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特開2024-7418感光性樹脂組成物、樹脂膜、硬化物、隔壁、有機電界発光素子、波長変換層、ディスプレイ、硬化物の製造方法及び隔壁の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007418
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、樹脂膜、硬化物、隔壁、有機電界発光素子、波長変換層、ディスプレイ、硬化物の製造方法及び隔壁の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20240110BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240110BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20240110BHJP
   H10K 59/173 20230101ALI20240110BHJP
   H10K 85/10 20230101ALI20240110BHJP
   H10K 71/12 20230101ALI20240110BHJP
   H10K 71/40 20230101ALI20240110BHJP
   H10K 71/20 20230101ALI20240110BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20240110BHJP
   H10K 50/115 20230101ALI20240110BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/004 505
H10K59/122
H10K59/173
H10K85/10
H10K71/12
H10K71/40
H10K71/20
H05B33/14 Z
H10K50/115
G02B5/20 101
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104295
(22)【出願日】2023-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2022104983
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023088958
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】服部 啓太
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】兼子 譲
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
3K107
【Fターム(参考)】
2H148AA01
2H148AA11
2H148BC06
2H148BE03
2H148BE09
2H148BE13
2H148BE22
2H148BE36
2H148BF16
2H148BG06
2H148BH02
2H225AC21
2H225AC36
2H225AC42
2H225AC43
2H225AC47
2H225AC49
2H225AC54
2H225AC79
2H225AC80
2H225AD06
2H225AN39P
2H225AN95P
2H225AN98P
2H225AP10P
2H225BA16P
2H225CA14
2H225CC01
2H225CC13
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC45
3K107DD89
3K107DD97
3K107FF14
3K107GG06
3K107GG11
3K107GG26
3K107GG28
(57)【要約】      (修正有)
【課題】相溶性が良好であり、撥液性の均一性が高い隔壁及び/又は光学濃度の均一性が高い隔壁を製造するための感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレン性不飽和化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、アルカリ可溶性樹脂(C)と、フッ素原子含有率が20~60質量%である含フッ素樹脂(D)、及び/又は、フッ素原子含有率が0質量%を超え、20質量%未満の含フッ素樹脂(D)からなる含フッ素樹脂(D)とを含有する感光性樹脂組成物であって、上記アルカリ可溶性樹脂(C)が、下記一般式(1)で表される構造を有するビスフェノール型エポキシ樹脂であることを特徴とする感光性樹脂組成物。

[式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状若しくは炭素数3の分岐状のアルキル基、炭素数1~3の直鎖状のパーフルオロアルキル基又は水素原子を表し、Zは1価の有機基又は水素原子を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和化合物(A)と、
光重合開始剤(B)と、
アルカリ可溶性樹脂(C)と、
フッ素原子含有率が20~60質量%である含フッ素樹脂(D)、及び/又は、フッ素原子含有率が0質量%を超え、20質量%未満の含フッ素樹脂(D)からなる含フッ素樹脂(D)とを含有する感光性樹脂組成物であって、
前記アルカリ可溶性樹脂(C)が、下記一般式(1)で表される構造を有するビスフェノール型エポキシ樹脂であることを特徴とする感光性樹脂組成物。
【化1】
[式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状若しくは炭素数3の分岐状のアルキル基、炭素数1~3の直鎖状のパーフルオロアルキル基又は水素原子を表し、Zは1価の有機基又は水素原子を表す。]
【請求項2】
さらに、着色顔料(E)を含有する請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルカリ可溶性樹脂(C)のフッ素原子含有率が10質量%以下である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率と、前記アルカリ可溶性樹脂(C)のフッ素原子含有率との差が15~60質量%である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記感光性樹脂組成物の全固形分に対する前記含フッ素樹脂(D)の含有量が0.01~40質量%である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(C)の含有量が、含フッ素樹脂(D)100質量部に対して1,000質量部以上、10,000質量部以下である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
さらに光ラジカル増感剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤及び重合禁止剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
隔壁の形成に用いられる、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物より得られる樹脂膜。
【請求項10】
請求項9に記載の樹脂膜を硬化させた硬化物。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化物から構成される隔壁。
【請求項12】
請求項11に記載の隔壁を備える有機電界発光素子。
【請求項13】
請求項11に記載の隔壁を備える波長変換層。
【請求項14】
請求項11に記載の隔壁を備えるディスプレイ。
【請求項15】
硬化物の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより樹脂膜とする成膜工程と、
前記樹脂膜に高エネルギー線を露光する露光工程とを含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項16】
隔壁の製造方法であって、
請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより樹脂膜とする成膜工程と、
前記樹脂膜に高エネルギー線を露光する露光工程とを含むことを特徴とする隔壁の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、樹脂膜、硬化物、隔壁、有機電界発光素子、波長変換層、ディスプレイ、硬化物の製造方法及び隔壁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ、マイクロLEDディスプレイ、量子ドットディスプレイ等の表示素子を製造する際、発光等の機能を有する有機層の形成方法としてインクジェット法が知られている。インクジェット法にはいくつか方法があり、具体的には、基板上に形成した凹凸を有するパターン膜の凹部にノズルより滴下したインクを固化する方法、又はインクに濡れる部位である親液部とインクを弾く部位である撥液部として、予め基板上に形成したパターン膜上にインクの液滴を滴下し、親液部にのみインクを付着させる方法などを挙げることができる。
【0003】
特に、前者に挙げたパターン膜の凹部にノズルから滴下したインクを固化させる方法において、このような凹凸を有するパターン膜を作製するため、主に2つの方法を採用できる。1つは、基板上に塗布した感光性レジスト膜の表面をパターン状に露光することで露光部と未露光部を形成し、いずれかの部位を現像液で溶解し除去するフォトリソグラフィ法であり、もう1つは印刷技術を用いるインプリント法である。
【0004】
形成した凹凸を有するパターン膜の凸部はバンク(隔壁)と呼ばれ、バンクはパターン膜の凹部にインクを滴下した際、インク同士が混じらないための障壁として働く。この障壁としての効果を高めるため、パターン膜凹部は基板表面が露出し、その基板表面はインクに対し親液性で、かつ、バンク上面はインクに対し撥液性であることが求められている。
【0005】
このようなバンクを形成するための樹脂として、含フッ素樹脂が撥インク剤として用いられている。含フッ素樹脂を用いることにより撥液性が向上する。
【0006】
特許文献1には、含フッ素樹脂を含むレジスト組成物として、下記式で表される単量体から形成される単量体単位を有し、フッ素原子含有率が7~35質量%である含フッ素樹脂(A)及び波長100~600nmの光に反応する感光性成分を含むレジスト組成物であって、当該レジスト組成物の全固形分に対する上記含フッ素樹脂(A)の割合は0.1~30質量%であり、上記感光性成分は光酸発生剤(B)と、カルボキシル基及び/又はフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂(C)と、酸の作用によりカルボキシル基又はフェノール性水酸基と反応し得る基を2個以上有する化合物である酸架橋剤(D)とを含むことを特徴とするレジスト組成物が開示されている。
CH=C(R)COOXRf1
(式中、Rは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基、Xは炭素数1~6の2価のフッ素原子を含まない有機基を示し、Rf1は、炭素数4~6のパーフルオロアルキル基を示す。)
【0007】
特許文献2には、フッ素原子を含む重合単位を含む撥インク剤として、水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換された炭素数20以下のアルキル基(ただし、上記アルキル基はエーテル性の酸素を有するものを含む。)を有する重合単位(b1)、およびエチレン性二重結合を有する重合単位(b2)を有する重合体からなり、フッ素含有量が5~25質量%で、数平均分子量が500以上10000未満であることを特徴とする撥インク剤が開示されている。
【0008】
特許文献3には、含フッ素樹脂を含むレジスト組成物として、下記式で表される単量体から形成される単量体単位を有し、エチレン性二重結合を有し、フッ素原子含有率が7~35質量%である含フッ素樹脂(A)及び波長100~600nmの光に反応する感光性成分を含むレジスト組成物であって、当該レジスト組成物の全固形分に対する上記含フッ素樹脂(A)の割合は0.1~30質量%であり、上記感光性成分は光ラジカル開始剤(E)と、1分子内に酸性基及び2個以上のエチレン性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(F)とを含むことを特徴とするレジスト組成物が開示されている。
CH=C(R)COOXRf1
(式中、Rは、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基、Xは炭素数1~6の2価のフッ素原子を含まない有機基を示し、Rf1は、炭素数4~6のパーフルオロアルキル基を示す。)
【0009】
特許文献4には、フッ素原子を有する撥インク剤を含むネガ型感光性樹脂組成物として、光硬化性を有するアルカリ可溶性樹脂またはアルカリ可溶性単量体(A)と、光ラジカル重合開始剤(B)と、光酸発生剤(C)と、酸硬化剤(D)と、フッ素原子を有する撥インク剤(E)とを含有するネガ型感光性樹脂組成物であって、上記撥インク剤(E)中の上記フッ素原子の含有率は1~40質量%であり、上記撥インク剤(E)はエチレン性二重結合を有することを特徴とするネガ型感光性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4474991号
【特許文献2】特許第4488098号
【特許文献3】特許第4905563号
【特許文献4】特許第6536578号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らが鋭意検討した結果、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤及びアルカリ可溶性樹脂を含む成分と、含フッ素樹脂とを混合して感光性樹脂組成物を調製する際、各成分が十分に相溶しない場合があり、そのような相溶性に劣る感光性樹脂組成物より得られるバンクは、撥液性及び/又は光学濃度が均一で無いことを見出した。
