(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074155
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】画像形成装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/02 20060101AFI20240523BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G03G15/02 102
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185253
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木内 豊
(72)【発明者】
【氏名】荒井 茂
(72)【発明者】
【氏名】茂木 佑真
(72)【発明者】
【氏名】楳内 滉
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA33
2H200GB22
2H200JB02
2H200JB24
2H200JB49
2H200JB50
2H200JC04
2H200KA01
2H200PA04
2H200PA20
2H200PB14
2H270LA31
2H270LA37
2H270MA08
2H270MB11
2H270MB25
2H270ZC03
2H270ZC04
(57)【要約】
【課題】画像内の突発的な振動に起因した濃度むらに対して濃度補正を行うことが可能な画像形成装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】現像剤像を記録媒体に転写する際の転写体の速度変動と関係する情報を用いて、記録媒体上に形成される画像における濃度むらが低減するように、像形成部において形成する現像剤像の濃度補正を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を把持する把持部を備えた搬送部と、
転写体に現像剤像を形成する像形成部と、
現像剤像が形成された前記転写体を、前記把持部を収納する空間を有する転写胴に当接して、現像剤像を記録媒体に転写する転写部と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
現像剤像を記録媒体に転写する際の前記転写体の速度変動と関係する情報を用いて、記録媒体上に形成される画像における濃度むらが低減するように、前記像形成部において形成する現像剤像の濃度補正を行う
画像形成装置。
【請求項2】
前記転写体の速度変動と関係する情報は、自装置内で前記転写体と連動して回転する部品の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報である
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写体の速度変動と関係する情報は、前記転写胴の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報である
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写体の速度変動と関係する情報は、前記転写体に当接する回転体の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報である
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記転写体の速度変動と関係する情報における速度変動の起因となる現象の発生起点及び速度変動の周波数の情報を用いて前記現象毎に規定された、現像剤像に対する濃度補正の補正量を示す補正関数を用いて、前記像形成部において形成する現像剤像における前記現象の発生起点から、設定された期間内に対応する領域に対して濃度補正を行う
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記補正関数における濃度補正の補正量は、時間経過に従って濃度補正の補正量が低下するような減衰特性を有する
請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
記録媒体を把持する把持部を備えた搬送部と、
転写体に現像剤像を形成する像形成部と、
現像剤像が形成された前記転写体を、前記把持部を収納する空間を有する転写胴に当接して、現像剤像を記録媒体に転写する転写部と、
プロセッサと、を備えた画像形成装置の制御を行うためのプログラムであって、
現像剤像を記録媒体に転写する際の前記転写体の速度変動と関係する情報を用いて、記録媒体上に形成される画像における濃度むらが低減するように、前記像形成部において形成する現像剤像の濃度補正を行うステップ
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、環状の転写ベルトと、転写ベルトに形成されたトナー画像を記録媒体に転写する転写胴と、転写胴の軸方向両端側に配置された回転体と、回転体に巻き掛けられ、回転体の回転により周回する周回部材と、周回部材に取り付けられ、記録媒体を保持し、周回部材の周回により記録媒体を搬送する保持部と、を備えた画像形成装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、転写ベルトに形成されたトナー画像が記録媒体に転写された後の画像において生じる濃度むらを補正する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-140062号公報
【特許文献2】特開2007-140402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
用紙の搬送性を向上させるため、グリッパにより用紙を掴んで搬送するとともに、転写ベルト上のトナー画像を、グリッパ収納空間を持つ転写胴上の用紙に当接して転写する画像形成装置が提案されている。
【0006】
