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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074151
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】固体電解質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/50 20060101AFI20240523BHJP
   C04B 35/462 20060101ALI20240523BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240523BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240523BHJP
   H01B 1/06 20060101ALN20240523BHJP
   H01B 1/08 20060101ALN20240523BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240523BHJP
【FI】
C04B35/50
C04B35/462
H01B13/00 Z
H01M10/0562
H01B1/06 Z
H01B1/08
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185249
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】390007227
【氏名又は名称】東邦チタニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西島 一元
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真理子
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA16
5G301CA25
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE02
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029DJ13
5H029DJ16
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
(57)【要約】
【課題】不純物の生成を抑制することができる固体電解質の製造方法を提供する。
【解決手段】この発明の固体電解質の製造方法は、一般式(I):La2/3-xLi3xTiO3(0<x<0.16)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を含有する焼結体の固体電解質を製造する方法であって、リチウムランタンチタン酸化物粉末及び、ホウ酸リチウム系化合物を含有するホウ酸リチウム系粉末を混合し、原料粉末を得る原料混合工程と、前記原料粉末を加熱して焼結させる焼結工程とを含み、前記原料混合工程で、前記焼結体中のリチウムランタンチタン酸化物よりもリチウムのモル比が小さいリチウムランタンチタン酸化物を含有するリチウムランタンチタン酸化物粉末を用いるというものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を含有する焼結体の固体電解質を製造する方法であって、
リチウムランタンチタン酸化物粉末及び、ホウ酸リチウム系化合物を含有するホウ酸リチウム系粉末を混合し、原料粉末を得る原料混合工程と、前記原料粉末を加熱して焼結させる焼結工程とを含み、
前記原料混合工程で、前記焼結体中のリチウムランタンチタン酸化物よりもリチウムのモル比が小さいリチウムランタンチタン酸化物を含有するリチウムランタンチタン酸化物粉末を用いる、固体電解質の製造方法。
La2/3-xLi3xTiO3 (I)
(一般式(I)中、xは、0<x<0.16を満たす。)
【請求項2】
前記原料混合工程で、
前記リチウムランタンチタン酸化物粉末が、下記一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を含有し、
前記焼結体中のリチウムランタンチタン酸化物のモル質量をMs、前記ホウ酸リチウム系粉末中のホウ酸リチウム系化合物のモル質量をMm、前記原料粉末中の前記リチウムランタンチタン酸化物粉末に対する前記ホウ酸リチウム系粉末の質量の割合をR(質量%)としたとき、前記一般式(I)中のxと、前記一般式(II)中のyと、前記ホウ酸リチウム系粉末中のホウ酸リチウム系化合物に含まれるリチウム原子数aとが、3x×0.9≦3y+(Ms×a×R)/(Mm×100)≦3x×1.1を満たす組成のリチウムランタンチタン酸化物粉末及びホウ酸リチウム系粉末を用いる、請求項1に記載の固体電解質の製造方法。
La2/3-yLi3yTiO3 (II)
(一般式(II)中、yは、0<y<0.16を満たす。)
【請求項3】
