IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鴻池組の特許一覧 ▶ 鴻池ビルテクノ株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社桐井製作所の特許一覧

<>
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図1
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図2
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図3
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図4
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図5
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図6
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図7
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図8
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図9
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図10
  • 特開-天井材落下防止構造および接続部材 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074090
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】天井材落下防止構造および接続部材
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/18 20060101AFI20240523BHJP
   E04B 9/04 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
E04B9/18 H
E04B9/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185157
(22)【出願日】2022-11-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】390036515
【氏名又は名称】株式会社鴻池組
(71)【出願人】
【識別番号】513241419
【氏名又は名称】鴻池ビルテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】393016837
【氏名又は名称】株式会社桐井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高松 誠
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 真二
(72)【発明者】
【氏名】島村 淳平
(72)【発明者】
【氏名】成島 茜
(72)【発明者】
【氏名】大林 愼二
(72)【発明者】
【氏名】荒井 智一
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 康二郎
(57)【要約】
【課題】美観に優れ、天井材が落下し難い天井材落下防止構造および接続部材を提供する。
【解決手段】吊ワイヤ10と天井板3と天井受ワイヤ20と把持部材30と支持部材50とを備えている。把持部材30は、ワイヤ支持ボルト31とナット32と支持金具33とを備えている。支持金具33の中央部には、上方に突出する段差凸部35が形成され、段差凸部35の側部にはワイヤ支持ボルト31の頭部31bが回転不能に配置されている。ワイヤ支持ボルト31の軸部31aには、天井受ワイヤ20が通過するスリット34が形成され、ナット32を軸部31aに装着することで天井受ワイヤ20が挟持されている。支持部材50は、吊ワイヤ10に接続される支持部51と、支持金具33を支持部51に連結する金具支持ボルト52とを備え、金具支持ボルト52は、段差凸部35を貫通して配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊ボルトに支持された天井材の落下を防止する天井材落下防止構造において、
前記吊ボルトに係止された吊ワイヤと、天井板と、前記天井板の下面に敷設された天井受ワイヤと、前記天井受ワイヤを把持する把持部材と、前記吊ワイヤに接続され前記把持部材を支持する支持部材とを備えており、