このような画像形成装置では、転写胴のグリッパ収納空間の角部と転写ベルトとの衝突により振動が生じて、転写ベルトに速度変動が生じた結果、印刷された画像内において濃度むらが発生する。
【0007】
転写ベルトのロール振れに起因した画像内の一定周期の濃度むらに対して逆位相の濃度補正を行う技術が知られている。
【0008】
しかしながら、本技術は、上記の転写胴のグリッパ収納空間の角部と転写ベルトとの衝突による振動のような、画像内で一定周期をもたない突発的な振動に起因した濃度むらに対して、濃度補正を行うことはできない。
【0009】
本発明の目的は、画像内の突発的な振動に起因した濃度むらに対して濃度補正を行うことが可能な画像形成装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様の画像形成装置は、記録媒体を把持する把持部を備えた搬送部と、転写体に現像剤像を形成する像形成部と、現像剤像が形成された前記転写体を、前記把持部を収納する空間を有する転写胴に当接して、現像剤像を記録媒体に転写する転写部と、プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、現像剤像を記録媒体に転写する際の前記転写体の速度変動と関係する情報を用いて、記録媒体上に形成される画像における濃度むらが低減するように、前記像形成部において形成する現像剤像の濃度補正を行う。
【0011】
第2態様の画像形成装置は、第1態様の画像形成装置において、前記転写体の速度変動と関係する情報は、自装置内で前記転写体と連動して回転する部品の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報である。
【0012】
第3態様の画像形成装置は、第2態様の画像形成装置において、前記転写体の速度変動と関係する情報は、前記転写胴の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報である。
【0013】
第4態様の画像形成装置は、第2態様の画像形成装置において、前記転写体の速度変動と関係する情報は、前記転写体に当接する回転体の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報である。
【0014】
第5態様の画像形成装置は、第1態様の画像形成装置において、前記プロセッサは、前記転写体の速度変動と関係する情報における速度変動の起因となる現象の発生起点及び速度変動の周波数の情報を用いて前記現象毎に規定された、現像剤像に対する濃度補正の補正量を示す補正関数を用いて、前記像形成部において形成する現像剤像における前記現象の発生起点から、設定された期間内に対応する領域に対して濃度補正を行う。
【0015】
第6態様の画像形成装置は、第5態様の画像形成装置において、前記補正関数における濃度補正の補正量は、時間経過に従って濃度補正の補正量が低下するような減衰特性を有する。
【0016】
第7態様のプログラムは、記録媒体を把持する把持部を備えた搬送部と、転写体に現像剤像を形成する像形成部と、現像剤像が形成された前記転写体を、前記把持部を収納する空間を有する転写胴に当接して、現像剤像を記録媒体に転写する転写部と、プロセッサと、を備えた画像形成装置の制御を行うためのプログラムであって、現像剤像を記録媒体に転写する際の前記転写体の速度変動と関係する情報を用いて、記録媒体上に形成される画像における濃度むらが低減するように、前記像形成部において形成する現像剤像の濃度補正を行うステップをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0017】
第1態様の画像形成装置によれば、画像内の突発的な振動に起因した濃度むらに対して濃度補正を行うことができる。
【0018】
第2態様の画像形成装置によれば、自装置内で転写体と連動して回転する部品の回転速度を検出する回転速度センサを用いて、転写体の速度変動と関係する情報を取得することができる。
【0019】
第3態様の画像形成装置によれば、転写胴の回転速度を検出する回転速度センサを用いて、転写体の速度変動と関係する情報を取得することができる。
【0020】
第4態様の画像形成装置によれば、転写体に当接する回転体の回転速度を検出する回転速度センサを用いて、転写体の速度変動と関係する情報を取得することができる。
【0021】
第5態様の画像形成装置によれば、速度変動の起因となる現象が考慮された濃度補正を行うことができる。
【0022】
第6態様の画像形成装置によれば、より実際の特性に合わせた濃度補正を行うことができる。
【0023】
第7態様のプログラムによれば、画像内の突発的な振動に起因した濃度むらに対して濃度補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る転写部の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る定着装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るグリッパを示す斜視図である。
【
図5】上記画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】上記画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図7】転写胴における対向ロールとの当接位置が凹部の上流側角部となった状態を示す図である。
【
図8】転写胴における対向ロールとの当接位置が凹部の下流側角部となった状態を示す図である。
【
図9】転写ベルトの速度変動と、記録媒体上に形成されるトナー画像における濃度変動との関係を示すグラフであり、
図9(A)は転写ベルトの速度変動率を示すグラフ、
図9(B)はトナー画像の濃度変動率を示すグラフである。
【
図10】転写ベルトの速度変動と、濃度補正パターンとの関係を示すグラフであり、
図10(A)は転写ベルトの速度変動率を示すグラフ、
図10(B)は濃度補正パターンを示すグラフである。
【
図11】画像形成装置における濃度補正時の処理を示すフローチャートである。
【
図12】転写ベルトの速度変動と、濃度補正関数との関係を示すグラフであり、
図12(A)は転写ベルトの速度変動率を示すグラフ、
