IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ハッピージャパンの特許一覧

<>
  • 特開-縫製装置の糸切方法 図1
  • 特開-縫製装置の糸切方法 図2
  • 特開-縫製装置の糸切方法 図3
  • 特開-縫製装置の糸切方法 図4
  • 特開-縫製装置の糸切方法 図5
  • 特開-縫製装置の糸切方法 図6
  • 特開-縫製装置の糸切方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074116
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】縫製装置の糸切方法
(51)【国際特許分類】
   D05B 65/02 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
D05B65/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185197
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】391003819
【氏名又は名称】株式会社ハッピージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】横尾 政好
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 孝太
(72)【発明者】
【氏名】那須 洋介
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA15
3B150AA20
3B150CB04
3B150CD07
3B150CE24
3B150CE27
3B150FH02
3B150FH03
3B150FH06
3B150FH11
3B150FH20
3B150GA04
3B150JA03
3B150JA28
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】糸振分機構を設けなくても、糸切断時に上糸を切断側と非切断側とに振り分け、糸を良好に切断すること。
【解決手段】糸切方法が、針棒140をベッド部10の上方に停止させ、釜機構12を所定の回転位置に停止させ、糸切機構16の動メス18を固定メス20に係合する閉位置から開位置へ向けて移動させて、上糸振分部18aによって上糸1において針棒に連なる非切断側3を引っ掛け、上糸1の非切断側3を固定メス20から遠ざけ、動メス18を閉位置へ向けて移動させて、動メス18と固定メス20との間で上糸1の切断側2を切断するようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
針棒と、該針棒の下側に配設されたベッド部と、ベッド部内に配設された釜機構と、ベッド部内において釜機構の上に配設された糸切機構とを具備する縫製装置の糸切方法において、
糸切機構が、ベッド部内に固定された固定メスと、固定メスに接触する固定位置と固定メスから離反した開位置との間で移動可能にベッド部内に取り付けられた動メスとを備え、
動メスが上糸振分部と切断部とを有しており、
糸切方法が、
針棒をベッド部の上方に停止させ、
釜機構を所定の回転位置に停止させ、
糸切機構の動メスを固定メスに係合する閉位置から開位置へ向けて移動させて、上糸振分部によって上糸において針棒に連なる非切断側を引っ掛け、上糸の非切断側を固定メスから遠ざけ、
動メスを閉位置へ向けて移動させて、動メスと固定メスとの間で上糸の切断側を切断することを含む糸切方法。
【請求項2】
動メスを開位置から閉位置へ向けて移動させる前に釜機構を更に回転させ、釜機構が所定の回転位置に到達したときに、動メスの開位置から閉位置への移動を開始することを更に含む請求項1に記載の糸切方法。
【請求項3】
動メスの開位置から閉位置への移動開始後、釜機構の回転を停止し、動メスによる上糸切断後、上糸の非切断側を糸掴みにより保持することを更に含む請求項2に記載の糸切方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製装置の上糸を切断するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上糸を切断する際に、上糸を加工布に連なる側(切断側)と、針に連なる側(非接触側)とに振り分ける糸振分機構を有したミシンが記載されている。特許文献1のミシンでは、上糸切断時に糸振分機構の上糸掛片に上糸を巻き掛けることにより、上糸を三角ループ状に張り渡し、上糸を加工布に連なる側(切断側)と、針に連なる側(非接触側)とに振り分けた後に、糸切断装置によって、上糸の切断側を下糸と共に切断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-309289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のミシンでは、糸振分機構によって、上糸を切断側と非切断側とに振り分けているために、上糸の加工布に連なる切断側と、針に連なる非切断側とを良好に振り分けことができるが、ミシンのベッド部の狭い空間に糸振分機構を配設しなければならない。