【0012】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものである。本開示の目的の1つは、相溶性が良好であり、撥液性の均一性が高い隔壁及び/又は光学濃度の均一性が高い隔壁を製造するための感光性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の問題点を鑑み、鋭意検討を行った。その結果、所定の構造を有するアルカリ可用性樹脂を用いることにより、感光性樹脂組成物の相溶性が良好になることを見出し本開示に至った。
【0014】
すなわち、本開示は次の通りである。
【0015】
本開示(1)の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、アルカリ可溶性樹脂(C)と、フッ素原子含有率が20~60質量%である含フッ素樹脂(D)、及び/又は、フッ素原子含有率が0質量%を超え、20質量%未満の含フッ素樹脂(D)からなる含フッ素樹脂(D)とを含有する感光性樹脂組成物であって、上記アルカリ可溶性樹脂(C)が、下記一般式(1)で表される構造を有するビスフェノール型エポキシ樹脂であることを特徴とする。
【0016】
【化1】
[式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状若しくは炭素数3の分岐状のアルキル基、炭素数1~3の直鎖状のパーフルオロアルキル基又は水素原子を表し、Zは1価の有機基又は水素原子を表す。]
【0017】
本開示の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(C)が、上記一般式(1)で表される構造を有するビスフェノール型エポキシ樹脂なので、感光性樹脂組成物の相溶性が良好となる。
【0018】
本開示(2)は、さらに着色顔料(E)を含有する本開示(1)に記載の感光性樹脂組成物である。
【0019】
本開示(3)は、上記アルカリ可溶性樹脂(C)のフッ素原子含有率が10質量%以下である、本開示(1)又は(2)に記載の感光性樹脂組成物である。
【0020】
本開示(4)は上記含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率と、上記アルカリ可溶性樹脂(C)のフッ素原子含有率との差が15~60質量%である、本開示(1)~(3)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物である。
【0021】
本開示(5)は上記感光性樹脂組成物の全固形分に対する上記含フッ素樹脂(D)の含有量が0.01~40質量%である、本開示(1)~(4)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物である。
【0022】
本開示(6)は上記感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(C)の含有量が、含フッ素樹脂(D)100質量部に対して1,000質量部以上、10,000質量部以下である本開示(1)~(5)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物である。
【0023】
本開示(7)はさらに光ラジカル増感剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤及び重合禁止剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、本開示(1)~(6)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物である。
【0024】
本開示(8)は隔壁の形成に用いられる、本開示(1)~(7)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物である。
【0025】
本開示(9)は本開示(1)~(8)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物より得られる樹脂膜である。
【0026】
本開示(10)は本開示(9)に記載の樹脂膜を硬化させた硬化物である。
【0027】
本開示(11)は本開示(10)に記載の硬化物から構成される隔壁である。
【0028】
本開示(12)は本開示(11)に記載の隔壁を備える有機電界発光素子である。
【0029】
本開示(13)は本開示(11)に記載の隔壁を備える波長変換層である。
【0030】
本開示(14)は本開示(11)に記載の隔壁を備えるディスプレイである。
【0031】
本開示(15)は硬化物の製造方法であって、本開示(1)~(8)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより樹脂膜とする成膜工程と、上記樹脂膜に高エネルギー線を露光する露光工程とを含むことを特徴とする硬化物の製造方法である。
【0032】
本開示(16)は隔壁の製造方法であって、本開示(1)~(8)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより樹脂膜とする成膜工程と、上記樹脂膜に高エネルギー線を露光する露光工程とを含むことを特徴とする隔壁の製造方法である。
【0033】
本開示の感光性樹脂組成物を用いることにより、撥液性及び/又は光学濃度の均一性が高い硬化物を製造することができる。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、相溶性が良好であり、撥液性均一性が高い隔壁及び/又は光学濃度の均一性が高い隔壁を製造するための感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示を詳細に説明する。本開示は以下の実施態様に限定されるものではなく、本開示の趣旨を損なわない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて適宜実施することができる。
なお本明細書において、「バンク」と「隔壁」とは同義語であり、別途注釈のない限り、インクジェット法における凹凸を有するパターン膜の凸部を意味する。
【0036】
本開示の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物(A)と、光重合開始剤(B)と、アルカリ可溶性樹脂(C)と、フッ素原子含有率が20~60質量%である含フッ素樹脂(D)、及び/又は、フッ素原子含有率が0質量%を超え、20質量%未満の含フッ素樹脂(D)からなる含フッ素樹脂(D)とを含有する感光性樹脂組成物であって、上記アルカリ可溶性樹脂(C)が、下記一般式(1)で表される構造を有するビスフェノール型エポキシ樹脂であることを特徴とする。
【0037】
【化2】
[式(1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素数1~3の直鎖状若しくは炭素数3の分岐状のアルキル基、炭素数1~3の直鎖状のパーフルオロアルキル基又は水素原子を表し、Zは1価の有機基又は水素原子を表す。]
【0038】
Rが炭素数1~3の直鎖状若しくは炭素数3の分岐状のアルキル基である場合、Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。なかでもメチル基が入手容易性の観点から好ましい。
炭素数1~3の直鎖状のパーフルオロアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基が挙げられる。なかでも、トリフルオロメチル基が入手容易性の観点から好ましい。
なお、各Rは、同一の構造であってもよく、異なる構造であってもよい。
【0039】
Zが1価の有機基である場合、Zは、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。当該炭素数1~10のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でも環状でも良い。当該炭素数1~10のアルキル基の少なくとも一つの水素原子は、カルボキシル基または水酸基によって置換されていてもよい。
当該炭素数1~10のアルキル基が有するカルボキシル基または水酸基は、エステル化剤と反応させても良い。エステル化剤は、酸ハロゲン化物、酸無水物、酸と縮合剤などが挙げられる。
Zが水素原子の場合、-O-Zをエステル化剤と反応させても良い。エステル化剤としては、前述と同様のエステル化剤を挙げることが出来る。
酸無水物としては、例えば、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水コハク酸、無水フタル酸、1,2,3,4-テトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。これらの酸無水物と反応させることにより、アルカリ可溶性樹脂にエチレン性不飽和結合や、カルボキシル基を導入することが出来る。
酸無水物と反応させるアルカリ可溶性樹脂中のカルボキシル基または水酸基の量は、アルカリ可溶性樹脂に必要なアルカリへの溶解性を考慮して、適宜調整すればよい。
【0040】
本開示の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(C)が、上記一般式(1)で表される構造を有するビスフェノール型エポキシ樹脂なので、感光性樹脂組成物の相溶性が良好となる。
【0041】
また、このような本開示の感光性樹脂組成物を用いて隔壁等を製造すると、撥液性及び/又は光学濃度の均一性が高い隔壁を製造することができる。
このような効果が得られる理由は、本開示の感光性樹脂組成物では、相溶性が良好であり、含フッ素樹脂(D)が斑なく混合されているためである。
【0042】
以下、本開示の感光性樹脂組成物の各成分について詳述する。
【0043】
<エチレン性不飽和化合物(A)>
本開示の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物(A)を含むので、光照射による感光性樹脂組成物の硬化が促進され、より短時間での硬化が可能となる。
エチレン性不飽和化合物(A)の具体例としては、多官能アクリレート(例えば、新中村化学工業株式会社製の製品名:A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、AD-TMP)、ポリエチレングリコールジアクリレート(例えば、新中村化学工業株式会社製の製品名:A-200、A-400、A-600)、ウレタンアクリレート(例えば、新中村化学工業株式会社製の製品名:UA-122P、UA-4HA、UA-6HA、UA-6LPA、UA-11003H、UA-53H、UA-4200、UA-200PA、UA-33H、UA-7100、UA-7200)、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(例えば、日本化薬株式会社製の製品名:DPHA)などが挙げられる。
【0044】
多官能アクリレート化合物として、好ましいものを以下に例示する。
【0045】
【化3】
【0046】
【化4】
【0047】
【化5】
【0048】
【化6】
【0049】
エチレン性不飽和化合物(A)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(C)及び含フッ素樹脂(D)の合計質量を100質量部とした際に、10質量部以上300質量部以下であることが好ましく、50質量部以上200質量部以下であることがより好ましい。
エチレン性不飽和化合物(A)の含有量が10質量部よりも少ないと架橋効果が十分得られない傾向があり、300質量部を超えると解像性や感度が低下する傾向がある。
【0050】
<光重合開始剤(B)>
本開示の感光性樹脂組成物において、光重合開始剤(B)は、電磁波や電子線等の高エネルギー線により、重合性二重結合を有する単量体を重合させるものであれば特に限定されるものではなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤(B)として、光ラジカル開始剤又は光酸開始剤を用いることができ、これらは単独で用いてもよいし、光ラジカル開始剤及び光酸開始剤を併用してもよいし、2種以上の光ラジカル開始剤又は光酸開始剤を混合して用いてもよい。また、光重合開始剤と併せて添加剤を使用することにより、場合によってリビング重合を行うことも可能であり、当該添加剤は公知のものを使用することができる。
【0051】
光ラジカル開始剤としては、具体的に、分子内の結合が電磁波又は電子線の吸収によって開裂してラジカルを生成する分子内開裂型や、3級アミンやエ-テル等の水素供与体を併用することによってラジカルを生成する水素引き抜き型などに分類でき、いずれを使用してもよい。上記に挙げた型以外の光ラジカル開始剤を用いることもできる。
【0052】
光ラジカル開始剤として、具体的には、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ジケトン系、アシルホスフィンオキシド系、キノン系、アシロイン系などを挙げることができる。
【0053】
ベンゾフェノン系としては、具体的に、ベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸、4-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。中でも、2-ベンゾイル安息香酸、4-ベンゾイル安息香酸、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンが好ましい。
【0054】
アセトフェノン系としては、具体的に、アセトフェノン、2-(4-トルエンスルホニルオキシ)-2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’ -ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンなどが挙げられる。中でも、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノンが好ましい。
【0055】
ジケトン系としては、具体的に、4,4’-ジメトキシベンジル、ベンゾイルギ酸メチル、9,10-フェナントレンキノンなどが挙げられる。中でも、4,4’-ジメトキシベンジル、ベンゾイルギ酸メチルが好ましい。
【0056】
アシルホスフィンオキシド系としては、具体的に、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0057】
キノン系としては、具体的に、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、カンファーキノン、1,4-ナフトキノンなどが挙げられる。中でも、カンファーキノン、1,4-ナフトキノンが好ましい。
