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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074067
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】打込み工具
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/06 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
B25C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185132
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 美隆
【テーマコード(参考)】
3C068
【Fターム(参考)】
3C068AA01
3C068BB01
3C068CC07
3C068CC09
3C068JJ13
(57)【要約】
【課題】フライホイール式の打込み工具の戻し機構に関する改善を提供する。
【解決手段】打込み工具は、工具本体と、モータと、フライホイールと、ドライバと、戻しローラとを備えている。モータは、工具本体に支持されている。フライホイールは、工具本体に回転可能に支持されている。フライホイールは、モータによって回転駆動されるように構成されている。ドライバは、初期位置と打込み位置との間で移動可能である。ドライバは、フライホイールから伝達された回転エネルギによって直線状に移動することで、打込み位置で打込み材を加工材に打込むように構成されている。戻しローラは、ドライバに選択的に接触して回転することで、ドライバを打込み位置から初期位置へ移動させるように構成されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体と、
前記工具本体に支持されたモータと、
前記工具本体に回転可能に支持され、前記モータによって回転駆動されるように構成されたフライホイールと、
初期位置と打込み位置との間で移動可能なドライバであって、前記フライホイールから伝達された回転エネルギによって移動軸に沿って直線状に移動することで、前記打込み位置で打込み材を加工材に打込むように構成されたドライバと、
前記ドライバに選択的に接触して回転することで、前記ドライバを前記打込み位置から前記初期位置へ移動させるように構成された戻しローラとを備えた打込み工具。
【請求項2】
請求項1に記載の打込み工具であって、
前記戻しローラは、前記フライホイールに選択的に接触し、前記フライホイールによって回転されるように構成されていることを特徴とする打込み工具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の打込み工具であって、
前記移動軸に対して移動可能な押圧ローラであって、常時には前記ドライバから離間しており、少なくとも前記ドライバが前記打込み材を打ち込むときには、前記ドライバに接触して前記ドライバを前記フライホイールに押し付けるように構成された押圧ローラを更に備え、
前記戻しローラは、前記押圧ローラの移動に応じて移動するように構成されていることを特徴とする打込み工具。
【請求項4】
請求項3に記載の打込み工具であって、
前記押圧ローラを支持する支持体を更に備え、
前記戻しローラは、前記支持体に動作可能に連結され、前記支持体とともに移動可能であることを特徴とする打込み工具。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の打込み工具であって、
前記押圧ローラは、前記ドライバが前記初期位置から前記打込み位置へ移動する打込み過程の少なくとも一部において、前記ドライバをフライホイールに押し付けるように構成されており、
前記戻しローラは、前記打込み過程では、前記ドライバにも前記フライホイールにも接触しないように構成されていることを特徴とする打込み工具。
【請求項6】
請求項5に記載の打込み工具であって、
前記押圧ローラは、前記ドライバが前記打込み位置から前記初期位置へ移動する戻り過程では、前記ドライバから離間するように構成されており、
前記戻しローラは、前記戻り過程では、前記ドライバ及び前記フライホイールの間で、前記ドライバ及び前記フライホイールに接触して回転するように構成されていることを特徴とする打込み工具。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1つに記載の打込み工具であって、
前記ドライバに対して前記戻しローラとは反対側に配置され、前記ドライバが前記打込み位置から前記初期位置へ移動する戻り過程の少なくとも一部で前記ドライバに接触して回転するように構成された補助ローラを更に備えたことを特徴とする打込み工具。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1つに記載の打込み工具であって、
前記戻しローラの移動を案内するように構成されたガイド部を更に備えたことを特徴とする打込み工具。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1つに記載の打込み工具であって、
前記移動軸は、前記打込み工具の前後方向を規定し、
前記ドライバは、前記初期位置から前記打込み位置へ前方に向かって移動するように構成されており、
前記ドライバが前記初期位置にあるとき、前記ドライバを前記移動軸に交差する方向に付勢することで、前記ドライバを前記移動軸に対して傾斜させるように構成された付勢部材と、
前記ドライバが前記初期位置にあるとき、前記ドライバの前端の前側に配置されたストッパとを更に備えたことを特徴とする打込み工具。
【請求項10】
請求項7に直接的又は間接的に従属する請求項9に記載の打込み工具であって、
前記ドライバが前記初期位置にあるとき、前記ドライバの中間部に接触する支柱を更に備え、
前記付勢部材は、前記ドライバの後端部を付勢することで、前記ドライバを、前記支柱周りに回動させるように構成されており、
前記ストッパは、前記補助ローラであることを特徴とする打込み工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、打込み工具に関する。より詳細には、本開示は、ドライバによって打込み材を加工材に打ち込むフライホイール式の打込み工具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、フライホイール式の打込み工具は、モータと、フライホイールと、ドライバと、戻し機構とを備える。フライホイールは、モータによって回転駆動され、回転エネルギを蓄積する。ドライバは、フライホイールから伝達された回転エネルギによって直線状に移動し、打込み材を打撃して加工材に打ち込む。戻し機構は、打込み材を打ち込んだ後のドライバを、初期位置まで戻すように構成されている。例えば、特許文献1は、ドライバの両側に延在するレールと、レールに外装された圧縮コイルバネを含む戻し機構を開示する。この戻し機構は、ドライバの打込み時に圧縮された圧縮コイルバネの弾性力を利用して、ドライバを初期位置に戻すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開許第2013/0233903号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の戻し機構は、圧縮コイルバネの耐久性の低下を抑えるために、数本のワイヤを縒り合せて形成された縒り線バネを採用している。このため、この戻し機構は、比較的大型である。
【0005】
上述の状況に鑑み、本開示は、フライホイール式の打込み工具の戻し機構に関する改善を提供することを、非限定的な1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の非限定的な1つの態様によれば、工具本体と、モータと、フライホイールと、ドライバと、戻しローラとを備えた打込み工具が提供される。モータは、工具本体に支持されている。フライホイールは、工具本体に回転可能に支持されている。フライホイールは、モータによって回転駆動されるように構成されている。ドライバは、初期位置と打込み位置との間で移動可能である。ドライバは、フライホイールから伝達された回転エネルギによって移動軸に沿って直線状に移動することで、打込み位置で打込み材を加工材に打込むように構成されている。戻しローラは、ドライバに選択的に接触して回転することで、ドライバを打込み位置から初期位置へ移動させるように構成されている。