【0005】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを目的としており、糸振分機構を設けなくても、糸切断時に上糸を切断側と非切断側とに振り分け、良好に糸を切断できる糸切方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明によれば、針棒と、該針棒の下側に配設されたベッド部と、ベッド部内に配設された釜機構と、ベッド部内において釜機構の上に配設された糸切機構とを具備する縫製装置の糸切方法において、
糸切機構が、ベッド部内に固定された固定メスと、固定メスに接触する固定位置と固定メスから離反した開位置との間で移動可能にベッド部内に取り付けられた動メスとを備え、動メスが上糸振分部と切断部とを有しており、
糸切方法が、
針棒をベッド部の上方に停止させ、
釜機構を所定の回転位置に停止させ、
糸切機構の動メスを固定メスに係合する閉位置から開位置へ向けて移動させて、上糸振分部によって上糸において針棒に連なる非切断側を引っ掛け、上糸の非切断側を固定メスから遠ざけ、
動メスを閉位置へ向けて移動させて、動メスと固定メスとの間で上糸の切断側を切断することを含む糸切方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、振分機構を設けることなく、上糸1の針側と上糸の加工布側とを振り分けることが可能になり、糸切を確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ベッド部の斜視図である。
図2】閉位置にある動メスを示すベッド部の部分拡大図である。
図3】開位置にある動メスを示す図3と同様のベッド部の部分斜視図である。
図4】本発明の方法を適用する縫製装置の一例としての刺繍機の部分斜視図である。
図5】本発明の糸切方法を説明するためのフローチャートである。
図6】本発明の糸切方法を説明するためのフローチャートである。
図7】従来のベッド部の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
まず、本発明の方法を適用可能な縫製装置の斜視図である図4を参照すると、縫製装置の一例として、刺繍機100が示されている。刺繍機100は、縫製機械の分野では一般的に知られているように、複数の糸調子110、複数の天秤120、複数の糸取りばね130、複数の針棒140、糸掴み170およびベッド部10を含んでいる。糸取りばね130は、複数の撚り糸(図示せず)の各々の走行経路上において、対応する糸調子110と天秤120の間に配置されている。
【0010】
天秤120および糸取りばね130は刺繍機100の前面パネル150に配設され、糸調子110は、前面パネル150の上縁部に連結された傾斜パネル160に配設されている。前面パネル150の正面から見て水平左右方向にX軸を、鉛直方向(上下方向)にY軸を、X軸およびY軸に垂直な水平左右(前後方向)にZ軸を定義する。本実施形態では、前面パネル150は、鉛直面(X-Y平面)内に配置され、傾斜パネル160は、前面パネル150の上縁部から後方かつ斜め上方に延びている。
【0011】
ベッド部10は針棒140の下側に配置されている。ベッド部10はZ軸に沿って前後方向に延設されている。ベッド部10は、図1、2、3を参照すると、断面U字形のZ軸方向に延びるハウジング30と、ハウジング30の上方開口部を閉鎖する上カバー32とを有している。ハウジング30の先端分には、ボビン34を受容する釜機構12と、糸切機構16とが配設されている。刺繍機100は、釜機構12のための釜機構駆動モータ14と、糸切機構16のためのメス駆動モータ26と、制御装置28とを具備する。制御装置28は、釜機構駆動モータ14およびメス駆動モータ26を制御する。制御装置28は、釜機構駆動モータ14およびメス駆動モータ26の制御に加えて、刺繍機100の他の機能を制御するようにしてもよい。
【0012】
釜機構駆動モータ14は、一例として、出力軸14aを有した回転サーボモータとすることができる。出力軸14aは、Z軸方向に延設された駆動軸(図示せず)を介して釜機構12に連結されており、該釜機構12をZ軸方向に延びる回転軸線OZを中心として回転駆動する。
【0013】
糸切機構16は釜機構12の上方に配設されており、Y軸方向に延びる揺動軸線OYを中心として揺動可能に設けられた動メス18と、ベッド部10内の適当な静止部材に固定された固定メス20と、メス駆動モータ26の駆動力を動メス18に伝達する伝達機構22とを備えている。動メス18は、後述するように、上糸1の切断時に上糸1を引っ掛けて振り分ける上糸振分部18aと、上糸振分部18aに隣接して設けられた切断部18bとを有している。
