(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074143
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】樹脂粒子の製造方法及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20240523BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20240523BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G03G9/08 384
G03G9/09
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185239
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 佑弥
(72)【発明者】
【氏名】山下 敬弘
(72)【発明者】
【氏名】立川 貴久
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA06
2H500BA12
2H500CA06
2H500CA29
2H500EA32B
2H500EA52B
(57)【要約】
【課題】画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法の提供。
【解決手段】結着樹脂及び染料を、下記式(1)を満たす温度Tで混合して混合物を得る第1工程と、前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、を含む樹脂粒子の製造方法。式(1):染料の融点T1≦温度T≦結着樹脂の熱分解温度T2
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び染料を、下記式(1)を満たす温度Tで混合して混合物を得る第1工程と、
前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、を含む樹脂粒子の製造方法。
式(1):染料の融点T1≦温度T≦結着樹脂の熱分解温度T2
【請求項2】
前記第1工程において、200kJ/kg以上500kJ/kg以下の仕事量で前記結着樹脂及び前記染料を混合する請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記第1工程を押し出し機で行う請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記染料が油性染料である請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記油性染料がカルボニル基を有する油性染料である請求項4に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記カルボニル基を有する油性染料がペリレン系染料、ナフタルイミド系染料、キサンテン系染料及びクマリン系染料からなる群から選択される少なくとも1種である請求項5に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記混合物中における染料の含有量が、前記混合物全体の質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
平均粒径が0.05μm以上1μm以下である樹脂粒子を得る請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含む請求項1に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
前記ポリエステル樹脂の酸価が1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である請求項9に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の樹脂粒子の製造方法における前記第2工程後に、樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂粒子と前記樹脂母粒子分散液に含まれる樹脂母粒子とを凝集させ、凝集粒子を形成する工程と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、前記凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程と、を有するトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂粒子の製造方法及びトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「水と、蛍光剤組み込み樹脂粒子と、を含む、蛍光ラテックスであって、前記粒子が、樹脂と、蛍光発光スペクトルを有する蛍光増白剤及び前記蛍光増白剤の前記蛍光発光スペクトルと重なる吸収スペクトルを有する、蛍光染料を含む、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)対と、を含み、前記蛍光ラテックスが、紫外線(UV)光による照射下でFRETを呈する、蛍光ラテックス。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、結着樹脂及び染料を混合して混合物を得る第1工程と、前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、を含む樹脂粒子の製造方法において、前記第1工程が結着樹脂及び染料を、下記式(1C)を満たす温度TCで混合して混合物を得る工程である場合と比較して、画像ムラ(画像ムラとは、高温高湿下でエリアカバレッジ50%の帯状画像形成を繰り返し行った後に、エリアカバレッジ50%の画像を形成した場合、当該画像の画像濃度の一部が本来の画像濃度よりも薄く、又はは濃くなる現象のことを意味する。)の少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法を提供することである。
式(1C):染料の融点T1>温度TC、又は、温度TC>樹脂の熱分解温度T2
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 結着樹脂及び染料を、下記式(1)を満たす温度Tで混合して混合物を得る第1工程と、
前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、を含む樹脂粒子の製造方法。
式(1):染料の融点T1≦温度T≦結着樹脂の熱分解温度T2
<2> 前記第1工程において、200kJ/kg以上500kJ/kg以下の仕事量で前記結着樹脂及び前記染料を混合する<1>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<3> 前記第1工程を押し出し機で行う<1>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<4> 前記染料が油性染料である<1>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<5> 前記油性染料がカルボニル基を有する油性染料である<4>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<6> 前記カルボニル基を有する油性染料がペリレン系染料、ナフタルイミド系染料、キサンテン系染料及びクマリン系染料からなる群から選択される少なくとも1種である<5>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<7> 前記混合物中における染料の含有量が、前記混合物全体の質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である<1>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<8> 平均粒径が0.05μm以上1μm以下である樹脂粒子を得る<1>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<9> 前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含む<1>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<10> 前記ポリエステル樹脂の酸価が1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である<9>に記載の樹脂粒子の製造方法。
