IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 佐竹化学機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-気液撹拌装置 図1
  • 特開-気液撹拌装置 図2
  • 特開-気液撹拌装置 図3
  • 特開-気液撹拌装置 図4
  • 特開-気液撹拌装置 図5
  • 特開-気液撹拌装置 図6
  • 特開-気液撹拌装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074193
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】気液撹拌装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/53 20220101AFI20240523BHJP
   B01F 23/232 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 23/231 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 23/233 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 27/112 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 27/86 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 27/90 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 35/53 20220101ALI20240523BHJP
【FI】
B01F25/53
B01F23/232
B01F23/231
B01F23/233
B01F27/112
B01F27/86
B01F27/90
B01F35/71
B01F35/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185326
(22)【出願日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】000171919
【氏名又は名称】佐竹マルチミクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102749
【弁理士】
【氏名又は名称】澤木 紀一
(74)【代理人】
【識別番号】100081787
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 輝晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 好一
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB10
4G035AB28
4G035AC30
4G035AC31
4G035AE13
4G037AA01
4G037DA30
4G037EA01
4G037EA04
4G078AA07
4G078BA05
4G078CA08
4G078DA01
4G078EA10
(57)【要約】
【課題】従来の気液撹拌装置は、多くの気液動力や撹拌動力を消費する欠点があった。
【解決手段】本発明の気液撹拌装置は、液体が容れられる槽と、該槽に設けた、前記槽内の液体を槽外に導入し、再度、槽内に戻して循環させる循環管と、該循環管内の液体を移送する液体移送手段と、前記循環管内に設けた通気手段とよりなることを特徴とする。また、前記撹拌槽内に設けた、液体を半径方向外方に吐出する撹拌翼と、前記撹拌槽の底部に設けた、上昇流を生じさせる静翼とを更に有し、前記循環管の出口部を、前記撹拌翼と静翼とにより形成される循環流が生ずる、前記槽の壁に連通接続したことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が容れられる槽と、
該槽に設けた、前記槽内の液体を槽外に導入し、再度、槽内に戻して循環させる循環管と、
該循環管内の液体を移送する液体移送手段と、
前記循環管内に設けた通気手段とよりなることを特徴とする気液撹拌装置。
【請求項2】
前記撹拌槽内に設けた、液体を半径方向外方に吐出する撹拌翼と、
前記撹拌槽の底部に設けた、上昇流を生じさせる静翼とを更に有し、
前記循環管の出口部を、前記撹拌翼と静翼とにより形成される循環流が生ずる、前記槽の壁に連通接続したことを特徴とする請求項1に記載の気液撹拌装置。
【請求項3】
前記撹拌翼は、半径方向に放射状に設けられた複数のフラットバドル翼よりなり、
前記静翼は、放射状に設けられた、複数の帯状板からなり、該帯状板の交差部に相当する中心部には、隙間が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の気液撹拌装置。
【請求項4】
前記循環管は、出口部が、前記槽の周側壁の下部に接続され、入口部が、上部に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の気液撹拌装置。
【請求項5】
前記通気手段は、微細気泡を発生させるメンブレンから形成されることを特徴とする請求項1に記載の気液撹拌装置。
【請求項6】
前記撹拌槽の内周面には、上下方向に延びるバッフルが設けられることを特徴とする請求項1に記載の気液撹拌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槽内の液体を、冷却等のために槽外に取り出し、再度、槽内に戻して循環させる循環管(循環ライン)を有する、例えば、微生物やカビ系培養等を行うバイオリアクター(生化学反応装置)に使用される気液撹拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、気液撹拌させる微生物バイオリアクターは、タービン翼で気泡を強力に分散する機械式の気液撹拌装置と、微細気泡を吐出させる通気ノズルやセラミック多孔質体や微細気泡メンブレンなどからなる微細気泡放出手段により、通気エネルギーで培養槽内を撹拌混合させる気泡塔式の気液撹拌装置がある。
