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特開2024-74129電磁波透過カバー及びセンサモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074129
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】電磁波透過カバー及びセンサモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20240523BHJP
   B62D 25/06 20060101ALI20240523BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240523BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240523BHJP
【FI】
G01S7/481 A
B62D25/06 A
B60R11/02 Z
B32B7/025
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185218
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平野 里彩
(72)【発明者】
【氏名】深川 鋼司
(72)【発明者】
【氏名】土屋 陽祐
【テーマコード(参考)】
3D020
3D203
4F100
5J084
【Fターム(参考)】
3D020BA01
3D020BB01
3D020BC04
3D203AA02
3D203BB59
3D203CA07
3D203DB02
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100GB61
4F100JD08
4F100JD08A
4F100JD08E
4F100JN06A
4F100JN06E
4F100YY00A
4F100YY00E
5J084AA05
5J084AA07
5J084AC02
(57)【要約】
【課題】車両の見栄えを向上しつつ、センサ装置による検出精度を確保することができる電磁波透過カバー及びセンサモジュールを提供する。
【解決手段】電磁波透過カバー19は、ルーフパネル12における斜面部14を有した前端部の内側に配置されるとともに電磁波を送信及び受信するセンサ装置18が搭載された車両11に適用される。電磁波透過カバー19は、センサ装置18における電磁波の送信方向の前方に位置する斜面部14に形成された開口部15を塞ぐように配置されるカバー本体部21を有している。カバー本体部21は、斜面部14に沿うとともに上記送信方向に対して傾斜し、且つ上記送信方向における前面に電磁波の反射を抑制する反射抑制部が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフ部における斜面部を有した前端部または後端部の内側に配置されるとともに電磁波を送信及び受信するセンサ装置が搭載された車両に適用されるものであり、
前記センサ装置における前記電磁波の送信方向の前方に位置する前記斜面部に形成された開口部を塞ぐように配置されるカバー本体部を有した電磁波透過カバーであって、
前記カバー本体部は、前記斜面部に沿うとともに前記送信方向に対して傾斜し、且つ前記送信方向における両面のうちの少なくとも一方に前記電磁波の反射を抑制する反射抑制部が設けられていることを特徴とする電磁波透過カバー。
【請求項2】
前記カバー本体部は、基材層を備え、
前記基材層の前記送信方向における前記センサ装置側とは反対側の面には、バインダー層を介して前記反射抑制部として反射抑制層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波透過カバー。
【請求項3】
前記電磁波の波長は、800nm以上1700nm以下の範囲であり、
前記カバー本体部は、前記電磁波を入射角が30度以上60度以下の範囲で照射したときの前記電磁波の透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波透過カバー。
【請求項4】
前記カバー本体部と水平面とのなす角度は、20度以上80度以下の範囲に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の電磁波透過カバー。
【請求項5】
前記ルーフ部は、ルーフパネルであり、
