(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074165
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】筋肉状態診断システム、アシスト装置及びアシスト量診断方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/08 20060101AFI20240523BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A61N1/08
A61N1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185274
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック アリワルガ
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀樹
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ01
4C053JJ13
4C053JJ18
4C053JJ24
(57)【要約】
【課題】筋肉の動きを電気的にアシストするアシスト装置によって適切にアシストすることを可能にする技術を提供する。
【解決手段】筋肉状態診断システムは、対象者の筋肉の動きを電気的にアシストするアシスト装置のアシスト対象である筋肉の状態を診断する筋肉状態診断システムであり、前記アシスト対象である筋肉の状態を表す状態情報が入力される入力部と、前記入力部によって入力された前記状態情報に基づいて、前記対象者の筋肉の状態を特定する筋状態特定部と、前記筋状態特定部で特定された前記筋肉の状態に基づいて、前記アシスト装置から前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの最小値と最大値を含む入力範囲を決定するエネルギー範囲決定部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の筋肉の動きを電気的にアシストするアシスト装置のアシスト対象である筋肉の状態を診断する筋肉状態診断システムであり、
前記アシスト対象である筋肉の状態を表す状態情報が入力される入力部と、
前記入力部によって入力された前記状態情報に基づいて、前記対象者の筋肉の状態を特定する筋状態特定部と、
前記筋状態特定部で特定された前記筋肉の状態に基づいて、前記アシスト装置から前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの最小値と最大値を含む入力範囲を決定するエネルギー範囲決定部と、を備える
筋肉状態診断システム。
【請求項2】
前記入力部は、前記対象者の身体的な情報が前記状態情報として入力される身体情報入力部を有し、
前記筋状態特定部は、前記対象者の身体的な情報に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する第1特定部を有し、
前記エネルギー範囲決定部は、前記身体的な情報から特定された筋肉の状態に基づいて前記電気エネルギーの第1入力範囲を決定する、
請求項1に記載の筋肉状態診断システム。
【請求項3】
前記入力部は、前記アシスト装置によってアシストされる前記対象者のアシスト部位に取り付けられ、当該アシスト部位の筋肉に係る情報を検出して前記状態情報として入力する状態検出部を有し、
前記筋状態特定部は、前記状態検出部による検出結果に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する第2特定部を有し、
前記エネルギー範囲決定部は、前記第1入力範囲と、前記状態検出部の検出結果によって特定された筋肉の状態に基づいて、前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの第2入力範囲を決定する、
請求項2に記載の筋肉状態診断システム。
【請求項4】
前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの値を前記エネルギー範囲決定部で決定された前記最小値と前記最大値との間で連続的に変化させて、前記アシスト対象の筋肉へ前記電気エネルギーを供給し、前記電気エネルギーに応じて前記筋肉が動いた量を追随量として取得する追随量取得部を更に備える、請求項1から3の何れか1項に記載の筋
肉状態診断システム。
【請求項5】
前記筋状態特定部は、前記筋肉の状態が、前記アシスト装置によるアシストの条件を満たさない場合、アシストに不適であることを判定する、請求項1から3の何れか1項に記
載の筋肉状態診断システム。
【請求項6】
前記エネルギー範囲決定部は、前記状態検出部による検出結果が、前記アシスト装置によるアシストの条件を満たさない場合、アシストに不適であることを判定する、請求項3に記載の筋肉状態診断システム。
【請求項7】
前記エネルギー範囲決定部で決定された前記対象者におけるアシスト部位の筋肉への入力範囲、および前記追随量取得部で得られた前記筋肉の追随量は、前記対象者と対応づけられ、登録情報として、対象者情報格納部に格納され、
前記入力部は、前記対象者が前記筋肉状態診断システムを使用した際に、当該対象者の登録情報が、前記対象者情報格納部に格納されている場合、当該対象者に係る前記筋肉への入力範囲および前記筋肉の追随量を取得する、請求項4に記載の筋肉状態診断システム
。
【請求項8】
請求項4に記載の筋肉状態診断システムと、
前記アシスト対象である筋肉へ電気エネルギーを供給する刺激付与部と、
前記刺激付与部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部が、前記筋肉の追随量に基づいて、前記アシスト対象である筋肉へ供給する電気エネルギーの供給量を前記入力範囲において決定し、当該供給量で電気エネルギーを前記刺激付与部から前記筋肉へ供給させて、前記筋肉の動きをアシストする、アシスト装置。
【請求項9】
対象者の筋肉の動きを電気的にアシストするアシスト装置のアシスト対象である筋肉の状態を表す状態情報の入力を受ける入力ステップと、
前記状態情報に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する筋状態特定ステップと、
前記特定された前記筋肉の状態に基づいて、前記アシスト装置から前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの最小値と最大値を含む入力範囲を決定するエネルギー範囲決定ステップと、を含む
アシスト量診断方法。
【請求項10】
前記入力ステップは、前記対象者の身体的な情報が前記状態情報として入力される身体情報入力ステップを含み、
前記筋状態特定ステップは、前記対象者の身体的な情報に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する第1特定ステップを含み、
前記エネルギー範囲決定ステップは、前記対象者の身体的な情報に基づく前記筋肉の状態から前記電気エネルギーの第1入力範囲を決定する、
請求項9記載のアシスト量診断方法。
【請求項11】
前記入力ステップは、前記対象者のアシスト部位に取り付けられた状態検出部によって検出された当該アシスト部位の筋肉に係る情報が前記状態情報として入力されるステップを含み、
前記筋状態特定ステップは、前記状態検出部による検出結果に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する第2特定ステップを含み、
前記エネルギー範囲決定ステップは、前記第1入力範囲と、前記状態検出部の検出結果によって特定された筋肉の状態に基づいて、前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの第2入力範囲を決定する、
請求項10に記載のアシスト量診断方法。
【請求項12】