【0003】
また、例えば、撹拌槽が大スケールになると、冷却性能が低下する事から、該撹拌槽内に冷却コイルを設置する必要がある。
【0004】
前記機械式のバイオリアクターの気液撹拌装置の例1としては、例えば、図4に示すように、液体が容れられた有底の円筒状の撹拌槽1内の中心部に垂下した回転軸2に、上下方向に離間して複数のタービン翼などの撹拌翼3を設けると共に、該撹拌槽1の内周面1bに上下方向に延びるバッフル4を設ける。
【0005】
そして、最下部の前記撹拌翼3の下に、例えば、環状の通気管(スパージャーリング)5を設けると共に、該環状の通気管5の周壁の上面部に複数の気体吐出口(図示せず)を設けて、これら気体吐出口から上方に吐出した気体を前記撹拌翼3により強力に分散させて、前記撹拌槽1内の液体に通気する機械式の気液撹拌装置がある(特許文献1)。
【0006】
また、気泡塔式のバイオリアクターの気液撹拌装置は、例えば、図5に示すように、液体が容れられた有底の円筒状の撹拌槽1の内周面に上下方向に延びるバッフル4を設けると共に、前記撹拌槽1の底部1aの中心に、微細気泡を吐出させる通気ノズルやセラミック多孔質体や微細気泡メンブレンなどからなる微細気泡放出手段6を設け、前記底部1aから微細気泡を吐出させて、通気エネルギーで撹拌槽1内を撹拌させる気泡塔式の気液撹拌装置がある。
【0007】
そして、例えば、前記撹拌槽が大スケール(大容量)の場合には、冷却性能が低下することから、図4及び図5に示すように、前記各撹拌槽1内には、内周面に沿って上下方向延びるに螺旋状の冷却コイル7が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-116519号公開公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記冷却方法は、前記冷却コイル7が密になるほど、撹拌槽1内の流動性が悪化し、バイオリアクターとしての性能が低下すると共に、撹拌動力、通気動力が増大し、エネルギー効率面で課題があった。
【0010】
そのため、図6図7に示すように、前記撹拌槽1の外周壁に、上下方向に液体循環用の循環管8の両端部を連通接続し、該循環管8に、該循環管8内の液体を冷却する手段(図示せず)を設けると共に、液体移送用のポンプ9を設け、該ポンプ9を駆動して、前記撹拌槽1内の液体を、前記循環管8内に導入し、そして、前記冷却手段により冷却した後に、前記撹拌槽1内に戻す冷却方法がある。
【0011】
しかしながら、前記機械式の気液撹拌装置は、依然として、気体を前記撹拌翼3により強力に分散させるため、多くの気液動力や撹拌動力を消費する欠点があった。
【0012】
また、気泡塔型バイオリアクターは、容量(スケール)に限界があり、ガス制御と流動制御、泡沫層の影響から100~300kL(ton)クラスでの実用性は極めて低い。
【0013】
また、100~300kL以上の大型リアクターでは、伝熱効率を向上させた外冷式の機械式バイオリアクターが運用されているが、300kL以上のスケールで運用するには、ガス分散のための撹拌動力が大きいことから、非現実的なモーター動力が必要となり、エネルギー効率面でクリアすべき課題が存在し、実用性がない。
【0014】
そこで、本発明者は、種々実験検討した結果、撹拌槽に設けた循環管(循環ライン)を利用して通気させ、また、撹拌翼と静翼により形成される循環流を利用することにより、大幅に、撹拌動力、通気動力を低減させて、気液混合できることを見出したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成すべく、本発明の気液撹拌装置は、液体が容れられる槽と、該槽に設けた、前記槽内の液体を槽外に導入し、再度、槽内に戻して循環させる循環管と、該循環管内の液体を移送する液体移送手段と、前記循環管内に設けた通気手段とよりなることを特徴とする。
【0016】
また、前記撹拌槽内に設けた、液体を半径方向外方に吐出する撹拌翼と、前記撹拌槽の底部に設けた、上昇流を生じさせる静翼とを更に有し、前記循環管の出口部を、前記撹拌翼と静翼とにより形成される循環流が生ずる、前記槽の壁に連通接続したことを特徴とする。
【0017】
また、前記撹拌翼は、半径方向に放射状に設けられた複数のフラットバドル翼よりなり、前記静翼は、放射状に設けられた、複数の帯状板からなり、該帯状板の交差部に相当する中心部には、隙間が形成されていることを特徴とする。
【0018】
また、前記循環管は、出口部が、前記槽の周側壁の下部に接続され、入口部が、上部に接続されていることを特徴とする。
【0019】
また、前記通気手段は、微細気泡を発生させるメンブレンから形成されることを特徴とする。
【0020】
また、前記撹拌槽の内周面には、上下方向に延びるバッフルが設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、循環管の移送力を利用したので、撹拌動力、通気動力を小さくして、気液混合ができるようになる。
【0022】
また、撹拌翼と静翼により形成される循環流に乗せて撹拌する低動力撹拌技術を用い、そして、微細気泡を、撹拌翼と静翼により形成される循環流に乗せて循環させるため、撹拌動力、通気動力を小さくして、気液混合ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の気液撹拌装置の縦断側面図である。
図2】本発明の気液撹拌装置の拡大横断平面図である。