【0007】
本態様の打込み工具では、ドライバは、フライホイールから伝達された回転エネルギで打込み材を打ち込み、戻しローラによって初期位置まで戻される。戻しローラは、ドライバに選択的に接触して回転することで、ドライバを移動させるように構成されている。よって、バネの弾性力を利用する従来の戻し機構に比べて簡易で耐久性に優れた戻し機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】打込み工具の右側面図である。
図2】打込み工具の断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】フライホイール、ドライバ、ドライバ作動機構、戻しローラの斜視図である。
図5】プランジャ、レバー、ドライバの配置の説明図である。
図6】打込み工具の動作の説明図であって、ドライバ作動機構の初期状態を示す。
図7図6のVII-VII線における断面図である。
図8】工具本体の左側壁部の斜視図である。
図9】打込み工具の動作の説明図であって、ドライバが打込み準備位置にある状態を示す。
図10図9及び図14のX-X線における断面図である。
図11図9及び図14のXI-XI線における断面図である(図9に対応する押圧ローラは破線で示され、図14に対応する押圧ローラは実線で示されている)。
図12図11に対応する断面図であって、初期係合部が摩耗した状態を示す。
図13】補助作動機構のレバーが動作するときの打込み工具の動作の説明図である。
図14】打込み工具の動作の説明図であって、ドライバが打撃位置にある状態を示す。
図15】打込み工具の動作の説明図であって、ドライバが打込み位置にある状態を示す。
図16】打込み工具の動作の説明図であって、戻しローラによってドライバが移動される状態を示す。
図17図16のXVII-XVII線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の非限定的な一実施形態において、戻しローラは、フライホイールに選択的に接触し、フライホイールによって回転されるように構成されていてもよい。この実施形態によれば、フライホイールの回転力を利用した効率的な戻し機構を実現することができる。
【0010】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、打込み工具は、ドライバの移動軸に対して移動可能な押圧ローラを更に備えてもよい。押圧ローラは、常時にはドライバから離間しており、少なくともドライバが打込み材を打ち込むときには、ドライバに接触してドライバをフライホイールに押し付けるように構成されていてもよい。戻しローラは、押圧ローラの移動に応じて移動するように構成されていてもよい。この実施形態の打込み工具では、押圧ローラがドライバに対して移動することでフライホイールからドライバへの回転エネルギの伝達を可能とする。よって、押圧ローラの移動に戻しローラの移動をリンクさせることで、戻しローラを適切に移動させることができる。
【0011】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、打込み工具は、押圧ローラを支持する支持体を更に備えてもよい。戻しローラは、支持体に動作可能に連結され、支持体とともに移動可能であってもよい。この実施形態によれば、押圧ローラの移動に応じて戻しローラを移動させることが可能な合理的な構成が実現される。
【0012】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、押圧ローラは、ドライバが初期位置から打込み位置へ移動する打込み過程の少なくとも一部において、ドライバをフライホイールに押し付けるように構成されていてもよい。戻しローラは、打込み過程では、ドライバにもフライホイールにも接触しない(つまり、ドライバ及びフライホイールから離間した状態にある)ように構成されていてもよい。この実施形態によれば、打込み過程でフライホイールやドライバに余分な負荷がかかるのを防ぐことができる。
【0013】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、押圧ローラは、ドライバが打込み位置から初期位置へ移動する戻り過程では、ドライバから離間するように構成されていてもよい。戻しローラは、戻り過程では、ドライバ及びフライホイールの間で、ドライバ及びフライホイールに接触して回転するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、戻り過程では押圧ローラからドライバに余分な負荷がかかるのを防ぎつつ、戻しローラがフライホイールの回転力を受けて効率的にドライバを初期位置に移動させることができる。
【0014】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、打込み工具は、ドライバに対して戻しローラとは反対側に配置された補助ローラを更に備えてもよい。補助ローラは、ドライバが打込み位置から初期位置へ移動する戻り過程の少なくとも一部でドライバに接触して回転するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、戻し過程において、戻しローラと補助ローラとがドライバを安定して移動させることができる。
【0015】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、打込み工具は、戻しローラの移動を案内するように構成されたガイド部を更に備えていてもよい。なお、ガイド部は、工具本体に設けられてもよいし、工具本体に対して実質的に移動不能な部材に設けられてもよい。この実施形態によれば、戻しローラをより正確に移動させることができる。
【0016】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、移動軸は、打込み工具の前後方向を規定し、ドライバは、初期位置から打込み位置へ前方に向かって移動するように構成されていてもよい。打込み工具は、付勢部材と、ストッパとを更に備えてもよい。付勢部材は、ドライバが初期位置にあるとき、ドライバを移動軸に交差する方向に付勢することで、ドライバを移動軸に対して傾斜させるように構成されていてもよい。ストッパは、ドライバが初期位置にあるとき、ドライバの前端の前側に配置されてもよい。この実施形態によれば、ストッパが、初期位置にあるドライバが誤って前方に移動されようとしたときに、ドライバの移動を妨げることができる。
【0017】
上記実施形態に加え、あるいは上記実施形態に代えて、打込み工具は、ドライバが初期位置にあるとき、ドライバの中間部に接触する支柱を更に備えてもよい。付勢部材は、ドライバの後端部を付勢することで、ドライバを、支柱周りに回動させるように構成されていてもよい。ストッパは、補助ローラであってもよい。この実施形態によれば、支柱により、初期位置におけるドライバの姿勢を安定させることができ、また、補助ローラをストッパとして有効活用することができる。
【0018】
以下、図面を参照して、本開示の代表的且つ非限定的な実施形態に係る打込み工具1について、具体的に説明する。
【0019】
まず、図1及び図2を参照して、打込み工具1の概略構成について説明する。
【0020】
打込み工具1は、直線状に移動するドライバ4を用いて、加工材に打込み材を打ち込むことが可能な工具である。打込み工具1は、例えば、釘打ち機、タッカ、ステープルガンとして具現化されうる。打込み工具1の種類に応じて、打込み材として、例えば、釘、鋲、ピン、ステープルが使用されうる。なお、本実施形態は、釘打ち機として構成された打込み工具1を例示する。
【0021】
打込み工具1の外郭は、工具本体10と、ノーズ部12と、マガジン17と、ハンドル14とを主体として形成されている。
【0022】