【0058】
アシロイン系としては、具体的に、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどが挙げられる。中でも、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルが好ましい。
【0059】
光ラジカル開始剤として、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、ジケトン系が好ましく、ベンゾフェノン系がより好ましい。
【0060】
市販の光ラジカル開始剤の中で、好ましいものとして、BASF社製の製品名:イルガキュア127、イルガキュア184、イルガキュア369、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア907、イルガキュア2959、イルガキュアOXE-01、ダロキュア1173、ルシリンTPOなどが挙げられる。中でもイルガキュア651、イルガキュア369がより好ましい。
【0061】
光酸開始剤は、具体的に、芳香族スルホン酸、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、(2,4-シクロペンタジエン-1-イル)(1-メチルエチルベンゼン)鉄からなる群から選ばれる少なくとも1種のカチオンと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ペンタフルオロフェニルボレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のアニオンの対からなるオニウム塩である。
中でも、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェートが特に好ましい。
【0062】
市販の光酸開始剤としては、例えば、サンアプロ株式会社製の製品名:CPI-100P、CPI-110P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、ダウ・ケミカル日本株式会社製の製品名:サイラキュア光硬化開始剤UVI-6990、サイラキュア光硬化開始剤UVI-6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI-6976、株式会社ADEKA製の製品名:アデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172、アデカオプトマーSP-300、日本曹達株式会社製の製品名:CI-5102、CI-2855、三新化学工業株式会社製の製品名:サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100L、サンエイドSI-110L、サンエイドSI-180L、サンエイドSI-110、サンエイドSI-180、ランベルティ社製の製品名:エサキュア1064、エサキュア1187、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の製品名:イルガキュア250などが挙げられる。
【0063】
本開示の感光性樹脂組成物における光重合開始剤(B)の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(C)及び含フッ素樹脂(D)の合計質量を100質量部とした際に、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、1質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。光重合開始剤の含有量が0.1質量部よりも少ないと架橋効果が充分得られない傾向があり、30質量部を超えると解像性や感度が低下する傾向がある。
【0064】
<アルカリ可溶性樹脂(C)>
本開示の感光性樹脂組成物は、上記式(1)に表すアルカリ可溶性樹脂(C)を含むので、感光性樹脂組成物の相溶性が良好となる。また、本開示の感光性樹脂組成物を用いて製造される隔壁(バンク)の形状を良好にすることができる。
【0065】
本開示の感光性樹脂組成物では、アルカリ可溶性樹脂(C)は、フッ素原子を含んでいてもよく、含んでいなくてもよいが、アルカリ可溶性樹脂(C)のフッ素原子含有率は10質量%以下であることが好ましい。さらに、アルカリ可溶性樹脂(C)は、フッ素原子を含まない又はフッ素原子の含有率が0質量%を超え、5質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂(C)がフッ素原子を含み、フッ素原子含有率が上記範囲内であると、本開示の感光性樹脂組成物を用いて製造された隔壁の撥液性が向上する。
また、フッ素原子含有率が10質量%未満であると、各成分が充分に相溶しやすくなるため好ましい。
なお、アルカリ可溶性樹脂(C)のフッ素原子含有率は、後述する含フッ素樹脂(D)の含フッ素原子含有率の測定方法と同様の方法で測定することができる。
【0066】
アルカリ可溶性樹脂(C)としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂や上記エポキシ樹脂から誘導される酸変性エポキシアクリレート系樹脂が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば上記式(1)で表される構造単位を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。上記エポキシ樹脂は側鎖に水酸基や、メタクリロイル基やアクリロイル基のような重合性置換基を有していても良い。
このような構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂(C)としては、以下の式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される構造単位を含有することを特徴とする高分子化合物が例示できる。
式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される構造単位は、ランダム共重合していてもよく、構成単位毎にブロック共重合していてもよい。
【0067】
【化7】
(上記一般式(1-1)、(1-2)及び(1-3)中、a、b及びcはそれぞれ1以上の整数である。)
【0068】
上記一般式(1-1)、(1-2)及び(1-3)において、a+b+cは、3~100であることが好ましく、現像液への溶解性の観点から、10~50であることがより好ましい。
【0069】
上記の高分子化合物の末端の構造として次の構造を挙げることが出来る。なお、下記構造式中、波線は他の原子団との結合手を表す。
【0070】
【化8】
【0071】
上記式(1-1)、(1-2)および(1-3)のいずれかの構造単位が高分子化合物の末端に隣接する構造となった場合、当該構造単位の酸素原子に結合する末端の構造としては上記式(1a)が好ましく、当該構造単位の炭素原子に結合する末端の構造としては上記式(1c)が好ましい。
なお、高分子化合物の末端に隣接する構造単位は、同じ構造単位であっても良いし、異なる構造単位であっても良い。
【0072】
アルカリ可溶性樹脂は、合成容易性の観点から、末端以外の構造が、上記式(1)で表される構造単位のみからなる高分子化合物であることが好ましい。
また、アルカリ可溶性樹脂は、末端以外の構造が、上記式(1-1)、(1-2)及び(1-3)で表される構造単位から選択される少なくとも1種のみからなる高分子化合物であってもよい。
【0073】
市販の酸変性エポキシアクリレート系樹脂としては、例えば、日本化薬株式会社製の製品名:ZAR-1035、ZAR-1494H、ZAR-2001H、ZAR-2023H、ZAR-2050H、ZAR-2051Hなどを使用することが出来る。
これらの中では、日本化薬株式会社製の製品名:ZAR-2023Hや、ZAR-2050Hが好ましい。
【0074】
アルカリ可溶性樹脂(C)成分の重量平均分子量は、感光性樹脂組成物の現像性及び解像性の観点から1,000~50,000であることが好ましい。
【0075】
本開示の感光性樹脂組成物におけるアルカリ可溶性樹脂(C)の含有量は、含フッ素樹脂(D)100質量部に対して1,000質量部以上、10,000質量部以下であることが好ましく、より好ましくは2,000質量部以上、5,000質量部以下である。
アルカリ可溶性樹脂(C)の含有量が上記範囲内であると本開示の感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成する時の接触角のムラが低減される。
【0076】
なお、本開示の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂(C)以外に他のアルカリ可溶性樹脂を含んでいてもよい。
本開示の感光性樹脂組成物において、全アルカリ可溶性樹脂に対するアルカリ可溶性樹脂(C)の割合は、10.0~100.0wt%であることが好ましく、30.0~100.0wt%であることがより好ましく50.0~100.0wt%であることがさらにより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂(C)の含有量が上記範囲内であると本開示の感光性樹脂組成物を用いて形成した隔壁の撥液性のムラが低減される。
【0077】
<含フッ素樹脂(D)>
本開示の感光性樹脂組成物において含フッ素樹脂(D)は、フッ素原子含有率が20~60質量%である含フッ素樹脂(D)、及び/又は、フッ素原子含有率が0質量%を超え、20質量%未満の含フッ素樹脂(D)からなる。
これらの中では、本発明の感光性樹脂組成物を用いて製造される隔壁の撥液性を向上させる観点から、含フッ素樹脂(D)はフッ素原子含有率が20~60質量%である含フッ素樹脂(D)からなることが好ましい。
【0078】
なお、本開示の感光性樹脂組成物は、含フッ素樹脂(D)は、複数種類の含フッ素樹脂を含んでいてもよく、例えば、フッ素原子含有率が20~60質量%である含フッ素樹脂(D)、及び、フッ素原子含有率が0質量%を超え、20質量%未満の含フッ素樹脂(D)の両方の含フッ素樹脂を含んでいてもよい。
【0079】
本明細書において、「含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率」は、NMR(核磁気共鳴分光法)により測定された含フッ素樹脂(D)を構成するモノマーのモル割合、含フッ素樹脂(D)を構成するモノマーの分子量、モノマーに含まれるフッ素の含有量等から算出することができる。
ここで一例として、含フッ素樹脂(D)が、1,1-ビストリフルオロメチルブタジエン、4-ヒドロキシスチレン及び2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートからなる樹脂である場合のフッ素の含有量の測定方法を説明する。
(i)まず、含フッ素樹脂(D)をNMR測定することにより、各組成の割合を算出する(モル割合)。
(ii)含フッ素樹脂(D)の各組成のモノマーの分子量(Mw)と、モル割合を掛け、得られた値を足し合わせ、合計値を求める。その合計値から各組成の質量割合(wt%)を算出する。
なお、1,1-ビストリフルオロメチルブタジエンの分子量は190であり、4-ヒドロキシスチレンの分子量は120であり、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレートの分子量は432である。
(iii)次に、フッ素を含有する組成において、モノマー中のフッ素原子含有率を計算する。
(iv)各成分における「モノマー中のフッ素原子含有率÷モノマー分子量(Mw)×質量割合(wt%)」の値を算出し、得られた数値を合算する。
(v)「上記(iv)で得られた数値」/「上記(ii)で得られた合計値」を算出し、含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率を算出する。
これにより、含フッ素樹脂(D)が、フッ素原子含有率が20~60質量%である含フッ素樹脂(D)であるか、フッ素原子含有率が0質量%を超え、20質量%未満の含フッ素樹脂(D)であるかを判定する。
【0080】
以下に、含フッ素樹脂(D)の好ましい構造について説明する。
なお、フッ素原子含有率が20~60質量%である含フッ素樹脂(D)と、フッ素原子含有率が0質量%を超え、20質量%未満の含フッ素樹脂(D)との違いはフッ素原子含有率の違いであり、特に明記しない限り、好ましい構造は共通している。
【0081】
本開示の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記化学式(2)で示される構造を有していてもよく、下記式(3)で表される構造を有していてもよい。
【0082】
【化9】
(式(2)中、Rbは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されている。Rは水素原子、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状又は炭素数3~6の環状のアルキル基を表す。)
【0083】
【化10】
(式(3)中、Rbは、それぞれ独立に、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状若しくは炭素数3~6の環状のアルキル基又はフッ素原子を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されている。Rは、水素原子、フッ素原子又はメチル基を表す。Rは水素原子、炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状又は炭素数3~6の環状のアルキル基を表す。)
【0084】
式(3)において、Rは水素原子、メチル基が好ましい。また、Rとしては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、1-メチルプロピル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1-メチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、n-ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができ、水素原子、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基が好ましく、水素原子、メチル基がより好ましい。