前記カバー本体部は、前記ルーフパネルの前端部の前記斜面部における車幅方向の中央部に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波透過カバー。
【請求項6】
車両のルーフ部における斜面部を有した前端部または後端部の内側に配置されるとともに電磁波を送信及び受信するセンサ装置と、
前記センサ装置における前記電磁波の送信方向の前方に位置する前記斜面部に形成された開口部を塞ぐように配置される電磁波透過カバーと、
を備え、
前記電磁波透過カバーは、前記斜面部に沿うとともに前記送信方向に対して傾斜し、且つ前記送信方向における両面のうちの少なくとも一方に前記電磁波の反射を抑制する反射抑制部が設けられていることを特徴とするセンサモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のルーフ部に取り付けられるセンサ装置を電磁波の送信方向における前方から覆う電磁波透過カバー、及びこれらのセンサ装置及び電磁波透過カバーを備えるセンサモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のセンサモジュールとして、例えば、特許文献1に示すものが知られている。こうしたセンサモジュールは、車両のルーフレールにおける流線形に形成された前端部に組み込まれたセンサと、当該前端部と一体化するように流線形に形成されたカバーとを備えている。センサは、カバーの後側に配置されている。そして、このように構成することで、車両走行時の空気抵抗を低減できると共に、車両の見栄えを向上できるという効果が得られるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-150624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のようなセンサモジュールにおいて、センサを例えば赤外線センサによって構成した場合、上記効果を得ることはできるが、カバーが赤外線の送信方向に対して斜めに配置された状態となってしまう。このため、カバーに対する赤外線の入射角が大きくなるので、カバーによる赤外線の反射量が増加する。この結果、カバーに対する赤外線の透過性が低くなるので、赤外線センサの検出精度が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための電磁波透過カバー及びセンサモジュールの各態様を記載する。
[態様1]ルーフ部における斜面部を有した前端部または後端部の内側に配置されるとともに電磁波を送信及び受信するセンサ装置が搭載された車両に適用されるものであり、前記センサ装置における前記電磁波の送信方向の前方に位置する前記斜面部に形成された開口部を塞ぐように配置されるカバー本体部を有した電磁波透過カバーであって、前記カバー本体部は、前記斜面部に沿うとともに前記送信方向に対して傾斜し、且つ前記送信方向における両面のうちの少なくとも一方に前記電磁波の反射を抑制する反射抑制部が設けられていることを特徴とする電磁波透過カバー。
【0006】
一般に、車両のルーフ部の斜面部に電磁波の入射角が小さくなるようにカバー本体部を立てて設けると、カバー本体部での電磁波の透過性は向上するが、ルーフ部からのカバー本体部の突出量が増加するので、車両の見栄えが悪くなる。一方、車両の見栄えを向上するべくルーフ部の斜面部に沿ってカバー本体部を寝かせて設けると、カバー本体部に対する電磁波の入射角が大きくなってしまう。このため、カバー本体部での電磁波の反射量が増加するので、カバー本体部での電磁波の透過性が低下する。この結果、センサ装置による検出精度を確保することができなくなるという問題がある。
【0007】
この点、上記構成によれば、車両の見栄えの向上のためにカバー本体部を斜面部に沿って寝かせて配置しても、反射抑制部によってカバー本体部での電磁波の反射を抑制できる。このため、カバー本体部での電磁波の透過性を確保できる。したがって、車両の見栄えを向上しつつ、センサ装置による検出精度を確保することができる。
【0008】
[態様2]前記カバー本体部は、基材層を備え、前記基材層の前記送信方向における前記センサ装置側とは反対側の面には、バインダー層を介して前記反射抑制部として反射抑制層が設けられていることを特徴とする[態様1]に記載の電磁波透過カバー。
【0009】
通常、基材層と反射抑制層との間で線膨張率に差がある場合に基材層に反射抑制層を直接設けると、これらが膨張したときにクラックが発生するおそれがある。