工具本体10は、中空体であって、本体ハウジング、フレームとも称されうる。工具本体10には、モータ21、フライホイール3、ドライバ4等が収容されている。フライホイール3は、モータ21によって回転駆動され、回転エネルギを蓄積する。ドライバ4は、フライホイール3の外周に対向するように配置されている。ドライバ4は、フライホイール3と係合するのに応じてフライホイール3から伝達される回転エネルギによって、移動軸A1に沿って直線状に移動し、打込み材を加工材に打ち込む。
【0023】
ノーズ部12は、移動軸A1の延在方向(以下、単に移動軸方向ともいう)における工具本体10の一端に、工具本体10に対して移動不能に連結され、移動軸A1に沿って延びる。ノーズ部12は、工具本体10との連結側の端とは反対側の端に、開口(射出口120)を有する。工具本体10及びノーズ部12内には、ドライバ4が通過するドライバ通路100が規定されている。ドライバ通路100は、射出口120まで移動軸A1に沿って延びている。
【0024】
また、ノーズ部12には、コンタクトアーム13が配置されている。コンタクトアーム13は、移動軸A1に実質的に平行に、ノーズ部12に対して移動可能である。コンタクトアーム13は、その先端が工具本体10から離れる方向に付勢されている。コンタクトアーム13の先端は、常時には射出口120よりも突出しており、加工材に押し付けられるのに応じて、工具本体10に近づく方向に押し込まれる。工具本体10には、コンタクトアームスイッチ131が配置されている。コンタクトアームスイッチ131は、常時にはオフ状態で維持されている。コンタクトアームスイッチ131は、コンタクトアーム13に動作可能に連結されており、コンタクトアーム13が押し込まれるのに応じてオン状態とされるように構成されている。
【0025】
マガジン17は、複数の打込み材を充填可能に構成されており、ノーズ部12に装着されている。マガジン17に充填された打込み材(図示せず)は、釘送り機構(図示せず)によって、ドライバ通路100に一本ずつ供給される。
【0026】
ハンドル14は、中空の筒状体であって、工具本体10から、移動軸A1と交差する方向に突出している。ハンドル14の基端部(工具本体10に接続された端部)には、使用者による押圧操作が可能に構成されたトリガ140が支持されている。ハンドル14内には、トリガスイッチ141が配置されている。トリガスイッチ141は、常時にはオフ状態で維持され、トリガ140の押圧操作に応じてオン状態とされるように構成されている。
【0027】
ハンドル14の先端部(基端部とは反対側の端部)の内部には、打込み工具1の動作を制御するように構成されたコントローラ20が配置されている。コントローラ20は、モータ21、コンタクトアームスイッチ131、トリガスイッチ141等と電気的に接続されている。また、ハンドル14の先端部には、バッテリ装着部15が設けられている。バッテリ装着部15には、モータ21等に電力を供給する充電式のバッテリ19が取り外し可能に装着されている。但し、打込み工具1は、バッテリ19ではなく、外部交流電源から電力供給を受けてるように構成されてもよい。
【0028】
以下、打込み工具1の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、移動軸方向(図1の左右方向)を打込み工具1の前後方向と規定する。前後方向において、射出口120が設けられている側(図1の右側)を打込み工具1の前側、反対側(図1の左側)を後側と規定する。また、移動軸A1に直交し、ハンドル14の延在方向に概ね対応する方向(図1の上下方向)を、打込み工具1の上下方向と規定する。上下方向において、ハンドル14の基端部側(図1の上側)を上側、ハンドル14の先端部側(図1の下側)を下側と規定する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と規定する。
【0029】
まず、工具本体10内に配置される要素について説明する。
【0030】
図1図3及び図4に示すように、工具本体10の内部には、モータ21、フライホイール3、ドライバ4、ドライバ作動機構5、補助作動機構68、戻しローラ81が配置されている。
【0031】
まず、モータ21について説明する。図1に示すように、モータ21は、工具本体10の右下部内で工具本体10に支持されている。なお、本実施形態では、ブラシレスDCモータが採用されているが、ACモータやブラシモータが採用されてもよい。モータ21の出力シャフト211は、移動軸A1と直交する軸に平行に(具体的には左右方向)に延在する。なお、本実施形態では、コントローラ20は、コンタクトアームスイッチ131及びトリガスイッチ141の何れか一方がオンとされるのに応じて、モータ21の駆動を開始する。また、コントローラ20は、コンタクトアームスイッチ131及びトリガスイッチ141が何れもオフとされるのに応じて、モータ21の駆動を停止する。
【0032】
フライホイール3について説明する。フライホイール3は、円柱状の部材であって、典型的には、金属(例えば、鉄、鉄合金)で形成されている。図3及び図4に示すように、フライホイール3は、移動軸A1の真下で、工具本体10に対して回転軸A2周りに回転可能に支持されている。フライホイール3は、モータ21(詳細には出力シャフト211)に動作可能に連結されており、モータ21によって回転駆動され、回転エネルギを蓄積する。なお、本実施形態では、フライホイール3は、モータ21の左側に、モータ21と同軸状に配置されているが、モータ21とフライホイール3の位置関係はこれに限定されるものではなく、適宜選択されうる。例えば、モータ21とフライホイール3とは、夫々の回転軸が互いから離間して平行に延びるように配置されてもよい。
【0033】
フライホイール3の外周には、係合溝33が設けられている。係合溝33は、フライホイール3の軸方向の中央部において、フライホイール3の全周を取り巻く環状の溝である。係合溝33は、ドライバ4と摩擦係合するように構成されている。より詳細には、係合溝33は、ドライバ4がフライホイール3に押し付けられたときに、ドライバ4(本体部40)の下部(係合凸部45)と部分的に接触して摩擦係合する(以下、単に「係合する」ともいう)ように構成されている。
なお、「摩擦係合」とは、2つの部材が互いに接触し、摩擦力によって係合すること(滑り状態を含む)をいう。ドライバ4とフライホイール3との摩擦係合により、フライホイール3からドライバ4への回転エネルギの伝達が可能となる。
【0034】
ドライバ4について説明する。ドライバ4は、典型的には、金属(例えば、鉄、鉄合金)で形成されている。図3及び図4に示すように、ドライバ4は、長尺状の部材であって、左右対称形状を有する。ドライバ4は、その長軸が実質的に移動軸A1に沿って(つまり、前後方向に)ドライバ通路100内を移動するように配置されている。本実施形態のドライバ4は、本体部40と、本体部40の後部から左方及び右方に突出する一対のアーム部47とを含む。
【0035】
本体部40は、長軸を有する棒状の部分である。本体部40は、長軸方向(前後方向)において、部分的に高さ(上下方向の厚み)が変化するように構成されている。具体的には、本体部40は、一定の高さを有し、前端401から後方へ延びる前端部41と、前端部41よりも高さが大きく、前端部41から後方へ延びるローラ当接部43とを含む。
【0036】
ローラ当接部43の上面は、ドライバ4が打込み材を打ち込む動作(打込み動作)を行う打込み過程の少なくとも一部において、後述する押圧ローラ53に当接する。ローラ当接部43の前端部は、後方に向けて高さ(上下方向の厚み)が漸増するように構成されている。以下、この部分をカム部431という。ローラ当接部43の後端部は、後方に向けて高さが減少するように構成されている。以下、この部分をリリース部435という。ローラ当接部43のうち、カム部431とリリース部435の間の部分は、概ね均一の厚みを有する。以下、この部分をストレート部433という。
【0037】
また、ドライバ4の下部は、左右方向の中心が最も下方に突出する凸形状を有する。上述のように、ドライバ4の下部は、ドライバ4がフライホイール3に押し付けられたときに、フライホイール3の係合溝33と部分的に摩擦係合するように構成されている。また、詳細は後述するが、ドライバ4の下部は、選択的に戻しローラ81の係合溝813とも部分的に摩擦係合可能である。以下では、ドライバ4の下部を係合凸部45という。
【0038】
ドライバ4は、ドライバ作動機構5が作動していない初期状態では、初期位置で保持されている。図3及び図4に示すように、本実施形態では、ドライバ4の初期位置は、ローラ当接部43の後端部(リリース部435)が付勢部材86に当接し、且つ、前端401が補助ローラ85に当接する位置に設定されている。
