(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074150
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】光空間通信装置および光空間通信装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/86 20200101AFI20240523BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240523BHJP
G01S 7/483 20060101ALI20240523BHJP
H04B 10/114 20130101ALI20240523BHJP
【FI】
G01S17/86
G01S17/931
G01S7/483
H04B10/114
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185248
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水本 尚志
(72)【発明者】
【氏名】相薗 正樹
【テーマコード(参考)】
5J084
5K102
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA10
5J084AB01
5J084AC02
5J084AD01
5J084AD03
5J084BA48
5J084BB02
5J084BB40
5J084CA03
5J084CA07
5J084EA28
5K102AA15
5K102AA16
5K102AL23
5K102AL28
5K102MH15
5K102MH27
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でセンシングおよび通信を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】、光空間通信装置(100)は、出光手段(111)に第1の通信光を出光させ、受光手段(121)に通信相手からの第2の通信光を受光させることにより、通信相手と光空間通信を行う通信制御手段(131)と、出光手段(111)にパルス光を出光させ、受光手段(121)にパルス光の反射光を受光させることにより、周囲の物体までの距離を測定する測定制御手段(132)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出光する出光手段と、
前記出光手段が出光した光の方向を調整する光位相変調手段と、
外部からの光を受光する受光手段と、
前記出光手段に第1の通信光を出光させ、前記受光手段に通信相手からの第2の通信光を受光させることにより、前記通信相手と光空間通信を行う通信制御手段と、
前記出光手段にパルス光を出光させ、前記受光手段に前記パルス光の反射光を受光させることにより、周囲の物体までの距離を測定する測定制御手段と、
を備える、光空間通信装置。
【請求項2】
前記パルス光は、前記第2の通信光よりも、光の強度が強く、
前記受光手段が受光した光の強度に基づいて、当該光が、前記第2の通信光であるか、前記パルス光の反射光であるかを判定する判定手段を備えている、請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項3】
前記パルス光は、前記第2の通信光とは、周波数または変調方式が異なっており、
前記受光手段が受光した光の周波数または変調方式に基づいて、当該光が、前記第2の通信光であるか、前記パルス光の反射光であるかを判定する判定手段を備えている、請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項4】
前記測定制御手段は、前記通信相手までの距離を測定する、請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項5】
前記通信制御手段は、前記光位相変調手段に前記第1の通信光の第1の出光方向を変化させることにより、前記通信相手と光空間通信可能な前記第1の出光方向を検出する、請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項6】
前記第2の通信光には、前記通信相手からの第2の出光方向を示す情報が重畳されており、
前記測定制御手段は、前記第1の出光方向と、前記第2の出光方向とに基づいて、前記通信相手の姿勢を測定する、請求項5に記載の光空間通信装置。
【請求項7】
前記出光手段は、前記第1の通信光を出光する光源と、前記パルス光を出光する光源とをそれぞれ備えている、請求項1に記載の光空間通信装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光空間通信装置を備えた車両。
【請求項9】
光空間通信装置の制御方法であって、
前記光空間通信装置は、
光を出光する出光手段と、
前記出光手段が出光した光の方向を調整する光位相変調手段と、