また、式(2)又は式(3)中のRbは、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、n-ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、n-ノナフルオロブチル基、イソノナフルオロブチル基、tert-ノナフルオロブチル基が好ましく、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、n-ヘプタフルオロプロピル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基がより好ましく、フッ素原子、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0085】
本開示の感光性樹脂組成物における含フッ素樹脂(D)に含まれる式(3)で表される繰り返し単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0086】
【化11】
【0087】
【化12】
【0088】
式(3)で表される繰り返し単位の含フッ素樹脂(D)中の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全繰り返し単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、10モル%以上30モル%以下が特に好ましい。
【0089】
式(3)の繰り返し単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。
【0090】
また、本開示の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記式(4)で表される構造を含んでいてもよい。
【0091】
【化13】
【0092】
式(4)において、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0093】
式(4)において、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表す。中でも、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-であることが好ましい。
【0094】
式(4)において、Aは2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されてもよい。
【0095】
2価の連結基Aは、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基である場合、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキサレン基、n-ヘプタレン基、n-オクタレン基、n-ノナレン基、n-デカレン基を挙げることができる。
【0096】
2価の連結基Aは、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキレン基である場合、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンタレン基、イソヘキサレン基などを挙げることができる。
【0097】
2価の連結基Aは、炭素数3~10の環状のアルキレン基である場合、例えば、2置換のシクロプロパン、2置換のシクロブタン、2置換のシクロペンタン、2置換のシクロヘキサン、2置換のシクロヘプタン、2置換のシクロオクタン、2置換のシクロデカン、2置換の4-tert-ブチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。
【0098】
これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基で置換されている場合、該水酸基置換アルキレン基として、例えば、ヒドロキシエチレン基、1-ヒドロキシ-n-プロピレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、1-ヒドロキシ-n-ブチレン基、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)、ヒドロキシ-イソブチレン基(-CHCH(CHOH)CH-)、ヒドロキシ-tert-ブチレン基(-C(CHOH)(CH)CH-)などを挙げることができる。
【0099】
また、これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、-O-C(=O)-CHで置換されている場合、該置換アルキレン基として、上記に例示した水酸基置換アルキレン基の水酸基が-O-C(=O)-CHに置き換わったものを挙げることができる。
【0100】
中でも、2価の連結基Aは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、シクロヘキシル基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CH2CH-)が好ましく、エチレン基、プロピレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)がより好ましく、エチレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基が特に好ましい。
3価の連結基Aとしては、-C(CH-)CHなどを挙げることができ、4価の連結基Aとしては、C(CH-)などを挙げることができる。
【0101】
式(4)において、Yは2価の連結基を表し、-O-又は-NH-を表し、-O-であることがより好ましい。
【0102】
一般式(4)において、uは1~3の整数を表し、uは1であることが特に好ましい。
【0103】
式(4)において、nは1~3の整数を表し、nは1であることが特に好ましい。
芳香環の置換位置はそれぞれ独立に、オルト位、メタ位、パラ位を表し、パラ位であることが好ましい。
【0104】
式(4)で表される繰り返し単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。なお、芳香環の置換位置はパラ位のものを例示するが、それぞれ独立に置換位置がオルト位、メタ位であってもよい。
【0105】
【化14】
【0106】
【化15】
【0107】
【化16】
【0108】
【化17】
【0109】
式(4)で表される繰り返し単位の含フッ素樹脂(D)中の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全繰り返し単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、10モル%以上30モル%以下が特に好ましい。
【0110】
式(4)の繰り返し単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。
【0111】
含フッ素樹脂(D)は、前述の通り、上記式(3)で表される繰り返し単位と上記式(4)で表される繰り返し単位を含む共重合体と、上記式(3)で表される繰り返し単位と上記式(4)で表される繰り返し単位を含む別種の共重合体との混合体(ブレンド)であってもよい。特に、含フッ素樹脂(D)が、式(4)におけるWが-O-C(=O)-NH-である繰り返し単位を含む含フッ素樹脂と、式(4)におけるWが-C(=O)-NH-である繰り返し単位を含む含フッ素樹脂との混合体であることは本開示の好ましい態様の一つである。
【0112】
また、本開示の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記式(5)で表される構造を含んでいてもよい。
【0113】
【化18】
【0114】
式(5)において、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0115】
式(5)において、Wは2価の連結基を表し、-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-を表す。中でも、-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-であることが好ましい。
【0116】
式(5)において、Aは、2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されてもよい。
【0117】
一般式(5)において、Aは、2~4価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されてもよい。
【0118】
2価の連結基A、Aは、それぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基である場合、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキサレン基、n-ヘプタレン基、n-オクタレン基、n-ノナレン基、n-デカレン基を挙げることができる。
【0119】
2価の連結基A、Aは、それぞれ独立に、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキレン基である場合、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンタレン基、イソヘキサレン基などを挙げることができる。
【0120】
2価の連結基A、Aは、それぞれ独立に、炭素数3~10の環状のアルキレン基である場合、例えば、2置換のシクロプロパン、2置換のシクロブタン、2置換のシクロペンタン、2置換のシクロヘキサン、2置換のシクロヘプタン、2置換のシクロオクタン、2置換のシクロデカン、2置換の4-tert-ブチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。
【0121】
これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基で置換されている場合、該水酸基置換アルキレン基として、例えば、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、1-ヒドロキシ-n-プロピレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、1-ヒドロキシ-n-ブチレン基、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)、ヒドロキシ-イソブチレン基(-CHCH(CHOH)CH-)、ヒドロキシ-tert-ブチレン基(-C(CHOH)(CH)CH-)などを挙げることができる。
【0122】
また、これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、-O-C(=O)-CHで置換されている場合、該置換アルキレン基として、上記に例示した水酸基置換アルキレン基の水酸基が-O-C(=O)-CHに置き換わったものを挙げることができる。
【0123】
中でも、2価の連結基A、Aは、それぞれ独立に、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、シクロヘキシル基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)が好ましく、エチレン基、プロピレン基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)がより好ましく、エチレン基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)が特に好ましい。
3価の連結基Aとしては、-C(CH-)CHなどを挙げることができ、4価の連結基Aとしては、C(CH-)などを挙げることができる。
【0124】
式(5)において、Y、Yは2価の連結基を表し、それぞれ独立に、-O-又は-NH-を表し、-O-であることがより好ましい。
【0125】
式(5)において、nは1~3の整数を表し、nは1であることが特に好ましい。
【0126】
式(5)において、rは0又は1を表す。rが0のとき「(-C(=O)-)」の部分は単結合を表す。
【0127】
式(5)で表される繰り返し単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0128】
【化19】
【0129】
【化20】
【0130】
【化21】
【0131】
【化22】
【0132】
【化23】
【0133】
式(5)で表される繰り返し単位の含フッ素樹脂(D)中の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全繰り返し単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、10モル%以上30モル%以下が特に好ましい。
【0134】
式(5)の繰り返し単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。一方で、式(5)の繰り返し単位の含有量が5モル%より少ないと、含フッ素樹脂(D)より得られる含フッ素樹脂膜又はバンクの基板に対する密着性が低下する傾向がある。
【0135】
式(5)で表される繰り返し単位が有する効果について、明確ではないが、含フッ素樹脂(D)が式(5)で表される繰り返し単位を含むことで、得られる含フッ素樹脂膜又はバンクが基板に対する密着性を向上する、と推察する。ただし、本開示の効果はここに記述する効果に限定されるものではない。
【0136】
含フッ素樹脂(D)は、上記式(3)で表される繰り返し単位と上記式(5)で表される繰り返し単位を含む共重合体と、上記式(3)で表される繰り返し単位と上記式(5)で表される繰り返し単位を含む別種の共重合体との混合体(ブレンド)であってもよい。特に、含フッ素樹脂(D)が、式(5)におけるWが-O-C(=O)-NH-である繰り返し単位を含む含フッ素樹脂と、式(5)におけるWが-C(=O)-NH-である繰り返し単位を含む含フッ素樹脂との混合体であることは本開示の好ましい態様の一つである。
【0137】
また、本開示の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記式(6)で表される構造を含んでいてもよい。
【0138】
【化24】
【0139】
