(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074203
(43)【公開日】2024-05-30
(54)【発明の名称】生体電池式イオン導入部材、シート状基材及び生体電池式治療器具
(51)【国際特許分類】
A61N 1/30 20060101AFI20240523BHJP
A61N 1/20 20060101ALI20240523BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A61N1/30
A61N1/20
A61N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185342
(22)【出願日】2022-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】395012215
【氏名又は名称】小蒲 賢司
(71)【出願人】
【識別番号】505416500
【氏名又は名称】小蒲 祐介
(71)【出願人】
【識別番号】505416511
【氏名又は名称】小蒲 耕平
(71)【出願人】
【識別番号】505416522
【氏名又は名称】小蒲 圭亮
(74)【代理人】
【識別番号】100090158
【弁理士】
【氏名又は名称】藤巻 正憲
(72)【発明者】
【氏名】小蒲 賢司
(72)【発明者】
【氏名】小蒲 祐介
(72)【発明者】
【氏名】小蒲 耕平
(72)【発明者】
【氏名】小蒲 圭亮
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB02
4C053BB04
4C053BB05
4C053BB06
4C053BB32
4C053GG02
4C053HH02
(57)【要約】
【課題】生体電池治療具の機能を有効に利用して、薬液成分をイオン化して皮膚から生体内に導入し、また外部直流電源を負極部材と正極部材との間に接続することにより、生体電池効果を賦活して生体電池治療具の治療効果を高める。
【解決手段】負極部材12と、負極部材12よりも標準電極電位が高い正極部材11と、マイナス又はプラスに帯電可能の薬液成分を含む薬液含有層15と、を設け、負極部材12には、開口部122を形成して、この開口部122にて、正極部材11の表面が負極部材12側に露出して正極端子11aを構成する。そして、薬液含有層15は負極部材12の表面上に形成する。そして、薬液含有層15及び正極端子11を皮膚に接触させると、皮膚を通して生体内に電流が流れ、この間に薬液含有層15に含まれる薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する負極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記負極部材よりも標準電極電位が高い正極部材と、
マイナス又はプラスに帯電可能の薬液成分を含む薬液含有層と、
を有し、
前記負極部材は前記正極部材の上に重ねられており、
前記負極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記正極部材の表面が前記負極部材側に露出して正極端子を構成しており、
前記薬液含有層は前記負極部材の表面上に前記正極端子とは非接触の状態で形成されており、
前記薬液含有層及び前記正極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする生体電池式イオン導入部材。
【請求項2】
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する負極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記負極部材よりも標準電極電位が高い正極部材と、
マイナス又はプラスに帯電可能の薬液成分を含む薬液含有層と、
を有し、
前記負極部材は前記正極部材の上に重ねられており、
前記負極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記正極部材の表面が前記負極部材側に露出して正極端子を構成しており、
前記薬液含有層は前記開口部内の前記正極端子上に形成されており、
前記薬液含有層及び前記負極部材を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする生体電池式イオン導入部材。
【請求項3】
前記開口部内の前記正極部材上に、前記正極部材と同一の材質又は貴金属を含む他の材質で形成された凸部を有し、前記正極端子の一部が前記凸部により構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体電池式イオン導入部材。
【請求項4】
前記薬液含有層は、前記開口部の端縁から0.5mm~5mm離れた領域の前記負極部材上に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体電池式イオン導入部材。
【請求項5】
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する負極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記負極部材よりも標準電極電位が高い正極部材と、
を有し、
前記負極部材は前記正極部材の上に重ねられており、
前記負極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記正極部材の表面が前記負極部材側に露出して正極端子を構成しており、
前記負極部材及び前記正極部材の少なくとも一方は、金属粉末と薬液成分とが混合されていることにより、生体電池電極としての機能の他に、薬液含有層としての機能を有し、
前記負極部材及び前記正極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする生体電池式イオン導入部材。
【請求項6】
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する正極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材よりも標準電極電位が低い負極部材と、
マイナス又はプラスに帯電可能の薬液成分を含む薬液含有層と、
を有し、
前記正極部材は前記負極部材の上に重ねられており、
前記正極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記負極部材の表面が前記正極部材側に露出して負極端子を構成しており、
前記薬液含有層は前記正極部材の表面上に前記負極端子とは非接触の状態で形成されており、
前記薬液含有層及び前記負極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする生体電池式イオン導入部材。
【請求項7】
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する正極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材よりも標準電極電位が低い負極部材と、
マイナス又はプラスに帯電可能の薬液成分を含む薬液含有層と、
を有し、
前記正極部材は前記負極部材の上に重ねられており、
前記正極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記負極部材の表面が前記正極部材側に露出して負極端子を構成しており、
前記薬液含有層は前記開口部内の前記負極端子上に形成されており、
前記薬液含有層及び前記正極部材を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする生体電池式イオン導入部材。
【請求項8】
前記開口部内の前記負極部材上に、前記負極部材と同一の材質又は標準電極電位が前記正極部材より低い他の材質で形成された凸部を有し、前記負極端子の一部が前記凸部により構成されることを特徴とする請求項6又は7に記載の生体電池式イオン導入部材。
【請求項9】
前記薬液含有層は、前記開口部の端縁から0.5mm~5mm離れた領域の前記正極部材上に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の生体電池式イオン導入部材。
【請求項10】
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する正極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材よりも標準電極電位が低い負極部材と、
を有し、
前記正極部材は前記負極部材の上に重ねられており、
前記正極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記負極部材の表面が前記正極部材側に露出して負極端子を構成しており、
前記正極部材及び前記負極部材の少なくとも一方は、金属粉末と薬液成分とが混合されていることにより、生体電池電極としての機能の他に、薬液含有層としての機能を有し、
前記正極部材及び前記負極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする生体電池式イオン導入部材。
【請求項11】
皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する正極部材と、
この正極部材の上にその一部を除いて積層形成され、皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材が露出する領域を正極端子とする負極部材と、
前記負極部材又は前記正極端子の少なくとも一方の表面に設けられ、マイナス又はプラスに帯電可能な薬液成分を含浸させた薬液含有層と、
を有し、
前記正極端子及び前記薬液含有層又は前記負極部材及び前記薬液含有層を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電して生体内に導入されることを特徴とする生体電池式イオン導入部材。
【請求項12】
前記請求項1乃至11のいずれか1項に記載の生体電池式イオン導入部材を作成するためのシート状基材において、
皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材となる第1シート基材と、
皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記第1シート基材に貼着されて前記負極部材となる第2シート基材と、
を有し、
前記第2シート基材は、前記第1シート基材を前記第2シート基材の表面側に露出させる開口部を有することを特徴とする生体電池式イオン導入部材用シート状基材。
【請求項13】
前記第1シート基材は、厚さが200μm以下の薄膜状をなし、少なくともその表面部分が貴金属又はカーボンで形成されており、
前記第2シート基材は、厚さが200μm以下の薄膜状をなし、少なくともその表面部分が前記第1シート基材の表面部分を形成する材料よりも標準電極電位が低い材料で形成されていることを特徴とする請求項12に記載の生体電池式イオン導入部材用シート状基材。
【請求項14】
前記第1シート基材は、ゴム製基材に正極を構成する成分を混合して形成され、
前記第2シート基材は、ゴム製基材に負極を構成する成分を混合して形成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の生体電池式イオン導入部材用シート状基材。
【請求項15】
前記第1シート基材及び前記第2シート基材は、その硬度が国際標準化機構に基づくデュロメータタイプAの試験機での硬度測定値が80°以下であることを特徴とする請求項14に記載の生体電池式イオン導入部材用シート状基材。
【請求項16】
前記第1シート基材及び前記第2シート基材のうち、少なくとも一方は、切断時伸びが120%以上であることを特徴とする請求項14又は15に記載の生体電池式イオン導入部材用シート状基材。
【請求項17】
前記薬液成分は、薬剤、栄養素、及び、細胞構成物質からなる群から選択された1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の生体電池式イオン導入部材。
【請求項18】
前記薬液含有層の前記薬液成分は、前記負極部材の表面に塗布するのに必要な粘性を有する導電性のゼリー状又はゲル状をなすことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の生体電池式イオン導入部材。
【請求項19】
前記薬液含有層は、前記薬液成分を含浸させた担持体を有し、この担持体は、布、不織布、及びスポンジからなる群から選択された1種又は2種以上により形成されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の生体電池式イオン導入部材。
【請求項20】
正極部材と、
前記正極部材よりも標準電極電位が低い素材からなる負極部材と、
前記正極部材と前記負極部材との間に接続され前記正極部材と前記負極部材との間に直流電圧を印加する直流電源部と、
を有し、
前記正極部材及び前記負極部材を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、
前記直流電源部による前記正極部材及び前記負極部材への直流電圧の印加は、前記負極部材からの前記素材のイオン化が賦活されるものであることを特徴とする生体電池式治療器具。
【請求項21】
前記直流電源部の負極接続部を前記正極部材に接続し、前記直流電源部の正極接続部を前記負極部材に接続したことを特徴とする請求項20に記載の生体電池式治療器具。
【請求項22】
前記正極部材及び/又は負極部材の表面に、マイナス又はプラスに帯電可能な薬液成分を含浸させた薬液含有層を設け、前記正極部材及び/又は負極部材と皮膚との間に、薬液含有層を介在させたことを特徴とする請求項20又は21に記載の生体電池式治療器具。
【請求項23】
絶縁性シートと、
この絶縁性シートの上に所定のパターンで形成された第1及び第2の1対の正極部材と、
この第1及び第2の正極部材の上に形成された負極部材と、
を有し、
前記絶縁性シートは、第1の基部と第2の基部とを連絡部で連結したパターンを有し、
前記第1の正極部材は、前記第1の基部上に形成された第1の接続部と、前記第2の基部上に形成された第1の正極端子と、前記連絡部上を延びて前記第1の接続部と前記第1の正極端子とを接続する第1の配線部とを具備するパターンを有し、
前記第2の正極部材は、前記第2の基部上に形成された第2の接続部と、前記第1の基部上に形成された第2の正極端子と、前記連絡部上を延びて前記第2の接続部と前記第2の正極端子とを接続する第2の配線部とを具備するパターンを有し、
前記負極部材は、前記第1の正極端子及び第2の正極端子を除く前記第1の正極部材及び第2の正極部材の上を覆うように形成されており、
前記負極部材並びに前記第1及び第2の正極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成されることを特徴とする生体電池式治療具。
【請求項24】
第1の負極基部と第2の負極基部とを連絡部で連結したパターンを有する負極部材と、
この負極部材の上に所定のパターンで形成された第1及び第2の1対の正極部材と、
を有し、
前記第1の正極部材は、前記第1の負極基部上に形成された第1の接続部と、前記第2の負極基部側に形成された第1の正極端子と、前記連絡部上を延びて前記第1の接続部と前記第1の正極端子とを接続する第1の配線部とを具備するパターンを有し、
前記第2の正極部材は、前記第2の負極基部上に形成された第2の接続部と、前記第1の負極基部側に形成された第2の正極端子と、前記連絡部上を延びて前記第2の接続部と前記第2の正極端子とを接続する第2の配線部とを具備するパターンを有し、
前記負極部材並びに前記第1及び第2の正極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成されることを特徴とする生体電池式治療具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、皮膚に接した状態で使用され、外部に電源を設けることなく、微弱な直流起電力に基づく電流が皮下組織下の生体に流れることによる通電刺激により、対象部位の処置を行う生体電池治療具に関する。特に、生体内に薬液成分を導入することを可能にした生体電池機能を有効活用する生体電池式イオン導入部材及び生体電池式イオン導入部材用のシート状基材に関する。また、本発明は外部電池を利用して生体電池の作用を賦活した生体電池式治療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、慢性的な肩こりや腰痛に悩まされる患者が増加しており、これまでに家庭用治療具として、パップ剤、温灸、金属粒、磁気治療具、低周波治療器などが多数市販されている。これらの治療具は、種々の原理によって患部の血行を促進し、局部的に滞留した老廃物を浄化する効果を示すものである。
【0003】
本発明者らは、これらの治療具とは異なる原理により筋肉及び神経の疲労を癒やす生体電池治療具を提案し、いずれも特許が認められている(特許文献1、2)。この生体電池治療具は、イオン化しやすい負極部材とイオン化しにくい正極部材とを皮膚に接触させたときに負極部材と正極部材との間に生体電池が形成され、生体内を電流が流れるときの通電刺激によって筋肉及び神経の疲労を癒すものである。これにより、外部に電源を設けることなく生体内に直流電流を与えるものであり、家庭用治療具としての治療効果を有する優れた治療具であることが実証されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6725124号公報
【特許文献2】特許第6789469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の生体電池治療具は、皮膚を通して生体内に電流を導入することにより、生体に治療を行うものである。本願発明は、この生体電池治療具の機能を有効に利用して、生体の治療効果をさらに一層向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願第1発明に係る生体電池式イオン導入部材は、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する負極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記負極部材よりも標準電極電位が高い正極部材と、
マイナス又はプラスに帯電可能の薬液成分を含む薬液含有層と、
を有し、
前記負極部材は前記正極部材の上に重ねられており、
前記負極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記正極部材の表面が前記負極部材側に露出して正極端子を構成しており、
前記薬液含有層は前記負極部材の表面上に前記正極端子とは非接触の状態で形成されており、
前記薬液含有層及び前記正極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする。
【0007】
本願第2発明に係る生体電池式イオン導入部材は、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する負極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記負極部材よりも標準電極電位が高い正極部材と、
マイナス又はプラスに帯電可能の薬液成分を含む薬液含有層と、
を有し、
前記負極部材は前記正極部材の上に重ねられており、
前記負極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記正極部材の表面が前記負極部材側に露出して正極端子を構成しており、
前記薬液含有層は前記開口部内の前記正極端子上に形成されており、
前記薬液含有層及び前記負極部材を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする。
【0008】
この場合に、前記開口部内の前記正極部材上に、前記正極部材と同一の材質又は貴金属を含む他の材質で形成された凸部を有し、前記正極端子の一部が前記凸部により構成されるようにすることができる。また、前記薬液含有層は、前記開口部の端縁から0.5mm~5mm離れた領域の前記負極部材上に形成されていることが好ましい。
【0009】
本願第3発明に係る生体電池式イオン導入部材は、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する負極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記負極部材よりも標準電極電位が高い正極部材と、
