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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074109
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/22 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
B66F9/22 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185182
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】丸山 大輔
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333FB10
3F333FD20
3F333FH04
(57)【要約】
【課題】運転開始時における産業車両の作動性を向上させる。
【解決手段】フォークリフト10はバッテリ14を動力源とする。フォークリフト10は、作動油で満たされた油室81rが内部に形成されたブレーキハウジングと、駆動輪と共に油室81rにて回転するブレーキ機構と、作動油が貯留される貯留タンク41と、油室81rと貯留タンク41との間で作動油を循環させる循環流路43と、バッテリ14からの給電によって循環流路43に作動油を流すポンプ42と、ポンプ42の駆動を制御する制御部30と、作動油の温度を検出する温度センサ31と、を備える。制御部30は、バッテリ14の駆動停止中に作動油の温度が所定温度より低い場合にポンプ42を駆動させる駆動処理を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリを動力源とする産業車両であって、
作動油で満たされた油室が内部に形成されたブレーキハウジングと、
駆動輪と共に前記油室にて回転するブレーキ機構と、
前記作動油が貯留される貯留タンクと、
前記油室と前記貯留タンクとの間で前記作動油を循環させる循環流路と、
前記バッテリからの給電によって前記循環流路に前記作動油を流すポンプと、
前記ポンプの駆動を制御する制御部と、
前記作動油の温度を検出する温度センサと、を備え、
前記制御部は、前記バッテリの駆動停止中に前記作動油の温度が所定温度より低い場合に前記ポンプを駆動させる駆動処理を行うことを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記制御部は、前記バッテリの充電中に前記駆動処理を行う請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
前記産業車両は、油圧によって駆動する荷役装置、および前記荷役装置と前記貯留タンクとの間で前記作動油を循環させる荷役流路を備え、
前記ポンプは、前記バッテリからの給電によって前記循環流路及び前記荷役流路に前記作動油を流す請求項1又は請求項2に記載の産業車両。
【請求項4】
前記制御部は、前記駆動処理の実行中に前記作動油の温度が所定温度以上である場合に前記ポンプの駆動を停止させる停止処理を行う請求項1又は請求項2に記載の産業車両。
【請求項5】
前記産業車両は、前記作動油を加熱するヒータを備え、
前記制御部は、前記駆動処理の実行中に前記ヒータによって前記作動油を加熱し、前記停止処理の実行中に前記ヒータによる前記作動油の加熱を停止させる請求項4に記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の産業車両は、バッテリを駆動源とするものである。こうした産業車両に採用されるブレーキ機構としては、例えば特許文献2に記載のブレーキ機構が挙げられる。特許文献2に記載のブレーキ機構は、ハウジングの内部に形成された油室に位置するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-49353号公報
【特許文献2】特開2012-237322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリを駆動源とする産業車両に上記のブレーキ機構を採用した場合、油室に満たされる作動油の温度が低下すると、作動油の粘度が高まる。ブレーキ機構が産業車両の駆動輪と共に回転するものであると、粘度の高まった作動油によって油室にてブレーキ機構が回転しにくくなることにより、駆動輪が回転しにくくなる。エンジンを駆動源とする産業車両であれば、産業車両の運転開始時にエンジンを熱源として作動油が早期に昇温するため、作動油の温度低下に伴う産業車両の作動性の低下を短時間で解消できる。