そのグループに含まれるブレード42について共通する特徴的なパターンを標準パターンとして共通のデータベースを生成してよい。
【0054】
解析部12は、特徴的なパターンをどの区分に分類するかを表す教師データを用いて機械学習を行うことによって、特徴的なパターンを分類する学習済みモデルを生成してよい。解析部12は、特徴的なパターンを分類するための学習済みモデルを外部装置から取得してもよい。解析部12は、学習済みモデルを用いて特徴的なパターンを分類してよい。
【0055】
検出対象としてのブレード42の正常な状態は、種々の状態を含む。例えば、正常な状態は、ブレード42を修理又は交換したときの状態を含んでよい。解析部12は、検出対象としてのブレード42が正常な状態であるときにブレード42から生じる音を測定した音響情報を取得してよい。解析部12は、ブレード42が正常な状態であるときの音響情報に含まれる種々のパターンを、正常な状態又は異常な状態に対応づけてデータベースに登録してよい。検出対象としてのブレード42が正常な状態であるときの音響情報に含まれるパターンは、正常パターンとも称される。解析部12は、正常パターンを、ブレード42の正常な状態に対応づけてデータベースに登録してよい。解析部12は、データベースに既に登録されていた正常パターンをそのまま残して新たな正常パターンを追加することによってデータベースを更新してよい。解析部12は、データベースに既に登録されていた正常パターンを新たな正常パターンで置き換えることによってデータベースを更新してもよい。ブレード42の状態が変化した場合でもブレード42が正常な状態であるとわかっている場合の音響情報に含まれるパターンを正常パターンとして新たにデータベースに登録することによって、例えば修理跡に起因して発生する音に対応するパターンが誤って異常として検出されなくなる。その結果、検出対象の状態の検出精度が向上する。
【0056】
解析部12は、ブレード42の音響情報に含まれるパターンの中から、正常パターンに対する差分を有するパターンを抽出してよい。解析部12は、正常パターンに対する差分を有するパターンを抽出できた場合に、ブレード42の状態が正常な状態でないことを検出してよい。ブレード42の状態が正常な状態でないことは、例えば、ブレード42の表面に傷がついていることを含んでよい。
【0057】
解析部12は、ブレード42の音響情報から抽出したパターンが正常パターンに該当するか判定するために、抽出したパターンと正常パターンとの差分を数値として算出してよい。解析部12は、差分を表す数値が差分閾値未満である場合に特徴的なパターンで表される音が発生した部位の状態が正常であると検出してよい。解析部12は、差分を表す数値が差分閾値以上である場合に特徴的なパターンで表される音が発生した部位の状態が異常であると検出してよい。このようにすることで、検出対象の状態の判定基準が明確になる。その結果、状態の検出精度が向上する。
【0058】
解析部12は、ブレード42の音響情報に含まれるパターンの、正常パターンに対する差分を算出せずに、ブレード42の状態が正常な状態であるか判定してもよい。例えば、解析部12は、検出対象としてのブレード42が正常な状態でないときの音響情報に含まれるパターン、又は、ブレード42の状態が異常な状態であるときの音響情報に含まれるパターンを、異常パターンとしてデータベースに登録してよい。解析部12は、ブレード42の音響情報に含まれるパターンが異常パターンに一致する場合に、ブレード42の状態が正常な状態でない、又は、ブレード42の状態が異常な状態であると判定してよい。
【0059】
人工の音は、種々の原因で発生する。解析部12は、通常時に発生することがわかっている作業音等の特徴的なパターンを正常パターンとしてデータベースに登録してよい。解析部12は、正常パターンに該当しない特徴的なパターンを検出した場合、例えば検出対象の近辺における発雷を検出してよい。解析部12は、正常パターンに該当しない特徴的なパターンを検出した場合、ブレード42に鳥又は飛来物等が衝突したと判定してよい。解析部12は、正常パターンに該当しない特徴的なパターンを検出した場合、検出対象としてのブレード42を備える風車40の近辺に不審者の侵入等の異常な事象が発生したと判定してよい。
【0060】