を有し、
前記負極部材は前記正極部材の上に重ねられており、
前記負極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記正極部材の表面が前記負極部材側に露出して正極端子を構成しており、
前記負極部材及び前記正極部材の少なくとも一方は、金属粉末と薬液成分とが混合されていることにより、生体電池電極としての機能の他に、薬液含有層としての機能を有し、
前記負極部材及び前記正極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする。
【0010】
本願第4発明に係る生体電池式イオン導入部材は、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する正極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材よりも標準電極電位が低い負極部材と、
マイナス又はプラスに帯電可能の薬液成分を含む薬液含有層と、
を有し、
前記正極部材は前記負極部材の上に重ねられており、
前記正極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記負極部材の表面が前記正極部材側に露出して負極端子を構成しており、
前記薬液含有層は前記正極部材の表面上に前記負極端子とは非接触の状態で形成されており、
前記薬液含有層及び前記負極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする。
【0011】
本願第5発明に係る生体電池式イオン導入部材は、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する正極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材よりも標準電極電位が低い負極部材と、
マイナス又はプラスに帯電可能の薬液成分を含む薬液含有層と、
を有し、
前記正極部材は前記負極部材の上に重ねられており、
前記正極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記負極部材の表面が前記正極部材側に露出して負極端子を構成しており、
前記薬液含有層は前記開口部内の前記負極端子上に形成されており、
前記薬液含有層及び前記正極部材を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする。
【0012】
この場合に、前記開口部内の前記負極部材上に、前記負極部材と同一の材質又は標準電極電位が前記正極部材より低い他の材質で形成された凸部を有し、前記負極端子の一部が前記凸部により構成されるようにすることができる。また、前記薬液含有層は、前記開口部の端縁から0.5mm~5mm離れた領域の前記正極部材上に形成されていることが好ましい。
【0013】
本願第6発明に係る生体電池式イオン導入部材は、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する正極部材と、
人体の治療部位の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材よりも標準電極電位が低い負極部材と、
を有し、
前記正極部材は前記負極部材の上に重ねられており、
前記正極部材には、開口部が形成されていて、この開口部にて、前記負極部材の表面が前記正極部材側に露出して負極端子を構成しており、
前記正極部材及び前記負極部材の少なくとも一方は、金属粉末と薬液成分とが混合されていることにより、生体電池電極としての機能の他に、薬液含有層としての機能を有し、
前記正極部材及び前記負極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液成分が帯電してイオンとして生体内に導入されることを特徴とする。
【0014】
本願第7発明に係る生体電池式イオン導入部材は、
皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有する正極部材と、
この正極部材の上にその一部を除いて積層形成され、皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材が露出する領域を正極端子とする負極部材と、
前記負極部材又は前記正極端子の少なくとも一方の表面に設けられ、マイナス又はプラスに帯電可能な薬液成分を含浸させた薬液含有層と、
を有し、
前記正極端子及び前記薬液含有層又は前記負極部材及び前記薬液含有層を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、この電流が流れる間に前記薬液含有層に含まれる薬液成分が帯電して生体内に導入されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明において、上記いずれかの生体電池式イオン導入部材を作成するためのシート状基材は、
皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記正極部材となる第1シート基材と、
皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有し、前記第1シート基材に貼着されて前記負極部材となる第2シート基材と、
を有し、
前記第2シート基材は、前記第1シート基材を前記第2シート基材の表面側に露出させる開口部を有することを特徴とする。
【0016】
この生体電池式イオン導入部材用シート状基材において、例えば、
前記第1シート基材は、厚さが200μm以下の薄膜状をなし、少なくともその表面部分が貴金属又はカーボンで形成されており、
前記第2シート基材は、厚さが200μm以下の薄膜状をなし、少なくともその表面部分が前記第1シート基材の表面部分を形成する材料よりも標準電極電位が低い材料で形成されている。
【0017】
また、例えば、
前記第1シート基材は、ゴム製基材に正極を構成する成分を混合して形成され、
前記第2シート基材は、ゴム製基材に負極を構成する成分を混合して形成されている。
【0018】
更に、例えば、
前記第1シート基材及び前記第2シート基材は、その硬度が国際標準化機構に基づくデュロメータタイプAの試験機での硬度測定値が80°以下である。
【0019】
更にまた、例えば、
前記第1シート基材及び前記第2シート基材のうち、少なくとも一方は、切断時伸びが120%以上である。
【0020】
一方、本発明に係る生体電池式イオン導入部材において、例えば、
前記薬液成分は、薬剤、栄養素、及び、細胞構成物質からなる群から選択された1種又は2種以上である。
【0021】
また、例えば、
前記薬液含有層の前記薬液成分は、前記負極部材の表面に塗布するのに必要な粘性を有する導電性のゼリー状又はゲル状をなす。
【0022】
更に、例えば、
前記薬液含有層は、前記薬液成分を含浸させた担持体を有し、この担持体は、布、不織布、及びスポンジからなる群から選択された1種又は2種以上により形成されている。
【0023】
本発明に係る生体電池式治療器具は、
正極部材と、
前記正極部材よりも標準電極電位が低い素材からなる負極部材と、
前記正極部材と前記負極部材との間に接続され前記正極部材と前記負極部材との間に直流電圧を印加する直流電源部と、
を有し、
前記正極部材及び前記負極部材を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成され、
前記直流電源部による前記正極部材及び前記負極部材への直流電圧の印加は、前記負極部材からの前記素材のイオン化が賦活されるものであることを特徴とする。
【0024】
この生体電池式治療器具において、例えば、
前記直流電源部の負極接続部を前記正極部材に接続し、前記直流電源部の正極接続部を前記負極部材に接続したことを特徴とする。
【0025】
また、例えば、
前記正極部材及び/又は負極部材の表面に、マイナス又はプラスに帯電可能な薬液成分を含浸させた薬液含有層を設け、前記正極部材及び/又は負極部材と皮膚との間に、薬液含有層を介在させたことを特徴とする。
【0026】
更に、本発明に係る他の生体電池式治療具は、
絶縁性シートと、
この絶縁性シートの上に所定のパターンで形成された第1及び第2の1対の正極部材と、
この第1及び第2の正極部材の上に形成された負極部材と、
を有し、
前記絶縁性シートは、第1の基部と第2の基部とを連絡部で連結したパターンを有し、
前記第1の正極部材は、前記第1の基部上に形成された第1の接続部と、前記第2の基部上に形成された第1の正極端子と、前記連絡部上を延びて前記第1の接続部と前記第1の正極端子とを接続する第1の配線部とを具備するパターンを有し、
前記第2の正極部材は、前記第2の基部上に形成された第2の接続部と、前記第1の基部上に形成された第2の正極端子と、前記連絡部上を延びて前記第2の接続部と前記第2の正極端子とを接続する第2の配線部とを具備するパターンを有し、
前記負極部材は、前記第1の正極端子及び第2の正極端子を除く前記第1の正極部材及び第2の正極部材の上を覆うように形成されており、
前記負極部材並びに前記第1及び第2の正極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成されることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る更に他の生体電池式治療具は、
第1の負極基部と第2の負極基部とを連絡部で連結したパターンを有する負極部材と、
この負極部材の上に所定のパターンで形成された第1及び第2の1対の正極部材と、
を有し、
前記第1の正極部材は、前記第1の負極基部上に形成された第1の接続部と、前記第2の負極基部側に形成された第1の正極端子と、前記連絡部上を延びて前記第1の接続部と前記第1の正極端子とを接続する第1の配線部とを具備するパターンを有し、
前記第2の正極部材は、前記第2の負極基部上に形成された第2の接続部と、前記第1の負極基部側に形成された第2の正極端子と、前記連絡部上を延びて前記第2の接続部と前記第2の正極端子とを接続する第2の配線部とを具備するパターンを有し、