図3】本発明の気液撹拌装置の槽内に形成される循環流を示す説明用縦断側面図である。
図4】従来の気液撹拌装置の縦断側面図である。
図5】従来の他の気液撹拌装置の縦断側面図である。
図6】前記従来の気液撹拌装置の他の例の縦断側面図である。
図7】前記従来の他の気液撹拌装置の他の例の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための形態の実施例を以下に示す。
【0025】
なお、背景技術と同じ部分には同じ符号を付け、説明を省略する。
【実施例0026】
本発明の実施例1を図1図3によって説明する。
【0027】
本発明の気液撹拌装置は、液体が容れられる有底の円筒状の撹拌槽1と、該撹拌槽1内に垂設された回転軸2と、前記回転軸2の下端に設けた、液体を半径方向外方に吐出する撹拌翼10と、前記撹拌槽1の底部1aの中心に設けた、上昇流を生じさせる静翼11と、前記撹拌槽1の外周壁に、例えば、上下方向に、両端部を槽内外を連通して接続した液体循環管12と、該液体循環管12を、例えば、冷却する冷却手段(図示せず)と、前記液体循環管12に設けた、該液体循環管12内の液体を移送するポンプ13などの液体移送手段と、前記循環管12内の、例えば、前記ポンプ13の下流側に設けた、セラミック多孔質体や微細気泡発生メンブレンなどからなる微細気泡放出手段14とよりなる。なお、4は、バッフルであるが、省略してもよい。
【0028】
また、前記液体循環管12の、前記撹拌槽1に連結された出口部12aは、前記撹拌翼10と前記静翼11とにより形成される循環流の生ずる、前記撹拌槽1の周側壁に接続されるようにする。
【0029】
なお、該出口部12aは、例えば、前記撹拌槽1の周側壁の下部に接続される。
【0030】
また、前記循環管8の入口部8bは、前記撹拌槽1の周側壁の上部に接続される。
【0031】
また、前記撹拌翼10は、例えば、前記回転軸2の下端に、半径方向に放射状に固定した、例えば、4枚の矩形板状のフラットパドル翼などの翼板10aとよりなり、液体内の前記撹拌槽1の上部に設けられる。
【0032】
また、前記静翼11は、例えば、図2に示すように、直線状の帯状板11aからなり、該帯状板11aは、前記撹拌槽1内の底部1aの中心を通る半径線Rから間隔dの位置に平行に放射状に、例えば、4枚固定されると共に、これら帯状板11aの交差部に相当する該底部の中心部には隙間が形成されている。
【0033】
本発明は上記のような構成であるから、前記撹拌翼10を回転すれば、図3に示すように、撹拌翼10からの液体は、半径方向外方に吐出し、前記撹拌槽1の内周面1bにあたり、前記撹拌槽1の内周面に沿う、下方に向かう旋回流を生じ、そして、前記底部1aに到達して、該底部1aの中央まで移動して、前記底部1aの静翼11により中心部で上昇流を生じ、そして、該上昇した液体は、前記撹拌翼7により、半径方向外方に吐出して、該液体は、前記撹拌槽1内で循環するようになる。
【0034】
また、前記ポンプ9を駆動すれば、前記撹拌槽1内の液体が、前記循環管8の入口部8bから該循環管8内に導入され、そして、前記冷却手段により冷却され、そして、前記微細気泡放出手段14により、液体内に微細気泡が放出され、該微細気泡を含む液体は、前記ポンプ8の駆動力により、前記循環管8の出口部8aから、前記撹拌槽1内に放出されるようになる。
【0035】
そして、前記出口部8aは、前記撹拌翼10と前記静翼11とにより形成される循環流の生ずる、前記撹拌槽1の周側壁に接続されているので、該撹拌槽内に放出された微細気泡は、前記循環流に乗り、底部中央で上昇して、循環流に乗って、気液混合がなされるようになる。
【0036】
本発明によれば、前記循環管8の循環力を利用して、微細気泡を撹拌槽1内に放出し、また、撹拌槽1内においては、該撹拌槽1内に形成された循環流に乗せて、微細気泡を循環させることができるので、撹拌動力、通気動力を小さくして、気液混合ができるようになる。
【0037】
これにより、撹拌動力にかかる消費エネルギーを、例えば、最大で2/10程度まで低減する事が可能となった。
【0038】
また、微細気泡を用いることでガス吸収効率kLaを向上させ、培養に必要な通気流量を低減させ、通気動力を大幅削減する。
【0039】
これにより、トータルエネルギーの飛躍的低減により、300kL以上の大型培養槽の効率的運用が可能となる。
【0040】
尚、300kL以下でも十分に上記効果を発揮するようになる。
【0041】
また、上記実施例では、外冷ポンプ循環流を利用したが、前記循環管は、冷却用以外に、加温用、濃縮用、希釈用、添加用、結晶用等のための、槽内液体を槽外を経由して循環させる循環管であってもよく、撹拌槽内の液体を、撹拌槽外に導入し、そして、その導入された液体を、再度、前記撹拌槽内に戻すものであればよい。
【0042】
また、前記循環管は、循環管自体が、通気のためのものであってもよい。
【0043】
また、前記循環管8は、前記撹拌槽1に上下方向に接続する以外に、縦方向や、その他の方向に接続してもよく、特に、接続する場所に限定はない。
【0044】
また、複数の循環管8がある場合には、それぞれに、前記微細気泡放出手段14を設けるようにしてもよい。
【0045】
また、前記微細気泡放出手段14は、前記循環管8内において、複数設けてよい。
【0046】
また、前記循環管内を移送するための移送手段は、ポンプ以外の手段であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 撹拌槽
1a 底部
1b 内周面
2 回転軸
3 撹拌翼
4 バッフル
5 通気管
6 微細気泡放出手段
7 冷却コイル
8 循環管
9 ポンプ
10 撹拌翼
10a 翼板
11 静翼
11a 帯状板
12 液体循環管
12a 出口部
12b 入口部
13 移送ポンプ
14 微細気泡放出手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7