前記焼結体について、前記一般式(I)中のxが、0.25≦3x≦0.33を満たし、
前記原料混合工程で用いるリチウムランタンチタン酸化物粉末及びホウ酸リチウム系粉末について、前記一般式(II)中のyが、0.01≦3y≦0.25を満たし、前記リチウム原子数aが、1.0≦(Ms×a×R)/(Mm×100)≦4.0を満たす、請求項2に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項4】
前記原料混合工程で、前記ホウ酸リチウム系粉末が、下記一般式(III)で表されるホウ酸リチウム系化合物を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体電解質の製造方法。
Liadbc (III)
(一般式(III)中、a及びbは、0.1≦a/(a+b)<1.0を満たし、cは、c≧2、dは、d≧0を満たす。)
【請求項5】
前記原料混合工程で、前記原料粉末中の前記リチウムランタンチタン酸化物粉末に対する前記ホウ酸リチウム系粉末の質量の割合を、0.5質量%~25質量%とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項6】
前記焼結工程で、前記原料粉末を900℃~1100℃に加熱する、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体電解質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、全固体電池に好適に用いられ得る固体電解質の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池のなかでも特に、電解質が固体からなる全固体リチウムイオン電池等の全固体電池は、液体電解質を用いるリチウムイオン電池に比して、優れた安定性及び信頼性、高エネルギー密度化、高出力化ならびに、広い作動温度等を実現できる可能性がある。それ故に、全固体電池は、自動車や電子機器、家庭用蓄電池等といった様々な用途での実用化が期待されている。
【0003】
全固体電池は一般に、気相法により作製される薄膜型と、微粒子を焼結させて作製されるバルク型に大別される。このうち、バルク型の全固体電池は、集電体間に粒状の正極活物質と、板状又は粒状の固体電解質と、粒状の負極活物質を積層させて焼結することにより形成される。バルク型の全固体電池の固体電解質は一般に、全固体電池の作製時に又は事前に固体電解質粉末を焼結させて得られるので、焼成型固体電解質と称されることがある。
【0004】
全固体電池の焼成型固体電解質に用いる材料の候補としては、種々のものが提案されているが、その材料の選定は、電池性能を大きく左右することから重要になる。それらのなかでも、酸化物系の無機固体電解質材料のうち、La2/3-xLi3xTiO3(0<x<0.16)で表されるペロブスカイト結晶構造のリチウムランタンチタン酸化物(いわゆるLLTO(登録商標))は、高いイオン伝導率、安定性及び耐久性を有すること等の理由から有望視されている。
【0005】
これに関連する技術として、特許文献1には、「チタン原料と、リチウム原料と、ランタン原料とを粉砕し混合する混合工程と、前記混合工程で得られた混合粉末を仮焼する仮焼工程と、前記仮焼工程で有られた仮焼体を粉砕する粉砕工程と、前記粉砕工程で得られた粉末を成形する成形工程と、前記成形工程で得られた成形体を焼結する焼結工程とを備え、前記混合粉末全体におけるClの濃度が550ppm以下であることを特徴とするリチウムランタンチタン酸化物の製造方法」が記載されている。
【0006】
また、特許文献2では、「比較的低い温度で焼結し、ある程度高いイオン伝導率を発揮することができ、かつ、焼結後の割れ(クラック)の発生を抑制することができる固体電解質粉末を提供すること」を目的とし、「固体電解質粉末であって、酸化物系の無機固体電解質材料を含有する固体電解質粒子と、前記固体電解質粒子の表面の少なくとも一部を覆う被覆層とを有する表面被覆粒子を含み、前記被覆層が下記一般式(I)で表されるホウ酸リチウム塩を含み、当該固体電解質粉末中の前記ホウ酸リチウム塩の含有量が0.5質量%以上かつ5.5質量%以下であり、前記固体電解質粒子の前記無機固体電解質材料が、下記一般式(II)で表される酸化物を含有する、固体電解質粉末。 Lixyz (I) (一般式(I)中、x及びyは、0.65≦x/(x+y)≦0.85を満たし、zは、z≧2を満たす。) A2/3-xLi3xTiO3 (II) (一般式(II)中、xは、0.04<x<0.14を満たし、Aは、ランタノイドから選択される一種以上の元素である。)」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5998411号公報
【特許文献2】特許第7061719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、焼成型固体電解質を製造するに当たり、リチウムランタンチタン酸化物粉末をホウ酸リチウム系粉末と混合して原料粉末とし、これを加熱したときは、ホウ酸リチウム系粉末が焼結助剤として機能して、原料粉末が低温で焼結すること等が期待される。