前記負極部材並びに前記第1及び第2の正極端子を皮膚に接触させた状態で、皮膚を通して生体内に電流が流れる回路が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明者等は、生体電池治療具を生体に接触させることにより電流が生体内を通ることに着目し、この生体電池治療具に薬液を予め塗布して皮膚に接触させるようにすることにより、生体内に電流が流れた際に、薬液のイオン成分も生体内に入ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0029】
また、生体電池の作用は、生体内に電流を通すことにより得られるが、生体電池の機能をより高めるために、生体電池の負極部材と正極部材との間に駆動電源を外部電源として接続して、生体電池の負極部材と正極部材の電位を調整すればよいことを見いだして、本発明を完成するに至った。即ち、外部電源を補助的に使用して、生体内に導入される電流を調整することができ、これにより、治療効果が増大することを見出した。
【0030】
このように、本発明に係る生体電池式イオン導入部材によれば、生体電池の正極領域、負極領域をそれぞれ皮膚の所望箇所に接触、接着、付着させて生体内に電流を流すことにより、薬液の薬効成分がイオンとなって生体に入り、薬効成分の効果を有効に発揮することができる。また、負極部材と正極部材との間に外部から駆動電圧を印加することにより、負極部材と正極部材の生体電池作用、特に、負極部材のイオン化の程度を調節することができ、生体内への電流導入による治療効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】(a)は、生体電池式イオン導入部材用シート状基材を示す平面図、(b)はその表面に薬液を含侵した薬液含侵層を形成した生体電池式イオン導入部材を示す平面図である。
【
図2】(a)、(b)は、生体電池式イオン導入部材用シート状基材を示す断面図である。
【
図3】(a)~(d)は、プラスイオン導入方式の生体電池式イオン導入部材を示す断面図である。
【
図4】(a)、(b)は、マイナスイオン導入方式の生体電池式イオン導入部材を示す断面図である。
【
図5】(a)はプレスイオン導入方式、(b)はマイナスイオン導入方式の離隔帯を設けた生体電池式イオン導入部材を示す断面図である。
【
図6】(a)~(d)は、マイナスイオン導入方式の生体電池式イオン導入部材を示す断面図である。
【
図7】(a)、(b)は、プラスイオン導入方式の生体電池式イオン導入部材を示す断面図である。
【
図8】(a)はマイナスイオン導入方式、(b)はプラスイオン導入方式の離隔帯を設けた生体電池式イオン導入部材を示す断面図である。
【
図10】(a),(b)は、本発明に係る生体電池式イオン導入部材の他の実施形態を示す平面図及び断面図である。
【
図11】(a),(b)は、本発明に係る生体電池式イオン導入部材の他の実施形態を示す平面図及び断面図である。
【
図12】(a),(b)は、本発明に係る生体電池式イオン導入部材の他の実施形態を示す平面図及び断面図である。
【
図13】(a)は、生体電池式イオン導入部材の切り取り方法を示し、(b)は、生体電池式イオン導入部材の使用方法を示す図である。
【
図14】本発明の他の実施形態を示す図であり、外部直流電源により生体内を流れる電流を増大させる生体電池式治療器具を示す図である。
【
図15】本発明の更に他の実施形態を示す図であり、外部直流電源により生体内を流れる電流を増大させる生体電池式治療器具を示す図である。
【
図16】本発明の更に他の実施形態を示す図であり、外部直流電源により生体内を流れる電流を増大させ、更に、生体内へのイオン導入も可能とした生体電池式治療器具を示す図である。
【
図17】本発明の更に他の実施形態を示す図であり、生体への電流導入領域を拡大して治療効果を高めた生体電池式治療具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態の生体電池式イオン導入部材用シート状基材を示す平面図、
図1(b)は、同じく本発明の実施形態の生体電池式イオン導入部材を示す平面図である。また、
図2(a)、(b)は前記シート状基材を示す断面図、
図3(a)、(b)は前記生体電池式イオン導入部材を示す断面図である。
【0033】
図2(a)に示すように、本実施形態のシート状基材においては、正極部材11を構成する第1シート基材1上に、負極部材12を構成する第2シート基材2が重ねられて接合されている。負極部材12は標準電極電位が低い金属又は材料等の素材で形成されており、正極部材11は標準電極電位が負極部材12よりも高い金属又は材料等の素材で形成されている。標準電極電位が低い素材は、イオン化傾向が強く酸化されてプラスイオンになりやすい。また標準電極電位が高い素材は、イオン化傾向が弱く酸化されにくい。
【0034】
この第2シート基材2には、開口部2aが形成されており、第2シート基材2側からみてこの開口部2aにて第1シート基材1が露出するようになっている。また、この開口部2a内の第1シート基材1の露出部が、正極部材11の正極端子11a(第1シート基材1の正極端子1a)となる。
図1(a)に示すように、第2シート基材2には、例えば、4個の開口部2aが形成されており、この4個の開口部2aにて夫々正極端子1aが形成されている。なお、
図2(b)に示すシート状基材は、第1シート基材1の裏面に、シート状の支持材14が接合されている。これらの第1シート基材1、第2シート基材2及び支持材14は、皮膚に合わせて変形可能な程度の柔軟性を有している。なお、
図1(b)に示すように、第2シート基材2上には、後述する薬剤含有層15が積層されている。この薬剤含有層15は、開口部2aの縁部から距離dだけ離隔した開口部2aを含まない領域に形成されている。
【0035】
この正極部材用の第1シート基材1は、例えば、カーボンを混合して正極としての導電性をもたせたシートであり、負極部材用の第2シート基材2は、例えば、亜鉛を混合して負極としての導電性をもたせたシートである。また、第1シート基材1は、例えば、厚さが200μm以下、好ましくは20μm以下の薄膜状をなし、その少なくとも表面に貴金属又はカーボンの層が形成されている。第2シート基材2は、例えば、厚さが200μm以下、好ましくは20μm以下の薄膜状をなし、その少なくとも表面が第1シート基材1よりもイオン化しやすい材料で形成されている。イオン化傾向が大きい導電体を負極部材12とし、イオン化傾向が小さい導電体を正極部材11として、これらの電極を皮膚に接触させることにより、皮膚を電解質として、負極部材、皮膚、生体内部、皮膚、正極部材に、電気回路が形成される。
【0036】
第1シート基材1及び第2シート基材2は、柔軟性を具備するために、夫々伸縮性を有するゴム製基材に正極及び負極を構成する部材を混入させたシートとすることができる。この場合に、ゴム製基材は、その硬度を、国際標準化機構に基づくデュロメータタイプAの試験機での硬度測定値が80°以下、好ましくは50°以下とすることが好ましい。また、第1シート基材1及び第2シート基材2のうち、少なくとも一方は、切断時の伸びが120%以上、好ましくは300%以上であることが好ましい。
【0037】
正極部材11となる第1シート基材1の材質は、生体に密着可能な柔軟性を有し、正極として機能するものであり、上述のカーボン混合の導電性シートの他に、金属材料、又はITO(酸化インジウムスズ、透明電極)等が挙げられる。また、負極部材12となる第2シート基材2の材質は、同様に生体に密着可能な柔軟性を有して負極として機能するものであり、上述のように、亜鉛混合導電材がある。この亜鉛含有導電材は、電子の流れに関して異方性を有し、負極部材12は厚さ方向には導電性を有するが、表面に平行の方向については抵抗が高い性状を有する。但し、負極部材12は、このような性状を有する導電材に限らず、正極部材11よりも標準電極電位が低い導電材であればよい。
【0038】
図2(b)に示すように、第1シート基材1の下面に接合された支持材14は、第1シート1(正極部材11)及び第2シート2(負極部材12)の積層体に対する補強材として機能するので、正極部材11及び負極部材12のより一層の薄膜化が可能である。この支持材14の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、樹脂などのフィルム状の薄膜、繊維からなる布、又は不織布等が挙げられる。
【0039】
また、支持材14として、正極部材11及び負極部材12よりも大きめの素材を用いて、支持材14の外縁部14aが、正極部材11及び負極部材12の端面からはみ出るようにし、この外縁部14aが露出するように支持材14を配置する。そして、この露出した外縁部14aの上面の皮膚接触面に、皮膚に接着可能な粘着性又は接着性を有する接着層を形成する。これにより、本発明の生体電池式イオン導入部材を皮膚にあてがったときに、後述する薬剤含有層15及び正極端子11aを皮膚に接触させたときの皮膚への保持性を高めることができる。これにより、本発明の生体電池式イオン導入部材による薬液導入性を更に高めることができる。このとき、外縁部14aに、接着層の他に、薬液成分を塗布することもできる。これにより、この外縁部14aからも薬液成分を皮膚を介して生体内に導入することができる。
【0040】
次に、本発明の第1実施形態に係る生体電池式イオン導入部材について説明する。この生体電池式イオン導入部材においては、
図1(b)及び
図3(a)乃至(d)に示すように、上述のシート状基材の第2シート基材2の上に、プラス又はマイナスに帯電可能な薬液成分を含有する薬液含有層15が形成されている。即ち、第1シート基材1により正極部材11が構成され、第2シート基材2により負極部材12が構成されている。負極部材12には、開口部122が形成されていて、負極部材12の下層の正極部材11がこの開口部122内に露出している。そして、この正極部材11が露出した開口部122内に正極端子11aが形成される。また、この開口部122が形成された負極部材12の上における開口部122の端縁からdの距離以上離隔した領域に、薬液含有層15が形成されている。この距離dは、例えば、0.5~5μmであり、この距離dを少なくともおくことにより、薬液含有層15と正極部材11との接触を確実に防止するようになっている。
【0041】
図3(c)、(d)に示すように、開口部122内に、凸状の正極端子11b、11cを形成してもよい。この場合、薬液含有層15の表面と、凸状正極端子11b、11cの凸面とが、ほぼ同一の高さとなり、本実施形態の生体電池式イオン導入部材を皮膚表面に接触させたときに、薬液含有層15だけでなく、正極端子11b、11cも確実に皮膚表面に接触させることができる。但し、負極部材12(例えば亜鉛層)の層厚が数十μm程度と薄い場合は、凸状の正極端子11b、11cを設けることとしなくても、