これに対して、バッテリを駆動源とする産業車両においては、上記のようにエンジンを熱源とした作動油の昇温が生じない分、駆動輪が正常に回転する作動油の粘度となるまで作動油を昇温させるのに時間を要する。そのため、バッテリを駆動源とする産業車両においては、作動油の温度低下に伴って作動油の粘度が高まると、運転開始時における産業車両の作動性が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する産業車両は、バッテリを動力源とする産業車両であって、作動油で満たされた油室が内部に形成されたブレーキハウジングと、駆動輪と共に前記油室にて回転するブレーキ機構と、前記作動油が貯留される貯留タンクと、前記油室と前記貯留タンクとの間で前記作動油を循環させる循環流路と、前記バッテリからの給電によって前記循環流路に前記作動油を流すポンプと、前記ポンプの駆動を制御する制御部と、前記作動油の温度を検出する温度センサと、を備え、前記制御部は、前記バッテリの駆動停止中に前記作動油の温度が所定温度より低い場合に前記ポンプを駆動させる駆動処理を行うことを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、バッテリの駆動停止中に、駆動処理の実行によって作動油が循環流路を流れるようになる。油室と貯留タンクとの間で作動油が循環するため、駆動処理の実行中は作動油が昇温する。作動油を昇温させることにより、油室にてブレーキ機構が回転しやすくなる。これにより、ブレーキ機構と共に回転する駆動輪が回転しやすくなるため、産業車両の作動性を向上させることができる。こうした構成によれば、作動油の温度によらずバッテリの駆動停止中には常にポンプを駆動させない場合と比較して、作動油を昇温させた状態で産業車両の運転を開始できる。したがって、運転開始時における産業車両の作動性を向上させることができる。
【0007】
産業車両において、前記制御部は、前記バッテリの充電中に前記駆動処理を行ってもよい。
上記構成によれば、駆動処理においては、ポンプの駆動に伴ってバッテリの電力が用いられるが、併せてバッテリの充電が行われるためバッテリの充電量が低下しにくい。したがって、バッテリの充電中か否かに関係なく駆動処理が行われる場合と比較して、駆動処理の実行に伴うバッテリの充電量の低下を抑制できる。
【0008】
前記産業車両は、油圧によって駆動する荷役装置、および前記荷役装置と前記貯留タンクとの間で前記作動油を循環させる荷役流路を備え、産業車両において、前記ポンプは、前記バッテリからの給電によって前記循環流路及び前記荷役流路に前記作動油を流してもよい。
【0009】
上記構成によれば、制御部による駆動処理の実行中に、循環流路に加えて荷役流路にも作動油が流れるようになる。荷役装置と貯留タンクとの間で作動油が循環するため、駆動処理の実行中は作動油が昇温する。したがって、駆動処理の実行中に循環流路にのみに作動油が流れる場合と比較して、作動油を早期に昇温できるため、運転開始時における産業車両の作動性をさらに向上させることができる。
【0010】
産業車両において、前記制御部は、前記駆動処理の実行中に前記作動油の温度が所定温度以上である場合に前記ポンプの駆動を停止させる停止処理を行ってもよい。
上記構成によれば、仮に駆動処理の実行開始から予め設定された所定時間が経過したら駆動処理を終了させる場合には、所定時間の長さによっては作動油の温度が所定温度以上になってからも駆動処理が継続されるが、そうした駆動処理の継続が生じない。したがって、駆動処理が過剰な時間行われることによるバッテリの充電量の消費を抑制できる。
【0011】
前記産業車両は、前記作動油を加熱するヒータを備え、産業車両において、前記制御部は、前記駆動処理の実行中に前記ヒータによって前記作動油を加熱し、前記停止処理の実行中に前記ヒータによる前記作動油の加熱を停止させる。
【0012】
上記構成によれば、ヒータによる作動油の加熱を行う分だけ、駆動処理の実行中に作動油が早期に昇温する。したがって、運転開始時における産業車両の作動性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、運転開始時における産業車両の作動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】フォークリフトを示す側面図である。
図2】フォークリフトを示す模式図である。
図3】フロントアクスルを示す断面図である。
図4】制御部が行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、産業車両をフォークリフトに具体化した一実施形態について図面にしたがって説明する。なお、以下の説明において、「前」「後」「下」「左」「右」は、フォークリフトを運転する作業者がフォークリフトの前方(前進方向)を向いた状態を基準とした場合の「前」「後」「下」「左」「右」を示すものとする。