【0039】
より詳細には、付勢部材86は、ドライバ4の後端部の上方に配置され、ドライバ4の後端部を下方に付勢する。本実施形態では、付勢部材86には板バネが採用されているが、他の種類のバネが採用されてもよい。付勢部材86(板バネ)の一端は、工具本体10に固定されている。付勢部材86の他端は、ドライバ4のローラ当接部43の後端部(リリース部435)に当接して、ドライバ4の後端部を下方に付勢する。
【0040】
ドライバ4の中央部(カム部431よりも後方の部分)の下側には、支柱87が配置されている。支柱87は、長尺状の円筒部材であって、支持シャフト871によって、左右方向に延びる軸周りに回転可能に支持されている。支持シャフト871は、左右方向に延在し、左端部及び右端部において、工具本体10に支持されている。なお、支柱87は、支持ローラと言い換えられてもよい。
【0041】
付勢部材86は、ドライバ4を、前端401が上方に移動するように、支柱87周りに(支柱87との接触点を支点として)回動させ、移動軸A1に対してドライバ4を傾斜させている。このため、初期位置にあるドライバ4の後端は、移動軸A1よりも下方に位置し、ドライバ4の前端401は、移動軸A1よりも上方に位置する。ドライバ4は、部分的にドライバ通路100の外に配置されている。なお、ドライバ4の円滑な回動を実現するために、本実施形態では支柱87は回転可能なローラとして構成されているが、支柱87は回転不能な部材(例えば、シャフト、ピン)であってもよい。
【0042】
補助ローラ85は、工具本体10の前端部内で、ドライバ通路100の真上に配置されている。補助ローラ85は、左右方向に延びる軸周りに回転可能に支持されている。ドライバ4が初期位置にあるとき、ドライバ4の前端401は、補助ローラ85に対し、斜め下後方から当接する。このような姿勢でドライバ4を初期位置で保持することで、ドライバ4が誤って前方へ移動されようとしたときにも、補助ローラ85がドライバ4の移動を妨げることができる。つまり、本実施形態の補助ローラ85は、初期位置にあるドライバ4の前方への移動を妨げるストッパとして機能する。
【0043】
詳細は後述するが、ドライバ4は、初期位置から、打込み位置まで前方に移動することで、打込み材を打撃して加工材に打ち込む。なお、本実施形態では、ドライバ4の打込み位置は、ドライバ4のアーム部47が、工具本体10内に支持されたクッション(ストッパ)108に後方から接触する位置である。ドライバ4が打込み位置に配置されると、ドライバ4の前端401は、工具本体10の射出口120よりも前方で加工材に打込み材を打ち込む(図15参照)。
【0044】
ドライバ作動機構5について説明する。図3及び図4に示すように、ドライバ作動機構5は、工具本体10内で、ドライバ4の上方に配置されている。ドライバ作動機構5は、ドライバ4を下方に押圧し、フライホイール3に押し付けることで、フライホイール3からドライバ4への回転エネルギの伝達を可能とするように構成されている。本実施形態のドライバ作動機構5は、工具本体10に回動可能に支持された押圧ユニット50と、押圧ユニット50を所定方向に回動付勢する付勢部材57と、押圧ユニット50を、付勢部材57の付勢力に抗して回動させるように構成されたソレノイド60とを備えている。
【0045】
押圧ユニット50は、支持体51と、ローラホルダ52を介して支持体51に支持された押圧ローラ53と、押圧ローラ53を付勢するように構成された付勢部材55とを含む。
【0046】
支持体51は、工具本体10に回動可能に支持され、且つ、押圧ローラ53(ローラホルダ52)を相対移動可能に支持するように構成されている。より詳細には、支持体51は、支持部511と、フランジ部513と、バネ受け部515と、押圧受け部517とを含む。
【0047】
支持部511は、ローラホルダ52を移動可能に支持する部分である。支持部511は、その前端部において、左右方向に延在する支持シャフト512の回動軸A3周りに回動可能に支持されている。支持シャフト512の両端部は、工具本体10に支持されている。フランジ部513は、フランジを上端に有する円筒状の部分であって、支持部511の上側にネジ514で固定されている。バネ受け部515は、支持部511の前端から前方に突出する部分であって、付勢部材57の一端を受ける。押圧受け部517は、支持部511の後端から突出し、後方に向かうにつれて下方に延びる部分である。押圧受け部517は、ソレノイド60のプランジャ65の前端部(押圧部655)に接触し、プランジャ65からの押圧を受ける。
【0048】
ローラホルダ52は、押圧ローラ53を回転可能に支持する。また、ローラホルダ52は、支持体51の支持部511によって、支持体51に対して概ね上下方向に相対移動可能に支持されている。ローラホルダ52は、環状のバネ受け部521と、バネ受け部521から下方に突出する左右一対の脚部525とを含む。ローラホルダ52は、支持体51の支持部511とフランジ部513のフランジとの間にバネ受け部521が配置され、一対の脚部525が支持部511の下方に延びるように配置されている。
【0049】
押圧ローラ53は、脚部525の下端部に支持されたシャフト526を介して、ローラホルダ52によって回転可能に支持されている。押圧ローラ53の回転軸は、支持体51の回動軸A3と平行に、左右方向に延在する。
【0050】
付勢部材55は、ローラホルダ52のバネ受け部521の上側に配置されている。なお、本実施形態では、付勢部材55には、皿バネが採用されているが、他の種類のバネが採用されてもよい。付勢部材55は、ローラホルダ52のバネ受け部521と、支持部511の上側に固定されたフランジ部513のフランジとの間に、僅かに圧縮された状態で配置されている。
【0051】
以上のような構成により、ローラホルダ52は、支持体51に対して下方、つまり、ドライバ4に近づく方向に付勢されている。押圧ローラ53を上方に押し上げる外力が付与されていない初期状態では、ローラホルダ52は、バネ受け部521の下面が支持部511の上面に接触した状態で保持される。一方、押圧ローラ53が上方に押し上げられると、押圧ローラ53及びローラホルダ52は、付勢部材55を圧縮しつつ、支持体51に対して上方へ移動することができる。
【0052】
付勢部材57は、支持体51、ひいては押圧ユニット50を付勢するように構成されている。本実施形態では、付勢部材57には圧縮コイルバネが採用されているが、他の種類のバネが採用されてもよい。付勢部材57の上端は、工具本体10内に設けられたバネ受け部(凹部)に配置されている。付勢部材57の下端は、支持体51のバネ受け部515の上面に形成された凹部に配置されている。付勢部材57は、常に圧縮されており、押圧ユニット50を、回動軸A3を中心として、支持体51の後端部(押圧受け部517)が概ね上方に移動する方向(右側からみて時計回り方向)に回動するように付勢している。つまり、押圧ユニット50は、押圧ローラ53がドライバ4から離れる方向に付勢されている。
【0053】
ソレノイド60について説明する。ソレノイド60は、コイル61に電流を流すことで発生する磁界を利用して、電気的エネルギを、直線運動の機械的エネルギに転換するように構成された周知の電気部品である。なお、ソレノイド60は、ソレノイドアクチュエータ、リニアソレノイド等とも称されうる。本実施形態では、ソレノイド60は、起動に応じて、支持体51(押圧ユニット50)を、付勢部材57の付勢力に抗して回動させるのに用いられる。また、詳細は後述するが、ソレノイド60は、補助作動機構68の一部としても機能する。なお、ソレノイド60は、コントローラ20に電気的に接続されており、コントローラ20がコイル61への通電(ソレノイド60の起動)を制御する。
【0054】
ソレノイド60は、コイル61と、コイル61を保持するホルダ63と、コイル61の軸線方向に直線状に移動可能なプランジャ65と、付勢部材67とを含む。
【0055】