<11> <1>~<10>のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法における前記第2工程後に、樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂粒子と樹脂母粒子分散液に含まれる樹脂母粒子とを凝集させ、凝集粒子を形成する工程と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、前記凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程と、を有するトナーの製造方法。
【発明の効果】
【0006】
<1>に係る発明によれば、結着樹脂及び染料を混合して混合物を得る第1工程と、前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、を含む樹脂粒子の製造方法において、前記第1工程が結着樹脂及び染料を、上記式(1C)を満たす温度TCで混合して混合物を得る工程である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
<2>に係る発明によれば、前記第1工程において、200kJ/kg未満又は500kJ/kgを超える仕事量で前記結着樹脂及び前記染料を混合する場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
<3>に係る発明によれば、第1工程を押し出し機で行わない場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
<4>に係る発明によれば、前記染料が水性染料である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
<5>に係る発明によれば、前記油性染料がカルボニル基を有しない油性染料である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0007】
<6>に係る発明によれば、前記カルボニル基を有する油性染料がアゾ系染料である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
<7>に係る発明によれば、前記混合物中における染料の含有量が、前記混合物全体の質量に対して、0.1質量%未満又は20質量%以上である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
<8>に係る発明によれば、平均粒径が0.05μm未満又は1μmを超える樹脂粒子を得る製造方法と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
<9>に係る発明によれば、前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含まない場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
<10>に係る発明によれば、前記ポリエステル樹脂の酸価が1mgKOH/g未満又は50mgKOH/gを超える場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
<11>に係る発明によれば、結着樹脂及び染料を混合して混合物を得る第1工程と、前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂粒子と樹脂母粒子分散液に含まれる樹脂母粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、前記凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程と、を有するトナーの製造方法において、前記第1工程が結着樹脂及び染料を、上記式(1C)を満たす温度TCで混合して混合物を得る工程である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られるトナーの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
【
図3】実施例における画像ムラの評価において作製した画像の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
<樹脂粒子の製造方法>
本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法は、結着樹脂及び染料を、下記式(1)を満たす温度Tで混合して混合物を得る第1工程と、前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、を含む。
式(1):染料の融点T1≦温度T≦結着樹脂の熱分解温度T2
【0012】
本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法は、上記構成により、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法となる。その理由は、次の通り推測される。
【0013】
染料を含有する樹脂粒子の製造において、染料が樹脂粒子中に偏在し易いことがあった。
本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法は、式(1)を満たす温度Tで混合して混合物を得る第1工程を含む。第1工程を行うことで、結着樹脂と、染料と、がファンデルワールス力により結合し、混合物中における結着樹脂及び染料が均一に近い状態で混ざった状態になりやすい。そして、前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程を有する。第1工程の後に第2工程を行うことで、樹脂母粒子分散液に含まれる結着樹脂及び染料の混合状態が均一に近いまま維持されやすくなる。よって、本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法によって得られる樹脂粒子に含まれる結着樹脂及び染料の混合状態が均一に近い状態になりやすくなる。
【0014】
本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法は、上記構成により、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法になると推測される。
【0015】
(第1工程)
第1工程は、結着樹脂及び染料を、下記式(1)を満たす温度Tで混合して混合物を得る工程である。
式(1):染料の融点T1≦温度T≦結着樹脂の熱分解温度T2
【0016】
結着樹脂及び染料の混合は特に限定されず、撹拌翼を備えた撹拌装置で行う方法、押し出し機で行う方法などが挙げられ、押し出し機で行う方法が好ましい。
結着樹脂及び染料の混合を押し出し機で行うことで、200kJ/kg以上500kJ/kg以下の仕事量で結着樹脂及び染料の混合をしやすくなる。これにより、より画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法になりやすくなる。
【0017】
結着樹脂及び染料の混合は、上記式(1)を満たす温度Tで行い、画像ムラの観点から、下記式(2)を満たす温度Tで行うことが好ましく、下記式(3)を満たす温度Tで行うことがより好ましく、下記式(4)を満たす温度Tで行うことがさらに好ましい。