【0016】
<フォークリフトの構成>
図1に示すように、フォークリフト10は、車体11と、2つの駆動輪11fと、2つの操舵輪11rと、走行モータ13aと、荷役モータ13bと、バッテリ14と、を備えている。なお、図1では、1つの駆動輪11fと1つの操舵輪11rとが図示されている。2つの駆動輪11fは、車体11の前下部に配置されている。2つの操舵輪11rは、車体11の後下部に配置されている。走行モータ13a、荷役モータ13b、及びバッテリ14は、車体11に搭載されている。
【0017】
フォークリフト10は、油圧によって駆動する荷役装置12を備えている。荷役装置12は、車体11の前方に設けられている。
バッテリ14は、充放電可能なものであれば、どのようなものであってもよい。バッテリ14としては、例えば、二次電池を用いることができる。二次電池としては、例えば、鉛蓄電池やリチウムイオン二次電池などが挙げられる。
【0018】
走行モータ13aは、駆動輪11fの駆動源となるモータである。荷役モータ13bは、荷役装置12に作動油を供給するためのモータである。走行モータ13a及び荷役モータ13bは、バッテリ14からの給電によって駆動する。走行モータ13aが駆動することにより、フォークリフト10は走行動作を行う。荷役モータ13bが駆動することにより、フォークリフト10は荷役動作を行う。つまり、フォークリフト10は、バッテリ14を動力源とするものである。
【0019】
荷役装置12は、マスト21と、リフトブラケット22と、2つのフォーク23と、リフトシリンダ24と、ティルトシリンダ25と、を有している。マスト21は、アウタマスト21a及びインナマスト21bを有している。インナマスト21bは、アウタマスト21aに対して昇降可能に設けられている。リフトブラケット22は、インナマスト21bに取り付けられている。フォーク23は、リフトブラケット22に取り付けられている。リフトブラケット22及びフォーク23は、インナマスト21bとともに昇降可能である。リフトシリンダ24は、インナマスト21bを昇降動作させる。ティルトシリンダ25は、マスト21をフォークリフト10の前後方向に傾動動作させる。リフトシリンダ24及びティルトシリンダ25は、油圧シリンダである。
【0020】
図2に示すように、フォークリフト10は、パワーステアリングシリンダ26と、パワーステアリングバルブ27と、を備えている。パワーステアリングバルブ27は、パワーステアリングシリンダ26への作動油の給排を切り替える。パワーステアリングシリンダ26は、図示しない作動油室を有している。パワーステアリングシリンダ26に対する作動油の給排に伴って、作動油室に対する作動油の給排が行われる。作動油室に対する作動油の給排によって、操舵輪11rに連結されている図示しないロッドが駆動する。ロッドの駆動によって、操舵輪11rは左右のいずれか一方を向くように操舵される。
【0021】
荷役装置12は、コントロールバルブ33を備えている。コントロールバルブ33は、リフトシリンダ24及びティルトシリンダ25の各々に給排される作動油の流量を制御する油圧アクチュエータである。また、作動油は、コントロールバルブ33を経由してパワーステアリングバルブ27に対して給排される。
【0022】
コントロールバルブ33は、不図示の操作部材の操作に応じて開閉状態が切り替わる。操作部材は、例えば、リフトシリンダ24及びティルトシリンダ25の各々の動作を運転者が指示するための操作レバーである。コントロールバルブ33に作動油が供給された状態でコントロールバルブ33が開状態に切り替わると、リフトシリンダ24及びティルトシリンダ25に作動油が供給されるとともに、リフトシリンダ24及びティルトシリンダ25から作動油が排出される。
【0023】
フォークリフト10は、作動油が貯留される貯留タンク41と、循環流路43と、ポンプ42と、を備えている。循環流路43は、第1流路43aと、第2流路43bと、第3流路43cと、を有する。第1流路43aは、貯留タンク41からポンプ42に作動油を流す。第2流路43bは、ポンプ42から後述する油室81rに作動油を流す。第3流路43cは、油室81rから貯留タンク41に作動油を流す。こうして第1流路43a、第2流路43b、及び第3流路43cに作動油を流すことによって、循環流路43は、油室81rと貯留タンク41との間で作動油を循環させる。
【0024】
ポンプ42は、バッテリ14から給電された荷役モータ13bによって駆動する。貯留タンク41に貯留された作動油は、ポンプ42の駆動に伴って、循環流路43を循環する。すなわち、ポンプ42は、バッテリ14からの給電によって循環流路43に作動油を流す。
【0025】