この点、上記構成によれば、基材層にはバインダー層を介して反射抑制層が設けられているため、基材層と反射抑制層との間で線膨張率に差があっても、これらが膨張したときの差をバインダー層で吸収できる。したがって、基材層と反射抑制層との間の線膨張率の差に起因するクラックの発生を抑制できる。
【0010】
[態様3]前記電磁波の波長は、800nm以上1700nm以下の範囲であり、前記カバー本体部は、前記電磁波を入射角が30度以上60度以下の範囲で照射したときの前記電磁波の透過率が80%以上であることを特徴とする[態様1]または[態様2]に記載の電磁波透過カバー。
【0011】
上記構成によれば、カバー本体部はセンサ装置で使用される電磁波の入射角が30度以上60度以下での透過率が80%以上であるため、センサ装置の検出精度をより確実に確保できる。
【0012】
[態様4]前記カバー本体部と水平面とのなす角度は、20度以上80度以下の範囲に設定されていることを特徴とする[態様3]に記載の電磁波透過カバー。
上記構成によれば、カバー本体部の高さを制限できるので、車両の見栄えの向上に寄与することができる。
【0013】
[態様5]前記ルーフ部は、ルーフパネルであり、前記カバー本体部は、前記ルーフパネルの前端部の前記斜面部における車幅方向の中央部に配置されていることを特徴とする[態様1]~[態様4]のうちいずれか一つに記載の電磁波透過カバー。
【0014】
上記構成によれば、カバー本体部を斜面部に対してバランスよく配置できるので、より一層車両の見栄えの向上に寄与することができる。
[態様6]車両のルーフ部における斜面部を有した前端部または後端部の内側に配置されるとともに電磁波を送信及び受信するセンサ装置と、前記センサ装置における前記電磁波の送信方向の前方に位置する前記斜面部に形成された開口部を塞ぐように配置される電磁波透過カバーと、を備え、前記電磁波透過カバーは、前記斜面部に沿うとともに前記送信方向に対して傾斜し、且つ前記送信方向における両面のうちの少なくとも一方に前記電磁波の反射を抑制する反射抑制部が設けられていることを特徴とするセンサモジュール。
【0015】
一般に、車両のルーフ部の斜面部に電磁波の入射角が小さくなるように電磁波透過カバーを立てて設けると、電磁波透過カバーでの電磁波の透過性は向上するが、ルーフ部からの電磁波透過カバーの突出量が増加するので、車両の見栄えが悪くなる。一方、車両の見栄えを向上するべくルーフ部の斜面部に沿って電磁波透過カバーを寝かせて設けると、電磁波透過カバーに対する電磁波の入射角が大きくなってしまう。このため、電磁波透過カバーでの電磁波の反射量が増加するので、電磁波透過カバーでの電磁波の透過性が低下する。この結果、センサ装置による検出精度を確保することができなくなるという問題がある。
【0016】
この点、上記構成によれば、車両の見栄えの向上のために電磁波透過カバーを斜面部に沿って寝かせて配置しても、反射抑制部によって電磁波透過カバーでの電磁波の反射を抑制できる。このため、電磁波透過カバーでの電磁波の透過性を確保できる。したがって、車両の見栄えを向上しつつ、センサ装置による検出精度を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、車両の見栄えを向上しつつ、センサ装置による検出精度を確保することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態の車両の一部を示す斜視図である。
図2図1の要部を示す断面模式図である。
図3】センサモジュールの断面模式図である。
図4】実施例1及び比較例1について、電磁波の入射角と電磁波の透過率との関係を測定した結果を示すグラフである。
図5】変更例の電磁波透過カバーのカバー本体部の断面模式図である。
図6】別の変更例の電磁波透過カバーのカバー本体部の断面模式図である。
図7】さらに別の変更例の電磁波透過カバーのカバー本体部の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、車両に搭載されるセンサモジュールの一実施形態を図面に従って説明する。
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。
【0020】
<車両11>
図1に示すように、車両11は、ルーフ部の一例としてのルーフパネル12と、ルーフパネル12の前側に隣接して配置されたフロントガラス13とを備えている。ルーフパネル12の前端部は、フロントガラス13に繋がる前下がりの斜面部14を有している。斜面部14は、平面状の斜面であってもよいし、湾曲した斜面(湾曲斜面)であってもよい。