式(2):染料の融点T1+5℃≦温度T≦結着樹脂の熱分解温度T2-20℃
式(3):染料の融点T1+10℃≦温度T≦結着樹脂の熱分解温度T2-30℃
式(4):染料の融点T1+20℃≦温度T≦結着樹脂の熱分解温度T2-40℃
【0018】
温度Tは温度計により測定される値である。温度計としては、結着樹脂及び染料の混合に用いる装置(例えば、撹拌装置、押し出し機等)に備わる温度計が使用可能である。
【0019】
染料の融点T1は示差走査熱量計により測定される値である。示差走査熱量計としては、例えば、マックサイエンス社製、品名:DSC3110、熱分析システム001が使用可能である。
染料の融点T1の測定手順は以下の通りである。
0℃以上300℃以下の範囲において、昇温速度10℃/分の条件下で、染料を測定対象として示差走査熱量測定することによりDSC(Differential scanning calorimetry)曲線を得る。このDSC曲線から、JIS規格(JIS K-7121(2012))に基づいて求められる。
【0020】
結着樹脂の熱分解温度T2は熱重量分析により測定される値である。熱重量分析の測定器としては、例えば、島津製作所社製、品名:TGA-60AHが使用可能である。
結着樹脂の熱分解温度T2の測定手順は以下の通りである。
試料10mgを窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱し、熱重量変化が始まる温度を熱分解温度T2とする。
【0021】
第1工程において、結着樹脂及び前記染料の混合は、200kJ/kg以上500kJ/kg以下の仕事量で行うことが好ましく、250kJ/kg以上450kJ/kg以下の仕事量で行うことがより好ましく、300kJ/kg以上400kJ/kg以下の仕事量で行うことが更に好ましい。
【0022】
ここで、仕事量の算出は下記式(A)により行う。
式(A):(Pe-P0)/F
式(A)中、Peは第1工程における結着樹脂及び染料の混合に用いる装置(例えば、撹拌装置、押し出し機等。以下本段落において混合装置と称する。)の平均動力(kW)であり、P0は混合装置の空動力(kW)であり、Fは混合装置への結着樹脂及び染料の平均供給量(kg/h)を表す。
P0で表される混合装置の空動力とは、混合装置の内部に何も含まない状態で混合装置を動かした際に必要な単位時間当たりの仕事量である。
【0023】
-結着樹脂-
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
結着樹脂がポリエステル樹脂を含むことで、結着樹脂と、染料と、がファンデルワールス力により、さらに結合しやすくなる。これにより、より画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法となる。
【0025】
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知の非晶性ポリエステル樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂と共に、結晶性ポリエステル樹脂を併用してもよい。但し、結晶性ポリエステル樹脂は、全結着樹脂に対して、含有量が2質量%以上40質量%以下(好ましくは2質量%以上20質量%以下)の範囲で用いることがよい。
【0026】
なお、樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0027】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0028】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0031】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0032】
非晶性ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0033】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0034】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0037】
結晶性ポリエステル樹脂の融解温度は、50℃以上100℃以下が好ましく、55℃以上90℃以下がより好ましく、60℃以上85℃以下がさらに好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0038】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0039】
ポリエステル樹脂の酸価が1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることがより好ましく、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
酸価の測定は、JIS K0070-1992の電位差滴定法により測定される。
【0040】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステルと同様に、周知の製造方法により得られる。
【0041】
-染料-
染料としては、特に限定されず、油性染料及び水性染料が適用可能である。
ここで油性染料とは、水以外の溶媒に対して溶解し、水に実質的に不溶な染料のことをいう。油性染料は、25℃での水への溶解度(水100gに溶解できる染料の質量)が1g以下であることが好ましい。
ここで水性染料とは、水に対して溶解する染料のことをいう。水性染料は、25℃での水への溶解度が1gを超えることが好ましい。
【0042】
染料は、油性染料であることが好ましい。
染料として油性染料を使用することで、結着樹脂と、染料と、の相溶性が高まりやすくなる。そのため、本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法によって得られる樹脂粒子に含まれる結着樹脂及び染料の混合状態が均一に近い状態になりやすくなる。これにより、より画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法になると推測される。
【0043】
油性染料は、カルボニル基を有する油性染料であることが好ましい。
油性染料として、カルボニル基を有する油性染料を使用することで、結着樹脂と、染料と、がファンデルワールス力により、さらに結合しやすくなる。これにより、より画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法となる。
【0044】
油性染料は、ペリレン系染料、ナフタルイミド系染料、キサンテン系染料及びクマリン系染料からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
当該染料を使用することで、結着樹脂と、染料と、の相溶性が高まりやすくなる。そのため、本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法によって得られる樹脂粒子に含まれる結着樹脂及び染料の混合状態が均一に近い状態になりやすくなる。これにより、より画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法になると推測される。
【0045】
ペリレン系染料とは、ペリレン構造を有する染料である。
ナフタルイミド系染料とは、ナフタルイミド構造を有する染料である。
キサンテン系染料とは、キサンテン構造を有する染料である。
クマリン系染料とは、クマリン構造を有する染料である。
ここで、ペリレン構造、ナフタルイミド構造、キサンテン構造及びクマリン構造とは、「構造」の前に記載した化合物から水素原子を取り除いた構造を意味する。
【0046】
ペリレン系染料としては、具体的には、Solvent Green 5、Solvent Orange 55、Vat Red15、Vat Orange7、F Orange240、F Red305、F Red339、F Yellow83等などが挙げられる。