フォークリフト10は、荷役流路44を備える。荷役流路44は、供給流路44aと、排出流路44bと、を備える。荷役流路44は、第1流路43aを含む。ポンプ42の駆動に伴って、作動油は、第1流路43aを介して貯留タンク41からポンプ42に流れた後、供給流路44aを介してポンプ42からコントロールバルブ33に供給される。作動油は、排出流路44bを介してコントロールバルブ33から貯留タンク41に排出される。こうして、作動油は、ポンプ42の駆動に伴って、コントロールバルブ33と貯留タンク41との間で循環する。ポンプ42は、バッテリ14からの給電によって循環流路43及び荷役流路44に作動油を流す。荷役流路44は、荷役装置12と貯留タンク41との間で作動油を循環させるものである。
【0026】
フォークリフト10は、作動油を加熱するヒータ35を備える。ヒータ35の駆動によって、貯留タンク41に貯留された作動油が加熱される。フォークリフト10は、温度センサ31と、イグニッションスイッチ32と、を備えている。温度センサ31は、作動油の温度Tを検出する。具体的には、温度センサ31は、貯留タンク41に貯留された作動油の温度Tを検出する。
【0027】
<フロントアクスル>
図3に示すように、フォークリフト10は、フロントアクスル50を備える。フロントアクスル50は、アクスルシャフト51と、アクスルブラケット60と、アクスルシャフト51が収容されたアクスルハウジング70と、ブレーキ装置80と、ハブ15と、を備える。フロントアクスル50は、駆動輪11fを回転させる。アクスルハウジング70は、アクスルブラケット60に連結されている。
【0028】
アクスルシャフト51は、シャフト本体53と、シャフトフランジ55と、を備える。以下ではシャフト本体53の軸線が延びる方向を軸線方向Zという。シャフトフランジ55は、シャフト本体53の軸線方向Zの第1端部54に設けられている。シャフトフランジ55はハブ15に連結されている。ハブ15には、駆動輪11fのホイール17が固定されている。アクスルシャフト51の回転により、ハブ15及び駆動輪11fが一体となって回転する。これにより、フォークリフト10が走行する。
【0029】
フロントアクスル50は、軸受95を備える。軸受95は、ハブ15を回転可能な状態で支持している。
アクスルブラケット60は、筒状である。アクスルブラケット60は、シャフト本体53の第1端部54とは反対側の端部である第2端部58寄りに配置されている。アクスルブラケット60は、アクスルブラケット60の軸線が延びる方向と軸線方向Zとが一致するように配置されている。アクスルブラケット60には、第1挿通孔61が形成されている。第1挿通孔61には、シャフト本体53が挿通されている。なお、アクスルブラケット60は、不図示の取付部を備えている。この取付部が車体11に取り付けられることにより、フロントアクスル50はフォークリフト10に取り付けられている。
【0030】
アクスルハウジング70は、筒状の本体71を備える。アクスルハウジング70は、本体71の軸線が延びる方向と軸線方向Zとが一致するように配置されている。アクスルハウジング70は、軸線方向Zにおいてアクスルブラケット60と並んで設けられている。アクスルハウジング70は、軸線方向Zにおいてアクスルブラケット60よりも第1端部54寄りに配置されている。アクスルハウジング70の本体71には、第2挿通孔73が形成されている。第2挿通孔73にはシャフト本体53が挿通されている。
【0031】
ブレーキ装置80は、ブレーキハウジング81と、ブレーキハウジング81に収容されたブレーキ機構90と、を備える。言い換えると、フォークリフト10は、ブレーキハウジング81と、ブレーキ機構90と、を備える。ブレーキハウジング81は、アクスルハウジング70に連結されている。
【0032】
ブレーキハウジング81は、アクスルハウジング70を覆うような筒状である。ブレーキハウジング81は、ブレーキハウジング81の軸線が延びる方向と軸線方向Zとが一致するように配置されている。ブレーキハウジング81は、第1ハウジング82及び第2ハウジング83を備える。
【0033】
第1ハウジング82は、筒部84と、筒部84から筒部84の軸心に向けて延びる壁部85と、を備える。壁部85には、アクスルハウジング70が挿通されるアクスル挿通孔86が形成されている。第2ハウジング83は、筒状である。第2ハウジング83は、筒部84に連結されている。
【0034】
ブレーキハウジング81の内部には、作動油で満たされた油室81rが形成されている。油室81rは、第1ハウジング82、第2ハウジング83、ハブ15、及びアクスルハウジング70によって形成されている。油室81rは、アクスルハウジング70の外周面に沿って位置している。
【0035】