式(6)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
【0140】
式(6)中、Rは炭素数1~15の直鎖状、炭素数3~15の分岐鎖状又は炭素数3~15の環状のアルキル基を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されており、繰り返し単位中のフッ素原子含有率は30質量%以上である。
【0141】
が直鎖状のアルキル基であるとき、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基又は炭素数10~14の直鎖状アルキル基の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されているものを例示することができる。
【0142】
が直鎖状のアルキル基である場合、上記式(6)で表される繰り返し単位は下記式(6-1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0143】
【化25】
【0144】
式(6-1)中、Rは、式(6)のRと同義である。
【0145】
式(6-1)中、Xは水素原子又はフッ素原子である。
【0146】
式(6-1)中、pは1~4の整数である。qは1~14の整数である。pは1~2の整数で、qは2~8の整数で、Xはフッ素原子あることが特に好ましい。
【0147】
式(6)で表される繰り返し単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0148】
【化26】
【0149】
【化27】
【0150】
【化28】
【0151】
【化29】
【0152】
式(6)で表される繰り返し単位の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全繰り返し単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、10モル%以上30モル%以下が特に好ましい。
【0153】
式(6)の繰り返し単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。
【0154】
また、本開示の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記式(7)で表される構造を含んでいてもよい。
【0155】
【化30】
【0156】
式(7)中、R10は水素原子又はメチル基を表す。
【0157】
式(7)中、Bはそれぞれ独立に、水酸基、カルボキシル基、-C(=O)-O-R11(R11は炭素数1~15の直鎖状、炭素数3~15の分岐鎖状又は炭素数3~15の環状のアルキル基を表し、該アルキル基中の任意の数の水素原子がフッ素原子で置換されており、R11中のフッ素原子含有率は30質量%以上である)又は-O-C(=O)-R12(R12は炭素数1~6の直鎖状、炭素数3~6の分岐鎖状又は炭素数3~6の環状のアルキル基を表す。)を表す。また、mは0~3の整数を表す。
【0158】
式(7)で表される繰り返し単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0159】
【化31】
【0160】
【化32】
【0161】
式(7)で表される繰り返し単位の含有量は、含フッ素樹脂(D)を構成する全繰り返し単位100モル%に対して、5モル%以上70モル%以下が好ましく、10モル%以上50モル%以下がより好ましく、20モル%以上40モル%以下が特に好ましい。
【0162】
式(7)の繰り返し単位の含有量が70モル%より多いと、含フッ素樹脂(D)が溶媒に溶けにくくなる傾向がある。
【0163】
式(7)において、Bが水酸基又はカルボキシル基である場合、式(7)で表される繰り返し単位は、アルカリ現像液に対する溶解性を有する。そのため、含フッ素樹脂(D)から得られる膜にアルカリ現像性を付与したいという場合には、含フッ素樹脂(D)に、Bが水酸基又はカルボキシル基である場合の式(7)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0164】
また、本開示の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)は、下記式(8)で表される構造を含んでいてもよい。
【0165】
【化33】
【0166】
式(8)において、R13は、水素原子又はメチル基を表す。
【0167】
式(8)において、Aは、2価の連結基を表し、炭素数1~10の直鎖状、炭素数3~10の分岐鎖状又は炭素数3~10の環状のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基又は-O-C(=O)-CHで置換されてもよい。
【0168】
2価の連結基Aは、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基である場合、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキサレン基、n-ヘプタレン基、n-オクタレン基、n-ノナレン基、n-デカレン基を挙げることができる。
【0169】
2価の連結基Aは、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキレン基である場合、例えば、イソプロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、イソペンタレン基、イソヘキサレン基などを挙げることができる。
【0170】
2価の連結基Aは、炭素数3~10の環状のアルキレン基である場合、例えば、2置換のシクロプロパン、2置換のシクロブタン、2置換のシクロペンタン、2置換のシクロヘキサン、2置換のシクロヘプタン、2置換のシクロオクタン、2置換のシクロデカン、2置換の4-tert-ブチルシクロヘキサンなどを挙げることができる。
【0171】
これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、水酸基で置換されている場合、該水酸基置換アルキレン基として、例えば、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、1-ヒドロキシ-n-プロピレン基、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、1-ヒドロキシ-n-ブチレン基、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)、ヒドロキシ-イソブチレン基(-CHCH(CHOH)CH-)、ヒドロキシ-tert-ブチレン基(-C(CHOH)(CH)CH-)などを挙げることができる。
【0172】
また、これらアルキレン基中の任意の数の水素原子が、-O-C(=O)-CHで置換されている場合、該置換アルキレン基として、上記に例示した水酸基置換アルキレン基の水酸基が-O-C(=O)-CHに置き換わったものを挙げることができる。
【0173】
中でも、2価の連結基Aは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、シクロヘキシル基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)、2-ヒドロキシ-n-ブチレン基、ヒドロキシ-sec-ブチレン基(-CH(CHOH)CHCH-)が好ましく、エチレン基、プロピレン基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)、2-ヒドロキシ-n-プロピレン基、ヒドロキシ-イソプロピレン基(-CH(CHOH)CH-)がより好ましく、エチレン基、1-ヒドロキシエチレン基(-CH(OH)CH-)、2-ヒドロキシエチレン基(-CHCH(OH)-)が特に好ましい。
【0174】
式(8)において、Yは、2価の連結基を表し、-O-又は-NH-を表し、-O-であることがより好ましい。
【0175】
式(8)において、rは0又は1を表す。rが0のとき「(-C(=O)-)」の部分は単結合を表す。
【0176】
式(8)において、Eは、水酸基、カルボキシル基又はオキシラン基を表す。
がオキシラン基であるとき、例えば、エチレンオキシド基、1,2-プロピレンオキシド基、1,3-プロピレンオキシド基などを挙げることができる。中でも、エチレンオキシド基であることが好ましい。
【0177】
式(8)において、sは0又は1を表す。sが0のとき、「(-Y-A-)」の部分は単結合を表す。rが0、かつ、sが0のときは、繰り返し単位の主鎖にEが結合した構造となる。
【0178】
式(8)で表される繰り返し単位について、好ましいものとして以下の構造が例示できる。
【0179】
【化34】
【0180】
式(8)において、Eが水酸基又はカルボキシル基である場合、式(8)で表される繰り返し単位は、含フッ素樹脂(D)のアルカリ現像液に対する溶解性を付与する。そのため、含フッ素樹脂(D)から得られる膜にアルカリ現像性を付与したいという場合には、含フッ素樹脂(D)に、Eが水酸基又はカルボキシル基である場合の式(8)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0181】
架橋部位を有する含フッ素樹脂(D)は、例えばモノマーを重合して上述の式(3)、(6)~(8)に示す構造からなる繰り返し単位を有する含フッ素樹脂前駆体を得、次いで含フッ素樹脂前駆体と光重合性基誘導体とを反応させることにより重合体の側鎖に光重合性基を導入して、上述の式(4)、(5)に示す構造からなる繰り返し単位を有する含フッ素樹脂(D)を合成することができる。
含フッ素樹脂前駆体に導入する光重合性基としては、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基が好ましく、アクリル基がより好ましい。
光重合性基としてアクリル基を導入する場合、光重合性基誘導体としては、例えばアクリル基を有するイソシアネートモノマー、アクリル基を有するエポキシモノマー等のアクリル酸誘導体が挙げられる。
アクリル基を有するイソシアネートモノマーとしては、例えば、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリラート、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。好ましくは2-イソシアナトエチルアクリラートである。
アクリル基を有するエポキシモノマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE、三菱ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0182】
含フッ素樹脂前駆体が有する水酸基と光重合性基誘導体との付加反応により、含フッ素樹脂前駆体に光重合性基が導入される。
含フッ素樹脂(D)における光重合性基の割合は、含フッ素樹脂(D)中、10モル%以上、70モル%以下であることが好ましい。光重合性基の割合が10モル%未満であると、樹脂膜や隔壁の強度が低下する傾向がある。光重合性基の割合が70モル%を超えると、塗布による樹脂膜の形成が困難になることがある。より好ましくは15モル%~60モル%である。
【0183】
本開示の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)の分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した重量平均分子量で、好ましくは1,000以上、1,000,000以下、より好ましくは2,000以上、500,000以下であり、特に好ましくは3,000以上、100,000以下である。分子量が1,000より小さいと形成する含フッ素樹脂膜又はバンクの強度が低下する傾向にあり、分子量が1,000,000より大きいと溶媒への溶解性が不足し塗布による含フッ素樹脂膜の形成が困難になることがある。
【0184】
含フッ素樹脂(D)の分散度(Mw/Mn)は、1.01~5.00が好ましく、1.01~4.00がより好ましく、1.01~3.00が特に好ましい。
【0185】
含フッ素樹脂(D)は、ランダム共重合体であってもよいし、交互共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。それぞれの特性を局所的にではなく適度に分散させる観点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0186】
本開示の感光性樹脂組成物における含フッ素樹脂(D)の好ましい態様は以下の通りである。
<態様1>
次の式(3)で表される繰り返し単位、式(5)で表される繰り返し単位、式(6-1)で表される繰り返し単位及び式(7)で表される繰り返し単位を含む含フッ素樹脂(D)式(3):R及びRは水素原子、Rbはそれぞれ独立に、フッ素原子、ジフルオロメチル基又はトリフルオロメチル基式(5):R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、Wは-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-、A、Aはそれぞれ独立に、エチレン基、Y及びYは-O-、nは1、rは1式(6-1):Rはメチル基、pは2の整数、qは4~8の整数、Xはフッ素原子式(7):R10は水素原子、Bは水酸基又はカルボキシル基、mは1である。
【0187】
<態様2>
次の式(5)で表される繰り返し単位、式(6)で表される繰り返し単位、式(6-1)で表される繰り返し単位及び式(8)で表される繰り返し単位を含む含フッ素樹脂(D)式(5):R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基、Wは-O-C(=O)-NH-、-C(=O)-O-C(=O)-NH-又は-C(=O)-NH-、A、Aはそれぞれ独立に、エチレン基、Y及びYは-O-、nは1、rは1式(6):Rはメチル基、Rは炭素数3~15の分岐鎖状のパーフルオロアルキル基式(6-1):Rはメチル基、pは2の整数、qは4~8の整数、Xはフッ素原子式(8):R13はメチル基、Aはエチレン基、Yは-O-、rは1、sは0又は1、Eは水酸基又はカルボキシル基である。
【0188】
本開示の感光性樹脂組成物の全固形分に対する含フッ素樹脂(D)の含有量は、0.01~40質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。当該範囲であると樹脂膜の撥水撥油性や基材密着性が良好となる。
