(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000742
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】シミュレーション装置、シミュレーション方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/27 20200101AFI20231226BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20231226BHJP
F24F 11/62 20180101ALN20231226BHJP
【FI】
G06F30/27
G06F30/10 200
F24F11/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099614
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿介
(72)【発明者】
【氏名】奥井 隆宗
(72)【発明者】
【氏名】西村 剛
【テーマコード(参考)】
3L260
5B146
【Fターム(参考)】
3L260BA49
3L260BA75
3L260CA15
3L260CA16
3L260CB13
3L260CB17
3L260CB63
3L260EA22
5B146AA21
5B146DC03
5B146DJ03
5B146DJ11
5B146FA02
(57)【要約】
【課題】空調シミュレーションと空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションの計算量を低減する。
【解決手段】シミュレーション装置が有する制御部は、空気調和機の運転を模擬する空調シミュレーションと空間の状態を模擬する空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションを行い、空調シミュレーション又は空間シミュレーションを学習モデルにより行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を有するシミュレーション装置であって、
前記制御部は、
空気調和機の運転を模擬する空調シミュレーションと空間の状態を模擬する空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションを行い、
前記空調シミュレーション又は前記空間シミュレーションを学習モデルにより行う、
シミュレーション装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記空調シミュレーションを前記学習モデルにより行い、
前記空調シミュレーションは、前記空気調和機の内部状態を出力する、
請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記内部状態は、前記空気調和機の内部の冷媒温度、圧力又は制御状態を含む、
請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記空調シミュレーションは、前記空気調和機の設定温度及び前記空間の室内温度を入力とし、前記空気調和機の吹出温度、吹出風量、前記内部状態及び消費電力を出力とする、
請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記空間シミュレーションを前記学習モデルにより行い、
前記空間シミュレーションは、前記空間への負荷量を入力とし、前記空間の室内温度を出力とする、
請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記負荷量は、前記空気調和機の吹出温度及び吹出風量、並びに前記空間の外部からの侵入熱負荷及び内部負荷を含む、
請求項5に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記空間シミュレーションは、前記空調シミュレーションにより出力される前記空気調和機の吹出温度及び吹出風量を入力とし、
前記空調シミュレーションは、前記空間シミュレーションにより出力される前記空間の室内温度を入力とする、
請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記連携シミュレーションは、前記空間への負荷量及び前記空気調和機の設定温度を入力とする、
請求項1に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記連携シミュレーションは、前記空気調和機の運転効率を出力とする、
請求項8に記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
前記連携シミュレーションは、
前記空気調和機の内部の冷媒温度、制御状態、消費電力、吹出温度及び吹出風量、並びに前記空間の室内温度及び室内気流のいずれかをさらに出力とする、