図3(a)、(b)に示すように、開口部122を形成して、正極部材11を露出させることにより、この露出部に形成した正極端子11aであっても、皮膚に密着させることができる。なお、
図3(c)に示す凸状正極端子11bの材質は、正極部材11と同一素材であり、
図3(d)に示す凸状正極端子11cの材質は、金などの貴金属で形成されている。凸状正極端子11cを、貴金属で形成すれば、生体電池の起電力を高めることができる。
【0042】
図3(a)に示す薬液含有層15は、薬液が負極部材12上に直接塗布されて形成されている。この薬液含有層15は、粘性が高いゼリー状の薬液に対して有効である。このように、薬液含有層15に含有させる薬液については、粘性の高いゼリー状として、皮膚との密着性を高めるようにすることができる。これにより、薬液を負極部材12の表面に直接塗布して、薬液含有層15を形成することができる。
【0043】
また、
図3(b)に示す薬液含侵層15は、布、不織布、スポンジ等に薬液を含侵させて形成されている。この薬液含有層15は粘性が低い薬液に対して有効である。粘性が低い薬液を負極部材12上に直接塗布すると、薬液含有層15から正極端子11aの方に向けて薬液が流れ出て正極端子11aに接触してしまう可能性がある。従って、薬液を粘性が低い状態で使用する場合には、薬液を布、不織布、スポンジ等に含浸させて、薬液が不用意に薬液含有層15から流れ出ないようにすることが好ましい。
【0044】
薬液含有層15は、正極端子11a、11b、11cと直接接触しないように離隔させる。これは、薬液の例えばゼリー層が正極端子11a、11b、11cと直接接触すると、皮膚ではなく薬液を介して電流が正極端子11a、11b、11cに流れ、皮膚を通して生体内に電流を流すという本発明の機能が損なわれるためである。このため、薬液含有層15は、正極端子11a、11b、11cからd=0.5~5mm離間するように、薬液含有層15と正極端子11a、11b、11cとの間に間隔dを開けて塗布するのが好ましい。なお、薬液含有層15と正極端子11a、11b、11cとの間の間隔dとは、具体的には、負極部材12に設けた開口部122との端面と薬液含有層15の端縁との間の距離である。このように、間隔dを設けることにより、薬液含有層15が正極端子11a、11b、11cに接触して生体を通過しない回路が形成されてしまうことを防止でき、負極部材12から発生した電子を生体内により深く浸透させて、薬効を有効に高めることができる。
【0045】
次に、上述のごとく構成された本実施形態の生体電池式イオン導入部材の動作について説明する。
図3に示す生体電池式イオン導入部材の薬液含有層15と、正極端子11a、11b、11cを皮膚に接触させた状態で、生体電池式イオン導入部材を生体に配置する。そうすると、皮膚に接触する正極端子11a、11b、11cと、薬液含有層15を介して皮膚に接触する負極端子12との間で、皮膚を介して生体内部を電流通路とする回路が形成される。即ち、負極部材12は、例えば標準電極電位が低くイオン化しやすいZnであり、皮膚に薬液含有層15を介して接触すると、Znのプラスイオンとなって、負極部材12の皮膚側の表面に集まる。このとき、負極部材12に積層された薬液含有層15の薬液成分Mが負極材料のZnのプラスイオンによりプラスに帯電してMのプラスイオンが生成する。一方、負極部材12に接する正極部材11の正極端子11a、11b、11cには、負極部材12から電子が供給され、皮膚及びその直下の生体内には、正極端子11a、11b、11cから負極部材12に向けて電子又はマイナスイオンの流れが生じる。このとき、皮膚に接する薬液含有層15及び負極部材12からは、皮膚及びその直下の生体内を薬液成分のプラスイオンが負極部材12から正極端子11a、11b、11cに向けて電子と逆方向に流れる。このようにして、生体電池が構成されて電子が生体内を流れる際に、薬液成分のプラスイオンが電子と逆に流れて、生体内に薬液成分Mが導入される。
【0046】
即ち、負極部材12の皮膚側表面に負極部材成分がイオン化して生成した金属イオン(例えば、Zn2+)と、薬剤成分Mのプラスイオンが生成する。一方、Zn2+イオンの生成と対で生成した電子が正極部材11から生体内に導入される。そして、生体内においては、電子が正極部材11から負極部材12に向けて流れ、薬液成分Mのプラスイオンが薬液含有層15(負極部材12)から正極部材11に向けて流れる回路が形成される。このようにして、薬液成分Mのプラスイオンが皮膚を介して生体内に導入される。これにより、生体には、薬剤、栄養素、細胞抗生物質並びに発毛及び育毛等の薬効作用が得られる。また、従来の通電刺激による筋肉及び神経の疲労を癒やす治療効果も得ることができる。よって、本発明においては、家庭用治療具としての治療効果に加えて、消炎鎮痛効果、栄養効果、及び発毛効果等の医療用途から美容用途まで、様々な治療薬剤効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態においては、
図3(a)、(b)に示す正極端子11aは、正極部材11の露出面により構成され、
図3(c)、(d)に示す正極端子11b、11cは、凸状の電極により構成されている。負極部材12の膜厚が数十ミクロン程度薄い場合は、露出面により形成される正極端子11aでも十分に皮膚との接触が得られるが、凸状の正極端子11b、11cを設けることにより、正極端子と皮膚との接触を確実に得ることができる。
【0048】
次に、本発明に係る薬液含有層に含まれる薬効成分、即ち、本発明に係る生体電池式イオン導入部材で生体に導入可能な薬効成分について、以下に具体的に説明する。
【0049】
生体電池式イオン導入部材の起電圧は、標準的には正負極を構成する部材の材質にもよるが、現時点で当業者が容易に入手可能な材質においては、最大で1000mV程度、標準的には300mV~700mVであり、この起電圧により、生体内には、電流が最大で数十マイクロアンペア程度という微弱電流が発生する。しかし、この程度の電圧及び電流であっても、分子量において500g/mol程度の物質においては、生体内に電子を導入することが可能である。また、本発明に係る生体電池式イオン導入部材は、単に生体に貼り付けているだけでも、生体にイオンを導入することができる。このため、本発明の生体電池式イオン導入部材を長時間皮膚に貼り付けていても、皮膚に負担をかけることはない。このような理由から、本発明に係る生体電池式イオン導入部材を長時間皮接することが可能であり、その結果、生体内に有効量の薬効成分を確実に導入することができる。
【0050】
本発明で対象となる薬液としては、消炎及び鎮痛剤に代表されるような薬剤、ビタミンに代表されるような栄養素、アミノ酸及びコラーゲン等に代表される細胞構成物質、並びに発毛及び育毛成分等、医療用途から美容用途まで多岐にわたっている。
【0051】
具体的な薬剤としては、例えば、インドメタシン、フェルビナク、ロキソプロフェン、ジクロフェナクナトリウム等々が挙げられる。
【0052】
栄養素としては、ビタミン(ビタミンC、ビタミンD、ビタインH、ビタミンK、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビオチン、ビタミンB12)等々が挙げられる。
【0053】
細胞構成物質としては、例えば、アミノ酸、コラーゲン(主に低分子量型)、プラセンタ、フェチン酸、カルシウム化合物等々が挙げられる。
【0054】
発毛・育毛成分としては、例えば、ミノキシジル、t-フラバノン、6-ベンジルアミノプリン、アデノシン、フィナステリド、パントテニルエチルエーテル、ペンタデカン酸グリセリド、アデノシン等が挙げられる。
【0055】
図4は本発明の他の実施形態を示す。本実施形態は、マイナスイオンを生体内に導入する生体電池式イオン導入部材である。本実施形態においては、負極部材12に設けた開口部122内に正極部材11が露出して、正極端子11aが形成されているが、この正極部材11上又は正極端子11a上に、薬液含有層15を設けたものである。即ち、
図4(a)に示す生体電池式イオン導入部材は、負極部材12の開口部122内に薬液を直接塗布して薬液含有層15を形成したものであり、薬液がゼリー状又はゲル構造を有して、薬液に粘性持たせている場合に有効である。
図4(b)に示す生体電池式イオン導入部材は、薬液を布、不織布、スポンジなどに含侵させて、負極部材12の開口部122内に配置した場合であり、このように薬液を布等に含浸させて薬液含有層15を形成する態様は、薬液が流動性を有する状態のまま適用する場合に有効である。この薬液含有層15は、マイナスに帯電しやすい薬液成分を含むものである。
【0056】
このように構成された本実施形態の生体電池式イオン導入部材においては、正極部材11又は正極端子11aと負極部材12との間に皮膚を通して生体内を流れる電流が生成される。このとき、前述のように、皮膚に接する負極部材12において、負極部材12を構成する標準電極電位が低い例えばZn等の金属がイオン化し、Zn2+イオンが生成して、負極部材12の皮膚との接触面に集まる。一方、Pt等の標準電極電位が高い金属により構成される正極部材11又は正極端子11aにおいては、Znのイオン化により負極部材12で生成した電子が、負極部材12から正極部材11に流れ、正極端子11aから生体内に電子が導入される。このとき、正極部材11又は正極端子11a上に設けられた薬液含有層15において、薬液成分が電子によりマイナスイオンにイオン化され、薬液成分Mのマイナスイオンが生成する。そして、この薬液成分Mのマイナスイオンが電子と共に、生体内に導入される。このようにして、本実施形態においては、マイナスに帯電した薬液成分が生体内に導入されて、生体に対する薬効作用が発揮される。
【0057】
図5は、負極部材12に設けた開口部122の内側に、リング状の絶縁性離隔帯21を配置した実施形態を示す。この離隔帯21を設けた実施形態においては、離隔帯21の開口部21aの端縁が負極部材12の端縁を構成しており、負極部材21の開口部122の縁部が、離隔帯21により構成されている。よって、
図5(a)に示すイオン導入方式の生体電池式イオン導入部材においては、薬液含有層15は、離隔帯21の端縁からd(=0.5~5mm)の距離以上離れた領域において、負極部材12及び離隔帯21上に形成されている。また、