学習済みモデルは、検出対象としてのブレード42が正常な状態であるときの種々の状態に対応する特徴的なパターンが正常な状態を表す区分に分類されるように生成されてよい。
【0061】
解析部12は、第1方向から収音装置20に到来する音の成分を表す第1音響情報と第2方向から収音装置20に到来する音の成分を表す第2音響情報とに基づいて検出対象の状態を検出してよい。例えば、解析部12は、第2音響情報からノイズ成分を抽出し、抽出したノイズ成分を第1音響情報から除去した情報に基づいて検出対象の状態を検出してよい。ノイズ成分を除去した音響情報に基づいて検出対象の状態を検出することによって、検出対象の状態の検出精度が向上する。解析部12は、検出対象から到来する音の成分を表す第1音響情報だけに基づいて特徴的なパターンを検出してよい。このようにすることで、背景音等の検出対象以外で発生する音の影響が低減され得る。その結果、検出対象の状態の検出精度が向上する。
【0062】
解析部12は、音響情報のうち所定の周波数帯の音響情報をバンドパスフィルタで除去したり減衰させたりしてよい。解析部12は、例えばブレード42の音の周波数以外の周波数帯の音響情報をバンドパスフィルタで除去したり減衰させたりしてよい。このようにすることで、ブレード42の音響情報に基づくブレード42の状態の検出精度が向上する。
【0063】
解析部12は、音響情報の周波数成分の時間変化のデータに対してリファレンスを利用したフィルタリングを実行してよい。具体的に、解析部12は、ある時間における周波数スペクトルから所定時間だけ過去の周波数スペクトルを差し引いた差分スペクトルを算出してよい。差分スペクトルにおいて、背景音の周波数スペクトルが除去されたり低減されたりする。その結果、背景音に含まれていた突発的な音の検出精度が向上する。
【0064】
<トラッキング>
解析部12は、時間の経過とともに変化するピーク周波数を監視して一連の事象としてとらえてよい。解析部12は、一連の事象から、ピーク周波数を含む特徴的なパターンとして検出する音圧の閾値、一連の事象の開始時若しくは終了時のピーク周波数、一連の事象の継続時間、又は、特徴的なパターンの広がり具合を算出してよい。広がり具合は、音圧の閾値以上となった周波数の幅を意味する。
【0065】
<状態の通知>
解析部12は、特徴的なパターンを分類した区分が表す状態を、状態検出装置10の検出結果として表示装置30に出力してよい。表示装置30は、状態検出装置10の検出結果を表示することによって、検出対象としてのブレード42を備える風車40を管理する主体に通知してよい。解析部12は、状態検出装置10の検出結果を、表示装置30に限られず、例えばスピーカ又はライト等の他の種々の装置に出力してよい。スピーカは、音声の出力によって、検出対象としてのブレード42の状態を、ブレード42を備える風車40の管理主体に通知してよい。ライトは、発光したり発光状態を変化させたりすることによって、検出対象としてのブレード42の状態を、ブレード42を備える風車40の管理主体に通知してよい。
【0066】
<状態検出方法の手順例>
状態検出装置10の解析部12は、図10に例示されるフローチャートの手順を含む状態検出方法を実行してよい。状態検出方法は、解析部12を構成するプロセッサに実行させる状態検出プログラムとして実現されてもよい。状態検出プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0067】
解析部12は、検出対象としてのブレード42の音響情報を取得する(ステップS1)。解析部12は、音響情報の周波数成分又は周波数成分の時間変化を表す画像を解析する(ステップS2)。解析部12は、音響情報の画像からパターンを検出したか判定する(ステップS3)。解析部12は、音響情報の画像からパターンを検出しない場合(ステップS3:NO)、図10のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0068】
解析部12は、音響情報の画像からパターンを検出した場合(ステップS3:YES)、検出したパターンがブレード42の音に対応するパターンに該当するか判定する(ステップS4)。言い換えれば、解析部12は、検出したパターンがブレード42から生じている音を表す区分に分類されるか判定する。
【0069】