請求項9に記載のシミュレーション装置。
【請求項11】
前記制御部は、
物理モデルの前記空調シミュレーションを実行し、
前記空気調和機の設定温度及び前記空間の室内温度を入力データとし、前記空気調和機の吹出温度、吹出風量、内部状態及び消費電力を出力データとする学習データを生成し、
前記学習データを用いて、前記空調シミュレーションの前記学習モデルを生成する、
請求項2に記載のシミュレーション装置。
【請求項12】
前記制御部は、
3次元熱流体解析を実行し、
前記空間への負荷量、前記空気調和機の吹出温度及び吹出風量を入力データとし、前記空間の室内温度を出力データとする学習データを生成し、
前記学習データを用いて、前記空間シミュレーションの前記学習モデルを生成する、
請求項5に記載のシミュレーション装置。
【請求項13】
シミュレーション装置が有する制御部が、
空気調和機の運転を模擬する空調シミュレーションと空間の状態を模擬する空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションを行う手順を実行し、
前記空調シミュレーション又は前記空間シミュレーションを学習モデルにより行う、
シミュレーション方法。
【請求項14】
シミュレーション装置が有する制御部に、
空気調和機の運転を模擬する空調シミュレーションと空間の状態を模擬する空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションを行う手順を実行させ、
前記空調シミュレーション又は前記空間シミュレーションを学習モデルにより行う、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シミュレーション装置、シミュレーション方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の制御性能を評価するために、空気調和機の運転を模擬する空調シミュレーションが用いられている。空調シミュレーションは、単独では評価可能な制御性能が定常状態における制御性能に限られる。そのため、空調シミュレーションと空間の状態を模擬する空間シミュレーションとを連携し、非定常状態における空気調和機の制御性能を評価することが行われている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、空調制御ロジックを実装した空調設備シミュレータと、室内気流分布や温度分布を解析する数値流体力学(CFD; Computational Fluid Dynamics)解析とを連成したシミュレータが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】斎数由香子,原山和也,本田光弘,村田裕志,綛田長生,"局所空調制御運用時における省エネ性および快適性に関する研究 : (第1報)空調設備と空調空間の非定常連成シミュレータの開発",空気調和・衛生工学会大会学術講演論文集,2011.1(0),pp. 117-120,2011年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の空調シミュレーションや空間シミュレーションは計算量が多いため、これらを連携した連携シミュレーションでは計算量が膨大となる。
【0006】
本開示は、空調シミュレーションと空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションの計算量を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係るシミュレーション装置は、制御部を有するシミュレーション装置であって、前記制御部は、空気調和機の運転を模擬する空調シミュレーションと空間の状態を模擬する空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションを行い、前記空調シミュレーション又は前記空間シミュレーションを学習モデルにより行う。
【0008】
本開示の第1の態様によれば、空調シミュレーションと空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションの計算量を低減することができる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様に係るシミュレーション装置であって、前記制御部は、前記空調シミュレーションを前記学習モデルにより行い、前記空調シミュレーションは、前記空気調和機の内部状態を出力する。
【0010】
本開示の第3の態様は、第2の態様に係るシミュレーション装置であって、前記内部状態は、前記空気調和機の内部の冷媒温度、圧力又は制御状態を含む。
【0011】
本開示の第4の態様は、第2の態様又は第3の態様に係るシミュレーション装置であって、前記空調シミュレーションは、前記空気調和機の設定温度及び前記空間の室内温度を入力とし、前記空気調和機の吹出温度、吹出風量、前記内部状態及び消費電力を出力とする。