外部からの光を受光する受光手段と、
を備え、
前記出光手段に第1の通信光を出光させ、前記受光手段に通信相手からの第2の通信光を受光させることにより、前記通信相手と光空間通信を行う通信制御処理と、
前記出光手段にパルス光を出光させ、前記受光手段に前記パルス光の反射光を受光させることにより、周囲の物体までの距離を測定する測定制御処理と、を実行する、光空間通信装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光空間通信装置および光空間通信装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な装置がセンサおよび通信装置を備え、センシング結果および通信結果に基づく高度な制御が実施されている。例えば、自動運転車両では、GNSS(Global Navigation Satellite System)、カメラ、LiDAR(Light Detecition And Ranging)等の測距装置や姿勢角を測定するための内界センサなどを組み合わせて、自車両および相手車両の位置や姿勢などを推定し、通信装置を用いて他の車両等と情報共有することにより、相手車両の移動予測等をおこない安全な距離を確保することが行なわれている。特許文献1には、赤外線センサ、レーザセンサ、超音波センサなどのセンサ、および、Bluetooth(登録商標)モジュールなどの通信装置を備えた車両が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようにセンシングおよび通信のために複数の装置を組み合わせて高度な処理を行なう場合、コストの増大や演算のためのエネルギー効率が悪化するという問題が生じることがある。そのため、簡易な構成でセンシングおよび通信を行うことができる技術は有益である。
【0005】
本発明の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、簡易な構成でセンシングおよび通信を行うことができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光空間通信装置は、光を出光する出光手段と、前記出光手段が出光した光の方向を調整する光位相変調手段と、外部からの光を受光する受光手段と、前記出光手段に第1の通信光を出光させ、前記受光手段に通信相手からの第2の通信光を受光させることにより、前記通信相手と光空間通信を行う通信制御手段と、前記出光手段にパルス光を出光させ、前記受光手段に前記パルス光の反射光を受光させることにより、周囲の物体までの距離を測定する測定制御手段と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る光空間通信装置の制御方法は、光空間通信装置の制御方法であって、前記光空間通信装置は、光を出光する出光手段と、前記出光手段が出光した光の方向を調整する光位相変調手段と、外部からの光を受光する受光手段と、を備え、前記出光手段に第1の通信光を出光させ、前記受光手段に通信相手からの第2の通信光を受光させることにより、前記通信相手と光空間通信を行う通信制御処理と、前記出光手段にパルス光を出光させ、前記受光手段に前記パルス光の反射光を受光させることにより、周囲の物体までの距離を測定する測定制御処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、簡易な構成でセンシングおよび通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係る光空間通信装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係る光空間通信装置による通信制御処理の一例を示すフロー図である。
【
図3】本発明の実施形態1に係る光空間通信装置による測定制御処理の一例を示すフロー図である。
【
図4】本発明の実施形態2に係る光空間通信装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る光空間通信装置の適用例を示す模式図である。
【
図6】本発明の実施形態2に係る光空間通信装置の出光ユニットの構成例を示す模式図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る光空間通信装置の受光ユニットの構成例を示す模式図である。
【
図8】光空間通信装置による光軸合わせの一例を説明する模式図である。
【
図9】光空間通信装置による光軸合わせの一例を説明する模式図である。
【
図10】コンピュータの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。
【0011】
(光空間通信装置の構成)