図12(B)は転写ベルトの速度変動率を示すグラフにおいてイベント発生期間中の特性のみを示すグラフである。
【
図13】変形例の画像形成装置における濃度補正時の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、
図1に示す矢印Hに沿った方向を画像形成装置10の上下方向とし、矢印Wに沿った方向を画像形成装置10の幅方向とし、矢印Dに沿った方向を画像形成装置10の前後方向とする。
【0026】
本実施形態の画像形成装置10は、電子写真方式により記録媒体P上に現像剤像の一例としてのトナー画像を形成する装置であり、
図1に示すように、画像形成部12と、搬送部14と、定着装置90と、を備えている。
【0027】
以下、画像形成装置10の画像形成部12、搬送部14、及び、定着装置90について説明する。
【0028】
(画像形成部12)
図1に示すように、像形成部の一例としての画像形成部12は、トナー画像を記録媒体Pに形成する機能を有している。具体的に説明すると、画像形成部12は、転写体の一例としての転写ベルト30と、2本のロール22と、対向ロール24と、各色のトナー画像を形成するトナー像形成部80と、転写部40と、を有している。
【0029】
転写ベルト30は、無端状に形成されるとともに、前後方向から見て、逆三角形状の姿勢となるように、2本のロール22及び対向ロール24に巻き掛けられている。転写ベルト30は、ベルト状に構成されており、2本のロール22のうち、少なくとも一方が回転駆動されることにより、矢印A方向へ周回移動するように構成されている。
【0030】
各色のトナー像形成部80(80Y、80M、80C、80K)は、それぞれ一方向(矢印B方向)に回転する円柱状の感光体82を有しており、各感光体82の周囲には、感光体82の回転方向上流側から順に、帯電器84と、露光装置86と、現像装置88と、が配置されている。
【0031】
各色のトナー像形成部80では、帯電器84が、感光体82の表面を帯電させ、露光装置86が、帯電器84によって帯電された感光体82の表面を露光して、感光体82の表面に静電潜像を形成する。そして、現像装置88が、露光装置86によって感光体82の表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する。
【0032】
なお、転写ベルト30の内周面側には、各感光体82と転写ベルト30を挟んで対向する一次転写ロール78が設けられている。各色のトナー像形成部80で形成されたトナー画像は、一次転写ロール78が設けられた一次転写位置T1にて転写ベルト30に順次一次転写されて重ねられ、その重ねられたトナー画像が二次転写位置T2にて記録媒体Pに二次転写されるようになっている。
【0033】
転写部40は、転写ベルト30の下方側に配置されている。
図2に示されるように、転写部40は、軸方向が対向ロール24の軸方向と同じになるように配置された転写胴50を有している。転写胴50は、転写ベルト30に対向して配置されており、対向ロール24とともに転写ベルト30を挟み込んだ二次転写位置T2を形成する。つまり、対向ロール24は、転写ベルト30を内側から押圧することにより転写位置である二次転写位置T2を形成する。
【0034】
本実施形態では、転写ベルト30の周回移動により、トナー画像が二次転写位置T2へ搬送され、かつ搬送部14により、記録媒体Pが二次転写位置T2へ搬送されるようになっている。そして、転写胴50は、二次転写位置T2に搬送された記録媒体P及びトナー画像を、転写ベルト30との間で挟み込んで加圧することにより、記録媒体Pにトナー画像を転写する。
【0035】
なお、
図1において、記録媒体Pの搬送方向を矢印Xにて示す。また、二次転写位置T2において、記録媒体P及びトナー画像を、転写ベルト30との間で挟み込んで加圧する際には、転写胴50によって記録媒体P及びトナー画像を加熱するようにしてもよい。また、転写胴50の外周面の一部には、後述するグリッパ36及び支持部材38が収容される空間である凹部54が形成されている。
【0036】
本実施形態における転写部40の構成を
図2の斜視図を参照して説明する。
図2に示すように、転写胴50の軸方向両端側には、一対のスプロケット32が設けられている。この一対のスプロケット32は、転写胴50と同軸に配置されており、転写胴50と一体に回転する構成とされている。そして、転写胴50は、駆動部(図示省略)によって回転駆動される構成になっている。また、一対のスプロケット32には、チェーン34が巻き掛けられている。
【0037】
なお、対向ロール24は、カム等を用いた転写用移動機構(図示略)により、転写胴50に対して接触する接触位置と離間する離間位置との間を移動可能に構成されている。具体的に説明すると、対向ロール24は、例えば、バネ等の弾性部材の弾性力により常に接触位置に向けて付勢されており、転写用移動機構により、その弾性力に抗して離間位置へ移動するように構成されている。
【0038】
上述したように、転写胴50は、断面が略円形状に構成され、グリッパ36を収納する凹部54が回転方向と略直交する方向に設けられている。そして、転写胴50は、搬送部14により搬送されてきた記録媒体Pを転写ベルト30との間で挟むことにより、転写ベルト30上の画像を搬送部14により搬送されてきた記録媒体Pに転写する。なお、略直交とは、2つの方向のなす角が、85~95度の範囲である状態をいう。
【0039】
(定着装置90)
図1に示すように、定着装置90は、記録媒体Pに転写されたトナー画像を記録媒体Pに定着する装置である。具体的に説明すると、定着装置90は、搬送部14における記録媒体Pの搬送方向下流側に配置された加圧部42と、加熱ロール92と、を有している。
【0040】
本実施形態における定着装置90の構成を
図3の斜視図を参照して説明する。
図3に示すように、加圧部42は、軸方向が転写胴50の軸方向と同じになるように配置された加圧ロール44を有しており、加圧ロール44の軸方向両端側には、一対のスプロケット48が設けられている。この一対のスプロケット48は、加圧ロール44と同軸に配置されており、加圧ロール44と一体に回転する構成とされている。そして、一対のスプロケット48には、上述したチェーン34が巻き掛けられている。