前記第1入力範囲と前記第2入力範囲とをクロスチェックし、前記身体情報入力ステップにおける誤入力、および前記筋状態特定ステップにて前記筋肉の状態が誤って特定された場合の検知を行うステップを含む、請求項11に記載のアシスト量診断方法。
【請求項13】
前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの値を前記エネルギー範囲決定ステップで決定された前記最小値と前記最大値との間で連続的に変化させて、前記アシスト対象の筋肉へ前記電気エネルギーを供給し、前記電気エネルギーに応じて前記筋肉が動いた量を追随量として取得する追随量取得ステップをさらに含む、請求項9から12の何れか1項に記載のアシスト量診断方法。
【請求項14】
前記電気エネルギーの入力値を変化させて前記アシスト対象の筋肉へ前記電気エネルギーを供給した場合の前記追随量と、前記入力値との対応関係を示す入出力特性を取得するステップを更に含む、請求項13に記載のアシスト量診断方法。
【請求項15】
前記筋状態特定ステップで特定された前記筋肉の状態が、前記アシスト装置によるアシストの条件を満たさない場合、アシストに不適であることを判定するステップを含む、請求項9から12の何れか1項に記載のアシスト量診断方法。
【請求項16】
前記状態検出部による検出結果が、前記アシスト装置によるアシストの条件を満たさない場合、アシストに不適であることを判定するステップを含む、請求項11又は12に記載のアシスト量診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉状態診断システム、アシスト装置及びアシスト量診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザの身体に関する情報を検出するセンサと、電極間へ印加する電圧を制御するとともに、センサで検出した情報を処理する制御部とを備え、電気刺激を筋肉に与える筋肉電気刺激装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの筋肉に微弱な電流を流して筋肉を運動させる場合、電流に対する筋肉の運動量に個人差があるため、所定の値で電流を流してもユーザが異なれば同じ運動量になるとは限らない。このためユーザの筋肉に電気エネルギーを与えて筋肉の動きをアシストするアシスト装置において、適切なアシスト量を得るのが難しいという問題があった。
【0005】
本開示の技術は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、筋肉の動きを電気的にアシストするアシスト装置によって適切にアシストすることを可能にする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の筋肉状態診断システムは、
対象者の筋肉の動きを電気的にアシストするアシスト装置のアシスト対象である筋肉の状態を診断する筋肉状態診断システムであり、
前記アシスト対象である筋肉の状態を表す状態情報が入力される入力部と、
前記入力部によって入力された前記状態情報に基づいて、前記対象者の筋肉の状態を特定する筋状態特定部と、
前記筋状態特定部で特定された前記筋肉の状態に基づいて、前記アシスト装置から前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの最小値と最大値を含む入力範囲を決定するエネルギー範囲決定部と、を備える
筋肉状態診断システムである。
【0007】
前記筋肉状態診断システムにおいて、前記入力部は、前記対象者の身体的な情報が前記状態情報として入力される身体情報入力部を有し、
前記筋状態特定部は、前記対象者の身体的な情報に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する第1特定部を有し、
前記エネルギー範囲決定部は、前記身体的な情報から特定された筋肉の状態に基づいて前記電気エネルギーの第1入力範囲を決定してもよい。
【0008】
前記筋肉状態診断システムにおいて、前記入力部は、前記アシスト装置によってアシストされる前記対象者のアシスト部位に取り付けられ、当該アシスト部位の筋肉に係る情報を検出して前記状態情報として入力する状態検出部を有し、
前記筋状態特定部は、前記状態検出部による検出結果に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する第2特定部を有し、
前記エネルギー範囲決定部は、前記第1入力範囲と、前記状態検出部の検出結果によって特定された筋肉の状態に基づいて、前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの第2入力範囲を決定してもよい。
【0009】
前記筋肉状態診断システムにおいて、前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの値を前記エネルギー範囲決定部で決定された前記最小値と前記最大値との間で連続的に変化させて、前記アシスト対象の筋肉へ前記電気エネルギーを供給し、前記電気エネルギーに応じて前記筋肉が動いた量を追随量として取得する追随量取得部を更に備えてもよい。
【0010】
前記筋肉状態診断システムにおいて、前記筋状態特定部は、前記筋肉の状態が、前記アシスト装置によるアシストの条件を満たさない場合、アシストに不適であることを判定してもよい。
【0011】
前記筋肉状態診断システムにおいて、前記エネルギー範囲決定部は、前記状態検出部による検出結果が、前記アシスト装置によるアシストの条件を満たさない場合、アシストに不適であることを判定してもよい。
【0012】
前記筋肉状態診断システムにおいて、前記エネルギー範囲決定部で決定された前記対象者におけるアシスト部位の筋肉への入力範囲、および前記追随量取得部で得られた前記筋肉の追随量は、前記対象者と対応づけられ、登録情報として、対象者情報格納部に格納され、
前記入力部は、前記対象者が前記筋肉状態診断システムを使用した際に、当該対象者の登録情報が、前記対象者情報格納部に格納されている場合、当該対象者に係る前記筋肉への入力範囲および前記筋肉の追随量を取得してもよい。
【0013】
上記課題を解決するために、本開示のアシスト装置は、
前記筋肉状態診断システムと、
前記アシスト対象である筋肉へ電気エネルギーを供給する刺激付与部と、
前記刺激付与部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部が、前記筋肉の追随量に基づいて、前記アシスト対象である筋肉へ供給する電気エネルギーの供給量を前記入力範囲において決定し、当該供給量で電気エネルギーを前記刺激付与部から前記筋肉へ供給させて、前記筋肉の動きをアシストする。
【0014】
上記課題を解決するために、本開示のアシスト量診断方法は、
対象者の筋肉の動きを電気的にアシストするアシスト装置のアシスト対象である筋肉の状態を表す状態情報の入力を受ける入力ステップと、
前記状態情報に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する筋状態特定ステップと、
前記特定された前記筋肉の状態に基づいて、前記アシスト装置から前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの最小値と最大値を含む入力範囲を決定するエネルギー範囲決定ステップと、を含む。
【0015】
前記アシスト量診断方法において、前記入力ステップは、前記対象者の身体的な情報が前記状態情報として入力される身体情報入力ステップを含み、
前記筋状態特定ステップは、前記対象者の身体的な情報に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する第1特定ステップを含み、
前記エネルギー範囲決定ステップは、前記対象者の身体的な情報に基づく前記筋肉の状態から前記電気エネルギーの第1入力範囲を決定してもよい。
【0016】
前記アシスト量診断方法において、前記入力ステップは、前記対象者のアシスト部位に
取り付けられた状態検出部によって検出された当該アシスト部位の筋肉に係る情報が前記状態情報として入力されるステップを含み、