本例示的実施形態に係る光空間通信装置100の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、光空間通信装置100の構成を示すブロック図である。光空間通信装置100は光空間通信を行う通信装置である。光空間通信とは、空間を伝搬する光を用いた通信である。光空間通信に用いられる光には、ミリ波、サブミリ波、赤外光、可視光、紫外光等が含まれ得る。
【0012】
光空間通信装置100は、出光手段111、光位相変調手段112、受光手段121、通信制御手段131、および、測定制御手段132を備えている。
【0013】
出光手段111は、光を出光する。出光手段111は、光空間通信のための通信光(第1の通信光)、および、距離の測定のためのパルス光を出光することができる。通信光は、通信内容を含むデジタル信号が重畳されている連続した光である。パルス光は、通信光よりも強度が強く、瞬間的に出光される光である。出光手段111は、発光素子を含み、レンズなどを含み得る。出光手段111の出光は、通信制御手段131および測定制御手段132により制御される。出光手段111から出光した光は、光位相変調手段112に入射する。
【0014】
光位相変調手段112は、出光手段111が出光した光の方向を調整する。光位相変調手段112は、通信制御手段131および測定制御手段132による制御を受ける。
【0015】
光位相変調手段112は、例えば、強誘電性液晶、ホモジーニアス液晶、垂直配向液晶などによって実現され、一例として、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)デバイスを備えている。光位相変調手段112は、出光手段111から出光した光が入射する複数の受光領域を有しており、フラウンフォーファー回折が生じるようになっている。通信制御手段131および測定制御手段132は、各受光領域に印加する電圧を制御することにより、受光領域の屈折率を制御することができる。これにより、通信制御手段131および測定制御手段132は、受光領域間に屈折率の差を発生させて、出光手段111から光位相変調手段112に入射された光を適宜に回折させることができる。これにより、光位相変調手段112は、出光手段111が出光した光の方向を調整することができる。また、光位相変調手段112は、出光手段111が出光した光を複数の光に分割して、互いに異なる方向に出射することができる。
【0016】
受光手段121は、外部からの光を受光する。受光手段121は、外部からの光として、光空間通信装置100の光空間通信の通信相手からの通信光(第2の通信光)、および、光空間通信装置100が出光したパルス光の反射光を受光することができる。受光手段121は、受光素子および受信回路を含み、集光レンズなどを含み得る。
【0017】
通信制御手段131は、出光手段111に第1の通信光を出光させ、受光手段121に通信相手からの第2の通信光を受光させることにより、通信相手と光空間通信を行う。すなわち、通信制御手段131は、出光手段111を制御して、通信相手に送信する通信内容を含むデジタル信号が重畳された第1の通信光を出光させることにより、通信相手に所望の通信内容を送信する。また、通信制御手段131は、受光手段121を制御して、通信相手から送信された通信内容を含むデジタル信号が重畳された第2の通信光を受光させることにより、通信相手から送信された通信内容を取得する。
【0018】
測定制御手段132は、出光手段111にパルス光を出光させ、受光手段121に当該パルス光の反射光を受光させることにより、周囲の物体までの距離を測定する。すなわち、測定制御手段132は、出光手段111を制御してパルス光を出光させる。出光されたパルス光は、周囲の物体において反射する。測定制御手段132は、当該パルス光の反射光を受光手段121に受光させることにより、受光した反射光に基づいて周囲の物体までの距離を測定することができる。
【0019】
以上のように、本例示的実施形態に係る光空間通信装置100においては、出光手段111、光位相変調手段112および受光手段121を用いて、光空間通信を実行するだけでなく、パルス光を用いた測定も行うことができる。これにより、簡易な構成でセンシングおよび通信を行うことができるという効果が得られる。
【0020】
(光空間通信装置の制御方法の流れ)
本例示的実施形態に係る光空間通信装置の制御方法の流れについて、
図2および
図3を参照して説明する。本例示的実施形態に係る光空間通信装置の制御方法では、通信制御処理と、測定制御処理とを実行する。
【0021】
図2は、光空間通信装置100による通信制御処理の一例を示すフロー図である。ステップS201において、通信制御手段131は、出光手段111に第1の通信光を出光させる。ステップS202において、通信制御手段131は、受光手段121に通信相手からの第2の通信光を受光させる。これにより、通信制御手段131は、光空間通信装置100に通信相手との光空間通信を行わせることができる。
【0022】
図3は、光空間通信装置100による測定制御処理の一例を示すフロー図である。ステップS301において、測定制御手段132は、出光手段111にパルス光を出光させる。ステップS302において、測定制御手段132は、受光手段121に当該パルス光の反射光を受光させる。これにより、測定制御手段132は、光空間通信装置100に周囲の物体までの距離を測定させることができる。