【0189】
本開示の感光性樹脂組成物において、含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率と、アルカリ可溶性樹脂(C)のフッ素原子含有率との差([含フッ素樹脂(D)のフッ素原子含有率]-[アルカリ可溶性樹脂(C)のフッ素原子含有率])は、15~60質量%であることが好ましく、20~50質量%であることが好ましく、25~40質量%であることがより好ましい。
上記範囲であると、本開示の感光性樹脂組成物の相溶性がより良好になる。
【0190】
<その他の成分>
本開示の感光性樹脂組成物は、その他の成分として、溶媒、着色顔料(E)、光ラジカル増感剤、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。
これらのその他の成分の好ましい態様は以下の通りである。
【0191】
<溶媒>
本開示の感光性樹脂組成物において、溶媒はエチレン性不飽和化合物(A)、光重合開始剤(B)、アルカリ可溶性樹脂(C)及び含フッ素樹脂(D)が可溶であれば特に制限されず、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、乳酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトンが挙げられる。
【0192】
本開示の感光性樹脂組成物における溶媒の量は、アルカリ可溶性樹脂(C)及び含フッ素樹脂(D)の合計質量を100質量部とした際に、50質量部以上、2,000質量部以下となる範囲であることが好ましい。より好ましくは100質量部以上、1,000質量部以下である。溶媒の量を調整することによって、形成される樹脂膜の膜厚を調製することができ、上記範囲内であれば、特にバンクを得るために適した樹脂膜の膜厚を得ることができる。
【0193】
<着色顔料(E)>
着色顔料(E)は、含フッ素樹脂を含む感光性樹脂組成物の相溶性が低下する原因となる。しかし、本開示の感光性樹脂組成物は、上記アルカリ可溶性樹脂(C)を含むので着色顔料(E)が含まれていたとしても、充分に相溶性が高くなる。
【0194】
着色顔料(E)としては、有機顔料であっても無機顔料であっても良く、黒色顔料、白色顔料、その他着色顔料が好ましい。
【0195】
黒色顔料としては、相溶性の観点から有機顔料が好ましく、ベンゾジフラノン系黒色顔料、ペリレン系黒色顔料、アゾ系黒色顔料及びそれらの異性体であることがより好ましい。異性体は互変異性体も含む。異性体は、複数の顔料粉末の混合物として含まれていてもよく、1つの一次粒子を構成する上で混晶として含まれていても良い。
【0196】
ベンゾジフラノン系黒色顔料としては、下記一般式(9)又は下記一般式(10)で表される顔料が挙げられ、下記一般式(9)で表される顔料は、いわゆる、ラクタムブラックに分類される顔料に相当する。
【0197】
【化35】
【0198】
【化36】
【0199】
一般式(9)及び(10)中、R14及びR19は、それぞれ独立して、水素原子、CH3、CF、フッ素原子又は塩素原子を表す。R15、R16、R17、R18、R20、R21、R22及びR23は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のシクロアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のシクロアルケニル基、炭素数1~12のアルキニル基、COOH、COOR24、COO、CONH、CONHR24、CONR2425、CN、OH、OR24、OCOR24、OCONH、OCONHR24、OCONR2425、NO、NH、NHR24、NR2425、NHCOR24、NR24COR25、N=CH、N=CHR24、N=CR2425、SH、SR24、SOR24、SO24、SO24、SOH、SO-、SONH、SONHR19又はSONR2425を表す。R15及びR16、R16及びR17、R17及びR18、R20及びR21、R21及びR22、並びに、R22及びR23は直接結合又はO、S、NHもしくはNR24によって結合しても良い。R24及びR25は、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のシクロアルキル基、炭素数1~12のアルケニル基、炭素数1~12のシクロアルケニル基又は炭素数1~12のアルキニル基を表す。
【0200】
中でも、相溶性と光学濃度の均一性の観点から、R14~R23が水素原子であるものがより好ましく、すなわち、下記構造式(11)で表されるベンゾジフラノン系黒色顔料を好ましく用いることができる。
下記構造式(11)の黒色顔料を用いることで、感光性樹脂組成物中の着色顔料濃度が均一になり、より光学濃度の均一性が高い隔壁を製造するための感光性樹脂組成物を得ることが出来る。下記構造式(11)で表されるベンゾジフラノン系黒色顔料としては市販品を用いてもよく、例えば、BASF製“Irgaphor”(登録商標)Black S0100が挙げられる。
【0201】
【化37】
【0202】
ペリレン系黒色顔料とは、下記一般式(12)又は(13)で表される顔料及びC.I.ピグメントブラック31、32を意味する。いわゆる、ペリレンブラックに分類される顔料に相当する。中でも、光学濃度の均一性の観点から、下記一般式(12)又は(13)で表される顔料が好ましい。
【0203】
【化38】
【0204】
【化39】
【0205】
一般式(12)及び(13)中、R26~R33は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は水酸基を表す。中でも、光学濃度の均一性の観点から、R26~R33が水素原子であるものが好ましく、すなわち、下記構造式(14)及び/又は(15)で表されるペリレン系黒色顔料を好ましく用いることができる。下記構造式(14)及び(15)で表されるペリレン系黒色顔料(シス-トランス異性体混合物)としては市販品を用いてもよく、例えば、BASF製FK428
0が挙げられる。
【0206】
【化40】
【0207】
【化41】
【0208】
アゾ系黒色顔料とは、下記一般式(16)で表される顔料を意味する。いわゆる、アゾメチンブラックに分類される顔料に相当する。
【0209】
【化42】
【0210】
一般式(16)中、R34は、イソインドリノン構造を有する有機基又はイソインドリン構造を有する有機基を示し、R35は、炭素数1~3のアルキル基及び炭素数1~3のアルコキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の有機基を示し、nは1~5の整数を示す。
【0211】
白色顔料としては、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム及び炭酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機物であることが好ましい。これらの無機物は、高い屈折率を有するため、本発明の感光性樹脂組成物を用いて製造される隔壁において、光反射性を向上する事が出来る。特に高い屈折率と感光性樹脂組成物中での分散性の観点から、酸化チタンがより好ましい。
【0212】
その他着色顔料としては、黄色、橙色、青色、赤色、緑色、紫色、茶色など種々の有機顔料を用いても良く、2種類以上の有機顔料を含有させた顔料分散体としても良い。含有させる顔料の種類や量比を調整することで、溶解性や、遮光性等の光学特性を制御することが出来る。特に、相溶性と光学濃度の均一性の観点から、青色、紫色、橙色の組み合わせが好ましい。また、顔料分散体は、アルカリ可溶性樹脂を含んでいてもよく、当該アルカリ可溶性樹脂は、上記一般式(1)で表される構造を有するビスフェノール型エポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0213】
有機橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ1、2、5、13、16、17、19、20、21、22、23、24、34、36、38、39、43、46、48、49、61、62、64、65、67、68、69、70、71、72、73、74、75、77、78、79が挙げられる。この中でも、分散性や遮光性の観点から、C.I.ピグメントオレンジ43が好ましい。
【0214】
有機青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、60、64、65、75、79、80が挙げられる。中でも、分散性や遮光性の観点から、C.I.ピグメントブルー60が好ましい。
【0215】
有機紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット1、1:1、2、2:2、3、3:1、3:3、5、5:1、14、15、16、19、23、25、27、29、31、32、37、39、42、44、47、49、50が挙げられる。中でも、分散性や遮光性の観点から、C.I.ピグメントバイオレット23が好ましい。
【0216】
本開示の感光性樹脂組成物において、着色顔料(E)は全固形分量に対し3質量%以上、70質量%未満であることが好ましく、5質量%以上、70質量%未満であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、本開示の感光性樹脂組成物の相溶性が良好になり、本開示の感光性樹脂組成物を用いて製造された硬化物への着色が良好になる。
【0217】
本開示の感光性樹脂組成物において、着色顔料(E)の粒子径D50は、50~700nmであることが好ましく、200~500nmであることがより好ましく、200~400nmであることがさらに好ましい。
着色顔料(E)の粒子径D50が上記範囲であると、本発明の感光性樹脂組成物を用いて製造される隔壁において、隔壁の部分における光学濃度値のバラつきを低くすることができる。
【0218】
なお、本開示の感光性樹脂組成物は、着色顔料(E)を含まなくてもよい。
【0219】
<光ラジカル増感剤>
本開示の感光性樹脂組成物が光ラジカル増感剤を含むと、本開示の感光性樹脂組成物の露光感度をより向上させることができる。光ラジカル増感剤は、光線又は放射線を吸収して励起状態となる化合物であることが好ましい。光ラジカル増感剤は励起状態となることで、光重合開始剤と接触した際、電子移動、エネルギー移動又は発熱等を生じ、これにより、光重合開始剤は分解し酸を生成し易くなる。光ラジカル増感剤は、350nm~450nmの領域に吸収波長を有すればよく、多核芳香族類、キサンテン類、キサントン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アクリドン類、アントラキノン類、スクアリウム類、スチリル類、ベーススチリル類、又はクマリン類を挙げることができる。
【0220】
多核芳香族類としては、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン,3,7-ジメトキシアントラセン、又は9,10-ジプロピルオキシアントラセンを例示することができる。
【0221】
キサンテン類としては、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガルを例示することができる。
キサントン類としては、キサントン、チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、又はイソプロピルチオキサントンを例示することができる。
【0222】
シアニン類としては、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニンを例示することができる。
メロシアニン類としては、メロシアニン、カルボメロシアニンを例示することができる。チアジン類としては、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルーを例示することができる。
【0223】
アクリジン類としては、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビンを例示することができる。
アクリドン類としては、アクリドン、10-ブチル-2-クロロアクリドンを例示することができる。
【0224】
アントラキノン類としては、アントラキノンを例示することができる。
スクアリウム類としては、スクアリウムを例示することができる。ベーススチリル類としては、2-[2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル]ベンゾオキサゾールを例示することができる。
【0225】
クマリン類としては、7-ジエチルアミノ4-メチルクマリン、7-ヒドロキシ4-メチルクマリン、又は2,3,6,7-テトラヒドロ-9-メチル-1H,5H,11H[l]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-11-ノンを例示することができる。
これら光ラジカル増感剤は、単独、又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0226】
本開示の感光性樹脂組成物に使用する光ラジカル増感剤としては、露光感度向上の効果が大きいことより、好ましくは、多核芳香族類、アクリドン類、スチリル類、ベーススチリル類、クマリン類、又はキサントン類であり、特に好ましくはキサントン類である。キサントン類の中でもジエチルチオキサントン及びイソプロピルチオキサントンが好ましい。
【0227】
本開示の感光性樹脂組成物において、光ラジカル増感剤の含有量は、アルカリ可溶性樹脂(C)及び含フッ素樹脂(D)100質量部に対して好ましくは0.1質量部~8質量部であり、より好ましくは1質量部~4質量部である。光ラジカル増感剤の含有量を上述の範囲とすることで、感光性樹脂組成物の露光感度を向上させ、本開示の感光性樹脂組成物を露光した後のパターン形成膜において撥液部位と親液部位の境界が明確となり、インク塗布後のインクパターンのコントラストが向上し、精緻なパターンが得られる。
【0228】
<連鎖移動剤>
本開示の感光性樹脂組成物は、必要に応じて連鎖移動剤を含んでいてもよい。
連鎖移動剤としては、上述の含フッ素樹脂(D)の合成に用い得るものと同じ化合物等を挙げることができる。
【0229】
<紫外線吸収剤>
本開示の感光性樹脂組成物は、必要に応じて紫外線吸収剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としてはサリチル酸系、ベンゾフェノン系、トリアゾール系等を挙げることができる。