【0041】
図1に示されるように、加熱ロール92と加圧ロール44とは、上下に並んで配置されている。すなわち、加熱ロール92が、加圧ロール44の上方側に配置されている。この加熱ロール92は、内部にハロゲンランプ等の加熱源90A(
図1参照)を有している。なお、以下において、加熱ロール92と加圧ロール44とにより記録媒体Pを挟み込む位置を挟込位置NPとする。
【0042】
また、加熱ロール92は、カム等を用いた定着用移動機構(図示略)により、加圧ロール44に対して接触する接触位置と離間する離間位置との間を移動可能に構成されている。具体的に説明すると、加熱ロール92は、例えば、バネ等の弾性部材の弾性力により常に接触位置へ付勢されており、定着用移動機構により、その弾性力に抗して離間位置へ移動するように構成されている。そして、加熱ロール92は、接触位置において、加圧ロール44との間で記録媒体Pを挟み込むように構成されている。
【0043】
なお、本実施形態では、加熱ロール92が回転駆動され、加圧ロール44が従動回転するように構成されているが、加熱ロール92及び加圧ロール44の両方が回転駆動される構成になっていてもよい。また、加圧ロール44の外周面の一部には、後述するグリッパ36及び支持部材38が収容される凹部46が形成されている。
【0044】
(搬送部14)
図1~
図3に示すように、搬送部14は、記録媒体Pを搬送して二次転写位置T2と挟込位置NPとを通過させる機能を有している。搬送部14は、一対のチェーン34と、グリッパ36と、を有している。一対のチェーン34は、駆動力伝達部材の一例であり、グリッパ36は、記録媒体Pの先端部を把持する把持部の一例である。なお、
図1では、チェーン34及びグリッパ36を簡略化して図示している。このように、搬送部14は、記録媒体Pの先端を把持部であるグリッパ36により把持した状態で搬送する。
【0045】
図1に示すように、一対のチェーン34は、それぞれ環状に形成されている。そして、
図2及び
図3に示すように、この一対のチェーン34は、装置奥行方向に間隔をおいて配置されている。すなわち、この一対のチェーン34は、それぞれ転写胴50に同軸的に設けられた一対のスプロケット32と、加圧ロール44に同軸的に設けられた一対のスプロケット48と、に巻き掛けられている。
【0046】
図示されていない駆動部により転写胴50が回転駆動されると、一対のスプロケット32も一体的に回転方向B(矢印B方向)へ回転駆動されることにより、チェーン34が周回方向C(矢印C方向)へ周回する。また、これにより加圧ロール44が従動回転する。つまり、周回方向C(
図1参照)へ周回移動する一対のチェーン34により、転写胴50の回転駆動力が加圧ロール44へ伝達される。
【0047】
また、
図2及び
図3に示すように、一対のチェーン34には、グリッパ36が取り付けられた支持部材38が装置奥行方向に沿って架け渡されている。なお、本実施形態においては、一対のチェーン34には、支持部材38が3個設けられており、各支持部材38は、チェーン34の周方向(周回方向C)に沿った予め定められた間隔で、その一対のチェーン34に固定されている。
【0048】
また、グリッパ36は、装置奥行方向に沿った予め定められた間隔で、各支持部材38に複数並んで取り付けられている。つまり、各グリッパ36は、各支持部材38を介して、チェーン34に取り付けられている。そして、各グリッパ36は、記録媒体Pの先端部を保持する保持機能を有している。
【0049】
具体的に説明すると、
図4に示すように、グリッパ36は、複数の爪36Aと複数の爪台36Bとを有している。グリッパ36は、各爪36Aと各爪台36Bとの間に記録媒体Pの先端部を挟むことで記録媒体Pを保持するように構成されている。
【0050】
また、グリッパ36は、記録媒体Pの搬送方向の下流側から記録媒体Pの先端部を保持するように構成されている。なお、グリッパ36は、例えば爪36Aが爪台36Bに対してバネ等により押し付けられるとともに、カム等の作用により爪36Aが爪台36Bに対して離間されるように構成されている。
【0051】
このように、搬送部14では、図示が省略されている収容部から送られてきた記録媒体Pの先端部がグリッパ36により保持される。そして、搬送部14では、グリッパ36が記録媒体Pの先端部を保持した状態でチェーン34が周回方向Cへ周回移動することにより、グリッパ36を移動させて記録媒体Pを搬送し、グリッパ36により記録媒体Pを保持したまま、記録媒体Pがグリッパ36と共に二次転写位置T2を通過するように構成されている。
【0052】
なお、一対のチェーン34は、それぞれ、転写部40におけるスプロケット32及び加圧部42におけるスプロケット48の外周の整数倍の長さにより構成されている。そして、3個の支持部材38は、それぞれ、チェーン34上の、転写胴50の凹部54及び加圧ロール44の凹部46の位置に対応した場所に設けられている。そのため、グリッパ36は、チェーン34の周回に伴って移動する際に、転写胴50に到達すると、転写胴50の凹部54に収容された状態で、転写胴50と一体的に移動する。同様に、グリッパ36は、チェーン34の周回に伴って移動する際に、加圧ロール44に到達すると、加圧ロール44の凹部46に収容された状態で、加圧ロール44と一体的に移動する。
【0053】
ここで、本実施形態における搬送部14は、加熱ロール92が離間位置に位置する状態において、挟込位置NPへ向けて、グリッパ36が記録媒体Pの先端部を保持したまま、記録媒体Pを搬送するように構成されている。そして、搬送部14は、記録媒体Pを挟込位置NPへ搬送すると、記録媒体Pの先端部の保持を解除するように構成されている。
【0054】
すなわち、搬送部14は、グリッパ36が、挟込位置NPを通過した後に、記録媒体Pの先端部の保持を解除するように構成されている。なお、このとき、加圧ロール44は、回転した状態、言い換えるとチェーン34が周回移動している状態を維持するように構成されている。
【0055】
また、記録媒体Pが挟込位置NPに搬送されたことは、例えば、挟込位置NPの搬送方向上流側に設けられている検知部が、記録媒体Pの先端を検知してからの時間によって検出するように構成されている。なお、検知部の検知対象は、記録媒体Pの先端ではなく、支持部材38又はグリッパ36であってもよい。