【0014】
動メス18は、ピン24によって、Y軸方向(上下方向)に延びる揺動軸線OYを中心として揺動可能に、ベッド部10の適当な静止部材に取り付けられている。動メス18は、図2に示すように、固定メス20の下側で固定メス20に係合する閉位置と、図3に示すように、固定メス20から離反した開位置との間で揺動する。閉位置にあるとき、動メス18は、少なくとも切断部18bにおいて固定メス20の下面に接触し、これによって、上糸1を切断するようになっている。
【0015】
メス駆動モータ26は、一例として、Z軸方向に進退可能に設けられた可動子26aを有したソレノイドとすることができ、伝達機構22は、Z軸方向に移動可能に設けられ、後端部において可動子26aに結合され、前端部分において、ピン22aによって動メス18に連結されたリンク部材とすることができる。ソレノイドが励磁すると、可動子26aが前進して、動メス18が開位置へ移動する。ソレノイドが消磁すると、可動子26aが後退して、動メス18は閉位置へ移動する。
【0016】
以下、図5、6のフローチャートを用いて本実施形態の作用を説明する。
ステップS10で上糸1の糸切りシーケンスが開始されると、制御装置28は釜機構駆動モータ14の回転数を低減する(ステップS12)と共に、針棒140をベッド部10の上方に離反せさせて停止させる(ステップS14)。次いで、上糸1を振り分けるタイミングか否かが判定される(ステップS16)。この判定は、針棒140の停止後の釜機構12の回転位置を例えば、釜機構駆動モータ14に取り付けたロータリーエンコーダ(図示せず)によって検知することによって行うことができる。
【0017】
ステップS16でYesの場合、つまり釜機構12が所定の回転位置に到達すると、釜機構駆動モータ14が停止する(ステップS18)。釜機構駆動モータ14の停止と概ね同時または直後に、メス駆動モータ26が励磁され、図3に示すように、可動子26aがZ軸方向に前進または突出して、動メス18が開位置へ移動し、上糸1の切断側2と非切断側3とを振り分け、上糸1を切断する前に、上糸1の切断を容易かつ確実にする(ステップS20)。
【0018】
次いで、ステップS22において、上糸1の振り分けが安定したか否かが判定される。これは、例えば、規定パルスの出力が完了したときに、上糸1の振り分けが安定したと判定するようにできる。上糸1の振り分けが安定したと判定されると(ステップS22でYesの場合)、釜機構駆動モータ14を再び起動する(ステップS24)と共に、糸掴み170により、切断前の糸を引き込むことにより、上糸1の切断側2に十分な長さを確保する(ステップS26)。
【0019】
次いで、上糸1を切断するタイミングであるか否かが判定される(ステップS28)。この判定は、釜機構12の回転位置を検知することによって行うことができる。ステップS28でYesの場合、つまり、上糸1を切断すべき所定の回転位置に釜機構12が到達すると、可動子26aがZ軸方向に後退して、動メス18が閉位置に向けて移動する(ステップS30)。
【0020】
次いで、動メス18が閉位置へ向けて移動を開始した直後に、釜機構駆動モータ14を停止して(ステップS32)、動メス18によって上糸1の切断が完了した後(ステップS34でYes)、非切断側3を糸掴み170によって把持する(ステップS36)し、上糸1の切断操作が完了する(ステップS38)。
【0021】
図7は、従来のベッド部10′を示している。なお、図7では、図1図3と同様の構成要素に、記号′を付して同じ参照番号で示されており、以下の説明では重複する説明を省略する。
従来、釜機構12′を停止させることなく回転させながら、動メス18′を開位置へ移動させて、振分機構40によって上糸の針側と上糸の加工布側を振り分け、次いで、動メス18′を閉位置へ移動させて、固定メス20′との間で上糸の加工布側だけを切断するようになっている。従って、振分機構40をベッド部10′の狭い空間に設ける必要がある。
【0022】
これに対して、本実施形態によれば、振分機構を設けることなく、上糸1の針側(非切断側3)と上糸の加工布側(切断側2)とを振り分けことが可能になり、糸切を確実に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0023】
1 上糸
2 切断側
3 非切断側
10 ベッド部
12 釜機構
14 釜機構駆動モータ
14a 出力軸
16 糸切機構
18 動メス
18a 上糸振分部
18b 切断部
20 固定メス
22 伝達機構
22a ピン
24 ピン
26 メス駆動モータ
26a 可動子
28 制御装置
30 ハウジング
32 上カバー
34 ボビン
40 振分機構
100 刺繍機
110 糸調子
120 天秤
140 針棒
150 前面パネル
160 傾斜パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7