前記把持部材は、軸部が下方に向かって突出するワイヤ支持ボルトと、前記軸部の先端部に螺合されるナットと、前記ワイヤ支持ボルトを上方から貫通させて支持する支持金具とを備え、
前記支持金具の中央部には、上方に突出する段差凸部が形成され、前記段差凸部の側部には前記ワイヤ支持ボルトの頭部が回転不能に配置されており、
前記ワイヤ支持ボルトの前記軸部には、前記天井受ワイヤが通過するスリットが形成され、前記ナットを前記軸部に装着することで前記天井受ワイヤが挟持されており、
前記支持部材は、前記吊ワイヤに接続されるとともに前記天井板の上面に配置される支持部と、前記支持金具を前記支持部に連結する金具支持ボルトとを備え、
前記金具支持ボルトは、前記段差凸部を貫通して配置されている
ことを特徴とする天井材落下防止構造。
【請求項2】
前記天井板には、前記把持部材の前記支持金具を収容する金具収容部が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の天井材落下防止構造。
【請求項3】
前記天井板は、上下に少なくとも二層積層されており、
下側の前記天井板には、前記金具収容部が貫通して形成され、
上側の前記天井板には、前記金具支持ボルトの軸部が貫通するボルト挿通孔が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の天井材落下防止構造。
【請求項4】
前記天井板は、一層設けられており、
前記天井板には、前記金具収容部が貫通して形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の天井材落下防止構造。
【請求項5】
前記支持金具の端部には、立上壁部が形成されており、
前記立上壁部と前記段差凸部との間に、前記ワイヤ支持ボルトの頭部が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の天井材落下防止構造。
【請求項6】
天井板の下面に敷設された天井受ワイヤと、吊ボルトとを接続するための接続部材であって、
前記天井受ワイヤを把持する把持部材と、前記吊ボルトに係止された吊ワイヤに接続され前記把持部材を支持する支持部材とを備えており、
前記把持部材は、軸部が下方に向かって突出するワイヤ支持ボルトと、前記軸部の先端部に螺合されるナットと、前記ワイヤ支持ボルトを上方から貫通させて支持する支持金具とを備え、
前記支持金具の中央部には、上方に突出する段差凸部が形成され、前記段差凸部の側部には前記ワイヤ支持ボルトの頭部が回転不能に配置されており、
前記ワイヤ支持ボルトの前記軸部には、前記天井受ワイヤが通過するスリットが形成され、前記ナットを前記軸部に装着することで前記天井受ワイヤが挟持されており、
前記支持部材は、前記吊ワイヤに接続されるとともに前記天井板の上面に配置される支持部と、前記支持金具を前記支持部に連結する金具支持ボルトとを備え、
前記金具支持ボルトは、前記段差凸部を貫通して配置されている
ことを特徴とする接続部材。
【請求項7】
前記支持金具の端部には、立上壁部が形成されており、
前記立上壁部と前記段差凸部との間に、前記ワイヤ支持ボルトの頭部が配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の接続部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井材落下防止構造および、天井受ワイヤと吊ボルトとを接続する接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
地震時に天井材が落下してしまうことを防止するための天井の落下防止策が種々提案されており、梁材や吊ボルトに固定されたワイヤで天井材を下方から支持する構成が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1の天井材落下防止構造では、吊ボルトに固定された吊ワイヤの先端部に、天井板の下面に敷設された天井受ワイヤと吊ボルトとを接続する接続金具が設けられている。接続金具は、天井板に形成された開口部の開口縁部に形成されている。開口部は、作業員が手を通すことができる大きさに形成されており、作業員が天井板の下方から吊ワイヤと天井受ワイヤとの接続作業を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-178599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の天井材落下防止構造では、天井板に形成された開口部が大きいため、室内から開口部とその上方の天井裏が見えてしまうという問題があった。
【0005】