【0056】
また、加熱ロール92は、グリッパ36が挟込位置NPを通過した後で、かつグリッパ36による記録媒体Pの先端部の保持が解除された後に、離間位置から接触位置へ移動を開始し、挟込位置NPへ搬送された記録媒体Pを加圧ロール44とで挟み込むように構成されている。そして、加熱ロール92と加圧ロール44とで記録媒体Pを挟み込んだ状態で、加熱ロール92が回転を開始して記録媒体Pを搬送するように構成されている。
【0057】
なお、加熱ロール92は、グリッパ36による記録媒体Pの先端部の保持が解除される前に、離間位置から接触位置へ移動を開始してもよく、グリッパ36による記録媒体Pの先端部の保持が解除された後に、加熱ロール92と加圧ロール44とによる記録媒体Pの挟み込みが完了するようになっていればよい。
【0058】
このように、定着装置90では、加熱ロール92と加圧ロール44とで記録媒体Pを挟み込んだ状態で搬送しつつ、記録媒体Pを加熱及び加圧することにより、記録媒体Pに転写されたトナー画像を記録媒体Pに定着させるように構成されている。
【0059】
次に、本実施形態の画像形成装置10のハードウェア構成について説明する。
図5は、画像形成装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0060】
図5に示すように、画像形成装置10は、CPU101、メモリ102、ハードディスクドライブ等の記憶装置103、ネットワークを介して外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う通信インタフェース(IFと略す。)104、タッチパネル又は液晶ディスプレイ並びにキーボードを含むユーザインタフェース(UIと略す。)装置105、及び、プリントエンジン106を有する。これらの構成要素は、制御バス107を介して互いに接続されている。
【0061】
通信IF104は、外部の装置等との間でデータの送信及び受信を行う。UI装置105は、ユーザからの指示入力を受け付ける。プリントエンジン106は、上記の画像形成部12、搬送部14、及び、定着装置90により構成され、電子写真方式により記録媒体P上に画像を印刷する。
【0062】
CPU101は、メモリ102又は記憶装置103に格納された制御プログラムに基づいて所定の処理を実行して、画像形成装置10の動作を制御するプロセッサである。なお、本実施形態では、CPU101は、メモリ102又は記憶装置103内に格納された制御プログラムを読み出して実行するものとして説明したが、これに限定されるものではない。この制御プログラムをコンピュータ読取可能な記録媒体に記録した形態で提供してもよい。例えば、このプログラムをCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)及びDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の光ディスクに記録した形態、若しくは、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びメモリカード等の半導体メモリに記録した形態で提供してもよい。また、この制御プログラムを、通信IF104に接続された通信回線を介して外部装置から取得するようにしてもよい。
【0063】
次に、本実施形態の画像形成装置10の機能構成について説明する。
図6は、画像形成装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0064】
図6に示すように、画像形成装置10は、制御部111、記憶部112、表示入力部113、通信部114、及び、プリントエンジン106を有する。
【0065】
制御部111は、画像形成装置10の全体動作を制御しており、例えば、プリントエンジン106により画像を印刷する制御、及び、プリントエンジン106により画像を印刷する際の補正の制御等を行う。なお、画像印刷時の補正の詳細については後述する。
【0066】
記憶部112は、制御プログラムの他、後述の画像印刷時の補正を行うための補正用データ等の各種データを格納する。
【0067】
表示入力部113は、制御部111による制御に基づいて、UI装置105の表示画面に各種情報を表示する。また、表示入力部113は、UI装置105においてユーザにより行われた各種操作情報を入力する。通信部114は、外部の装置との間で画像データ等の各種データの送受信を行う。
【0068】
図7に示すように、プリントエンジン106が記録媒体Pを保持するグリッパ36を備えている場合、上述のように、転写胴50の外周面の一部には、グリッパ36等が収容される空間である凹部54が必要となる。
【0069】
プリントエンジン106において、対向ロール24は転写胴50に向けて付勢されている。また、対向ロール24及び転写胴50は、転写ベルト30を挟んで当接ながら回転する。
【0070】
また、
図1に示すように、プリントエンジン106は、二次転写位置T2において、記録媒体P及びトナー画像を転写胴50と転写ベルト30との間で挟み込んで加圧することにより、記録媒体Pにトナー画像を転写する。
【0071】
このとき、転写胴50の外周面に凹部54が形成されていると、
図7に示すように、転写胴50における対向ロール24との当接位置が凹部54の上流側角部54aとなった際に、転写胴50の中心から外周までの距離が急激に変化し、対向ロール24が転写胴50に付勢された状態で接触する。その結果、プリントエンジン106内で振動が発生し、転写ベルト30の移動速度に変動が生じてしまう。
【0072】
また、
図8に示すように、転写胴50における対向ロール24との当接位置が凹部54の下流側角部54bとなった際も、転写胴50の中心から外周までの距離が急激に変化し、対向ロール24が転写胴50の下流側角部54bに接触する。その結果、やはり、プリントエンジン106内で振動が発生し、転写ベルト30の移動速度に変動が生じてしまう。
【0073】