【0009】
この場合、製造しようとする固体電解質の焼結体と同じ組成のリチウムランタンチタン酸化物粉末を使用すると、焼結後の焼結体中に不純物が生成されることがわかった。そのような不純物は、イオン伝導率の低下を招くおそれがあることから望ましくない。
【0010】
この発明は、上述したような問題を解決することを課題とするものであり、その目的は、不純物の生成を抑制することができる固体電解質の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討の結果、リチウムランタンチタン酸化物粉末をホウ酸リチウム系粉末とともに加熱して焼結させた場合に生成される不純物が、ホウ酸リチウム系粉末にも含まれることによる過剰なリチウムに起因するものであることを見出した。この知見の下、発明者は、目的とする組成よりもリチウムのモル比が小さいリチウムランタンチタン酸化物粉末を用いることにより、不純物の生成を抑制できると考えた。
【0012】
この発明の固体電解質の製造方法は、下記一般式(I)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を含有する焼結体の固体電解質を製造する方法であって、リチウムランタンチタン酸化物粉末及び、ホウ酸リチウム系化合物を含有するホウ酸リチウム系粉末を混合し、原料粉末を得る原料混合工程と、前記原料粉末を加熱して焼結させる焼結工程とを含み、前記原料混合工程で、前記焼結体中のリチウムランタンチタン酸化物よりもリチウムのモル比が小さいリチウムランタンチタン酸化物を含有するリチウムランタンチタン酸化物粉末を用いるというものである。
La2/3-xLi3xTiO3 (I)
(一般式(I)中、xは、0<x<0.16を満たす。)
【0013】
前記原料混合工程では、前記リチウムランタンチタン酸化物粉末が、下記一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を含有し、前記焼結体中のリチウムランタンチタン酸化物のモル質量をMs、前記ホウ酸リチウム系粉末中のホウ酸リチウム系化合物のモル質量をMm、前記原料粉末中の前記リチウムランタンチタン酸化物粉末に対する前記ホウ酸リチウム系粉末の質量の割合をR(質量%)としたとき、前記一般式(I)中のxと、前記一般式(II)中のyと、前記ホウ酸リチウム系粉末中のホウ酸リチウム系化合物に含まれるリチウム原子数aとが、3x×0.9≦3y+(Ms×a×R)/(Mm×100)≦3x×1.1を満たす組成のリチウムランタンチタン酸化物粉末及びホウ酸リチウム系粉末を用いることが好ましい。
La2/3-yLi3yTiO3 (II)
(一般式(II)中、yは、0<y<0.16を満たす。)
【0014】
前記焼結体については、前記一般式(I)中のxが、0.25≦3x≦0.33を満たし、前記原料混合工程で用いるリチウムランタンチタン酸化物粉末及びホウ酸リチウム系粉末については、前記一般式(II)中のyが、0.01≦3y≦0.25を満たし、前記リチウム原子数aが、1.0≦(Ms×a×R)/(Mm×100)≦4.0を満たすことが好ましい。
【0015】
前記原料混合工程では、前記ホウ酸リチウム系粉末は、下記一般式(III)で表されるホウ酸リチウム系化合物を含有するものとすることができる。
Liadbc (III)
(一般式(III)中、a及びbは、0.1≦a/(a+b)<1.0を満たし、cは、c≧2、dは、d≧0を満たす。)
【0016】
前記原料混合工程では、前記原料粉末中の前記リチウムランタンチタン酸化物粉末に対する前記ホウ酸リチウム系粉末の質量の割合を、0.5質量%~25質量%とすることが好ましい。
【0017】
前記焼結工程では、前記原料粉末を900℃~1100℃に加熱することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明の固体電解質の製造方法によれば、不純物の生成を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1~3及び比較例5の焼結体のX線回折パターンを示すグラフである。
図2】比較例2の焼結体のX線回折パターンを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
(製造方法)
この発明の一の実施形態に係る製造方法は、一般式(I):La2/3-xLi3xTiO3(0<x<0.16)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を含有する焼結体の固体電解質を製造する方法である。
【0022】
この製造方法には、リチウムランタンチタン酸化物粉末をホウ酸リチウム系粉末と混合し、リチウムランタンチタン酸化物粉末及びホウ酸リチウム系粉末を含む原料粉末を得る原料混合工程と、その原料粉末を加熱して焼結させる焼結工程とが含まれる。
【0023】