このような観点から、本発明は、美観に優れ、天井材が落下し難い天井材落下防止構造と、当該天井落下防止構造に用いられ天井受ワイヤと吊ボルトとを接続する接続部材とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための第一の発明は、吊ボルトに支持された天井材の落下を防止する天井材落下防止構造において、前記吊ボルトに係止された吊ワイヤと、天井板と、前記天井板の下面に敷設された天井受ワイヤと、前記天井受ワイヤを把持する把持部材と、前記吊ワイヤに接続され前記把持部材を支持する支持部材とを備えている。前記把持部材は、軸部が下方に向かって突出するワイヤ支持ボルトと、前記軸部の先端部に螺合されるナットと、前記ワイヤ支持ボルトを上方から貫通させて支持する支持金具とを備え、前記支持金具の中央部には、上方に突出する段差凸部が形成され、前記段差凸部の側部には前記ワイヤ支持ボルトの頭部が回転不能に配置されており、前記ワイヤ支持ボルトの前記軸部には、前記天井受ワイヤが通過するスリットが形成され、前記ナットを前記軸部に装着することで前記天井受ワイヤが挟持されており、前記支持部材は、前記吊ワイヤに接続されるとともに前記天井板の上面に配置される支持部と、前記支持金具を前記支持部に連結する金具支持ボルトとを備え、前記金具支持ボルトは、前記段差凸部を貫通して配置されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の天井落下防止構造によれば、天井板には、金具支持ボルトの軸部が通過できる開口部があれば良く、天井板の下に露出されるのは天井受ワイヤと支持金具とワイヤ支持ボルトの下端部とナットだけであるので、美観に優れる。また、吊ボルトに係止された吊ワイヤと天井受ワイヤとが、支持部材と把持部材を介して接続されているので、万一天井材が吊ボルトから外れても、吊ワイヤ、支持部材および把持部材を介して吊ボルトに接続された天井受ワイヤで支持することができる。さらに、ワイヤ支持ボルトは、段差凸部に係止して回転しないので、ナットの装着を容易に行うことができる。
【0008】
本発明の天井落下防止構造においては、前記天井板に、前記把持部材の前記支持金具を収容する金具収容部が形成されているものが好ましい。このような構成によれば、支持金具が天井板の金具収容部に収容されるので、室内側から支持金具の側面が見えなくなる。したがって、美観がさらに良好となる。
【0009】
本発明の天井落下防止構造においては、前記天井板は、上下に少なくとも二層積層されており、下側の前記天井板には、前記金具収容部が貫通して形成され、上側の前記天井板には、前記金具支持ボルトの軸部が貫通するボルト挿通孔が形成されているものが好ましい。このような構成によれば、天井板に貫通孔を形成するだけで、容易に金具収容部を形成できる。
【0010】
本発明の天井落下防止構造においては、前記天井板は、一層設けられており、前記天井板には、前記金具収容部が貫通して形成されているものが好ましい。このような構成によれば、天井板に貫通孔を形成するだけで、容易に金具収容部を形成できる。支持部材の支持部は、金具収容部の周縁部の上面に載置される。
【0011】
本発明の天井落下防止構造においては、前記支持金具の端部には、立上壁部が形成されており、前記立上壁部と前記段差凸部との間に、前記ワイヤ支持ボルトの頭部が配置されているものが好ましい。このような構成によれば、天井板に金具収容部が無く、支持金具が露出される場合、支持金具の端部においてワイヤ支持ボルトの頭部を隠すことができるので、美観がさらに良好となる。また、ワイヤ支持ボルトの回り止め効果が高くなる。
【0012】
前記課題を解決するための第二の発明は、天井板の下面に敷設された天井受ワイヤと、吊ボルトとを接続するための接続部材であって、前記天井受ワイヤを把持する把持部材と、前記吊ボルトに係止された吊ワイヤに接続され前記把持部材を支持する支持部材とを備えている。前記把持部材は、軸部が下方に向かって突出するワイヤ支持ボルトと、前記軸部の先端部に螺合されるナットと、前記ワイヤ支持ボルトを上方から貫通させて支持する支持金具とを備え、前記支持金具の中央部には、上方に突出する段差凸部が形成され、前記段差凸部の側部には前記ワイヤ支持ボルトの頭部が回転不能に配置されており、前記ワイヤ支持ボルトの前記軸部には、前記天井受ワイヤが通過するスリットが形成され、前記ナットを前記軸部に装着することで前記天井受ワイヤが挟持されており、前記支持部材は、前記吊ワイヤに接続されるとともに前記天井板の上面に配置される支持部と、前記支持金具を前記支持部に連結する金具支持ボルトとを備え、前記金具支持ボルトは、前記段差凸部を貫通して配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の接続部材によれば、接続部材が取り付けられる天井板には、金具支持ボルトの軸部が通過できる開口部があれば良く、天井板の下に露出されるのは天井受ワイヤと支持金具とワイヤ支持ボルトの下端部とナットだけであるので、美観に優れる。また、吊ボルトに係止された吊ワイヤと天井受ワイヤとが、支持部材と把持部材を介して接続されているので、万一天井材が吊ボルトから外れても、吊ワイヤ、支持部材および把持部材を介して、吊ボルトに接続された天井受ワイヤで支持することができる。さらに、ワイヤ支持ボルトは、段差凸部に係止して回転しないので、ナットの装着を容易に行うことができる。