【0023】
以上のように、本例示的実施形態に係る光空間通信装置の制御方法においては、光空間通信装置に、光空間通信を実行させるだけでなく、パルス光を用いた測定も行わせることができる。これにより、簡易な構成でセンシングおよび通信を行うことができるという効果が得られる。
【0024】
〔例示的実施形態2〕
本発明の第2の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0025】
図4は、本例示的実施形態に係る光空間通信装置100の構成を示すブロック図である。光空間通信装置100は、出光ユニット110、受光ユニット120および主制御部130を備えている。出光ユニット110は、出光手段111および光位相変調手段112を備えている。受光ユニット120は、受光手段121を備えている。主制御部130は、通信制御手段131、測定制御手段132および判定手段133を備えている。判定手段133は、外部からの光が、第2の通信光であるか、パルス光の反射光であるかを判定する。
【0026】
図5は、本例示的実施形態に係る光空間通信装置100の適用例を示す模式図である。
図5に示す適用例では、光空間通信装置100は、車両1に設けられている。光空間通信装置100は、車両2(通信相手)との間において、光空間通信装置100から車両2に向かう第1の通信光L1、および、車両2から光空間通信装置100に向かう第2の通信光L2を介して光空間通信を行う。また、光空間通信装置100は、パルス光L3を周囲に向けて出光し、周囲の物体3において反射したパルス光の反射光L4を受光することにより、物体3までの距離を測定する。
【0027】
図6は、出光ユニット110の構成例を示す模式図である。
図6に示すように、出光手段111から出光された光Lは、光位相変調手段112に入射し、光位相変調手段112によって光Lの方向が調整されて、出光ユニット110から出光される。出光手段111および光位相変調手段112は、主制御部130の通信制御手段131および測定制御手段132によって制御される。
【0028】
なお、出光手段111は、第1の通信光L1を出光する光源と、パルス光L3を出光する光源とをそれぞれ備えていてもよい。これにより、第1の通信光L1およびパルス光L3のそれぞれに適した光を出光することができる。
【0029】
図7は、受光ユニット120の構成例を示す模式図である。
図6に示すように、受光手段121は、集光レンズ121a、受光素子121bおよび受信回路121cを備えている。外部からの光Lは、集光レンズ121aによって集光され、受光素子121bによって受光される。そして、受信回路121cによって、受光素子121bが受光した光Lが検出される。受信回路121cの検出結果は、主制御部130の通信制御手段131、測定制御手段132および判定手段133に提供される。
【0030】
(判定手段の動作について)
受光手段121は、通信相手からの第2の通信光L2、および、パルス光L3の反射光L4の両方を受光する。そのため、光空間通信装置100は、受光手段121が受光した光が、第2の通信光L2、および、反射光L4の何れであるかを判定する判定手段133を備えている。
【0031】
判定手段133による判定方法は、第2の通信光L2および反射光L4を判別できるものであれば特に限定されないが、例えば、以下のような方法を用いることができる。
【0032】
上述したように、パルス光L3は、通信光L1、L2よりも非常に強い瞬間的な光である。そのため、反射光L4も、第2の通信光L2よりも強度が強い。そのため、一態様において、判定手段133は、受光手段121が受光した光の強度に基づいて、当該光が、第2の通信光L2であるか、反射光L4であるかを判定することができる。
【0033】
また、一態様において、測定制御手段132は、パルス光L3の周波数を、第2の通信光の周波数とは異ならせてもよい。これにより、判定手段133は、受光手段121が受光した光の周波数に基づいて、当該光が、第2の通信光L2であるか、反射光L4であるかを判定することができる。
【0034】
また、一態様において、通信制御手段131および測定制御手段132は、通信光の変調方式と、パルス光L3の変調方式を異ならせてもよい。これにより、判定手段133は、受光手段121が受光した光の変調方式に基づいて、当該光が、第2の通信光L2であるか、反射光L4であるかを判定することができる。
【0035】
また、一態様において、通信制御手段131および測定制御手段132は、光空間通信を行うタイミングと、パルス光L3を用いた測定を行うタイミングとを分離させてもよい。これにより、判定手段133は、受光手段121が受光した光のタイミングに基づいて、当該光が、第2の通信光L2であるか、反射光L4であるかを判定することができる。
【0036】