【0012】
本開示の第5の態様は、第1の態様から第4の態様のいずれかに係るシミュレーション装置であって、前記制御部は、前記空間シミュレーションを前記学習モデルにより行い、前記空間シミュレーションは、前記空間への負荷量を入力とし、前記空間の室内温度を出力とする。
【0013】
本開示の第6の態様は、第5の態様に係るシミュレーション装置であって、前記負荷量は、前記空気調和機の吹出温度及び吹出風量、並びに前記空間の外部からの侵入熱負荷及び内部負荷を含む。
【0014】
本開示の第7の態様は、第1の態様から第6の態様のいずれかに係るシミュレーション装置であって、前記空間シミュレーションは、前記空調シミュレーションにより出力される前記空気調和機の吹出温度及び吹出風量を入力とし、前記空調シミュレーションは、前記空間シミュレーションにより出力される前記空間の室内温度を入力とする。
【0015】
本開示の第8の態様は、第1の態様から第7の態様のいずれかに係るシミュレーション装置であって、前記連携シミュレーションは、前記空間への負荷量及び前記空気調和機の設定温度を入力とする。
【0016】
本開示の第9の態様は、第8の態様に係るシミュレーション装置であって、前記連携シミュレーションは、前記空気調和機の運転効率を出力とする。
【0017】
本開示の第10の態様は、第9の態様に係るシミュレーション装置であって、前記連携シミュレーションは、前記空気調和機の内部の冷媒温度、制御状態、消費電力、吹出温度及び吹出風量、並びに前記空間の室内温度及び室内気流のいずれかをさらに出力とする。
【0018】
本開示の第11の態様は、第2の態様から第10の態様のいずれかに係るシミュレーション装置であって、前記制御部は、物理モデルの前記空調シミュレーションを実行し、前記空気調和機の設定温度及び前記空間の室内温度を入力データとし、前記空気調和機の吹出温度、吹出風量、内部状態及び消費電力を出力データとする学習データを生成し、前記学習データを用いて、前記空調シミュレーションの学習モデルを学習する。
【0019】
本開示の第12の態様は、第5の態様から第11の態様のいずれかに係るシミュレーション装置であって、前記制御部は、3次元熱流体解析を実行し、前記空間への負荷量、前記空気調和機の吹出温度及び吹出風量を入力データとし、前記空間の室内温度を出力データとする学習データを生成し、前記学習データを用いて、前記空間シミュレーションの学習モデルを学習する。
【0020】
本開示の第13の態様に係るシミュレーション方法は、シミュレーション装置が有する制御部が、空気調和機の運転を模擬する空調シミュレーションと空間の状態を模擬する空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションを行う手順を実行し、前記空調シミュレーション又は前記空間シミュレーションを学習モデルにより行う。
【0021】
本開示の第14の態様に係るプログラムは、シミュレーション装置が有する制御部に、空気調和機の運転を模擬する空調シミュレーションと空間の状態を模擬する空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションを行う手順を実行させ、前記空調シミュレーション又は前記空間シミュレーションを学習モデルにより行う。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】連携シミュレーションの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】シミュレーション装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】シミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0024】
[実施形態]
本開示の実施形態は、空調シミュレーションと空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションを行うシミュレーション装置である。空調シミュレーションは、空気調和機の運転を模擬する。空間シミュレーションは、空気調和機により空気調和が行われる空間の状態を模擬する。
【0025】
空調シミュレーションの対象とする空気調和機は、例えば、ルームエアコン又はマルチエアコン等である。ただし、空気調和機の種類は限定されず、どのような空気調和を行う機器であってもよい。
【0026】
空間シミュレーションの対象とする空間は、例えば、住宅、居室又はオフィス等である。ただし、空間の種類は限定されず、空気調和機により空気調和が行われる空間であれば、どのような空間であってもよい。
【0027】
連携シミュレーションでは、空調シミュレーションから出力されるシミュレーション結果を空間シミュレーションに入力し、空間シミュレーションから出力されるシミュレーション結果を空調シミュレーションに入力する。連携シミュレーションを行うことで、空気調和機の運転が空間の状態に与える影響と、空間の状態が空気調和機の運転に与える影響とを同時に模擬することができる。