原料混合工程では、リチウムランタンチタン酸化物粉末を、ホウ酸リチウム系化合物を含有するホウ酸リチウム系粉末と混合させる。ホウ酸リチウム系粉末を含む原料粉末を焼結工程で加熱すると、ホウ酸リチウム系粉末がリチウムランタンチタン酸化物粉末の粒子どうしを接合させて粒成長が進みやすくなり、焼結が促進すると推測される。また焼結時に、ホウ酸リチウム系化合物がリチウムランタンチタン酸化物中に固溶し、焼結後の焼結体は、高いイオン伝導率が発揮され得る。加えて、焼結の際に、ホウ酸リチウム系粉末がリチウムランタンチタン酸化物粉末の粒子どうしを接合するので、その後に得られる焼結体は緻密になって空隙の形成が抑えられると考えられる。
【0024】
他方、リチウムランタンチタン酸化物粉末及びホウ酸リチウム系粉末を含む原料粉末を加熱したときは、それらの粉末中のリチウムランタンチタン酸化物とホウ酸リチウム系化合物との反応により、一般式(I):La2/3-xLi3xTiO3(0<x<0.16)で表される目的とする組成とは異なる組成の不純物が生成される。より詳細には、一例として、焼結体の目的の組成がLa0.57Li0.29TiO3である場合、上記の不純物には、La2Li2Ti310が含まれ得る。これは、ホウ酸リチウム系粉末がリチウムを含むことにより、リチウムが過剰量になることによるものであると推察される。現にLa2Li2Ti310では、La0.57Li0.29TiO3と比較して、Laは同程度であるが、Liが約2.3倍多い。
【0025】
焼結体に上記の不純物が含まれると、当該不純物の存在の故に、イオン伝導率が低くなることが懸念される。たとえば、La2Li2Ti310のリチウムイオン伝導度は10-8S/cm程度であり、La0.57Li0.29TiO3よりも低い。
【0026】
これに対処するため、この実施形態では、原料混合工程で用いるリチウムランタンチタン酸化物粉末は、製造しようとする焼結体中のリチウムランタンチタン酸化物よりもリチウムのモル比が小さいリチウムランタンチタン酸化物を含有するものとする。言い換えると、リチウムランタンチタン酸化物粉末が、一般式(II):La2/3-yLi3yTiO3(0<y<0.16)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を含有する場合、当該一般式(II)中のyと上記一般式(I)中のxとが、x>yを満たすようにする。それにより、ホウ酸リチウム系粉末と混合した原料粉末を焼結工程で加熱した場合、リチウムランタンチタン酸化物中のリチウムが、ホウ酸リチウム系粉末に含まれていた分だけ増加し、目的とする組成に近い焼結体が得られる。その結果、リチウムを過剰に含む組成の不純物の生成を抑制することができる。
【0027】
リチウムランタンチタン酸化物粉末の一部に、リチウムのモル比が相対的に小さいリチウムランタンチタン酸化物が含まれていれば、それに応じて不純物の生成が抑制される。それ故に、リチウムランタンチタン酸化物粉末の少なくとも一部が、相対的にリチウムのモル比の小さいリチウムランタンチタン酸化物を含有するものであればよい。不純物の生成をより一層抑制するため、リチウムランタンチタン酸化物粉末のほぼ全体ないし大部分が、相対的にリチウムのモル比の小さいリチウムランタンチタン酸化物からなるものとすることが望ましい。
【0028】
なお、リチウムランタンチタン酸化物粉末中のリチウムランタンチタン酸化物の具体例としては、たとえば、一般式(II-a):LaxLi2-3xTiO3-aSrTiO3、一般式(II-b):LaxLi2-3xTiO3-aLa0.50.5TiO3、一般式(II-c):LaxLi2-3xTi1-aa3-a、又は、一般式(II-d):Srx-1.5aLaaLi1.5-2xTi0.5Ta0.53(一般式(II-a)~一般式(II-d)中、xは、0.55≦x≦0.59を満たし、aは、0≦a≦0.2を満たし、Mは、Al、Fe、Gaから選択される少なくとも一種である。)で表され、Al23含有量が0.35質量%以下であり、かつ、SiO2含有量が0.1質量%以下であるもの等が挙げられる。
【0029】
ホウ酸リチウム系粉末は、たとえば、Li3BO3、LiBO2、Li247、Li2813、Li2.20.80.23からなる群から選択される少なくとも一種のホウ酸リチウム系化合物を含有するものとすることができる。特にホウ酸リチウム系粉末は、一般式(III):Liadbc(0.1≦a/(a+b)<1.0、c≧2、d≧0)で表されるホウ酸リチウム系化合物を含有することが好ましい。なかでも、ホウ酸リチウム系化合物としてLi3BO3を含有するホウ酸リチウム系粉末を用いることは、高いイオン伝導性を示す焼結体を製造できる点で好適である。ホウ酸リチウム系粉末は、陽イオンとしてのリチウムイオンと陰イオンとしてのホウ酸イオンとがイオン結合したものを含む化合物を意味し、さらに炭素等を含む化合物であってもかまわない。
【0030】