【0021】
図1及び図2に示すように、ルーフパネル12の前端部の斜面部14における車幅方向(左右方向)の中央部には、上底よりも下底の方が長い等脚台形状をなす開口部15が形成されている。ルーフパネル12の内側(下側)には、車室内の天井を形成する天井パネル16が配置されている。天井パネル16とルーフパネル12との間には、空間17が形成されている。車両11における空間17の前端部には、センサ装置18及び電磁波透過カバー19を備えたセンサモジュール20が搭載されている。
【0022】
<センサ装置18>
図2に示すように、センサ装置18は、ルーフパネル12の前端部の内側(下側)であって斜面部14の後方となる位置に配置されている。センサ装置18は、斜面部14に形成された開口部15と前後方向において対向している。本例におけるセンサ装置18は、前方監視用の近赤外線センサによって構成されている。
【0023】
この近赤外線センサは、電磁波のうち800nm以上1700nm以下の波長を有する近赤外線を車両11の前方へ向けて送信し、且つ先行車両及び歩行者等を含む車外の物体に当たって反射された近赤外線を受信する。センサ装置18では、送信及び受信した電磁波(近赤外線)に基づき、車外の上記物体を認識するとともに、車両11と上記物体との距離、相対速度等を検出する。
【0024】
なお、上述したように、センサ装置18が車両11の前方に向けて電磁波(近赤外線)を送信することから、センサ装置18による電磁波の送信方向は、車両11の後方から前方へ向かう方向である。電磁波の送信方向における前方は、車両11の前方と概ね合致し、同送信方向における後方は車両11の後方と概ね合致する。そのため、以後の記載では、電磁波の送信方向における前方を単に「前方」、「前」等といい、同送信方向における後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0025】
<電磁波透過カバー19>
図1及び図2に示すように、電磁波透過カバー19は、開口部15を塞ぐカバー本体部21と、カバー本体部21の周縁部に段差を介して外側に突出するように形成されたフランジ部22とを有している。カバー本体部21は、斜面部14の開口部15と対応する等脚台形板状をなしている。
【0026】
電磁波透過カバー19は、カバー本体部21を斜面部14の開口部15に内側から嵌合させた状態でフランジ部22を斜面部14の内面に接着剤等で接合することによって斜面部14に取り付けられる。カバー本体部21は、センサ装置18における電磁波の送信方向の前方に位置する斜面部14に形成された開口部15を塞ぐように配置されている。したがって、カバー本体部21は、ルーフパネル12の前端部の斜面部14における車幅方向(左右方向)の中央部に配置されている。
【0027】
カバー本体部21の外面は、斜面部14の外面と面一になっている。カバー本体部21は、斜面部14に沿うとともにセンサ装置18における電磁波の送信方向(本例では前後方向)に対して傾斜して配置されている。この場合、カバー本体部21と水平面とのなす角度は、20度以上80度以下の範囲に設定される。カバー本体部21は、センサ装置18を前方から覆う機能を有するほかに、車両11のルーフパネル12の前端部を装飾するガーニッシュとしての機能も有している。
【0028】
図3に示すように、電磁波透過カバー19のカバー本体部21は、基材層23を備えている。基材層23は、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂などによって構成される。基材層23の上記電磁波の送信方向におけるセンサ装置18側の面、すなわち基材層23の後面には、ハードコート層24が設けられている。ハードコート層24は、例えば、アクリル系塗料によって構成される。
【0029】
基材層23の上記電磁波の送信方向におけるセンサ装置18側とは反対側の面、すなわち基材層23の前面には、バインダー層25を介して反射抑制部としての反射抑制層26が設けられている。バインダー層25は、例えば、アクリル系塗料によって構成される。反射抑制層26は、上述の電磁波(近赤外線)の反射を抑制する機能を有している。反射抑制層26は、例えばMgF(フッ化マグネシウム)等によって形成された低屈折率の透明な薄膜によって構成される。
【0030】