前記筋状態特定ステップは、前記状態検出部による検出結果に基づいて前記対象者の筋肉の状態を特定する第2特定ステップを含み、
前記エネルギー範囲決定ステップは、前記第1入力範囲と、前記状態検出部の検出結果によって特定された筋肉の状態に基づいて、前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの第2入力範囲を決定してもよい。
【0017】
前記アシスト量診断方法において、前記第1入力範囲と前記第2入力範囲とをクロスチェックし、前記身体情報入力ステップにおける誤入力、および前記筋状態特定ステップにて前記筋肉の状態が誤って特定された場合の検知を行うステップを含んでもよい。
【0018】
前記アシスト量診断方法において、前記アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの値を前記エネルギー範囲決定ステップで決定された前記最小値と前記最大値との間で連続的に変化させて、前記アシスト対象の筋肉へ前記電気エネルギーを供給し、前記電気エネルギーに応じて前記筋肉が動いた量を追随量として取得する追随量取得ステップをさらに含んでもよい。
【0019】
前記アシスト量診断方法において、前記電気エネルギーの入力値を変化させて前記アシスト対象の筋肉へ前記電気エネルギーを供給した場合の前記追随量と、前記入力値との対応関係を示す入出力特性を取得するステップを更に含んでもよい。
【0020】
前記アシスト量診断方法において、前記筋状態特定ステップで特定された前記筋肉の状態が、前記アシスト装置によるアシストの条件を満たさない場合、アシストに不適であることを判定するステップを含んでもよい。
【0021】
前記アシスト量診断方法において、前記状態検出部による検出結果が、前記アシスト装置によるアシストの条件を満たさない場合、アシストに不適であることを判定するステップを含んでもよい。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、筋肉の動きを電気的にアシストするアシスト装置によって適切にアシストすることを可能にする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、アシストシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、ユーザに装着された状態のアシストシステムを示す概略図である。
【
図3】
図3は、筋肉状態診断システムの機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、大腿四頭筋の断面積と年齢との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、大腿四頭筋のCT値と年齢との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、筋肉量と入力範囲の対応関係を示す図である。
【
図7】
図7は、筋肉に供給(入力)される電気エネルギーの範囲と、この電気エネルギーによる筋肉の運動量(追随量)の関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、筋肉状態診断システムの制御部が実行する起動時処理を示す図である。
【
図10】
図10は、筋肉状態診断システムの制御部が実行する処理を示す図である。
【
図11】
図11は、アシスト装置の制御部が実行するアシスト処理を示す図である。
【
図12】
図12は、第二実施形態に係る筋肉状態診断システムの機能ブロック図である。
【
図13】
図13は、筋肉に供給(入力)される電気エネルギーと、この電気エネルギーによる筋肉の運動量(追随量)との対応関係を示すグラフである。
【
図14A】
図14Aは、第二実施形態に係る筋肉状態診断システムの制御部が実行する処理を示す図(その1)である。
【
図14B】
図14Bは、第二実施形態に係る筋肉状態診断システムの制御部が実行する処理を示す図(その2)である。
【
図15】
図15は、第二実施形態に係るアシスト装置の制御部が実行するアシスト処理を示す図である。
【
図16】
図16は、第三実施形態に係るアシストシステムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るアシストシステムについて説明する。なお、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0025】
<第一実施形態>
≪システム構成≫
図1は、アシストシステム1の概略構成を示す図であり、
図2は、ユーザに装着された状態のアシストシステム1を示す概略図である。
図1に示すアシストシステム1は、ユーザ(対象者)の筋肉の動きを電気的にアシストするシステムである。アシストシステム1は、ユーザの筋肉の状態を検出し、適切なアシスト量を得るための診断を行う筋肉状態診断システム100と、アシスト対象とするユーザの筋肉に電気エネルギーを与えてユーザの動きをアシストするアシスト装置200とを有する。筋肉状態診断システム100は、各ユーザの筋肉の状態を検出し、アシスト装置200から供給する電気エネルギーの値の範囲(入力範囲)を決定する。アシスト装置200は、筋肉状態診断システム100で決定された入力範囲で、アシスト対象である筋肉へ供給する電気エネルギーの供給量を決定し、当該供給量の電気エネルギーを筋肉へ供給してユーザの動きに対してアシストを行う。これにより本実施形態のアシストシステム1は、アシスト対象である筋肉の状態に応じて適切な供給量で電気エネルギーを供給でき、アシスト装置200による適切なアシストを可能にしている。
【0026】
筋肉状態診断システム100とアシスト装置200は、一体に構成されてもよい。例えば、アシスト装置200が、筋肉状態診断システム100を備えてもよい。本実施形態では、筋肉状態診断システム100が概ねアシスト装置200の筐体20内に設けられている。筋肉状態診断システム100とアシスト装置200とが一体に構成される場合、後述の電極、制御部、入出力部、電源など、一部の構成が共用されてもよい。
図1の例では、電極341が筋肉状態診断システム100とアシスト装置200とで共用され、引出線340を介して筋肉状態診断システム100とアシスト装置200とに接続されている。電極341は、アシスト対象者のアシスト部位(
図2の例では大腿部)に取り付けられる。筐体20は、アシスト対象者に取り付けられても、アシスト対象者の近傍に配置されてもよい。例えば、筐体20は、ベルトやハーネスによってアシスト対象者に取り付けられる。また、筐体20は、アシスト対象者のポケットや鞄などに収容されてもよい。なお、筋肉状態診断システム100やアシスト装置200、電極341の配置は特段限定されるものではなく、適宜設定可能である。
【0027】
また、筋肉状態診断システム100とアシスト装置200は、別体に構成されてもよい。この場合、筋肉状態診断システム100で求めた筋肉の状態や入力範囲などの情報は、例えば通信回線や記憶媒体を介してアシスト装置200へ送信されてもよい。
【0028】
≪筋肉状態診断システム≫
筋肉状態診断システム100は、制御部110、記憶部120、及び入出力部130を備えるコンピュータである。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、D
SP(Digital Signal Processor)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)
などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などの主記憶部を備える。
【0029】
記憶部(補助記憶部)120は、RAM等の揮発性メモリ、ROM等の不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、又はリムーバブルメディアなどの記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)若しくはDVD(Digital Versatile Disc)のようなディスク記録媒体、又はメモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【0030】