ホルダ63は、コイル61の軸線(プランジャ65の移動軸)が、ドライバ4の移動軸A1に平行(つまり、前後方向)となるように、移動軸A1の真上で、工具本体10に支持されている。プランジャ65は、ロッド部651と、押圧部655とを含む。ロッド部651は、前後方向に延在しており、その前端部及び後端部は、夫々、コイル61(ホルダ63)から前方及び後方に突出している。押圧部655は、ロッド部651の前端部に連結されている。押圧部655の前端部の下面は、前方へ向かうにつれて上方へ傾斜する傾斜面とされている。付勢部材67は、ホルダ63の後端面と、プランジャ65のフランジ状の後端部との間に介在し、プランジャ65を、コイル61に対して常に後方に付勢している。なお、本実施形態では、付勢部材67には円錐コイルバネが採用されているが、他の種類のバネが採用されてもよい。
【0056】
以上のような構成により、プランジャ65は、ソレノイド60が起動されていないオフ状態にある(つまり、コイル61が通電されていない)ときには、付勢部材67の付勢力によって、その移動可能範囲における最後方位置(以下、初期位置ともいう)で保持される。プランジャ65が最後方位置に配置されているときには、押圧部655の前端部の傾斜面は、支持体51の押圧受け部517の上面に接触し、支持体51の回動を規制している。このとき、押圧受け部517は、その移動可能範囲における最上方位置にある。このときの押圧ユニット50の位置を、押圧ユニット50の初期位置ともいう。押圧ユニット50が初期位置にあるとき、押圧ローラ53は、ドライバ4から離間しており、ドライバ4に接触不能である。
【0057】
一方、ソレノイド60が起動され、オン状態とされると(つまり、コイル61が通電されると)、プランジャ65は、付勢部材67の付勢力に抗して、最後方位置から前方へ移動する。プランジャ65の前方への移動に伴って、押圧部655は、前方に移動しつつ、傾斜面を介して押圧受け部517を下方に押圧する。これに応じて、支持体51、ひいては押圧ユニット50は、付勢部材57の付勢力に抗して、押圧受け部517が下方に移動する方向(右側から見て反時計回り方向)に回動される。このように、プランジャ65は、ソレノイド60がオフ状態からオン状態とされるのに応じて最後方位置(初期位置)から前方へ移動し、押圧ユニット50を、押圧ローラ53がドライバ4に近づく方向に回動させるように構成されている。
【0058】
補助作動機構68について説明する。補助作動機構68は、ドライバ4に対し、選択的に前方へ向かう推進力を与えるように構成されている。図3図5に示すように、本実施形態の補助作動機構68は、レバー69と、付勢部材697と、前述のソレノイド60とを含む。
【0059】
レバー69は、工具本体10内で移動可能に支持された可動部材である。本実施形態のレバー69は、回動式のレバーとして構成されている。レバー69は、支持部691と、一対のアーム部693とを含む。支持部691は、プランジャ65の上方で左右方向に直線状に延びる。支持部691は、左右方向に延びる回動軸A4周りに回動可能に、工具本体10によって支持されている。アーム部693は、支持部691の左右の端部から夫々下方へ延びている。ドライバ4が初期位置にあるときには、レバー69のアーム部693の下端は、ドライバ4のアーム部47の上後方にある(図3参照)。アーム部693の下端部には、バネ受け部695が設けられている。バネ受け部695は、アーム部693の下端部から左方及び右方へ突出している。
【0060】
バネ受け部695と、バネ受け部695の前方で工具本体10の内部に設けられたバネ受け部106(図3参照)との間には、付勢部材697が配置されている。本実施形態では、付勢部材697には圧縮コイルバネが採用されているが、他の種類のバネが採用されてもよい。レバー69は、付勢部材697によって、アーム部693の下端部が後方に移動する方向に回動付勢されている。前方への外力が付与されていない初期状態では、レバー69は、バネ受け部695が工具本体10内部に設けられたストッパ107(図3参照)に接触する位置(以下、初期位置ともいう)で保持されている。
【0061】
本実施形態のソレノイド60のプランジャ65は、コイル61の通電に応じて、ドライバ作動機構5の押圧ローラ53のみならず、所定の条件下でレバー69も移動させるように構成されている。
【0062】
具体的には、図4に示すように、プランジャ65のロッド部651の後端部には、左方及び右方に夫々突出する一対の突起652が設けられている。突起652は、レバー69の後側に配置されている。より詳細には、突起652は、レバー69のアーム部693の上部の真後ろに配置されている。また、図5に実線で示すように、プランジャ65及びレバー69が夫々の初期位置にあるとき、突起652の前端とレバー69のアーム部693の後端とは、前後方向に距離Lだけ離間している。
【0063】
よって、突起652は、ソレノイド60が起動され、プランジャ65が初期位置から距離Lの範囲内で前方に移動する間は、レバー69に接触しない。一方、プランジャ65が距離Lを超えて前方へ移動すると、突起652はレバー69のアーム部693に後方から接触し、アーム部693の下端部が前方に移動する方向に、レバー69を回動させる。このように、プランジャ65は、プランジャ65が距離Lを超えて移動するときにのみ、選択的にレバー69を回動させる。
【0064】
また、本実施形態では、レバー69は、レバー69の回動開始と実質的に同時に、アーム部693の下端部がドライバ4のアーム部47に後方から当接し、その後の回動に応じてドライバ4を押し出すように構成されている。つまり、レバー6は、プランジャ65の初期位置からの移動距離が距離Lを超えるのに応じて作動し、ドライバ4を押し出すように構成されている。なお、プランジャ65が距離Lを超えて移動するか否かは、ドライバ4の摩耗の程度に依存する。この点については、後で詳述する。
【0065】
戻しローラ81について説明する。図4図6図7に示すように、戻しローラ81は、工具本体10内で左右方向に延びる支持シャフト82によって、支持シャフト82の軸周りに回転可能に支持されている。なお、戻しローラ81は、その軸方向の中心が、移動軸A1を含み、フライホイール3の回転軸A2に直交する仮想的な平面P(図7参照)内に実質的に位置するように配置されている。戻しローラ81は、例えば、金属製(例えば、鉄製)、樹脂製、又はエラストマ製である。
【0066】
戻しローラ81は、ドライバ4が打込み材を加工材に打ち込んだ後、ドライバ4に接触した状態で回転することで、ドライバ4を打込み位置から初期位置へ移動させるために設けられている。本実施形態の戻しローラ81は、フライホイール3の回転力を受けて回転し、ドライバ4を移動させるために、フライホイール3及びドライバ4に係合可能に構成されている。より詳細には、図7に示すように、戻しローラ81は、フライホイール3に係合可能な一対の係合フランジ811と、ドライバ4に係合可能な係合溝813とを有する。
【0067】
係合フランジ811は、戻しローラ81の軸方向(左右方向)の両端部に設けられている。戻しローラ81の軸方向の長さ(幅)は、フライホイール3の軸方向の長さ(幅)よりも大きく、2つの係合フランジ811は、夫々、フライホイール3を挟むようにフライホイール3の外縁35の左側と右側に配置されている。係合フランジ811のうち、平面P側の面の一部は、夫々、フライホイール3の外縁35の一部と係合可能である。係合溝813は、戻しローラ81の軸方向の中央部に設けられた環状の溝である。係合溝813の一部は、ドライバ4の係合凸部45の一部と係合可能である。
【0068】
また、図6図8に示すように、工具本体10には、戻しローラ81の移動を案内するように構成されたガイド部11が設けられている。より詳細には、ガイド部11は、左右の側壁部105に形成された一対のガイド溝110を含む。なお、図8では、左の側壁部105及びガイド溝110のみが図示されているが、右の側壁部105にも同様に、ガイド溝110が形成されている。左側のガイド溝110と右側のガイド溝110とは、平面Pに対して対称形状を有する。ガイド溝110は、移動軸A1よりも下方に配置されている。
【0069】
ガイド溝110は、工具本体10の側壁部105の内面に形成された凹部である。但し、ガイド溝110は、側壁部105を貫通する孔であってもよい。ガイド溝110は、概ねV字状(ブーメラン状)に連続する第1部分111と第2部分112とで形成されている。第1部分111は、支持シャフト82の径と概ね等しい均一の幅を有し、後方に向かうにつれて上方に直線状に延びている。第2部分112は、第1部分111よりも大きな幅を有し、第1部分111の上後端部に連続して、後方且つ上方に延びている。支持シャフト82の左右の端部は、ガイド溝110内に配置されており、これにより、支持シャフト82は、工具本体10に支持されている。