後述する焼結工程で、ホウ酸リチウム系化合物とリチウムランタンチタン酸化物とが1:1のモル比で反応し、ホウ酸リチウム系化合物中のリチウムがすべて、リチウムランタンチタン酸化物に固溶すると仮定すると、リチウムランタンチタン酸化物粉末のリチウム原子数と、ホウ酸リチウム系粉末のリチウム原子数とを足し合わせたものが、焼結体のリチウム原子数になる。この観点から、焼結体中のリチウムランタンチタン酸化物のモル質量をMs、ホウ酸リチウム系粉末中のホウ酸リチウム系化合物のモル質量をMm、原料粉末中のリチウムランタンチタン酸化物粉末に対するホウ酸リチウム系粉末の質量の割合をR(質量%)としたとき、原料混合工程では、3x×0.9≦3y+(Ms×a×R)/(Mm×100)≦3x×1.1を満たす組成のリチウムランタンチタン酸化物粉末及びホウ酸リチウム系粉末を用いることが好ましい。典型的には、3x=3y+(Ms×a×R)/(Mm×100)になる組成のリチウムランタンチタン酸化物粉末及びホウ酸リチウム系粉末を用いることができる。これにより、焼結工程の加熱時に、過剰なリチウムによる不純物の生成をより効果的に抑制することができる。
【0031】
より具体的には、たとえば、一般式(I)中のxが0.25≦3x≦0.33を満たすリチウムランタンチタン酸化物を含有する焼結体を製造する場合、原料混合工程で用いるリチウムランタンチタン酸化物粉末は、一般式(II)中のyが0.01≦3y≦0.25を満たすリチウムランタンチタン酸化物を含有し、ホウ酸リチウム系粉末は、一般式(III)中のリチウム原子数aが、1.0≦(Ms×a×R)/(Mm×100)≦4.0を満たすホウ酸リチウム系化合物を含有することが好ましい。
【0032】
リチウムランタンチタン酸化物粉末やホウ酸リチウム系粉末が、一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物や、一般式(III)で表されるホウ酸リチウム系化合物を含有することは、X線回折法により確認することができる。
【0033】
リチウムランタンチタン酸化物粉末に対するX線回折法では、PANalytical X’pert Pro(マルバーン・パナリティカル社製)により得られたリチウムランタンチタン酸化物粉末のX線回折パターンを、ICDDデータベース(PANalytical Example DatabaseとPDF-4+ 2022)に含まれているICDDカードNo.04-011-5608(Lithium Lanthanum Titanium Oxide)と照合して、リチウムランタンチタン酸化物粉末中に含まれる一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を同定する。
【0034】
ここでは、X線回折法により得られノイズを除去したリチウムランタンチタン酸化物粉末のX線回折パターンをICDDデータベースと照合して、リチウムランタンチタン酸化物粉末のX線回折パターン中に一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物のX線回折パターンが存在すると認められる場合に、リチウムランタンチタン酸化物粉末中に一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物が含まれていると判断する。一方、同様にICDDデータベースと照合して、リチウムランタンチタン酸化物粉末のX線回折パターン中に一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物のX線回折パターンが存在しないと認められる場合には、リチウムランタンチタン酸化物粉末中に一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物が含まれていないと判断する。
【0035】
リチウムランタンチタン酸化物粉末中の一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物は、酸素の一部がFやClなどの他の元素に置換されている場合や、遷移金属の一部が、Fe、Cr、Ti、Nb、W、Mo、Na、K、Mg、Caなどの他の金属で置換されている場合がある。また、一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物の化学量論組成に対してLiや酸素が過剰か欠損の場合もある。また、リチウムランタンチタン酸化物粉末中の一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物の結晶構造に歪みが生じている場合もある。上記のようなリチウムランタンチタン酸化物の化学量論組成に対して構成元素が置換し、欠損し、もしくは過剰である場合、または結晶構造に歪みが生じている場合についても、リチウムランタンチタン酸化物粉末としての特性に変化が生じない範囲内であれば、一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物として許容されるものとする。