記憶部120には、筋肉状態診断システム100の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種データテーブル、各種データベース、設定データ、ユーザデータなどが記憶可能である。本実施形態の記憶部120は、ユーザの登録情報を記憶し、対象者情報格納部としても機能する。
【0031】
入出力部130は、制御部110への情報の入力や、制御部110からの情報の出力を行う。入出力部130は、キーボードや、タッチパネル、操作ボタンなど、制御部110へ情報を入力する入力手段(入力部)131を有してもよい。また、入出力部130は、表示装置や、インジケータ、スピーカ、バイブレータ、プリンタなど、情報を出力する出力手段132を有してもよい。入出力部130は、通信回線を介して、他の装置からの情報の入力(受信)、及び他の装置への情報の出力(送信)を行う通信ユニット(CCU)133を有してもよい。
【0032】
入力手段131は、例えば、アシスト装置のアシスト対象である筋肉の状態を表す状態情報が入力される。キーボードやタッチパネルなどの入力手段131は、ユーザの操作によってアシスト対象者の身体的な情報が入力される身体情報入力部として機能する。また、入力手段131は、アシスト対象者のアシスト部位に取り付けられる状態検出部134を有してもよい。状態検出部134は、少なくとも一部がアシスト対象者のアシスト部位に取り付けられ、後述のように筋肉に係る情報を検出する。なお、本実施形態において、入力手段131によって入力される状態情報は、アシスト対象者(以下単にユーザとも称す)の身体的な情報(身体情報)と、状態検出部134の検出結果(アシスト部位の筋肉に係る情報)とを含んでもよい。
【0033】
制御部110は、記憶部120に記憶されたアプリケーションプログラム(コンピュータプログラム)を主記憶部の作業領域に読み出して実行し、記憶部120、入出力部130、及び通信ユニット133などの構成部を制御することで、所定の機能部、例えば、筋状態特定部111、及びエネルギー範囲決定部112として機能する。なお、これら複数の機能部は、単一のプロセッサによって実現されるものに限らず、複数のプロセッサによって実現されてもよい。また、単一のプロセッサが、マルチタスク又はマルチスレッドといった技術によって複数の機能部を実現してもよい。また、これらの機能部は、プログラム(ソフトウェア)に基づいて実現されるものに限らず、その一部又は全部が、プロセッサ、集積回路、及び論理回路等のハードウェア回路により構成されてもよい。
【0034】
筋状態特定部111は、入力手段131によって入力された状態情報に基づいて、アシスト対象者の筋肉の状態を特定する。例えば、筋状態特定部111は、アシスト対象者の身体的な情報から、対象者の筋肉の状態を特定する第1特定部としても機能する。また、筋状態特定部111は、状態検出部134による検出結果に基づいて、対象者の筋肉の状態を特定する第2特定部としても機能する。筋状態特定部111は、入力手段131によって入力された状態情報をアシスト対象者の識別情報と対応付けて記憶部(対象者情報格納部)120に記憶させてもよい。
【0035】
筋状態特定部111は、第1特定部及び第2特定部の少なくとも一方で特定したアシスト対象の筋肉の状態が、アシスト装置200によるアシストの条件を満たさない場合、「アシストに不適」と判定し、アシスト装置200によるアシストを行わせないようにしてもよい。
【0036】
エネルギー範囲決定部112は、筋状態特定部111で特定された筋肉の状態に基づいて、アシスト装置200からアシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの最小値と最大値を含む入力範囲を決定する。例えば、エネルギー範囲決定部112は、第1特定部によって特定された筋肉の状態に基づいて、アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの第1入力範囲を決定する第1範囲決定部として機能する。
【0037】
また、エネルギー範囲決定部112は、第1入力範囲と、状態検出部134による検出結果とに基づいて、アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの第2入力範囲を決定する第2範囲決定部として機能する。なお、エネルギー範囲決定部112は、第2特定部によって特定された筋肉の状態に基づいて、アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの入力範囲を決定してもよい。エネルギー範囲決定部112は、決定した入力範囲をアシスト対象者の識別情報と対応付けて記憶部(対象者情報格納部)120に記憶させてもよい。
【0038】
エネルギー範囲決定部112は、状態検出部134による検出結果が、アシスト装置200によるアシストの条件を満たさない場合、「アシストに不適」と判定し、アシスト装置200によるアシストを行わせないようにしてもよい。例えばエネルギー範囲決定部112は、状態検出部134の検出結果に基づいて決定された筋肉の状態を筋状態特定部111の第2特定部から取得し、この筋肉の状態に基づいて第2入力範囲がアシストの条件を満たさない場合、「アシストに不適」と判定してもよい。この場合、エネルギー範囲決定部112は、例えば、第1入力範囲と第2入力範囲を比較(クロスチェック)し、これら範囲の最小値や最大値の乖離(差分)が所定値未満であることを条件としてアシストの可否を判定してもよい。即ち、エネルギー範囲決定部112は、第1入力範囲と第2入力範囲における最小値の乖離及び最大値の乖離の少なくとも一方が所定値未満でない場合に「アシストに不適」と判定してもよい。
【0039】
≪第1スクリーニング部≫
図3は、筋肉状態診断システム100の機能ブロック図である。筋状態特定部111の第1特定部1111とエネルギー範囲決定部112の第1範囲決定部1121は、第1スクリーニング部を構成する。第1スクリーニング部の第1特定部1111は、アシスト対象者の年齢、性別、体格、人種といった身体情報から筋肉量や筋質といった筋肉の状態を推定する。筋肉量は、例えば筋肉の総重量や、身体全体に対するアシスト対象部位の筋肉の質量割合、アシスト部位に電気信号を流した際の抵抗値(生体インピーダンス)、筋肉の断面積などで示される。筋質は、アシスト部位に電気信号を流した際に入力側と出力側とで生じる位相差、又は筋肉のCT(Computed Tomography)画像において水や空気を基
準とした筋肉部分の濃度(CT値)等で示される。
【0040】
図4は、大腿四頭筋の断面積と年齢との関係を示す図、
図5は、大腿四頭筋のCT値と年齢との関係を示す図である。
図4及び
図5において、線M1は男性の値、線W1は女性の値を示している。
図4及び
図5に示すように、筋肉量や筋質は年齢との相関関係がある。この相関関係を示すデータテーブルや関係式は、性別や人種等の身体情報毎に、実験等によって求められ、記憶部120に記憶される。なお、
図4,
図5の相関関係は、一例であり、これに限定されるものではない。
【0041】
そして、第1特定部1111は、年齢、性別、人種などの身体情報が入力された場合に、これら身体情報と対応する筋肉量や筋質を記憶部120の相関関係から特定する。体重及び身長、又はBMI値などの体格を示す身体情報についても、
図4及び
図5と同様に筋肉量や筋質との相関関係があり、第1特定部1111は、当該相関関係から体格と対応する筋肉量や筋質を特定することができる。
【0042】
第1範囲決定部1121は、第1特定部1111によって身体情報から特定された筋肉の状態(筋肉量や筋質)に基づいて、アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの第1入力範囲を決定する。
図6は、筋肉量と入力範囲の対応関係を示す図である。なお、
図6の相関関係は、一例であり、これに限定されるものではない。