また、判定手段133は、上述した各方法を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
(通信相手の測定について)
パルス光L3を用いた測定の対象は、周囲の任意の物体であってもよいが、一態様において、光空間通信装置100の通信相手であってもよい。例えば、
図5に示す例のように、光空間通信装置10の通信相手である他の車両2までの距離を測定してもよい。これにより、車両2の位置情報を取得することができ、例えば、車両2の移動予測等をおこない安全な距離を確保することができる。
【0038】
また、光空間通信装置100は、単に通信相手までの距離を測定するだけでなく、通信相手の姿勢を測定することも可能である。これにより、通信相手についての情報をさらに取得することができる。光空間通信装置100による通信相手の姿勢の測定方法は以下の通りである。
【0039】
まず、光空間通信における光軸合わせについて説明する。光空間通信装置100は、光空間通信を行うため、通信相手の光空間通信装置と光軸合わせを行なう。光空間通信のための光軸合わせとは、一方の光空間通信装置の送受光部の光軸と、他方の光空間通信装置の送受光部の光軸とを一致させることを指す。
【0040】
図8および
図9は、光空間通信装置による光軸合わせの一例を説明する模式図である。以下では、一例として、光空間通信装置100がスキャンを行い、通信相手の光空間通信装置200との光軸合わせを行う流れについて説明するが、任意の光空間通信装置間の光軸合わせも同様に行うことができる。なお、「スキャン」は、「サーチ」と言い換えてもよい。また、光空間通信装置100の光軸合わせは、通信制御手段131によって制御される。
【0041】
通信制御手段131は、出光手段111に第1の通信光L1を出光させるとともに、光位相変調手段112に第1の通信光L1の第1の出光方向を変化させる(スキャン)。そして、光空間通信装置100から正しい方向に出光された第1の通信光L1が、光空間通信装置200によって受光される。
【0042】
第1の通信光L1には、光空間通信装置100を特定する識別情報と、どの方向に送出されたのかの方向情報(方位角、仰角及び俯角)が含まれている。
【0043】
光空間通信装置200が、第1の通信光L1を受光できた場合、すなわち光空間通信装置100と光空間通信装置200との光軸が一致した場合、光空間通信装置200は、第1の通信光L1に含まれる識別情報および方向情報を取得し、光空間通信装置100の方向を特定する。また、光空間通信装置200は、第1の通信光L1の減衰に基づき、光空間通信装置100までの距離を特定してもよい。これにより、光空間通信装置200は、光空間通信装置100の相対的な位置を特定することができる。
【0044】
そして、
図9に示すように、光空間通信装置200は、光空間通信装置100に向けて第2の通信光L2を出光する。第2の通信光L2には、光空間通信装置200を特定する識別情報と、第1の通信光L1から取得した方向情報と、光空間通信装置200が特定した光空間通信装置100までの距離情報が含まれている。受光手段121が第2の通信光L2を受光すると、通信制御手段131は、第2の通信光L2に含まれる識別情報、方向情報および距離情報を取得し、光空間通信装置200の方向および距離を特定し、光空間通信装置200の相対的な位置を特定することができる。以上により、光軸合わせが完了する。
【0045】
これにより、通信制御手段131は、光空間通信装置200(通信相手)と光空間通信可能な出光方向(第1の出光方向)を検出することができる。また、第2の通信光L2に、光空間通信装置200(通信相手)からの第2の通信光L2の方向(第2の出光方向)を示す情報が重畳されている場合に、通信制御手段131は、第1の出光方向と、第2の出光方向とに基づいて、光空間通信装置200(通信相手)の姿勢を測定することができる。
【0046】
また、光空間通信装置100は、光位相変調手段112によって、同時に複数方向に任意の形状で光を照射することが可能であるため、例えば、通信相手までの距離を測定するとともに、通信相手の位置を同定し、通信相手に向けて第1の通信光を出光することで、通信を確立することができる。
【0047】
また、互いの通信光に、互いの光軸あわせの際の出光方向の情報を送信しあうことによって、姿勢情報を共有することができる。
【0048】
〔ソフトウェアによる実現例〕
光空間通信装置100の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0049】
後者の場合、光空間通信装置100は、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を
図10に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを光空間通信装置100として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、光空間通信装置100の各機能が実現される。