このような振動発生のメカニズムは、凹部46が形成された加圧ロール44と加熱ロール92とにより記録媒体Pを挟み込む挟込位置NPにおいても同様である。そして、加圧ロール44と転写胴50とは一対のチェーン34により連結されているため、挟込位置NPで発生した振動は転写胴50を介して転写ベルト30まで伝達し、転写ベルト30の移動速度に変動が生じてしまう。
【0074】
プリントエンジン106において、画像印刷時に転写ベルト30に速度変動が生じると、画像形成部12におけるトナー画像の形成、一次転写位置T1における一次転写、及び、二次転写位置T2における二次転写等に悪影響を及ぼし、記録媒体P上に形成されるトナー画像において濃度むらが発生する。
【0075】
本実施形態の画像形成装置10の制御部111は、トナー画像を記録媒体Pに転写する際の転写ベルト30の速度変動と関係する情報を用いて、記録媒体P上に形成される画像における濃度むらが低減するように、画像形成部12において形成するトナー画像の濃度補正を行う。
【0076】
本実施形態において、転写ベルト30の速度変動と関係する情報は、転写胴50の回転速度を検出する回転速度センサ60の検出信号に基づく情報である。
【0077】
なお、転写ベルト30の速度変動と関係する情報は、転写胴50の回転速度を検出する回転速度センサ60に限らず、画像形成装置10内で転写ベルト30と連動して回転する部品の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報としてもよい。例えば、転写ベルト30に当接する回転体であるロール22又は対向ロール24の回転速度を検出する回転速度センサ、又は、加圧ロール44の回転速度を検出する回転速度センサ等とすることができる。
【0078】
また、転写ベルト30の速度変動と関係する情報は、回転速度センサの検出信号に基づく情報に限らず、振動検出センサ等、転写ベルト30の速度変動と相関のある情報であれば、どのような情報を用いてもよい。
【0079】
以下、制御部111による濃度補正について、詳細に説明する。
【0080】
図9は、転写ベルト30の速度変動と、記録媒体P上に形成されるトナー画像における濃度変動との関係を示すグラフであり、
図9(A)は転写ベルト30の速度変動率を示すグラフ、
図9(B)はトナー画像の濃度変動率を示すグラフである。
【0081】
図9のグラフにおいて、横軸は記録媒体Pにおける先頭位置からの距離(mm)、縦軸は転写ベルト30の速度又はトナー画像における濃度の変動率(%)を示している。
【0082】
図9に示すように、転写ベルト30の速度変動率と、記録媒体P上に形成されるトナー画像の濃度変動率とは相関がある。すなわち、転写ベルト30の速度変動率が高くなっている部分では画像における濃度変動率も高くなっており、逆に、転写ベルト30の速度変動率が低くなっている部分では画像における濃度変動率も低くなっている。
【0083】
従って、転写ベルト30の速度変動率特性の正負を逆転させた特性の濃度補正パターンにより、画像形成部12において形成するトナー画像の濃度補正を行うことにより、記録媒体P上に形成されるトナー画像における濃度むらが平準化され、濃度むらが目立たなくなる。
【0084】
また、上述の通り、一対のチェーン34は、それぞれ、転写部40におけるスプロケット32及び加圧部42におけるスプロケット48の外周の整数倍の長さにより構成されている。そして、3個の支持部材38は、それぞれ、チェーン34上の、転写胴50の凹部54及び加圧ロール44の凹部46の位置に対応した場所に設けられている。
【0085】
そのため、上記で説明したような転写胴50の凹部54及び加圧ロール44の凹部46で発生する振動は、一枚のトナー画像の形成時においては周期性を持たず突発的に発生するが、複数枚のトナー画像を形成する際には、各トナー画像において毎回同じ位置で振動が発生することになる。
【0086】
すなわち、複数枚のトナー画像を形成する際の、各トナー画像における転写ベルト30の速度変動率特性は、全て同じとなる。そのため、転写ベルト30の速度変動率特性データを一度取得すれば、その後に形成するトナー画像に対して濃度補正を行うことができる。
【0087】
図10は、転写ベルト30の速度変動と、濃度補正パターンとの関係を示すグラフであり、
図10(A)は転写ベルト30の速度変動率を示すグラフ、
図10(B)は濃度補正パターンを示すグラフである。なお、
図9(A)のグラフと
図10(A)のグラフは同じものである。
【0088】
図10(A)のグラフにおいて、横軸は記録媒体Pにおける先頭位置からの距離(mm)、縦軸は転写ベルト30の速度の変動率(%)を示している。
図10(B)のグラフにおいて、横軸は記録媒体Pにおける先頭位置からの距離(mm)、縦軸は濃度補正の補正量(%)を示している。
【0089】
制御部111は、回転速度センサ60の検出信号に基づいて、
図10(A)に示すような転写ベルト30の速度変動率特性データを予め取得し、
図10(B)に示すような転写ベルト30の速度変動率特性の正負を逆転させた特性の濃度補正パターンを、補正用データとして記憶部112に記憶しておく。
【0090】
なお、濃度補正パターンにおける濃度補正量は、転写ベルト30の速度変動率特性の正負を逆転させた特性における変動率と同じである必要はなく、濃度補正パターンに調整係数を乗じて、補正量を調整してもよい。
【0091】
制御部111は、記録媒体P上にトナー画像を形成する際に、記憶部112に記憶されている濃度補正パターンを用いて、画像形成部12において形成するトナー画像の濃度補正を行う。
【0092】
なお、転写ベルト30の速度変動率特性データの取得のタイミングについては特に制限はなく、例えば、画像形成装置10の工場出荷前に取得するようにしてもよいし、サービスエンジニアにより画像形成装置10のメンテナンス作業を行う際に取得するようにしてもよい。
【0093】
画像形成部12において形成するトナー画像の濃度補正については、トナー画像を形成するための画像データに対して濃度補正パターンを用いて濃度補正することにより、記録媒体P上に形成されるトナー画像における濃度むらを抑えるようにしてもよい。
【0094】