図4は、電磁波透過カバーにおいて上記電磁波を照射したときの入射角と透過率との関係を測定した結果を示すグラフである。図4中、実線は、反射抑制層26を有したカバー本体部21を備えた実施例1の電磁波透過カバー19についての測定結果を示している。図4中、二点鎖線は、反射抑制層26を有さないカバー本体部を備えた比較例1の電磁波透過カバーについての測定結果を示している。
【0031】
実施例1の電磁波透過カバー19は、上述したように、ハードコート層24、基材層23、バインダー層25、及び反射抑制層26の4層構造の積層体によって構成されている。一方、比較例1の電磁波透過カバーは、ハードコート層24及び基材層23の2層構造の積層体によって構成されている。
【0032】
図4のグラフから次のことが分かる。実施例1及び比較例1のいずれの場合においても、入射角が大きくなるにつれて透過率が低下している。実施例1は、入射角に拘わらず、全体的に比較例1よりも透過率が高くなっている。実施例1は、電磁波を入射角が30度以上60度以下の範囲で照射したときの電磁波の透過率が80%以上であるという要求値を満たしている。比較例1は、電磁波の入射角が50度を超えたあたりから電磁波の透過率が80%を下回っている。すなわち、比較例1は、上記要求値を満たしていない。
【0033】
このように、電磁波透過カバー19のカバー本体部21は、反射抑制層26を有することで、上述の電磁波の入射角が大きくなった場合でも、反射抑制層26を有さない場合に比べて電磁波の透過率の低下を効果的に抑制できることが分かる。
【0034】
<実施形態の作用>
一般に、車両11のルーフパネル12の斜面部14にセンサ装置18からの電磁波の入射角が小さくなるようにカバー本体部21を立てて設けると、カバー本体部21での電磁波の透過性は向上する。しかし、ルーフパネル12からのカバー本体部21の突出量は増加するので、車両11の見栄えが悪くなってしまう。
【0035】
一方、車両11の見栄えを向上するべくルーフパネル12の斜面部14に沿ってカバー本体部21を寝かせて設けると、カバー本体部21に対するセンサ装置18からの電磁波の入射角が大きくなってしまう。このため、カバー本体部21での電磁波の反射量が増加するので、カバー本体部21での電磁波の透過性は低下する。この結果、センサ装置18による検出精度を確保することができなくなるという問題がある。
【0036】
この点、上記実施形態によれば、車両11の見栄えの向上のためにカバー本体部21が斜面部14に沿って寝かせて配置されているが、反射抑制層26によってカバー本体部21でのセンサ装置18からの電磁波の反射が抑制される。このため、カバー本体部21でのセンサ装置18からの電磁波の透過性が十分に確保される。したがって、車両11の見栄えが向上されつつ、センサ装置18による検出精度が確保される。
【0037】
<実施形態の効果>
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)電磁波透過カバー19において、カバー本体部21は、斜面部14に沿うとともにセンサ装置18からの電磁波の送信方向に対して傾斜し、且つ上記送信方向における前面に電磁波の反射を抑制する反射抑制層26が設けられている。
【0038】
上記構成によれば、車両11の見栄えの向上のためにカバー本体部21を斜面部14に沿って寝かせて配置しても、反射抑制層26によってカバー本体部21での電磁波の反射を抑制できる。このため、カバー本体部21での電磁波の透過性を確保できる。したがって、車両11の見栄えを向上しつつ、センサ装置18による検出精度を確保することができる。加えて、カバー本体部21を斜面部14に沿って寝かせて配置することで、車両11の走行時の空気抵抗を低減できる。
【0039】
(2)電磁波透過カバー19において、カバー本体部21は、基材層23を備える。基材層23の上記送信方向におけるセンサ装置18側とは反対側の面には、バインダー層25を介して反射抑制層26が設けられている。
【0040】
通常、基材層23と反射抑制層26との間で線膨張率に差がある場合に基材層23に反射抑制層26を直接設けると、これらが膨張したときにクラックが発生するおそれがある。この点、上記構成によれば、基材層23にはバインダー層25を介して反射抑制層26が設けられているため、基材層23と反射抑制層26との間で線膨張率に差があっても、これらが膨張したときの差をバインダー層25で吸収できる。したがって、基材層23と反射抑制層26との間の線膨張率の差に起因するクラックの発生を抑制できる。
【0041】