図6に示すように、筋肉量は入力範囲との相関関係がある。この相関関係を示すデータテーブルや関係式は、予め実験等によって求められ、記憶部120に記憶される。そして、第1範囲決定部1121は、第1特定部1111によって筋肉量が特定された場合に、この筋肉量と対応する入力範囲を記憶部120の相関関係から求め、第1の入力範囲とする。更に、第1範囲決定部1121は、
図6の相関関係から求めた第1の入力範囲の最小値を筋質に応じて補正してもよい。例えば筋質が高い場合、電気刺激に対して敏感に反応するので、最小値を低く補正する。一方、筋質が低い場合、最小値を高く補正する。なお、筋質は、連続した値に限らず、筋質の値に応じて複数段階のグレードに区分されたものであってもよい。
【0043】
図7は、筋肉に供給(入力)される電気エネルギーの範囲と、この電気エネルギーによる筋肉の運動量(追随量)の関係を示すグラフである。
図7の横軸は、入力される電気エネルギーの値を示し、縦軸は筋肉の追随量(出力)の値を示す。
図7において、符号W0は、標準的な筋肉量で且つ標準的な筋質である場合に特定される入力範囲を示し、符号A0は、入力範囲W0に対応する追随量の範囲を示す。また、符号W1は、入力範囲W0と比べて筋肉量が多く、且つ筋質が同じ(標準的な)場合に特定される入力範囲を示し、符号A1は、入力範囲W1に対応する追随量の範囲を示す。このように、筋肉量が多い場合、標準的な筋肉量の場合と比べ、入力範囲と追随量が共に高くシフトする。
【0044】
また、符号W2は、入力範囲W1と筋肉量が同じであって、且つ筋質が入力範囲W0,W1より高い場合に特定される入力範囲を示し、符号A2は、入力範囲W2に対応する追随量の範囲を示す。このように、入力範囲W1と比べて筋肉量が同じで筋質が高い筋肉の場合、入力範囲W2の最小値が入力範囲W1より低くなる。なお、入力範囲W2と入力範囲W1のように、筋肉量が同じであれば、筋肉に電気信号を流すときの抵抗値も同じになり、電気信号によって損傷を受けない範囲の上限も同じであるため、入力範囲の上限は同じになる。即ち、第1入力範囲の最大値は、筋質によって補正されなくてよい。
【0045】
≪第2スクリーニング部≫
筋状態特定部111の第2特定部1112とエネルギー範囲決定部112の第2範囲決定部1122は、第2スクリーニング部を構成する。第2スクリーニング部の第2特定部1112は、状態検出部134によって検出した対象部位の筋肉に係る情報(検出結果)に基づいて、アシスト対象である筋肉の筋肉量、筋質、及び疲労度の少なくとも一つを筋肉の状態として特定する。第2特定部1112で特定される筋肉量及び筋質は、第1特定
部1111で特定される筋肉量及び筋質と同じ性質の情報であるが、第1特定部1111で特定される筋肉量及び筋質は身体情報から推定されたものであるのに対し、第2特定部1112で特定される筋肉量及び筋質は、状態検出部134によって実測された筋肉の情報に基づいて直接的に求められた現時点の筋肉の状態を示すものである。
【0046】
図8は、状態検出部134の構成を示す図である。状態検出部134は、電極341、信号処理部342、及び引出線340を備えている。電極341は、アシスト対象者のアシスト部位に取り付けられる。また、電極341は、ベルトによってアシスト部位に保持されてもよい。更に、電極341は、アシスト対象者の衣服に取り付けられ、アシスト対象者が当該衣服を着用することで電極341がアシスト部位に配置される構成でもよい。この場合も、電極341は衣服によってアシスト部位に保持されるので、電極341がアシスト対象者に取り付けられているものとする。
【0047】
状態検出部134の信号処理部342は、引出線340及び電極341を介してアシスト部位の筋肉へ電気信号を送信する。また、信号処理部342は、引出線340及び電極341を介して、アシスト部位の筋肉を経た電気信号を受信し、筋肉の電気抵抗値(生体インピーダンス)や位相差などの値を当該筋肉に係る情報として検出し、制御部110に入力する。即ち、信号処理部342は、アシスト部位の筋肉に電気信号を流したときの当該筋肉の反応を検出する。また、状態検出部134は、アシスト部位の筋肉に電気信号を流したときの音や振動、熱、心拍数などの値を当該筋肉に係る情報として検出するセンサを備えてもよい。また、状態検出部134は、アシスト対象者が、立ち上がる、腕を上げる、歩く、走るなどの動作を行った際に、アシスト対象部位の筋肉で生じる電気信号を電極341及び引出線340を介して検出してもよい。
【0048】
[生体電気インピーダンスの測定]
アシスト対象部位を構成する組織のうち、脂肪組織は電気が流れにくいのに対し、電解質を多く含む筋肉組織は電気を流しやすい。また、筋肉組織は、その太さ(断面積)により電気の通りやすさ(電気抵抗値)が異なり、断面積が大きいほど電気抵抗値が低く、断面積が小さいほど電気抵抗値は高くなる。このため、状態検出部134は、アシスト対象部位の筋肉に微弱な電気信号を流し、このときの電気抵抗値を測定することで、筋肉の量を検出できる。
【0049】
[位相差の測定]
アシスト対象部位の筋肉に電気信号を流す場合、細胞膜が電荷を蓄積することによってコンデンサのように働き、電気信号に位相差が生じる。この位相差は、筋肉の密度が高く、筋質が高い場合に差が大きくなり、筋肉の密度が低く、筋質が低い場合に差が小さくなる。このため、状態検出部134は、アシスト部位に電気信号を流した際に入力側と出力側とで生じる位相差を測定することで、筋質を検出できる。
【0050】
[疲労度の測定]
筋肉が疲労すると、刺激に対する反応が遅くなることから、筋肉に電気刺激を与えた時の筋肉の収縮によって生じる電気信号の周波数が低下する。このため、状態検出部134は、電気信号(入力信号)を電気刺激としてアシスト部位に与え、これにより筋肉が収縮した際の筋電位の変化を電気信号(出力信号)として検出し、入力信号と出力信号を比較して周波数の変化量を測定することで、筋肉の疲労度を検出できる。
【0051】
また、筋肉が疲労して「むくみ」が生じ筋肉中に水分が溜まると、筋肉の生体インピーダンスが低下する。このため、状態検出部134は、アシスト対象部位の筋肉に微弱な電気信号を流し、このときの生体インピーダンスを測定し、疲労していないときの生体インピーダンスと比較して、その差分(変化量)によって筋肉の変化量を検出できる。
【0052】
また、筋肉は収縮すると長軸方向において短縮し、側方へ膨大する。この側方膨大(lateral expansion)は一種の圧波(pressure wave)を発生させ、それが皮下組織を伝搬して体表面を振動させることで「筋音」が発生する。このため、状態検出部134は、電気信号(入力信号)を電気刺激としてアシスト部位に与え、これにより筋肉が収縮した際の筋音をマイクロフォンや振動センサで検出し、筋音の値から筋肉の疲労度を検出できる。
【0053】
第2スクリーニング部の第2範囲決定部1122は、状態検出部134によって検出した筋肉量及び筋質から、前述の第1範囲決定部1121と同様に第2入力範囲を決定することができる。そして、第2範囲決定部1122は、この第2入力範囲を疲労度に応じて補正しても良い。例えば筋肉が疲労すると、刺激に対する反応が鈍くなる。このため第2範囲決定部1122は、疲労度が高いほど第2入力範囲の最小値を高く補正すると共に最大値を低く補正してもよい。
【0054】
このように第2スクリーニング部は、各ユーザの現在の筋肉の状態に適する第2入力範囲を決定できる。
【0055】
≪アシスト装置≫
アシスト装置200は、制御部210、記憶部220、入出力部230、電力供給部240、及び刺激付与部2Aを備える(
図1)。制御部210は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)などのプロセッサ、およびRAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)などの主記憶部を備える。
【0056】