構成元素が欠損しているリチウムランタンチタン酸化物や構成元素が過剰なリチウムランタンチタン酸化物の各X線回折パターンをICDDデータベースに照合した場合、一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物のX線回折パターンからピークがシフト(ピークシフト)する可能性がある。そのようなピークシフトについては、ICDDデータベースのリファレンス値に対して±10%以内であれば、リチウムランタンチタン酸化物粉末中に一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物が含まれていると判断する。
【0036】
リチウムランタンチタン酸化物粉末には、一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物が、99.0質量%以上で含まれることが好ましく、さらに99.5質量%以上で含まれることがより一層好ましい。このリチウムランタンチタン酸化物の含有量は多いほど望ましいので、その好ましい上限値は特にないが、たとえば99.999質量%以下、典型的には99.99質量%以下になることがある。当該リチウムランタンチタン酸化物の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)により測定する。リチウムランタンチタン酸化物粉末には、一般式(II)で表されるリチウムランタンチタン酸化物の他、不純物として、Si、Al及びFeからなる群から選択される少なくとも一種を含むことがある。リチウムランタンチタン酸化物粉末中の不純物の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0037】
原料混合工程でのリチウムランタンチタン酸化物粉末とホウ酸リチウム系粉末との混合比率に関し、原料粉末中のリチウムランタンチタン酸化物粉末に対するホウ酸リチウム系粉末の質量の割合は、0.5質量%~25質量%、さらに0.6質量%~4.2質量%とすることが好ましい。ホウ酸リチウム系粉末の割合を多くしすぎないことにより、焼結工程での不純物の生成を有効に抑制することができる。一方、ホウ酸リチウム系粉末の割合をある程度多くすることにより、原料粉末の低温焼結を実現することができる。
【0038】
なお好ましくは、リチウムランタンチタン酸化物粉末の平均粒子径D50を0.4μm~50μmとし、ホウ酸リチウム系粉末の平均粒子径D50を0.04μm~5μmとする。このように粒径差があることにより、ホウ酸リチウム系粉末の粒子がリチウムランタンチタン酸化物粉末の表面に吸着しやすくなり、より均一に混合することが可能になる。平均粒子径D50は、レーザー回折・散乱法により求められる粒度分布測定で、体積基準の累積分布が50%となる粒径を意味し、JIS Z8825:2013に基づいて測定する。
【0039】
上記のリチウムランタンチタン酸化物粉末やホウ酸リチウム系粉末としては、既に作製されているものを購買等により入手して使用することができる。リチウムランタンチタン酸化物粉末は、たとえば、次に述べるように、原料に第一湿式粉砕、仮焼及び第二湿式粉砕等をこの順序で行うことにより作製してもよい。
【0040】
はじめに、リチウム原料として水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物と、チタン原料として酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸等のチタン化合物(たとえば平均粒子径D50:0.1μm~1.0μm、BET比表面積:5.0m2/g~100.0m2/g)と、ランタン原料として酸化ランタンとをそれぞれ、いずれも粉末状のものとして用意する。なお必要に応じて、Sr、K、Fe、Ga及びTaからなる群から選択される少なくとも一種の水酸化物、塩化物及び/又は炭酸塩等も用意する。
【0041】
次いで、第一湿式粉砕で、上記のリチウム原料、チタン原料及びランタン原料等の原料を所定のモル比で、ボールミル等にて、純水とエタノール等の混合溶媒と混合して粉砕する。粉砕の後、スプレードライヤー乾燥機、流動層乾燥機、転動造粒乾燥機、凍結乾燥機または熱風乾燥機等を用いて乾燥し、第一粉砕粉末を得る。その後、仮焼で電気炉等にて、第一粉砕粉末を、酸素もしくは大気雰囲気または、窒素等の不活性ガス雰囲気の下、1000℃~1200℃で1時間~12時間にわたって加熱する。これにより、仮焼粉末が得られる。
【0042】
しかる後、第二湿式粉砕で、仮焼粉末を、ボールミル等で溶媒を加えて粉砕した後に、スプレードライヤー等で乾燥する。その後、必要に応じて、ボールミル等による乾式粉砕、さらに乾式もしくは湿式のジェットミル等による微粒子化を行うことがある。これにより、リチウムランタンチタン酸化物粉末が得られる。
【0043】
リチウムランタンチタン酸化物粉末の作製に用いるリチウム原料の使用量を変更することにより、リチウムのモル比が異なるリチウムランタンチタン酸化物粉末を得ることができる。リチウム原料としての炭酸リチウムの使用量を少なくすると、最終的に製造する焼結体よりもリチウムのモル比が小さいリチウムランタンチタン酸化物粉末を作製することが可能である。
【0044】
先述したように、原料混合工程でリチウムランタンチタン酸化物粉末とホウ酸リチウム系粉末を混合して、原料粉末を得た後は、必要に応じて原料粉末を所定の形状に成形して成形体とし、焼結工程を行う。焼結工程では、成形体中の原料粉末を加熱して焼結させる。