ナフタルイミド系染料としては、具体的には、Solvent Yellow 43、Solvent Yellow 116、Solvent Yellow 44などが挙げられる。
キサンテン系染料としては、具体的には、Solvent yellow 98、Basic Violet 11、Basic Red 2などが挙げられる。
クマリン系染料としては、具体的には、Disperse Yellow 160、Disperse yellow 82、Disperse yellow 184、Disperse yellow 186、Disperse yellow 232などが挙げられる。
【0047】
混合物中における染料の含有量が、混合物全体の質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
混合物中における染料の含有量が、混合物全体の質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下とすることで、より画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法となる。その理由は以下の通り推測される。
混合物中における染料の含有量を、混合物全体の質量に対して、0.1質量%以上とすることで、結着樹脂と、染料と、がファンデルワールス力により、さらに結合しやすくなる。これにより、より画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法となる。
混合物中における染料の含有量を、混合物全体の質量に対して、20質量%以下とすることで、染料同士での反射光の吸収の発生が抑制される。
【0048】
(第2工程)
第2工程は、混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る工程である。
混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化する方法としては、特に限定されないが、転相乳化法であることが好ましい。
転相乳化法による乳化は、撹拌翼を備えた撹拌装置で行う方法、押し出し機により行う方法等が適用可能である。
【0049】
-撹拌翼を備えた撹拌装置により乳化する方法-
撹拌翼を備えた撹拌装置により乳化する方法としては、例えば、以下の手順で行うことが好ましい。
(1-1)混合物を溶媒に溶解させることで混合物溶液Aを得る工程と、
(1-2)混合物溶液Aに対して塩基性化合物を添加することで混合物溶液Bを得る工程と、
(1-3)混合物溶液Bに対して水系溶媒、界面活性剤を添加することで樹脂母粒子分散液を得る工程と、を経て乳化することが好ましい。
【0050】
・(1-1)混合物を溶媒に溶解させることで混合物溶液Aを得る工程
本工程は、混合物を溶媒に溶解させることで混合物溶液Aを得る工程である。
本工程は、混合物及び溶媒を撹拌装置に添加して、撹拌することで行うことが好ましい。
【0051】
溶媒としては、混合物を溶解する溶媒であれば特に限定されない。
溶媒としては、転送乳化を行う観点から、水を含有しないことが好ましい。
溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒等が適用可能である。
【0052】
・(1-2)混合物溶液Aに対して塩基性化合物を添加することで混合物溶液Bを得る工程
本工程は、混合物溶液Aに対して塩基性化合物を添加することで混合物溶液Bを得る工程である。
本工程は、混合物溶液Aに対して塩基性化合物を添加して、撹拌することで行うことが好ましい。
【0053】
塩基性化合物とは、ブレンステッド塩基性を示す化合物である。
ブレンステッド塩基性を示すとは、化合物を水に溶解した場合、水溶液中に水酸化物イオン(OH-)が発生することを意味する。
塩基性化合物としては、アンモニア;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;等が挙げられる。
【0054】
・(1-3)混合物溶液Bに対して水系溶媒、界面活性剤を添加することで樹脂母粒子分散液を得る工程
本工程は、混合物溶液Bに対して水系溶媒、界面活性剤を添加することで樹脂母粒子分散液を得る工程である。
本工程は、混合物溶液Bに対して水系溶媒、界面活性剤を添加して、撹拌することで行うことが好ましい。
【0055】
水系溶媒とは、水を含有する溶媒である。
水系溶媒としては、水、塩の水溶液などが挙げられる。
塩の水溶液としては、特に限定されず、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等が挙げられる。
水系溶媒としては、水を使用することが好ましい。
【0056】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤;などが挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
撹拌翼を備えた撹拌装置により乳化する方法は以上の手順により行うことが好ましい。
撹拌翼を備えた撹拌装置により乳化する方法は必要に応じて、(1-3)混合物溶液Bに対して水系溶媒を添加する工程の後に、樹脂母粒子分散液に含まれる溶媒の含有量を低減する工程を行ってもよい。
【0058】
樹脂母粒子分散液に含まれる溶媒の含有量を低減する工程としては、例えば、樹脂母粒子分散液を気体(空気、窒素、アルゴン等)によりバブリングすることで行うことが好ましい。
【0059】
-押し出し機により行う方法-
押し出し機により行う方法としては、例えば、以下の手順で行うことが好ましい。
(2-1)混合物及び塩基性化合物を押し出し機で混合し混合物溶液A2を得る工程と、
(2-2)混合物溶液A2に対して界面活性剤を添加し、押し出し機で混合することで混合物溶液B2を得る工程と、
(2-3)混合物溶液B2に対して水系溶媒を添加し、押し出し機で混合することで樹脂母粒子分散液を得る工程と、を経て乳化することが好ましい。
【0060】
・(2-1)混合物及び塩基性化合物を押し出し機で混合し混合物溶液A2を得る工程
本工程は、混合物及び塩基性化合物を押し出し機で混合し混合物溶液A2を得る工程である。
塩基性化合物としては、既述の「・(1-2)混合物溶液Aに対して塩基性化合物を添加することで混合物溶液Bを得る工程」において説明したものが適用可能である。
【0061】
・(2-2)混合物溶液A2に対して界面活性剤を添加し、押し出し機で混合することで混合物溶液B2を得る工程
本工程は、混合物溶液A2に対して界面活性剤を添加し、押し出し機で混合することで混合物溶液B2を得る工程である。
本工程は、混合物及び塩基性化合物の押し出し機への投入を行った投入口より、押出方向下流に存在する投入口から界面活性剤を押し出し機へ投入することで行うことが好ましい。
【0062】
界面活性剤としては、上記「・(1-3)混合物溶液Bに対して水系溶媒、界面活性剤を添加することで樹脂母粒子分散液を得る工程」において説明した界面活性剤と同様のものが適用可能である。
界面活性剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
・(2-3)混合物溶液B2に対して水系溶媒を添加し、押し出し機で混合することで樹脂母粒子分散液を得る工程
本工程は、混合物溶液B2に対して水系溶媒を添加し、押し出し機で混合することで樹脂母粒子分散液を得る工程である。
本工程は、界面活性剤の押し出し機への投入を行った投入口より、押出方向下流に存在する投入口から水系溶媒を押し出し機へ投入することで行うことが好ましい。
【0064】
水系溶媒としては、既述の「・(1-3)混合物溶液Bに対して水系溶媒を添加することで樹脂母粒子分散液を得る工程」において説明したものが適用可能である。
【0065】
(その他の工程)
本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法は、第1工程及び第2工程以外のその他の工程を含んでもよい。