【0014】
本発明の接続部材においては、前記支持金具の端部には、立上壁部が形成されており、前記立上壁部と前記段差凸部との間に、前記ワイヤ支持ボルトの頭部が配置されているものが好ましい。このような構成によれば、支持金具の端部においてワイヤ支持ボルトの頭部を隠すことができるので、美観がさらに良好となる。また、ワイヤ支持ボルトの回り止め効果が高くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る天井材落下防止構造および接続部材によれば、美観に優れるとともに、天井材を天井受ワイヤで確実に受けることができるので、天井材が落下し難い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)および(b)は本発明の実施形態に係る天井材落下防止構造を示した断面図、(c)は本発明の実施形態に係る接続部材を示した平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る天井材落下防止構造を示した斜視図である。
図3】(a)は本発明の実施形態に係る接続部材を示した平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図4】本発明の実施形態に係る天井材落下防止構造を示した分解斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る天井材落下防止構造の把持部材の組立て状態を示した分解斜視図である。
図6】吊ボルトに吊ワイヤを固定する上部固定金具を示した斜視図である。
図7】(a)は吊ボルトに吊ワイヤを固定する上部固定金具を示した平面図、(b)は側面図である。
図8】吊ボルトに吊ワイヤを固定する上部固定金具を示した分解斜視図である。
図9】本発明の実施形態の第一の変形例に係る天井材落下防止構造を示した断面図である。
図10】本発明の実施形態の第二の変形例に係る天井材落下防止構造を示した断面図である。
図11】(a)は吊ボルトに吊ワイヤを固定する上部固定金具の変形例を示した分解斜視図、(b)は取付途中の状態を示した斜視図、(c)は取付後の状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る天井材落下防止構造および接続部材について図面を参照しつつ詳細に説明する。まず、天井落下防止構造および接続部材の構成を説明する。なお、説明において同一要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0018】
図1および図2に示すように、天井落下防止構造1は、天井材2の落下を防止するものである。図2に示すように、天井材2は、天井板3と天井下地材4とを備えている。天井下地材4は、天井躯体から垂下された吊ボルト5によって吊り下げられている。天井板3は、天井下地材4の下面に固定されている。天井下地材4は、例えば野縁(図示せず)と野縁受け4aとを格子状に組み付けて構成されている。野縁は、野縁受け4aの下部に直交して配置され、クリップ(図示せず)を介して野縁受け4aに固定されている。野縁受け4aは、吊ボルト5の下端部に、吊ハンガー6を介して固定されている。
【0019】
図1および図2に示すように、天井材落下防止構造1は、吊ワイヤ10と、天井板3と、天井受ワイヤ20と、把持部材30と、支持部材50とを備えている。天井落下防止構造1の構成部材のうち、把持部材30と支持部材50とで接続部材7が構成されている。接続部材7は、吊ワイヤ10を介して、吊ボルト5と天井受ワイヤ20とを接続する部材である。
【0020】
吊ワイヤ10は、吊ボルト5の下端部に係止されるものであって、支持部材50を支持している。吊ワイヤ10は、天井材2を支持可能な強度を備えた可撓性ワイヤであって、たとえば金属製より線や樹脂製線材などからなる。吊ワイヤ10の長手方向両側の端部は、円弧状に折り返され、係止部11が形成されている。係止部11を構成するワイヤの基端部と先端部とは互いに当接し、スリーブ12にて巻き止められている。吊ワイヤ10の上端部の係止部11は、後記する上部固定金具70に係止され、吊ワイヤ10の下端部の係止部11は、支持部材50に係止される。なお、上部固定金具70と支持部材50の構成は後述する。
【0021】