【0045】
ここでは、原料粉末がホウ酸リチウム系粉末を含むことにより、加熱時に原料粉末の焼結が比較的低い温度で開始して進行する。たとえば、原料粉末を900℃~1100℃に加熱すれば、原料粉末を焼結させることができる場合がある。
【0046】
焼結工程の後、一般式(I)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を含有する焼結体を得ることができる。このような焼結体は固体電解質、典型的には全固体電池の固体電解質として用いることができる。
【0047】
(固体電解質)
上述したようにして製造される焼結体の固体電解質は、一般式(I):La2/3-xLi3xTiO3(0<x<0.16)で表されるリチウムランタンチタン酸化物を含有するものである。
【0048】
また、この固体電解質は、製造時に、先述したようなリチウムを過剰に含有するLa2Li2Ti310等の組成の不純物の生成が有効に抑制されたことにより、当該不純物をほぼ含有しない場合がある。このことは、X線回折法(XRD)を行うことで得られるX線回折パターンから確認することができる。X線回折法の詳細については、リチウムランタンチタン酸化物粉末に対するX線回折法について先述したところと同様にして行うことができるので、再度の説明は省略する。
【0049】
上記の固体電解質に対してX線回折法を行った場合、それにより得られるX線回折パターンでは、一般式(I):La2/3-xLi3xTiO3(0<x<0.16)で表されるリチウムランタンチタン酸化物のピーク強度Iaは、2θが32.75±0.2°の範囲内に現れることがある。一方、不純物の一つであるLa2Li2Ti310のピーク強度Ibは、2θが28.70±0.2°の範囲内に現れることがあるが、上記のピーク強度Iaに比して十分に小さくなる。
【0050】
より具体的には、固体電解質のX線回折パターンでは、ピーク強度Iaに対するピーク強度Ibのピーク強度比(Ib/Ia)が、0.1以下、好ましくは0.05以下になる。そのような固体電解質は、不純物をほぼ含まないことにより、高いイオン伝導率が発揮される傾向がある。ピーク強度比(Ib/Ia)を求めるには、まず、2θの範囲が28°~34°のピーク強度に含まれているバックグラウンドを直線法で除去する。次に、2θ:27.9°~28.1°の全ピーク強度の平均値IAVE1と、2θ:33.9°~34.1°の全ピーク強度の平均値IAVE2を求める。x軸を2θとし、y軸を上記のピーク強度の平均値としたグラフ上で、(x,y)が(28.0°,IAVE1)と(34.0°,IAVE2)の2点を通る直線y=ax+bを求め、28°~34°の各角度のピーク強度からy=ax+bで求めた各角度のピーク強度を差し引く。その後、28.70°のピーク強度をIb、32.75°のピーク強度をIaとし、Ib/Iaの値を求める。
【0051】
固体電解質は、一般式(I)で表されるリチウムランタンチタン酸化物が、99.0質量%以上で含まれることが好ましく、さらに99.5質量%以上で含まれることがより一層好ましい。リチウムランタンチタン酸化物の含有量は多いほど望ましいので、その好ましい上限値は特にないが、たとえば99.999質量%以下、典型的には99.99質量%以下になることがある。当該リチウムランタンチタン酸化物の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)により測定する。固体電解質には、一般式(I)で表されるリチウムランタンチタン酸化物の他、不純物として、Si、Al及びFeからなる群から選択される少なくとも一種を含むことがある。固体電解質中の不純物の含有量は、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【実施例0052】
次に、この発明の固体電解質の製造方法を試験的に実施したので、その詳細を以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものでない。
【0053】
リチウムランタンチタン酸化物粉末と、ホウ酸リチウム系粉末(株式会社豊島製作所製のLi3BO3)を準備した。リチウムランタンチタン酸化物粉末は、主にリチウムランタンチタン酸化物からなり、平均粒子径D50が40μmであった。ホウ酸リチウム系粉末は、主としてLi3BO3からなり、平均粒子径D50が9.8μmであったものを、溶媒としてアセトンを用いた湿式粉砕で粉砕して平均粒子径D50を0.1μm程度とした。
【0054】
上記のリチウムランタンチタン酸化物粉末は、先述したように、原料のLa23、Li2CO3及びTiO2に対し、ボールミル粉砕、スプレードライヤー乾燥、電気炉での仮焼、ボールミル粉砕及び、スプレードライヤー乾燥をこの順序で行って作製したものである。実施例1~3では、リチウムのモル比が0.29よりも小さいLa0.57Li0.21TiO3、La0.57Li0.15TiO3又はLa0.57Li0.09TiO3を主として含有するリチウムランタンチタン酸化物粉末をそれぞれ用いた。一方、比較例1~5では、製造する焼結体の目的とする組成であるLa0.57Li0.29TiO3を主として含有するリチウムランタンチタン酸化物粉末を用いた。各リチウムランタンチタン酸化物粉末は、表1に示すように、Li2CO3の添加量を変化させて作製した。