記憶部(補助記憶部)220は、RAM等の揮発性メモリ、ROM等の不揮発性メモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、ハードディスクドライブ(HDD、Hard Disk Drive)、又はリムーバブルメディアなどの記憶媒体から構成される。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、または、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、またはBD(Blu-ray(登録商標)Disc)のようなディスク記録媒体である。また、外部から装着可能なメモリカード等のコ
ンピュータ読み取り可能な記録媒体を用いて記憶部220を構成してもよい。
【0057】
記憶部220には、アシスト装置200の動作を実行するための、オペレーティングシステム(Operating System:OS)、各種プログラム、各種データテーブル、各種データベース、設定データ、ユーザデータなどが記憶可能である。
【0058】
入出力部230は、制御部210への情報の入力や、制御部210からの情報の出力を行う。入出力部230は、キーボードや、タッチパネル、操作ボタンなど、制御部210へ情報を入力する入力手段(入力部)231を有してもよい。また、入出力部230は、表示装置や、インジケータ、スピーカ、バイブレータ、プリンタなど、ユーザに対して情報を出力する出力手段232を有してもよい。入出力部230は、通信回線を介して、他の装置からの情報の入力(受信)、及び他の装置への情報の出力(送信)を行う通信ユニット(CCU)233を有してもよい。入出力部230は、筋肉状態診断システム100と入力手段(入力部)131及び出力手段132を共用し、入力手段231及び出力手段232を省略してもよい。
【0059】
また、入出力部230は、アシスト対象者の状態を検出するセンサ234を有してもよい。センサ234は、例えば、加速度センサ、ジャイロセンサ、測位装置、カメラ等である。センサ234は、アシスト対象者が立ち上がろうとしたときの動きや、転倒した場合の姿勢変化を検出する。
【0060】
更に、アシスト装置200は、アシスト部位の筋肉に電気刺激を与える刺激付与部2Aを有している。刺激付与部2Aは、制御部210に制御され、指定のエネルギー量の電気信号(電気刺激)をアシスト部位の筋肉に供給(入力)する。
【0061】
電力供給部240は、制御部210や刺激付与部2Aと接続し、制御部210の制御に応じて刺激付与部2Aへ電力を供給する。
【0062】
制御部210は、記憶部220に記憶されたプログラムを主記憶部の作業領域に読み出して実行し、各構成部等を制御することで、所定の機能部、例えば、ユーザ情報取得部212、制御決定部215、及び刺激制御部216として機能する。なお、これらの機能部は、プログラム(ソフトウェア)に基づいて実現されるものに限らず、その一部又は全部が、プロセッサ、集積回路、及び論理回路等のハードウェア回路により構成されてもよい。
【0063】
ユーザ情報取得部212は、センサ234から、ユーザの動きや姿勢を示す情報を取得する。
【0064】
制御決定部215は、ユーザ情報取得部212で取得したユーザの動きや姿勢に基づいてアシストを行うことやアシスト量を決定する。例えば制御決定部215は、ユーザが座っている状態から立ち上がろうとして動き始めたことを検出した場合に、アシストを行うと決定する。また、制御決定部215は、ユーザ情報取得部212でユーザが歩いているときの振動を周期的に検出した場合、この周期に合わせたタイミングでアシストを行うように決定する。アシスト量は、所定範囲(出力範囲、例えば第2範囲決定部で決定した範囲内)の最小値から最大値までの間で決定される。例えば、最小値から最大値までの範囲を複数段階(レベル)に区分し、10段(最大値)中の7段などのように、ユーザ自身で設定した段数によってアシスト量を調整してもよい。また、アシスト量は、アシスト部位に応じて予め設定されてもよいし、ユーザの動きや姿勢に応じて制御決定部215が決定してもよい。例えば、制御決定部215は、アシスト対象部位が大腿部であればアシスト量を8段、脹ら脛であればアシスト量を4段などのように設定してもよい。制御決定部215は、アシストを行うと決定した場合、刺激制御部216にアシストを行うこと及びアシスト量を通知する。更に、ユーザの右足と左足のように、アシスト部位が複数ある場合、制御決定部215は、アシストを実行するアシスト部位を指定する情報を刺激制御部216に通知する。
【0065】
刺激制御部216は、筋肉状態診断システム100からユーザ毎の入力範囲を取得し、制御決定部215からアシストの通知を受けた際、制御決定部215から通知されたアシスト量に対応する入力範囲の値を電気信号のエネルギー量として決定する。例えば、刺激制御部216は、入力範囲の最小値から最大値までの値(入力値)を出力範囲と同じ段数に区分し、通知されたアシスト量と同じ段数の入力値を電気信号のエネルギー量とする。即ち、刺激制御部216は、通知されたアシスト量(出力)が10段階中の10段(最大値)の場合、入力範囲を10段階に区分したときの同じ段数(10段)の値(最大値)を電気信号のエネルギー量とする。同様に、刺激制御部216は、通知されたアシスト量が例えば3段であれば、入力範囲において同じ3段に区分した入力値を電気信号のエネルギー量とする。そして、刺激制御部216は、このエネルギー量を指定する情報を含む制御信号を刺激付与部2Aへ送信し、制御信号に応じた電気刺激を発生させて、アシスト対象部位の筋肉に供給する。
【0066】
≪アシスト量診断方法≫
図9は、筋肉状態診断システム100の制御部110が実行する起動時処理を示す図で
ある。アシストシステム1の電源が投入された場合や、ユーザによって動作の開始が指示された場合に制御部110は、
図9の処理を実行する。
【0067】
ステップS10にて、制御部110は、ユーザの識別情報を取得する。ユーザの識別情報は、ユーザが入力手段131から入力してもよいし、通信ユニット133がユーザの持つICタグやスマートフォンから取得してもよい。なお、アシストシステム1が特定のユーザにのみ使用される場合、ステップS10は省略されてもよい。
【0068】
ステップS20にて、制御部110は、ステップS10で取得したユーザの識別情報と対応する登録情報が記憶部(対象者情報格納部)120に格納されているか否かを判定する。なお、アシストシステム1が特定のユーザにのみ使用される場合には、単に登録情報が記憶部(対象者情報格納部)120に格納されているか否かを判定してもよい。ステップS20において否定判定であれば、制御部110は、ステップS30へ移行してアシスト量の診断処理を実行し、後述のように入力範囲を決定してアシスト装置200へ送信し、アシスト処理を開始させる。一方、ステップS20において肯定判定であれば、制御部110は、ステップS40へ移行し、登録情報(入力範囲)を記憶部120から読み出してアシスト装置200へ送信し、アシスト処理を開始させる。
【0069】
なお、登録情報の有効期間を定め、ステップS20において登録されている情報が古く、有効期間内の登録情報が無い場合に、制御部110は、否定判定してステップS30の診断処理を実行してもよい。
【0070】
図10は、筋肉状態診断システム100の制御部110が実行する処理を示す図である。
図10の処理は、
図9のステップS30で行われる処理である。
【0071】
ステップS110(身体情報入力ステップ)にて、制御部110は、ユーザの身体情報を取得する。例えばユーザがキーボードやタッチパネル等の入力手段131を操作して身体情報を入力することで、この入力された身体情報を制御部110が取得しても良い。また、身体情報を記憶部120に記憶させておき、制御部110が記憶部120から読み出すことで取得しても良い。
【0072】
ステップS120(筋状態特定ステップ・第1特定ステップ)にて、制御部110は、ステップS110で取得した身体情報に基づいて筋肉の状態(筋肉量・筋質等)を推定する。
【0073】
ステップS130(エネルギー範囲決定ステップ)にて、制御部110は、ステップS120で特定した筋肉の状態に基づいて第1入力範囲を決定する。
【0074】