天井受ワイヤ20は、地震時等に万一天井材2が吊ボルト5から外れた際に天井材2を受ける部材であって、天井板3の下面に直線状に敷設される。天井受ワイヤ20は、天井材2を支持可能な強度を備えた可撓性ワイヤであって、たとえば金属製より線や樹脂製線材などからなる。天井受ワイヤ20は、野縁受け4aに沿って延在しており、複数本設けられている。隣り合う天井受ワイヤ20は、所定間隔(たとえば1800mmピッチ)をあけて、互いに平行に配置されている。
【0022】
なお、天井板3bの下面には、強化繊維と塗料とを備えてなる補強塗膜層(図示せず)が敷設されているものが好ましい。補強塗膜層は、複数の天井板3b,3bに跨るように形成され、天井受ワイヤ20と交差する方向に延在する。
補強塗膜層を敷設することによって、天井板3b,3b・・が一体化され、分散されない。したがって、隣り合う天井受ワイヤ20,20の隙間から天井板3が落下するのを防止できる。また、天井受ワイヤ20と補強塗膜層を組み合わせることで、天井受ワイヤ20および吊ワイヤ10の設置箇所を低減しつつ、天井材落下防止効果を得ることができる。また、補強塗膜層は、天井板3の表面に繊維強化塗料を塗布することで形成されているので、天井板3bの表面に容易に形成することができる。したがって、従来の天井落下防止を図るためのネットの設置作業と比較して工期の短縮と施工費用の低減を図ることができる。さらに、補強塗膜層は、天井受ワイヤ20と交差する方向に延在しているので、補強塗膜層と天井受ワイヤ20とが格子状に配置される。これによって、天井板落下防止効果をより一層高めることができる。
なお、補強塗膜層は必ずしも設けなくてもよい。なお、補強塗膜層を設けない場合等は、天井受ワイヤ20は、格子状に配置してもよい。
【0023】
図4および図5にも示すように、把持部材30は、天井受ワイヤ20を把持する部材であって、ワイヤ支持ボルト31と、ナット32と、支持金具33とを備えている。
【0024】
ワイヤ支持ボルト31は、軸部31aが下方に向かって突出するように配置され、頭部31bが支持金具33の上面に設置される。ワイヤ支持ボルト31の軸部31aは、スリット34を備え、二股状に形成されている。軸部31aのスリット34の内側には、天井受ワイヤ20が挿通される。ナット32は、ワイヤ支持ボルト31の軸部31aの先端部に螺合されるものであって、ワッシャと共に支持金具33の下側に配置される。ナット32を天井受ワイヤ20が挿通されたワイヤ支持ボルト31の軸部31aの先端部に螺合することで、天井受ワイヤ20が挟持される。
【0025】
図3にも示すように、支持金具33は、金属プレートを折り曲げて形成されている。支持金具33は、段差凸部35と、ワイヤ支持ボルト受部36と、立上壁部37とを備え、側面視でW字状のクランク形状を呈している。段差凸部35は、支持金具33の長手方向中央部で、上方に突出して形成されている。段差凸部35は、側面視で門型を呈しており、一対の縦壁部35a,35aと、天壁部35bとを備えている。天壁部35bには、ボルト貫通孔35cが形成されている。段差凸部35の内側には、後記する支持部材50の金具支持ボルト52が上向きに配置される。金具支持ボルト52の軸部52aは、ボルト貫通孔35cに、下方から上方に向けて挿通される。金具支持ボルト52の頭部52bは、縦壁部35a,35a間に配置され、縦壁部35aの内側面に頭部52bの側面が当接し、金具支持ボルト52の回り止めが為される(図1の(c)参照)。
【0026】
ワイヤ支持ボルト受部36は、ワイヤ支持ボルト31を下側から支持する部分であって、段差凸部35を囲むように支持金具33の両外側に設けられている。ワイヤ支持ボルト受部36は、段差凸部35の縦壁部35aの下端部に連続して直角に折り曲げられて外側に延在している。ワイヤ支持ボルト受部36には、ボルト貫通孔36cが形成されており、ワイヤ支持ボルト31の軸部31aが上方から下方に向けて挿通される。ワイヤ支持ボルト31の頭部31bは、ワイヤ支持ボルト受部36の上に載置されるとともに、縦壁部35aの外側面に頭部31bの側面が当接する。これによって、ワイヤ支持ボルト31の回り止めが為され、ワイヤ支持ボルト31が回転不能となる。
【0027】
立上壁部37は、ワイヤ支持ボルト受部36の外側端部に連続し、直角に折り曲げられて上方に立ち上がっており、支持金具33の両端部に設けられている。立上壁部37は、段差凸部35と同等の高さ寸法を備えており、段差凸部35の縦壁部35aと間隔をあけて互いに平行に対向している。立上壁部37と段差凸部35の縦壁部35aとの間に、ワイヤ支持ボルト31の頭部31bが配置され、立上壁部37の内側面と縦壁部35aの外側面とに、頭部31bの側面が当接する。立上壁部37は、支持金具33の側方からワイヤ支持ボルト31の頭部31bを隠す目隠し板の役目と、縦壁部35aと合わさって、ワイヤ支持ボルト31の回り止めを強化する役目を果たす。