【0055】
【表1】
【0056】
上述したリチウムランタンチタン酸化物粉末とホウ酸リチウム系粉末とをビニール袋内で撹拌することにより混合し、原料粉末を得た。ここでは、リチウムランタンチタン酸化物粉末を10g使用し、実施例1~3及び比較例1~4では、そのリチウムランタンチタン酸化物粉末に対するホウ酸リチウム系粉末の質量の割合(添加量)を、表2に示すように変化させた。比較例5では、ホウ酸リチウム系粉末を使用せず、リチウムランタンチタン酸化物粉末のみを原料粉末とした。なお、表2には、原料粉末のリチウム原子数を用いて、先述した3x=3y+(Ms×a×R)/(Mm×100)から算出した焼結体の理論上のリチウム原子数も載せている。
【0057】
その後、0.4gの原料粉末に対して0.04tで10秒にわたって一軸圧縮を施して、直径5mm、高さ10mmの円柱状の成形体を得た。この成形体を、熱機械装置TMA-8310(株式会社リガク製)で荷重10g、昇温速度5℃/分、温度範囲25~1350℃、空気雰囲気の条件にて加熱して焼結させた。このときに得られたTMA曲線を微分し、その変曲点を焼結開始温度とした。その結果を表2に示す。
【0058】
上記の原料粉末を焼結させて得られる焼結体中の不純物の有無を確認した。より詳細には、次に述べるとおりである。上記の原料粉末を、プレス圧2t/cm2で直径12mm、厚み1mm程度の円盤状に成形し、その成形体を電気炉にて1000℃で6時間加熱し、焼結体を得た。この焼結体の表面に対し、#600のダイヤモンドディスク(株式会社イマハシ製作所製)と#3000のラッピングフィルム(スリーエムジャパン株式会社製)で研磨を行い、研磨後の焼結体表面に対して、X線回折装置PANalytical X’pert Pro(マルバーン・パナリティカル社製)を用いて、測定範囲5°~70°、ステップサイズ0.017°、スキャンステップ時間6.35s、X線源CuKα、X線出力40mA、45kVの測定条件でX線回折法を実施した。それにより得られた各X線回折パターンについて、ICDDデータベース(PANalytical Example DatabaseとPDF-4+ 2022)に含まれているICDDカードNo.04-011-5608(Lithium Lanthanum Titanium Oxide)と照合することでLa2Li2Ti310の有無を確認した。それらの結果も表2に示している。また、参考として、実施例1~3及び比較例5のX線回折パターンと、比較例2のX線回折パターンをそれぞれ図1及び図2に示す。図2に示すように、比較例2のX線回折パターンでは、2θが28.70±0.2°の範囲内に、La2Li2Ti310を表すピークがあるのに対し、図1に示すように、実施例1~3及び比較例5のX線回折パターンでは、そのようなピークがないことがわかる。
【0059】
また、上記の原料粉末を焼結させて得られる焼結体のイオン伝導率を測定した。より詳細には、0.59gの原料粉末に対して0.1tで30秒の空気抜きを行った後、2.26tで60秒にわたって一軸圧縮を施し、直径12mm、厚み1.5mmの円盤状の成形体を得た。そして、この成形体に対して1000℃で6時間の加熱を施し、焼結体を作製した。その後、リチウムイオン伝導率を測定するため、上記の焼結体のプレート(Φ12mm)の両面に、Pt蒸着を施した。Pt蒸着はイオンスパッタMC1000((株)日立ハイテク製)で15mA、30秒の条件で行った。リチウムイオン伝導度は、次のようにして測定した。まず、ナイキストプロットをインピーダンスアナライザE4990A(キーサイト・テクノロジー社製)、測定周波数20Hz~20MHzの条件で測定した。それにより得られたナイキストプロットをZveiwでフィッティングすることで、粒内及び粒界の各抵抗値を読み取り、リチウムイオン伝導率を以下の計算式より求めた。その結果を表2に示す。なお、比較例3及び4の焼結体は、抵抗が高すぎてリチウムイオン伝導度を測定することができなかった。
バルクのリチウムイオン伝導度(S/cm)=1/Rb×(L/S)
粒界のリチウムイオン伝導度(S/cm)=1/Rgb×(L/S)
全体のリチウムイオン伝導度(S/cm)=1/Rtotal×(L/S)
Rb:粒内の抵抗値(Ω)
Rgb:粒界の抵抗値(Ω)
Rtotal(=Rb+Rgb):全体の抵抗値(Ω)
L:板状のリチウムランタンチタン酸化物の厚み(cm)
S:電極の面積(cm2
【0060】
【表2】
【0061】
表2より、実施例1~3では、リチウムのモル比が相対的に小さいリチウムランタンチタン酸化物粉末を、ホウ酸リチウム系粉末と混合して使用したことにより、比較的低温で焼結が開始するとともに、焼結体中の不純物の生成を抑制することができた。
【0062】
以上より、この発明によれば、不純物の生成を抑制できることがわかった。
図1
図2