その他の工程としては、例えば、樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂粒子と、樹脂母粒子分散液に含まれる結着樹脂粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、前記凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、が挙げられる。
【0066】
-凝集粒子形成工程-
凝集粒子形成工程について説明する。
樹脂粒子分散液、樹脂母粒子分散液、必要に応じて、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液を混合する。
そして、混合分散液中で、結着樹脂粒子と樹脂母粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、結着樹脂粒子と樹脂母粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0067】
ここで、結着樹脂粒子は結着樹脂を含有する粒子である。結着樹脂粒子に含まれる結着樹脂は、樹脂母粒子に含まれる結着樹脂と同様のものが使用可能である。
結着樹脂粒子に含まれる結着樹脂は、樹脂母粒子に含まれる結着樹脂と同一であってもよく、異なっていてもよい。
結着樹脂粒子に含まれる結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0068】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、結着樹脂粒子と樹脂母粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、結着樹脂粒子と樹脂母粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0069】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0070】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酢酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0071】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、樹脂粒子を形成する。
【0072】
以上の工程を経て、樹脂粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子分散液、必要に応じて、樹脂母粒子が分散された樹脂母粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに結着樹脂粒子、必要に応じて、樹脂母粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造の樹脂粒子を形成する工程と、を経て、樹脂粒子を製造してもよい。
【0073】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成された樹脂粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態の樹脂粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0074】
そして、本実施形態に係る樹脂粒子は、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0075】
以上の工程を経て樹脂粒子を製造することが好ましい。
【0076】
樹脂粒子の平均粒径は0.05μm以上1μm以下であることが好ましく、0.10μm以上0.80μm以下であることがより好ましく、0.15μm以上0.50μm以下であることが更に好ましい。
【0077】
鋭意研究したところ、樹脂粒子の平均粒径を0.05μm以上1μm以下とすることで、理由は定かではないが、画像ムラが抑制される樹脂粒子となることが分かっている。
【0078】
樹脂粒子の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を測定することで算出する。
【0079】
本実施形態に係る樹脂粒子はトナーとして好適に使用可能である。
すなわち本実施形態に係る樹脂粒子の製造方法はトナーの製造方法として好適である。
本実施形態に係るトナーの製造方法は、すなわち以下の通りである。
結着樹脂及び染料を、下記式(1)を満たす温度Tで混合して混合物を得る第1工程と、
前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、
前記第2工程後に、樹脂母粒子分散液に含まれる結着樹脂粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、前記凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程と、を有するトナーの製造方法。
【0080】
<トナー>
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について説明する。
【0081】
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0082】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、染料と、必要に応じて、染料以外の着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
結着剤及び染料については、既述のものが適用可能である。
【0083】
結着樹脂の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0084】
染料の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0085】
-染料以外の着色剤-
染料以外の着色剤としては顔料が挙げられる。
顔料としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料が挙げられる。
【0086】
染料以外の着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、染料以外の着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0087】
染料以外の着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上50質量%以下が好ましく、3質量%以上25質量%以下がより好ましい。
【0088】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0089】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0090】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0091】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0092】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0093】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0094】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0095】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0096】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0097】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO2、TiO2、Al2O3、CuO、ZnO、SnO2、CeO2、Fe2O3、MgO、BaO、CaO、K2O、Na2O、ZrO2、CaO・SiO2、K2O・(TiO2)n、Al2O3・2SiO2、CaCO3、MgCO3、BaSO4、MgSO4、SrTiO3、BaTiO3、CaTiO3等が挙げられる。