【0028】
特に、空調シミュレーションと空間シミュレーションとを連携することで、定常状態だけでなく、起動、発停、過渡状態等の非定常状態における空気調和機の運転を模擬することができる。その結果、高精度なシミュレーション結果を得ることができる。
【0029】
本実施形態におけるシミュレーション装置は、空間シミュレーション又は空調シミュレーションを学習モデルにより行う。従来の空調シミュレーションは、例えば、物理モデルを用いて行われている。従来の空間シミュレーションは、例えば、3次元熱流体解析により行われている。物理モデルを用いた空調シミュレーションや3次元熱流体解析による空間シミュレーションは、計算量が多く、高スペックな情報処理装置を必要とする。
【0030】
空調シミュレーションを学習モデルにより行う場合、従来の空間シミュレーションで得られる入力データと出力データとの関係を学習データとし、教師有り学習により学習モデルを生成する。学習データの収集には計算コストがかかるものの、学習済みの学習モデルを用いてシミュレーション結果を予測する計算量は、従来の空調シミュレーションと比べて大幅に低減することができる。空間シミュレーションを学習モデルにより行う場合も同様に、従来の空間シミュレーションと比べて計算量を大幅に低減することができる。
【0031】
したがって、本実施形態におけるシミュレーション装置によれば、空調シミュレーションと空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションの計算量を低減することができる。
【0032】
<全体構成>
図1は、本実施形態における連携シミュレーションの全体構成の一例を示すブロック図である。
【0033】
図1に示されているように、本実施形態における連携シミュレーション1は、空調シミュレーション2及び空間シミュレーション3により構成される。空調シミュレーション2は、学習済みの学習モデルである空調学習モデル4を用いて、空調シミュレーションを行う。空間シミュレーション3は、学習済みの学習モデルである空間学習モデル5を用いて、空間シミュレーションを行う。
【0034】
なお、空調学習モデル4と空間学習モデル5とは、少なくとも一方を用いればよい。言い替えると、空調学習モデル4のみを用いてもよいし、空間学習モデル5のみを用いてもよいし、空調学習モデル4と空間学習モデル5との両方を用いてもよい。
【0035】
連携シミュレーション1は、シミュレーション条件を入力とし、シミュレーション結果を出力する。本実施形態におけるシミュレーション条件は、空気調和機の設定温度及び空間への負荷量である。空間への負荷量は、空間の外部からの侵入熱負荷及び内部負荷である。本実施形態におけるシミュレーション結果は、空気調和機の運転効率である。空気調和機の運転効率は、空調シミュレーション2から出力される空気調和機の内部状態及び消費電力に基づいて計算される。
【0036】
空気調和機の運転効率は、例えば、成績係数(COP; Coefficient of Performance)である。成績係数は、空調機の運転に使用された電力に対して、室内空間に与えた仕事(熱量)を表す値である。成績係数は、具体的には、冷房/暖房能力を消費エネルギーで除算した値である。
【0037】
冷房/暖房能力は、例えば、CC(Compressor Curve)法により計算することができる。CC法は、冷媒循環量と室内機出入口のエンタルピ差から能力を推定する手法である。冷媒循環量は、冷媒の蒸発温度及び凝縮温度を用いて所定の圧縮機特性式から求められる。消費エネルギーは、圧縮機の回転数と室外機ファンの回転数とから算出される消費エネルギーの和である。
【0038】
連携シミュレーション1に入力された空気調和機の設定温度は、空調シミュレーション2に入力される。連携シミュレーション1に入力された空間への負荷量は、空間シミュレーション3に入力される。
【0039】
空調シミュレーション2は、空気調和機の設定温度及び空間の室内温度を入力とし、空気調和機の吹出温度、吹出風量、内部状態及び消費電力を出力する。空間の室内温度は、空間シミュレーション3から出力されたものである。
【0040】
空気調和機の内部状態の一例は、空気調和機の内部の冷媒温度、圧力又は制御状態である。空気調和機の制御状態は、空気調和機が備える制御機器の制御量である。制御状態の一例は、室内機及び室外機が有する圧縮機やファンの回転数である。
【0041】
空間シミュレーション3は、空間への負荷量を入力とし、空間の室内温度及び室内気流を出力する。空間への負荷量の一例は、空気調和機の吹出温度及び吹出風量、並びに空間の外部からの侵入熱負荷及び内部負荷である。空気調和機の吹出温度及び吹出風量は、空調シミュレーション2から出力されたものである。
【0042】