【0070】
更に、図4図6図7に示すように、支持シャフト82は、一対の連結アーム83を介して押圧ユニット50に連結されている。連結アーム83は、直線状に延びる長尺部材である。連結アーム83の長軸方向の一端部(第1端部831)は、押圧ユニット50の支持体51に回動可能に連結されている。より詳細には、支持体51は、ローラホルダ52の後方で、支持部511の左後端部および右後端部から夫々下方に突出する一対の突出部519を有する。2つの連結アーム83の第1端部831は、夫々、2つの突出部519の下端部に、回動可能に連結されている。左右の連結アーム83の長軸方向の他端部(第2端部832)は、夫々、支持シャフト82の左端部及び右端部に回動可能に連結されている。
【0071】
以上に説明した構成により、支持シャフト82及び戻しローラ81は、押圧ローラ53を含む押圧ユニット50の移動に応じて、支持シャフト82の左端部及び右端部がガイド溝110内を移動可能な範囲で、工具本体10に対して移動する。このように、本実施形態の戻しローラ81は、ドライバ4の下方において、フライホイール3及びドライバ4の移動軸A1に対して移動可能に支持されている。なお、詳細は後述するが、支持シャフト82の左右の端部がガイド溝110の第1部分111内に配置されているときには、戻しローラ81は、フライホイール3及びドライバ4とは係合不能である。支持シャフト82の左右の端部がガイド溝110の第2部分112内に配置されているときに、戻しローラ81は、フライホイール3及びドライバ4と選択的に係合可能となる。
【0072】
以下、打込み工具1の動作について説明する。
【0073】
まず、ドライバ4が初期位置から打込み位置へ移動する過程(以下、打込み過程という)の打込み工具1の動作について説明する。
【0074】
上述のように、ドライバ作動機構5が初期状態にあるときには、図6及び図7に示すように、押圧ユニット50は初期位置で保持されている。押圧ローラ53の下端は、初期位置で保持されたドライバ4から上方に離間している。より詳細には、押圧ローラ53の下端は、ドライバ4のカム部431の前端部の真上で、カム部431の上面に対向している。
【0075】
また、戻しローラ81の支持シャフト82は、初期位置にある押圧ユニット50に連結された連結アーム83に引き上げられ、ガイド溝110のうち、第2部分112の上端で保持されている。戻しローラ81は、フライホイール3からも、ドライバ4からも離間している。つまり、戻しローラ81は、フライホイール3及びドライバ4の何れとも係合していない。
【0076】
コントローラ20は、コンタクトアームスイッチ131及びトリガスイッチ141の何れか一方がオンとされるのに応じて、バッテリ19からモータ21に電流を供給し、モータ21の駆動を開始する。モータ21の駆動開始に応じて、フライホイール3の回転も開始されるが、この段階では、フライホイール3とドライバ4とは接触しておらず、フライホイール3の回転エネルギは、ドライバ4に伝達されない。よって、フライホイール3が回転しても、ドライバ4は動作しない。
【0077】
その後、コントローラ20は、コンタクトアームスイッチ131及びトリガスイッチ141の他方もオンとされるのに応じて、ソレノイド60を起動する。図9に示すように、プランジャ65は前方へ移動し、押圧ユニット50を回動させる。押圧ユニット50の回動に応じて、押圧ローラ53は下降してドライバ4のカム部431の上面に接触し、ドライバ4を下方に押圧する。これにより、ドライバ4は、付勢部材86の付勢力に抗して、ドライバ4の後端部が上方へ移動する方向に回動する。ドライバ4の長軸が移動軸A1と実質的に一致する位置(以下、打込み準備位置という)までドライバ4が回動すると、ドライバ4の前端401は、補助ローラ85から下方に離れ、ドライバ4全体がドライバ通路100内に配置される。なお、図5の一点鎖線に示すように、このとき、レバー69のアーム部693の下端部は、ドライバ4のアーム部47の真後ろに配置される。
【0078】
図9及び図10に示すように、押圧ローラ53が、ドライバ4から離間した位置からドライバ4に接触する位置まで移動する(押圧ユニット50が初期位置から下方に回動する)のに応じて、連結アーム83を介して支持体51に連結された支持シャフト82と戻しローラ81も移動する。より詳細には、支持シャフト82の左右の端部は、ガイド溝110内で、第2部分112の上端から、第2部分112を通過し、第1部分111の上端部内まで移動する。この間、戻しローラ81は、フライホイール3及びドライバ4に近づくが、何れからも離間しており、何れとも係合しない。
【0079】
ドライバ4は、押圧ローラ53によってフライホイール3に押し付けられ、図11に示すように、係合凸部45がフライホイール3の係合溝33に係合する。ドライバ4とフライホイール3との係合により、フライホイール3からドライバ4への回転エネルギの伝達が可能となる。ドライバ4は、フライホイール3の回転エネルギを受けて、高速で前方への移動を開始する。
【0080】
なお、上述のように、プランジャ65が距離Lを超えて移動するか否かは、ドライバ4、特に、ドライバ4のうちフライホイール3に係合する部分(係合凸部45)の摩耗の程度に依存する。
【0081】
ドライバ4の係合凸部45が特に摩耗する理由と、摩耗により生じうる不具合は、次の通りである。ドライバ4がそれほど摩耗していないときには、押圧ローラ53によって、係合凸部45のうち、前後方向において実質的に同じ部分(以下、初期係合部451という)が、回転するフライホイール3に押し付けられる(図11参照)。このため、図12に示すように、初期係合部451は、打込み回数が増えるのに応じて集中的に摩耗する。ある程度摩耗した状態の初期係合部451がフライホイール3に近づく方向に押圧されると、ドライバ4とフライホイール3との係合不良が生じうる。具体的には、プランジャ65が可動範囲内の最前方位置まで移動し、最大限まで押圧ローラ53が下降してドライバ4を下方に押圧しても、図12に示すように、初期係合部451とフライホイール3の係合溝33との係合が不十分、又は不能となる。このため、フライホイール3からドライバ4への回転エネルギの伝達が不十分、又は不能となる。
【0082】
これに対し、本実施形態の補助作動機構68は、初期係合部451がある程度摩耗し、主作動機構であるドライバ作動機構5のみではドライバ4とフライホイール3との係合不良が生じうる場合に、ドライバ4に推進力を与えることで、ドライバ4とフライホイール3とが適切に係合できるように補助する。
【0083】
具体的には、上述の距離L(図5参照)は、ドライバ4(係合凸部45)がそれほど摩耗していないときには、プランジャ65が距離Lだけ移動するよりも前に、押圧部655が支持体51の押圧受け部517に接触し、プランジャ65が移動を停止するように設定されている。よって、レバー69は回動せず、ドライバ4を押し出すこともない。
【0084】
一方、ドライバ4の初期係合部451の摩耗が進むと、ドライバ4をフライホイール3に押し付ける方向の押圧ローラ53の移動距離、つまり、プランジャ65の移動距離が増える。よって、図5及び図13に示すように、プランジャ65は距離Lを超えて前方へ移動し、プランジャ65の突起652がレバー69を回動させる。レバー69の回動に応じて、レバー69のアーム部693の下端部は、ドライバ4のアーム部47に後方から接触して、ドライバ4を前方へ押し出す。このように、レバー69は、ドライバ4の摩耗がある程度大きくなったときに、ドライバ4に推進力を与えることができる。
【0085】
前方へ押し出されたドライバ4のカム部431は、押圧ローラ53とフライホイール3の間に楔状に進入する。これにより、係合凸部45のうち、集中的に摩耗した初期係合部451(図12参照)よりも後ろの部分がフライホイール3の係合溝33と係合し、フライホイール3からドライバ4への良好な回転エネルギの伝達が実現される。
【0086】