図5(b)に示すイオン導入方式の生体電池式イオン導入部材においては、離隔帯21の開口部内に充填された薬液含有層15は、その縁部が、この開口部の端縁からはみ出て離隔帯21上になるように形成されていても、それがd(=0.5~5mm)の距離までであれば離隔帯21上になるように薬液含有層15が形成されていても良い。いずれの方式の生体電池式イオン導入部材においても、薬液含有層15と正極端子11との間の絶縁性及び薬液含有層15と負極部材12との間の絶縁性を、十分に確保することができる。また、この離隔帯21を設けることにより、薬液含有層15を適切な位置に配置することが容易となり、作業的な困難性を解消することができる。
【0058】
上記
図3の実施形態のように、薬液含有層15が負極部材12に接して設けられている場合は、負極部材12がイオン化してプラスイオンになるので、薬液含有層15の薬液成分は負極部材12のプラス電荷によりプラスに帯電する環境にある。よって、薬液含有層15の薬液成分がプラスに帯電しやすい場合は、効率的に薬液成分が帯電する。しかし、この場合、必ずしもプラスに帯電しやすい薬液成分に限らず、マイナスに帯電しやすい薬液成分又は帯電しにくい薬液成分でも良い。この場合は、電子及び負極部材12のプラスイオンの出入りにより、多少なりとも薬液成分がイオン化され、少量でも生体内に薬液成分Mのイオンが導入される。
図4に示す実施形態の場合も、同様である。即ち、正極部材11又は正極端子11aに接する薬液含有層15の薬液成分がマイナスに帯電しやすいものであれば、効率的に薬液成分が帯電する。しかし、薬液成分がマイナスに帯電しやすいものでなくても、前述同様に、少量でも生体内に薬液成分Mのイオンが導入される。
【0059】
次に、本発明の他の実施形態について、
図6を参照して説明する。本実施形態は、
図3に示す実施形態に対して、負極部材12と正極部材11とを入れ替えたものである。本実施形態においては、負極部材12上に正極部材11が形成されており、正極部材11に形成された開口部111内に負極部材12が露出して、この開口部111内に負極端子12aが形成されている。
図6(a)に示す薬液含有層15は、薬液が正極部材11上に直接塗布されて形成されている。この薬液含有層15は、粘性が高いゼリー状の薬液に対して有効である。このように、薬液含有層15に含有させる薬液については、粘性の高いゼリー状として、皮膚との密着性を高めるようにすることができる。これにより、薬液を正極部材11の表面に直接塗布して、薬液含有層15を形成することができる。
【0060】
また、
図6(b)に示す薬液含侵層15は、布、不織布、スポンジ等に薬液を含侵させて形成されている。この薬液含有層15は粘性が低い薬液に対して有効である。粘性が低い薬液を正極部材11上に直接塗布すると、薬液含有層15から負極端子12aの方に向けて薬液が流れ出て負極端子12aに接触してしまう可能性がある。従って、薬液を粘性が低い状態で使用する場合には、薬液を布、不織布、スポンジ等に含浸させて、薬液が不用意に薬液含有層15から流れ出ないようにすることが好ましい。
【0061】
図6(c)、(d)に示すように、開口部111内に、凸状の負極端子12b、12cを形成してもよい。この場合、薬液含有層15の表面と、凸状負極端子12b、12cの凸面とが、ほぼ同一の高さとなり、本実施形態の生体電池式イオン導入部材を皮膚表面に接触させたときに、薬液含有層15だけでなく、負極端子12b、12cも確実に皮膚表面に接触させることができる。但し、正極部材11の層厚が数十μm程度と薄い場合は、凸状の負極端子12b、12cを設けることとしなくても、
図6(a)、(b)に示すように、開口部111を形成して、負極部材12を露出させることにより、この露出部に形成した負極端子12aであっても、皮膚に密着させることができる。なお、
図6(c)に示す凸状負極端子12bの材質は負極部材12と同一素材であり、
図6(d)に示す凸状負極端子12cの材質は、負極部材12とは別の標準電極電位が低い素材で形成されている。なお、正極部材11を、貴金属で形成すれば、生体電池の起電力を高めることができる。
【0062】
本実施形態においては、負極部材12の負極端子12a、12b、12cが生体皮膚に接触して負極端子12a、12b、12cの構成材料である例えばZnがイオン化する。そして、この負極構成材料のイオン化により生成した電子が正極部材11から生体内に入る。このとき、電子は正極部材11に接する薬液含有層15を通過して体内に入るので、薬液含有層15の薬液成分はマイナスに帯電して電子と共に体内に導入される。これにより、正極部材11から薬液含有層15を経由して体内から負極端子12a、12b、12cに至る回路が形成される。そして、マイナスに帯電した薬液成分が体内に導入されてその成分による薬効が得られる。
【0063】
図7は本発明の他の実施形態を示す生体電池式イオン導入部材を示す断面図である。本実施形態も、
図4に示す実施形態に対し、負極部材12と正極部材11とを入れ替えたものである。即ち、負極部材12上に正極部材11が設けられており、この正極部材11に開口部111が形成されており、この開口部111内に負極部材12が露出して負極端子12aが形成されている。そして、この負極部材12上又は負極端子12a上に、薬液含有層15が設けられている。
図7(a)に示す生体電池式イオン導入部材は、正極部材11の開口部111内に薬液を直接塗布して薬液含有層15を形成したものであり、薬液がゼリー状又はゲル構造を有して、薬液に粘性持たせている場合に有効である。
図7(b)に示す生体電池式イオン導入部材は、薬液を布、不織布、スポンジなどに含侵させて、正極部材11の開口部111内に配置した場合であり、このように薬液を布等に含浸させて薬液含有層15を形成する態様は、薬液が流動性を有する状態のまま適用する場合に有効である。この薬液含有層15は、プラスに帯電しやすい薬液成分を含むものである。
【0064】
このように構成された本実施形態の生体電池式イオン導入部材においては、正極部材11と負極部材12又は負極端子12aとの間に皮膚を通して生体内を流れる電流が生成される。このとき、負極部材12を構成する標準電極電位が低い例えばZn等の金属がイオン化し、Zn2+イオンが生成して、負極部材12の皮膚との接触面に集まる。そうすると、薬液含有層15内の薬液成分がプラスに帯電し、薬液成分Mのプラスイオンが生成する。一方、Pt等の標準電極電位が高い金属により構成される正極部材11においては、Znのイオン化により負極部材12で生成した電子が、負極部材12から正極部材11に流れ、正極部材11から生体内に電子が導入される。このようにして、薬液成分Mのプラスイオンが負極端子12aから体内に導入され、電子が正極端子11から体内に導入されて、体内を経由する回路が形成される。本実施形態においては、プラスに帯電した薬液成分が生体内に導入されて、生体に対する薬効作用が発揮される。
【0065】
図8は、
図5と同様に、離隔帯21を設けたものである。本実施形態は、
図5とは異なり、正極部材11の開口部111内に、リング状の離隔帯21を嵌合したものである。
図5(a)に示すように、正極部材11上に設けた薬液含有層15は、離隔帯21の開口部21aの端縁からdの距離以上離隔するように形成されている。これにより、薬液含有層15と負極端子12aとの間の十分な絶縁性を確保することができる。一方、
図5(b)に示すように、負極端子12a上に設けた薬液含有層15は、その端縁が離隔帯21上になるように形成されている。これにより、薬液含有層15と正極端子11との間の十分な絶縁性を確保することができる。このように離隔帯21を設けることにより、薬液含有層15を適切な位置に配置することが容易となり、作業的な困難性を解消することができる。
【0066】
図9は、本発明の他の実施形態に係る生体電池式イオン導入部材を示す断面図である。シート状の正極部材11の下面に、シート状の負極部材121が接着されている。この負極部材121は、金属粉末をバインダを使用して固めてシート状にしたものである。そして、本実施形態においては、このバインダ内に薬効成分を含有させて負極部材121に薬剤含有層としての機能を持たせている。この場合のバインダとしては、ゼリー状の薬液含有層を使用することができる。即ち、さらさらと流動化しない状態の粘性が高いゼリー状の薬液含有層の中に、金属粒子としてZn等の粉末を混入させることにより、格別他のバインダ成分を含有させることなく、薬液含有層を兼ねる負極部材121を形成することができる。又は、さらさらとして流動化しやすい状態の粘性が低い薬液成分であっても、この薬液成分を例えばスポンジ等の基材に含浸させ、更に金属粉末をこの基材に担持させることにより、同様に、薬液成分と金属粉末とを含む負極部材121を形成することができる。又は、本実施形態の負極部材121は、薬剤層の中に金属粉末を含有させることにより、金属粉末中に薬効成分を含有させ、その状態で適宜のバインダにより固めたものとすることができる。一方、正極部材11における負極部材121に覆われていない縁部に、正極端子11aが形成され、この正極端子11aが皮膚に接触するように、本実施形態の生体電池式イオン導入部材が配置される。
【0067】
本実施形態においては、負極部材121と、正極部材11の正極端子11aとを皮膚に接触させることにより、生体電池式イオン導入部材として機能する。即ち、負極部材121が、皮膚との間で電子の授受を行う負電極としての機能に加えて、薬効成分を含有する薬剤含有層としての機能もかねている。
【0068】
図10乃至
図12は、本発明の他の実施形態に係る生体電池式イオン導入部材を示す平面図である。
図10(a)に示す生体電池式イオン導入部材は、シリコーンゴム等の絶縁性支持シート10の上に、カーボン又はPt等の正極部材11が例えば印刷により形成されており、更に、この正極部材11の上に、Zn等の負極部材12が例えば印刷により形成されている。このZnの印刷は、液体シリコーンにZn粉末を混合し、それを印刷によりシリコーンゴムの上に塗布した後、加熱して固化させる等の方法により行うことができる。支持シート10は、平面視でT字形をなし、幅広の頭部の中央から伸びる部分の先端は丸い形状を有している。そして、この支持シート10の上に形成された正極部材11は、ほぼ支持シート10と同様の平面形状を有しているが、支持シート10よりも一回り小さい形状を有する。また、この正極部材11上に形成された負極部材12は、T字形の先端の丸い形状部分を除いて、正極部材11を覆うように形成されている。従って、このT字形の丸い形状部分にて、正極部材11が露出しており、この露出部分が正極端子11aを構成している。
【0069】