【0028】
支持部材50は、把持部材30を支持する部材であって、吊ワイヤ10に接続されている。支持部材50は、支持部51と、金具支持ボルト52とを備えている。
【0029】
支持部51は、吊ワイヤ10に接続されるとともに、天井板3の上面に配置される部材である。支持部51は、横板部53と縦板部54とを備え、断面L字形状を呈する金具である。横板部53は、天井板3の上に載置される。横板部53には、金具支持ボルト52の軸部52aが挿通する貫通孔55と、貫通孔55の側部に形成された一対の係止孔56,56とを備えている。縦板部54は、横板部53に連続して直角に折り曲げられて形成されている。縦板部54は、横板部53と同等の形状であって、貫通孔55と係止孔56,56とを備えている。縦板部54の係止孔56には、吊ワイヤ10の下端部の係止部11が挿通され、吊ワイヤ10が接続される。横板部53と縦板部54とが同じ形状であるので、汎用性が高く横板部53と縦板部54とを併用できる。なお、支持部51の形状は、前記構成に限定されるものではなく、横板部53が貫通孔55を備え、縦板部54が係止孔56を少なくとも一つ備えていればよい。
【0030】
金具支持ボルト52は、把持部材30の支持金具33を支持部51に連結する部材である。金具支持ボルト52は、軸部52aが上向きになるように配置され、頭部52bが支持金具33の段差凸部35に装着されている。軸部52aは、段差凸部35のボルト貫通孔35c、後記する天井板3のボルト挿通孔9および支持部材50の支持部51の横板部53の貫通孔55を挿通し、横板部53の上方に突出している。軸部52aの突出部分には、ナット57が2つ螺合され、把持部材30の支持金具33と天井板3と支持部材50の支持部51とが互いに固定される。
【0031】
本実施形態では、天井板3は、第一天井板3aと第二天井板3bとの二層構造となっている。第一天井板3aは上側に位置し、第二天井板3bは下側に位置している。第二天井板3bの厚さ寸法は、支持金具33の高さ寸法以上である。第二天井板3bには、把持部材30の支持金具33を収容する金具収容部8が形成されている。金具収容部8は、支持金具33が収容可能な平面視矩形形状を呈し、第二天井板3bを貫通して形成されている。このように、第二天井板3bが金具収容部8を備えることで、支持金具33を天井板3内に収容することができ、天井面から突出しないので、美観を向上することができる。
なお、第二天井板3bの厚さ寸法が、支持金具33の高さ寸法より小さい場合には、支持金具33は、第二天井板3bの上方に突出するため、第一天井板3aの底部にも金具収容部が形成される。第一天井板3aの金具収容部の高さは、支持金具33の第二天井板3bから上方に突出した寸法と同等にすればよい。これによって、支持金具33を天井板3内に収容することができ、天井面から突出しないので、美観を向上することができる。
【0032】
第一天井板3aには、支持部材50の金具支持ボルト52の軸部52aが挿通するボルト挿通孔9が形成されている。ボルト挿通孔9は、第二天井板3bの金具収容部8の重心位置(対角線の交点)の上方に配置され、上下方向に延在して形成されている。支持部材50の支持部51は、第一天井板3aのボルト挿通孔9の周縁部の上に載置されて、天井板3に係止される。
【0033】
前記構成の天井落下防止構造1を組み付けるに際しては、図5に示すように、まず、支持金具33の段差凸部35に金具支持ボルト52を上向きに設置しておく。そして、支持金具33のワイヤ支持ボルト受部36の上方から、ボルト貫通孔36cにワイヤ支持ボルト31を挿通させ、下方に突出した軸部31aのスリット34に天井受ワイヤ20を挿入させる。ワイヤ支持ボルト31の軸部31aに下方からワッシャを装着するとともにナット32を螺合させる。このとき、ワイヤ支持ボルト31の頭部31bが、段差凸部35の縦壁部35aの外側面と、立上壁部37の内側面に当接するので、ワイヤ支持ボルト31が回転せず、ナット32の装着を行い易い。これによって、支持金具33が天井受ワイヤ20を支持することとなる。
【0034】
その後、図2に示すように、支持金具33を、下方から第二天井板3bの金具収容部8に挿入する。すると、金具支持ボルト52の軸部52aが第一天井板3aのボルト挿通孔9に挿通され、第一天井板3aの上方へ突出する。そして、その上から支持部材50の支持部51を設置して、貫通孔55に金具支持ボルト52の軸部52aを挿通させた後、上方に突出した金具支持ボルト52の軸部52aにナット57を螺合させる。このとき、金具支持ボルト52の頭部52bが、段差凸部35の縦壁部35aの内側面に当接しているので、金具支持ボルト52が回転せず、ナット57の装着を行い易い。これによって、把持部材30の支持金具33と、天井板3と、支持部材50の支持部51とが互いに固定されて、支持金具33を備える把持部材30が支持部材50に支持されることになる。