特に、本実施形態では、レバー69は、レバー69の回動軸A4と、レバー69とドライバ4との接触点(アーム部693の下端部)との間の位置(アーム部693の上部)で、プランジャ65の突起652からの力を受けるように構成されている。つまり、レバー69は、支点と作用点との間に力点がある梃子として機能するため、プランジャ65の小さな動きを、ドライバ4の大きな動きに増幅することができる。特に、レバー69では、力点が作用点よりも支点に近い位置にあるため、動きの増幅効果が大きい。よって、プランジャ65の移動距離が小さくても、ドライバ4を効率的に前方へ移動させ、フライホイール3に係合させることができる。
【0087】
ドライバ4が前方へ移動するのに伴って、カム部431によって、押圧ローラ53及びローラホルダ52が支持体51に対して上方に押し上げられる。これにより、付勢部材55が更に圧縮されて変位し、荷重が増加する。このため、押圧ローラ53は、付勢部材55に付勢されてドライバ4をフライホイール3に強く押し付け、ドライバ4とフライホイール3とをより強固に係合させる。図11及び図14に示すように、押圧ローラ53がカム部431の後端を超え、ストレート部433に達すると、付勢部材55の荷重は上限に達し、一定となる。ドライバ4は、押圧ローラ53によってフライホイール3に強く押し付けられた状態でドライバ通路100内を前方へ移動し、打込み材を打撃する。なお、図14は、ドライバ4の前端401が打込み材(釘9を例示)を打撃する打撃位置に配置された状態を示している。
【0088】
また、ドライバ4が打込み準備位置から打撃位置へ至る過程で、補助ローラ85がドライバ4のストレート部433の上面に接触し、回転しながらドライバ4の前方への移動を案内する。
【0089】
押圧ローラ53がカム部431に接触する位置に配置された後、ストレート部433によって最大限まで押し上げられている間、工具本体10に対する押圧ユニット50の支持体51の位置は実質的に変化しない。よって、支持シャフト82の左右の端部は、ガイド溝110の第1部分111の上端部内に保持され、戻しローラ81は、フライホイール3及びドライバ4の何れとも係合しない位置で保持される(図10参照)。なお、上述のように、ガイド溝110の第1部分111の幅は、支持シャフト82の径と概ね等しく設定されているため、戻しローラ81の位置は安定して保持される。
【0090】
ドライバ4は、更に、図15に示す打込み位置まで移動して、打込み材を加工材に打ち込む。ドライバ4のアーム部47の前端がクッション108(図4参照)に後方から接触することで、ドライバ4の移動が停止され、打込み過程が終了する。なお、ドライバ4が打込み位置にあるとき、ドライバ4の後端は、戻しローラ81よりも後方にある。
【0091】
次に、ドライバ4が打込み位置から初期位置へ移動する過程(以下、戻り過程という)の打込み工具1の動作について説明する。
【0092】
ドライバ4が打込み位置に到達するのと概ね同時に、押圧ローラ53は、ドライバ4のリリース部435に到達する。よって、ドライバ4による押圧ローラ53及びローラホルダ52の押上げが解除され、ローラホルダ52は、付勢部材55によって付勢されて支持体51に対して下方へ移動し、バネ受け部521の下面が支持体51の支持部511上面に接触する位置へ戻る。これにより、押圧ユニット50は、押圧受け部517が下方に移動する方向に若干回動する。
【0093】
押圧ユニット50の回動に伴い、支持シャフト82の左右の端部は、ガイド溝110の第1部分111内で若干前方へ移動する。このとき、戻しローラ81は、フライホイール3及びドライバ4の何れとも係合しない。
【0094】
本実施形態では、コントローラ20は、ソレノイド60のコイル61への通電を開始してからドライバ4が打撃位置(図14参照)に到達するまでに必要な所定時間が経過すると、コイル61への通電を停止する(ソレノイド60をオフとする)ように構成されている。本実施形態では、ソレノイド60がオフとされても、プランジャ65の押圧部655は、押圧ローラ53が押し上げられている間は、押圧受け部517を介して受ける付勢部材55の付勢力により、プランジャ65の初期位置への復帰を禁止する。押圧ローラ53の押上げが解除されると、押圧受け部517が押圧部655から離れるため、プランジャ65は、付勢部材67に付勢されて後方へ移動する。これに伴い、図16に示すように、押圧ユニット50は、付勢部材57に付勢されて、押圧受け部517が上方に移動する方向、つまり、押圧ローラ53がドライバ4から離れる方向に回動する。
【0095】
押圧ユニット50の回動に応じて、連結アーム83によって、支持シャフト82が引き上げられる。支持シャフト82の左右の端部は、ガイド溝110の第1部分111から第2部分112の下端部内に移動され、戻しローラ81は、後方且つ上方に移動される。ドライバ4は、補助ローラ85と、ノーズ部12のうちドライバ通路100の下端を規定する下壁部123とによって、上下方向の移動が規制されている。このため、戻しローラ81は、ドライバ4とフライホイール3の間に入り込む。これにより、図17に示すように、ドライバ4の係合凸部45が戻しローラ81の係合溝813と係合し、フライホイール3の外縁35が戻しローラ81の係合フランジ811と係合する。なお、戻しローラ81がドライバ4とフライホイール3の間に入り込むことで、ドライバ4はフライホイール3に非接触となる。
【0096】
図16に示すように、戻しローラ81は、フライホイール3と係合しているため、矢印D1方向に回転するフライホイール3によって、フライホイール3とは逆の矢印D2方向に回転する。戻しローラ81は、ドライバ4と係合しているため、回転に伴い、ドライバ4を打込み位置から後方に移動させる。このとき、補助ローラ85は、戻しローラ81とは反対側でドライバ4に接触して回転することで、ドライバ4の後方への移動を円滑に安定して案内することができる。また、支持シャフト82の左右の端部は、ガイド溝110の第2部分112の下端部内に、遊嵌状に配置されている。このため、戻しローラ81は、ドライバ4の後方への移動時にドライバ4の上下方向の位置が若干変動しても、フライホイール3及びドライバ4との係合状態を維持することができる。
【0097】
図3に一点鎖線で示すように、ドライバ4は、戻しローラ81によって後方へ移動され、リリース部435が付勢部材86に当接する。付勢部材86によってドライバ4の後端部が下方に押圧され、ドライバ4は、前端401が上方に移動する方向に、支柱87周りに回動し、初期位置に復帰する。なお、ドライバ4が打込み位置から初期位置まで移動される間、押圧ローラ53は、ドライバ4から上方に僅かに離間しており、ドライバ4とは接触しない。
【0098】
以上に説明したように、本実施形態の打込み工具1は、ドライバ4が打込み位置まで移動して打込み材を打ち込んだ後、ドライバ4を、打込み位置から初期位置へ移動させるように構成された戻しローラ81を備える。戻しローラ81は、ドライバ4に選択的に接触して回転することで、ドライバ4を打込み位置から初期位置へ移動させる。よって、バネの弾性力を利用する従来の戻し機構に比べて比較的小型で簡易な構成の戻し機構を実現することができる。また、バネを利用する戻し機構よりも耐久性に優れた戻し機構を実現することができる。
【0099】
特に、本実施形態では、戻しローラ81は、押圧ローラ53を支持する支持体51に、連結アーム83を介して動作可能に連結されており、押圧ローラ53の移動に応じて移動するように構成されている。これにより、戻しローラ81の移動を、押圧ローラ53の移動に適切にリンクさせることができる。
【0100】
具体的には、押圧ローラ53は、打込み過程の途中で、ドライバ4から離間した位置からドライバ4に接触する位置へ移動して、フライホイール3からドライバ4への回転エネルギの伝達を可能とする。一方、戻しローラ81は、打込み過程では、フライホイール3及びドライバ4から離間した位置にあり、フライホイール3及びドライバ4に干渉しない。バネの弾性力を利用する従来の戻し機構では、打込み過程でバネを弾性変形させる必要があるため、ドライバ4に負荷がかかり、出力の低下につながる可能性がある。これに対し、本実施形態の戻しローラ81によれば、打込み過程でフライホイール3やドライバ4に余分な負荷がかかるのを防ぐことができる。
【0101】
また、押圧ローラ53は、戻り過程では、ドライバ4から離間しており、ドライバ4に干渉しない。一方、戻しローラ81は、戻り過程では、フライホイール3とドライバ4の間に挟み込まれてこれらに係合し、フライホイール3の回転力を受けて回転することで、ドライバ4を移動させる。よって、戻り過程では、押圧ローラ53からドライバ4に余分な負荷がかかるのを防ぎつつ、戻しローラ81がフライホイール3の回転力を受けて効率的にドライバ4を初期位置に移動させることができる。