【0098】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0099】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0100】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上6質量%以下がより好ましい。
【0101】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係るトナーは、静電荷像現像剤に適用可能である
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0102】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0103】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0104】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0105】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0106】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0107】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、下記の画像形成装置及び画像形成方法に適用可能である。
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0108】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0109】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0110】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0111】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0112】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0113】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0114】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0115】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0116】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0117】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0118】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0119】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0120】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0121】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0122】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0123】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0124】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0125】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0126】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0127】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0128】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0129】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0130】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例0131】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0132】
<結着樹脂の製造>
(ポリエステル樹脂1の製造)
・テレフタル酸:30モル部
・フマル酸:70モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:5モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:95モル部
撹拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えたフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間かけて温度を220℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら30分間かけて230℃まで温度を上げ、該温度で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。こうして、酸価12.0mgKOH/g、ガラス転移温度60℃、熱分解温度T300℃の結着樹脂であるポリエステル樹脂1を得た。
【0133】
(ポリエステル樹脂2の製造)
テレフタル酸を25モル部とした以外は、ポリエステル樹脂1と同一の手順で製造した。
【0134】
(ポリエステル樹脂3の製造)
テレフタル酸を27モル部とした以外は、ポリエステル樹脂1と同一の手順で製造した。
【0135】
(ポリエステル樹脂4の製造)
テレフタル酸を37.5モル部とした以外は、ポリエステル樹脂1と同一の手順で製造した。
【0136】
(ポリエステル樹脂5の製造)
テレフタル酸を42モル部とした以外は、ポリエステル樹脂1と同一の手順で製造した。
【0137】
<結着樹脂粒子分散液の製造>
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2-ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、ポリエステル樹脂1100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間撹拌した。次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下した。滴下終了後、室温(20℃乃至25℃)に戻し、撹拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2-ブタノールを1,000ppm以下まで低減させた樹脂粒子分散液を得た。前記樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整し、結着樹脂粒子分散液を得た。
【0138】
<離型剤粒子分散液の調製>
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製、HNP-9):100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):1部
・イオン交換水:350部