また、画像データは補正せず、濃度補正パターンを用いてトナー像形成部80の露光装置86における露光量を補正することにより、記録媒体P上に形成されるトナー画像における濃度むらを抑えるようにしてもよい。
【0095】
次に、画像形成装置10における濃度補正時の処理について、
図11のフローチャートを参照して説明する。
【0096】
最初に、制御部111は、ステップS11において、回転速度センサ60の検出信号に基づいて、転写ベルト30の速度変動率特性データを取得する。
【0097】
次に、制御部111は、ステップS12において、転写ベルト30の速度変動率特性の正負を逆転させた特性の濃度補正パターンを補正用データとして取得し、記憶部112に記憶する。
【0098】
次に、制御部111は、ステップS13において、記録媒体P上にトナー画像を形成する際に、記憶部112に記憶されている濃度補正パターンを用いて、画像形成部12において形成するトナー画像の濃度補正を行う。
【0099】
このときの濃度補正は、上記のように、トナー画像を形成するための画像データに対して濃度補正パターンを用いて濃度補正することにより行ってもよいし、トナー像形成部80の露光装置86における露光量を濃度補正パターンを用いて補正することにより行ってもよい。
【0100】
最後に、制御部111は、ステップS14において、濃度補正されたトナー画像を記録媒体Pに転写し、処理を終了する。
【0101】
[変形例]
なお、上記実施形態では、補正用データとして、転写ベルト30の速度変動率特性の正負を逆転させた特性の濃度補正パターンを取得し、この濃度補正パターンを用いて画像形成部12において形成するトナー画像の濃度補正を行っていたが、トナー画像の濃度補正については、このような態様に限らず、トナー画像の濃度補正が可能な態様であればどのような態様としてもよい。
【0102】
例えば、以下に示すような態様としてもよい。
図12は、転写ベルト30の速度変動と、濃度補正関数との関係を示すグラフであり、
図12(A)は転写ベルト30の速度変動率を示すグラフ、
図12(B)は転写ベルト30の速度変動率を示すグラフにおいてイベント発生期間中の特性のみを示すグラフである。なお、
図9(A)のグラフと
図12(A)のグラフは同じものである。
【0103】
図12のグラフにおいて、横軸は記録媒体Pにおける先頭位置からの距離(mm)、縦軸は転写ベルト30の速度の変動率(%)を示している。
【0104】
制御部111は、回転速度センサ60の検出信号に基づいて、
図12(A)に示すような転写ベルト30の速度変動率特性データを予め取得し、
図12(B)に示すように速度変動率特性データの中から、突発的に発生した速度変動(以下、イベントと記載する)の発生起点及び発生期間を特定する。
【0105】
速度変動率特性データの中からイベント発生起点を特定する方法としては、速度変動率特性データにおいて、速度変動率が予め設定された閾値を超えた位置をイベント発生起点として特定してもよい。
【0106】
また、画像形成装置10に設けられている回転速度センサ60を用いたり、不図時の振動検出センサ等のセンサを用いて、記録媒体P上にトナー画像を形成する際に、速度変動率や振動が予め設定された閾値を超えた位置を物理的に検知し、この検知結果と転写ベルト30の速度変動率特性データとを対応付けてイベント発生起点を特定してもよい。
【0107】
速度変動率特性データの中からイベント発生期間を特定する方法としては、速度変動率特性データにおいて、速度変動率が予め設定された閾値を超えた位置から速度変動率が予め設定された閾値を下回る位置までをイベント発生期間として特定してもよい。
【0108】
また、画像形成装置10に設けられている回転速度センサ60を用いたり、不図時の振動検出センサ等のセンサを用いて、記録媒体P上にトナー画像を形成する際に、速度変動率や振動が予め設定された閾値を超えた位置及び再び閾値を下回った位置を物理的に検知し、この検知結果と転写ベルト30の速度変動率特性データとを対応付けてイベント発生期間を特定してもよい。
【0109】
制御部111は、イベント発生起点及びイベント発生期間に基づいて、イベント毎に濃度補正関数を生成し、補正用データとして記憶部112に記憶しておく。
【0110】
濃度補正関数f(x)は、下記の通り表される。ここで、f(a)は減衰関数、f(b)は補正を行うための基本波形関数である。f(x)、f(a)、f(b)の単位は、いずれもmmである。
f(x)=f(a)×f(b)
【0111】
基本波形関数f(b)は、転写ベルト30の速度変動率特性において、イベント発生起点からイベント発生期間中の特性の正負を逆転させた特性を近似させた関数である。
【0112】
また、減衰関数f(a)は、基本波形関数f(b)により規定される補正量を調整するための減衰係数(1以下の値)を規定した関数であり、イベント発生起点から距離が進むにつれて補正量が少なくなるような減衰特性を持たすための関数である。
【0113】
減衰関数f(a)については、例えば、減衰係数が変化しない特性、減衰係数が距離に反比例して小さくなる特性、減衰係数が距離の2乗に反比例して小さくなる特性とすることができる。
【0114】
制御部111は、記録媒体P上にトナー画像を形成する際に、イベント毎に記憶部112に記憶されている濃度補正関数f(x)を用いて、画像形成部12において形成するトナー画像の濃度補正を行う。
【0115】
次に、画像形成装置10における濃度補正時の処理について、
図13のフローチャートを参照して説明する。
【0116】
最初に、制御部111は、ステップS21において、回転速度センサ60の検出信号に基づいて、転写ベルト30の速度変動率特性データを取得する。
【0117】
次に、制御部111は、ステップS22において、転写ベルト30の速度変動率特性を用いて、イベント毎に濃度補正関数f(x)を補正用データとして生成し、記憶部112に記憶する。
【0118】
次に、制御部111は、ステップS23において、記録媒体P上にトナー画像を形成する際に、イベント毎に記憶部112に記憶されている濃度補正関数f(x)を用いて、画像形成部12において形成するトナー画像の濃度補正を行う。
【0119】
このときの濃度補正は、上記のように、トナー画像を形成するための画像データに対して濃度補正関数f(x)を用いて濃度補正することにより行ってもよいし、トナー像形成部80の露光装置86における露光量を濃度補正関数f(x)を用いて補正することにより行ってもよい。