【0035】
図6乃至図8に示すように、吊ワイヤ10の上端部は、上部固定金具70を介して吊ボルト5に接続されている。上部固定金具70は、一対の挟持部材71と、ワイヤ支持部材72とを備えている。挟持部材71は、吊ボルト5を挟んで吊ボルト5に固定される部位である。挟持部材71は、平板部73aと湾曲部73bとを備えている。平板部73aは、ボルト75およびナット76を装着する部分であり、湾曲部73bの両側に連続して形成されている。平板部73aには、ボルト挿通孔77が形成されている(図8参照)。湾曲部73bは、吊ボルト5のネジ部に螺合して係止される部分である。湾曲部73bは、平面視で円弧形状を呈しており、吊ボルト5の外径寸法と同等の内径寸法を備えている。湾曲部73bの内周面には、吊ボルト5のネジ部と係合するメネジ部が形成されている。
【0036】
ワイヤ支持部材72は、吊ワイヤ10を支持して挟持部材71に接続する部材である。ワイヤ支持部材72は、断面溝形の金属プレートにて構成されている。ワイヤ支持部材72には、係止孔74が形成されている。係止孔74は、吊ワイヤ10の係止部11が挿通される孔であって、ワイヤ支持部材72の長手方向に沿って間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)設けられている。ワイヤ支持部材72の一端部には、ボルト挿通孔77が形成されている。このボルト挿通孔77は、挟持部材71の平板部73aのボルト挿通孔77と同等の形状である。ワイヤ支持部材72の一端部は、一対の挟持部材71,71の平板部73a,73a間に挟まれ、ワイヤ支持部材72のボルト挿通孔77が、平板部73aのボルト挿通孔77と同軸状に配置される。挟持部材71,71の平板部73a,73aのボルト挿通孔77,77と、ワイヤ支持部材72のボルト挿通孔77とにボルト75を挿通させ、ナット76を螺合させることで、ワイヤ支持部材72が挟持部材71に接続される。なお、ワイヤ支持部材72の傾斜角度は、吊ボルト5と支持部材50との位置関係に応じて適宜設定される。
【0037】
前記構成の上部固定金具70を組み付けるに際しては、図8に示すように、予め吊ワイヤ10の係止部11を、ワイヤ支持部材72の係止孔74に挿通させておく。一対の挟持部材71,71により、吊ボルト5とワイヤ支持部材72の一端部を挟んで、ボルト75を各ボルト挿通孔77に挿通させて、ナット76を螺合させる(図6参照)。これによって、ワイヤ支持部材72が挟持部材71に接続され、吊ワイヤ10が吊ボルト5に係止される。
【0038】
次に、本実施形態に係る天井落下防止構造1および接続部材7による作用効果を説明する。かかる天井落下防止構造1および接続部材7によれば、天井板3には、金具支持ボルト52の軸部52aが通過できる開口部(金具収容部8およびボルト挿通孔9)があれば良く、天井板3に形成される開口部が小さくなるので、室内から上方の天井裏が見えない。また、天井板3の下に露出されるのは天井受ワイヤ20と、支持金具33の下面と、ワイヤ支持ボルト31の下端部と、ナット32だけであるので、室内側から支持金具33の側面が見えなくなる。したがって、天井面の美観に優れる。
【0039】
また、吊ボルト5に係止された吊ワイヤ10と天井受ワイヤ20とが、支持部材50と把持部材30を介して接続されているので、万一、天井材2が吊ボルト5から外れても、吊ワイヤ10、支持部材50および把持部材30を介して接続された天井受ワイヤ20で、天井材2を支持することができる。
【0040】
さらに、ワイヤ支持ボルト31は、段差凸部35の縦壁部35aに当接して係止されるので、ワイヤ支持ボルト31が回転しない。したがって、ナット32の装着を容易に行うことができる。
【0041】
本実施形態では、天井板3は、第一天井板3aと第二天井板3bにて構成され、上下に二層積層されている。そして、下側の第二天井板3bには、金具収容部8が貫通して形成され、上側の第一天井板3aには、金具支持ボルト52の軸部52aが貫通するボルト挿通孔9が形成されている。金具収容部8は、板材である第二天井板3bに貫通孔を形成するだけで、容易に形成することができる。
【0042】
また、本実施形態の接続部材7では、支持金具33の端部に形成された立上壁部37が、支持金具33を長手方向の外側から見たときに、目隠し板の役目を果たすことができる。これによって、天井板3に金具収容部が無く、天井板3の下側に支持金具33が露出される場合においても、支持金具33の端部においてワイヤ支持ボルト31の頭部31bを隠すことができるので、美観が良好となる。
【0043】