【0050】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0051】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インタフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インタフェースを更に備えていてもよい。
【0052】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0053】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0054】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
【0055】
(付記1)
光を出光する出光手段と、
前記出光手段が出光した光の方向を調整する光位相変調手段と、
外部からの光を受光する受光手段と、
前記出光手段に第1の通信光を出光させ、前記受光手段に通信相手からの第2の通信光を受光させることにより、前記通信相手と光空間通信を行う通信制御手段と、
前記出光手段にパルス光を出光させ、前記受光手段に前記パルス光の反射光を受光させることにより、周囲の物体までの距離を測定する測定制御手段と、
を備える、光空間通信装置。
【0056】
(付記2)
前記パルス光は、前記第2の通信光よりも、光の強度が強く、
前記受光手段が受光した光の強度に基づいて、当該光が、前記第2の通信光であるか、前記パルス光の反射光であるかを判定する判定手段を備えている、付記1に記載の光空間通信装置。
【0057】
(付記3)
前記パルス光は、前記第2の通信光とは、周波数または変調方式が異なっており、
前記受光手段が受光した光の周波数または変調方式に基づいて、当該光が、前記第2の通信光であるか、前記パルス光の反射光であるかを判定する判定手段を備えている、付記1に記載の光空間通信装置。
【0058】
(付記4)
前記測定制御手段は、前記通信相手までの距離を測定する、付記1に記載の光空間通信装置。
【0059】
(付記5)
前記通信制御手段は、前記光位相変調手段に前記第1の通信光の第1の出光方向を変化させることにより、前記通信相手と光空間通信可能な前記第1の出光方向を検出する、付記1に記載の光空間通信装置
(付記6)
前記第2の通信光には、前記通信相手からの第2の出光方向を示す情報が重畳されており、
前記測定制御手段は、前記第1の出光方向と、前記第2の出光方向とに基づいて、前記通信相手の姿勢を測定する、付記5に記載の光空間通信装置。
【0060】
(付記7)
前記出光手段は、前記第1の通信光を出光する光源と、前記パルス光を出光する光源とをそれぞれ備えている、付記1に記載の光空間通信装置。
【0061】
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載の光空間通信装置を備えた車両。
【0062】
(付記9)
光空間通信装置の制御方法であって、
前記光空間通信装置は、
光を出光する出光手段と、
前記出光手段が出光した光の方向を調整する光位相変調手段と、
外部からの光を受光する受光手段と、
を備え、
前記出光手段に第1の通信光を出光させ、前記受光手段に通信相手からの第2の通信光を受光させることにより、前記通信相手と光空間通信を行う通信制御処理と、
前記出光手段にパルス光を出光させ、前記受光手段に前記パルス光の反射光を受光させることにより、周囲の物体までの距離を測定する測定制御処理と、を実行する、光空間通信装置の制御方法。
【0063】
(付記10)
コンピュータを付記1~8の何れか一に記載の光空間通信装置として動作させるためのプログラムであって、前記コンピュータを前記各手段として機能させる、ことを特徴とする制御プログラム。
【0064】
(付記11)
光を出光する出光手段と、
前記出光手段が出光した光の方向を調整する光位相変調手段と、
外部からの光を受光する受光手段と、
少なくとも1つのプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
前記出光手段に第1の通信光を出光させ、前記受光手段に通信相手からの第2の通信光を受光させることにより、前記通信相手と光空間通信を行う通信制御処理と、
前記出光手段にパルス光を出光させ、前記受光手段に前記パルス光の反射光を受光させることにより、周囲の物体までの距離を測定する測定制御処理と、
を実行する、光空間通信装置。
【0065】
なお、この光空間通信装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記通信制御処理と、前記測定制御処理とを前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 車両
100 光空間通信装置
111 出光手段
112 光位相変調手段
121 受光手段
131 通信制御手段
132 測定制御手段
133 判定手段