解析部12は、検出したパターンがブレード42の音に対応するパターンに該当する場合(ステップS4:YES)、検出したパターンが正常パターンと一致するか判定する(ステップS5)。言い換えれば、解析部12は、パターンが検出対象としてのブレード42の状態が正常であることを表す区分に分類されるか判定する。解析部12は、検出したパターンが正常パターンと一致する場合(ステップS5:YES)、検出対象としてのブレード42の状態が異常でないと判定して図10のフローチャートの手順の実行を終了する。解析部12は、検出したパターンが正常パターンと一致しない場合(ステップS5:NO)、検出対象としてのブレード42の状態が異常であると判定し、表示装置30によって検出対象としてのブレード42の状態が異常であることを通知する(ステップS6)。解析部12は、ステップS6の手順の実行後、図10のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0070】
解析部12は、検出したパターンがブレード42の音に対応するパターンに該当しない場合(ステップS4:NO)、検出したパターンを環境音の区分に分類し、分類した区分に対応づけられている音の種類を表示装置30によって通知する(ステップS7)。解析部12は、ステップS7の手順の実行後、図10のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0071】
<小括>
以上述べてきたように、本実施形態に係る状態検出システム1において、状態検出装置10は、検出対象で生じた音に基づいて生成された音響情報の周波数成分の時間変化を表す画像から特徴的なパターンを検出する。状態検出装置10は、検出した特徴的なパターンを種々の状態を表す区分に分類し、区分が表す状態を検出する。このようにすることで、種々の状態が互いに区別して検出される。その結果、種々の状態の検出精度が向上する。
【0072】
状態検出システム1によって、検出対象であるブレード42を備える風車40を管理する主体(例えば作業員等)が現地にいなくても検出対象の状態が把握される。その結果、作業員等が検出対象の現場を訪問する頻度及び訪問コストが低減される。また、常時監視が実現される。常時監視によって検出対象の安全性が向上する。
【0073】
状態検出システム1によって、状態の判定基準が明確になる。また、音響情報の解析結果が数値として明確になる。その結果、検出対象の安全性が向上する。
【0074】
状態検出システム1は、音響情報を保存できる。作業員等が保存された音響情報と状態検出システム1による検出対象の状態の検出結果とを合わせて確認することによって、作業員等のスキル又は知見が高められる。
【0075】
(他の実施形態)
以下、他の実施形態が説明される。
【0076】
<瞬時の周波数成分に基づく状態の検出>
解析部12は、上述してきたように、音響情報の周波数成分の時間変化を表す画像に基づいて検出対象の状態を検出してよい。解析部12は、音響情報の、ある時間における瞬時の周波数成分を表す周波数スペクトルに基づいて検出対象の状態を検出してもよい。解析部12は、例えば、周波数スペクトルの中で特定の周波数成分の音圧が閾値を超えた場合に、検出対象の状態が特定の状態になっていると判定してよい。
【0077】
<検出対象の他の例>
状態検出システム1は、検出対象として、上述してきた風車40のブレード42に限られず他の種々の装置又は設備の状態を検出してよい。状態検出システム1は、検出対象として、例えば、音を発生する装置又は設備の状態を検出してよい。状態検出システム1は、検出対象として、例えば、周期的なパターンで音を発生するファン又はブロア等の状態を検出してよい。状態検出システム1は、検出対象として、例えば、離散的又は突発的なパターンで音を発生するコンプレッサ等の状態を検出してよい。
【0078】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 状態検出システム
10 異常検出装置(12:解析部、14:記憶部、16:インタフェース)
20 収音装置
30 表示装置
40 検出対象(42:ブレード、44:ナセル、46:支柱、48:異常部位)
51~53、55、56 パターン
54、57、58 特徴パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10