ブレーキ機構90は、油室81rに設けられている。本実施形態のブレーキ機構90は、湿式多板式ブレーキである。ブレーキ機構90は、フリクションプレート91と、メーティングプレート92と、ピストン93と、を備える。フリクションプレート91は、ハブ15に固定されている。これにより、フリクションプレート91は、ハブ15と共に回転することによって、駆動輪11fと一体となって回転可能である。したがって、ブレーキ機構90は、駆動輪11fと共に油室81rにて回転する。メーティングプレート92は、第2ハウジング83の内周面に固定されている。ピストン93は、第1ハウジング82に収容されている。
【0036】
フリクションプレート91とメーティングプレート92とは、軸線方向Zに交互に並んで配置されている。ピストン93は、軸線方向Zに移動可能である。ピストン93は、軸線方向Zに移動することにより、メーティングプレート92に対して押圧する押圧位置と、メーティングプレート92に対する押圧を解除する解除位置と、で変位可能である。
【0037】
<制御部>
図2に示すように、フォークリフト10は、制御部30を備えている。制御部30は、温度センサ31及びイグニッションスイッチ32と電気的に接続されている。制御部30には、温度センサ31から検出された作動油の温度Tが入力される。フォークリフト10の運転者によってイグニッションスイッチ32が操作されると、イグニッションスイッチ32は制御部30に操作信号を出力する。
【0038】
制御部30は、CPUやGPU等の図示しないプロセッサと、RAM及びROM等からなる図示しない記憶部と、を備えている。記憶部は、処理をプロセッサに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御部30は、ASIC:Application Specific Integrated CircuitやFPGA:Field Programmable Gate Array等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御部30は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0039】
制御部30は、荷役モータ13bの駆動と駆動停止とを切り替え可能である。すなわち、制御部30は、荷役モータ13bの制御によって、ポンプ42の駆動を制御する。制御部30は、ポンプ42の駆動と駆動停止とを切り替え可能である。制御部30は、ヒータ35の駆動と駆動停止とを切り替え可能である。
【0040】
<駆動処理および停止処理>
制御部30は、バッテリ14の駆動停止中に作動油の温度Tが所定温度Tpより低い場合にポンプ42を駆動させる駆動処理を行う。具体的には、制御部30は、イグニッションスイッチ32がオフ操作されてからオン操作されるまでの間に、バッテリ14の駆動停止中であるとして駆動処理を行う。駆動処理において、制御部30は、荷役モータ13bを駆動することによってポンプ42を駆動させる。なお、所定温度Tpは、作動油が所定温度Tpより低い場合に、作動油の粘度が高まることによって駆動輪11fの回転が低下するおそれのある温度である。所定温度Tpは、実験などによって予め設定された値である。所定温度Tpは例えば0(ゼロ)度である。また、本実施形態の制御部30は、バッテリ14の充電中に駆動処理を行う。
【0041】
制御部30は、駆動処理の実行中に作動油の温度Tが所定温度Tp以上である場合にポンプ42の駆動を停止させる停止処理を行う。具体的には、停止処理において、制御部30は、荷役モータ13bの駆動を停止することによってポンプ42の駆動を停止する。
【0042】
制御部30は、駆動処理の実行中にヒータ35によって作動油を加熱する。制御部30は、停止処理の実行中にヒータ35による作動油の加熱を停止させる。
次に、制御部30によって行われる処理の手順の一例について説明する。この処理は、バッテリ14の駆動停止中であるときに、所定周期で制御部30によって繰り返し行われる。
【0043】
図4に示すように、処理が開始されると、制御部30は、バッテリ14の充電中か否かを判断する(ステップS110)。バッテリ14の充電中ではないと判断すると(ステップS110:NO)、制御部30は本処理を一旦終了させる。
【0044】
バッテリ14の充電中であると判断すると(ステップS110:YES)、制御部30は、作動油の温度Tが所定温度Tpより低いか否かを判断する(ステップS120)。作動油の温度Tが所定温度Tp以上であると判断すると(ステップS120:NO)、制御部30は本処理を一旦終了させる。
【0045】
作動油の温度Tが所定温度Tpより低いと判断すると(ステップS120:YES)、制御部30は、ポンプ42を駆動させた後(ステップS130)、ヒータ35を駆動させる(ステップS140)。