ステップS140にて、制御部110は、ステップS130で決定された第1入力範囲に基づいてアシストが可能か否かを判定する。例えば、制御部110は、ユーザの年齢が高すぎる或は体重が重すぎるなど、身体情報が相関関係から外れて第1入力範囲が求められない場合に否定判定し、
図10の処理を終了する。また、制御部110は、第1入力範囲の最小値が所定値より高い或は最大値が所定値より低いなど、第1入力範囲がアシストに適した範囲から外れている場合に否定判定してもよい。一方、制御部110は、第1入力範囲が求められ、第1入力範囲が所定範囲(アシスト可能な範囲)内である場合に肯定判定し、ステップS150へ移行する。
【0075】
ステップS150(入力ステップ)にて、制御部110は、状態検出部134の検出結果を取得する。ステップS160(第2特定ステップ)にて、制御部110は、状態検出部134の検出結果に基づいて、筋肉の状態(筋肉量・筋質・疲労度等)を特定する。
【0076】
ステップS170にて、制御部110は、ステップS160で特定した筋肉の状態に基づいて第2入力範囲を決定する。
【0077】
ステップS180にて、制御部110は、ステップS170で決定した第2入力範囲に基づいてアシストが可能か否かを判定する。例えば、制御部110は、第1入力範囲と第2入力範囲とを比較(クロスチェック)して、第2入力範囲と第1入力範囲との乖離が所定値以上である場合に、否定判定し、
図10の処理を終了する。一方、制御部110は、第2入力範囲と第1入力範囲との乖離が所定値未満の場合、肯定判定する。
【0078】
また、制御部110は、今回のステップS170で決定した第2入力範囲と記憶部120から読み出した前回の第2入力範囲とを比較し、これらの乖離が所定値以上である場合に否定判定し、そうでなければ肯定判定する。
【0079】
ステップS190にて、制御部110は、第1入力範囲及び第2入力範囲に基づいて、入力範囲を決定する。例えば、第2入力範囲の最小値や最大値が第1入力範囲のものより高い場合、第2入力範囲の最小値や最大値を低く補正し、ステップS190における入力範囲を決定する。即ち、ノイズの影響や測定誤差等の影響を考慮し、年齢等によって求められる一般的な値(第1入力範囲)から外れている場合に、一般的な値に近づけるように補正する。ノイズや測定誤差等の影響がなければ、第2入力範囲をステップS190における入力範囲に設定してもよい。
【0080】
ステップS200にて、制御部110は、ステップS190で決定した入力範囲をアシスト装置200へ通知してアシストを行わせる。
【0081】
≪アシスト処理≫
図11は、アシスト装置200の制御部210が実行するアシスト処理を示す図である。制御部210は、
図9のステップS40や
図10のステップS200で筋肉状態診断システム100から送信された入力範囲を受信した場合に、
図11の処理を実行する。
【0082】
ステップS310にて、制御部210は、センサ234から、ユーザの動きや姿勢等を示す情報を取得する。なお、ユーザに向かって移動してくる物体の情報など、ユーザの周囲の情報もユーザの情報として取得してもよい。
【0083】
ステップS320にて、制御部210は、ユーザ情報取得部212で取得したユーザの動きや姿勢に基づいてアシストを行うか否かを判定する。ステップS320で否定判定であれば、制御部210は、ステップS310に戻ってユーザ情報の取得と、アシストを行うか否かの判定(S320)を繰り返す。ステップS320で肯定判定した場合、制御部210は、ステップS330へ移行する。
【0084】
ステップS330にて、制御部210は、ユーザの動きやアシスト対象部位などに応じてアシスト量を決定する。ステップS340にて、制御部210は、筋肉状態診断システムから取得した入力範囲に基づき、ステップS330で決定されたアシスト量と対応する電気信号のエネルギー量を決定する。
【0085】
ステップS350にて、制御部210は、電気信号のエネルギー量を示す制御信号を刺激付与部2Aに送信し、制御信号に応じた電気刺激をアシスト対象部位の筋肉に供給させ、当該筋肉の動きをアシストする。
【0086】
≪実施形態の効果≫
上述のように、本実施形態のアシストシステム1は、アシスト対象である筋肉の状態を特定し、この筋肉の状態に基づいて、アシスト装置200からアシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの入力範囲を決定することにより、個人差によるアシスト量のバラつきを考慮して、適切にアシストすることができる。
【0087】
また、アシストシステム1は、第1スクリーニング部により、対象者の身体的な情報に基づいて筋肉の状態を特定し、この筋肉の状態に基づいて、筋肉へ供給する電気エネルギーの第1入力範囲を決定する。これにより簡易な構成で適切なアシスト量を得ることができる。
【0088】
アシストシステム1は、状態検出部134による検出結果に基づいて、対象者の筋肉の状態を特定し、この筋肉の状態に基づいて、アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの第2入力範囲を決定する。これにより、第1入力範囲と第2入力範囲とをクロスチェックして、誤入力や誤検知の影響を排除できるので、信頼性を向上させることができる。
【0089】
<第二実施形態>
図12は、第二実施形態に係る筋肉状態診断システム100の機能ブロック図である。本実施形態のアシストシステム1は、前述の第一実施形態と比べて、筋肉状態診断システム100が、第三スクリーニング部を備えた構成が異なっており、その他の構成は同じである。このため、同一の要素に同符号を付すなどして、再度の説明を省略している。
【0090】
制御部110は、記憶部120に記憶されたアプリケーションプログラム(コンピュータプログラム)を主記憶部の作業領域に読み出して実行し、記憶部120、入出力部130、及び通信部140などの構成部を制御することで、所定の機能部、例えば、筋状態特定部111、エネルギー範囲決定部112、及び追随量取得部113として機能する。即ち、本実施形態の筋肉状態診断システム100は、前述の筋状態特定部111、エネルギー範囲決定部112に加えて、追随量取得部113(第3スクリーニング部)としても機能する。
【0091】
追随量取得部113は、アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの値をエネルギー範囲決定部112で決定された最小値と最大値との間で連続的に変化させて、アシスト対象の筋肉へ電気エネルギーを供給し、この電気エネルギーに応じて筋肉が動いた量を追随量として取得する。例えば、追随量取得部113は、アシスト装置200へ制御信号を送ることで、アシスト装置200の刺激付与部2Aから筋肉へ供給する電気エネルギーの値を決定された入力範囲内で連続的に変化させてもよい。
【0092】
追随量取得部113は、前述の疲労度の測定と同様に、電気刺激によって筋肉が動いた際の筋電位の変化や筋音を状態検出部134で検出し、この筋電位の変化や筋音の値に応じて追随量を求めてもよい。また、追随量取得部113は、電気刺激を与えたときのアシスト部位の動きをカメラで撮影し、撮影画像を画僧処理することによりアシスト部位が動いた量を求めて追随量としてもよい。
【0093】
前述の実施形態では、筋肉状態診断システム100で決定した入力範囲と、アシスト部位のアシスト範囲(出力範囲)とを複数段階(レベル)に区分し、目的のアシスト量と同じ段数の入力値をアシスト対象の筋肉へ供給する電気信号のエネルギー量とした。しかしながら、電気信号の入力値と、この電気信号によって筋肉が動く量(追随量又はアシスト量)は、正比例するとは限らない。
【0094】
図13は、筋肉に供給(入力)される電気エネルギーと、この電気エネルギーによる筋肉の運動量(追随量)との対応関係を示すグラフである。
図13の横軸は、入力される電
気エネルギーの値を示し、縦軸は筋肉の追随量(出力)の値を示す。
図13において、符号E1、E2は、入力量と出力量との対応関係の一例である。