紫外線吸収剤の含有量は、感光性樹脂組成物中に好ましくは0.5~5質量%であり、より好ましくは1~3質量%である。
【0230】
<重合禁止剤>
本開示の感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含んでいてもよい。
重合禁止剤としては、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、6-t-ブチル-2,4-キシレノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ヒドロキノン、カテコール、4-t-ブチルピロカテコール、2,5-ビステトラメチルブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、p-メトキシフェノール、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、1,2-ベンゾキノン、1,3-ベンゾキノン、1,4-ベンゾキノン、ロイコキニザリン、フェノチアジン、2-メトキシフェノチアジン、テトラエチルチウラムジスルフィド、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル又は1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジンを例示することができる。
【0231】
市販される重合禁止剤としては、精工化学株式会社製のN,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン(商品名、ノンフレックスF)、N,N-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(商品名、ノンフレックスH)、4,4’-ビス(a,a-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名、ノンフレックスDCD)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(商品名、ノンフレックスMBP)、N-(1-メチルヘプチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(商品名、オゾノン35)又は和光純薬工業株式会社製のアンモニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシアミン(商品名、Q-1300)又はN-ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩(商品名、Q-1301)を例示することができる。
【0232】
本開示の感光性樹脂組成物における全固形分中の重合禁止剤の含有割合は0.001~20質量%が好ましく、0.005~10質量%がより好ましく、0.01~5質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲であると、感光性樹脂組成物の現像残渣が低減され、パターン直線性が良好である。
【0233】
本開示の感光性樹脂組成物は、さらに、必要に応じて溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、増粘剤、密着剤、酸化防止剤などの種々の添加剤を含んでいてもよい。これらのその他添加剤は公知のものであってもよい。
【0234】
本開示の感光性樹脂組成物は、本開示の硬化物を製造するために用いることができる。
本開示の硬化物の製造方法は、上記本開示の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより樹脂膜とする(1)成膜工程と、当該樹脂膜に高エネルギー線を露光する(2)露光工程とを含む。
【0235】
本開示の感光性樹脂組成物を用いた硬化物の製造方法を、当該硬化物からなる隔壁を製造する方法を例に挙げ説明する。
当該隔壁を形成する方法は、(1)成膜工程及び(2)露光工程に加え、(3)現像工程とを含んでいてもよい。
各工程について以下に説明する。
【0236】
(1)成膜工程
まず、上記本開示の感光性樹脂組成物を、基板に塗布した後、加熱することにより上記感光性樹脂組成物を含フッ素樹脂膜とする。
加熱の条件は特に限定されないが、80~100℃、60~200秒であることが好ましい。
これにより、感光性樹脂組成物に含まれる溶媒等を除去することができる。
なお、当該含フッ素樹脂膜は、本開示の樹脂膜でもある。
【0237】
基板は、シリコンウエハ、金属、ガラス、ITO基板などを用いることができる。
また、基板上には予め有機系あるいは無機系の膜が設けられていてもよい。例えば、反射防止膜、多層レジストの下層があってもよく、それにパターンが形成されていてもよい。また、基板を予め洗浄してもよい。例えば、超純水、アセトン、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)などを用いて洗浄することができる。
【0238】
基板に本開示の感光性樹脂組成物を塗布する方法としては、スピンコート等、公知の方法を用いることができる。
【0239】
(2)露光工程
次に、所望のフォトマスクを露光装置にセットし、高エネルギー線を、該フォトマスクを介して上記含フッ素樹脂膜に露光する。
高エネルギー線は、紫外線、ガンマ線、X線、及びα線からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0240】
高エネルギー線の露光量は、1mJ/cm以上、200mJ/cm以下であることが好ましく、10mJ/cm以上、100mJ/cm以下であることがより好ましい。
【0241】
この工程により、含フッ素樹脂膜の露光部は硬化して硬化物となる。当該硬化物は、本開示の硬化物でもある。
【0242】
(3)現像工程
次に、露光工程後の含フッ素樹脂膜をアルカリ水溶液で現像して含フッ素樹脂パターン膜とする。
すなわち、含フッ素樹脂膜露光部又は膜未露光部のいずれかをアルカリ水溶液に溶解させることにより、含フッ素樹脂パターン膜とする。
【0243】
アルカリ水溶液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)水溶液等を使用することができる。アルカリ水溶液がテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液である場合、その濃度は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、2質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
【0244】
現像方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、ディップ法、パドル法、スプレー法などが挙げられる。
【0245】
現像時間(現像液が含フッ素樹脂膜に接触する時間)は、10秒以上3分間以下であることが好ましく、30秒以上2分間以下であることがより好ましい。
【0246】
現像した後、必要に応じて、脱イオン水などを用いて、含フッ素樹脂パターン膜を洗浄する工程を設けてもよい。洗浄方法及び洗浄時間については、10秒以上3分間以下であることが好ましく、30秒以上2分間以下であることがより好ましい。
【0247】
以上の工程を経て隔壁を製造することができる。当該隔壁は、本開示の隔壁でもある。
【0248】
本開示の感光性樹脂組成物を用いて製造された硬化物(上記隔壁を含む)は、撥液性の均一性が高い。
例えば、下記<硬化物の形成方法>で基板に硬化物を形成し、当該硬化物が形成された基板を230℃で60分間、加熱を行った後、当該硬化物の任意の20か所においてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角を測定した際、接触角の最大値と最小値との差が、0~2°であることが好ましく、0°であることがより好ましい。
<硬化物の形成方法>
ITO基板を超純水、次いでアセトンにより洗浄後、UVオゾン処理装置を用い、当該基板に対するUVオゾン処理を5分間行う。次いで、本開示の感光性組成物を用いて、得られたUVオゾン処理後の基板上にスピンコータを用い回転数400rpmで塗布し、ホットプレート上で100℃150秒間、加熱し、膜厚3μmの硬化物を形成する。その後、得られた硬化物にi線(波長365nm)を照射し露光を行う。
【0249】
また、このように製造された硬化物(隔壁)は、光学濃度(OD値)の均一性が高い。
例えば、上記<硬化物の形成方法>で基板に硬化物を形成し、当該硬化物が形成された基板を230℃で60分間、加熱を行った後、当該硬化物の任意の20か所において硬化物の光学濃度を、白黒透過濃度計(光源:ハロゲンランプ、測定波長:400~700nmの全波長域)で測定した際に、OD値の最大値と最小値との差が、0.00~0.01μm-1であることが好ましく、0.00μm-1であることがより好ましい。
【0250】
このようにして製造された隔壁は有機電界発光素子、波長変換層又はディスプレイ用のバンクとして使用することができる。
本開示の隔壁を備える有機電界発光素子、波長変換層又はディスプレイは、本開示の有機電界発光素子、波長変換層又はディスプレイでもある。
ディスプレイとしては、有機ELディスプレイや、量子ドットディスプレイ等が挙げられる。
【実施例0251】
以下、実施例により本開示を詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限られない。
【0252】
1.含フッ素樹脂(D)のパラメータの測定方法
[各繰り返し単位のモル比の測定]重合体における各繰り返し単位のモル比は、H-NMR、19F-NMR又は13C-NMRの測定値から決定した。
【0253】
[重合体の分子量の測定]重合体の重量平均分子量Mwと分子量分散度(数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの比;Mw/Mn)は、高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCということがある。東ソー株式会社製、形式HLC-8320GPC)を使用し、ALPHA-MカラムとALPHA-2500カラム(ともに東ソー株式会社製)を1本ずつ直列に繋ぎ、展開溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて測定した。検出器には、屈折率差測定検出器を用いた。
【0254】
2.撥液剤用含フッ素樹脂の合成
[撥液剤前駆体1の合成]攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、1,1-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ブタジエン(セントラル硝子株式会社製。以下、BTFBEと表記する)を2.9g(0.015mol)、4-アセトキシスチレン(東京化成工業株式会社品。以下、p-AcO-Stと表記する)を3.2g(0.02mol)、2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(東京化成工業株式会社品。以下、MA-C6Fと表記する)を13.0g(0.03mol)、ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業株式会社品。以下、HEMAと表記する)を4.6g(0.035mol)、メチルエチルケトン(以下MEKと表記する)を47.2g採取し、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(東京化成工業株式会社品。以下、AIBNと表記する)を0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜で反応させた。反応系にn-ヘプタン200gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤前駆体1を20.7g、収率88%で得た。
【0255】
<NMR測定結果>撥液剤前駆体1の各繰り返し単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる繰り返し単位:p-AcO-Stによる繰り返し単位:MA-C6Fによる繰り返し単位:HEMAによる繰り返し単位=15:20:30:35であった。
【0256】
【化43】
【0257】
<GPC測定結果>
Mw=8,900、Mw/Mn=1.5
【0258】
[撥液剤1の合成]攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、撥液剤前駆体1を20g(水酸基当量0.035mol)、トリエチルアミンを0.20g(水酸基当量0.0021mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと表記する)を60g、2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社品。製品名:カレンズAOI)を4.9g(水酸基当量0.035mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤1を19.9g、収率80%で得た。
【0259】
【化44】
【0260】
13C-NMR測定結果>撥液剤1において、AOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋基部位と反応しない各繰り返し単位(BTFBEによる繰り返し単位、p-AcO-Stによる繰り返し単位、MA-C6Fによる繰り返し単位)の組成比は、用いた撥液剤前駆体1から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。繰り返し単位より撥液剤1中の含フッ素原子含有率は27.6質量%であった。従って、撥液剤1は、含フッ素樹脂(D)である。
【0261】
<GPC測定結果>
Mw=12,800、Mw/Mn=1.5
【0262】