このように構成された生体電池は、負極部材12を皮膚に接触させて、生体に貼着すると、負極部材12がその前面で皮膚に接触すると共に、負極部材12に覆われていない部分の正極部材11、即ち正極端子11aも皮膚に接触する。これにより、負極部材12を負極側の端子とし、この負極端子と正極端子11aとの間で、前述のような生体電池が構成される。この構造は、
図2(b)に示す生体電池と同様の構造であり、負極部材12からイオン化した例えばZnイオンが、負極部材12の表面近傍に集まり、電子が正極端子11aから生体内に導入され、正極端子から負極部材12に向けて電子が流れる。これにより、生体内を電流が流れて生体電池として機能する。
【0070】
そして、
図10(b)に示すように、負極部材12におけるT字形の頭の部分上に、薬液含有層15を形成することにより、イオン導入部材が構成される。これにより、負極部材12の表面に存在するZnの正イオンにより薬液含有層15内の薬液成分が正イオンに帯電し、電子の流れと逆方向に正極端子11aに向けて生体内を移動する。このようにして、生体内に薬液成分のイオンが導入される。本実施形態において、T字形の頭の部分の幅広の部分が生体電池の一方の負極部材12であり、他方の正極端子11aが小円形状であるから、この小円の正極端子11aを中心として幅広の負極部材に向けて、平面視で2等辺三角形状の生体領域を電流が流れる。よって、この生体表面の広範な領域に電流が流れて広い領域で生体電池の治療効果又は薬効効果が得られる。
【0071】
この生体電池式イオン導入部材の平面形状は、T字形に限らず、種々の形状とすることができる。例えば、
図11(a)、(b)に示す生体電池は、平面形状がL字形をなし、その幅広の部分からそれに垂直に伸びる細幅の部分の先端に丸形状の正極端子11aが形成されている。本実施形態においても、正極端子11aから電子が皮膚を通して生体内に入り、幅広の負極部材12に向けて生体内を流れる。よって、本実施形態においては、平面視で正極端子11aを中心とする扇形の領域に電流が流れ、この領域にて生体内に生体電池の治療効果又は薬効効果が得られる。
【0072】
一方、
図12(a)、(b)に示す生体電池式イオン導入部材は、平面形状がH字形をなし、一方の幅広の矩形部分にて負極部材12が欠落して、この部分に露出する正極端子11aが形成されている。よって、H字形の一方の幅広矩形部分に負極部材12からなる負極端子が構成され、他方の幅広矩形部分に正極端子11aが形成されている。本実施形態においては、比較的大面積の負極部材12と、同様に比較的大面積の正極端子11aとが皮膚に接触しているので、この大面積の電極端子間に生体電流が流れ、生体内への電子及びイオンの導入効率が高い。
【0073】
なお、上記
図10乃至
図12においては、シリコーンゴム等の絶縁性支持シート10を使用し、その上に、正極部材11及び負極部材12を積層形成しているが、本発明はそれに限らず、支持シート10を使用しないで生体電池イオン導入部材を構成することもできる。つまり、例えば、カーボンからなる正極部材11上に、例えば、Znからなる負極部材12を印刷等により形成し、正極部材11と負極部材12からなる生体電池を構成してもよい。なお、支持シート10を設けた場合は、生体電池を皮膚に貼着させるために、支持シート10における正極部材11からはみ出た領域に接着剤を設けて、この領域で皮膚に接着させてもよく、また、支持シート10の裏側から生体電池の全体を接着シートで覆ってこれを皮膚に接着させてもよい。一方、支持シート10を使用しない場合には、負極部材12における皮膚側の面に接着剤をドット状に点在するように設けて、このドット状接着剤により、生体電池を皮膚に接着させてもよい。
【0074】
また、上記
図10乃至
図12の実施形態においては、負極部材12の面積が広い矩形をなし、正極端子11aの面積が小さい小円状をなしているが、これは、生体電池において負極部材12が皮膚と接触する面積を比較的大きくするためである。このようにして、負極部材12と生体皮膚との接触面積を大きくすることにより、皮膚と接触することにより負極部材12にて生じるイオン化反応(例えば、Znイオンの生成)が増大し、皮膚を通して生体内に導入される電流が多くなる。正極端子11aから電子が生体内に導入されるが、イオン化反応ではないため、正極端子11aの面積は大きくする必要がない。
【0075】
図13は本実施形態の生体電池式イオン導入部材の使用例を示す図である。
図13(a)に示すように、本実施形態の生体電池式イオン導入部材(例えば、
図1に示す実施形態)を、正極部材11を含んで、T字状に切り取り、生体の適用箇所(例えば、肘、脚、鼻等)に応じて、皮膚に接着する。
【0076】
図13(b)は、
図10に示すT字状又はH字状の生体電池式イオン導入部材を、腕、肘、脚、膝、鼻等の適用箇所に接着した状態を示す。このように、
図10に示すT字状又はH字状等の正極部材11と負極部材12とが配線層13により接続された形態の生体電池式イオン導入部材においては、患部を挟んだ状態で、正極部材と負極部材とを配置することができる。この配置により、肘、脚、鼻等にそれを貫通する電流が流れ、その結果、生体電池式イオン導入部材に塗布された薬剤のイオンが生体内に導入される。
【0077】
次に、本発明の他の実施形態の生体電池式治療器具について、
図14を参照して説明する。本実施形態においては、正極部材31と、負極部材32とが生体40の皮膚に接触して配置されている。そして、正極部材31と負極部材32との間に、外部直流電源33が接続されている。負極部材32は標準電極電位が正極部材31よりも低く、正極部材31よりもイオン化しやすい。そして、外部直流電源33は、その正極が負極部材32に接続され、その負極が正極部材31に接続されている。負極部材32及び正極部材31は生体40の皮膚に合わせて変形可能の柔軟性を有するものであり、これにより、負極部材32及び正極部材31を皮膚に密着させることができる。
【0078】
このように構成された生体電池式治療器具においては、正極部材31及び負極部材32を生体40の皮膚に接触させると、イオン化しやすい負極部材32において、その構成素材がイオン化して、正イオンが生成し、負極部材32と皮膚との接触面に集積する。一方、外部直流電源33がその正極が接続された負極部材32から電子を引抜き、その負極が接続された正極部材31に向けて送り出すように、電子の流れを駆動する。このため、負極部材32においては、その負極部材32の構成素材のイオン化反応が促進され、正極部材31から生体40内に導入された電子の流れが増大する。このようにして、生体40内に導入される電子の量が、外部直流電源33を接続しない場合よりも増加し、外部直流電源33を設けることにより、生体電池による生体治療効果がより一層発揮される。
【0079】
負極部材32の材質は、標準電極電位が低い例えば亜鉛であり、この亜鉛はイオン化して、プラスイオンになりやすい。
【0080】
正極部材の材質は、標準電極電位が負極部材32より高く、負極部材32よりイオン化しにくい素材である。このような素材として、例えば、金、銀、銅、白金(プラチナ)、チタンなどがあり、更に、サージカルステンレスを使用することができる。このサージカルステンレスとしては、JIS SUS316及び316L等があり、ステンレスの中でも、腐食しにくい素材であり、医療用のメス又ははさみとして実用されている。負極部材32として亜鉛を使用し、正極部材31として、医療用のサージカルステンレス(JIS SUS316)を使用して、生理食塩水中で起電実験を行った結果、約600乃至650mVの電圧が起電した。一方、サージカルステンレスの代わりに、金を正極部材31に使用した場合は、700乃至763mVが起電した。よって、正極部材31の性能としては、金等の高価な金属に限らず、サージカルステンレスを使用しても、同等の機能を有する。また、サージカルステンレスの見かけのイオン化傾向は、白金のイオン化傾向(PT:標準電極電位+1.188V)と同等である。これらの正極部材31の候補材料としては、銀及び銅も有効である。一方、チタン及びサージカルステンレスは、不動態化するため、結果として更にイオン化しにくくなる素材である。
【0081】
外部直流電源33としては、例えば、ボタン電池又はコイン電池を使用することができる。即ち、ボタン電池又はコイン電池の正極及び負極に、夫々、ペースト状の接着剤等により、負極部材32と正極部材31を接合すればよい。
【0082】
なお、本実施形態の外部直流電源33と負極部材32とは、一体的に構成することができる。即ち、外部直流電源33のボタン電池又はコイン電池の正極に、亜鉛ペーストを塗布し、この亜鉛ペーストを負極部材32とすることができる。そして、負極部材32の亜鉛ペーストを利用してボタン電池又はコイン電池を皮膚に接着する。また、ボタン電池又はコイン電池の負極と正極部材31とを何らかの接着剤により直接接続する。このようにすれば、上記亜鉛ペーストが負極部材32として機能する生体電池式治療器具を組み立てることができる。即ち、皮膚、亜鉛ペースト(亜鉛負極部材32)、ボタン電池又はコイン電池(外部直流電源33)、接続材、正極部材31及び皮膚からなる回路が形成され、前述のごとく、Znのイオン化が生じ、生体電池として機能すると共に、ボタン電池又はコイン電池により通電電流が増大して、生体電池機能が賦活される。なお、外部直流電源33としては、上記ボタン電池又はコイン電池に限るものではなく、種々の電源(電池)を使用することができる。
【0083】
図15は本発明の他の実施形態を示す。本実施形態においては、外部直流電源34と、負極部材32及び正極部材31とを、配線により接続している。これにより、外部直流電源34を負極部材32及び正極部材31の位置によらずに、任意の位置に設置することができる。
【0084】
図15に示す態様においても、外部直流電源34は特定の直流電源に限定されるものではなく、一般的に入手可能な乾電池(例えば、1.5Vの乾電池)、各種ボタン電池、又はコイン電池等の直流電源を使用することができる。また、この外部直流電源34と、負極部材32及び正極部材31との接続手段も既存の種々の手段を使用することができる。本実施形態においても、
図12に示すように、外部直流電源の正極及び負極を、夫々負極部材32及び正極部材31に直接接続させた場合と同様に、外部直流電源34による賦活効果を得て、生体電池機能が向上する。
【0085】
図16は本発明の他の実施形態を示す。本実施形態においては、負極部材32と皮膚(生体40)との間に、薬液含有層35を設けたものである。即ち、袋状の薬液含有シートを負極部材32に接着するか、又は負極部材32の表面にゼリー状の薬液を塗布することにより、薬液含有層35を設ける。