空調シミュレーション2が出力する空気調和機の吹出温度及び吹出風量は、空間への負荷量として空間シミュレーション3に入力される。空間シミュレーション3が出力する空間の室内温度は、空調シミュレーション2に入力される。
【0043】
シミュレーション結果は、空気調和機の内部の冷媒温度、制御状態、消費電力、吹出温度及び吹出風量、並びに空間の室内温度及び室内気流のいずれかを含んでもよい。シミュレーション結果は、これらに限定されず、空調シミュレーション2及び空間シミュレーション3の出力から得られる情報であれば、どのような情報を含んでもよい。
【0044】
空調学習モデル4は、従来の空調シミュレーションで得られる入力データ及び出力データを学習データとして、教師有り学習により生成された機械学習モデルである。機械学習モデルの一例は、決定木である。機械学習モデルの他の例は、ニューラルネットワークである。
【0045】
従来の空調シミュレーションの一例は、物理モデルを用いた空調シミュレーションである。物理モデルの空調シミュレーションを実行することで、空気調和機の設定温度及び空間の室内温度を含む入力データと、空気調和機の吹出温度、吹出風量、内部状態及び消費電力を含む出力データとを得ることができる。これらの入力データと出力データとを組み合わせた学習データを用いて、機械学習モデルに応じた学習アルゴリズムを実行することで、空調学習モデル4を生成することができる。
【0046】
空間学習モデル5は、従来の空間シミュレーションで得られる入力データ及び出力データを学習データとして、教師有り学習により生成された機械学習モデルである。機械学習モデルは、空調学習モデル4と同様のものとすればよい。
【0047】
従来の空間シミュレーションの一例は、3次元熱流体解析による空間シミュレーションである。3次元熱流体解析による空間シミュレーションを実行することで、空間への負荷量、空気調和機の吹出温度及び吹出風量を含む入力データと、空間の室内温度及び室内気流を含む出力データとを得ることができる。これらの入力データと出力データとを組み合わせた学習データを用いて、機械学習モデルに応じた学習アルゴリズムを実行することで、空間学習モデル5を生成することができる。
【0048】
空調学習モデル4及び空間学習モデル5を生成するための学習データは、シミュレーションにより得られたものでなくてもよい。学習データは、実運転環境において計測された各種の情報を蓄積することで得られたものでもよい。また、シミュレーションにより得られた学習データと実運転環境において得られた学習データとを併用してもよい。
【0049】
<ハードウェア構成>
図2は、本実施形態におけるシミュレーション装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2に示されているように、シミュレーション装置10は、プロセッサ101、メモリ102、補助記憶装置103、操作装置104、表示装置105、通信装置106、ドライブ装置107を有する。シミュレーション装置10の各ハードウェアは、バス108を介して相互に接続されている。
【0050】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ101は、補助記憶装置103にインストールされている各種プログラムをメモリ102上に読み出して実行する。
【0051】
メモリ102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ101とメモリ102とは、いわゆるコンピュータ(以下、「制御部」ともいう)を形成し、プロセッサ101が、メモリ102上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは各種機能を実現する。
【0052】
補助記憶装置103(以下、「記憶部」ともいう)は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ101によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0053】
操作装置104は、シミュレーション装置10のユーザが各種操作を行うための操作デバイスである。表示装置105は、シミュレーション装置10により実行される各種処理の処理結果を表示する表示デバイスである。
【0054】
通信装置106は、不図示のネットワークを介して外部装置と通信を行うための通信デバイスである。
【0055】
ドライブ装置107は、記憶媒体109をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体109には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記憶する媒体が含まれる。また、記憶媒体109には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記憶する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0056】