[撥液剤前駆体2の合成]攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、BTFBEを2.7g(0.014mol)、p-AcO-Stを2.3g(0.042mol)、MA-C6Fを18.2g(0.042mol)、HEMA(東京化成工業株式会社品)を3.9g(0.03mol)、MEKを54.0g採取し、AIBNを0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜で反応させた。反応系にn-ヘプタン300gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤前駆体2を24.0g、収率89%で得た。
【0263】
<NMR測定結果>撥液剤前駆体2の各繰り返し単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる繰り返し単位:p-AcO-Stによる繰り返し単位:MA-C6Fによる繰り返し単位:HEMAによる繰り返し単位=14:14:42:30であった。
【0264】
【化45】
【0265】
<GPC測定結果>
Mw=9,200、Mw/Mn=1.5
【0266】
[撥液剤2の合成]攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、撥液剤前駆体2を20g(水酸基当量0.03mol)、トリエチルアミンを0.21g(水酸基当量0.0021mol)PGMEAを60g採取し、カレンズAOIを4.26g(水酸基当量0.03mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤2を21.6g、収率90%で得た。
【0267】
【化46】
【0268】
13C-NMR測定結果>撥液剤2において、AOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋基部位と反応しない各繰り返し単位(BTFBEによる繰り返し単位、p-AcO-Stによる繰り返し単位、MA-C6Fによる繰り返し単位)の組成比は、用いた撥液剤前駆体2から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。繰り返し単位より撥液剤2中の含フッ素原子含有率は38.6質量%であった。従って、撥液剤2は、含フッ素樹脂(D)である。
【0269】
<GPC測定結果>
Mw=13,100、Mw/Mn=1.7
【0270】
[撥液剤前駆体3の合成]攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に室温(約20℃)で、BTFBEを2.3g(0.012mol)、p-AcO-Stを4.9g(0.03mol)、MA-C6Fを5.6g(0.013mol)、HEMA(東京化成工業株式会社品)を5.9g(0.045mol)、MEKを37.2g採取し、AIBNを0.84g(0.005mol)加え、攪拌しつつ脱気した後に、フラスコ内を窒素ガスで置換し、内温79℃に昇温し終夜で反応させた。反応系にn-ヘプタン250gを滴下したところ、白色の沈殿を得た。この沈殿を濾別し、温度45℃下にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤前駆体3を16.7g、収率90%で得た。
【0271】
<NMR測定結果>撥液剤前駆体3の各繰り返し単位の組成比は、mol比で表わして、BTFBEによる繰り返し単位:p-AcO-Stによる繰り返し単位:MA-C6Fによる繰り返し単位:HEMAによる繰り返し単位=12:30:13:45であった。
【0272】
【化47】
【0273】
<GPC測定結果>
Mw=9,800、Mw/Mn=1.5
【0274】
[撥液剤3の合成]攪拌機付き500mlガラス製フラスコ内に、撥液剤前駆体3を16.5g(水酸基当量0.045mol)、トリエチルアミンを0.45g(水酸基当量0.0045mol)PGMEAを60g採取し、カレンズAOIを6.4g(水酸基当量0.045mol)加え、45℃で4時間反応させた。反応終了後の反応液を濃縮後、n-ヘプタン200gを加え、沈殿を析出させた。この沈殿を濾別し、40℃にて減圧乾燥を行い、白色固体として撥液剤3を19.4g、収率85%で得た。
【0275】
【化48】
【0276】
13C-NMR測定結果>撥液剤3において、AOI由来のアクリル酸誘導体導入量(反応率)及び残水酸基量(未反応率)は、mol比で表わして99:1であった。また、架橋基部位と反応しない各繰り返し単位(BTFBEによる繰り返し単位、p-AcO-Stによる繰り返し単位、MA-C6Fによる繰り返し単位)の組成比は、用いた撥液剤前駆体3から変化がない(架橋基導入前と同じ)ことを確認した。繰り返し単位より撥液剤3中の含フッ素原子含有率は18.5質量%であった。従って、撥液剤3は、含フッ素樹脂(D)である。
【0277】
<GPC測定結果>
Mw=14,300、Mw/Mn=1.7
【0278】
3.着色顔料分散体1の調製
表1に記載の顔料、分散剤、アルカリ可溶性樹脂及び溶剤を、表1に記載の質量比となるように混合した。この溶液を25℃で0.5mmφのジルコニアビーズを用い、ビーズミルにて12時間分散処理した。分散処理終了後、濾過によりビーズを取り除き、着色顔料分散体1を調製した。
【0279】
【表1】
【0280】
4.感光性樹脂組成物の調製
以下に各実施例及び各比較例で用いた各成分を示す。
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂1:日本化薬社製「ZAR-2050H」(特殊BIS-A型エポキシ樹脂、前掲の一般式(1)で表される構造単位を含む。フッ素原子を含まない)
アルカリ可溶性樹脂2:日本化薬社製「ZCR-1569H」(ビフェニル型エポキシ樹脂、前掲の一般式(1)で表される構造単位を含まない)
アルカリ可溶性樹脂3:日本化薬社製「CCR-1171H」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、前掲の一般式(1)で表される構造単位を含まない)
アルカリ可溶性樹脂4:ビスフェノールB誘導体、前掲の一般式(1)で表される構造単位を含む。Rがメチル基、エチル基。フッ素原子を含まない)
アルカリ可溶性樹脂5:ビスフェノールE誘導体、前掲の一般式(1)で表される構造単位を含む。Rがメチル基、水素。フッ素原子を含まない)
【0281】
アルカリ可溶性樹脂4の合成:
温度計、冷却器付きデカンターを付した4つ口フラスコにビスフェノールB(東京化成工業試薬)24.3g(0.1mol)にエピクロロヒドリン(東京化成工業試薬)92.52g(10mol)を入れ溶解した。80℃で48質量%NaOH水溶液16.7g(0.2mol)を1時間かけて滴下した。加熱してエピクロロヒドリンと水を蒸留し、エピクロルヒドリンと水を分離し、エピクロロヒドリンを前記フラスコ内に戻し続けた。さらに2時間攪拌を続けた。その後、前記フラスコ内に水を50g加え静置した。下層(水層)を廃棄し、有機層に残存しているエピクロルヒドリンを回収して粗樹脂を得た。粗樹脂にメチルイソブチルケトン(以下、MIBK)50gを加え、さらに3質量%NaOH水溶液30gを加え70℃にて30分攪拌した。そして下層の水層を廃棄した。その後、MIBK層を水30gで水洗し、水層を廃棄した。MIBK層を濃縮後、目的のエポキシ樹脂35gを得た。この樹脂は液状で、エポキシ当量は180g/eqであった。
得られたエポキシ樹脂は、下記一般式(11-1)及び(11-2)で示されるビスフェノールB型エポキシ化合物であった。
【0282】
【化49】
(一般式(11-1)及び(11-2)中、nは、それぞれ独立に1~20である。)
【0283】
上記で得たビスフェノールB型エポキシ化合物(エポキシ当量180g/eq)30g、アクリル酸(東京化成工業試薬)10g、重合禁止剤として6-t-ブチル-2,4-キシレノール(東京化成工業試薬)0.1g、トリフェニルホスフィン(東京化成工業試薬)1.0g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート40gを反応容器に仕込み、酸価が3mgKOH/g以下になるまで90℃で撹拌した。次いで、上記反応により得られた反応液にcis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物1.0gを添加し、90℃で3時間反応させた。
そして、固形分酸価50mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が7,200のアルカリ可溶性樹脂4の50質量%PGMEA溶液を得た。
アルカリ可溶性樹脂4は、以下の一般式(1-4)、(1-5)及び(1-6)で示す構造単位を含有することを特徴とする高分子化合物であった。
【0284】
【化50】
(上記一般式(1-4)、(1-5)及び(1-6)中、a、b及びcはそれぞれ1以上の整数である。)
【0285】
アルカリ可溶性樹脂5の合成:
温度計、冷却器付きデカンターを付した4つ口フラスコにビスフェノールE(東京化成工業試薬)21.4g(0.1mol)にエピクロロヒドリン92.52g(10mol)を入れ溶解した。80℃で48質量%NaOH水溶液16.7g(0.2mol)を1時間かけて滴下した。加熱してエピクロロヒドリンと水を蒸留し、エピクロルヒドリンと水を分離し、エピクロロヒドリンを前記フラスコ内に戻し続けた。さらに2時間攪拌を続けてその後、前記フラスコ内に水を50gを加え静置した。下層(水層)を廃棄し、有機層に残存しているエピクロルヒドリンを回収して粗樹脂を得た。粗樹脂にMIBK50gを加え、さらに3質量%NaOH水溶液30gを加え70℃にて30分攪拌した。そして下層の水層を廃棄した。その後、MIBK層を水30gで水洗し、水層を廃棄した。MIBK層を濃縮後、目的のエポキシ樹脂30gを得た。この樹脂は液状で、エポキシ当量は185g/eqであった。
得られたエポキシ樹脂は、下記一般式(12-1)及び(12-2)で示されるビスフェノールE型エポキシ化合物であった。
【0286】
【化51】
(一般式(12-1)及び(12-2)中、nは、それぞれ独立に1~20である。)
【0287】
上記で得た下記式で表されるビスフェノールE型エポキシ化合物(エポキシ当量185g/eq)25g、アクリル酸(東京化成工業試薬)8g、重合禁止剤として6-t-ブチル-2,4-キシレノール(東京化成工業試薬)0.1g、トリフェニルホスフィン(東京化成工業試薬)0.8g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート33gを反応容器に仕込み、酸価が3mgKOH/g以下になるまで90℃で撹拌した。次いで、上記反応により得られた反応液にcis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物0.8gを添加し、90℃で3時間反応させた。
そして、固形分酸価50mgKOH/g、GPCで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が7,500のアルカリ可溶性樹脂5の50質量%PGMEA溶液を得た。
アルカリ可溶性樹脂5は、以下の一般式(1-7)、(1-8)及び(1-9)で示す構造単位を含有することを特徴とする高分子化合物であった。
【0288】
【化52】
(上記一般式(1-7)、(1-8)及び(1-9)中、a、b及びcはそれぞれ1以上の整数である。)
<着色顔料分散体>
着色顔料分散体1:上述の着色顔料分散体1の調製の手順で調製した着色顔料分散体。(顔料混合、全固形分に対する顔料含有量:66質量%、粒子径:D50は、320nm)
着色顔料分散体2:ラクタムブラックとして、以下化合物からなる顔料(全固形分に対する顔料含有量:75質量%、粒子径:D50は、300nm)
【0289】
【化53】
【0290】
着色顔料分散体3:大日精化工業社製「NX-501」(酸化チタン顔料、顔料含有量:
73質量%、粒子径:D50は、270nm)
<エチレン性不飽和化合物>
エチレン性不飽和化合物1:日本化薬社製「DPHA」(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)
<光重合開始剤>
光重合開始剤:BASF社製「イルガキュア OXE-01」
<添加剤>
添加剤1:日本化薬社製「KAYAMER PM-21」(カプロラクトン変性リン酸モノメタクリレートとカプロラクトン変性リン酸ジメタクリレートの混合物)
【0291】
5.評価
<感光性樹脂組成物の調製>
全固形分中の各成分の固形分の含有割合が表2及び表3に記載のとなるように各成分を加え(表2中、配合比の数値は、質量配合比を意味する)、さらに、全固形分の含有割合が30質量%となるようにPGMEAを加え、攪拌、溶解させて、実施例1~21及び比較例1~11の感光性樹脂組成物を調製した。得られた感光性樹脂組成物を用いて、後述する方法で評価を行った。
【0292】
【表2】
【0293】
【表3】
【0294】
[評価測定用基板の形成]
10cm四方のITO基板を超純水、次いでアセトンにより洗浄後、UVオゾン処理装置(セン特殊光源株式会社製、型番PL17-110)を用い、当該基板に対するUVオゾン処理を5分間行った。次いで、各実施例及び各比較例に係る感光性組成物を用いて、得られたUVオゾン処理後の基板上にスピンコータを用い回転数400rpmで塗布し、ホットプレート上で100℃150秒間、加熱し、膜厚3μmの含フッ素塗膜及び比較含フッ素塗膜を形成した。マスクアライナ(ズース・マイクロテック株式会社製品)を得られた樹脂膜にi線(波長365nm)を照射し、露光を行った。得られた露光後の硬化塗膜に対して接触角及び光学濃度の測定を行った。
【0295】
[接触角]
上記工程により得られた硬化物を有する基板を、230℃で60分間、加熱を行った後、硬化物表面のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に対する接触角を接触角計(共和界面化学株式会社製GMs-601)を用いて、PGMEA接触角を塗膜上の20か所にて測定した。
測定された数値の平均値、最大値、最小値及び最大値と最小値との差を表2及び表3に示す。
【0296】
[光学濃度]
上記工程により得られた実施例4~21及び比較例5~11に係る硬化物を有する基板を、230℃で60分間、加熱を行った後、硬化物の光学濃度を白黒透過濃度計(伊原電子製T5plus)を用いて、塗膜上の20か所にてOD値を測定した。
測定された数値の平均値、最大値、最小値及び最大値と最小値との差を表2及び表3に示す。
【0297】
実施例では、PGMEA接触角及びOD値の膜面内でのバラつきが小さいことを確認することができた。
また、比較例では、実施例で用いているアルカリ可溶性樹脂と比べ、他成分との相溶性が低いためか、PGMEA接触角あるいはOD値の硬化物内でのバラつきが大きいことを確認した。