【0086】
本実施形態においても、
図14と同様に、負極部材32と、正極部材31との間に、生体40を経緯する電流経路が形成される。この際に、負極部材32に接する薬液含有層35が設けられているので、負極部材32と生体40側の表面で負極部材32の構成素材のプラスイオンが生成したとき、このプラスイオンに帯電して、薬液含有層35の薬液成分のプラスイオンが生成する。一方で、外部直流電源33により、この外部直流電源33を経由して負極部材32から正極部材31に電子が駆動されて流れる。そして、この電子が正極部材31から生体40内に導入され、生体40内を負極部材32に向けて流れると同時に、負極部材32で生成した薬液成分のプラスイオンが生体内に導入される。このとき、流れる電流量が外部直流電源33により増大されているので、生体40内に流れる薬液成分のプラスイオンの量も、外部直流電源33がない場合よりも、増大している。従って、より一層多量の薬液成分イオンが生体40内に導入されて、より強力な薬効効果が得られる。
【0087】
上記
図14乃至16に示す実施形態においては、外部直流電源33,34により、正極部材31と負極部材32との間に流れる電流が増大し、外部直流電源33,34を設けていない場合よりも生体電池機能がより一層向上し、生体電池による治療効果が賦活される。このため、生体電池機能により生成する電流が低くても、外部直流電源により十分な電子が生体内に導入される。従って、本実施形態においては、正極部材31として、高価な白金(Pt)、及び金(Au)等の高価な金属を使用することなく、低コストで標準電極電位がそれほど高くない素材、例えば、イオン化しにくいサージカルステンレス等を使用しても、本発明の治療効果を十分に得ることができる。また、負極部材32を構成する素材としては、例えば、入手が容易で低コストの亜鉛(Zn)を使用しても、十分な生体電池効果を得ることができる。従って、本実施形態の生体電池治療器具は、その製造コストを低くできるという利点がある。つまり、生体電池においては、標準電極電位が低い素材と標準電極電位が高い素材とにより負極部材及び正極部材が構成されるが、その標準電極電位の差が小さい場合、及び標準電極電位が十分に高くなくて、正極部材31が若干イオン化してしまう場合でも、優れた生体電池効果を得ることができる。
【0088】
正極部材31を構成する素材として金(Au)を使用した場合、金は最もイオン化しにくい金属であるといわれているものの、若干微量ながらイオン化している。しかしながら、本発明においては、正極部材31に、外部直列電源33,34の負極が接続されているので、正極構成部材のイオン化を確実に防止することができる。また、金に比べると遙かにイオン化しやすい金属である銀、銅又はステンレス鋼であっても、外部直流電源33,34の負極が正極部材31に接続されているので、そのイオン化を十分に防止することができ、正極部材31として確実に機能させることができる。他方、亜鉛等の負極部材32においては、外部直流電源33,34の正極が接続されているので、亜鉛等の負極部材構成素材のイオン化がより一層促進され、全体として、生体電池は高効率となる。
【0089】
次に、生体電池式治療具の効果を実装するために行った実験について説明する。
図15に示す生体電池式治療具において、負極部材32としては亜鉛を使用し、正極部材31としてはサージカルステンレス(SUS316L)を使用し、外部直流電源34に9Vの電池を使用し、この電池の正極を負極部材32に接続し、負極を正極部材31に接続した。一方、外部直流電源34を有しない従来の生体電池式治療器具も用意し、いずれも、負極部材32及び正極部材31を皮膚に接触させた。その結果、生体電池式治療器具による皮膚・生体中の血流効果は、生体電池式治療器具を使用しない場合(平常時という)は、平均血流量が5.29ml/分であるのに対し、従来の生体電池式治療器具を使用した場合は、平均血流量が6.97ml/分となり、30%以上上昇した。また、脈流についても、平常時の約10ml/分に対し、従来の生体電池式治療器具を使用した場合は、30ml/分と約3倍に上昇した。これらに対し、
図13の本発明の生体電池式治療器具を使用した場合は、9Vの直流電源に賦活されて生体電池効果が向上し、平常時の平均血流量が6.74ml/分であるのに対し、15.6ml/分と230%以上上昇した。また、脈流については、平常時の約10ml/分に対し、本発明は100ml/分以上となり、約10倍上昇した。以上から、本発明によれば、正極部材31に金を使用せずにサージカルステンレスを使用しても、負極部材32がよりイオン化しやすくなり、正極部材31のイオン化が確実に防止されて、生体電池式治療器具の治療効果が著しく向上した。
【0090】
図17は本発明の他の実施形態を示す平面図である。本実施形態の生体電池は、シリコーンゴム等の絶縁性支持シート10の上に、正極部材11の層が形成され、正極部材11の層の上に負極部材12の層が形成されている。支持シート10は、矩形の1対の基部10aと基部10bとを、細い連絡部10cで連結した平面形状を有している。この連絡部10cはその略中央部が平面視でS字形状に湾曲している。この支持シート10の各基部10a、10b上には、夫々、正極部材11の矩形の接続部111a、111bが設けられている。各接続部111a、111bから夫々基部10b、10aに向けて延びるように、配線部112a、112bが連絡部10c上に形成されている。そして、この配線部112a、112bの先端部は、夫々、基部10b、10a上において、基部10b、10aの先端縁に沿うように、垂直に湾曲している。この基部10b,10aの先端縁に平行に沿う正極部材11の部分が、線状の正極端子11a、11bとなる。そして、このような形状を有する正極部材11の上に、負極部材12が形成されている。この負極部材12は、正極端子11a、11bが形成された領域を除いて、支持シート10の全域を覆うように、形成されている。よって、この負極部材12は、正極端子11a、11bを除いて、正極部材11上に重ねられて接触しており、特に、正極部材11の接続部111a、111bと広大な領域で接触して導通するようになっている。しかし、この接続部111a、111bは負極部材12に覆われているので、正極部材11は、正極端子11a、11bのみが露出している。よって、この負極部材12を皮膚側にして本実施形態の生体電池を生体に貼着すると、正極端子11a、11bと、負極部材12の全域が皮膚に接触し、この正極端子11a、11bと負極部材12とを電極とする生体電池が構成される。
【0091】
このように構成された生体電池においては、基部10aに設けられた負極部材12の部分は、基部10a上の正極部材111aに接触して電気的に接続され、この正極部材11の正極端子11aは、基部10b上に設けられている。また、基部10bに設けられた負極部材12の部分は、基部10b上の正極部材111bに接触して電気的に接続され、この正極部材11の正極端子11bは、基部10a上に設けられている。一面にベタに形成された負極部材12は、例えば、基部10aで細い配線部112bとも接触するが、広大な接続部111aと接触していて主にこの接続部111aで正極部材11に導通する。従って、基部10a上の正極端子11bは、主として基部10b上の接続部111bで負極部材12と電気的に接続されており、基部10b上の正極端子11aは、主として基部10a上の接続部111aで負極部材12と電気的に接続されている。このため、負極部材12側を皮膚に接触させると、正極端子11aと基部10a上の領域の負極部材12との間に電流が流れ、正極端子11bと基部10b上の領域の負極部材12との間に電流が流れる。よって、生体に対し、広大な領域で生体電池により起電された電流が流れ、生体の広大な領域で治療効果が得られる。
【0092】
本実施形態のように、長尺の生体電池の場合は、
図13に示すように、肘又は膝の両側部にて正極端子11aと負極部材12とを皮膚に接触させ、肘又は膝を横断するように生体電流を流すことができる。このため、より一層治療効果を高めることができる。この場合に、一方の負極部材12は比較的広い領域で、皮膚と接触し、正極端子11a、11bは小さい領域で局所的に皮膚に接触する。このため、腕又は脚の横断面でみると、扇状に電流経路が形成される。よって、腕又は脚の中心部に集中させて電流経路を形成し、治療効果をその部分に集中させることができる。しかも、
図17の実施形態の場合は、生体電池は1対設けられており、それらの生体電池が腕又は脚の長手方向に若干離隔して配置されていることになるから、腕又は脚の長手方向に交互に広い負極部材12及び小さい正極端子11a,11bの対により、横断面で三角形状の領域に交互に治療効果を及ぼすことができ、治療領域を均一化することができる。
【0093】
本発明は、上記実施形態に限らず、支持シート10を使用しないでも、上述の効果を奏することができる。例えば、
図17に示す負極部材12(例えば、Zn層)の上に、正極部材11(例えば、カーボン層)を形成し、Zn層をカーボン層形成のための土台とすることができる。但し、この正極部材11の正極端子11a、11bの部分は、土台となる負極部材12が存在しないので、この部分にダミーとなるシートを配置してこのダミーの上に、正極端子11a、11bを形成すればよい。又は、正極端子11a、11bの代わりに、
図17においてこの正極端子11a、11bに連なる細い配線部分に接触させて負極部材12を断面コ字状の導電クリップで挟みこみ、これを正極端子としてもよい。これにより、負極部材12の全体を皮膚に接触させた場合、正極部材11は導電クリップのみが皮膚に接触するので、この導電クリップを正極端子として、生体電池を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、生体電池治療具の機能を有効に利用して、薬液成分をイオン化して皮膚から生体内に導入し、薬効を効率よく高めることができるという顕著な効果を有する。また、外部直流電源を負極部材と正極部材との間に接続することにより、生体電池効果が賦活され、治療効果をより一層高めることができる。このため、この種の治療具の適用範囲を拡大させることができる。
【符号の説明】
【0095】
10:支持シート
11:正極部材
11a、11b、11c:正極端子
12:負極部材
12a、12b、12c:負極端子
15、35:薬液含有層
21:離隔帯
111,122:開口部
31:正極部材
32:負極部材
33,34:外部直流電源