上記の材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社、商品名ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社)で分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(固形分量20質量%)を得た。
【0139】
<実施例1>
(第1工程)
ポリエステル樹脂1を200質量部、染料(Solvent Green 5、BASFカラー&エフェクトジャパン(株)製、融点T1:200℃)2部を、二軸押出機(商品名:TEM26SS、東芝機械(株)製)の原料投入口に投入し、温度Tであるバレル温度220℃、スクリュー回転数400rpm(revolutions per minute)で溶融し混合物を作製した。
【0140】
(第2工程)
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2-ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、混合物を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間撹拌した。次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下した。滴下終了後、室温(20℃乃至25℃)に戻し、撹拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2-ブタノールを1,000ppm以下まで低減させた。続いて界面活性剤としてドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(三洋化成工業(株)製、エレミノールMON-7)1.0部を加え、さらにイオン交換水を加えることで固形分量を20質量%に調整し、樹脂母粒子分散液(P1)を得た。樹脂母粒子の体積平均粒径は0.2μmであった。
【0141】
(その他の工程)
-トナー粒子の作製-
・樹脂母粒子分散液(P1):3.7部
・結着樹脂粒子分散液:80部
・離型剤粒子分散液:8.0部
・アニオン界面活性剤(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20%):1.1部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1N(=mol/L)の硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム濃度が10質量%の硝酸水溶液30部を添加した。次いで、ホモジナイザー(IKA社製、商品名ウルトラタラックスT50)を用いて液温30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し30分間保持した。その後、樹脂粒子分散液(1)20部を追加し1時間保持し、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した後、84℃まで加熱し2.5時間保持した。次いで、20℃/分の速度で20℃まで冷却し、固形分を濾別し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることによりトナー粒子を得た。トナー粒子の体積平均粒径は6μmであった。
【0142】
-トナーの作製-
得られたトナー粒子100部に対して疎水性シリカ(日本アエロジル(株)製、RY50)を1.5部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル(株)製、T805)を1.0部とを、サンプルミルを用いて10,000rpm(revolutions per minute)で30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分して、トナーを調製した。得られたトナーの体積平均粒径は、6.0μmであった。
【0143】
-静電荷像現像剤の作製-
・フェライト粒子(平均粒径35μm):100部
・トルエン:14部
・ポリメチルメタクリレート(MMA、重量平均分子量75,000):5部
・カーボンブラック:0.2部(VXC-72、キャボット社製、体積抵抗率:100Ωcm以下)
フェライト粒子を除く上記材料をサンドミルにて分散して分散液を調製し、この分散液をフェライト粒子とともに真空脱気型ニーダに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることによりキャリアを得た。
トナー8部とキャリア92部とをVブレンダーにて混合し、現像剤(静電荷像現像剤)を作製した。
【0144】
<実施例2>
(第1工程)
ポリエステル樹脂1を200部、染料(Solvent Green 5、BASFカラー&エフェクトジャパン(株)製、ペリレン系染料)2部を、二軸押出機(商品名:TEM26SS、東芝機械(株)製)の原料投入口に投入し、温度Tであるバレル温度220℃、スクリュー回転数400rpm(revolutions per minute)で溶融し混合物を作製した。
【0145】
(第2工程)
混合物200部、水酸化ナトリウム50質量%水溶液0.2部を二軸押出機の原料投入口に投入し、二軸押出機の4バレル目から界面活性剤としてドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(三洋化成工業(株)製、エレミノールMON-7)4.1部、二軸押出機の5バレル目から90℃に調整したイオン交換水を150部、7バレル目から90℃に調整したイオン交換水を150部、9バレル目から90℃に調整したイオン交換水を150部添加し、バレル温度90℃、スクリュー回転数400rpmにて混合物を乳化して樹脂母粒子分散液(P2)を得た。樹脂母粒子の体積平均粒径は0.2μmであった。固形分は31%であった。
【0146】
(その他の工程)
実施例1と同一の手順でトナー粒子、トナー及び現像剤を得た。
【0147】
<実施例3~20、比較例1及び比較例2>
(第1工程)における温度Tであるバレル温度、第1工程における仕事量、混合物中における染料の含有量、及びトナー粒子の平均粒子径を表1及び表2に記載の通りに変更したこと以外は実施例1と同一の手順で樹脂母粒子分散液、トナー粒子、トナー及び現像剤を得た。なお、第一工程における仕事量は、スクリュー回転数で調整をした。
【0148】
<実施例17~20>
ポリエステル樹脂1を下記のポリエステル樹脂に変えたこと以外は実施例1と同一の手順で樹脂母粒子分散液、トナー粒子、トナー及び現像剤を得た。なお、これらの例は、結着樹脂粒子分散液に含まれるポリエステル樹脂1も下記のポリエステル樹脂に変えた。
実施例17:ポリエステル樹脂2
実施例18:ポリエステル樹脂3
実施例19:ポリエステル樹脂4
実施例20:ポリエステル樹脂5
【0149】
<実施例21~26>
染料を下記の染料に変えたこと以外は実施例1と同一の手順で樹脂母粒子分散液、トナー粒子、トナー及び現像剤を得た。
実施例21:Basic Yellow 40(Winchemical Industrial Co.Ltd、水性染料)
実施例22:Disperse Yellow9(富士フイルム和光純薬株式会社、カルボニル基を有しない油性染料)
実施例23:Solvent Yelow43(酒井興行株式会社、ナフタルイミド系染料)
実施例24:Solvent Yellow98(有本化学工業株式会社、キサンテン系染料)
実施例25:Disperse Yelow16(有本化学株式会社、クマリン系染料)
実施例26:Solvent Yellow104(紀和化学工業株式会社、アゾ系染料)
【0150】
<評価>
(転写効率評価)
転写効率を評価するために、画像形成装置(富士ゼロックス株式会社製、Docu Centre Color 400)を、感光体から中間転写体にトナーが移行した後、感光体がクリーニングされる前の状態で停止するように改造した転写効率評価用装置を用意し、その現像器に現像剤を入れ、そのトナーカートリッジにトナーを入れた。この転写効率評価用装置を用いて、下記の方法で画像の転写効率を評価した。