(3)電磁波透過カバー19において、カバー本体部21は、800nm以上1700nm以下の範囲の波長の電磁波(近赤外線)を入射角が30度以上60度以下の範囲で照射したときの透過率が80%以上である。
【0042】
上記構成によれば、カバー本体部21はセンサ装置18で使用される電磁波の入射角が30度以上60度以下での透過率が80%以上であるため、センサ装置18の検出精度をより確実に確保できる。
【0043】
(4)電磁波透過カバー19において、カバー本体部21と水平面とのなす角度は、20度以上80度以下の範囲に設定されている。
上記構成によれば、カバー本体部21の高さを制限できるので、車両11の見栄えの向上に寄与することができる。
【0044】
(5)電磁波透過カバー19において、カバー本体部21は、ルーフパネル12の前端部の斜面部14における車幅方向の中央部に配置されている。
上記構成によれば、カバー本体部21を斜面部14に対してバランスよく配置できるので、より一層車両11の見栄えの向上に寄与することができる。
【0045】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
図5に示すように、カバー本体部21において、バインダー層25を省略してもよい。
図6に示すように、カバー本体部21において、反射抑制層26及びバインダー層25を省略し、且つ基材層23におけるハードコート層24側とは反対側の面の全体に反射抑制部として複数の凹凸部27を形成するようにしてもよい。
【0047】
図7に示すように、カバー本体部21において、バインダー層25の代わりに、フィルム層28及び接着剤層29を設けるようにしてもよい。この場合、表面に反射抑制層26が設けられるとともに裏面に接着剤層29が設けられたフィルム層28が接着剤層29において基材層23に貼り付けられる。
【0048】
・カバー本体部21は、ガラスによって構成してもよい。
・カバー本体部21は、センサ装置18からの電磁波の送信方向において、前面側ではなく、後面側に反射抑制層26を備える構成にしてもよい。この場合、カバー本体部21は、前面側から後面側に向かって順に基材層23、ハードコート層24、及び反射抑制層26が積層された構成となる。さらにこの場合、ハードコート層24は、バインダー層25に変更してもよい。
【0049】
・カバー本体部21は、センサ装置18からの電磁波の送信方向における両面に反射抑制層26を備えていてもよい。この場合、カバー本体部21は、前面側から後面側に向かって順に反射抑制層26、バインダー層25、基材層23、ハードコート層24、及び反射抑制層26が積層された構成となる。さらにこの場合、ハードコート層24は、バインダー層25に変更してもよい。
【0050】
・ルーフ部は、ルーフパネル12に限らず、ルーフレールであってもよい。
・カバー本体部21は、ルーフパネル12の前端部の斜面部14における車幅方向の端部に配置してもよい。
【0051】
・カバー本体部21と水平面とのなす角度は、必ずしも20度以上80度以下の範囲に設定する必要はない。
・センサ装置18で使用される電磁波の波長は、必ずしも800nm以上1700nm以下の範囲である必要はない。
【0052】
・カバー本体部21は、電磁波を入射角が30度以上60度以下の範囲で照射したときの透過率が必ずしも80%以上である必要はない。
・センサ装置18が送信及び受信する電磁波には、近赤外線のほかにも、ミリ波が含まれる。電磁波がミリ波の場合、ミリ波レーダ装置がセンサ装置18として機能する。
【0053】
・車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信するセンサ装置18は、前方監視用以外にも、後方監視用の装置であってもよい。この場合、センサ装置18は、ルーフパネル12の後端部の斜面部の内側に配置される。さらにこの場合、電磁波透過カバー19は、電磁波の送信方向におけるセンサ装置18の前方に位置するルーフパネル12の後端部の斜面部の開口部に配置される。
【符号の説明】
【0054】
11…車両
12…ルーフ部の一例としてのルーフパネル
13…フロントガラス
14…斜面部
15…開口部
16…天井パネル
17…空間
18…センサ装置
19…電磁波透過カバー
20…センサモジュール
21…カバー本体部
22…フランジ部
23…基材層
24…ハードコート層
25…バインダー層
26…反射抑制部の一例としての反射抑制層
27…反射抑制部の一例としての凹凸部
28…フィルム層
29…接着剤層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7