【0120】
最後に、制御部111は、ステップS24において、濃度補正されたトナー画像を記録媒体Pに転写し、処理を終了する。
【0121】
以上、本発明の一実施形態の画像形成装置について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されず、適宜変更することもできる。
【0122】
上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。
【0123】
また上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、画像形成装置として印刷機能を有する印刷機に対して本発明を適用した場合を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばスキャナ等を備えた複合機等、種々の画像形成装置に対しても適用することができる。
【0125】
[付記]
以下に、本開示の好ましい形態について付記する。
【0126】
(((1)))
記録媒体を把持する把持部を備えた搬送部と、
転写体に現像剤像を形成する像形成部と、
現像剤像が形成された前記転写体を、前記把持部を収納する空間を有する転写胴に当接して、現像剤像を記録媒体に転写する転写部と、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
現像剤像を記録媒体に転写する際の前記転写体の速度変動と関係する情報を用いて、記録媒体上に形成される画像における濃度むらが低減するように、前記像形成部において形成する現像剤像の濃度補正を行う
画像形成装置。
【0127】
(((2)))
前記転写体の速度変動と関係する情報は、自装置内で前記転写体と連動して回転する部品の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報である
(((1)))に記載の画像形成装置。
【0128】
(((3)))
前記転写体の速度変動と関係する情報は、前記転写胴の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報である
(((2)))に記載の画像形成装置。
【0129】
(((4)))
前記転写体の速度変動と関係する情報は、前記転写体に当接する回転体の回転速度を検出する回転速度センサの検出信号に基づく情報である
(((2)))に記載の画像形成装置。
【0130】
(((5)))
前記プロセッサは、
前記転写体の速度変動と関係する情報における速度変動の起因となる現象の発生起点及び速度変動の周波数の情報を用いて前記現象毎に規定された、現像剤像に対する濃度補正の補正量を示す補正関数を用いて、前記像形成部において形成する現像剤像における前記現象の発生起点から、設定された期間内に対応する領域に対して濃度補正を行う
(((1)))から(((4)))のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0131】
(((6)))
前記補正関数における濃度補正の補正量は、時間経過に従って濃度補正の補正量が低下するような減衰特性を有する
(((5)))に記載の画像形成装置。
【0132】
(((7)))
記録媒体を把持する把持部を備えた搬送部と、
転写体に現像剤像を形成する像形成部と、
現像剤像が形成された前記転写体を、前記把持部を収納する空間を有する転写胴に当接して、現像剤像を記録媒体に転写する転写部と、
プロセッサと、を備えた画像形成装置の制御を行うためのプログラムであって、
現像剤像を記録媒体に転写する際の前記転写体の速度変動と関係する情報を用いて、記録媒体上に形成される画像における濃度むらが低減するように、前記像形成部において形成する現像剤像の濃度補正を行うステップ
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0133】
以下に、付記の構成による効果について記載する。
【0134】
(((1)))の画像形成装置によれば、画像内の突発的な振動に起因した濃度むらに対して濃度補正を行うことができる。
【0135】
(((2)))の画像形成装置によれば、自装置内で転写体と連動して回転する部品の回転速度を検出する回転速度センサを用いて、転写体の速度変動と関係する情報を取得することができる。
【0136】
(((3)))の画像形成装置によれば、転写胴の回転速度を検出する回転速度センサを用いて、転写体の速度変動と関係する情報を取得することができる。
【0137】
(((4)))の画像形成装置によれば、転写体に当接する回転体の回転速度を検出する回転速度センサを用いて、転写体の速度変動と関係する情報を取得することができる。
【0138】
(((5)))の画像形成装置によれば、速度変動の起因となる現象が考慮された濃度補正を行うことができる。
【0139】
(((6)))の画像形成装置によれば、より実際の特性に合わせた濃度補正を行うことができる。
【0140】
(((7)))のプログラムによれば、画像内の突発的な振動に起因した濃度むらに対して濃度補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0141】
10 画像形成装置
12 画像形成部
14 搬送部
22 ロール
24 対向ロール
30 転写ベルト
32 スプロケット
34 チェーン
36 グリッパ
36A 爪
36B 爪台
38 支持部材
40 転写部
42 加圧部
44 加圧ロール
46 凹部
48 スプロケット
50 転写胴
54 凹部
54a 上流側角部
54b 下流側角部
60 回転速度センサ
78 一次転写ロール
80 トナー像形成部
82 感光体
84 帯電器
86 露光装置
88 現像装置
90 定着装置
90A 加熱源
92 加熱ロール
101 CPU
102 メモリ
103 記憶装置
104 通信インタフェース
105 ユーザインタフェース装置
106 プリントエンジン
107 制御バス
111 制御部
112 記憶部
113 表示入力部
114 通信部