図9を参照しながら本実施形態の第一の変形例に係る天井落下防止構造および接続部材について説明する。図9に示すように、かかる天井落下防止構造および接続部材は、ワイヤ支持ボルト31に螺合するナット32aが、前記実施形態と異なる。ナット32aは、袋ナットが用いられており、ワイヤ支持ボルト31の軸部31aの下端部を覆っている。なお、その他の構成については、前記実施形態と同じ構成であるので、同じ符号を付して説明を省略する。第一の変形例の構成によれば、ワイヤ支持ボルト31の軸部31aが室内側から見えなくなるので、美観がより一層向上する。
【0044】
図10および図11を参照しながら本実施形態の第二の変形例に係る天井落下防止構造について説明する。図10に示すように、本変形例に係る天井落下防止構造は、天井板3の構成と上部固定金具80の構成が、前記実施形態と異なる。本変形例に係る天井板3は、一枚の板材からなる単層で構成されている。天井板3の構成は、前記実施形態の第二天井板3bの構成と同様であり、下面から上面にかけて貫通する金具収容部8を備えている。図10では、支持部材50の支持部51は、金具収容部8の上に位置しているが、図10の紙面表裏方向においては、天井板3の金具収容部8の両側部の天井板3の板材上に掛け渡されて載置されて係止されている。
【0045】
図11に示すように、本変形例に係る上部固定金具80は、係止金具81と固定ボルト82とを備えている。係止金具81は、吊ボルト5に係止される金属部材であって、係止フック部83と、ボルト固定部84と、連結部85とを備えている。係止フック部83は、吊ボルト5に側方から掛け止められる部分であり、鉤形状を呈している。ボルト固定部84は、係止フック部83に対向しており、ボルト孔86を備えている。連結部85は、係止フック部83とボルト固定部84とを連結する部分である。係止フック部83と、ボルト固定部84と、連結部85とは一体的に形成されている。固定ボルト82は、吊ボルト5を押圧することで、上部固定金具80を吊ボルト5に固定する部材である。固定ボルト82は、ボルト固定部84のボルト孔86に螺合させて、吊ボルト5に向けて突出させる。固定ボルト82の軸部の先端を吊ボルト5に押し付けることで、固定ボルト82と係止フック部83とで吊ボルト5を挟持する。これによって、上部固定金具80が吊ボルト5に固定される。
【0046】
吊ワイヤ10を係止するに際しては、図11の(b)に示すように、吊ワイヤ10の係止部11を予め吊ボルト5に掛け止めておき、係止部11の下側に上部固定金具80を固定する。上部固定金具80の固定は、固定ボルト82の先端部をボルト固定部84寄りに近接させた状態で、上部固定金具80を吊ボルト5に掛け止める。そして、図11の(c)に示すように、固定ボルト82を回転させて、固定ボルト82の先端部を突出させて、吊ボルト5の側面に押し付ける。これによって、吊ボルト5が係止フック部83と固定ボルト82によって挟持され、上部固定金具80が固定される。そして、上部固定金具80の上方の吊ボルト5に係止部11が巻き掛けられた吊ワイヤ10が係止される。前記構成の上部固定金具80によれば、構成が簡単であり、設置するための手間および時間を低減できる。
【0047】
以上、本発明を実施するための形態についてそれぞれ説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、材質、形状や大きさなど適宜設計変更が可能である。たとえば、前記実施形態では、天井板3が第一天井板3aと第二天井板3bの二層構造で形成され、第一天井板3aにボルト挿通孔9が形成され、第二天井板3bに金具収容部8が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、天井板を、第一天井板3aと第二天井板3bとを合わせた厚さ寸法の一層構造とし、下側の金具収容部と上側のボルト貫通孔とを一体で段差状に形成してもよい。このような構成にすれば、天井板が単層構造となるので、複層構造の天井板よりも設置手間を低減することができる。
また、天井板を三層以上の多層構造としてもよい。この場合、金具収容部は、下側の複数の天井板に跨って形成し、ボルト貫通孔は、上側の複数の天井板に跨って形成すればよい。このような構成にすれば、天井板の枚数を調整することで多種の天井板の厚さに対応可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 天井材落下防止構造
2 天井材
3 天井板
4 天井下地材
5 吊ボルト
8 金具収容部
10 吊ワイヤ
20 天井受ワイヤ
30 把持部材
31 ワイヤ支持ボルト
31a 頭部
31b 軸部
32 ナット
33 支持金具
35 段差凸部
37 立上壁部
50 支持部材
51 支持部
52 金具支持ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11