なお、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体109がドライブ装置107にセットされ、記憶媒体109に記憶された各種プログラムがドライブ装置107により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、通信装置106を介してネットワークからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0057】
<処理手順>
図3は、本実施形態におけるシミュレーション装置10が実行するシミュレーション方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0058】
ステップS1において、シミュレーション装置10の制御部は、空調学習モデル4を生成するための学習データを生成する。学習データの生成は、物理モデルを用いた空調シミュレーションにより行う。
【0059】
具体的には、シミュレーション装置10の制御部は、空調学習モデル4の入力データを複数生成する。入力データは、例えば、空気調和機の設定温度及び空間の室内温度を含む。次に、シミュレーション装置10の制御部は、各入力データについて、物理モデルの空調シミュレーションを行う。これにより、各入力データに対応する出力データが得られる。出力データは、例えば、空気調和機の吹出温度、吹出風量、内部状態及び消費電力を含む。
【0060】
シミュレーション装置10の制御部は、各入力データと、当該入力データについて得られた出力データとを組み合わせることで、空調学習モデル4の学習データを生成する。学習データの数は、空調学習モデル4を生成するために十分な量であればよい。空調学習モデル4を生成するために十分な量は、機械学習モデルの種類や学習アルゴリズムにより異なる。
【0061】
ステップS2において、シミュレーション装置10の制御部は、ステップS1で生成した空調学習モデル4の学習データを用いて、空調学習モデル4を生成する。空調学習モデル4の生成は、空調学習モデル4を実装する機械学習モデルの種類に応じた学習アルゴリズムにより行う。シミュレーション装置10の制御部は、学習済みの空調学習モデル4を記憶部に記憶する。
【0062】
なお、空調シミュレーションを学習モデルで行わない場合(言い替えると、空間シミュレーションのみを学習モデルで行う場合)、ステップS1及びS2は実行しなくてもよい。
【0063】
ステップS3において、シミュレーション装置10の制御部は、空間学習モデル5を生成するための学習データを生成する。学習データの生成は、3次元熱流体解析による空間シミュレーションにより行う。
【0064】
具体的には、シミュレーション装置10の制御部は、空間学習モデル5の入力データを複数生成する。入力データは、例えば、空間への負荷量、空気調和機の吹出温度及び吹出風量を含む。次に、シミュレーション装置10の制御部は、各入力データについて、3次元熱流体解析による空間シミュレーションを行う。これにより、各入力データに対応する出力データが得られる。出力データは、例えば、空間の室内温度及び室内気流を含む。
【0065】
シミュレーション装置10の制御部は、各入力データと、当該入力データについて得られた出力データとを組み合わせることで、空間学習モデル5の学習データを生成する。学習データの数は、空間学習モデル5を生成するために十分な量であればよい。空間学習モデル5を生成するために十分な量は、機械学習モデルの種類や学習アルゴリズムにより異なる。
【0066】
ステップS4において、シミュレーション装置10の制御部は、ステップS3で生成した空間学習モデル5の学習データを用いて、空間学習モデル5を生成する。空間学習モデル5の生成は、空間学習モデル5を実装する機械学習モデルの種類に応じた学習アルゴリズムにより行う。シミュレーション装置10の制御部は、学習済みの空間学習モデル5を記憶部に記憶する。
【0067】
なお、空間シミュレーションを学習モデルで行わない場合(言い替えると、空調シミュレーションのみを学習モデルで行う場合)、ステップS3及びS4は実行しなくてもよい。
【0068】
ステップS5において、シミュレーション装置10の制御部は、シミュレーション条件の入力を受け付ける。シミュレーション条件は、例えば、空気調和機の設定温度及び空間への負荷量を含む。空間への負荷量は、例えば、空間の外部からの侵入熱負荷及び内部負荷を含む。
【0069】
ステップS6において、シミュレーション装置10の制御部は、ステップS5で入力を受け付けたシミュレーション条件から空気調和機の設定温度を取得し、空調シミュレーション2に入力する。次に、シミュレーション装置10の制御部は、ステップS5で入力を受け付けたシミュレーション条件から空間への負荷量を取得し、空間シミュレーション3に入力する。続いて、シミュレーション装置10の制御部は、連携シミュレーション1を実行する。
【0070】