【0102】
なお、上記実施形態は単なる例示であり、本開示に係る打込み工具は、例示された打込み工具1に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。また、これらの変更のうち少なくとも1つが、実施形態に例示される打込み工具1、及び各請求項に記載された特徴の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
【0103】
例えば、フライホイール3及びドライバ4の構成は、適宜変更されうる。例えば、フライホイール3の係合溝33及びドライバ4の係合凸部45の夫々の形状及び/又は数は、両者が互いに摩擦係合してフライホイール3の回転エネルギをドライバ4に伝達可能である限りにおいて、適宜変更されうる。また、溝と凸部との関係が逆にされてもよい。ドライバ4のローラ当接部43の構成(例えば、カム部431、ストレート部433、リリース部435の長さ及び/又は形状)やアーム部47の形状や配置は、適宜変更されてよい。
【0104】
戻しローラ81は、ドライバ4に選択的に接触して回転することで、ドライバ4を打込み位置から初期位置へ移動させるように構成される限りにおいて、その大きさ、形状、材質、支持態様、移動態様は適宜変更され得る。
【0105】
例えば、上述のフライホイール3とドライバ4の例と同様に、戻しローラ81の係合フランジ811及び/又は係合溝813の構成は、フライホイール3及び/又はドライバ4との関係に応じて変更されうる。
【0106】
また、戻しローラ81は、押圧ユニット80のうち、上記実施形態とは異なる部分(例えば、ローラホルダ52)に動作可能に連結されていてもよい。あるいは、戻しローラ81の支持シャフト82は、例えば、コントローラ20によって移動制御される部材(例えば、ソレノイド60のプランジャ65)に動作可能に連結されていてもよい。そして、ドライバ4が打込み位置に配置されるタイミングで、戻しローラ81が、フライホイール3及びドライバ4に係合する位置に移動されるように構成されてもよい。
【0107】
また、戻しローラ81のガイド部11は、工具本体10ではなく、工具本体10内で移動軸A1に対して移動不能に支持された別の部材に設けられてもよい。ガイド溝110の形状は、戻しローラ81の支持態様等に応じて、適宜変更されうる。
また、ガイド部11は、ガイド溝110でなく、例えば、ガイドレールで構成されてもよい。
【0108】
上記実施形態では、補助ローラ85は、戻しローラ81と協働してドライバ4を円滑に初期位置へ戻すガイドローラとしての機能と、初期位置にあるドライバ4の移動を規制するストッパとしての機能を有する。しかしながら、補助ローラ85は、別の位置に配置されて、ガイドローラとしての機能のみを発揮してもよい。また、補助ローラ85に代えて、ドライバ4を挟んで戻しローラ81と反対側に配置され、ドライバ4の戻しローラ81から離れる方向(上方)への移動を規制する規制部(例えば、工具本体10内に支持された壁部、リブ、又はピン)が採用されてもよい。
【0109】
ドライバ作動機構5についても、種々の変更が加えられうる。例えば、押圧ユニット50の支持体51及び/又はローラホルダ52の形状は、任意に選択されうる。支持体51は、例えば、工具本体10に対して上下方向に直線状に移動可能に支持されていてもよい。あるいは、支持体51は、工具本体10に対して移動不能であって、ソレノイド60がレバー69を回動させることでドライバ4を前方へ押出し、押圧ローラ53とフライホイール3との間にドライバ4のカム部431を進入させてもよい。押圧ローラ53の数は1に限られず、複数(例えば2つ)の押圧ローラ53が設けられてもよい。ソレノイド60のプランジャ65は、別の部材を介して間接的に押圧ユニット50を移動させるように構成されてもよい。ソレノイド60は、プランジャ65の移動軸が前後方向以外の方向に延在するように配置されてもよい。また、レバー69は省略されてもよい。
【0110】
本発明及び上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の態様が構築される。以下の態様のうち少なくとも1つが、実施形態及びその変形例の特徴、あるいは各請求項に記載された特徴の少なくとも1つと組み合わされて採用されうる。
[態様1]
打込み工具は、前記ドライバに対して前記戻しローラとは反対側に配置され、前記ドライバが前記打込み位置から前記初期位置へ移動する戻り過程の少なくとも一部で前記ドライバに接触することで、前記ドライバの前記戻しローラから離れる方向への移動を規制するように構成された規制部を更に備える。
[態様2]
前記戻しローラは、前記支持体に回動可能に連結された連結アームを介して前記支持体に連結されている。
[態様3]
前記戻しローラは、支持シャフトによって回転可能に支持されており、
前記ガイド部は、前記工具本体又は前記工具本体に実質的に移動不能な部材に形成された2つのガイド溝を含み、
前記支持シャフトの軸方向の両端部は、前記2つのガイド溝内に、前記2つのガイド溝内を移動可能に配置されている。
[態様4]
前記2つのガイド溝の各々は、前記支持シャフトの径と概ね等しい幅を有する第1部分と、前記径よりも大きい幅を有する第2部分とを含み、
前記ドライバが前記回転エネルギを受けて前記打込み位置へ移動するときには、前記支持シャフトの前記両端部は、前記第1部分内に配置され、
前記ドライバが前記打込み位置から前記初期位置へ移動するときには、前記両端部は、前記第2部分内に遊嵌状に配置される。
[態様5]
前記押圧ローラは、前記初期位置にある前記ドライバを押圧し、前記ドライバを前記移動軸に沿って配置させるように構成されている。
[態様6]
打込み工具は、前記押圧ローラに動作可能に連結され、前記押圧ローラを移動させるように構成されたソレノイドを更に備える。
[態様7]
前記支持体は、前記押圧ローラが前記ドライバに接触不能な第1位置と、前記押圧ローラが前記ドライバに接触可能な第2位置との間で移動可能であって、第2付勢部材によって、前記第1位置に向けて付勢されており、
前記ソレノイドは、前記第2付勢部材の付勢力に抗して、前記支持体を前記第1位置から前記第2位置へ移動させるように構成されている。
[態様8]
打込み工具は、前記モータ及び前記ソレノイドの動作を制御する制御装置を更に備える。
【符号の説明】
【0111】
1:打込み工具、10:工具本体、100:ドライバ通路、105:側壁部、106:バネ受け部、107:ストッパ、108:クッション、110:ガイド溝、11:ガイド部、111:第1部分、112:第2部分、12:ノーズ部、120:射出口、123:下壁部、13:コンタクトアーム、131:コンタクトアームスイッチ、14:ハンドル、140:トリガ、141:トリガスイッチ、15:バッテリ装着部、17:マガジン、19:バッテリ、20:コントローラ、21:モータ、211:出力シャフト、3:フライホイール、33:係合溝、35:外縁、4:ドライバ、40:本体部、401:前端、41:前端部、43:ローラ当接部、431:カム部、433:ストレート部、435:リリース部、45:係合凸部、451:初期係合部、47:アーム部、5:ドライバ作動機構、50:押圧ユニット、51:支持体、511:支持部、512:支持シャフト、513:フランジ部、514:ネジ、515:バネ受け部、517:押圧受け部、519:突出部、52:ローラホルダ、521:バネ受け部、525:脚部、526:シャフト、53:押圧ローラ、55:付勢部材、57:付勢部材、60:ソレノイド、61:コイル、63:ホルダ、65:プランジャ、651:ロッド部、652:突起、655:押圧部、67:付勢部材、68:補助作動機構、69:レバー、691:支持部、693:アーム部、695:バネ受け部、697:付勢部材、80:押圧ユニット、81:戻しローラ、811:係合フランジ、813:係合溝、82:支持シャフト、83:連結アーム、831:第1端部、832:第2端部、85:補助ローラ、86:付勢部材、87:支柱、871:支持シャフト
図1
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図3
図4
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