温度28℃および湿度85%RHの環境下で、感光体上のトナー載り量が5g/m2になるように現像電位を調整した。次に、感光体上に現像されたトナーが中間転写体(中間転写ベルト)へ移行した後に転写効率評価用装置を止めた。これにより、中間転写体に転写されなかったトナーを、クリーニングされる前の状態で感光体上に残した。感光体にテープ(1cm×5cm)を貼り付けることによって感光体上に残されたトナーを採取し、その重量を測定した。感光体上に現像されたトナー載り量(設定値である5g/m2)と、転写後の感光体上のトナー載り量の測定値との差から、中間転写体に転写されたトナー量を算出し、次式に基づいて転写効率を求めた。
転写効率=中間転写体に転写されたトナー量/感光体上に現像されたトナー載り量×100
転写効率の測定は、画像面積が用紙全体の5%を占める画像を、50,000枚のA4用紙に連続で出力した直後に行った。なお、Bまでが許容範囲とした。
-評価基準-
A:転写効率98%以上
B:転写効率95%以上98%未満
C:転写効率90%以上95%未満
D:90%未満
【0151】
(画像ムラの評価)
まず、画像形成装置内の環境が、高温高湿(30℃90%)となるよう調整し、3日間放置した。放置後、A3用紙にエリアカバレッジ50%のパターンA(
図3中(A))の画像を20000枚出力した。出力後、A3用紙にエリアカバレッジ50%のパターンB(
図3中(B))の画像を1枚出力した。この1枚出力されたパターンBの画像について、100%ソリッド画像(ベタ画像)部分の濃度の確認を行った。ここで、濃度確認は、画像濃度計X-Rite938(X-Rite社製)にて測定して数値化した。濃度の測定はソリッド画像部分についてランダムに10箇所行い、測定された濃度の最大値と最小値の差である画像濃度差を画像ムラの結果とした。評価基準は以下の通りであり、Bまでが許容範囲とした。
-評価基準-
A:画像濃度差が0.2以下
B:画像濃度差が0.2より大きく0.3以下
C:画像濃度差が0.3より大きく0.35以下
D:画像濃度差が0.35より大きく0.4以下
【0152】
【0153】
【0154】
上記結果から、本実施例の樹脂粒子の製造方法は、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法であることがわかる。
【0155】
(((1))) 結着樹脂及び染料を、下記式(1)を満たす温度Tで混合して混合物を得る第1工程と、
前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、を含む樹脂粒子の製造方法。
式(1):染料の融点T1≦温度T≦結着樹脂の熱分解温度T2
(((2))) 前記第1工程において、200kJ/kg以上500kJ/kg以下の仕事量で前記結着樹脂及び前記染料を混合する(((1)))に記載の樹脂粒子の製造方法。
(((3))) 前記第1工程を押し出し機で行う(((1)))に記載の樹脂粒子の製造方法。
(((4))) 前記染料が油性染料である(((1)))に記載の樹脂粒子の製造方法。
(((5))) 前記油性染料がカルボニル基を有する油性染料である(((4)))に記載の樹脂粒子の製造方法。
(((6))) 前記カルボニル基を有する油性染料がペリレン系染料、ナフタルイミド系染料、キサンテン系染料及びクマリン系染料からなる群から選択される少なくとも1種である(((5)))に記載の樹脂粒子の製造方法。
(((7))) 前記混合物中における染料の含有量が、前記混合物全体の質量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である(((1)))に記載の樹脂粒子の製造方法。
(((8))) 平均粒径が0.05μm以上1μm以下である樹脂粒子を得る(((1)))に記載の樹脂粒子の製造方法。
(((9))) 前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含む(((1)))に記載の樹脂粒子の製造方法。
(((10))) 前記ポリエステル樹脂の酸価が1mgKOH/g以上50mgKOH/g以下である(((9)))に記載の樹脂粒子の製造方法。
(((11))) (((1)))~(((10)))のいずれか1つに記載の樹脂粒子の製造方法における前記第2工程後に、樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂粒子と前記樹脂母粒子分散液に含まれる樹脂母粒子とを凝集させ、凝集粒子を形成する工程と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、前記凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程と、を有するトナーの製造方法。
【0156】
(((1)))に係る発明によれば、結着樹脂及び染料を混合して混合物を得る第1工程と、前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、を含む樹脂粒子の製造方法において、前記第1工程が結着樹脂及び染料を、上記式(1C)を満たす温度TCで混合して混合物を得る工程である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
(((2)))に係る発明によれば、前記第1工程において、200kJ/kg未満又は500kJ/kgを超える仕事量で前記結着樹脂及び前記染料を混合する場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、第1工程を押し出し機で行わない場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、前記染料が水性染料である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、前記油性染料がカルボニル基を有しない油性染料である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
【0157】
(((6)))に係る発明によれば、前記カルボニル基を有する油性染料がアゾ系染料である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
(((7)))に係る発明によれば、前記混合物中における染料の含有量が、前記混合物全体の質量に対して、0.1質量%未満又は20質量%以上である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、平均粒径が0.05μm未満又は1μmを超える樹脂粒子を得る製造方法と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
(((9)))に係る発明によれば、前記結着樹脂がポリエステル樹脂を含まない場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
(((10)))に係る発明によれば、前記ポリエステル樹脂の酸価が1mgKOH/g未満又は50mgKOH/gを超える場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られる樹脂粒子の製造方法が提供される。
(((11)))に係る発明によれば、結着樹脂及び染料を混合して混合物を得る第1工程と、前記混合物、塩基性化合物、水系溶媒及び界面活性剤を乳化して樹脂母粒子分散液を得る第2工程と、樹脂粒子分散液に含まれる結着樹脂粒子と樹脂母粒子分散液に含まれる樹脂母粒子を凝集させ、凝集粒子を形成する工程と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を加熱し、前記凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程と、を有するトナーの製造方法において、前記第1工程が結着樹脂及び染料を、上記式(1C)を満たす温度TCで混合して混合物を得る工程である場合と比較して、画像ムラの少ない画像が得られるトナーの製造方法が提供される。