【0046】
次に、制御部30は、作動油の温度Tが所定温度Tp以上であるか否かを判断する(ステップS150)。作動油の温度Tが所定温度Tpより低いと判断すると(ステップS150:NO)、制御部30はステップS150の処理を再び行う。制御部30は、ステップS150にて作動油の温度Tが所定温度Tpより低いと判断する間は、ステップS150の処理を繰り返し行う。
【0047】
作動油の温度Tが所定温度Tp以上であると判断すると(ステップS150:YES)、制御部30は、ポンプ42の駆動を停止させた後(ステップS160)、ヒータ35の駆動を停止させる(ステップS170)。その後、制御部30は、本処理を一旦終了させる。
【0048】
[実施形態の作用]
実施形態の作用について説明する。
低温環境下で長時間、フォークリフト10を停車させた場合などには、作動油の温度低下によって作動油の粘度が高まることがある。
【0049】
図3に示すように、ブレーキ機構90は、駆動輪11fと共に油室81rにて回転する。そのため、作動油の温度低下に伴って作動油の粘度が高まると、油室81rの作動油によってブレーキ機構90が回転しにくくなることにより、ブレーキ機構90と共に回転する駆動輪11fが回転しにくくなる。
【0050】
本実施形態によれば、制御部30は、バッテリ14の駆動停止中に作動油の温度Tが所定温度Tpより低い場合にポンプ42を駆動させる駆動処理を行う。本実施形態においては、図4のステップS120、ステップS130、及びステップS140が駆動処理に相当する。
【0051】
駆動処理が行われることにより、バッテリ14の駆動停止中にポンプ42を駆動させることができる。これにより、駆動処理の実行中に作動油が循環流路43を流れるようになるため、油室81rと貯留タンク41との間で作動油が循環する。駆動処理の実行中は、循環流路43を作動油が流れることにより、作動油が流れる経路にある部材に対して作動油の摩擦が生じることによって作動油が昇温する。この場合での作動油が流れる経路にある部材とは、例えば、循環流路43を内部に形成する流路壁や、油室81rを区画形成する部材としてのブレーキハウジング81である。
【0052】
なお、本実施形態においては、ポンプ42は、バッテリ14からの給電によって、循環流路43に加えて荷役流路44にも作動油を流す。そのため、制御部30による駆動処理の実行中に、循環流路43に加えて荷役流路44にも作動油が流れるようになる。これにより、荷役装置12としてのコントロールバルブ33と貯留タンク41との間で作動油が循環する。駆動処理の実行中は、荷役流路44を作動油が流れることにより、作動油が流れる経路にある部材に対する作動油の摩擦によって作動油が昇温する。この場合での作動油が流れる経路にある部材とは、例えば、荷役流路44を内部に形成する流路壁や、荷役装置12を構成する部材としてのコントロールバルブ33である。
【0053】
制御部30は、駆動処理の実行中に作動油の温度Tが所定温度Tp以上である場合にポンプ42の駆動を停止させる停止処理を行う。本実施形態においては、図4のステップS150、ステップS160、及びステップS170が停止処理に相当する。制御部30によって停止処理が行われるまで駆動処理の実行が継続される。これにより、駆動処理の実行中に循環流路43及び荷役流路44を作動油が流れ続けることで、作動油の温度Tが所定温度Tp以上になるまで作動油が昇温させることができる。
【0054】
[実施形態の効果]
実施形態の効果について説明する。
(1)制御部30は、バッテリ14の駆動停止中に作動油の温度Tが所定温度Tpより低い場合にポンプ42を駆動させる駆動処理を行う。そのため、バッテリ14の駆動停止中に、駆動処理の実行によって作動油が循環流路43を流れるようになる。油室81rと貯留タンク41との間で作動油が循環するため、駆動処理の実行中は作動油が昇温する。作動油を昇温させることにより、油室81rにてブレーキ機構90が回転しやすくなる。これにより、ブレーキ機構90と共に回転する駆動輪11fが回転しやすくなるため、フォークリフト10の作動性を向上させることができる。こうした実施形態によれば、作動油の温度Tによらずバッテリ14の駆動停止中には常にポンプ42を駆動させない場合と比較して、作動油を昇温させた状態でフォークリフト10の運転を開始できる。したがって、運転開始時におけるフォークリフト10の作動性を向上させることができる。
【0055】
(2)制御部30は、バッテリ14の充電中に駆動処理を行う。そのため、駆動処理においては、ポンプ42の駆動に伴ってバッテリ14の電力が用いられるが、併せてバッテリ14の充電が行われるためバッテリ14の充電量が低下しにくい。したがって、バッテリ14の充電中か否かに関係なく駆動処理が行われる場合と比較して、駆動処理の実行に伴うバッテリ14の充電量の低下を抑制できる。