ステップS6-1において、シミュレーション装置10の制御部は、記憶部に記憶された学習済みの空調学習モデル4を読み出す。次に、シミュレーション装置10の制御部は、読み出した空調学習モデル4を用いて、空調シミュレーション2を実行する。
【0071】
空調シミュレーション2は、空気調和機の設定温度及び空間の室内温度を入力とし、空気調和機の吹出温度、吹出風量、内部状態及び消費電力を出力する。シミュレーション装置10の制御部は、空調シミュレーション2から出力された空気調和機の吹出温度及び吹出風量を、空間シミュレーション3に入力する。
【0072】
なお、空調シミュレーションを学習モデルで行わない場合(言い替えると、空間シミュレーションのみを学習モデルで行う場合)、シミュレーション装置10の制御部は、物理モデルを用いた空調シミュレーションを行う。
【0073】
ステップS6-2において、シミュレーション装置10の制御部は、記憶部に記憶された学習済みの空間学習モデル5を読み出す。次に、シミュレーション装置10の制御部は、読み出した空間学習モデル5を用いて、空間シミュレーション3を実行する。
【0074】
空間シミュレーション3は、空間への負荷量を入力とし、空間の室内温度及び室内気流を出力する。空間への負荷量は、連携シミュレーション1に入力された空間の外部からの侵入熱負荷及び内部負荷と、空調シミュレーション2から出力された空気調和機の吹出温度及び吹出風量とを含む。シミュレーション装置10の制御部は、空間シミュレーション3から出力された空間の室内温度を、空調シミュレーション2に入力する。
【0075】
なお、空間シミュレーションを学習モデルで行わない場合(言い替えると、空調シミュレーションのみを学習モデルで行う場合)、シミュレーション装置10の制御部は、3次元熱流体解析による空間シミュレーションを行う。
【0076】
ステップS7において、シミュレーション装置10の制御部は、空調シミュレーション2から出力される空気調和機の内部状態及び消費電力に基づいて、空気調和機の運転効率を計算する。次に、シミュレーション装置10の制御部は、空気調和機の運転効率を含むシミュレーション結果を出力する。
【0077】
シミュレーション装置10の制御部は、空気調和機の内部の冷媒温度、制御状態、消費電力、吹出温度及び吹出風量、並びに空間の室内温度及び室内気流のいずれかを、シミュレーション結果に含めてもよい。シミュレーション装置10の制御部は、空調シミュレーション2及び空間シミュレーション3の出力から得られるその他の情報を、シミュレーション結果に含めてもよい。
【0078】
シミュレーション装置10の制御部は、ステップS6-1、S6-2及びS7を繰り返し実行する。シミュレーション装置10の制御部は、ユーザによる停止操作が行われるまで、又は所定の終了条件を満足するまで、ステップS6-1、S6-2及びS7を繰り返し実行する。所定の終了条件は、例えば、空調シミュレーション2又は空間シミュレーション3の出力が収束すること等である。
【0079】
<まとめ>
以上、本開示の各実施形態によれば、空調シミュレーションと空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションの計算量を低減することができる。実施形態におけるシミュレーション装置10は、空調シミュレーション又は空間シミュレーションを学習モデルにより行う。実施形態におけるシミュレーション装置10は、空調シミュレーション及び空間シミュレーションを学習モデルにより行ってもよい。学習済みの学習モデルを用いて空調シミュレーション又は空間シミュレーションを行うことで、計算量を大幅に低減することができる。したがって、実施形態におけるシミュレーション装置10によれば、空調シミュレーションと空間シミュレーションとを連携した連携シミュレーションの計算量を低減することができる。
【0080】
特に、実施形態におけるシミュレーション装置10は、空気調和機の内部状態を出力可能な空調シミュレーションを行う。従来の連携シミュレーションでは、空気調和機の内部状態をシミュレーションすることは行われていない。空調シミュレーションが空気調和機の内部状態を出力することで、例えば、空気調和機の運転効率をシミュレーション結果として得ることができる。したがって、実施形態におけるシミュレーション装置10によれば、従来の連携シミュレーションよりも詳細に、空気調和機の非定常状態における制御性能を評価することができる。
【0081】
本開示の各実施形態によれば、空気調和機の非定常状態における制御性能を詳細に評価することができるため、実運転環境における制御を考慮した空気調和機の制御設計を支援することができる。また、空気調和機を設置する空調利用環境に最適な機器を選定又は提案するために活用することができる。
【0082】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0083】
1 連携シミュレーション
2 空調シミュレーション
3 空間シミュレーション
4 空調学習モデル
5 空間学習モデル
10 シミュレーション装置