図13に示すように、入力量と出力量との対応関係E1、E2は、ユーザ毎に異なっている。このため、追随量取得部113は、アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの値(入力値)を連続的に変化させて、アシスト対象の筋肉へ電気エネルギーを供給し、この電気エネルギーに応じて筋肉が動いた量を追随量(出力値)として取得し、この入力値と出力値の対応関係を求める。そして、追随量取得部113は、この対応関係をアシスト装置200へ送信し、この対応関係に基づいて、アシスト装置200からアシスト部位の筋肉へ供給する電気信号のエネルギー量を決定させる。
【0095】
図14A,
図14Bは、第二実施形態に係る筋肉状態診断システム100の制御部110が実行する処理を示す図である。
図14A,
図14Bの処理は、
図9のステップS30で行われる処理である。なお、
図14A,
図14Bにおいて、ステップS110からステップS190までは前述の実施形態と同じである。
【0096】
ステップS210において、制御部210は、ステップS190で決定された入力範囲に基づいて、アシスト対象の筋肉へ供給する電気信号のエネルギー量を決定し、このエネルギー量の電気信号を供給するように制御信号を生成して、アシスト装置200へ送信する。これにより、アシスト装置200の刺激付与部2Aが、当該制御信号に基づき指定のエネルギー量でアシスト部位の筋肉へ電気エネルギーを供給する。
【0097】
ステップS220において、制御部210は、ステップS210で供給させた電気信号によって、アシスト部位が動いた量(追随量)を状態検出部134によって検出する。
【0098】
ステップS230(追随量取得ステップ)において、制御部210は、ステップS210で供給した電気エネルギーの入力値と、ステップS220で検出した筋肉の追随量(出力値)とを対応付けて記憶部120へ記憶させる。
【0099】
ステップS240において、制御部210は、追随量の検出が完了したか否かを判定する。制御部210は、追随量の検出が完了していないと判定(否定判定)した場合、ステップS210へ戻る。ステップS210へ戻った制御部210は、アシスト対象の筋肉へ供給する電気信号のエネルギー量を変え、このエネルギー量の電気信号を供給するように制御信号を生成して、アシスト装置200へ送信する。このように、供給する電気信号のエネルギー量を変えながらステップS210~S240を繰り返すことで、入力範囲の最小値から最大値まで変化させた入力値と、追随量(出力値)との関係(以下、入出力特性とも称す)を取得する。
【0100】
そして、制御部210は、入力範囲の最小値から最大値にかけて追随量(出力値)の取得が完了し、ステップS240で肯定判定した場合、ステップS250へ移行し、ステップS240で取得した入出力特性をアシスト装置200へ送信する。
【0101】
図15は、第二実施形態に係るアシスト装置200の制御部210が実行するアシスト処理を示す図である。
図15において、ステップS310~S330は前述の実施形態と同じである。
【0102】
ステップS345にて、制御部210は、筋肉状態診断システム100から取得した入出力特性に基づき、ステップS330で決定したアシスト量と対応する電気信号のエネルギー量を決定する。
【0103】
ステップS350にて、制御部210は、ステップS345で決定したエネルギー量を
示す制御信号を生成して、刺激付与部2Aに送信し、制御信号に応じた電気刺激をアシスト対象部位の筋肉に供給させ、当該筋肉の動きをアシストする。
【0104】
上述のように、本実施形態によれば、アシスト対象の筋肉へ供給する電気エネルギーの値をエネルギー範囲決定部112で決定された入力範囲内で連続的に変化させて、アシスト対象の筋肉へ供給し、これに応じて動いた筋肉の運動量を追随量として取得し、電気エネルギーの入力値と出力値(追随量)の対応関係(入出力特性)を取得する。そして、この入出力特性に基づいてアシストを行わせる。これにより、目的のアシスト量となる入力値を精度良く求められるようにし、個人差によるアシスト量のバラつきを考慮して、アシスト装置200による適切なアシストを可能にすることができる。例えば
図13で示すE1とE2をそれぞれ個人ごとの追随量のばらつきと考えると、出力の飽和量から判断しE1ではAの範囲を、E2ではBの範囲を入力特性とみなすことができる。
【0105】
<第三実施形態>
図16は、第三実施形態に係るアシストシステム1の概略構成を示す図である。本実施形態のアシストシステム1は、前述の第一実施形態と比べて、アシスト対象者の上半身に装着する構成が異なっており、その他の構成は同じである。このため、同一の要素に同符号を付すなどして、再度の説明を省略している。
【0106】
本実施形態では、アシスト対象者が装着する専用服(スーツ)4に、アシストシステム1の筐体20及び電極3B21~3B30が設けられている。電極3B21~3B30は、前述の実施形態と同様に例えば粘着性のシートによって服4の内面に張り付けられていると共に、服4を着たユーザの皮膚に貼り付けられる。
図16の例では、電極3B21,3B22が左上腕と接し、電極3B23,3B24が右上腕と接し、電極3B25,3B26が胸と接するように配置されている。また、電極3B27,3B28が背中の右側部分と接し、電極3B29,3B30が背中の左側部分と接するように配置されている。各電極3B21~3B30は、それぞれコード(引出線)を介して筋肉状態診断システム100及びアシスト装置200と接続されている。各電極3B21~3B30及び筐体20は、服4に対して着脱可能となっており、電極3B21~3B30及び筐体20を取り外すことで服4を洗濯することができる。各電極3B21~3B30のコードは、カプラ3B3に接続され、カプラ3B3を筐体20側のカプラ309と接続することで、複数の電極3B21~3B30を一括して筐体20に接続させることができる。これにより各電極3B21~3B30と、筋肉状態診断システム100及びアシスト装置200との接続の間違いを防止でき、確実にアシスト対象者の所定部位に刺激を与えることができるようにしている。
【0107】
アシスト装置200は、センサ234によって検出したユーザの状態に基づいて、アシスト対象者が転倒すると予測した場合や衝突すると予測した場合に、電極3B21~3B30の少なくともいずれかを動作させ、ユーザに電気刺激を与えてユーザの姿勢を制御する。例えば、上腕と接した電極3B21~3B24に電流を流すと、腕を縮めて、腕が体の方に引っ張られるように動く。これによりユーザが衝撃に備えた姿勢をとるように制御する。
【0108】
このように本実施形態のアシストシステム1は、ユーザの上半身の筋肉をアシスト対象部位とし、これら筋肉の動きをアシストできる。この場合でも前述の第一実施形態や第二実施形態と同様にユーザへ供給する電気信号のエネルギー量を適切に設定でき、アシスト装置200による適切なアシストを可能にすることができる。
【0109】
以上、本開示に係るアシストシステム1の実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることが
できる。また本実施形態のアシストシステム1によるユーザの体の動きのサポートは、危険回避の目的や、高齢者などの歩行支援や姿勢変更の際の支援目的に用いる言ことができる。
【符号の説明】
【0110】
1 :アシストシステム
2A :刺激付与部
3B21~3B30:電極
3B3 :カプラ
4 :服
20 :筐体
100 :筋肉状態診断システム
110 :制御部
111 :筋状態特定部
112 :エネルギー範囲決定部
113 :追随量取得部
120 :記憶部
130 :入出力部
131 :入力手段
132 :出力手段
133 :通信ユニット
134 :状態検出部
140 :通信部
200 :アシスト装置
210 :制御部
212 :ユーザ情報取得部
215 :制御決定部
216 :刺激制御部
220 :記憶部
230 :入出力部
232 :出力手段
233 :通信ユニット
234 :センサ
240 :電力供給部
309 :カプラ
340 :引出線
341 :電極
342 :信号処理部
1111 :第1特定部
1112 :第2特定部
1121 :第1範囲決定部
1122 :第2範囲決定部