【0056】
(3)ポンプ42は、バッテリ14からの給電によって循環流路43及び荷役流路44に作動油を流す。そのため、制御部30による駆動処理の実行中に、循環流路43に加えて荷役流路44にも作動油が流れるようになる。荷役装置12としてのコントロールバルブ33と貯留タンク41との間で作動油が循環するため、駆動処理の実行中は作動油が昇温する。したがって、駆動処理の実行中に循環流路43にのみに作動油が流れる場合と比較して、作動油を早期に昇温できるため、運転開始時におけるフォークリフト10の作動性をさらに向上させることができる。
【0057】
(4)制御部30は、駆動処理の実行中に作動油の温度Tが所定温度Tp以上である場合にポンプ42の駆動を停止させる停止処理を行う。そのため、仮に駆動処理の実行開始から予め設定された所定時間が経過したら駆動処理を終了させる場合には、所定時間の長さによっては作動油の温度Tが所定温度Tp以上になってからも駆動処理が継続されるが、そうした駆動処理の継続が生じない。したがって、駆動処理が過剰な時間行われることによるバッテリ14の充電量の消費を抑制できる。
【0058】
(5)制御部30は、駆動処理の実行中にヒータ35によって作動油を加熱する。制御部30は、停止処理の実行中にヒータ35による作動油の加熱を停止させる。そのため、ヒータ35による作動油の加熱を行う分だけ、駆動処理の実行中に作動油が早期に昇温する。したがって、運転開始時におけるフォークリフト10の作動性をさらに向上させることができる。
【0059】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0060】
○ ポンプ42は、バッテリ14からの給電によって荷役流路44に作動油を流すものでなくてもよい。この場合のフォークリフト10は、荷役流路44に作動油を流すための荷役用ポンプをポンプ42とは別に有してもよい。
【0061】
○ ヒータ35は、貯留タンク41に貯留された作動油以外の作動油を加熱するものであってもよい。この場合のヒータ35は、例えば、循環流路43における作動油を加熱するものであってもよいし、油室81rに満たされる作動油を加熱するものであってもよい。
【0062】
○ フォークリフト10からヒータ35を省略してもよい。
○ 温度センサ31は、貯留タンク41に貯留された作動油以外の作動油の温度Tを検出するものであってもよい。この場合の温度センサ31は、例えば、循環流路43における作動油の温度Tを検出するものであってもよいし、油室81rに満たされる作動油の温度Tを検出するものであってもよい。
【0063】
○ 制御部30は、バッテリ14の充電量が所定充電量以上であることを条件に、駆動処理を行ってもよい。この場合、例えば図4において、バッテリ14の充電量が所定充電量以上であるか否かを判断するための処理をステップS120よりも前に追加してもよい。上記の追加する処理において、バッテリ14の充電量が所定充電量未満であると判断すると、制御部30は図4に示す処理を一旦終了する。上記の追加する処理において、バッテリ14の充電量が所定充電量以上であると判断すると、制御部30は、上記の追加するステップ以降の処理を行う。
【0064】
○ 制御部30は、バッテリ14の充電中か否かによらず、駆動処理を行ってもよい。この場合、図4に示す処理からステップS110を省略してもよい。
○ 制御部30によって行われる停止処理は、駆動処理の実行中に作動油の温度Tが所定温度Tp以上である場合に行われるものでなくてもよい。例えば、制御部30は、駆動処理の実行開始から所定時間が経過したことを条件にポンプ42の駆動を停止させる停止処理を行う停止処理を行ってもよい。なお、この場合の所定時間は、例えば、駆動処理の開始前の作動油の温度Tによらず、駆動処理の実行開始から所定時間が経過すれば、作動油の温度Tが所定温度Tp以上になる時間に設定されることが好ましい。
【0065】
○ 制御部30は停止処理を実行しなくてもよい。この場合の制御部30は、例えば、バッテリ14の駆動停止中に駆動処理を行った後、バッテリ14の駆動が開始されるまで駆動処理を継続して行ってもよい。
【0066】
図4に示す処理において、ステップS160とステップS170の順序を逆にしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
T…温度、Tp…所定温度、10…産業車両としてのフォークリフト、11f…駆動輪、12…荷役装置、14…バッテリ、30…制御部、31…温度センサ、35…ヒータ、41…貯留タンク、42…ポンプ、43…循環流路、44…荷役流路、81…ブレーキハウジング、81r…油室、90…ブレーキ機構。
図1
図2
図3
図4